JP4554735B2 - ラウリン油から不飽和脂肪アルコールを製造する方法 - Google Patents

ラウリン油から不飽和脂肪アルコールを製造する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラウリン油から不飽和脂肪アルコールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飽和脂肪アルコールに比べて、不飽和脂肪アルコールは、比較的に少量でしか製造されない。しかし不飽和脂肪アルコールは、その特別の性質のゆえに、石油化学誘導体又は界面活性剤のための重要な中間体であり、これらは化粧品業界及び医薬業界のような分野でもそのまま使用される。不飽和脂肪アルコールの誘導体は化粧品- 及び医薬分野でも使用されるが、主に工業部門で、たとえば助剤又は潤滑剤の成分として、あるいは洗剤中にも使用される。これらは不均一触媒処理によって天然の原料から工業的に専ら製造される。この際この原料は特定の不飽和の最終生成物に対して特異的に選択される。それ故に鎖長スペクトルの重要な部分が原料中に予め存在する。たとえば獣脂及びラード並びに種々の濃縮法でラードから製造された工業用オレフィンが長い間、そしてまだ一部が不飽和脂肪アルコールの製造用原料である。他の原料は、比較的高いヨウ素価を有する種々の植物油、たとえば菜種油、ひまわり油、パーム核油及び綿実油である。
【0003】
植物性原料、たとえば低いヨウ素価を有するオイル、いわゆるラウリン類は、数年来不飽和脂肪アルコールの製造にも使用されてきた。動物性原料に比べて、この油は優れた感覚特性、たとえば臭い及び色を有する。その貯蔵安定性は、N- 含有副生成物の比較的僅かな割合のゆえにより一層長くなる。そしてこれらは精製される粗物質中に比較的僅かな着色不純物を有する。ラウリン油の場合、不飽和成分は、C18- 鎖長範囲でほとんど専ら存在する。それによってその濃厚化を可能にする。
【0004】
工業的実施に於て、従来不飽和脂肪アルコールの3つの製造は実質上区別される。これらは種々の原料又は中間体が有用であるので、同時に重要になっている。
(1)トリグリセリドを直接水素化して不飽和脂肪アルコール及びグリセリンのいくつかの分解生成物、特に1,2- プロパンジオールとする。この処理は、顕著な欠点:グリセリンを分解すること及び処理で生じる分解生成物を洗滌又は抽出によって除去しなければならないことを有する。更に、炭化水素をより多量に生じ、複雑な分別処理で分離しなければならない。
(2)油又は脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解し、グリセリンを分離し、脂肪酸を低級アルコール、たとえばメタノール又はブタノールでエステル化し、対応するエステルが得られ、次いでこのエステルを、エステル化に使用されたアルコールを遊離しながら水素化して不飽和脂肪アルコールとする。このアルコールを再循環することができる。この方法は多数の工程及びこれらの工程中の蒸留による精製の必要性のゆえに比較的費用がかかる。全工程は技術的及び経済的にもこれらの工程によって複雑化される。
(3)種々の方法に従って油及び脂肪をメタノールと均一又は不均一触媒を用いてエステル交換して、メチルエステルが得られ、次いでこのメチルエステルをメタノールの回収及び再循環下に水素化して、不飽和脂肪アルコールが得られる。
【0005】
変法1によれば、油の脂肪酸スペクトルによって予め決定された組成又は選択、部分的水素化又は結晶化によって僅かに影響され、そしてより広範囲な変化がアルコールの段階でのみ可能である組成を有する、不飽和脂肪アルコールが得られるが、変法2及び3で生じる原料の変化を、分離脂肪酸、蒸留脂肪酸、メチルエステルの前段階で及びアルコール段階で行うことができる。
【0006】
不飽和脂肪アルコールを製造するのにラウリン油を使用することは、たとえばドイツ特許公開第4335781号公報及びドイツ特許4,425,180号明細書から公知である。ラウリン油は、C12〜C14の範囲でそのC- 鎖分布の重要点を有する。そして不飽和成分は、その濃厚化を可能にするC18鎖長範囲中にほとんど専ら存在する。
