この発明は、大容量の原動機駆動高電圧交流発電装置および小容量の原動機駆動低電圧交流発電装置と、前記高電圧発電装置から連系変圧器を介して船内動力負荷の接続された動力配電回線へ給電する回路と、前記低電圧発電装置から直接前記動力配電回線へ給電する回路と、推進機駆動用の主電動機と、前記主電動機への電力を制御する電力変換器と、前記高電圧発電装置から主変圧器を介してこの電力変換装置へ給電する回路から構成された船舶電気推進システムにおいて、運転を開始するときに発生する連系変圧器、主変圧器の初期励磁突入電流および電力変換器の初期充電突入電流等の突入電流を抑制する装置に関する。
船舶の電気推進システムは、大容量の推進機駆動用主電動機、この電動機に駆動電力を供給するディーゼルエンジン等の原動機により発電機を駆動して発電する原動機駆動発電装置およびこの発電装置から推進機駆動用主電動機に供給される電力を変換制御して推進機を可変速制御する電力変換器等により構成される。推進機駆動用の原動機駆動発電装置は大容量となるので、小形化のために、発電機が高電圧化され、数kV以上の高電圧の出力電圧を発生するようにしている。しかしながら、電力変換器の定格電圧は、これを構成する半導体素子の耐電圧の関係から1kV以下となる場合が多い。このため、電力変換器の入力側に変圧器を設けて、この変圧器により原動機駆動発電機の出力電圧を電力変換器の定格電圧まで降圧するようにしている。
また、電気推進式の船舶には、このような大容量の推進用原動機駆動高電圧発電装置の他に、船内の各種動力負荷に給電するための、小容量の原動機駆動低電圧発電装置が設けられ、船内動力負荷の接続された動力配電回線に接続される。
このような高電圧電源から給電される変圧器付きの電力変換器においては、電源スイッチを投入して起動するとき、電力変換器内の平滑コンデンサの初期充電のための突入電流だけでなく、変圧器の初期励磁のための突入電流も流れるため、起動電流が過大となり、機器が損傷する危険がある。また、電源が船舶における原動機駆動発電機のように容量が限られている場合は、この過大な起動時の突入電流によって原動機駆動発電機の出力電圧が変動するだけでなく、原動機の速度変動により出力周波数も大きく変動するなどして発電装置の出力が不安定となり、場合によっては、発電装置から配電系統への給電が遮断され、電力変換器を起動できない事態も生じる。
このような不都合を回避するために、従来から、電力変換器の起動時の突入電流抑制装置が種々提案されている。
図4は、特許文献1に示された従来の突入電流抑制装置を示すものである。
この図4の突入電流抑制装置は、主発電装置1と電力変換器3の間に設けた電源変圧器Tに初期充電用の低圧巻線n3を設け、この巻線に充電用スイッチSW2、限流抵抗Rを介して低電圧交流電源2から初期充電電流を供給するものである。電力変換装置の電源スイッチSW1を投入して電力変換器3を起動する前に、充電用スイッチSW2を投入することにより、低電圧交流電源2から限流抵抗Rを介して低圧巻線n3に充電電流を供給する。この電流によって電源変圧器Tが励磁され2次巻線n2の出力電圧よって電力変換器3のコンバータ31を介して平滑コンデンサ32が充電される。低電圧交流電源2から供給される電流は限流抵抗Rによって制限されるため、電源変圧器Tの初期励磁のための突入電流も、平滑コンデンサ32を初期充電するための突入電流も抑制され、これらは、過大となることはない。所定時間経過して平滑コンデンサ32の充電が完了するとタイマ9が作動し、初期充電用スイッチSW2を開き、初期充電電流を遮断する。そして、電源スイッチSW1を投入して、電力変換器3の通常の運転を開始する。この電源スイッチSW1の投入時には、すでに電源変圧器Tが励磁され、かつ平滑コンデンサ32が充電されているので、突入電流は流れない。
図5に、特許文献2に示された他の突入電流抑制装置を示す。
この図5の抑制装置は、3相の主発電装置1に電源スイッチSW1、電源変圧器Tを介して電力変換器3が接続され、単相の予備充電電源2aから充電スイッチSW2、限流抵抗R、充電用変圧器T1を介して電源変圧器Tの2次側の2相に充電電圧を与えるようにしたものである。この装置においても、電源スイッチSW1を投入して電力変換器3を起動する前に、充電用スイッチSW2を投入し、予備充電電源2aから限流抵抗R、充電用変圧器T1、電力変換器3のコンバータ31を介して平滑コンデンサ32が充電される。このときの充電電流は、限流抵抗Rによって制限されるので突入電流は過大とならない。
