JP4649854B2 - 薬剤バッグ - Google Patents

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Description

本発明は、医療現場等で使用される薬剤バッグ、詳しくはバッグ本体内が複数の区画室に区画され、各区画室に各種薬剤等、例えば液剤、粉末剤、固形剤が収容され、使用時に各区画室を連通させてこれらの区画室に収容されている薬剤等を混合し得る薬剤バッグに関する。
静脈注射等により患者に投与される薬剤として複数の薬剤を混合して使用するものがあり、このような薬剤には予め混合しておくと時間経過とともに変質する不安定なものがある。そして、従来から、このような不安定な薬剤を保管する場合には、この薬剤を構成する混合前の薬剤を個別に収容する複数の区画室を備え、使用時に各区画室を連通させて各区画室に収容されている薬剤を混合するように構成された薬剤バッグを用いるのが一般的である。
ところで、薬剤の中には長時間にわたって光に晒されると劣化するものがあり、このような光変異性の薬剤を上記区画室に収容する場合には当該区画室がアルミ箔層部等の遮光層部により被覆された薬剤バッグを用いることがある。
このような遮光層部を有する薬剤バッグは、例えば特許文献1に開示されるように、剥離可能な弱シール部によって、バッグ本体内が液剤を収容する液剤収容室と光変異性の乾燥薬剤を収容する薬剤収容室とに区画されている。この薬剤収容室を構成する内壁は、透明な可撓性シートから構成され、この内壁内の薬剤を遮光するように当該内壁を被覆するアルミ加工フィルムや着色フィルムからなる遮光層部を有する外壁がバッグ本体に対して剥離可能に取付けられている。
そして、通常、上記薬剤バックの使用時には、上記液剤区画室を手で押圧することにより当該液剤区画室内を加圧させ、このとき発生する液剤の圧力を利用して上記弱シール部を剥離させることにより液剤区画室と薬剤区画室とを連通させ、各区画室内の薬剤を混合する。次いで、バッグ本体に設けられたハンガー孔をバッグスタンドの係止部に掛け吊す等の作業が行われるとともに、薬剤を患者へ注入するためのチューブ等が薬剤バックのポートに接続され、薬剤バック内の混合された薬剤が患者へ投与されることとなる。一方、上記一連の投与作業に加え、適正な状態の薬剤を投与するため、上記外壁を剥離して透明な可撓性シートを通して薬剤の混合状態や保存状態等を視覚的に確認することとしている。
意匠登録第1107140号公報
しかしながら、上記特許文献1の薬剤バッグを使用する場合、上記視覚的な確認の必要性を喚起しているにもかかわらず、例えば、使用者の慣れに伴い外壁(以下、被覆シートと示す)の剥離が行われないことや、煩雑時に使用者が被覆シートの剥離を失念してしまうことがあり、このような場合には、上記薬剤収容室内の薬剤を視覚的に確認することなく、一連の投与作業を行うこととなる結果、本来混合すべき薬剤を非混合のままで患者へ投与したり、外観の変化した薬剤をそのまま混合して患者へ投与したりするおそれがあった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一連の投与作業を行う過程において被覆シートの剥離を確実に実施させることにより、薬剤の混合状態や保存状態等を視覚的に確認せしめ、もって混合した薬剤を適正に投与することができる薬剤バッグ及びその製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、請求項1に係る薬剤バッグは、少なくとも一部に設けられた透光部を通して視認し得る状態で薬剤を収容可能な薬剤収容室を有するバッグ本体を備え、このバッグ本体には、上記薬剤収容室を複数の区画室に区画する弱シール部が設けられ、特定の区画室の室内圧力を高めることにより該区画室と隣接する弱シール部のシール状態が解除されるように構成された薬剤バッグにおいて、上記バッグ本体に対して剥離可能に取り付けられた被覆シートと、上記バッグ本体に設けられ該バッグ本体を掛け吊すためのハンガー係合部とをさらに備え、上記被覆シートは、上記透光部の所定部分を被覆することにより少なくとも一つの区画室内に収容される薬剤を遮光する遮光部と、この遮光部に連設され被覆シートが取り付けられた状態で上記ハンガー係合部に対してその使用を妨げるように剥離可能に接合される連設部とを備え、上記ハンガー係合部の周縁にハンガー孔の周縁となる部分に沿って予め切込み部が設けられる一方、上記連設部がこの切込み部の内側におけるバッグ本体部分に接合され、この連設部を剥離することにより上記切込み部の内側のバッグ本体部分が切り取られてハンガー孔が形成されることを特徴とする。
