JP3679768B2 - 水蒸気養生固化体の新規な迅速製造方法及びその固化体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築内装材、建築外装材、瓦、縁石、舗装板として採用され、不燃性にして実用的な機械的強度及び寸法安定性を有するケイ酸カルシウム系固化体のマイクロ波水蒸気養生法を利用した迅速で省エネルギーな製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、窯業系成形体は不燃性であり、しかも腐食や虫害の恐れがなく、耐久性に優れていることから、建築内装材、建築外装材、瓦として多く採用されている。この窯業系成形体の製造は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、セメント、スラグおよび石膏等を主原料とし、水を添加、混合して、成形後、水蒸気養生あるいは大気圧養生を行い、機械的強度および寸法安定性を発現していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
建築用仕上げ材の場合、表面硬度や曲げ強度等の強度発現、および温湿度の環境変化に対する寸法安定性を有する物性を付与するには、セメントを混入し水和固化させる方法が多く採用されている。前記の製造法において、大気圧養生では熱エネルギー的には有利であるが、数日間の養生期間が必要であり、広大な敷地面積を必要とする問題点がある。また、水熱養生では、珪酸カルシウムやセメントをマトリックスとする場合、160〜180℃の温度条件下で、オートクレーブ中で数時間から十数時間をかけて処理することにより製造され、熱エネルギーを多量に消費し、また、高圧力に耐える設備費を要し、また運転費も高価となる。
【0004】
さらに、板状成形体を水熱養生する場合、大型バッチ式オートクレーブを用い、その反応手段が昇温と降温とを繰り返す操作であることから、温度条件が高いほどエネルギーロスが大きいという問題点がある。これらの問題点は、瓦、縁石、舗装板の場合についても同様である。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、新規な窯業系成形体の製造方法を見出したものである。本発明によれば、従来、製造されている窯業系成形体に較べると、反応が迅速で反応温度が低く、圧力は大気圧であることから大幅な省エネルギー製造法である。
【0006】
本発明のマイクロ波水蒸気養生の場合、養生の条件が従来のものよりはるかに低温、且つ、短時間に不燃性にして実用的な機械的強度と寸法安定性を有する窯業系成形体およびその効率的な製造方法、すなわち、大気圧下、水蒸気雰囲気中でマイクロ波照射させるだけで、不燃性を有する窯業系成形体が製造できる方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維と水酸化アルカリ水溶液を加えて混練した混合原料を成形した後、前乾燥、マイクロ波水熱養生、後乾燥の各工程を経る窯業系成形体の製造方法を要旨としている。
すなわち、図1に示すように珪酸質原料、石灰質原料、あるいはセメントなどと補強繊維を混合した混合物と水酸化アルカリ水溶液を加えて混練した混合原料を成形する。この原料成形体から低温で余剰水分を乾燥させ、得られた半固化体を水蒸気存在下でマイクロ波照射して養生した後、後乾燥することを特徴とする窯業系成形体の製造方法を提供するものである。
【0008】
ケイ酸カルシウム系窯業成形体の場合、原料の珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水、および水酸化アルカリを混練して原料ゲルとする。この原料ゲルの水分率は、次工程の成形方法にもよるが、25〜40%が好ましい。なお、水酸化アルカリとしては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが利用できるが、材料の強度及びコスト面から考えて、水酸化ナトリウムが望ましい。
【0009】
上記の混合原料ゲルを加圧して原料成形体とし、この原料成形体を60℃以下、6時間以内の条件で、前乾燥処理を行い半固化体とした後、大気圧下100℃以下の水蒸気雰囲気中で温度を一定に保ちながら、1時間以内マイクロ波照射し、または前記の半固化体を最適出力一定のマイクロ波で2時間以内照射して、60から100℃の所定温度で所定時間、後乾燥することを特徴としている。
