以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の薬剤バッグは、光変異性の粉末の薬剤と溶解液(液剤)との2種類の薬剤(ここでは、溶解液や希釈液等を含めた広い概念で用いる)を混合するものについて説明するが、混合する薬剤やその性質、種類等はこれに限定するものではない。すなわち、混合する薬剤の中に液剤、遮光される薬剤が含まれていればよく、例えば光変異性の液剤と、粉末もしくは固形の薬剤、または稀釈液としての液剤等とを混合するものであってもよく、また混合する薬剤も3種類以上であってもよい。ここで、遮光される薬剤とは、光に晒されると変異する光変異性の薬剤はもちろんのこと、酸化、吸湿、水分蒸散を防止する目的からアルミシート等の遮光シートにより被覆される薬剤も含まれる。
図1は、本発明の実施形態に係る薬剤バッグを示す正面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、図1のIII−III線断面図である。これらの図に示すように、薬剤バッグ1は、正面視略縦長矩形状のバッグ本体2と、このバッグ本体2の下部に設けられた排出ポート3とを備えている。
上記バッグ本体2は、その内部に薬剤を収容可能な薬剤収容室4を備え、この薬剤収容室4が弱シール部4a、4bにより上部区画室5と、下部区画室7に区画されている。この上部区画室5は、光変異性の粉末の薬剤(例えば、塩酸ミノサイクリン)を収容するように構成されている一方、下部区画室7は、上記粉末の薬剤を溶解するための溶解液(例えば、生理食塩水)を収容するように構成されている。具体的には、このバッグ本体2は、上部区画室5を構成する上部収容容器6と、下部区画室7を構成する下部収容容器8とを備え、予め別体として形成されたこれらの収容容器6、8が各区画室5、7を連通し得るように連結されている。
なお、区画室の数やバッグ本体2内の配置態様等は、特に限定されるものではなく、混合すべき薬剤の種類やその態様等を考慮して適宜設定される。
上部収容容器6は、正面視略矩形状を呈する可撓性容器であり、上記上部区画室5内に水分と光を透過しないように構成されている。この上部収容容器6は、遮光層70を有するリアシート50と、このリアシート50の前面に配設されたフロントシート51とを備え、これらの周縁部が溶着接合されることにより、全体として袋状に形成されている。また、上記上部収容容器6の上端部近傍には、上記リアシート50及びフロントシート51を貫通した状態で、薬剤バッグ1の使用時にバックスタンド等に吊り下げるためのハンガー孔54が設けられている。
上記リアシート50は、光を遮断する遮光層70と、周縁部においてフロントシート51と強固に溶着し得る熱可塑性樹脂からなる最内層とを含む積層シートにより構成される。具体的に、リアシート50は、図3に示すように、最内層から順にポリエチレン、ポリプロピレン又は、これらの混合物等の熱可塑性樹脂からなる溶着層71と、アルミが蒸着されたPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロン(ポリアミド)或いはアルミ等からなる遮光層70と、PETやナイロン等からなる補強層72が積層されて構成されている。そして、上記遮光層70により、上部区画室5に収容された薬剤がリアシート50を通して光に晒されることから回避される結果、このリアシート50を通して上部区画室5内が視覚的に確認できない状態とされている。なお、本実施形態では、上記遮光層70は、水分及び、酸素も透過できないように構成されている。
上記フロントシート51は、周縁部においてリアシート50と溶着し得る熱可塑性樹脂からなる最内層を含む積層シートであって、このフロントシート51を通して上部区画室5内を視覚的に確認することができるように全体として透明のシート(半透明、着色透明シートも含む)により構成されている。具体的に、上記フロントシート51は、図3に示すように最内層から順にポリエチレン、ポリプロピレン又は、これらの混合物等の熱可塑性樹脂からなる溶着層73と、シリカやアルミナが蒸着されたPETやナイロン或いはEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)等からなって水分及び、酸素を透過し難いように構成されたバリア層74と、PETやナイロン等からなる補強層75と、ポリエチレン、ポリプロピレン及び、PET等からなる弱溶着層76が積層されて構成されている。上記フロントシート51の溶着層73は、上記リアシート50の溶着層71と相溶性の高い熱可塑性樹脂が採用されることにより、リアシート50とフロントシート51とを強固に溶着することができるようになっている。