この発明によれば、上記被覆シートの連設部が、当該被覆シートが取り付けられた状態でハンガー係合部の使用を妨げるように上記バッグ本体に接合されているため、連設部を剥離しない限り上記バッグ本体を例えばバッグスタンドの係止部等に掛け吊すことができず、従って混合した薬剤を患者に投与するために行われる一連の投与直前作業として、使用者によって連設部をバッグ本体から剥離してハンガー係合部をその使用が妨げられた状態から使用可能な状態に移行させる必要が生じる。そして、この連設部が剥離されると、連設部が連設されている遮光部もこの剥離過程で一挙に剥離されることとなり、遮光部により遮光されていた薬剤が透光部を通して露出し、薬剤の混合状態や保存状態等を視覚的に確認させることができる。このように、一連の投与直前過程において、遮光部の剥離を確実に実施させることにより、使用者に対して薬剤の混合状態や保存状態等を視覚的に確認させることができ、このため薬剤を適正に投与することができる。
また、上記ハンガー係合部の周縁にハンガー孔の周縁となる部分に沿って予め切込み部が設けられる一方、上記連設部がこの切込み部の内側におけるバッグ本体部分に接合され、この連設部を剥離することにより上記切込み部の内側のバッグ本体部分が切り取られてハンガー孔が形成されるので、連設部を剥離するだけで確実にハンガー孔を貫通した状態で形成することができる。しかも、ハンガー孔形成領域には切込み部が形成されているだけでハンガー孔は貫通した状態で形成されていないので、ハンガー孔を形成するために確実に連設部が剥離されるとともに、この剥離に伴って確実に遮光部が剥離され、これにより上記視覚的な確認を行わせることができる。
請求項に係る薬剤バッグは、請求項記載の薬剤バッグにおいて、上記切込み部がミシン目であることを特徴とする。このように構成すれば、連設部の剥離に伴い確実にハンガー孔を形成することができる。
請求項に係る薬剤バッグは、請求項1または請求項2に記載の薬剤バッグにおいて、上記遮光部と連設部とが一体に形成されていることを特徴とする。このように構成すれば、連設部の剥離に伴ってより一層確実に遮光シートが剥離される。しかも、遮光部と連設部とを別々に製造する場合に比べて製造効率を向上させることができる。
請求項に係る薬剤バッグは、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の薬剤バッグにおいて、上記遮光部は、上記遮光される薬剤が収容される区画室を掛け吊し方向に沿って跨ぐように配設されていることを特徴とする。このように構成すれば、遮光部により遮光された薬剤が収容される区画室において、該遮光部が剥離されることにより掛け吊し方向の全長にわたって区画室の内部を視覚的に確認することができ、より精度の高い確認作業を実施することができる。
請求項に係る薬剤バッグは、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の薬剤バッグにおいて、上記遮光部はハンガー係合部の近傍に配置された区画室に対応する透光部を被覆することを特徴とする。このように構成すれば、遮光部に連設される連設部を可及的に短く形成することができ、連設部の新設に伴う経済負担を極力低減することができる。
本発明の薬剤バッグによれば、遮光部が上記バッグ本体を掛け吊すためのハンガー孔が形成されるハンガー孔形成領域を被覆した状態で上記バッグ本体の表面に剥離可能に接合され、この遮光部を剥離することにより上記ハンガー孔形成領域にハンガー孔が貫通した状態で形成されるので、上記バッグ本体を例えばバッグスタンドの係止部に掛け吊すためには遮光部を剥離しなければならず、この遮光部は区画室を被覆する遮光層部の一部が形成された遮光シートに連設されているので、遮光部の剥離に伴って遮光シートも確実に剥離される。しかも、この遮光シートを剥離することにより上記一の区画室内を視認可能に構成されているので、遮光層部により被覆された区画室内部が少なくとも一部において露出し、この露出部分を通して薬剤の保存状態や混合状態等を視覚的に確認することができる。このように、患者に薬剤を投与するに当たって確実に遮光シートが剥離され、この剥離された部分を通して薬剤の保存状態や混合状態を視覚的に確認することができるので、患者に対して混合した薬剤を適正に投与することができる。