前記2つの従来の突入電流抑制装置は、いずれも電力変換器の平滑コンデンサの充電のための突入電流の抑制には効果があるが、特に図5に示す従来の装置の場合は、電源変圧器Tが2次側から3相のうちの2相が励磁されるだけであるので、3相の励磁が不平衡となる。このため、電源スイッチ2を投入し、運転を開始するとき、電源変圧器Tに過大な突入電流が発生する恐れがある。
また図4の従来の装置においては、電源変圧器Tの3相を3相の低電圧交流電源2より初期励磁するので、主発電装置1と低電圧交流電源2との電圧位相が揃っていれば、初期励磁後、電源スイッチSW1を投入して電力変換器3の運転を開始するとき、電源変圧器Tにはほとんど突入電流が流れないようになるが、主発電装置1と低電圧交流電源2との電圧位相が異なっている場合に、突入電流が発生する恐れがあり、十分に電源変圧器の突入電流を抑制することができない。
特開2002−354830号公報
特開2003−070255号公報
船舶の電気推進システムにおける原動機駆動発電装置を電源とした電力変換器の場合、電力変換器に付属する電源変圧器の励磁突入電流および平滑コンデンサの充電突入電流は電源容量に比して無視できない大きさになるので、原動機駆動発電装置の安定運転のためには、突入電流を電源装置に影響を与えない大きさに抑制することが極めて重要な課題となる。
また、船舶における電源装置は複数台の原動機駆動発電装置で構成され、船舶が長期停泊するときは、大容量の推進機駆動用の原動機駆動主発電装置の運転を停止し、小容量の原動機駆動補助発電装置から船内動力負荷に給電し、航行中は、補助発電装置の運転を停止し、推進機駆動用の大容量原動機駆動主発電装置を運転し、この大容量原動機駆動主発電装置から推進装置へ給電するとともにその一部の電力を船内動力負荷へも給電するなど、船舶の運行モードの変更に応じて発電装置の運転を切換える必要があり、かつ発電装置の運転の切換えの際に、各機器へ流れる突入電流を抑制するとともに、給電系統の無瞬断切換を行うために、切換える発電装置相互の出力周波数および電圧の変動に対応した同期調整制御が不可欠となる。
しかしながら前記従来装置は、何れも、商用電源を用いた陸上設備を前提とした装置であるため、周波数変動、電圧変動および発電装置の切換えを伴う、船舶の電気推進システムへの適用は困難である。
そこで、この発明は、船舶で使用される原動機駆動発電装置を電源とする電力変換器および変圧器の運転開始時に流れる初期充電突入電流および初期励磁突入電流を抑制し、原動機駆動発電装置の周波数および電圧の変動を低減して安定に運転することのできる突入電流抑制装置を提供することを課題とするものである。
この課題を解決するため、この発明は、大容量の原動機駆動高電圧主交流発電装置および小容量の原動機駆動低電圧補助交流発電装置と、推進機駆動用の主電動機と、この主電動機への電力を制御する電力変換器と、前記高電圧主交流発電装置から主変圧器を介してこの電力変換器へ給電する回路と、前記高電圧主交流発電装置から連系変圧器を介して船内動力負荷の接続された低電圧の動力配電回線に開閉可能に給電する回路と、前記低電圧補助交流発電装置から直接前記動力配電回線に開閉可能に給電する回路とを備えた船舶の電気推進システムにおいて、前記動力配電回線から前記連系変圧器の初期励磁を行う初期励磁回路をこの連系変圧器の2次側に開閉可能に接続し、前記動力配電回線から前記主変圧器の初期励磁および前記電力変換器の初期充電を行う初期充電回路を前記主変圧器の1次側に充電用昇圧変圧器を介して開閉可能に接続してなることを特徴とするものである。
また、この発明は、大容量の原動機駆動高電圧主交流発電装置および小容量の原動機駆動低電圧補助交流発電装置と、推進機駆動用の主電動機と、この主電動機への電力を制御する電力変換器と、前記高電圧主交流発電装置から主変圧器を介してこの電力変換器へ給電する回路と、前記高電圧主交流発電装置から連系変圧器を介して船内動力負荷の接続された低電圧の動力配電回線に開閉可能に給電する回路と、前記低電圧補助交流発電装置から直接前記動力配電回線に開閉可能に給電する回路とを備えた船舶の電気推進システムにおいて、前記動力配電回線から前記連系変圧器の初期励磁を行う初期励磁回路をこの連系変圧器の2次側に開閉可能に接続し、前記動力配電回線から前記主変圧器の初期励磁および前記電力変換器の初期充電を行う初期充電回路を前記主変圧器に設けられた3次巻線側に開閉可能に接続してなることを特徴とするものである。