【0007】
ドイツ特許公開第4,335,781号公報には、ラウリン油からヨウ素価20〜110を有する不飽和脂肪アルコールの製造方法が記載されている。この方法によれば、原料中に含有されるトリグリセリドを加圧分解によって脂肪酸に分解し、場合によりメタノールでエステル化するか又は、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルへ変える。次いで脂肪酸又は脂肪酸メチルエステルを水素化して、脂肪アルコールとする。脂肪酸、脂肪酸メチルエステル及び(又は)水素化生成物を最後に分別する。分別する前に、分別されるべき生成物のヨウ素価を測定し、特定量の初期留出物を測定されたヨウ素価及び所望のヨウ素価に基づき分別の際に取り出す。これによって脂肪アルコールのヨウ素価は増加する。この処理の欠点は、費用のかかる分別を必要とし、種々の多段フラクションが生じ、このために限られた範囲でしか使用することができないことである。更にC18- 範囲で、C18:0とC18:1成分を蒸留によって分離することができないので、一定のヨウ素価しか調整することができない。この処理は、極めて費用がかかり、結果として不経済である。
【0008】
ドイツ特許第4,425,180号明細書に記載された方法では、ラウリン油を脂肪酸とグリセリンに分解する。この様にして得られた分離脂肪酸を分別結晶し、次いで場合により不飽和脂肪酸のフラクションをメチルエステルにエステル化するか又は最後的に水素化してヨウ素価85〜100を有する不飽和脂肪アルコールとする。この様な脂肪アルコールは、極めて良好な色及び臭い特性を有し、特別に有利な冷間挙動によって特徴づけられる。この処理に必要な飽和及び不飽和脂肪酸を分離する工程は、いわゆる“再湿潤”分離によって行うのが好ましい。この分離は獣脂脂肪酸をステアリン及びオレインに分離することから公知である。再湿潤による獣脂脂肪酸の分離では、工業用脂肪酸混合物を低温度に冷却し、この際パルミチン/ステアリン酸の結晶化を分散液の形成下にオレイン酸中で行う。オレイン酸を結晶から洗滌除去するために、分散液に湿潤剤水溶液、界面活性剤を添加することが必要である。
【0009】
最後に分離器中でエルマジョン/分散液を遠心分離して、これをオレイン酸層と水/飽和脂肪酸分散液に分離する。次いで再循環される湿潤剤水溶液から溶融されたパルミチン/ステアリン酸を分離するために、脂肪酸分散液、パルミチン/ステアリン酸水分散液を、約50〜80℃に加熱しなければならない。
【0010】
処理工程(a)に従って得られた分離脂肪酸の分別結晶を再結晶するための再湿潤化分離処理工程は、極めて時間がかかり、装置の点で更なる費用が必要である。このことは最終生成物が著しく高価なものになる。更にラウリン油から再湿潤化による分離脂肪酸の分離を使用する場合、ラウリン油の組成のゆえに区別された固化範囲を有する,多量の過剰飽和脂肪酸を多数の処理工程で分離しなければならない。
【0011】
80〜90%飽和C12- C18- 脂肪酸の高含量を再湿潤による分離の代りに、有機溶剤を用いて分別結晶して分離することもできる。獣脂脂肪酸の場合のようにこの場合も通常使用される溶剤、たとえばメタノール、メタノール/水、アセトン又はヘキサンは、高度な希釈と共に結晶化処理温度≦0℃を必要とする。この処理は、極めて費用がかかり、溶剤の取扱い及び再循環のための装置に多くの費用を必要とする。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、下記のようなラウリン油から不飽和脂肪アルコールを製造する方法を見い出すことが課題である。その方法は、極めて経済的に実施することができ、再湿潤分離の処理工程を目的生成物の品質に悪影響を与えることなく除くことができる。
【0013】
【課題を解決する手段】
この課題は、本発明によれば請求項1に特定された特徴によって解決される。
その処理の変法は請求項2〜9に示される。
【0014】