上記リアシート50とフロントシート51とは、上端部及び左右側縁部においては溶着により強固に接合されている一方、下端部においては、下端部から若干退入した部分において弱シール用シート40が介設され、この弱シール用シート40を介して弱溶着(接合強度が他の溶着部分に比して小さくなるような溶着)により接合されている(図4参照)。すなわち、上記上部収容容器6の下端部には、弱シール用シート40を用いて弱シール部4aが形成され、この弱シール部4aは、上下区画室5、7の少なくとも何れか一方の室内圧力を高めることにより剥離する(シール状態が解除される)ように構成されている。具体的には、この弱シール用シート40は、リアシート50及び、フロントシート51の溶着層71、73を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂により形成されている。例えば、溶着層71、73としてポリエチレン系の合成樹脂が採用されている場合には、弱シール用シート40としてポリエチレンと、ポリエチレンと相溶性をもたない樹脂(例えば、ポリプロピレン)との混合物が好適に採用される。このように弱シール用シート40を構成する熱可塑性樹脂として、溶着部71、73を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂を採用しているので、上記フロントシート51とリアシート50とは、上記弱シール部4aを介して比較的容易に剥離可能な状態で溶着されることとなる。
このように、上記構成の上部収容容器6は、リアシート50の遮光層70と後述する被覆シート52により略完全に被覆されている。すなわち、上記収容容器6内の上部区画室5が被覆シート52により被覆されているため、この上部区画室5内へ差し込む光を遮断することができる結果、上部区画室5に収容された薬剤が光に晒されて、その外観等が変化してしまうことから回避される。また、上部収容室6は、上部区画室5が被覆シート52により被覆されている場合には、上部区画室5内の薬剤を視覚的に確認することができない状態となる一方、被覆シート52を上部区画室5から剥離した場合には、上部区画室5内を視覚的に確認可能な状態となり、被覆シート52を剥離することにより収容された薬剤の状態を確認することができる。
一方、下部収容容器8は、正面視略矩形状を呈する可撓性容器であり、上記下部区画室7内に液剤を収容し得るように構成されている。この下部収容容器8は、熱可塑性樹脂を含む筒状のシートの上下端部が溶着により接合されることにより、全体として袋状に形成され、その下端縁の略中央部には、上記排出ポート3が下部区画室7に連通した状態で設けられている。
具体的には、上記下部収容容器8は、全体として透明なシート(半透明、着色透明シートを含む)により内部が視覚的に確認可能に構成されている。この下部収容容器8を形成する透明筒状シートは、ポリエチレン又は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成されたシートである。なお、上記下部収容容器8を形成する透明筒状シートは、上記単層構造のものに限定されるものではなく、複層構造のもの、例えば、最内層から順にポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる内面層、シリカが蒸着されたPET等からなるバリア層、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる外面層が積層されて構成されているものであってもよい。
この筒状透明シートの具体的接合構造は、下端部においては上記ポート3を挟持した状態で溶着により強固に接合されている一方、上端部においては上記上部収容容器6の下端縁から突出する弱シール用シート40の下端部を介設した状態で溶着により接合されている(図4参照)。すなわち、本実施形態の薬剤バッグ1では、下部収容容器8の上端部の閉塞工程と、上部収容容器6及び下部収容容器8の連結工程とが同時に行われることとなる。