また前記の船舶の電気推進システムにおける初期突入電流抑制装置において、前記主発電装置を前記動力配電回線に接続する前に前記初期励磁回路により前記連系変圧器の初期励磁を行い、主交流発電装置の出力電圧と動力配電回線の同期を取って主交流発電装置を動力配電回線に接続するようにすると、より過大な突入電流の発生を抑制することができる。
この発明においては、大容量の原動機駆動高電圧主交流発電装置および小容量の原動機駆動低電圧補助交流発電装置と、推進機駆動用の主電動機と、この主電動機への電力を制御する電力変換器と、前記高電圧主交流発電装置から主変圧器を介してこの電力変換器へ給電する回路と、前記高電圧主交流発電装置から連系変圧器を介して船内動力負荷の接続された低電圧の動力配電回線に開閉可能に給電する回路と、前記低電圧交流交流発電装置から直接前記動力配電回線に開閉可能に給電する回路とを備えた船舶の電気推進システムにおいて、前記動力配電回線から前記連系変圧器の初期励磁を行う初期励磁回路をこの連系変圧器の2次側に開閉可能に接続し、前記動力配電回線から前記主変圧器の初期励磁および前記電力変換器の初期充電を行う初期充電回路を前記主変圧器の1次側に充電用昇圧変圧器を介して開閉可能に接続し、これらの初期励磁回路および初期充電回路により動力配電回線から連系変圧器の初期励磁を行い、かつ主変圧器および電力変換器の初期励磁および初期充電を行うようにしているので、主発電装置を動力配電回線に連系する際および電力変換器に主発電装置の出力を加えて起動する際に、初期励磁および初期充電のために過大な突入電流がながれることを防止することができる。したがって、電力変換器を起動する際に原動機駆動発電装置は、出力の電圧および周波数の変動が殆どなく安定に運転することができる。
また、この発明においては、大容量の原動機駆動高電圧主交流発電装置および小容量の原動機駆動低電圧補助交流発電装置と、推進機駆動用の主電動機と、この主電動機への電力を制御する電力変換器と、前記高電圧主交流発電装置から主変圧器を介してこの電力変換器へ給電する回路と、前記高電圧主交流発電装置から連系変圧器を介して船内動力負荷の接続された低電圧の動力配電回線に開閉可能に給電する回路と、前記低電圧交流交流発電装置から直接前記動力配電回線に開閉可能に給電する回路とを備えた船舶の電気推進システムにおいて、前記動力配電回線から前記連系変圧器の初期励磁を行う初期励磁回路をこの連系変圧器の2次側に開閉可能に接続し、前記動力配電回線から前記主変圧器の初期励磁および前記電力変換器の初期充電を行う初期充電回路を前記主変圧器に設けられた3次巻線側に開閉可能に接続し、これらの初期励磁回路および初期充電回路により動力配電回線から連系変圧器の初期励磁を行い、かつ主変圧器および電力変換器の初期励磁および初期充電を行うようにしているので、主発電装置を動力配電回線に連系する際および電力変換器に主発電装置の出力を加えて起動する際に、初期励磁および初期充電のために過大な突入電流がながれることを防止することができる。したがって、電力変換器を起動する際に原動機駆動発電装置は、出力の電圧および周波数の変動が殆どなく安定に運転することができる。
また、この発明で使用する初期励磁回路および初期充電回路を構成する限流抵抗等の機器は低電圧の動力配電回線に接続されるため、低電圧規格の機器を使用することができ、しがって初期励磁回路および初期充電回路を安価に構成することができる。
以下に図に示すこの発明の実施例について説明する。
図1は、この発明の第1の実施例の構成を示すものである。
図1において、1は、船舶の推進機Sとこれを駆動する主電動機Mとで構成された電気推進機4を駆動するための大容量の主発電装置となるもので、高電圧の交流発電機G1をディーゼルエンジンDE1により駆動して例えば電圧が6kVの交流電力を発生するようにした原動機駆動高電圧主交流発電装置である。発電機G1の出力は電源遮断器CB1、運転スイッチSW1を介して主変圧器T0の接続された主配電回線MFに接続される。この主変圧器T0は1次側に加わる発電機G1の高電圧の出力電圧を、この電圧より低い所定の電圧、すなわち電力変換器3の入力定格電圧に変成して2次側に接続された電力変換器3に供給する。電力変換器3は、入力の交流電力を直流電力に変換するコンバータ31、このコンバータ31の出力電圧を平滑する平滑コンデンサ32およびこの平滑コンデンサ32から供給される直流電力を可変電圧、可変周波数の交流電力に変換するインバータ33により構成される。この電力変換器3のインバータ33により電気推進機4の主電動機Mを可変速制御して、船舶の航行を制御する。