【0010】
前乾燥及び後乾燥法として通常の乾燥機が用いられるが、図1に示すようにマイクロ波乾燥法を利用することにより迅速乾燥が達成できる。前乾燥にマイクロ波を利用する場合、固化体の温度を60℃以下の一定温度に制御しながら2時間以内マイクロ波照射して所定水分量まで乾燥する。また、後乾燥にマイクロ波を用いる場合、マイクロ波水蒸気養生後、水蒸気の導入をやめ、30分以内、60〜100℃の一定温度に制御しながらマイクロ波を照射した後、開放し、自然冷却することによって達成される。前乾燥及び後乾燥において、マイクロ波照射とともに固化体の温度と同等以下の空気を送風することにより、さらに短時間に乾燥される。
【0011】
また、本発明は、上記のいずれかの製造方法により製造した窯業系成形体を要旨としている。
【0012】
【発明の実施形態】
本発明における珪酸質原料とは、珪酸(SiO2)が含まれている原料を言う。例えば珪石、珪砂、珪藻土、白土等の鉱物微粉末、フライアッシュ、シリカヒュームダスト、コンクリート廃材、建設汚泥等を用いることができる。
石灰質原料としては、例えば、生石灰、生石灰の乾式消化で得られる粉末状の消石灰や多量の水で生石灰を湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)等を使用することができる。
【0013】
本発明では、養生温度の低温化を実現したことから、従来法では用いることができなかった高温域において熱分解する有機系繊維を採用することができる。
有機系補強繊維としては、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維等を採用することができる。無機系補強繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維を採用することができる。なお、セルロース系繊維として廃木材繊維、古紙などが利用できる。不燃性を高めることを考慮すると無機系補強繊維の採用が好ましい。
【0014】
また、本発明ではバインダーとして、水ガラス系バインダー及び高分子系バインダーとしてスチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレンアクリル共重合体等を適宜添加してもよい。また、混和材として、セメント、石膏等の常温固化材や、木片、ガラス廃材のビーズを適宜添加してもよい。本発明では養生工程での温度条件が低温化されることから、従来、熱分解されるため、使用が制限されていた各種有機系物質を幅広く採用できることも特徴である。
【0015】
ここで、珪酸質原料と石灰質原料との混合物に水酸化アルカリを添加したことにより、養生工程での固化が促進し、機械的強度が向上するとともに、乾燥工程における変形がなく、寸法安定性の優れた高強度成形体が得られる。水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが用いることができるが、材料の強度面及びコスト面などから考えて、水酸化ナトリウムが望ましい。また、その添加量は珪酸質原料と石灰質原料との混合物に対し、4重量部以下の量を添加することが望ましい。
【0016】
前乾燥処理の温度条件や乾燥時間は、原料成形体の原料組成及び原料成形体の水分率により変動する。すなわち、過度の前乾燥は、原料成形体養生時において必要な水の移動を減少させることから、養生工程における固化進行を遅らせることになる。また、前乾燥が不十分であると、半固化が不十分のため、養生後の成形体強度が発現しない。水酸化ナトリウムを添加する場合、前乾燥処理において半固化体の含水率を10〜15wt%にすることが望ましい。さらに、半固化した成形体の表面と内部との乾燥度合いが極端に異なると反りや割れが発生する。通常の加熱乾燥法では高温、短時間の前乾燥は適さないが、マイクロ波乾燥法では内部から乾燥するので反りや割れが発生しにくく、効果的である。しかし、マイクロ波出力が高いと内部温度が高くなりすぎることがあり、内部温度を60℃以下に制御しながら低出力で送風乾燥と組み合わせることが望ましく、特に、パルス照射が効果的である。