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施形態の薬剤バッグは、光変異性の粉末の薬剤と溶解液(液剤)との2種類の薬剤(ここでは溶解液や稀釈液等を含めた広い概念で用いる)を混合するものについて説明するが、混合する薬剤やその性質、種類等はこれに限定するものではない。すなわち、混合する薬剤の中に液剤、遮光される薬剤が含まれていればよく、例えば光変異性の液剤と、粉末もしくは固形の薬剤、または稀釈液としての液剤等とを混合するものであってもよく、また混合する薬剤も3種類以上であってもよい。ここで、遮光される薬剤とは、光に晒されると変異する光変異性の薬剤はもちろんのこと、酸化、吸湿、水分蒸散を防止する目的からアルミシート等の遮光シートにより被覆される薬剤も含まれる。
図1は本発明に係る薬剤バッグを示す正面図である。図2は図1のII−II線断面図である。図3は図1のIII−III線断面図である。これらの図に示すように、薬剤バッグ1は、正面視略縦長方形状のバッグ本体2と、このバッグ本体2の下部に設けられたポート3とを備える。
上記バッグ本体2は、その内部に透光部を通して視認し得る状態で薬剤を収容可能な薬剤収容室4を備え、この薬剤収容室4が弱シール部4a,4bにより上下二つの区画室5,7に区画されている。この上部区画室5には、光変異性の固形の薬剤(例えば塩酸ミノサイクリン)を収容し得るものとなされている一方、下部区画室7には、上記固形の薬剤のための溶解液(例えば生理食塩液)を収容し得るものとなされている。具体的には、このバッグ本体2は、上部区画室5を構成する上部収容容器6と、下部区画室7を構成する下部収容容器8とを備え、予め別体として形成されたこれらの収容容器6,8が各区画室5,7を連通することができるような状態で連結されている。
なお、区画室の数やバッグ本体2内の配置態様等は特に限定するものではなく、混合すべき薬剤の種類やその態様等を考慮して適宜設定される。
上部収容容器6は、正面視略方形状を呈する可撓性容器であり、上記上部区画室5内に水分、酸素と光を透過しないように構成されている。この上部収容容器6は、遮光層70を有するリアシート50とこのリアシート50の前面に配設されたフロントシート51とがその周縁部において溶着により接合されて袋状に形成され、その上端部における接合部分の略中央のハンガー孔形成領域に両シート50,51を貫通した状態で所定形状(図1では円形状)のハンガー孔54が設けられている。
具体的には、リアシート50は、光を遮断する遮光層70と、周縁部においてフロントシート51と強固に溶着し得る熱可塑性樹脂からなる最内層とを含む積層シートにより構成される。本実施形態では、図3に示すように、最内層から順にポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂からなる溶着層71、アルミが蒸着されたPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロン或いはアルミ箔等からなる遮光層70、PETやナイロン等からなる補強層72が積層されて構成されている。そして、上記遮光層70により、上部区画室5に収容された薬剤がリアシート50を通して光に晒されることを防止しており、そのためこのリアシート50を通して上部区画室5内を視認することができないものとなっている。なお、本実施形態ではこの遮光層70は水分及び酸素も透過しないように構成されている。