また、2は専ら船内の動力負荷へ給電するための補助発電装置である。この補助発電装置2はディーゼルエンジンDE2により出力電圧が例えば440Vの低電圧の補助発電機G2を駆動して発電を行うもので、遮断器CB3を介して船内の動力配電回線LFに接続し、この回線に接続された図示しない動力負荷Lに給電する。
船舶の航行中など、電気推進機4を駆動する必要があるときは、主発電装置1が運転される。ここで、連系用の遮断器CB2およびスイッチSW3を投入することにより、主発電装置1の出力を連系変圧器T1を介して動力配電回線LFへ給電することができる。このようにして主配電回線MFと動力配電回線LFとが連系されているときは、補助発電装置2の運転を停止し、主発電装置1のみを運転し、経済運転モードにする。連系変圧器T1は、当然、1次側に加わる主発電装置1の高電圧例えば6kVの出力電圧を2次側で動力配電回線LFの定格電圧、例えば440Vに降圧する。
船舶の停泊中は、補助発電装置2が運転され、遮断器CB3を投入して補助発電装置2から動力配電回線LFへ給電を行う。連系用の遮断器CB2およびスイッチSW3は遮断し、動力配電回線LFと主配電回線MFとを切り離し、主発電装置1から動力配電回線LFへの給電を停止するだけでなく、主発電装置1の運転を停止することにより燃料費の節約を図る。
このように主発電装置1および補助発電装置2のいずれからも給電可能にされた低電圧の動力配電回線LFから主変圧器T0の初期励磁および電力変換器3の平滑コンデンサ32の初期充電を行うために動力配電回線LFと電力変換器3の接続された電源変圧器T0の1次側との間に充電スイッチSW2、限流抵抗R、充電用昇圧変圧器T2からなる初期充電回路8が接続される。充電用昇圧変圧器T2は、動力配電回線LFの低い電圧を高電圧の主発電装置1の出力電圧に等しいかまたはやや高い電圧に昇圧する。
また、主配電回線MFと動力配電回線LFは連系変圧器T1、連系用遮断器CB2およびスイッチSW3を介して連系接続されている。そして連系変圧器T1の2次側にこの変圧器を動力配電回線LFから初期励磁するための限流抵抗R1および励磁スイッチSW4により構成された初期励磁回路9が設けられている。
この装置の運転は、次のように行われる。
船舶の停泊中は、電気推進機4が停止されるため、主発電装置1の運転を停止して、補助発電装置2を運転する。この補助発電装置2から動力配電回線LFへ給電を行うために、連系用遮断器CB2およびスイッチSW3を遮断して動力配電回線LFを主配電回線MFから切り離し、遮断器CB3が投入されている。
船舶を出航させるときは、電気推進機4を駆動するために大容量の主発電装置1を起動する。この主発電装置1の出力電圧が確立したところで、動力配電回線LFへの給電を補助発電装置2から主発電装置1に切換えるが、切換のために電源遮断器CB1を投入し、その後連系用遮断器CB2およびスイッチSW3を投入するとき、連系用変圧器T1に初期励磁のための過大な突入電流が発生し、連系用遮断器CB2が過電流により遮断されることがある。
この発明では、これを避けるために、連系用変圧器T1の初期励磁時の突入電流を抑制する初期励磁回路9が設けられている。この初期励磁回路9は、遮断器CB3が投入され補助発電装置2から低電圧の動力配電回線LFに給電されている状態で、もちろん連系用遮断器CB2およびスイッチSW3が遮断状態のときに、系統制御装置6から励磁スイッチSW4に投入指令信号アを与え、これを投入して、動力配電回線LFから連系変圧器T1の2次側に励磁電流を供給して初期励磁を行う。このときの電流は限流抵抗R1によって制限されるので突入電流が抑制されて過大となることはない。所定時間が経過して初期励磁が終了したところで、系統制御装置6から連係用スイッチSW3に投入指令信号イを与えてこれを投入し、その後に充電用スイッチSW4に遮断指令信号アを与えて初期励磁回路9を遮断し、連系変圧器のT1の初期励磁工程を終える。
このようして連系変圧器T1の初期励磁が終了したところで、開かれている連系用遮断器CB2の両端の電圧aと電圧bの大きさおよび周波数(位相)を比較し、系統制御装置6によりこれらが一致するように主発電装置1の調速装置GV1および励磁調整装置EX1に制御信号g、hを送る。系統制御装置6は、電圧aとbの大きさおよび周波数(位相)が一致し、同期したことが検出されると、同期投入信号ウを連系遮断器CB2へ与えて同期投入し、その後、遮断器CB3へ遮断信号エを送り、これを遮断する。これにより、補助発電装置2が動力配電回線LFから切り離され、動力配電回線LFへは主発電装置1から、連系変圧器T1を介して給電されるようになり、補助発電装置2は運転を停止することができる。