【0017】
前乾燥処理により得られた半固化体は次のマイクロ波照射工程で固化が促進する。マイクロ波照射法では大気圧下、100℃以下の条件で1時間以内に固化する。これは従来の養生法と比べ著しく低温化、短時間化されている。100℃より高温でマイクロ波照射する場合、さらに短時間化することも可能である。また、前記の半固化体を最適条件の一定出力で2時間以内マイクロ波照射することによって、実用的機械強度および寸法安定性を有する窯業系成形体が得られる。
【0018】
本発明の成形方法としては、脱水成形、押出成形を用いる。窯業系成形体の成形方法として抄造成形法や脱水成型法があるが、いずれも多量の水を用いるため、水酸化アルカリの定着には適切な方法ではない。したがって、混合原料は、ゲル状等の流動性を帯びた混練物を作り、脱水成形、押出成形を行うことが好ましい。
【0019】
押出成形は各原料の比重差による不均一が生じにくい成形方法であるので、平板はもとより、回り縁、見切り縁、窓枠等建築部材といった意匠性に富む建築部材の成形が可能である。押出成形の場合、増粘剤として、セルロース系誘電体、例えばメチルセルロース等を使用すればよい。このように糖鎖を基本とする有機化合物の添加は、強度発現に寄与することからも有効である。
【0020】
本発明窯業系成形体の製造方法の好ましい態様は、珪酸質原料と石灰質原料及び補強繊維を混合した混合物に、混合固形分総量100重量部に対して、固形分4重量部以下の水酸化ナトリウム水溶液を加えて混練する。この混合原料を加圧して原料成形体とし、この原料成形体を60℃以下、6時間以内前乾燥処理を行い、半固化体をとした後、大気圧下100℃以下の水蒸気雰囲気中で温度を一定に保ちながら1時間以内マイクロ定温波照射させ、さらに、100℃以下の温度で2時間以内乾燥させることを特徴とする窯業系成形体の製造法である。本発明で採用した水蒸気養生過程におけるマイクロ波照射は、少量の水酸化アルカリの存在下、珪酸質原料と石灰質原料との反応を促進する効果が認められ、低温短時間で養生反応が完結する。また、照射後、乾燥した成形体は、実用的な機械的強度と寸法安定性を有している。なお、この前乾燥及び後乾燥にマイクロ波乾燥法を利用することにより迅速乾燥が可能である。すなわち、前乾燥工程において60℃以下の温度で低出力のマイクロ波を照射して2時間以内で乾燥させる。また、マイクロ波水蒸気養生後、水蒸気の送給を停止し、乾燥空気を送給しながら100℃以下の温度でマイクロ波を照射すると30分以内に乾燥する。
【0021】
以下、本発明に係る窯業系成形体の製造方法について説明する。
<第1実施形態>
まず、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維を所定の割合で攪拌混合して粉体原料とする。この際、補強繊維の種類にもよるが、繊維の分散を確認してから次工程へ進む。
上記粉体原料に、所定の水酸化アルカリおよび水を添加し、水分率を25〜40%と調整した後、攪拌を行い、ゲル状の混練物を得る。ここで、水酸化アルカリは、混合物固形分総量100重量部に対して、固形分4重量部以下とする。前記原料ゲルを型枠に投入し、原料成形体を得る。この原料成形体を60℃以下で、6時間以内、乾燥を行って(前乾燥)半固化体とする。これを大気圧下100℃以下の水蒸気雰囲気中で温度を一定に保ちながら、1時間以内マイクロ定温波照射した後、100℃以下の温度で2時間以内乾燥して窯業系成形体を得る。
【0022】
<第2実施形態>
前記第1実施形態で得られた半固化体を最適な一定出力で2時間以内マイクロ波照射した後、乾燥して窯業系成形体を得る。本窯業系成形体は、第1実施形態で製造した窯業系成形体の機械的強度より高く、実用的機械強度および寸法安定性も有している。
【0023】
<第3実施形態>
前期第1実施形態において得られた原料成形体を60℃以下の空気を送風し、マイクロ波を照射して、成形体内部の温度を60℃に制御しながら2時間以内乾燥(前乾燥)する。大気圧下100℃以下の温度で水蒸気の存在下2時間以内マイクロ波照射した後、100℃以下の温度で30分以内マイクロ波照射して乾燥(後乾燥)する。
【0024】
本発明による窯業系成形体の製造法では、次の効果がある。
