JP3792113B2 - 防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出発泡成形で得られた防蟻性熱可塑性樹脂発泡体およびその製造方法に関する。さらに、本発明によれば、建材として要求される難燃性を付与してなる防蟻性熱可塑性樹脂発泡体が提供され、かかる発泡体は、白アリ、キクイムシなどの食害を受けない断熱材、床下断熱材などに有用である。
【0002】
【従来の技術】
板状の熱可塑性樹脂発泡体、特にポリスチレン系樹脂発泡体は、優れた加工性と断熱性を有し、建材用断熱材として広く使用されている。これらの断熱材は、室内冷暖房の省エネルギー化の面からも必要不可欠な建築材料となっている。
【0003】
一方、暖房の普及と共にシロアリの生息地が北上し、ほとんど全国で住宅をはじめとする建築物のシロアリによる被害が発生している。このシロアリによる被害は、木材のみならず、天井、壁、床などの断熱材として使用される板状のポリスチレン系樹脂発泡体についても例外ではない。断熱材を木材と隣接させて使用した場合には、特にシロアリによる食害が顕著であり、この食害により断熱性が低下してしまうという問題があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、樹脂発泡体に防蟻剤を添加する方法が提案された。防蟻剤としては、ディルドリン、アルドリン、DDT、リンデン、ヘプタクロル、クロルデンなどの有機塩素系殺虫剤、CCA剤(銅・クロム・砒素剤)などの無機定着型の化合物が用いられてきた。
【0005】
しかしながら、これらの防蟻剤はいずれも人畜毒性が高く、環境汚染を引き起こす恐れがあり、現在ではその使用が禁止あるいは制限されている。例えば、ディルドリンやクロルデンは、防蟻性には優れているものの人畜毒性が高く、しかも難分解性で蓄積性を有することから、我が国では特定化学物質として使用が禁止されている。また、砒素化合物も非常に高い毒性を有し、防蟻剤として使用することはできない。
【0006】
そこで、近年は、比較的低毒性で、かつ環境汚染の恐れが少ないホキシム、クロルピリホスなどの有機リン系殺虫剤、プロポキサール、バッサなどのカルバメート系殺虫剤、アレスリン、レスメトリンなどのピレスリン系殺虫剤が用いられている(例えば、特公平7−103004号公報参照)。しかしながら、これらの殺虫剤でさえ安全性の点で不安が残る。
【0007】
特開平11−279321号公報には、防蟻剤として上記の殺虫剤を含有固着した発泡性スチレン系樹脂粒子(ビーズ)を予備発泡し、得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して得た防蟻性を持つ発泡性スチレン系樹脂が開示されている。しかしながら、上記の防蟻剤の耐熱温度は低く、これらの防蟻剤を、成形時の温度が100℃程度の型内発泡成形では使用できるが、混練・成形時の温度が200〜220℃程度の押出発泡成形では使用できないという問題があった。すなわち、ほとんどの防蟻剤が、押出発泡成形時に押出機内で熱劣化(熱分解)してしまい、防蟻性を有する押出発泡体を得ることができなかった。
【0008】
また、前記公報に記載の発泡性スチレン系樹脂は、表面に防蟻剤を含有固着したビーズを発泡させたものであり、樹脂成形体中の防蟻剤の分布に偏りが生じ易いので、防蟻効果の点でさらに改良が望まれていた。
一方、耐熱性を有する防蟻剤として無機系の防蟻剤があるが、これを使用して防蟻性が得られたとしても、難燃性が充分に得られなかった。
【0009】
特許第2610483号公報には、(4-エトキシフェニル)[3-(4-フルオロ-3-フェノキシフェニル)プロピル](ジメチル)シラン(以下、「シラフルオフェン」と称する)が安全性の高いシロアリ防除剤として有効であることが記載されている。また、特開平11−79917号公報には、有効成分としてシラフルオフェンとヒノキチオールまたはこれを含有する精油と、任意に3-ヨード-2-プロピルブチルカルバメートとを含有する木材用または土壌用の防蟻・防腐処理剤が開示されている。しかしながら、これらの公報には、熱可塑性樹脂発泡体への防蟻・防腐処理剤の添加、および押出発泡成形時の防蟻・防腐処理剤の耐熱性については一切記載されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、白アリ、キクイムシなどの食害を受けない断熱材、床下断熱材などとしてより有効性の高い防蟻性熱可塑性樹脂発泡体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点に鑑み鋭意研究を行った結果、押出発泡成形技術を用い、その際に熱分解せず、かつ低毒性で環境汚染の少ない防蟻剤を選択利用することにより、発泡体に防蟻剤が均一に分布し、有効性の高い熱可塑性樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
