JP2009155134A - オートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法および窯業系建材の製造方法 - Google Patents

オートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法および窯業系建材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オートクレーブ養生により珪酸カルシウム水和物の生成反応を効率的に進行させることができ、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる水硬性材料を得ることが可能なオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法および窯業系建材の製造方法を提供する。
【解決手段】クリンカ原料を焼成して得られたビーライトを主成分とするクリンカ焼成体を、シリカ成分を含有するシリカ供給体と共に混合粉砕して微粉化することにより水硬性材料を得ることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、オートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法および窯業系建材の製造方法に関するものである。
窯業系建材を製造する際には一般に、カルシウムリッチのセメントと共に、シリカ供給体を配合してトバモライト等のC−S−H(CaO−SiO−HO系水和物)を形成させる。このようにシリカ供給体を配合することには、長期強度などの強度を窯業系建材に付与する効果や、窯業系建材の製造時における反応熱を下げる効果があり、多くの窯業系建材においてこの方法が採られている。
セメントとシリカ供給体との反応が効率的に進行するか否かは、両者の混合度合いおよび比表面積に大きく依存する。一般には、すでに調製されている普通セメントに対して、フライアッシュや珪石粉などのシリカ供給体を後から添加し、これらを水と共に混合する手順で成形用のセメント混合物を得ている。
また、近年における窯業系建材の製造においては、セメントとシリカ供給体との反応を促進させるために高温高圧下のオートクレーブ養生を施すことが一般的になっている(特許文献1、2参照)。オートクレーブ養生を施すことにより、窯業系建材をより高強度化し、かつ安定化することができる。このオートクレーブ養生を利用した窯業系建材の製造においても、セメントとして、従来と同様に常温で硬化が進行する普通セメントが一般に用いられている。
特開2001−247349号公報 特開2000−264697号公報
しかしながら、セメントは接水後に早期に水和反応が始まり、これによりその構成材であるクリンカ表面が水和生成物で覆い尽くされてクリンカとシリカ供給体との反応を妨害し、その結果として最終製品としての窯業系建材の強度増加を妨げるという問題点があった。
さらに、セメントとして一般に汎用されている普通セメントはその構成材であるクリンカにエーライトを多く含む常温硬化に適したものであるため、オートクレーブ養生前の初期段階でクリンカとシリカ供給体との反応が過度に進行してクリンカ表面をC−S−Hが覆い、却ってオートクレーブ養生時におけるクリンカとシリカ供給体との反応を妨げる場合がある。そのため、オートクレーブ養生前の養生条件や水硬性材料の組成条件などが厳格に要求されていた。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、オートクレーブ養生により珪酸カルシウム水和物の生成反応を効率的に進行させることができ、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる水硬性材料を得ることが可能なオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法および窯業系建材の製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、本発明のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法は、クリンカ原料を焼成して得られたビーライトを主成分とするクリンカ焼成体を、シリカ成分を含有するシリカ供給体と共に混合粉砕して微粉化することにより水硬性材料を得ることを特徴とする。
第2に、上記第1のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法において、クリンカ焼成体は、30〜80質量%のビーライトおよび20質量%以下のエーライトを含有することを特徴とする。