(1)従来の水熱養生法に比べ、乾燥時間の短縮、養生温度の低温化、加熱時間の大幅短縮が可能であることから著しい省エネルギー化、低コスト化が実現できる。
(2)養生温度の低温化により、熱分解の恐れがなく、添加できる有機物の種類が幅広くなる。
(3)養生サイクルが短縮されることから、生産効率が良く大量生産が可能となる。
(4)マイクロ波加熱であるため、照射して得られた窯業系成形は含水率が低く、後乾燥工程がより短時間化が可能になる。
(5)オートクレーブ等の耐圧容器が不要であるため、設備費の削減、圧力容器の管理作業が不要となる。
(6)大気圧養生であるため、開放系連続製造が可能となり、生産性が向上できる。
(7)前乾燥及び後乾燥にマイクロ波照射と空気の送風乾燥を組み合わせることにより、反り及び割れなく、迅速に乾燥できる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、マイクロ波照射の条件が大気中100℃以下、1時間以内であるが、これにこだわるものでなく、オートクレイブを使用し、従来の水熱養生条件より低温低圧条件である120℃でマイクロ波照射処理してもよく、より短時間に反応が進行する。
また、原料成形体製造に脱水成形を用いていたが、これに限らず、押出成形等のその他の成形法により成形することも可能である。
【0026】
【作用】
本発明は、セメントを混入し水和固化させる方法、高温水熱養生を用いる方法、板状成形体を水熱養生する場合、その他瓦、縁石、舗装板などの場合における上記従来法の問題点を解決するためになされたもので、窯業系成形体の新規な固化反応を見出したものである。従来法で製造されている窯業系成形体に較べ、著しく省エネルギーな製造方法である。
【0027】
本発明の水蒸気養生は、養生条件が従来のものよりはるかに低温、低圧(大気圧)、短時間に不燃性の実用的機械強度と寸法安定性を有する窯業系成形体およびその効率的な製造方法を提供するものである。
また、大気圧下、水蒸気雰囲気中でマイクロ波照射させるだけで、不燃性かつ実用的機械強度および寸法安定性を有する窯業系成形体の製造方法を提供することにある。さらに大気圧下での操作であるため、従来の水熱養生が密閉系バッチ生産を行うのに対し、開放系連続生産が可能で生産性を向上させることができる。
なお、乾燥工程で空気を送給しながら60℃以下の温度でマイクロ波を照射することにより、反りや割れなく迅速に乾燥できる。マイクロ波乾燥とマイクロ波水蒸気養生を組み合わせることにより、同一容器内にて、空気あるいは水蒸気を送給することにより達成でき、効率的な製造が可能である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本願発明をより具体的に説明する。本願発明はこれらの実施例並びに比較例によって何ら限定される物ではない。
【0029】
表1には、実施例および比較例で使用した窯業系成形体の原料配合割合、前乾燥および養生条件を示している。
なお、珪酸質原料としては、本発明を理解するために水熱条件下での反応に主に用いられる結晶質珪酸の珪石粉末を用いた。この珪石粉末はSiO2含有量97.1%である。他の原料としては、消石灰はCaO含有量72.6%を採用した。補強繊維にはARG(耐アルカリ性ガラス繊維)を採用した。
原料攪拌に用いたモルタルミキサーの攪拌条件は50rpmとした。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1
珪石81.6重量部、消石灰14.4重量部をモルタルミキサーによって、10分間攪拌した。次に水酸化ナトリウム4重量部を含んだ水溶液添加し、さらに水分率が24%になるように水を添加した後、モルタルミキサーによって5分間攪拌を行い、原料ゲルを得た。
得られた原料ゲルを15mm×15mm×30mmの型枠に詰め、原料成形体を得た。さらに、原料成形体を通常の乾燥機にて50℃、5時間乾燥させて、半固化体を得た。得られた半固化体を水蒸気雰囲気下で、マイクロ波加熱装置にて温度を100℃に保ちながら5〜30分間マイクロ波を照射した後、通常の乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなく、その圧縮強度とマイクロ波照射時間との関係を図2に示す。この結果から100℃の一定温度、マイクロ波照射時間が20分の最適であった。