かくして、この発明によれば、ポリスチレン系樹脂組成物とその発泡に適する発泡剤および混練温度で熱的に安定な防蟻剤としてポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部のシラフルオフェン/イミダクロプリド=90〜80/10〜20(重量%)の混合物と、さらに難燃剤としてポリスチレン系樹脂100重量部に対して2.0〜5.0重量部のヘキサブロモシクロドデカンとを溶融混練し、押出発泡成形することによって得られた防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、(A)任意に難燃剤を含有するポリスチレン系樹脂組成物を加熱溶融する工程、(B)溶融したポリスチレン系樹脂組成物にその発泡に適する発泡剤を添加し混練する工程、(C)工程(B)よりも温度が低下した、溶融したポリスチレン系樹脂組成物に混練温度で熱的に安定な防蟻剤としてのシラフルオフェン/イミダクロプリド=90〜80/10〜20(重量%)の混合物を添加し混練する工程、および(D)溶融したポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡成形する工程からなる防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂組成物とその発泡に適する発泡剤および混練温度で熱的に安定な防蟻剤を溶融混練し、押出発泡成形することにより、例えば、加熱溶融された熱可塑性樹脂組成物にその発泡に適する発泡剤を加え、さらに混練温度で熱的に安定な防蟻剤を添加し、混練し、押出発泡成形することにより得られる。本発明における熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも熱可塑性樹脂からなり、熱可塑性樹脂100%のものを含む。
【0015】
本発明における「混練温度で熱的に安定な防蟻剤」における「混練温度」とは、使用する熱可塑性樹脂の種類により異なるが、例えば、熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂である場合に防蟻剤を添加し混練する温度は、220℃程度以下であるのが好ましい。したがって、本発明に使用する防蟻剤は、このような混練温度で安定なものが使用される。
【0016】
このような防蟻剤としては、例えば、シラフルオフェン、ニコチニール系化合物およびそれらの混合物が挙げられる。ニコチニール系化合物としては、1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-ニトロイミダゾリジン-2-イリデンアミン(以下、「イミダクロプリド」と称する)、N'-6-クロロ-3-ピリジルメチル-N-2-シアノ-N'-メチルアセタミジン(「アセタミプリド」とも称する)などが挙げられる。これらの防蟻剤は、特に熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂である場合に好適に用いられる。
上記の防蟻剤の中でも、主成分をシラフルオフェンとするイミダクロプリドとの混合物、例えば、シラフルオフェン/イミダクロプリド=90〜80/10〜20(重量%)の混合物は、熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂である場合に相乗的な防蟻効果が得られ、本発明の好ましい実施態様の1つである。
【0017】
防蟻剤は、加熱溶融された熱可塑性樹脂組成物にそのまま添加してもよいが、通常、適当に製剤化して添加される。製剤の例としては、液剤(例えば、有機溶剤溶液、乳化または懸濁液)、固形剤(例えば、粉剤、粒剤)が挙げられる。製剤化には、熱可塑性樹脂組成物の発泡および本発明の効果を妨げない有機溶剤、乳化剤、固体希釈剤などを適宜選択して使用できる。製剤化された防蟻剤中の防蟻有効成分の合計量は、0.1〜90重量%程度である。
このような製剤としては、特開平11−79917号公報に記載のものを用いることもできる。
【0018】
防蟻剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましい。防蟻剤の配合量が0.01重量部未満であると、防蟻性が充分に発揮されないので好ましくない。また、防蟻剤の配合量が5.0重量部を超えると、防蟻剤自体が可燃性であるために、燃焼性が増し、さらに押出機内で溶融樹脂の粘度が低下して、高発泡で難燃性に優れた発泡体が得られなくなるので好ましくない。また、防蟻剤自体が非常に高価であるので、その配合量は少ない方が好ましい。
