JP4551495B2 - 虫類捕獲用組成物・虫類捕獲用エアゾール剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂を含む組成物を容器から虫類に噴射することにより該虫類を樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物、特に、前記組成物をエアゾール容器に充填した虫類捕獲用エアゾール剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、虫類、特に、ゴキブリ、ムカデ、ゲジゲジ、クモ、カマドウマ、ケムシ、ハエ等の不快な虫類を防除する際には、殺虫エアゾール剤等により虫類を殺虫し、或いは、ハエたたき等により虫類を捕獲・殺虫していた。しかしながら、上述した殺虫エアゾール剤等では、ピレスロイド系、有機リン系、カーバメート系等の殺虫薬剤を用いるため、家屋内等で用いた場合には、家屋内がこれら殺虫薬剤で汚染される虞れがあり、また、ハエたたき等を用いる防除方法では、防除効果が充分でなく、不確実であった。
【0003】
そこで、かかる殺虫薬剤を用いない虫類の防除方法として、虫類に粘着性樹脂溶液を噴霧する方法(特開昭52−154778号公報参照、特開昭53−81380号公報参照)、或いは、虫類非粘着性樹脂の発泡物を噴出し、発泡物を比較的速やかに固化させることで、虫類を捕獲する方法(特開昭59−148703号公報参照)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように、虫類に粘着性の樹脂を噴霧し、或いは非粘着性樹脂の発泡物を噴出して捕獲する方法において、当該製剤は家屋内全域で使用され、特に、ゴキブリ等に対しては、ガスコンロ等の存在する台所等で使用されることが多い。従って、ユーザの誤使用、誤操作においてガスコンロ等の近傍で使用される可能性がある。
【0005】
樹脂を含有するエアゾール剤では、噴射物が火炎による着火後、燃焼を継続しつつ噴射方向に飛んで壁・床等の表面に付着して燃焼を続けるため、これら家屋内材質を焦がしてしまう可能性が考えられる。
【0006】
このような状況において、かかる樹脂を含有するエアゾール剤等の製剤について、その難燃化方法を充分に検討・提案した例は見当たらないのが現状である。
このため、かかる樹脂を含有するエアゾール剤の普及と相俟って、その難燃化技術の開発が強く望まれる。
【0007】
本発明の課題は、虫類を樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物及びそのエアゾール剤の難燃化技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、少なくとも樹脂を含む組成物を内容物として容器に充填し、前記組成物を虫類に噴射することにより該虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物において、第一に、虫類を被覆する樹脂を含む噴射物を難燃化する難燃剤として、オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンの両剤を組成物に配合すること、第二に、虫類を被覆する樹脂を膨張させる第1の発泡剤と、前記虫類を被覆する樹脂を含む噴射物を難燃化する第2の発泡剤としての有機或いは無機系ガス発泡剤とを組成物に配合すること、が上記課題を解決する方法として有効であるとの考えに想到した。
【0009】
即ち、本発明の一様相によれば、請求項1記載の発明のように、少なくとも樹脂を含む組成物を内容物として容器に充填し、前記組成物を虫類に噴射することにより該虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物において、前記虫類を被覆する樹脂を含む噴射物を難燃化する難燃剤として、オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンの両剤を前記組成物に配合したことを特徴とする虫類捕獲用組成物が得られる。
【0010】
ここに、「樹脂」は、粘着性の樹脂であるか非粘着性樹脂であるかを問わないが非粘着性樹脂を用いるのが好適である。この非粘着性樹脂としては、例えばブチラール樹脂、ポリメタクリレート(アクリル樹脂)、ポリスチレンの中から選ばれる1種又は数種の組み合わせで用いる。ポリメタクリレートの中には、メチルエステル、プロピルエステル、エチルエステル、ブチルエステル等があり、また、ポリエステルとの共重合体やメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルの共重合体もある。更に、ポリエチレン等を適宜配合することも可能である。
【0011】
「内容物」とは、容器に充填され、主として虫類に噴射されるものをいい、樹脂以外の有機溶剤や界面活性剤等を含んでもよい。尚、後述するように、「内容物」には、噴射剤等を含んでよいのは勿論である。「容器」とは、虫類に噴射される内容物等が充填・収容される収容体をいい、金属製、ガラス製、プラスチック製等材質は問わない。「被覆」とは、虫類の体(虫体)を覆い、虫体を包み込み、或いは閉じ込めることを含むが、虫体の一部に付着する場合を含む。
【0012】
また、「難燃剤」とは、プラスチック(樹脂)、ゴム、繊維、紙、木材等高分子有機材料を難燃化させるために使用される添加剤をいう。例えば、大部分のプラスチック(樹脂)は、炭化水素の有機物、即ち、炭素、水素、酸素の元素で構成されているため、燃え易い性質を有しているが、この燃える性質に燃えにくい性質を付与することを難燃化(防炎化、不燃化、耐燃化等ともいう)といい、かかる性質を付与するために使用する添加剤を「難燃剤」という(防燃剤、防炎剤、不燃剤ともいう)。かかる「難燃剤」としては、オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンの両剤を併用する。
【0013】