第3に、上記第1または第2のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法において、シリカ供給体は、フライアッシュ、珪石、シリカヒューム、スラグ、シラス、珪藻土、またはガラス粉であることを特徴とする。
第4に、上記第1または第2のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法において、シリカ供給体は、窯業系建材の廃材であることを特徴とする。
第5に、上記第1ないし第4のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法において、シリカ供給体は、400℃以上の温度で熱処理されたものであることを特徴とする。
第6に、上記第1ないし第4のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法において、シリカ供給体は、pH12以上のアルカリ水溶液で浸漬処理されたものであることを特徴とする。
第7に、上記第1ないし第4のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法において、シリカ供給体は、水熱処理されたものであることを特徴とする。
第8に、本発明の窯業系建材の製造方法は、上記第1ないし第7のいずれかのオートクレーブ成形用水硬性材料と、水とを含有するセメント混合物を成形してセメント硬化体を得る工程と、セメント硬化体をオートクレーブ養生する工程とを含むことを特徴とする。
上記第1の発明によれば、クリンカ焼成体の粉砕時にシリカ供給体を共存させて混合粉砕するようにしたので、水硬性材料中にシリカ供給体が均一に分散されると共に、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着する。そのため、水硬性材料の接水後に早期に始まる水和反応によりセメント表面に形成される水和生成物に起因する、クリンカとシリカ供給体との反応妨害を有効に抑制し、クリンカとシリカ供給体とを効率良く反応させることができる。
さらに、クリンカとして、常温では比較的反応が進行しにくいビーライトを主成分とするものを用いたので、オートクレーブ養生前の初期段階においてクリンカとシリカ供給体との反応が過度に進行してクリンカ表面をC−S−Hが覆うことによる、クリンカとシリカ供給体との反応妨害を有効に抑制し、一方、高温高圧下のオートクレーブ養生によって、物理吸着したクリンカとシリカ供給体との間で効率良く反応を進行させることができる。その結果として、オートクレーブ養生時において、クリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との間で珪酸カルシウム水和物の生成が効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第2の発明によれば、主成分である特定量のビーライトと共に、特定量のエーライトを含有するクリンカ焼成体を用いているので、上記第1の発明の効果に加え、オートクレーブ養生前の初期段階、たとえば常温養生時や蒸気養生時などにおいて、常温でも比較的反応性が高いクリンカのエーライトと、シリカ供給体のシリカ成分との反応によりある程度の強度が発現し、窯業系建材の骨格形成の強度を得ることができる。一方、常温では反応性が低いクリンカのビーライトと、シリカ供給体のシリカ成分との反応は、これらが物理吸着した状態で比較的ゆっくりと進行する。そして、その後の高温高圧下におけるオートクレーブ養生により、物理吸着したクリンカとシリカ供給体との間で、クリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応が効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第3の発明によれば、シリカ供給体としてシリカリッチな特定の材料を用いているので、上記第1および第2の発明の効果に加え、クリンカ焼成体をこれらのシリカ供給体と共に混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着し、接水後、特にオートクレーブ養生時におけるクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応が効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第4の発明によれば、シリカ供給体として窯業系建材の廃材を用いているので、上記第1および第2の発明の効果に加え、クリンカ焼成体をシリカ供給体としての窯業系建材の廃材と共に混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