【0019】
本発明における熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など公知の樹脂が挙げられ、中でもポリスチレン系樹脂が特に好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂としては、メルトフローインデックス(MFI)が10g/10min以下のものが好ましい。
【0020】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどのスチレン単量体の単独重合体、およびスチレン単量体とアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル(例えば、メチル、エチルなどとのエステル)、メタクリル酸エステル(例えば、メチル、エチルなどとのエステル)、無水マレイン酸、ブタジエンなどのビニル単量体との共重合体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、耐衝撃性スチレン樹脂(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体などが挙げられる。
【0021】
加熱溶融される熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤を含有するのが好ましく、さらに本発明の効果を妨げない範囲で他の添加剤を含有していてもよい。
難燃剤は、熱可塑性樹脂の種類により適宜選択することができる。例えば、ポリスチレン系樹脂に対しては、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が好ましく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂に対しては、ポリリン酸アンモニウムが好ましい。
【0022】
難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂や難燃剤の種類、求められる樹脂発泡体の物性により適宜決定すればよく、例えば、難燃剤がHBCDの場合には、熱可塑性樹脂100重量部に対して2.0〜5.0重量部が好ましく、3.0〜3.5重量部が特に好ましい。難燃剤の配合量が2.0重量部未満であると、充分な難燃性が得られないので好ましくない。また、難燃剤の配合量が5.0重量部を超えると、押出機内で溶融樹脂の粘度が低下し、発泡体に内部発泡が生じて、良好な発泡体が得られないことがあるので好ましくない。
また、他の添加剤としては、顔料、気泡核剤(例えば、タルク)などが挙げられる。
【0023】
本発明における発泡剤としては、熱可塑性樹脂の発泡に適するものであれば特に限定されない。例えば、ポリスチレン系樹脂に対しては、塩化メチル、塩化エチル、炭化水素(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(134a)、1,1-ジフルオロエタン(152a)、1,1,1-トリフロオロエタン、二酸化炭素およびこれらの混合物が挙げられ、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂に対しては、炭化水素(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン)、134a、152a、1,1,1-トリフロオロエタン、二酸化炭素およびこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
発泡剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して3.0〜10.0重量部が好ましく、5.0〜8.0重量部が特に好ましい。発泡剤の配合量が3.0重量部未満であると、充分な発泡倍率が得られないので好ましくない。また、発泡剤の配合量が10.0重量部を超えると、内部発泡を起こすので好ましくない。
【0025】
本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体は、優れた防蟻性に加えて、JIS A9511に規定する燃焼性を満たすものが好ましく、この燃焼性を満たす樹脂発泡体を得るために、前記のような難燃剤を溶融樹脂組成物に配合してもよい。
【0026】
JIS A9511に規定する燃焼性の測定法を以下に略記する。