続いて、電力変換装置3の運転を開始する前に主変圧器T0の初期励磁と平滑コンデンサの32の初期充電を行うため、運転スイッチSW1の投入に先立って、系統制御装置6から充電スイッチSW2に投入指令信号オを与えてこれを投入する。これにより限流抵抗R、充電用昇圧変圧器T2を介して動力回線LFから電力変換器3の接続された主変圧器T0の1次側に主発電装置1の定格出力電圧と等しいかそれよりやや高い電圧に昇圧された充電電圧が加わる。この充電電圧によって、主変圧器T0が1次側から初期励磁されるとともに、主変圧器T0の2次出力電圧により電力変換器3のコンバータ31を通じて平滑コンデンサ32が初期充電される。このときの励磁電流および充電電流は限流抵抗Rによって制限されるため、初期励磁および初期充電にともなう突入電流は抑制され、過大となることはない。
所定時間後に平滑コンデンサ32の充電電圧pを監視している系統制御装置6が平滑コンデンサ32の電圧が所定電圧に達し、初期充電が終了したことを検出したところで、運転スイッチSW1に投入指令信号カを与え、これを投入した後、充電スイッチSW2に遮断指令信号オを与えて遮断し、電力変換器3による電気推進機4の駆動の準備が完了する。
運転スイッチSW1が投入されると主変圧器T0に主発電装置1の出力電圧が加わるが、このとき、主変圧器T0は既に初期励磁され、電力変換器の平滑コンデンサ32も初期充電されているので、もはや過大な突入電流が流れることはなく電力変換器3を円滑に起動することができる。
なお、前記においては、連系変圧器T1の初期励磁が終了したところで、開かれている連系用遮断器CB2の両端の電圧の大きさおよび周波数(位相)を比較し、系統制御装置6によりこれらが一致するように主発電装置1の調速装置を制御し、同期が取れた時点で、連系用遮断器CB2を投入して、主配電回線MFと動力配電回線LFを連系した後に、初期充電回路8を介して動力配電回線LFから主変圧器T0の初期励磁および電力変換器3の初期充電を行うようにしているが、両回線の連系の前に主変圧器T0と平滑コンデンサ32の初期励磁および初期充電を行うようにしてもよい。
具体的には、例えば、両回線の同期が取れた時点で、連系用遮断器CB2を投入する前に、初期充電回路8の充電スイッチSW2を投入して補助発電装置2からの供給電力により電源変圧器T0と平滑コンデンサ32の初期励磁および初期充電を開始し、その後、初期励磁および初期充電の期間中に連系用遮断器CB2を投入し、この連系用遮断器CB2の投入が完了したところで、遮断器CB3を遮断して補助発電装置2を動力配電回線LFから切り離し、動力配電回線LFには主発電装置1から連系変圧器T1を介して給電される状態とし、その後、運転スイッチSW1を投入して主発電装置1を電源変圧器T0の1次側に接続し、充電スイッチSW2を遮断して初期励磁および初期充電を終了するとともに、電力変換器3の起動を終える。
このように、同期が取れた時点で、連系用遮断器CB2を投入する前に、主発電装置装置1とは別に設けられた補助発電装置2からの供給電力により電源変圧器T0と平滑コンデンサ32の初期励磁および初期充電を開始することにより、電力変換器3の起動制御における初期励磁および初期充電の開始タイミングをより早くすることができるので、その分だけ、電力変換器3の起動を早く行うことができる。
この実施例1においては、初期充電回路8および初期励磁回路9の各機器は低電圧の動力配電回線LF側に設けられるため、低電圧規格の機器を使用することができ、それによって装置を小形かつ安価に構成することが可能となる。
なお、上述の初期充電回路8による平滑コンデンサ32への初期充電においては、充電電流が限流抵抗Rの抵抗値および平滑コンデンサ32の容量に基づいてほぼ決まる時定数で時間的に減少していくとともに平滑コンデンサ32の充電電圧が最終充電電圧値に向って飽和するようにして時間的に上昇していく。このため、実際には初期充電時間を極力短くすることが求められることから、初期充電の終了制御としては、平滑コンデンサ32の充電電圧が最終充電電圧値よりは小さい所定の電圧レベルに達したことを例えば電圧センサやタイマなどにより検知し、検知した時点で運転スイッチSW1を投入した後、充電スイッチSW2を遮断して初期充電を終了させることになる。