着し、接水後、特にオートクレーブ養生時におけるクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応がさらに効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第5の発明によれば、シリカ供給体として400℃以上の温度で熱処理したものを用いているので、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、クリンカ焼成体をこのシリカ供給体と共に混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着し、接水後、特にオートクレーブ養生時におけるクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応がさらに効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第6の発明によれば、シリカ供給体としてpH12以上のアルカリ水溶液で浸漬処理したものを用いているので、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、クリンカ焼成体をこのシリカ供給体と共に混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着し、接水後、特にオートクレーブ養生時におけるクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応がさらに効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第7の発明によれば、シリカ供給体として水熱処理したものを用いているので、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、クリンカ焼成体をこのシリカ供給体と共に混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着し、接水後、特にオートクレーブ養生時におけるクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応がさらに効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
上記第8の発明によれば、上記のオートクレーブ成形用水硬性材料を用いたセメント硬化体をオートクレーブ養生しているので、物理吸着したクリンカとシリカ供給体との間で効率良く反応が進行し、その結果として、クリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との間で珪酸カルシウム水和物の生成が効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるクリンカ焼成体は、クリンカ原料を焼成して得られるものであり、ビーライトを主成分として含有している。クリンカ焼成体を構成する主要な化合物は、エーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相の4種類である。
エーライト(CS)は化学組成3CaO・SiOを有する珪酸カルシウムであり、ビーライト(CS)は化学組成2CaO・SiOを有する珪酸カルシウムである。これらは、微量のアルミニウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、マンガンなどを含有している。
アルミネート相(CA)は化学組成3CaO・Alを有し、フェライト相(CAF)は化学組成4CaO・Al・Feを有しており、これらは少量のシリカ、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどを含有している。これらは2種類の珪酸カルシウムであるエーライトおよびビーライトの隙間を埋めるように存在することから間隙相とも呼ばれている。
クリンカ原料とその焼成温度は、得ようとするクリンカ焼成体におけるC、S、A、Fの各成分が所望の比率となり、エーライトやビーライトなどの含有量が所望の比率となるように選択される。クリンカ原料としては普通セメントのクリンカ原料として用いられている各種のものが使用でき特に制限はないが、一例としては炭酸カルシウム(石灰石)、粘土や外装材の廃材などのシリカ系材料、酸化鉄などを調合したものを用いることができる。
クリンカ原料は、たとえば原料粉砕機にて所定粒度まで粉砕した後、ロータリーキルンなどにより焼成される。焼成温度はクリンカ原料などにもよるが一例としては1400℃程度である。この焼成工程では、クリンカ原料は徐々に化学変化し、水硬性をもった化合物の集まりであるクリンカ焼成体となる。