【0032】
実施例2
前記実施例1で得られた半固化体を実施例1と同様の水蒸気雰囲気下、一定出力(200w)のマイクロ波を60分間照射した後、通常の乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。圧縮強度は図3に示すようにマイクロ波照射時間が60分で十分な強度が得られた。
【0033】
実施例3
前記実施例1で得られた原料成形体を通常の乾燥機中50℃、3時間(実施例2の半分の時間)乾燥させて半固化体を得た。得られた半固化体を実施例2と同様の条件、すなわち、マイクロ波加熱装置にて、水蒸気雰囲気下、一定出力(200w)でマイクロ波を60分間照射した後、通常の乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。得られた窯業系成形体の外観には異常がなかったが、圧縮強度は実施例1に比べ7割程度であり、前乾燥時間は十分とる必要がある。
【0034】
実施例4
珪石81.2重量部、消石灰14.3重量部、繊維0.5重量部をモルタルミキサーによって、10分間攪拌した。次に水酸化ナトリウム4.0重量部を含んだ水溶液を添加し、さらに水分率が24%になるように水を添加した後、モルタルミキサーによって、5分間攪拌を行い、原料ゲルを得た。
得られた原料ゲルを、前記実施例1と同様の方法で成型、通常の乾燥機中で50℃、6時間、前乾燥を行い、半固化体を得た。この半固化体を水蒸気雰囲気下、一定出力下(200w)でマイクロ波を90分間照射した後、通常の乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。得られた成形体の圧縮強度は図4に示すように、水蒸気養生時間が長くなるほど大きくなり、実施例の条件の90分で十分な強度が得られた。
【0035】
実施例5
前記実施例4で得られた原料ゲルを、前記実施例1と同様の方法で成型し、この成形体を熱風送風装置付きのマイクロ波加熱装置にて、60℃の空気を送風し、試料の温度を60℃に制御しながらマイクロ波照射して2時間乾燥させた。得られた半固化体を実施例4と同様に水蒸気雰囲気下、一定出力下(200Watt)でマイクロ波照射を60,90分間行った後、マイクロ波乾燥機に入れ、100℃の空気を送風しながら試料の温度を100℃に制御しつつ、マイクロ波照射して20分時間乾燥させさせ、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかく、圧縮強度は図4に示すようにマイクロ波照射時間が長い90分の方が高く、十分な強度が得られた。
【0036】
実施例6
前記実施例4で得られた半固化体を水蒸気雰囲気下、マイクロ波を一定出力(300Watt)で10〜40分間照射した後、通常の乾燥機中100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかく、圧縮強度は図4に示すように照射時間20分のものが最高強度を示した。
【0037】
実施例7
珪石80.8重量部、消石灰14.2重量部、繊維1.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間攪拌した。次に水酸化ナトリウム4.0重量部を含んだ水溶液を添加し、さらに水分率が24%になるように水を添加した後、モルタルミキサーによって、5分間攪拌を行い、原料ゲルを得た。
得られた原料ゲルを、前記実施例1と同様の方法で成型、前乾燥を行って得た半固化体を水蒸気雰囲気中でマイクロ波一定出力下(300Watt)で10分間照射した後、通常の乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。得られた窯業系成形体の外観には異常がなく、図5に示すように水蒸気養生10分で最高の強度を示した。
【0038】
実施例8
前記実施例6で得られた半固化体を水蒸気雰囲気下、一定出力(400w)でマイクロ波を5分間照射した後、通常の乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。得られた窯業系成形体の外観には異常がなかったが、圧縮強度は図5に示すように5分で十分な強度が得られた。