一方、高電圧の主発電装置1の電圧が所定の電圧に規定される場合は、運転スイッチSW1を投入したときに、平滑コンデンサ32の充電電圧が主発電装置1の規定電圧に対応する規定充電電圧よりも低い電圧であれば、主発電装置1から電源変圧器T0に向って電力変換器3内の低い充電電圧の平滑コンデンサ32を再充電するための突入電流が流れ込むことになる。そして、このような再突入電流が電力変換装置の運転の立ち上げ毎に発生することによって、平滑コンデンサ32に流れる再突入電流により平滑コンデンサ32の性能劣化がより促進されたり、電源変圧器T0の巻線に流れる再突入電流によって発生する電磁力による電磁機械的な衝撃に起因して電源変圧器T0の性能劣化がより促進されたり、高電圧の主発電装置1を構成する発電機G1およびディーゼルエンジンDE1の制御動作が影響を受けたりするという問題があるので、船舶用電推進装置では原動機駆動発電装置や電力変換装置などの小型化が要請されることから、再突入電流の大きさを極力抑制するか、再突入電流が発生しないようにすることが望ましいことになる。
このような再突入電流を抑制するために、この発明においては、例えば、次のような再
突入電流抑制方式を適用することができる。
[再突入電流抑制方式1]
再突入電流を抑制するための第1の方式は、図1に示す実施例1の装置において、主発電装置1の電圧が所定の電圧に規定されている場合、運転スイッチSW1を投入したときに、平滑コンデンサ32の充電電圧が主発電装置1の規定電圧に対応して決まる規定充電電圧と同じ電圧になるようにする。具体的には、初期充電回路8による平滑コンデンサ32への初期充電における最終充電電圧が上記の規定充電電圧に対して、例えば、約5〜8%程度高い電圧となるように充電用昇圧変圧器T2の2次出力電圧を高く設定しておき、初期充電の終了制御としては、平滑コンデンサ32の充電電圧が規定充電電圧とほぼ等しい電圧に達した時点で運転スイッチSW1を投入した後に、充電スイッチSW2を遮断して初期充電を終了させるようにする。
これにより、運転スイッチSW1を投入したときに、平滑コンデンサ32の実際の充電電圧と規定充電電圧とがほぼ等しく、差があっても1%程度と小さいので、主発電装置1から電力変換器3に向って平滑コンデンサ32を再充電するために突入電流が流れ込んでもその大きさは極めて小さく抑制されており、平滑コンデンサ32や電源変圧器T0などの性能劣化の促進が防止され、主発電装置1を構成する発電機G1およびディーゼルエンジンDE1の制御動作への影響を抑制することができる。
また、充電用昇圧変圧器T2の2次出力電圧を電源変圧器T0の1次電圧すなわち主発電装置1の出力電圧で決まる規定充電電圧より高く設定することにより、平滑コンデンサ32を所定充電電圧まで充電するのに要する時間を短縮することができるため、電力変換装置の起動を速くすることができる。
[再突入電流抑制方式2]
再突入電流を抑制するための第2の方式は、図1の実施例1において、主発電装置1の電圧が所定の電圧に規定されている場合、運転スイッチSW1を投入したときに、平滑コンデンサ32の充電電圧が主発電装置1の規定電圧に対応して決まる規定充電電圧よりも例えば約5〜8%程度高い電圧となるようにしておく。具体的には、初期充電回路8による平滑コンデンサ32への初期充電における最終充電電圧が上記の規定充電電圧に対して例えば約8〜15%程度高い電圧、すなわち再突入電流抑制方式1における最終充電電圧値よりさらに高い電圧となるように充電用昇圧変圧器T2の2次出力電圧を設定しておき、初期充電の終了制御としては、平滑コンデンサ32の充電電圧が規定充電電圧よりも例えば約5〜8%程度高い電圧に達した時点で運転スイッチSW1を投入した後に、充電スイッチSW2を遮断して初期充電を終了させるようにする。
これにより、運転スイッチSW1を投入したときに、平滑コンデンサ32の実際の充電電圧は規定充電電圧よりも例えば5〜8%程度高いので、主発電装置1から電力変換器3に向って平滑コンデンサ32を再充電する再突入電流が流れ込むことはなく、平滑コンデンサ32や電源変圧器T0などの性能劣化の促進が防止され、また、高電圧交流電源1を構成する発電機G1およびディーゼルエンジンDE1の制御動作への影響を、再突入電流抑制方式1に比べてより抑制することができる。