具体的には、下部収容容器8の上端開口部に弱シール用シート40の下端部が挿入されるとともに、上記リアシート50とフロントシート51との間に上部収容容器8の上端部が挟みこまれ、この状態の重ね合わせ部分が溶着されることにより上部収容容器6と下部収容容器8とが連結されている。また、上記溶着時において、上記弱シール用シート40の下端部が上記筒状透明シートに溶着されて弱シール部4bが形成されることとなる。上記弱シール用シート40は、上記透明筒状シートの内面層を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂により形成されているため、この弱シール部4bも、上記区画室5、7の何れか一方の室内圧力を高めることにより透明筒状シートの内面から剥離することとなる。なお、本実施形態においては、1枚の弱シール用シート40を用いて、上記弱シール部4a、4bを形成することとしているが、これに限定されることはなく、各弱シール部4a、4bに対応した2枚の弱シール用シート40を用いて形成するようにしてもよい。
また、上記下部収容容器8の側面には、上記薬剤収容室4内の薬剤残量の水位に対する指標としての目盛り部M1と、この目盛り部M1に対応する薬剤の残量数値を示す残量数値部S1が印刷されている。すなわち、上記目盛り部M1は、上部区画室5内の薬剤と、下部区画室7内の薬剤とが混合された混合薬剤の水位に対する指標であり、この水位に対応する薬剤量を残量数値部S1が数値で示している。本実施形態において、上記残量数値部S1は、75mL、50mL、25mLの3種類が上下方向に配列され、これらに対応した上下位置に上記目盛り部M1が形成されている。なお、本実施形態においては、上記目盛り部M1と、残量数値部S1とが残量表示部Hの一例を構成している。
以上のように構成されたバッグ本体2における上部収容容器6には、上記フロントシート51の前面に対して被覆シート52が剥離可能に接合されている。
上記被覆シート52は、光を遮断する遮光層77と、フロントシート51の最外層(本実施形態では、弱溶着層76)を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂からなる最内層とを含む積層シートにより構成されている。具体的に、被覆シート52は、図3に示すように、最内層から順に上記最内層としての弱溶着層78と、アルミが蒸着されたPETやナイロン或いはアルミ箔等からなる遮光層77と、PETやナイロン等からなる補強層79とが積層されて構成されている。そして、上記弱溶着層78を構成する熱可塑性樹脂としては、フロントシート51の弱溶着層76を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂が採用され、例えば、弱溶着層76がポリエチレンにより構成されている場合には、ポリプロピレン、或いはポリプロピレンがブレンドされたポリエチレン等が採用されるため、上記フロントシート51と被覆シート52とは、比較的容易に剥離可能な状態で溶着されることとなる。
なお、上記被覆シート52は、所定部分において溶着され、フロントシート51に剥離可能に接合されているが、これらの両シート51、52の具体的接合構造は、これに限定されるものではなく、例えば、被覆シート52とフロントシート51との少なくとも何れか一方の接合面に粘着層を設け、この粘着層を介して剥離可能に接合されるものであってもよい。
また、上記被覆シート52は、上部区画室5に収容された光変異性の薬剤を遮光する、すなわち、上記遮光層77を有する遮光部52aと、この遮光部52aの下端から延出され、下部区画室7の前方に配設される隠蔽部52bとを備えている。なお、本実施形態では、上記遮光部52a及び、隠蔽部52bが一枚のシートによって、被覆シート52として形成されているが、これに限定されることはなく、上記遮光部52a及び、隠蔽部52bをそれぞれ別々に形成した後、これらを一体的に接合し、被覆シート52を構成するようにしてもよい。また、本実施形態では、隠蔽部52bと下部収容容器8とが未接合の状態とされ、当該隠蔽部52bが上記遮光部52aを上記フロントシート51から剥離させるための掴み代として機能するようになっている。