クリンカ焼成体におけるビーライトの含有量は、好ましくは30〜80質量%であり、エーライトの含有量は、好ましくは0〜20質量%である。ビーライトの含有量を適切な範囲とすることにより、オートクレーブ養生時に大幅に強度が発現する。また、エーライトの含有量を適切な範囲とすることにより、オートクレーブ養生前の初期段階、たとえば常温養生や蒸気養生などにおいて、常温でも比較的反応性が高いクリンカのエーライトと、シリカ供給体のシリカ成分との反応により強度が発現し、窯業系建材の骨格形成の強度を得ることができる。
ビーライトは、β型が一般的であるが、これとは結晶構造の異なるα型およびα’型のビーライトを含有するクリンカ焼成体を用いることもできる。
クリンカ焼成体は一般に、仕上げ工程として所定の粒度に粉砕処理されるが、本発明ではこの粉砕処理時に、接水後にクリンカと反応するシリカ供給体を同時に加えて混合粉砕する。
クリンカ焼成体とシリカ供給体との混合粉砕は、たとえばボールミルなどの混合装置を用いて行うことができ、混合粉砕は、粒度がJIS R 5201に準拠したブレーン比表面積で5000cm/g以上、より好ましくは5000〜9000cm/gとなるまで行うことが好ましい。当該範囲内の粒度まで混合粉砕することによって、高い水硬性能を有するオートクレーブ成形用水硬性材料の粉末とすることができる。
混合粉砕時におけるクリンカ焼成体に対するシリカ供給体の混合比率(シリカ供給体/クリンカ焼成体)は、質量比で好ましくは30/70〜70/30である。混合比率を当該範囲内とすることで、混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが十分に物理吸着し、接水後、特にオートクレーブ養生時におけるクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との珪酸カルシウム水和物の生成反応が効率的に進行し、最終製品としての窯業系建材の強度を大幅に高めることができる。
本発明は、クリンカとシリカ供給体とが効率良く反応することを目的として、クリンカ焼成体の粉砕処理時にシリカ供給体を共存させることで、長期強度の発現に有利なビーライトとシリカ供給体との物理的吸着を促進したことを特徴としている。このオートクレーブ成形用水硬性材料を使用した場合には、初期強度の発現は比較的少ないが、オートクレーブ養生によってビーライトが反応し、強度発現に大きく影響する珪酸カルシウム水和物の生成を促進することで長期強度が発現し、窯業系建材の最終強度に対して顕著な効果を発揮する。
シリカ供給体の具体例としては、フライアッシュ、珪石、シリカヒューム、スラグ、シラス、珪藻土、ガラス粉、窯業系建材の廃材などが挙げられる。これらはシリカリッチな材料であり、クリンカ焼成体をこれらのシリカ供給体と共に混合粉砕することにより、クリンカとシリカ供給体とが物理吸着し、接水後の反応によりC−S−Hの形成が促進される。
なお、シリカ供給体は、シリカ成分以外の成分を含有していてもよく、シリカ成分は結晶性、非結晶性のいずれであってもよい。
シリカ供給体として用いられる窯業系建材の廃材の具体例としては、新築現場の端材、生産工場の端材、使用済みの建築解体後の廃材などを挙げることができ、瓦や外装材など各種の窯業系建材を用いることができる。
窯業系建材の廃材は、シリカ供給体とクリンカとが既に反応し、蒸気養生やオートクレーブ養生が施された後、外気に曝されて炭酸化、風化したものであるため、これに含有されるシリカ成分には様々な刺激が加わっており、バージン材料よりも表面が活性化されて反応性が高いものとなっている。
シリカ供給体としては、反応性を高めるための表面処理を施したものを用いるのが好ましい。このような表面処理の具体例としては、熱処理、アルカリ水溶液での浸漬処理、水熱処理などが挙げられる。
シリカ供給体の熱処理は、400℃以上、好ましくは600℃以上の温度で行われる。シリカ供給体を400℃以上の温度で熱処理することにより、シリカ成分が保持していた有機成分などの不純物や結晶水が飛散除去され、シリカ供給体の比表面積を増加させることができる。その結果として、シリカ供給体の比表面積を増加させることによりシリカ供給体の表面活性度が向上する。また、不純物が除去されるので、セメント硬化体のオートクレーブ養生時においてシリカ供給体のシリカ成分とクリンカのビーライトとをより近接させ反応性を高めることができる。