フロントシート51は、周縁部においてリアシート50と溶着し得る熱可塑性樹脂からなる最内層を含む積層シートであって、このフロントシート51を通して上部区画室5内を視認することができるように透明のシート(半透明、着色透明シートを含む)として構成されている。すなわち、このフロントシート51が透光部に相当する。本実施形態では、図3に示すように、最内層から順にポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂からなる溶着層73、シリカやアルミナが蒸着されたPETやナイロン或いはEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)等からなって水分及び酸素を透過しないように構成されたバリア層74、PETやナイロン等からなる補強層75、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等からなる弱溶着層76が積層されて構成されている。このフロントシート51の溶着層73は、上記リアシート50の溶着層71と相溶性の高い熱可塑性樹脂が採用され、各シート50,51とを強固に溶着(強シール)することができるものとなされている。
上記リアシート50とフロントシート51との具体的接合構造について説明する。上部収容容器6の上端部及び左右側縁部においては溶着により強固に接合されている。一方、上部収容容器6の下端部においては、弱シール用シート40がその下端部が各シート50,51の下端縁から突出した状態で介設され、この弱シール用シート40の上端部において該弱シール用シート40を介して弱溶着により接合されている(図5参照)。すなわち、上記上部収容容器6の下端部には弱シール用シート40を用いて弱シール部4aが形成され、この弱シール部4aは上下区画室5,7の少なくともいずれか一方の室内圧力を高めることにより剥離するように構成されている。具体的には、この弱シール用シート40は、リアシート50及びフロントシート51の溶着層71,73を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂により形成されている。例えば、溶着層71,73としてポリエチレン系の合成樹脂が採用されている場合には、弱シール用シート40としてポリエチレン及びこれと相溶性を有しない樹脂、例えばポリプロピレン等の混合物が好適に採用される。このように弱シール用シート40を構成する熱可塑性樹脂として、溶着層71,73を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂を採用しているので、該溶着部分である弱シール部4aを比較的容易に剥離させることができる。
また、上部収容容器6は、上記フロントシート51の前面に、上記上部区画室5の前面及びハンガー孔54を被覆する態様で剥離可能に接合された被覆シート52を備える。
被覆シート52は、光を遮断する遮光層77(遮光層部)と、フロントシート51の最外層(本実施形態では弱溶着層76)を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂からなる最内層とを含む積層シートにより構成される。本実施形態では、被覆シート52は、図3に示すように、最内層から順に上記最内層としての弱溶着層78と、アルミが蒸着されたPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロン或いはアルミ箔等からなる遮光層77、PETやナイロン等からなる補強層79とが積層されて構成されている。そして、上記弱溶着層78を構成する熱可塑性樹脂としては、フロントシート51の弱溶着層76を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂が採用され、例えば弱溶着層76がポリエチレンにより構成されている場合には、ポリプロピレン、或いはポリプロピレンがブレンドされたポリエチレン等が例示され、この被覆シート52をフロントシート51から比較的容易に剥離させることができるようになされている。
なお、上記被覆シート52は、所定部分において溶着(弱シール)され、フロントシート51に剥離可能に接合されているが、これらの両シート51,52の具体的接合構造はこれに限定されるものではなく、例えば被覆シート52とフロントシート51との少なくともいずれか一方の接合面に粘着層を設け、この粘着層を介して剥離可能に接合されるものであってもよい。