まず、厚さ約10mm、長さ約200mm、幅約25mmの試験片を5個用意する。個々の試験片を固定し、炎を等速で試験片の一端から任意の点まで当てる。炎が任意の点まで達した後、炎を取り除き、その瞬間から炎が消えるまでの時間を測定し、5個の試験片の時間の平均値を求める。この平均値が燃焼性を意味する。なお、「JIS A9511に規定する燃焼性を満たす」とは、上記の平均値が3秒以内であることを意味する。
【0027】
本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体は、加熱溶融された熱可塑性樹脂組成物に前記の発泡剤および防蟻剤を混練し、押出発泡成形することによって得られ、より具体的には、次のような工程により製造することができる。
(A)任意に難燃剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融する工程
(B)溶融した熱可塑性樹脂組成物にその発泡に適する発泡剤を添加し混練する工程
(C)溶融した熱可塑性樹脂組成物に混練温度で熱的に安定な防蟻剤を添加し混練する工程、および
(D)溶融した熱可塑性樹脂組成物を押出発泡成形する工程
【0028】
図1は、本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体の製造に用いることができる装置の概略模式図の一例である。この装置は、連結管3を介して連結された第一押出機2と第二押出機4からなるタンデム型押出機およびこれに取り付けられた成形装置(一部のみ図示)5である。図中、1は熱可塑性樹脂組成物の供給口となるホッパーである。第二押出機4と成形装置5の間には、適宜、冷却機、ギアーポンプ、スタティックミキサーなどを設置し使用しても一向に差し支えない。
【0029】
本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、使用される装置が図1の装置の場合、工程(A)および工程(B)が第一押出機で順次連続して行われ、工程(C)の防蟻剤の添加および混練がそれぞれ連結管および第二押出機で行われるのが好ましい。
【0030】
より具体的には、まず、任意に難燃剤およびその他の添加剤を含有する熱可塑性樹脂組成物をホッパー1(図1の原料供給口A)から供給し、樹脂組成物を加熱溶融する(工程(A))。次いで、第一押出機内2でこの樹脂組成物を混練すると共に発泡剤を添加し(ガス状の発泡剤の場合は圧入する、図1の発泡剤供給口B)、樹脂組成物と発泡剤とをよく混練する(工程(B))。第一押出機2内の温度は、熱可塑性樹脂の種類により適宜設定する。例えば、ポリスチレン系樹脂の場合、設定温度の温度は220〜240℃程度である。
【0031】
連結管3において、溶融した樹脂組成物の温度は、工程(B)より徐々に低下する。このように温度が若干低下した樹脂組成物に防蟻剤を添加する(図1の防蟻剤供給口C)。例えば、ポリスチレン系樹脂の場合、防蟻剤を添加する温度は200〜220℃程度である。次いで、第二押出機4内で樹脂組成物と防蟻剤とをよく混練しつつ(工程(C))、発泡に適した樹脂温度まで樹脂組成物を冷却する。
この樹脂組成物を、第二押出機4の先端(出口側)に装着した金型口金部から押出し、金型口金部の先端に取り付けられた成形装置5を通過させ、成形と同時に冷却することにより所望の形状の発泡体を得る(工程(D))。
【0032】
押出しの条件は、樹脂の種類などにより適宜設定すればよく、例えば、ポリスチレン系樹脂の場合、金型口金部の圧力が30〜70kg/cm2程度、樹脂温度の温度が105〜125℃程度である。
成形装置は得ようとする樹脂発泡体の形状により適宜選択する。例えば、板状の樹脂発泡体を得ようとする場合には、2枚の板を向き合わせてなる成形装置を用いればよい。
【0033】
本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体は、10〜100mm、好ましくは25〜100mmの厚さを有し、かつ20〜50kg/m3、好ましくは25〜40kg/m3の密度を有する板状の発泡体として製造できる。このような発泡体は、屋上外断熱用、畳用、壁用、土間用、屋根用、基礎用の建物を建築する際の断熱材として好適に用いることができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。なお、実施例において「部」は重量部を意味する。
【0035】
実施例および比較例で得られた板状の樹脂発泡体は、以下の方法で評価した。
(平均気泡径)
ASTM D2842−69に準拠し、測定装置として走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM T−300)を使用して、板状の樹脂発泡体のMD(流れ方向)、TD(幅方向)およびVD(厚み方向)の3方向の気泡径をそれぞれ測定し、これらの気泡径を算術平均した値(単位:mm)を「平均気泡径」とした。
【0036】