上記被覆シート52の遮光部52aは、図1及び、図2に示すように、その周縁部Pにおいて上部区画室5の前面を被覆した状態でフロントシート51に剥離可能に接合されている。そして、この被覆シート52がフロントシート51に接合されている状態では、上記遮光部52aにおける遮光層77により、上部区画室5に収容された薬剤がフロントシート51を通して光に晒されることから回避される結果、薬剤バッグ1の外部からフロントシート51を通して上部区画室5内を視覚的に確認することができない状態となっている。一方、上記被覆シート52が剥離されると、フロントシート51を通して上部区画室5内を視覚的に確認することできる状態となる。
上記隠蔽部52bは、上記遮光部52aの幅寸法より若干小さい幅寸法に設定され、下部収容容器8の表面に沿うように上下方向に延びている。また、本実施形態において、隠蔽部52bは、上記残量数値部S1の75mLの部分と、これに対応する目盛り部M1とを隠蔽するように、下部収容容器8の途中部まで延びている。
上記排出ポート3は、下方に向けて開口する排出孔3aと、この排出孔3aの内部に配設された被穿孔部(図示せず)とを備えている。この被穿孔部は、弾性を有する合成樹脂等で形成され、穿刺針等が突き刺されることにより当該針内へ薬剤収容室内の薬剤を排出可能に構成される一方、当該針が引抜かれることにより弾性力に応じた復元力によって薬剤収容室内の薬剤が排出不可となるように上記排出孔3aを閉塞するように構成されている。
次に、以上のように構成された薬剤バッグ1を使用する場合の手順について説明する。
まず、上記薬剤収容室4内の薬液総量を確認するために、上記のように目盛り部M1及び、残量数値部S1を隠蔽する隠蔽部52bを上方へ引き上げると、この操作に応じて上記周縁部Pにおいて接合された遮光部52aもフロントシート51から剥離される。
次いで、バッグ本体2の下部収容容器8を手で押圧し、下部区画室7の室内圧力が高まると、この圧力に応じて弱シール部4a、4bが剥離して上下両区画室5、7が連通した状態となる。この状態で薬剤バッグ1を上下に振動させ、両区画室5、7に収容されている薬剤を混合する。すなわち、上部区画室5に収容されている薬剤を下部区画室7に収容されている溶解液に溶解させ、患者に投与する混合薬剤を調整する。
そして、バッグ本体2のハンガー孔54にバッグスタンドの係止部を挿入して、薬剤バッグ1(バッグ本体2)を掛け吊るし、排出ポート3の被穿孔部に対して穿刺針を突き刺して、当該穿刺針に接続されたチューブを介してバッグ本体2内の混合した薬剤を患者に投与する。
以上説明したように、上記薬剤バッグ1によれば、上記被覆シート52の隠蔽部52bが下部収容容器8に設けられた残量表示部Hの少なくとも一部(75mLの残量数値部S1と、これに対応する目盛り部M1)を隠蔽するように構成されているため、薬剤バッグ1を使用する場合には、薬剤を排出するための一連の投与作業として、残量表示部Hを用いて薬剤残量を確認するために、上記隠蔽部52bから残量表示部Hを露出させる必要が生じる。そして、隠蔽部52bから残量表示部Hを露出させる過程においては、上記被覆シート52の一部を構成する隠蔽部52bがバッグ本体2から変位されることに伴い、被覆シート52がバッグ本体2に取付けられていること及び、当該被覆シート52がバッグ本体2から剥離されるべきものであることを使用者へ認識させることができる。一方、上記のように隠蔽部52bがバッグ本体2から剥離されることに応じて、この隠蔽部52bを備える被覆シート52全体をバッグ本体2から剥離することが可能となる結果、被覆シート52の遮光部52aもバッグ本体2から剥離され、当該遮光部52aにより遮光された薬剤の存在を使用者に対して視覚的に認識させることができる。
上記のように、上記薬剤バッグ1は、一連の投与作業を行う過程において、被覆シート52の剥離を確実に実施させることにより、薬剤の混合状態や保存状態等を視覚的に確認させることができる結果、薬剤を適正に投与することができる。
なお、上記実施形態においては、隠蔽部52bが75mLの残量数値部S1と、これに対応する目盛り部M1とを隠蔽するように構成されているが、この構成に代えて、以下のような構成とすることもできる。