具体的に、この被覆シート52は、上部区画室5の前面を被覆する略方形状の遮光部52aと、この遮光部52aの上端から延出し、上記ハンガー孔54(ハンガー孔形成領域)を被覆する左右対称舌状の連設部52bとを備える。なお、本実施形態では、上記のように遮光部52aと連設部52bとが被覆シート52として一体に形成された場合について説明しているが、これらの各部52a,52bが別体として形成されるものであってもよいことはいうまでもない。
この被覆シート52の遮光部52aは、図1及び図2に示すように、その周縁部において上部区画室5の前面を被覆する態様でフロントシート51に剥離可能に接合されている。そして、この被覆シート52がフロントシート51に接合されている状態では、上記遮光部52aにおける遮光層77により、上部区画室5に収容された薬剤がフロントシート51を通して光に晒されることを防止しており、そのためこのフロントシート51を通して上部区画室5内を視認することができないものとなっている。一方、上記被覆シート52が剥離されると、フロントシート51を通して上部区画室5内を視認することができるものとなされている。
また、上記遮光部52aの上縁部における連設部52bが延出された部分の両脇には、略三角形状に切り込まれた切り欠き部52cを有し、被覆シート52の剥離の際に、遮光部52aが上記切り欠き部52cから切り欠かれ、遮光部52aの両側部における接合部分を接合させた状態で幅方向中央領域の遮光部52aを掛け吊し方向の全長にわたって剥ぎ取ることができるものとなされている。
被覆シート52の連設部52bは上記ハンガー孔54を基準にして遮光部52aと反対側の位置でフロントシート51に剥離可能に接合され、この接合状態においてはハンガー孔54を閉塞した状態、すなわち当該ハンガー孔54にバッグスタンド等の係止部を適正に挿入することができない状態で当該ハンガー孔54を被覆するものとなされている。従って、この連設部52bが接合されている状態では、ハンガー孔54は貫通した状態、すなわちハンガー孔54として機能する状態になく、連設部52bが剥離されることによりハンガー孔54が貫通した状態で形成されることになる。
より具体的には、連設部52bの接合部58は、図1及び図4に示すように、ハンガー孔54の周縁部から外れた位置であって、連設部52bの上縁部に沿って設けられ、細長く形成されている。このように、接合部58をハンガー孔54の周縁部から外れた位置に形成することにより、該連設部52bの剥離に伴って、ハンガー孔54周縁部に過度の応力が作用して該ハンガー孔54の周縁から層間剥離等、バッグ本体2が引き裂かれることを効果的に防止することができる。
なお、上記接合部58の形状は、特に限定されるものではなく、ハンガー孔54を閉塞させる観点から適宜設定される。従って、例えば接合部58の形状を、上記ハンガー孔54の全部或いは一部を取り囲む態様で、円形、楕円形、方形、円弧状、コ字状形状等に設定してもよい。
こうして、上記構成の上部収容容器6は、リアシート50の遮光層70と被覆シート52の遮光部52aにおける遮光層77とにより完全にないし略完全に被覆されている。すなわち、上部収容容器6内の上部区画室5が上記遮光層70,77により被覆されているので、この上部区画室5内へ差し込む光を遮断することができ、このため上部区画室5に収容された薬剤が光に晒されて外観が変化することを効果的に防止することができる。また、上部区画室5が遮光層70,77により被覆されている状態では、上部区画室5内を視認することができないが、上記遮光層70,77の一部が剥離可能な遮光部52aに形成されて、この遮光部52aを剥離することにより上記上部区画室5内を視認可能に構成されているので、遮光部52aを剥離することにより収容された薬剤の状態を確認することができる。
一方、下部収容容器8は、正面視略方形状を呈する可撓性容器であり、上記下部区画室7内に液剤を収容し得るように構成されている。この下部収容容器8は、熱可塑性合成樹脂を含む筒状のシートの上下端部が溶着により接合されて袋状に形成され、その下端縁の略中央部には円筒状の上記ポート3が下部区画室7に接続された状態で設けられている。