ラウリン油は、洗剤工業用の天然の飽和C12- C18- 脂肪アルコールの主要な原料ベースを生じる。この油はC18- 成分の最適の使用を可能にし、この成分はヤシ油の場合、約11%になり、パーム核油の場合約20%になる。このフラクションは不飽和脂肪アルコールの製造に特に適当である。パーム核油及びヤシ油を主体とするC18- フラクションの種々の組成は、2つの油が基本的に適当であるが、パーム核油C18- フラクションが不飽和脂肪アルコールに最適であるという事実を生じる。というのはこのフラクション中で、割合C18:0、C18:1、C18:2、C18:3が選択的水素化に及び不飽和脂肪アルコール中で最終生成物の性質に特に好ましい。
【0015】
ラウリン油から不飽和脂肪アルコールを製造する処理法は次の通りである:
(a)エステル交換
原料の脱酸後のラウリンとメタノールのエステル交換は、大規模で調節される処理である。グリセリンに加えて、この処理は油中で行われるメチルエステルの鎖長分布を生じる。
(b)分別
6 〜C10- MEの初期留出物成分を先ず分離し、次いで飽和脂肪アルコール用C12- C16- ME成分を分離する。沸点の相異のゆえに、C18- 成分の全割合96%を有するC18- MEフラクションを集める。この際より短い鎖を有するメチルエステルはより高い費用を招く費用のかかる選択的水素化を定量的に行う必要がないことが経済的に有利である。
(c)C18- ME- フラクションの脱ロウ
18- ME- フラクションの脱ロウを、好ましくは一工程で、しかし数工程でも温度を−10℃〜+5℃の温度に下げ、この範囲で結晶フラクション──このフラクションは10%〜25%の大きさの程度で飽和メチルエステルを含有する──を生成し、次いで適当なフィルターを介してこれを分離することによって、溶剤の不在下に行う。このME結晶フラクションの残存ヨウ素価に応じて、このフラクションを引き続き誘導体に変換するか又は好ましくは飽和脂肪アルコールに移行させる。ラウリン類に使用される、すべてのテストされた結晶化処理のうち、C18- MEの1つはもっとも好ましい方法で進行するものである。というのは短い滞留時間の後、容易に濾過できる固形粒子を有する結晶ペーストを生じ、これを更に問題を生じることなく処理することができるからである。この理由から、この工程に対する装置として加熱可能な、攪拌器を備えた結晶化容器、次いで簡単な濾過処理、たとえばスクリーン又はベルトフィルターを用いる処理が十分である。好ましいパーム核油を使用する場合、C18- ME含量96.5−98.5%のC18- MEフラクションを、分別によって製造し、飽和メチルエステル含量、主に脱ロウ工程の濾液中でC18:0- ME含量を約10〜13%から1〜4%に濃厚化することができる。
【0016】
脱ロウ後に分離された、C18:0- MEの主割合を有する結晶ペーストは、濾液量の約15〜35%であり、ヨウ素価30−50を有する。更なる分離は必要でない。というのは飽和脂肪アルコールを水素化し、これを高度に不飽和の脂肪アルコールと混合して、ヨウ素価範囲40−60を有する不飽和脂肪アルコールを得るために上記ペーストを使用すのが好ましいからである。所望の場合、選択的水素化のこのフラクションが得られ、より低いヨウ素価の不飽和及び飽和脂肪アルコールの対応する混合物を生じる。
【0017】
ヤシ油を使用した場合、極めて不飽和のC18- MEフラクションも得られるが、これはより低い収量を有する。脱ロウによっても行われるC18- MEのその濃度の減少は、濾液中でC18:0- ME残存含量3%〜6%を生じる。
(d)選択的水素化
原則的に公知の条件下で、不飽和ME- フラクションを選択的水素化し、不飽和脂肪アルコールとし、その結果として不飽和脂肪アルコールの最大含量がほんの僅かの副生成物割合を有するシス- 立体配置で得られる。分子中にオレフィン二重結合を十分に維持しながら、カルボキシル基の還元を完了するのに適当である種々の触媒系のうち、成分、たとえばZr、Ba、Alを活性化することで部分的に促進される不均一な酸化亜鉛/酸化クロム系がこの場合好ましい。この様な触媒系は、特に低いトランス含量及び位置異性体の少割合を有する不飽和脂肪アルコールを生じる。連続的に実施される水素化処理の条件は、H2 200〜300バールの圧力と高温度を必要とする。この際種々の温度で触媒床を介するエステルの流動速度は、約0.1〜0.4v/vhの範囲内を変化し、99.0〜99.8%エステルの反応を得ることができる。オレフィン二重結合を維持するために、メチルエステルとH2 の割合もこの触媒系では重要である。この際ME:H2 のモル比<1:60を使用する場合十分な選択性が得られる。