図5は、本発明の第二の実施形態に係る薬剤バッグを示す正面図であり、上記バッグ本体2及び、排出ポート3は、上記と同様の構成を有するため、これら同様の構成に対しては、同符号を付すとともに、以下説明を省略する。
図5を参照して、第二の実施形態の薬剤バッグ101は、被覆シート152を備えている。この被覆シート152は、上述した遮光部52aと同様の構成を有する遮光部152aと、この遮光部152aの下方へ突出する隠蔽部152bとを備えている。上記遮光部152aは、上記遮光部52aと同様に上部収容容器6のフロントシート51に対して周縁部Pで剥離可能に接合され、上部区画室5内の薬剤を遮光するようになっている。一方、上記隠蔽部152bは、上下方向に延びる短冊状に形成され、その下端部が下部収容容器8の溶着部分(すなわち、下部区画室7の下端部を構成するための溶着部分)に対して接合部J1で剥離可能に接合されている。
なお、第二の実施形態の薬剤バッグ101は、下部収容容器8の上端部の閉塞工程と同時に、上部収容容器6及び下部収容容器8の連結工程を行った後、被覆シート152を遮光部152aの周縁部Pでフロントシート51に対して剥離可能に接合し、次いで遮光部152aの下方に突出する隠蔽部152bを下部収容容器8の溶着部分に対して接合部J1で剥離可能に接合することにより製造される。
このように下部収容容器8に接合された隠蔽部152bの途中部は、残量数値部S1の全体、すなわち、75mL、50mL、25mLの全ての表示を隠蔽するように配設されている。また、上記隠蔽部152bは、上記接合部J1より若干下方位置まで延設され、この延設部分が被覆シート152をバッグ本体2から剥離させるための掴み代152cとして機能するようになっている。
上記のように構成された薬剤バッグ101を使用する場合には、上記薬剤収容室4内の薬液残量を確認するために、上記のように残量数値部S1の全体を隠蔽する隠蔽部152bを掴み代152cを掴んで上方へ引き上げることにより、当該隠蔽部152bが接合部J1から剥離されるとともに、この動作に応じて遮光部152aも周縁部Pから剥離される。このように被覆シート152をバッグ本体2から剥離させた後、上述した投与作業を行い、患者に対して混合薬剤を投与することとなる。
以上説明したように薬剤バッグ101によれば、隠蔽部152bが残量数値部S1の全体を隠蔽することにより、薬剤を排出するための一連の投与作業として薬剤総量を確認する場合に、当該隠蔽部152bをバッグ本体2から剥離させる必要が生じる結果、隠蔽部152bがバッグ本体2から剥離されるべきものであることを使用者に対して認識させることができる。
なお、上記薬剤バッグ101では、隠蔽部152bが残量数値部S1の全体を隠蔽することとしているが、これに限定されることはなく、目盛り部M1の全体を隠蔽することも可能であり、さらには、以下説明するように残量数値部S1と目盛り部M1の双方の全体を隠蔽することも可能である。
図6は、本発明の第三の実施形態に係る薬剤バッグを示す正面図であり、上記バッグ本体2及び、排出ポート3は、上記と同様の構成を有するため、これら同様の構成に対しては、同符号を付すとともに、以下説明を省略する。
図6を参照して、第三の実施形態の薬剤バッグ201は、被覆シート252を備えている。この被覆シート252は、上述した遮光部52aと同様の構成を有する遮光部252aと、この遮光部252aの下方へ突出する隠蔽部252bとを備えている。上記遮光部252aは、上記遮光部52aと同様に上部収容容器6のフロントシート51に対して周縁部Pで剥離可能に接合され、上部区画室5内の薬剤を遮光するようになっている。一方、上記隠蔽部252bは、上記遮光部252aの幅寸法より若干小さい幅寸法に設定され、下部収容容器8の表面に沿うように上下方向に延びるとともに、その下端部が下部収容容器8の溶着部分に対して左右一対の接合部J2で剥離可能に接合されている。
なお、第三の実施形態の薬剤バッグ201は、下部収容容器8の上端部の閉塞工程と同時に、上部収容容器6及び下部収容容器8の連結工程を行った後、被覆シート252を遮光部252aの周縁部Pでフロントシート51に対して剥離可能に接合し、次いで遮光部252aの下方に突出する隠蔽部252bを下部収容容器8の溶着部分に対して左右一対の接合部J2で剥離可能に接合することにより製造される。