【0039】
比較例1
前記実施例1で得られた原料成形体を前乾燥せずに実施例1と同様にマイクロ波を照射した後、通常乾燥機中で100℃、1時間乾燥させて窯業系成形体を得たが、成形体は固化していなかった。
【0040】
比較例2
前記実施例1で得られた半固化体をマイクロ波照射せず、50℃の温度下15時間放置し、100℃で1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた養生成形体は、固化されていなかった。
【0041】
比較例3
珪石77.4重量部、消石灰13.6重量部、繊維5.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間攪拌した。次に水酸化ナトリウム4.0重量部を含んだ水溶液添加し、さらに水分率が24%になるように水を添加した後、モルタルミキサーによって、5分間攪拌を行い、原料ゲルを得た。
得られた原料ゲルを、前記実施例1と同様の方法で原料成形体を得た。この原料成形体を実施例1と同様の方法で、通常乾燥法で前乾燥して半固化体を得た。
この半固化体を実施例6と同様の方法で、窯業系成形体を得た。その窯業系成形体の外観には異常がないものの強度が低かった。
【0042】
比較例4
前記実施例6で得られた半固化体をマイクロ波加熱装置にて、150Wattの定出力マイクロ波で15分間照射した後、100℃で1時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がないものの強度が低い。
【0043】
比較例5
前記実施例6で得られた半固化体をマイクロ波加熱装置にて、高出力(750W)でマイクロ波を3分間照射した。得られた養生成形体は破裂して形が崩れた。
【0044】
比較例6
実施例1で得られた半固化体を通常の加熱法で水蒸気雰囲気下、100℃、6時間加熱処理した後、通常の乾燥機中で100℃、2時間乾燥して窯業系成形体を得た。得られた窯業系成形体の外観は良好であった。その強度は図7に示すとおり、目標の圧縮強度を得るためには6時間以上の養生が必要であった。
【0045】
上記各実施例1〜7および比較例3〜5で得られた窯業系成形体について、かさ比重、圧縮強度、吸水率、吸水長さ変化率を測定した。得られた物性値より比強度を算出した。切断加工性の評価をも含めて、結果を表2にまとめた。
【0046】
【表2】
【0047】
前記かさ比重、吸水率、および吸水長さ変化率の測定は、JIS A5430に準拠した方法により測定した。
前記圧縮強度の測定は、JIS R2616に準拠した方法により測定した。
前記比強度は、曲げ強度/かさ比重により算出した。
切断加工性の評価は、鋸切断による直線性を目視観察するとともに切断面の固化度合いを触感により評価した。
【0048】
表2に示されるように、実施例1〜7で得られた窯業系成形体はいずれも実用するにあたって十分な強度を有していることがわかる。また、吸水長さ変化率も低く、吸水に対する十分な寸法安定性を有していることが確認された。
前乾燥の条件において、50℃、3時間より、50℃、5時間の方が成形体諸物性を向上させており、半固化工程が重要なことがわかる。
さらに、定出力マイクロ波照射の方が、強度発現されている。低出力マイクロ波法では内部温度が高くなっているためと推察される。しかしながら、定温マイクロ波照射でも実用的な成形体が得られることが確認された。
【0049】
また、マイクロ波照射せず、一般の開放系水蒸気養生の場合、2時間の養生では材料の強度が25MPaしかなく、実用的強度に至っていない。実用的な成形体を得られるために4時間以上の養生は必要とされることが分かる。したがって、マイクロ波照射による固化反応効果が一般の水蒸気養生法よりはるかに短時間化、省エネ化であることが認められる。
【0050】