また、シリカ供給体を600℃以上の温度で熱処理したものを用いることにより、セメント硬化体にオートクレーブ養生を施すことで窯業系建材の強度をさらに高めることができる。これは、600℃以上の温度での熱処理によりシリカの結晶構造がα型から高温安定型であるβ型になり、冷却後にそのままの結晶構造を保持するとポテンシャルエネルギーが高い状態になりさらに反応性が高くなることによるものと考えられる。
シリカ供給体の熱処理温度は、性能面では特に上限はなく、溶融する温度に加熱してから冷却するようにしてもよい。
熱処理のためにシリカ供給体を加熱する方法の具体例としては、電気炉による加熱、キルンなどの直火による加熱、高周波やマイクロ波による水分またはその他の物質からの誘導加熱などが挙げられる。
シリカ供給体のアルカリ水溶液での浸漬処理は、シリカ供給体をpH12以上、好ましくはpH12〜14のアルカリ水溶液で浸漬処理して行われる。シリカ供給体をpH12以上のアルカリ水溶液で浸漬処理することにより、シリカ供給体が含有しているシリカ成分の一部や、有機成分などの不純物が加水分解や溶解により溶出する。
その結果として、シリカ供給体の比表面積を増加させることができ、これによりシリカ供給体の表面活性度が向上する。また、不純物が除去されるので、オートクレーブ養生時においてシリカ供給体のシリカ成分とクリンカのビーライトとをより近接させ反応性を高めることができる。さらに、シリカ成分の一部が溶出して結晶構造が緩むことにより反応性が向上する。
シリカは耐アルカリ性が弱く、pH12以上の浸漬処理により上記の効果が顕著に発現する。
シリカ供給体の水熱処理には、典型的には媒体として水が用いられるが、水に極性が近いアルコール類などを媒体として用いてもよい。また、酸やアルカリを触媒として用いてもよい。
水熱処理は、温度と湿度(水)と圧力を与えて処理するものであり、一般的なオートクレーブによる処理が挙げられるが、水などの媒体が亜臨界状態または超臨界状態となる高温高圧下にて行うことが好ましい。媒体として水を用いる場合、亜臨界状態には、水の温度および圧力が水の臨界点(臨界温度374.4℃、臨界圧力22.1MPa)以下であって、かつ、温度が140℃以上で圧力が飽和蒸気圧(140℃では0.36MPa)を超える状態が含まれる。
水が高温高圧の亜臨界状態または超臨界状態に達すると、シリカ供給体の加水分解を大幅に促進し、さらに極性も溶剤と同程度まで近づくために、シリカ供給体が含有しているシリカ成分の一部や、有機成分などの不純物が加水分解や溶解、あるいは熱分解により溶出する。
その結果として、シリカ供給体の比表面積を増加させることができ、これによりシリカ供給体の表面活性度が向上する。また、不純物が除去されるので、セメント硬化体のオートクレーブ養生時においてシリカ供給体のシリカ成分とセメントのカルシウム成分とをより近接させ反応性を高めることができる。さらに、シリカ成分の一部が溶出して結晶構造が緩むことにより反応性が向上する。
以上のシリカ供給体と共にクリンカを混合粉砕したオートクレーブ成形用水硬性材料を用いて窯業系建材を製造する際には、先ず、オートクレーブ成形用水硬性材料と、水とを含有する成形用のセメント混合物を調製する。このセメント混合物には、その他の構成材料、たとえば珪石、フライアッシュ、ミクロシリカワラストナイト、マイカ、バーミキュライト、パルプ、化学繊維、金属繊維、軽量化骨材、石膏などのフィラー材を配合することができる。
また、上記のオートクレーブ成形用水硬性材料と共に、他のセメントを併用して成形してもよい。たとえば、ビーライトリッチのクリンカを使用した場合には初期の強度発現が少ないことが懸念されるので、エーライトリッチの普通セメントを併用して初期強度を補うようにしてもよい。
また、セメント混合物には、増粘剤、凝集剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤などの添加剤を配合することができる。
セメント混合物は、オートクレーブ成形用水硬性材料および、必要に応じて上述したような他の構成成分を配合し、これらを水と混合した液状物または粘性の高い流動体として調製することができる。なお、水以外の配合成分同士の配合順序、水とこれらの配合成分との混合順序は特に限定されるものではなく場合に応じて適切に変更すればよい。
次いで、得られたセメント混合物を成形する。成形法の具体例としては、押出法、抄造法、注型法などを挙げることができ、これらはプレスなどと組み合わせてもよい。
押出法では、予め混練などを行ったセメント混合物をスクリューなどで金型より押し出し、ロールやプレスで模様付けをする。
抄造法は、水中にオートクレーブ成形用水硬性材料などの必要成分を分散させたセメント混合物を紙透きと同じようにフェルトなどで抄き上げて製造するものであり、プレスやロールで模様付けをする。
注型法では、セメント混合物を模様付けした金型に流し込み硬化促進剤を利用して硬化させる。一般に注型法や押出法は厚物を対象とし奥深い柄付けが可能であるのに対し、抄造法は薄物で生産性が優れること、すなわち生産速度が速いことに特徴を有している。