(e)蒸留による精製
生じた副生成物、たとえば飽和及び不飽和炭化水素の少割合及びエステル交換によって生じたロウエステルは、簡単な精製蒸留によって初期留出物(1−2%)又は残留物(1−5%)としてほとんど定量的に分離することができる。
【0018】
上記の順序で処理工程(a)〜(e)の組合せによって、ヨウ素価90〜100を有する不飽和脂肪アルコールが、極めて経済的処理法に従ってラウリン油を主体として得られる。この様にして得られた不飽和脂肪アルコールは、C18- アルコールの混合物を示し、その際オレイルアルコールであるC18:1- フラクションの割合は90%以上である。本発明の処理によれば、ヨウ素価90〜100の粗脂肪アルコールがほぼ次の組成を有するパーム核C18- ME又はヤシC18- MEから得られる。
【0019】
Figure 0004554735
この不飽和脂肪アルコールの凝固点は、5℃〜11℃の範囲内である。
【0020】
この様にして得られたヨウ素価90−100を有する不飽和脂肪アルコールを、適当な他の脂肪アルコールと混合し、特定のヨウ素価範囲を有する不飽和脂肪アルコールが得られる。この範囲は、一般に不飽和脂肪アルコールの使用分野によって決定される。この目的に適する他の脂肪アルコールは、たとえば処理工程(b)で得られたC12- C16メチルエステルフラクションから水素化によって得られた飽和脂肪アルコールである。この際この飽和脂肪アルコールは、更なる分別によってシングルカット(single-cuts) に分解され、そのシングルカットを不飽和脂肪アルコールと混合する。
【0021】
処理工程(c)で得られた脂肪アルコールメチルエステルの濾過ケーキから、選択的水素化によって部分的に不飽和の脂肪アルコールを得ることができる。このアルコールは低いヨウ素価を有する不飽和脂肪アルコールを製造するための混合成分として使用することができる。
【0022】
この処理の経済性は、この処理によって得られた副生成物のこの様な有用な利用によって更に増加される。これに比べて、混合しうる脂肪アルコールを得ることが目的である従来公知の技術に従って副生成物として得られるステアリン酸/パルミチン酸の後処理は、著しく費用がかかる。
【0023】
本発明による方法に従って製造された不飽和脂肪アルコールは、植物油から製造された生成物の有利な性質、たとえば良好な感覚性、すなわち特に良好な色及び臭い特性、良好な貯蔵安定性及び低い凝固点を有する。それ故に、これを一般の使用分野で、たとえば化粧品分野で又は工業技術分野で使用することができ、すなわち一部誘導体の形で、たとえばオキシエチラート、硫酸エステル及びエーテルスルファートとしてたとえば洗剤、工業用洗浄剤又は助剤に対して直接使用することもできる。
【0024】
【実施例】
以下に、本発明を例によって詳述する。
〔例1〕
(a)パーム核油(PKO)からのエステル交換
“RPG”攪拌機、温度計、滴下漏斗冷却器、減圧アダプター及び留出物受器を備えた4リットルガラスフラスコに、市場で入手できる完全なPKO- ラフィネート──これは30分間90℃で約35ミリバールで乾燥されている──2500gを充填し、60℃に冷却し、メタノール695gを先ず加え、次いでNa- メチラート溶液(30%)55gを加える。フラスコ内容物を1時間50℃で攪拌し、次いで分離漏斗に移す。約45分後、上相(粗エステル)2662gと下相(グリセロール、メタノール)560gが分離される。
【0025】
上相を3回飲用水320mlで約50℃で洗滌し、次いで30分間80℃及び約35ミリバールで乾燥する。酸価(AN)=0.06のパーム核油メチルエステル(PKO- ME)(粗製)2395gが得られる。C- 鎖スペクトルは著しくPKOに対応する。