このように下部収容容器8に接合された隠蔽部252bの途中部は、残量数値部S1及び、目盛り部M1の全体を隠蔽するように配設されている。また、上記隠蔽部252bは、その左側部が上記接合部J2より若干下方位置まで延設され、この延設部が被覆シート252をバッグ本体2から剥離させるための掴み代252cとして機能するようになっている。さらに、上記隠蔽部252bにおけるバッグ本体2に対する離反側の表面には、バッグ本体2から被覆シート252を剥離する必要がある旨を表示する連絡欄Vが印刷されている。
上記のように構成された薬剤バッグ201を使用する場合には、上記薬剤収容室4内の薬液残量を確認するために、上記のように残量数値部S1及び、目盛り部M1を隠蔽する隠蔽部252bを掴み代252cを掴んで上方へ引き上げることにより、当該隠蔽部252bが各接合部J2から剥離されるとともに、この動作に応じて遮光部252aも周縁部Pから剥離される。このように被覆シート252をバッグ本体2から剥離させた後、上述した投与作業を行い、患者に対して混合薬剤を投与することとなる。
以上説明したように薬剤バッグ201によれば、隠蔽部252bが残量数値部S1及び、目盛り部M1の全体を隠蔽することにより、薬剤を排出するための一連の投与作業として薬剤総量を確認する場合に、当該隠蔽部252bをバッグ本体から剥離させる必要が生じる結果、隠蔽部252bがバッグ本体2から剥離されるべきものであることを使用者に対して認識させることができる。
また、上記薬剤バッグ201によれば、上記隠蔽部252bにおける上記バッグ本体2に対する離反側の表面には、上記バッグ本体2と被覆シート252とを剥離する必要がある旨を表示する連絡欄Vが形成されているため、隠蔽部252bが一連の投与作業を行う過程において操作される場合に、被覆シート252がバッグ本体から剥離されるべきものであることを使用者に対してより確実に認識させることができる。なお、上記薬剤バッグ201においては、連絡欄Vに対して、バッグ本体2と被覆シート252とを剥離する必要がある旨を記載しているが、これに限定されることはなく、例えば、上記隠蔽部252bが残量表示部Hを隠蔽している旨を記載してもよく、さらには、これら記載の双方を記載してもよい。
さらに、上記第二、第三の実施形態の薬剤バッグ101、201によれば、上記隠蔽部152b、252bが接合部J1、J2でバッグ本体2に対して剥離可能に取付けられているため、薬剤総量を確認するために隠蔽部152b、252bをバッグ本体2から剥離させる必要が生じる結果、上記被覆シート152、252の一部を構成する隠蔽部152b、252bがバッグ本体2から剥離されることに伴い、被覆シート152、252がバッグ本体2に取付けられていること及び、当該被覆シート152、252がバッグ本体2から剥離されるべきものであることを使用者へ確実に認識させることができる。
また、薬剤バッグは、上記各実施形態の構成に代えて以下のような構成とすることもできる。
図7は、本発明の第四の実施形態に係る薬剤バッグを示す正面図であり、図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
各図を参照して、第四の実施形態の薬剤バッグ301は、上記上部収容容器6と下部収容容器8の構成が上下反転した状態、すなわち、上記上部収容容器6と同様の構成を有する本実施形態の下部収容容器308の下端部に対して排出ポート3が設けられる一方、上記下部収容容器8と同様の構成を有する本実施形態の上部収容容器306の上端部に対してハンガー孔54が形成されている。すなわち、上記下部収容容器308の下部区画室307には、光変異性の粉末の薬剤が収容される一方、上記上部収容容器306の上部区画室305には、上記粉末の薬剤を溶解するための溶解液が収容され、これら上部区画室305と下部区画室307とは、バッグ本体2内の薬剤収容室304が弱シール部4a、4b(上記各実施形態とは、上下反転した位置となる)により区画されることによって形成されている。