(防蟻性)
本発明でいう「防蟻性」は、板状の樹脂発泡体とシロアリとを一定期間共存させ、そのときの樹脂発泡体の重量減少率により判定した。すなわち、板状の樹脂発泡体を3.0mm角にカットし、そのサンプルの重量を測定し、シロアリ職蟻150匹と兵蟻15匹と共にシャーレーに入れ、28℃に温度制御した暗所に21日間を置いた。但し、この期間中にシロアリの致死が認められた場合には、その日にその相当数のシロアリを補充した。このようにして21日後にサンプルの重量を測定し、その重量減少率が3%以下のものを防蟻性ありとした。
【0037】
(燃焼性)
本発明でいう「燃焼性」は、先に述べたとおり、JIS A9511に規定された方法で測定し、燃焼秒数が3秒以下のものを難燃性ありとした。
【0038】
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてポリスチレン(東洋スチレン株式会社製、G−13−30)100部を使用し、この樹脂に難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)3.0部、顔料0.1部、気泡核剤としてタルク0.5部を加え、得られた混合物を2台連結のタンデム型押出機(口径:一番目φ50mm、二番目φ65mm)に供給した。
【0039】
次いで、第一押出機内でこの混合物を溶融混練すると共に、発泡剤として塩化メチル(メチルクロリド)6.0部およびブタン(ノルマル70%、イソ30%)3.0部を圧入した。その後、第一押出機内で溶融樹脂と発泡剤とをよく混練した。上記の工程における溶融樹脂の温度は約230℃であった。
次に溶融樹脂の温度が約200℃になった押出機の連結管に、防蟻有効成分としてシラフルオフェン/イミダクロプリド=90/10(重量%)の防蟻剤(以下、「タイプA」と称す)0.3部を圧入した。そして第二押出機内で溶融樹脂と防蟻剤とをよく混練しつつ、発泡に適した樹脂温度(約122℃)まで樹脂組成物を冷却した。
【0040】
この樹脂組成物を、第二押出機の先端(出口側)に装着した金型の口金(リップ厚み:1.4mm、リップ幅:90mm)から、金型口金部の圧力40kg/cm2、樹脂温度の温度122℃、単位時間当たりの吐出量37kgで押出発泡した。
そして、押出された発泡体を、口金部の先端に密接に取り付けられた、2枚の板を向き合わせてなる成形装置に通過させ、成形と同時に冷却することにより、幅220mm、厚み30mmの板状の発泡体を得た。
【0041】
得られた発泡体は、密度が29.7kg/m3、平均気泡径が0.39mm、JIS A9511に規定する燃焼性が1.1秒、防蟻性を示す重量減少率が0.6%であり、防蟻性、難燃性ともに満足できるものであった。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例2)
防蟻有効成分としてシラフルオフェン/イミダクロプリド=80/20(重量%)の防蟻剤(以下、「タイプB」と称す)を用いる以外は実施例1と同様にして、板状の発泡体を得、評価した。
得られた発泡体は、幅215mm、厚み31mm、密度29.3kg/m3で、平均気泡径が0.56mm、JIS A9511に規定する燃焼性が0.5秒、防蟻性を示す重量減少率が0.9%であり、防蟻性、難燃性ともに満足できるものであった。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0044】
(実施例3〜8)
発泡剤の種類とその配合量、難燃剤の配合量、および防蟻剤の種類を表1に記載のようにする以外は実施例1と同様にして、板状の発泡体を得、評価した。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0046】
(比較例1)
防蟻剤を用いない以外は実施例1と同様にして、板状の発泡体を得、評価した。
得られた発泡体は、幅220mm、厚み30mm、密度29kg/m3で、平均気泡径が0.34mm、JIS A9511に規定する燃焼性が1.1秒、防蟻性を示す重量減少率が21%であり、防蟻性が不充分であった。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0047】
(比較例2)
難燃剤の配合量を6.0部とする以外は実施例2と同様にして、板状の発泡体を得た。
難燃剤の配合量が多いためか、押出機内で溶融樹脂の粘度が低下し、発泡体に内部発泡が生じて、良好な発泡体が得られず、評価ができなかった。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0048】
(比較例3)
防蟻剤の注入温度を240℃とする以外は実施例2と同様にして、板状の発泡体を得、評価した。