(b)PKO- MEの分別
乾燥PKO- ME2300gを、還流比3:1でワイヤーコイルが詰められたカラムを介して分別する。下記のC18- MEフラクションを155〜170℃の沸騰範囲で0.5ミリバールで分離する:
けん化価(SN)=184.7 ヨウ素価(IN)=83.3 C- 鎖分布:
16=0.4%;C18:0=11.5%;B18:1=80.7%;C18:2=6.4%;C20=0.8%
(c)分別結晶(脱ロウ)
脱ロウのために、壁に沿って移動し、徐々に作動する攪拌器を有するジャケット冷却されたシリンダー状ガラス容器(約200cc容量)を使用する。固体部分を、中程度に硬いフィルターを有する、ジャケット冷却された吸引濾過器で濾過する。フィルター表面積=約35cm2 。フィルター温度は脱ロウ温度に相当する。約30℃でC18- ME150gをこの容器に充填した後、冷却を1分間に約1℃の割合で攪拌下に行い、脱ロウ温度に達した後に結晶化を15〜45分間行う。 +5℃及び攪拌時間15分で分別結晶することによって、IN=27.1及び下記C- 鎖分布を有する13%濾過ケーキをC18- ME- フラクションから分離する:
16=0.5%;C18:0=69.4%;C18:1=27.4%;C18:2=1.6%;C20=1.1%.
濾液割合は次の特有値と共に87.7%である:IN=88.5%,
C- 鎖分布:C16=0.3%;C18:O=3.2%;C18:1=88.5%;C18:2=7.2%;C20=0.8%.
(d)選択的水素化
脱ロウされたC18- MEを、活性化されたZnO Cr2 3 触媒上で連続的に作動する高圧反応器中で選択的に水素化する。水素化条件は次の通りである:285℃、H2 圧240バール;C18- ME0.1v/vh及びC18- MEと
2 のモル比=1:100.
(e)精製蒸留
水素化反応器から得られた廃液──これはメタノール不含である──を、圧力0.5バールで精製蒸留する。この際1.2%初期留出物(FR)を分離する。
蒸留残留物中に3.5%が残存する。得られたC18- UFA- MR(UFA=不飽和脂肪アルコール;MR=主留出物)は、極めて弱い臭いしか有さず、無色である(APHA=10)。カルボニル含量は53mg/kgであり、N2-被覆せずに1ケ月貯蔵後、約10単位までしか増加しないC18- UFA- MRの特有値及びC- 鎖スペクトルは、次の通りである:
AN=0.08;SN=0.5;IN=94.1,OHN(水酸基価)=209.3;H2 O(K.F.)=0.03%(K.F.=カールフィッシャー分析法);SP(=凝固点)=10.1℃;
HC- 含量(=炭化水素)<0.1%.
16=0.2%;C18:0=4.3%;シスC18:1=86.5%;トランスC18:1=3.8%;C18:2=4.3%;C18総量=98.9%;C20=0.9%.
この様にして得られたヨウ素価94.1を有するUFA- MRを、C- 鎖C12,C14及びC16及び夫々少なくとも98%の純度──いわゆるシングルカット─を有する飽和脂肪アルコール(SFA)と混合して、低ヨウ素価を有する不飽和脂肪アルコール(UFA)が得られる:
−UFA1:IN=72.5;OHN(水酸基価)=214.9;SP=19.8℃,0.3% C12+2.7% C14+20.0% C16+77.0% C18 UFA- MRからなる。
−UFA2:IN=84.0;OHN=213.0;SP11.1℃,1.0% C12+4.0% C14+5.7% C16+89.3% C18 UFA- MRからなる。
【0026】
この様にして得られた不飽和脂肪アルコール(UFA)は優れた感覚特性を有する。すなわちこれはほとんど臭いがなく、水の様に澄明である。
〔例2〕
処理を例1と同様に行うが、処理工程(c)(=脱ロウ工程)の処理パラメーターを次の様に変える:
18- MEフラクションの脱ロウを−2℃の温度で20分の攪拌時間で実施する。21.3%濾過ケーキを分離する。これはIN=47.8及び次のC- 鎖分布を有する:
16=0.1%;C18:0=47.5%;C18:1=48.1%;C18:2=3.7%;C20=0.6%.