具体的には、上記下部収容容器8は、透明なシート(半透明、着色透明シートを含む)により内部が視認可能に構成され、その側面に内容量を示す目盛り等が印刷されている(図示せず)。この下部収容容器8を形成する透明筒状シートは、ポリエチレン又は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成されたシートである。なお、上記下部収容容器8を形成する透明筒状シートは、上記単層構造のものに限定されるものではなく、複層構造のもの、例えば最内層から順にポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる内面層、シリカが蒸着されたPET等からなるバリア層、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる外面層が積層されて構成されているものであってもよい。
この筒状透明シートの具体的接合構造は、下端部においてはポート3を差し込んだ状態で溶着により強固に接合されている一方、上端部においては上記上部収容容器6の下端縁から突出する弱シール用シート40の下端部を介設した状態で溶着により接合されている(図5参照)。すなわち、本実施形態の薬剤バッグ1では、下部収容容器8の下端部の溶着工程と両収容容器6,8との連結工程とが同時に行われることになる。
具体的には、下部収容容器8の上端開口部に弱シール用シート40の下端部が挿入されるとともに、リアシート50とフロントシート51との間に下部収容容器8の上端部が挟み込まれ、この状態で重ね合わせ部分において溶着することにより上部収容容器6と下部収容容器8とが連結される。また、このとき、弱シール用シート40の下端部が上記筒状透明シートに溶着されて弱シール部4bが形成される。この弱シール部4bも、区画室5,7の室内圧力を高めることにより剥離可能に構成され、従って、弱シール用シート40は上記透明筒状シートの内面層を構成する熱可塑性樹脂と相溶性の小さい熱可塑性樹脂により形成されている。
次に、以上のように構成された薬剤バッグ1の使用説明を行う。
まず、薬剤バッグ1、特にバッグ本体2を掛け吊すためのハンガー孔54を貫通した状態で形成するために、被覆シート52を剥離する。
具体的には、被覆シート52の連設部52bの接合されていない部分を手で摘んで下方に引っ張ると、当該連設部52bが剥離して、ハンガー孔54が貫通した状態で形成される。この連設部52bは被覆シート52として遮光部52aと一体形成されているので、上記連設部52bの引っ張り動作に伴い、遮光部52aも確実に剥離させることができ、これによりフロントシート51の略全面が露出し、該フロントシート51を通して上部区画室5に収容されている薬剤の保存状態を視覚的に確認することができる。
そして、バッグ本体2の下部収容容器8を手で押圧すると、下部区画室7の室内圧力が高まり、これにより弱シール部4a,4bが剥離して上下両区画室5,7が連通した状態となる。この状態で薬剤バッグ1を上下に振動させ、両区画室5,7に収容されている薬剤を混合する。すなわち、上部区画室5に収容されている薬剤を下部区画室7に収容されている溶解液に溶解させ、患者に投与する混合薬剤を調製する。
この状態においても、被覆シート52が剥離されてフロントシート51の略全面が露出しているので、該フロントシート51を通して各薬剤の混合状態を薬剤バッグ1の略全長にわたって精度の高い確認作業を行うことができ、例えば溶け残っている薬剤がないか否かを容易に判断することができる。
そして、バッグ本体2のハンガー孔54にバッグスタンドの係止部を挿入して、薬剤バッグ1(バッグ本体2)を掛け吊し、ポート3にチューブ等を接続して、該チューブ等を介してバッグ本体2内の混合した薬剤を患者に投与する。
ここで、例えば煩雑時等において医師や看護師等の使用者が被覆シート52を剥離することを失念して各区画室5,7に収容された薬剤を混合することなく、薬剤バッグ1をバッグスタンドに掛け吊そうとした場合には、被覆シート52の連設部52bがハンガー孔54を閉塞した状態で被覆されているので、薬剤バッグ1をバッグスタンドに掛け吊すことができない。従って、患者に薬剤を投与するに当たって確実に連設部52bは剥離される。しかも、連設部52bを剥離することによって、上述したように、遮光部52aも確実に剥離させることができ、これにより、上部区画室5に収容されている薬剤を見て各区画室5,7に収容されている薬剤が混合されていないことを知ることができる。従って、この時点で遮光層70,77により隠蔽されている薬剤の保存状態を視覚的に確認した上で、当該薬剤を下部区画室7に収容されている薬剤と混合し、その混合状態を視覚的に確認することができる。