なお、本方式では、運転スイッチSW1を投入したときに、主変圧器T0の1次側の電圧が規定電圧よりも高い電圧となっているので、「充電用昇圧変圧器T2→運転スイッチSW1→連系用遮断器CB2→連系変圧器T1→連系スイッチSW3→充電スイッチSW2→限流抵抗R→充電用昇圧変圧器T2」および「充電用昇圧変圧器T2→主変圧器T0→運転スイッチSW1→電源遮断器CB1→発電機G1→電源遮断器CB1→連系用遮断器CB2→連系変圧器T1→連系スイッチSW3→充電スイッチSW2→限流抵抗R→充電用昇圧変圧器T2」という2つの回路を循環電流が流れるが、いずれの回路の循環電流も限流抵抗Rによって抑制されるので、過大な循環電流が流れることはない。また、いずれの回路の循環電流も、初期充電終了制御中に運転スイッチSW1および充電スイッチSW2の両方が閉じている、約0.5秒程度以下の短いラップ期間中のみ流れるものであるため、発電機G1、主変圧器T0、連系変圧器T1および充電用昇圧変圧器T2に影響を及ぼすことはなく、また、循環電流が流れることによる限流抵抗Rの負担も無視することができる。
なお、上述の再突入電流抑制方式1、2のうち、特に再突入電流抑制方式2では、平滑コンデンサ32を主発電装置1の規定電圧によって決まる規定充電電圧よりも例えば約5〜8%程度高い電圧まで初期充電することになるため、平滑コンデンサ32など電力変換器3の構成部品としては、少なくとも上記のような高い電圧に対応することのできる電圧定格の部品を用いることが必要である。
次に図2に示すこの発明の第2の実施例について説明する。
この図2の装置は、図1の装置における初期充電回路8の充電用昇圧変圧器T2を省略する代わりに、主変圧器T0の通常の1次巻線N1、N2のほかに初期励磁および初期充電用に3次巻線n3を設けている点が図1の実施例1の装置と異なっている。
この3次巻線n3の巻数は、主発電装置1の定格出力電圧が例えば6kVで、動力配電回線の定格電圧が例えば400Vの場合、1次巻線n1に対する巻数比n3/n1が400/6000となる巻数と等しいかこれよりやや小さい巻数に選ばれている。これによって、この充電用巻線n3を介して電力変換器3に充電すると、主発電装置1の電圧が所定の電圧に規定されている場合、運転スイッチSW1を投入したときに、平滑コンデンサ32の充電電圧が主発電装置1の規定電圧に対応して決まる規定充電電圧と等しいかこれよりもやや高い電圧となる。
このようにするのは、実施例1の場合と同様に、平滑コンデンサ32の初期充電の時間を短縮するため、および再突入電流を抑制するためである。
この実施例2の装置におけるそのほかの構成および動作は、前記実施例1の装置と全く同じであるので、詳細な説明を省略する。
この実施例の構成によれば、主変圧器T0に充電用3次巻線を設けただけでは、外形寸法は殆ど増加しないので、充電用昇圧変圧器を省略できた分、装置全体の設置面積を縮小できる。船舶の場合、船内の面積が限られているため、機器の設置面積を縮小できることは極めて有用なことである。
図3にこの発明の第3の実施例を示す。
この実施例3の装置は、前記実施例1における電気推進機4、これを駆動制御する電力変換器3、主変圧器T0およびこれらの電源となる大容量の原動機駆動高電圧主発電装置1からなる電気推進装置を2系統設け、各系統を共通の動力配電回線LFへ連系可能に構成したものである。各系統の構成機器は同じであるので各系統をA、Bとして各機器を示す符号は、図1に示す機器と同じものは同じ符号にし、それぞれにA、Bのサフィックスを付加して各系統を示すようにしている。すなわち、例えば1Aは、A系統の主発電装置を、3Bは、B系統の電力変換器を示す。
次に、出航のために2系統の電気推進装置を起動する過程を説明する。
停泊中は、補助発電装置2が運転され、この発電装置2から投入された遮断器CB3を介して動力配電回線LFに給電される。
この状態で、まずA系統の主発電装置1Aを起動し、出力電圧を確立してから、電源遮断器CB1Aを投入する。引き続き連系遮断器CB2A,連系スイッチSW3Aを開いた状態で、連系用変圧器T1Aの初期励磁を行うために、初期励磁回路9Aの励磁スイッチSW4Aを投入して、動力配電回線LFから限流抵抗R1Aを介して、連系用変圧器T1Aの2次側から初期励磁を行い、所定時間が経過して初期励磁が終了したところで、連系用遮断器CB2Aの両端の電圧aとbの同期を検出する。同期が取れていなければ、図示しない系統制御装置から、主発電装置1AのディーゼルエンジンDE1Aの調速装置GV1Aおよび発電機G1Aの励磁調整装置EX1Aに同期指令を与えて両電圧が同期するように発電装置の出力の電圧および周波数を調節する。連系用遮断器CB2Aの両端の電圧aとbの同期が検出されたところで、この遮断器が投入される。その後に連系スイッチSW3Aを投入し、励磁スイッチSW4Aを遮断して、主発電装置1Aを動力配電回線LFに接続する。