成形により得られたセメント硬化体は、典型的には一旦常温養生や蒸気養生などが施され、ある程度の強度が確保されてからオートクレーブ養生が施される。蒸気養生は、たとえば60〜100℃の温度で10〜30時間の間行われる。
オートクレーブ養生では、セメント硬化体に温度と圧力を同時に加えてクリンカのビーライトとシリカ供給体のシリカ成分との反応を一気に進行させることで、短時間で最終強度に近いところまでの強度発現が得られる。オートクレーブ養生は、たとえば160〜200℃、6〜15kg/cm、2時間〜24時間の条件で行うことができる。
窯業系建材は、強度、防音、耐火、断熱性などに優れていることから、外壁や屋根などの外装材として外廻りに多く使用されており、本発明を適用可能な窯業系建材の具体例としては、パルプなどの有機繊維で補強された外壁材や瓦などの珪酸カルシウム板、ALC、その他のコンクリート品などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記において「%」は特に言及しない限り質量%を表す。
表1に示す配合に従ってセメント混合物を調製した後、成形してセメント硬化体とし、セメント硬化体に対して共通の条件にて養生を施し窯業系建材を製造した。
[セメント混合物の調製]
実施例1〜5のクリンカは次の手順で製造した。まず所望のシリカ系材料にCa原料(炭酸カルシウム)、Fe原料などを添加してC/(S+A+F)=1.56、S/(A+F)=2.65、A/F=1.86とした配合で、1400℃で30分間焼成し、反応を完結させた後に急冷しクリンカ焼成体を得た。このような所定の条件下とすることで、表1に示すようにビーライト70%以上のビーライトリッチのクリンカ焼成体を合成することができ、これを実施例1〜5のベースクリンカとして使用した。
実施例1〜5では、クリンカ焼成体70%に対してシリカ供給体を30%加えて混合粉砕することにより水硬性材料を得た。混合粉砕は、容量500ccの容器にステンレスボール(径20mm)20個と共にクリンカ焼成体とシリカ供給体との混合物150gを入れて、250rpmで30分間、遊星型ボールミルにより行った。この混合粉砕により、粒度がブレーン比表面積で5000cm/g以上の水硬性材料を得た。
シリカ供給体として、実施例1ではバージンのFA(フライアッシュ)、実施例2ではバージンのFAをNaOH水溶液(1N)に24h浸漬した後、濾過および乾燥処理を行ったもの、実施例3ではバージンのFA20gに対して水13.5gを混合したスラリーを230℃、2.8MPaの条件で水熱処理した後、濾過および乾燥処理を行ったもの、実施例4では外装材廃材(微粉砕スクラップ材)について100μm篩い分けを数回行い有機成分を除去したもの、実施例5では外装材廃材を600℃で2時間熱処理(焼成)することにより、有機成分を除去すると共に脱水処理したものを用いた。
比較例1では、シリカ供給体を配合せずに、実施例1〜5で用いたクリンカのみを粉砕混合することにより水硬性材料を得た。また比較例2では、市販の普通セメントのみを使用し実施例で使用した水硬性材料を配合しなかった。
[セメント硬化体の成形]
パルプに十分な水を加えてミキサーで1分間解繊した後、普通セメント、水硬性材料、フライアッシュ、および珪石粉を表1に示す所定割合で配合した。ここで、実施例1〜5と、比較例1、2との間でシリカの比率を―定とするために、実施例で使用した水硬性材料内のシリカの重量分(30%)を考慮して実施例1〜5では水硬性材料を多く配合し、その分フライアッシュ量を減量することで調整した。
次いで、800gの原料に対して固形分濃度8%になるように水を加えて10Lの水中にて十分に攪拌し均一なスラリー状のセメント混合物を得た。
その後、余分な水を濾液が出なくなるまで吸引濾過し、次いで30kgf/cmでプレス成形することによりさらに脱水して厚み約12mmのシート状のセメント硬化体を作製した。
次いでこのセメント硬化体に対して80℃、24hの蒸気養生を施した。さらにその後、180℃、6h保圧でオートクレーブ養生を施し、窯業系建材を得た。
[曲げ強度試験]
上記の実施例1〜5と、比較例1、2の窯業系建材を、曲げ強度試験用に160×40mmサイズにランニングソーで正確に切断し、曲げ試験用サンプルを得た。
曲げ強度は、曲げ試験用サンプルを以下の条件のもとで実施した3点曲げ強度であり、以下の式で計算される。
試験条件:スパン100mm
サンプルサイズ(縦×横×厚み):160×40×12mm
試験速度:2mm/min
曲げ強度:k=3×s×m/(2×h×w^2
k:曲げ強度(MPa)
m:曲げ破壊荷重(N)