すなわち、この薬剤バッグ1によると、投与作業の一部であるハンガー孔54の形成作業として連設部52bが剥離され、この連設部52bの剥離作業に伴い遮光部52aも確実に剥離させることができる。また、遮光部52aが剥離されることから、この遮光部52aが剥離されたフロントシート51の略全面を通して薬剤の保存状態や混合作業の実施の有無、その混合状態等を視覚的に確認することができ、これにより患者に対して混合した薬剤を適正に投与することができる。
なお、以上に本実施形態に係る薬剤バッグ1について説明したが、この発明に係る薬剤バッグ1は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、以下のように変更することも可能である。
(1)上記実施形態では、バッグ本体2のハンガー孔形成領域に予めハンガー孔54が形成され、このハンガー孔54を閉塞した状態で連設部52bが配設されているものについて説明したが、連設部52bを剥離することによりハンガー孔形成領域にハンガー孔が貫通した状態で形成されるための具体的構成は、これに限定されるものではない。
例えば、図6に示すように、バッグ本体2に設けられたハンガー孔形成領域に予めハンガー孔54の周縁に沿うミシン目110が設けられる一方、連設部52bがこのハンガー孔形成領域の内側におけるバッグ本体部分111に溶着により強固に接合され、この連設部52bを剥離することにより上記ハンガー孔形成領域112の内側のバッグ本体部分111が切り取られてハンガー孔形成領域112にハンガー孔54が貫通した状態で形成されるように構成してもよい。このように構成すれば、連設部52bが剥離される前においては、上記ハンガー孔形成領域112にはミシン目110が形成されているだけでハンガー孔54が形成されていないので、バッグスタンド等に掛け吊すことができず、従ってハンガー孔54を形成するために確実に連設部52bが剥離されるとともに、これに伴って遮光部52aも一層確実に剥離されることになることになる。
(2)上記実施形態では、切り欠き部52cにより遮光部52aの幅方向中央領域だけを掛け吊し方向の全長にわたって剥ぎとるように構成しているが、切り欠き部52cは適宜省略することができる。すなわち、図7に示す薬剤バッグ100においては、切り欠き部を設けず、遮光被覆シート152の全体を剥離するものとなされている。
(3)上記実施形態では、被覆シート52が、掛け吊し方向に沿って上部区画室5を跨ぐように、すなわち被覆シート52が上部区画室5の上下方向全長にわたって、配設されているが、遮光被覆シートの配置態様はこれに限定されるものではない。例えば、上部区画室5の上半部のみを被覆するように剥離可能な遮光被覆シートを配設してもよい。ただ、上記実施形態のように被覆シート52が上部区画室5を跨ぐように配設されれば、遮光被覆シートが剥離された際に掛け吊し方向(上下方向)の全長にわたってフロントシート51が露出し、このフロントシート51の露出部分を通じて上部区画室5の内部を視覚的に確認することができ、より精度の高い確認作業を実施することができる。
(4)上記実施形態では、上下両区画室5,7のうちハンガー孔54の近傍に配置された上部区画室5が遮光層70,77により被覆されるものとなされているが、遮光層70,77により被覆される区画室は上部区画室5に限定されものではない。すなわち下部区画室7を遮光層により被覆するものであってもよい。ただし、上部区画室5を遮光層により被覆して、その遮光層の一部が被覆シートに形成されれば、連設部の延出長さを可及的に短く形成することができ、これにより使用する材料を抑制して経済的負担を低減することができる。
(5)また、図7に示すように、連設部152bにフロントシート151に接合されない剥がし代155を設け、この剥がし代155を摘んで被覆シート152を剥離し得るように構成してもよい。