一定出力マイクロ波照射において、出力が低い場合、得られた窯業系成形体は固化せず、比較例4のように強度が発見されなかった。また、出力が高すぎると、比較例5のように得られた養生成形体は破裂して形が崩れてしまった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、窯業系成形体をマイクロ波加熱養生する場合は、従来の水熱処理養生の製造法よりはるかに省エネルギーで、しかも短時間にて、不燃性にして実用的な機械的強度と寸法安定性を発現できる。また、大気圧下、定温マイクロ波照射においても、最適な一定出力でマイクロ波を照射して製造した成形体の機械的強度には劣るものの、実用的機械強度及び寸法安定性を有する窯業系成形体である。また、前乾燥及び後乾燥にマイクロ波乾燥法を適用することにより乾燥時間を短縮でき、同時に成形体の表面温度以下の空気を送風することにより、さらに迅速に乾燥できる。
本発明のマイクロ波乾燥及び水蒸気養生法は著しく省エネルギー化でき、地球環境保全にも寄与するとともに、コスト削減を可能とする。また、大気圧下、マイクロ波加熱養生では、設備費、運転費を削減できるとともに、連続製造が可能なことから、生産性を向上することができる。
【0052】
【図面の簡単な説明】
[表1]上記の実施例や比較例における原料配合、前乾燥、養生及び後乾燥の条件(温度、時間、出力など)を明記したものである。
[表2]上記の実施例や比較例で得られた窯業系成形体の物性の測定値(かさ比重、圧縮強度、比強度、吸水率および吸水長さ変化率など)及び外観、切断加工性の結果をまとめたものである。
【図1】本発明における原材料から窯業成形体までの製造プロセスである。
【図2】実施例1における100℃定温下でマイクロ波照射によって得られたケイ酸カルシウム材料の圧縮強度の照射時間依存性である。
【図3】実施例2における一定出力(200Watt)のマイクロ波照射で得られたケイ酸カルシウム材料の圧縮強度の照射時間依存性である。
【図4】実施例4、5、6における一定出力のマイクロ波照射によって得られたケイ酸カルシウム材料の圧縮強度の照射時間依存性である。
【図5】実施例7、8における一定出力のマイクロ波照射によって得られたケイ酸カルシウム材料の圧縮強度の照射時間依存性である。
【図6】比較例6における開放系100℃の水蒸気養生で得られたケイ酸カルシウム材料の圧縮強度の養生時間依存性である。
Claims (9)
- 珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水および水酸化アルカリを混練した混合原料の成形体を前乾燥処理して水分調整した後、水蒸気の存在下マイクロ波加熱して養生固化した後、後乾燥する工程を経る水蒸気養生固化体の製造方法であって、前記の養生固化が、前記前乾燥処理をして得られた半固化体を大気圧下100℃以下の水蒸気の存在下、2時間以内マイクロ波照射することにより固化体の温度を一定に2時間以内保持することであることを特徴とする方法。
- 珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水および水酸化アルカリを混練した混合原料の成形体を前乾燥処理して水分調整した後、水蒸気の存在下マイクロ波加熱して養生固化した後、後乾燥する工程を経る水蒸気養生固化体の製造方法であって、前記の前乾燥および/または後乾燥工程が、空気送風下マイクロ波照射して乾燥する工程であることを特徴とする方法。
- 前記の前乾燥処理は、60℃以下で水分含量10〜15%の半固化体になるようにする処理である請求項1または2の水蒸気養生固化体の製造方法。
- 前記の後乾燥工程は、水蒸気の存在下マイクロ波加熱して養生固化した後、開放して乾燥する工程である請求項1または3の水蒸気養生固化体の製造方法。
- 前記の後乾燥工程は、100℃以下の温度で2時間以内乾燥するする工程である請求項4の水蒸気養生固化体の製造方法。
- 前記の前乾燥および/または後乾燥工程が、空気送風下マイクロ波照射して乾燥する工程であることを特徴とする請求項1または3の水蒸気養生固化体の製造方法。
- 前記の前乾燥工程が、60℃以下の空気を送風しながら固化体の温度を60℃以下に保持し、2時間以内マイクロ波照射して乾燥する工程である請求項3または6の水蒸気養生固化体の製造方法。
- 前記の後乾燥工程が、100℃以下の空気を送風しながら固化体の温度を100℃以下保持し、30分以内マイクロ波を照射して乾燥する工程である請求項3,6または7の水蒸気養生固化体の製造方法。
- 請求項1ないし8のいずれかの方法により製造した水蒸気養生固化体。
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