このようにして、主発電装置1Aから動力配電回線LFに給電可能な状態となったところで、補助電源遮断器CB3を遮断し、補助発電装置2を動力配電回線LFから切り離し、補助発電装置2の運転を停止する。
さらに、A系統の電気推進機4Aを駆動するために電力変換器3Aを起動するが、その前に、主変圧器T0Aの初期励磁および電力変換器3Aの平滑コンデンサ32Aの初期充電を行うために初期充電回路8Aの充電スイッチSW2Aを投入する。これにより、動力配電回線LFから限流抵抗RAおよび充電用昇圧変圧器T2Aを介して主変圧器T0Aの1次側に動力配電回線LFの所定の低電圧から所定の高電圧に変成された電圧が充電電圧として加えられる。この充電電圧によって主変圧器T0Aが初期励磁されるとともに、電力変換器3Aの平滑コンデンサ32Aが初期充電される。このときの電流は、限流抵抗RAによって制限されるため、突入電流は抑制され過大になることはない。
平滑コンデンサ32Aの充電電圧が所定値に達したところで充電が終了するので、運転スイッチSW1Aを投入し、主発電装置1Aの出力を主変圧器T0Aを介して電力変換器3Aに加え、電気推進機4Aを駆動可能な状態にする。運転スイッチSW1Aを投入して主発電装置1Aの出力電圧が主変圧器T0Aに印加されたとき、既に主変圧器T0Aは初期励磁され、電力変換器3Aの平滑コンデンサ32Aも初期充電されているので、大きな突入電流が流れることはなく、電力変換器3Aを安全に起動することができる。スイッチSW1Aが投入されたところで、充電スイッチSW2Aが遮断され、充電回路8Aは、主変圧器T0Aから切り離される。
ここまでは、実施例1の動作と同じである。この実施例3においては、ここからB系統の運転を開始する。
その順序は、A系統の場合と同じである。まず、主発電装置1Bを起動し、出力電圧が確立したところで、電源遮断器CB1Bを投入する。そして、連系遮断器CB2Bを投入する前に、初期励磁回路9Bの励磁スイッチSW4Bを投入し、主発電装置1Aから給電されている動力配電回線LFから限流抵抗R1Bを介して連系変圧器T1Bを2次側から初期励磁する。この初期励磁が終わったところで、連系遮断器CB2Bの両端の電圧aとb´の同期を取るための制御を行い、同期が検出されると主発電装置1Aの出力電圧と主発電装置1Bの出力電圧の同期が取れたことになるので連系遮断器CB2Bを投入する。このとき、連系変圧器T1Bは既に初期励磁されているので、突入電流が流れることはない。
このあと、連系スイッチSW3Bを投入し、初期励磁回路9Bの励磁スイッチSW4Bを遮断して、初期励磁回路9Bを連系変圧器T1Bから切り離す。引き続き、初期充電回路8Bの充電スイッチSW2Bを投入して限流抵抗RB、充電用昇圧変圧器T2Bを介して、動力配電回線LFから主変圧器T0Bの1次側に充電電圧を加え、主変圧器T0Bの初期励磁と電力変換器3Bの平滑コンデンサ32Bの初期充電を行う。
所定時間後、平滑コンデンサ32Bの充電電圧が所定値に達して充電が終了したところで、運転スイッチSW1Bを投入して主変圧器T0Bを介して主発電装置1Bから電力変換器3Bに給電する。このスイッチSW1Bの投入されたところで、充電スイッチSW2Bを遮断し、充電回路8Bを主変圧器T0Bの1次側から切離し、電気推進機4Bの駆動に備える。運転スイッチSW1Bを投入するときは、既に主変圧器T0Bは初期励磁され、電力変換器3Bは平滑コンデンサ32Bの初期充電も済んでいるので、このスイッチSW1Bの投入により主変圧器T0Bおよび電力変換器3Bに主発電装置1Bから電力を供給しても過大な突入電流は流れず、電力変換器3Bを円滑かつ安全に起動することができる。
この後は、電力変換器3A,3Bにより電気推進機4Aおよび4Bを可変速駆動し、船舶の航行を制御する。
前記においては、2系統の電気推進装置の起動を1系統ずつ時間をずらして行うことを説明したが、補助発電装置2の容量が許せば、2系統同時に起動の操作を行うようにしてよい。
なお、上述の図3の装置において、初期充電回路8A,8Bの充電用昇圧変圧器T2A,T2Bを省略する代わりに、主変圧器T0A,T0Bの通常の1次巻線N1、N2のほかに初期励磁および初期充電用に3次巻線n3を設けた構成としてもよい。
この発明の第1の実施例を示す回路構成図である。
この発明の第2の実施例を示す回路構成図である。
この発明の第3の実施例を示す回路構成図である。
従来装置を示す回路構成図である。
他の従来装置を示す回路構成図である。
符号の説明
1:原動機駆動主発電装置
2:原動機駆動補助発電装置
3:電力変換器
4:電気推進機
6:系統制御装置
8:初期充電回路
9:初期励磁回路