(6)上記実施形態では、弱シール用シート40を介して溶着することにより弱シール部4a,4bを形成するものとなされているが、弱シール部4a,4bの形成方法は上記実施形態のものに限定されない。
例えば、弱シール部を他の溶着部分よりも短い加熱溶融時間に設定し、或いは溶着圧力や温度を小さい値に設定し、他の溶着部分よりも小さい外力で剥離し得るように構成してもよい。
(7)上記実施形態では、上部区画室5を被覆する遮光層70,77の一部が遮光部52aに形成される薬剤バッグ1について説明したが、上記遮光層70,77の全部が遮光部に形成されるものであってもよい。すなわち、遮光層70,77が遮光部に形成され、この遮光部によりリアシート及びフロントシートの表面を被覆するように配設されているものであってもよい。
(8)上記実施形態のバッグ本体2は、上部収容容器6と下部収容容器8とを別々に形成して、これらを連結することにより形成されるものとなされているが、バッグ本体の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば長尺の2枚のリアシートとフロントシートとを重ね合わせ、これらの両シートを所定箇所で溶着することによってバッグ本体内を複数の区画室に区画した状態で形成されるものであってもよい。
本発明に係る薬剤バッグを示す正面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1のIII−III線断面図である。 被覆シート部の接合状態を示す要部拡大断面図である。 上部収容容器と下部収容容器の連結状態を示す拡大断面図である。 他の実施形態に係る薬剤バッグの被覆シート部の接合状態を示す要部拡大断面図である。 更に他の実施形態に係る薬剤バッグを示す正面図である。
1 薬剤バッグ
2 バッグ本体
3 ポート
4a,4b 弱シール部
5 上部区画室
6 上部収容容器
7 下部区画室
8 下部収容容器
52 被覆シート
52a 遮光部
52b 連設部
54 ハンガー孔
70,77 遮光層

Claims (5)

  1. 少なくとも一部に設けられた透光部を通して視認し得る状態で薬剤を収容可能な薬剤収容室を有するバッグ本体を備え、このバッグ本体には、上記薬剤収容室を複数の区画室に区画する弱シール部が設けられ、特定の区画室の室内圧力を高めることにより該区画室と隣接する弱シール部のシール状態が解除されるように構成された薬剤バッグにおいて、
    上記バッグ本体に対して剥離可能に取り付けられた被覆シートと、上記バッグ本体に設けられ該バッグ本体を掛け吊すためのハンガー係合部とをさらに備え、
    上記被覆シートは、上記透光部の所定部分を被覆することにより少なくとも一つの区画室内に収容される薬剤を遮光する遮光部と、この遮光部に連設され被覆シートが取り付けられた状態で上記ハンガー係合部に対してその使用を妨げるように剥離可能に接合される連設部とを備え、上記ハンガー係合部の周縁にハンガー孔の周縁となる部分に沿って予め切込み部が設けられる一方、上記連設部がこの切込み部の内側におけるバッグ本体部分に接合され、この連設部を剥離することにより上記切込み部の内側のバッグ本体部分が切り取られてハンガー孔が形成されることを特徴とする薬剤バッグ。
  2. 請求項記載の薬剤バッグにおいて、上記切込み部がミシン目であることを特徴とする薬剤バッグ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の薬剤バッグにおいて、上記遮光部と連設部とが一体に形成されていることを特徴とする薬剤バッグ。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の薬剤バッグにおいて、上記遮光部は、上記遮光される薬剤が収容される区画室を掛け吊し方向に沿って跨ぐように配設されていることを特徴とする薬剤バッグ。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の薬剤バッグにおいて、上記遮光部はハンガー係合部の近傍に配置された区画室に対応する透光部を被覆することを特徴とする薬剤バッグ。
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