上記上部区画室305の側面には、薬剤収容室304内の薬剤残量の水位に対する指標としての目盛り部M2と、この目盛り部M2に対応する薬剤の残量数値を示す残量数値部S2が印刷されている。すなわち、上記目盛り部M2は、上部区画室305内の薬剤と、下部区画室307内の薬剤とが混合された混合薬剤の水位に対する指標であり、この水位に対応する薬剤量を残量数値部S2が数値で示している。本実施形態において、上記残量数値部S2は、125mL、100mLの2種類が上下方向に配列され、これらに対応した上下位置に上記目盛り部M2が形成されている。なお、本実施形態においては、上記目盛り部M2と、残量数値部S2とが残量表示部Hの一例を構成している。また、図では省略しているが、上記目盛り部M2及び、残量数値部S2よりも小さい残量を表示するための残量表示部が、上記下部収容容器308の側面(すなわち、図では被覆シート352に被覆されている部分)に印刷されている。
以上のように構成された薬剤バッグ301における下部収容容器308には、上記フロントシート51の前面に対して被覆シート352が剥離可能に接合されている。この被覆シート352は、下部区画室307内の薬剤を遮光する遮光部352aと、この遮光部352aの上端から延出され、上部区画室305の前方に配設される隠蔽部352bとを備えている。本実施形態では、隠蔽部352bと上部収容容器306とが未接合の状態とされ、当該隠蔽部352bが上記遮光部352aを上記フロントシート51から剥離させるための掴み代として機能するようになっている。
上記被覆シート352の遮光部352aは、下部区画室307の前面を被覆した状態でフロントシート51に対して周縁部Pで剥離可能に接合されている。一方、上記隠蔽部352bは、上記遮光部352aの幅寸法より若干小さい幅寸法に設定され、上部収容容器306の表面に沿うように上下方向に延びている。また、本実施形態において、隠蔽部352bは、上記残量数値部S2と、これに対応する目盛り部M2との全体を隠蔽するように、上部収容容器306の途中部まで延びている。
次に、以上のように構成された薬剤バッグ301を使用する場合の手順について説明する。
まず、上記薬剤収容室304内の薬液総量を確認するために、上記のように目盛り部M2及び、残量数値部S2を隠蔽する隠蔽部352bを下方へ引き下げると、この操作に応じて上記周縁部Pにおいて接合された遮光部352aもフロントシート51から剥離される。
次いで、バッグ本体2の上部収容容器306を手で押圧し、上部区画室305の室内圧力が高まると、この圧力に応じて弱シール部4a、4bが剥離して上下両区画室305、307が連通した状態となる。この状態で薬剤バッグ301を上下に振動させ、両区画室305、307に収容されている薬剤を混合する。すなわち、下部区画室307に収容されている薬剤を上部区画室305に収容されている溶解液に溶解させ、患者に投与する混合薬剤を調整する。
そして、バッグ本体2のハンガー孔54にバッグスタンドの係止部を挿入して、薬剤バッグ301(バッグ本体2)を掛け吊るし、排出ポート3の被穿孔部に対して穿刺針を突き刺して、当該穿刺針に接続されたチューブを介してバッグ本体2内の混合した薬剤を患者に投与する。
以上説明したように、上記薬剤バッグ301によれば、上記被覆シート352の隠蔽部352bが上部収容容器306に設けられた残量表示部Hを隠蔽するように構成されているため、薬剤バッグ301を使用する場合には、薬剤を排出するための一連の投与作業として、残量表示部Hを用いて薬剤残量を確認するために、上記隠蔽部352bから残量表示部Hを露出させる必要が生じる。そして、隠蔽部352bから残量表示部Hを露出させる過程においては、上記被覆シート352の一部を構成する隠蔽部352bがバッグ本体2から変位されることに伴い、被覆シート352がバッグ本体2に取付けられていること及び、当該被覆シート352がバッグ本体2から剥離されるべきものであることを使用者へ認識させることができる。一方、上記のように隠蔽部352bがバッグ本体2から剥離されることに応じて、この隠蔽部352bを備える被覆シート352全体をバッグ本体2から剥離することが可能となる結果、被覆シート352の遮光部352aもバッグ本体2から剥離され、当該遮光部352aにより遮光された薬剤の存在を使用者に対して視覚的に認識させることができる。
上記のように、上記薬剤バッグ301は、一連の投与作業を行う過程において、被覆シート352の剥離を確実に実施させることにより、薬剤の混合状態や保存状態等を視覚的に確認させることができる結果、薬剤を適正に投与することができる。