尚、本発明組成物は、基本的に殺虫薬剤を含まない虫類捕獲用組成物であるが、必要に応じて、更に、例えば、ピレスロイド系薬剤、有機リン系薬剤等の殺虫薬剤を添加することも可能である。
【0015】
尚、請求項に記載のように、前記オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンは前記内容物に対して、0.1〜40wt%配合することが可能である。但し、好適には、3〜30wt%配合するのが良い。
【0016】
また、本発明の他の様相によれば、請求項記載の発明のように、少なくとも樹脂を含む組成物を内容物として容器に充填し、前記組成物を虫類に噴射することにより該虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物において、前記虫類を被覆する樹脂を膨張させる第1の発泡剤と、前記虫類を被覆する樹脂を含む噴射物を難燃化する第2の発泡剤としての有機或いは無機系ガス発泡剤とを前記組成物に配合したことを特徴とする虫類捕獲用組成物が得られる。
【0017】
「発泡剤」とはプラスチック材料あるいはゴム素材に配合して所要条件下に発泡体を形成させる薬剤であり、加熱または化学反応をすることによって蒸気ないしガスを発生するものである。ここにいう「有機あるいは無機系ガス発泡剤」とは、化学変化によりガスを発泡して発泡現象を示す分解性発泡剤あるいは化学的発泡剤のことであり、「有機系」発泡剤としてはアゾジカルボンアミド(ADCA)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トリヒドラジノトリアジン(THT)などが挙げられ、また「無機系」としては重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジド化合物などが挙げられる。
【0018】
また、請求項記載のように、前記有機或いは無機系ガス発泡剤は、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムの中から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせから構成し得る。尚、請求項5記載のように、前記第1の発泡剤としてイソペンタンと、前記第2の発泡剤としての有機或いは無機系ガス発泡剤としてヒドラゾジカルボンアミドとを前記組成物に配合しても良い。
【0019】
尚、請求項6に記載のように、前記有機或いは無機系ガス発泡剤は前記内容物に対して、0.1〜40wt%配合することが可能である。但し、好適には、3〜30wt%配合するのが良い。
【0023】
尚、請求項記載のように、前記容器はエアゾール容器から成り、前記組成物が噴射剤と共にエアゾール容器に充填されているのが好適である。
【0024】
この場合、前記オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンを前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、0.1〜40wt%配合することができる。また、前記有機或いは無機系ガス発泡剤を前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、0.1〜40wt%配合することができる。但し、好適には、これらを3〜30wt%配合するのが良いのは上記と同様である。
【0025】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、第一の実施形態では、樹脂を含む組成物をエアゾール容器に充填し、組成物を虫類に噴射することにより虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用エアゾール剤において、前記組成物に難燃剤を配合した。この難燃剤には、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、オクチルジフェニルホスフェート、塩素化パラフィン、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、臭化ビニル、クロルエンド酸ジメチル、トリブトキシエチルホスフェート、デカブロモジフェニール(オキサイド)、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロムブタン、テトラブロムエタン、酸化アンチモン、臭化アンチモン、水和アルミナ、ペンタブロムクロルシクロヘキサン、4臭化アセチレン、トリス(ブロムクロロプロピル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクロルエチルホスフェート、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト、β−クロロエチル−アシッド・フォスフェート、トリオクチルホスフェート、ペンタクロルステアリン酸メチル、リン酸チタン、ビス(クロロプロピル)モノフェニルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェートの中から選択される1種又は2種以上の組み合わせを用いた。また、前記難燃剤が前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、3〜30wt%配合されているようにした。
【0026】
本実施形態では、上述した組成物に上記の難燃剤を配合するので、たとえ、ガスコンロ等の近傍で使用し、万が一、引火した場合でも、噴射物は速やかに消炎する。従って、壁・床等の表面に付着しても速やかに消炎するため、これら家屋内材質を焦がしてしまう虞れがない。
【0027】
次に、第二の実施形態では、樹脂を含む組成物をエアゾール容器に充填し、組成物を虫類に噴射することにより虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用エアゾール剤において、前記組成物に有機或いは無機系発泡剤を配合した。