s:スパン(mm)
h:幅(横寸法)(mm)
w:厚み(mm)
曲げ強度の試験結果を表1に示す。
Figure 2009155134
表1より、ビーライトを主成分とするクリンカと、シリカ供給体のフライアッシュとの粉砕混合物である水硬性材料を用いた実施例1では、シリカ供給体を配合しない水硬性材料を用いた比較例1に比べて蒸気養生後の強度が上がり、オートクレーブ養生後の最終強度も比較例1と同等以上になった。セメント量は比較例1と同じであるので、これはシリカ供給体のフライアッシュを加えた効果と考えられる。
シリカ供給体のフライアッシュをアルカリ水溶液で浸漬処理した実施例2、水熱処理した実施例3では、それぞれ未処理のシリカ供給体を用いた実施例1に比べて強度増加が見られ、オートクレーブ養生後の強度は比較例1、2に比べても上回る結果となった。特に、水熱処理(230℃、2.8MPa:亜臨界状態)を施した実施例3では、フライアッシュの活性化が進行し、ビーライトとシリカの反応が進んだものと考えられる。
また、シリカ供給体として外装材廃材の微粉砕物を用いた実施例4では、初期強度も普通セメントを使用した比較例2に比べても大きな減少はなく、オートクレーブ養生後の強度は比較例1、2に比べて有意に増加した。また、実施例1に比べても強度の増加が見られた。これは、シリカ供給体である外装材廃材は、廃材になるまでの過程において、セメント硬化反応、オートクレーブ養生による水熱処理、風化、炭酸化などを経ているため活性化されて反応性が高いものとなっていることから、ビーライトとシリカとの反応が促進されたことによるものと考えられる。
実施例4においてさらに電気炉にて600℃で熱処理を施した実施例5では、曲げ強度は実施例4よりもさらに向上し、比較例1、2に比べても20%以上の強度増加が見られた。この熱処理は、不要な有機成分が酸化して二酸化炭素として気中に拡散し、水和生成物の結晶水も一部脱離することを期待したものであり、この熱処理により、ビーライト成分との物理的距離が小さくなり、また比表面積が大きくなったと考えられる。その結果として、ビーライトとシリカとの反応が効率良く進行したと考えられる。
一方、クリンカ焼成体の粉砕時にシリカ供給体を配合しなかった比較例1では、普通セメントのみを用いた比較例2に比べて、ビーライトを主成分とする水硬性材料を含有していることから蒸気養生後の強度発現が小さかった。また、オートクレーブ養生後の結果は、比較例2よりも強度増加量が大きいものの、最終的な絶対値(製品強度)としては、比較例2に若干劣る結果となった。これはビーライトの特性、すなわち初期強度の発現が少ないことが反映された結果と考えられる。

Claims (8)

  1. クリンカ原料を焼成して得られたビーライトを主成分とするクリンカ焼成体を、シリカ成分を含有するシリカ供給体と共に混合粉砕して微粉化することにより水硬性材料を得ることを特徴とするオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  2. クリンカ焼成体は、30〜80質量%のビーライトおよび20質量%以下のエーライトを含有することを特徴とする請求項1に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  3. シリカ供給体は、フライアッシュ、珪石、シリカヒューム、スラグ、シラス、珪藻土、またはガラス粉であることを特徴とする請求項1または2に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  4. シリカ供給体は、窯業系建材の廃材であることを特徴とする請求項1または2に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  5. シリカ供給体は、400℃以上の温度で熱処理されたものであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  6. シリカ供給体は、pH12以上のアルカリ水溶液で浸漬処理されたものであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  7. シリカ供給体は、水熱処理されたものであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料の製造方法。
  8. 請求項1ないし7いずれか一項に記載のオートクレーブ成形用水硬性材料と、水とを含有するセメント混合物を成形してセメント硬化体を得る工程と、セメント硬化体をオートクレーブ養生する工程とを含むことを特徴とする窯業系建材の製造方法。
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