なお、上記各実施形態の薬剤バッグ1、101、201、301は、上記のように二つの区画室を備えるものに限定されることはなく、複数の区画室を備える薬剤バッグ、例えば、図9に示すような薬剤バッグを形成することも可能である。
図9は、図8の薬剤バッグ301の変形例を示す断面一部略図である。
図9を参照して、上記薬剤バッグ301には、上記弱シール部4aの下方位置に弱シール部4cが設けられ、この弱シール部4cにより、上記下部区画室307が二つの区画室307a、307bに区画されている。これら区画室307a、307bの内、排出ポート3と連通する区画室(以下、下側区画室307bと示す)は、薬剤が非充填の空室に形成されている。
上記構成によれば、仮に各区画室307a、305内の薬剤が非混合の状態で、一連の投与作業が実施された場合であっても、排出ポート3と連通する下側区画室307bが空室に形成されているため、薬剤収容室304内の薬剤を非排出に維持することが可能となる結果、不適正な薬剤の投与を抑制することができる。また、上記下側区画室307bが空室に形成されているため、例えば、区画室307a内に粉末の薬剤を収容している場合に、当該薬剤が上記排出ポート3内へ入り込み、この薬剤が、混合時に溶け残ってしまうといった不具合を未然に防止することができる。さらに、上記のように排出ポート3内へ薬剤が入り込んでしまうことを抑制することができるため、当該排出ポート3自体を光不透過性又は、酸素不透過性等のバリア性を有する材質で形成することが不要となる。
ただし、下側区画室307bが空室の場合、薬剤バッグを蒸気滅菌しても当該下側区画室307b内及び排出ポート3内の滅菌が不完全となる。なぜなら、蒸気滅菌は蒸気と直接接触させて菌を殺す滅菌方法であるから、水分と接触しない箇所の滅菌は困難であるからである。このような問題を防ぐためには、区画室305内に粉末の薬剤を収容し区画室307a内に溶解液を収容し、下部の二つの区画室307a、307bを区画する弱シール部4cの一部分に、当該区画室307aと307bを常時連通させておくスリットを形成すればよい。こうすることにより、上記区画室307a内の溶解液の一部をプライミング液として上記下側区画室307b内に入り込ませることができ、当該下側区画室307b内及びポート3内を蒸気滅菌することが可能となる。また、上記構成を採用する場合、弱シール部4cよりも弱シール部4aのシール強度を弱くし、混合が完了しない状態での薬剤の排出を防ぐようにしてもよい。
なお、上記各実施形態では、弱シール用シート40を介して溶着することにより弱シール部4a、4b、4cを形成することとしているが、これに限定されることはなく、例えば、弱シール部4a、4b、4cを他の溶着部分よりも短い加熱溶融時間に設定し、或いは溶着圧力や温度を小さい値に設定することにより、他の溶着部分よりも小さい外力で剥離しうるように構成すればよい。
さらに、上記各実施形態のバッグ本体2は、上部収容容器6、306と下部収容容器8、308とを別々に形成して、これらを連結することにより形成されているが、バッグ本体の具体的形状は特に限定されるものではなく、例えば、長尺の2枚のリアシートとフロントシートとを重ね合わせ、これらの両シートを所定個所で溶着することによって、バッグ本体2内を複数の区画室に区画するようにしてもよい。
また、上記の説明においては、遮光部52a、152a、252a、352aがそれぞれ光変異性の薬剤を遮光する場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、薬剤の酸化、吸湿及び、蒸散をそれぞれ抑制するために当該薬剤を被覆するアルミシート等も上記遮光部52a、152a、252a、352aを構成することとなる。すなわち、上記遮光部52a、152a、252a、352aは、外部から視覚的に確認できない状態となるように薬剤を被覆するものであればよい。
さらに、上記隠蔽部52b、152b、252b、352bは、残量表示部Hの少なくとも一部を隠蔽するように構成されていればよく、上記各実施形態と異なり、例えば、残量数値部S1おける数字の一部を、その数字が読取れない程度に隠蔽することも可能である。