この有機或いは無機系発泡剤には、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムの中から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを用いた。また、前記有機或いは無機系発泡剤が前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、3〜30wt%配合されているようにした。
【0028】
本実施形態では、上述した組成物に上記の有機或いは無機系発泡剤を配合するので、たとえ、ガスコンロ等の近傍で使用し、万が一、引火した場合でも、噴射物は速やかに消炎する。従って、壁・床等の表面に付着しても速やかに消炎するため、これら家屋内材質を焦がしてしまう虞れがない。
【0029】
【実施例】
表1に示す処方のエアゾールを作製し、30cmの距離からガスバーナーに向けてエアゾールを噴射した。ガスバーナーの火炎を通過させ、火炎の前方にある対象物に燃焼している噴射物を付着させ、噴射物の燃焼状態を観察した。対象物上で燃焼が継続する場合を「燃焼」、速やかに消炎する場合を「消炎」とし、効果の判定を行った。尚、エアゾールは噴射状態を調整するため、作製後0.55MPa(25℃)での窒素加圧を行った。
【表1】
Figure 0004551495
表1から明らかなように、難燃剤或いは有機発泡剤を配合していない比較例1では、燃焼が継続したのに対し、難燃剤を配合した実施例1〜6、並びに有機発泡剤を配合した実施例7及び8においては、噴射物は速やかに消炎した。
【0030】
更に、第三の実施形態では、樹脂を含む組成物をエアゾール容器に充填し、組成物を虫類に噴射することにより虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用エアゾール剤において、前記樹脂の少なくとも一部を難燃性樹脂から構成した。この難燃性樹脂には、塩化ビニル及び/又は熱硬化性樹脂を用いた。また、「熱硬化性樹脂」には、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂を用いた。これらが、前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、3〜30wt%配合されているようにした。
本実施形態では、上述した樹脂の少なくとも一部を難燃性樹脂から構成するので、たとえ、ガスコンロ等の近傍で使用し、万が一、引火した場合でも、噴射物は速やかに消炎する。従って、壁・床等の表面に付着しても速やかに消炎するため、これら家屋内材質を焦がしてしまう虞れがない。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、組成物に難燃剤或いは有機或いは無機系発泡剤を配合し、又は、上述した樹脂の少なくとも一部を難燃性樹脂から構成するので、たとえ、ガスコンロ等の近傍で使用し、万が一、引火した場合でも、噴射物は速やかに消炎する。従って、壁・床等の表面に付着しても速やかに消炎するため、これら家屋内材質を焦がしてしまう虞れがない。

Claims (9)

  1. 少なくとも樹脂を含む組成物を内容物として容器に充填し、前記組成物を虫類に噴射することにより該虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物において、前記虫類を被覆する樹脂を含む噴射物を難燃化する難燃剤として、オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンの両剤を前記組成物に配合したことを特徴とする虫類捕獲用組成物。
  2. 前記オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンが前記内容物に対して、0.1〜40wt%配合されていることを特徴とする請求項1に記載の虫類捕獲用組成物。
  3. 少なくとも樹脂を含む組成物を内容物として容器に充填し、前記組成物を虫類に噴射することにより該虫類を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物において、前記虫類を被覆する樹脂を膨張させる第1の発泡剤と、前記虫類を被覆する樹脂を含む噴射物を難燃化する第2の発泡剤としての有機或いは無機系ガス発泡剤とを前記組成物に配合したことを特徴とする虫類捕獲用組成物。
  4. 前記第2の発泡剤としての有機或いは無機系ガス発泡剤がアゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムの中から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせから成ることを特徴とする請求項記載の虫類捕獲用組成物。
  5. 前記第1の発泡剤としてイソペンタンと、前記第2の発泡剤としての有機或いは無機系ガス発泡剤としてヒドラゾジカルボンアミドとを前記組成物に配合したことを特徴とする請求項3記載の虫類捕獲用組成物。
  6. 前記有機或いは無機系ガス発泡剤が前記内容物に対して、0.1〜40wt%配合されていることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の虫類捕獲用組成物。
  7. 前記容器はエアゾール容器から成り、前記組成物が噴射剤と共にエアゾール容器に充填されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の虫類捕獲用エアゾール剤。
  8. 前記オクチルジフェニルホスフェート及び塩素化パラフィンが前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、0.1〜40wt%配合されていることを特徴とする請求項に記載の虫類捕獲用エアゾール剤。
  9. 前記有機或いは無機系ガス発泡剤が前記組成物と噴射剤を含むエアゾール内容量に対して、0.1〜40wt%配合されていることを特徴とする請求項に記載の虫類捕獲用エアゾール剤。
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