収率78.7%の濾液は次の様に特徴づけられる:
SN(けん化価)=188;IN(ヨウ素価)=92.6.
C- 鎖分布:C16=0.5%;C18:0=1.8%;C18:1=89.5%;
18:2=7.2%;C20=0.9%.
1.5%初期留出物を、精製蒸留後に取り出す;蒸留残留物として3.9%が残存する.得られたC18- UFA主留出物は次の様に特徴づけられる:
AN=0.06;SN0.4;IN=95.7;OHN=209.5;H2
(K.F.)=0.01%;Sp=5.2℃,HC含量=<0.1%;APHA- 色=8.
16=0.3%;C18:0=2.6%;シスC18:1=87.9%;トランスC18:1=3.7%;C18:2=4.4%;C18総量=98.6%;C20=1.1%.
18- UFA- MR(MR=主留出物)からヨウ素価(IN)95.7及びC18:0- 含量ほんの2.6%を有し、これは比較的低いSp(凝固点)5.2℃が同時に測定される。
【0027】
これは、C18- UFAがたとえば飽和脂肪アルコール(SFA)のシングルカットと混合してIN- 範囲90−95又は80−85の不飽和脂肪アルコール(UFA)を製造するのに特に最適であることを意味する。次のUFAを混合して得られる:
−UFA3:IN=91.9;OHN=210.5;Sp=6.6℃;4.0% C16+96.0% C18
-UFA- MR(MR=主留出物)を混合して得られる。
−UFA4:IN=84.0;OHN=213.5;Sp=9.2℃;1.0% C12+4.0% C14+7.2%
16+87.8% C18 -UFA- MR(主留出物)を混合して得られる。
UFA3及び4は、良好な感覚特性を有する。これは例1により製造されたUFA1及び2のものに類似する。
【0028】
処理工程(c)(=脱ロウ工程)で分離された濾過ケーキ(FC)は、C18:0割合47.5%及びヨウ素価(IN)47.8を有する。この濾過ケーキMEを選択的にZnO/Cr2 3-触媒上で接触水素化する。この際オレフィン二重結合は、著しく維持され、次いで例1の処理工程(e)と同様に精製蒸留する。
この際初期留出物(FR)1.3%を分離する。残存する蒸留残留物は2.8%である。濾過ケーキの得られたUFA主留出物は次の品質を有する:
AN=0.04;SN=0.2;IN=51.0;OHN=208.7;Sp=38.8℃;HC(炭化水素)=0.1%.
C- 鎖分布:C16=0.4%;C18=48.1%;C18:1=48.9%;C18:2=2.0%;C20=0.6%.
IN約50の通常の市場品質の不飽和脂肪アルコール(UFA)に比べて、このUFAはより一層高い凝固点(Sp)を有するが、それにもかかわらずIN- 範囲<60で不飽和脂肪アルコール(UFA)を製造するために、他の脂肪アルコールとの混合に最適である。
【0029】
このUFA主留出物濾過ケーキ(MR- FC)37%、例2に従って製造されたIN=95.7のC18- UFA- MR35%、並びにいわゆるシングルカットとしてC120.5%、C142.5%及びC15飽和された純粋の脂肪アルコール25%の量を混合することによって、下記のUFA5(ヨウ素価52.4)を製造する:
−UFA5:IN=52.4;OHN=216;APHA=10;Sp=33.1℃.C- 鎖分布:C12=0.5%;C14=2.6%;C16=25.2%;C18=71.1%;C20=0.6%.
〔例3〕
(a)ヤシ油(CNO)のエステル交換
市場で入手できる完全なヤシラフィネートを使用する。エステル交換を、例1に於けると同様な条件下で実施する。SN=256.8及びIN=8.0のCNO- ME(粗製)1.2380gがCNO2500gから得られる。C- 鎖スペクトルは、使用されたCNOとほぼ同一である。
(b)CNO- ME(粗製)の分別
CNO- ME(乾燥された)2300gを、還流比4:1でワイヤーコイルが詰められたカラムを介して分別する。(PKOベースに比べて)CNO- ME中のより低いC18- 成分のゆえに、下記品質のC18- MEフラクション11.7%が0.8ミリバールで、沸騰範囲152〜172℃で得られる:
AN=0.08;SN=188.6;IN=76.9.