得られた発泡体は、平均気泡径が0.60mm、JIS A9511に規定する燃焼性が1.3秒、防蟻性を示す重量減少率が5.6%であり、防蟻剤が熱劣化したためか、防蟻性が低下した。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0049】
(比較例4)
防蟻剤として公知の殺虫剤のペルメトリンを用いる以外は実施例1と同様にして、板状の発泡体を得ようとしたが、防蟻剤が熱劣化して、発泡体が得られなかった。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0050】
【発明の効果】
本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂組成物とその発泡に適する発泡剤および混練温度で熱的に安定な防蟻剤を溶融混練し、押出発泡成形することによって得られる。
したがって、防蟻剤が熱劣化されずに、樹脂発泡体の全体にわたって均一に分布するので、どの部分を利用しても均一で確実な防蟻性を有する樹脂発泡体を提供することができる。すなわち、本発明の樹脂発泡体では、表面に防蟻剤を含有させたビーズを発泡させたものよりも、より高い防蟻効果が得られる。
よって、本発明によれば、白アリ、キクイムシなどの食害を受けない断熱材、床下断熱材などとして有効性の高い防蟻性熱可塑性樹脂発泡体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防蟻性熱可塑性樹脂発泡体の製造に用いることができる装置の概略模式図である。
【符号の説明】
1 ホッパー
2 第一押出機
3 連結管
4 第二押出機
5 成形装置
A 原料供給口
B 発泡剤供給口
C 防蟻剤供給口
Claims (5)
- ポリスチレン系樹脂組成物とその発泡に適する発泡剤および混練温度で熱的に安定な防蟻剤としてポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部のシラフルオフェン/イミダクロプリド=90〜80/10〜20(重量%)の混合物と、さらに難燃剤としてポリスチレン系樹脂100重量部に対して2.0〜5.0重量部のヘキサブロモシクロドデカンとを溶融混練し、押出発泡成形することによって得られた防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体。
- 防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体が、JIS A9511に規定する燃焼性を満たす請求項1に記載の防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体。
- 防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体が、10〜100mmの厚さを有し、かつ20〜50kg/m3の密度を有する板状の発泡体である請求項1または2に記載の防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体。
- (A)任意に難燃剤を含有するポリスチレン系樹脂組成物を加熱溶融する工程、(B)溶融したポリスチレン系樹脂組成物にその発泡に適する発泡剤を添加し混練する工程、(C)工程(B)よりも温度が低下した、溶融したポリスチレン系樹脂組成物に混練温度で熱的に安定な防蟻剤としてのシラフルオフェン/イミダクロプリド=90〜80/10〜20(重量%)の混合物を添加し混練する工程、および(D)溶融したポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡成形する工程からなる防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
- 使用される装置が連結管を介して連結された第一押出機と第二押出機からなるタンデム型押出機およびこれに取り付けられた成形装置であり、工程(A)および工程(B)が第一押出機で順次連続して行われ、工程(C)の防蟻剤の添加および混練がそれぞれ連結管および第二押出機で行われる請求項4に記載の防蟻性ポリスチレン系樹脂の製造方法。
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JP2000282408A JP3792113B2 (ja) | 2000-09-18 | 2000-09-18 | 防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体およびその製造方法 |
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