16=1.2%;C18:0=19.5%;C18:1=66.9%;C18:2=11.8%;C20=0.6%.
(c)C18- MEの分別結晶(=脱ロウ)
脱ロウを例1に於けると同様な方法で実施する。+5℃で、30分の攪拌時間で分別結晶することによってIN=33.2及び下記の鎖分布を有する濾過ケーキ24.1%がC18- MEフラクションから得られる:
16=2.1%;C18:0=67.6%;C18:1=21.6%;C18:2=8.3%;C20=0.4%;並びにIN=92.5及び下記鎖分布を有する75.9%濾液:
16=1.0%;C18:0=4.2%;C18:1=81.3%;C18:2=12.9%;C18総量=98.8%;C20=0.6%.
(d)選択的水素化
18- ME濾液の選択的水素化に対する条件は、例1で使用された条件に相当する。
(e)精製蒸留
メタノール不含粗アルコールを精製蒸留する場合、0.6ミリバールで初期留出物(FR)1.6%を分離し、蒸留残留物中に3.1%が残存する。
【0030】
この様にして得られたC18- UFA主留出物(MR)は下記品質を有する:
AN=0.05;SN=0.5;IN=95.1;OHN=209.5;
APHA=15;Sp=10.2℃
CO- 含量=82ppm;H2 O(K.F.)=0.03%;炭化水素(HC)含量=0.11%.
18=0.4%;C18:0=3.9%;シスC18:1=84.7%;トランスC18:1=3.2%;C18:2=6.7%;C18総量=98.5%;C20=1.1%.
得られたC18- UFA- MR(主留出物)を飽和された純粋な脂肪アルコールのいわゆるシングルカットと混合し、通常の市場品質の不飽和脂肪アルコールが得られる。下記のものを混合に使用する:
0.4% C12+2.8% C14+20.3% C16+76.5% C18- UFA- MR(主留出物).
70〜75IN範囲で下記品質を有するUFAが得られる:
IN=72.8;OHN=215.1;Sp=18.9℃.
12=0.4%;C14=2.8%;C16=20.5%;C18=75.5%;C20=0.8%.

Claims (5)

  1. ラウリン油から不飽和脂肪アルコールを製造する方法において、
    (a)脱酸されたラウリン油をメタノールとエステル交換して、総脂肪酸メチルエステル混合物に変換し、
    (b)この脂肪酸メチルエステル混合物を、C 12 - C 16 - メチルエステルフラクション75〜90%の不飽和メチルエステル(ME)を含有する18- ME- フラクションに分別して分離し、
    (c)この様にして得られたC18- ME- フラクションを、溶剤不含の分別結晶、すなわち飽和C18- ME成分を分離するために脱ロウし、
    (d)脱ロウされた不飽和C18- MEフラクションを選択的に水素化して、ヨウ素価90−100を有する不飽和脂肪アルコールとし、
    (e)処理工程(d)により得られた粗不飽和脂肪アルコールを蒸留により精製することを特徴とする、
    上記製造方法。
  2. 精製された不飽和脂肪アルコールを適当な他の脂肪アルコールと混合し、所望のヨウ素価範囲を有する不飽和脂肪アルコールを得る、請求項1記載の方法。
  3. 処理工程(b)により得られたC12- C16メチルエステルフラクションを水素化し、飽和脂肪アルコールとし、このアルコールを分別してシングルカットに分解し、不飽和脂肪アルコールと混合するための他の脂肪アルコールとして使用する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 処理工程(c)により得られた脂肪酸メチルエステルの濾過ケーキを選択的に水素化し、部分的に飽和した脂肪アルコールを、不飽和脂肪アルコールと混合するための他の脂肪アルコールとして使用する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 分別結晶を、全量に対して70〜80%の濾液成分及び濾液量に対して1.5〜3.5%含量を有する飽和ステアリン酸メチルエステル(C 18 :0)に導く条件下実施する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
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