JP6692219B2 - 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、防蟻性を有する、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、スチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法及びスチレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法に関する。
スチレン系樹脂を発泡させたスチレン系樹脂発泡成形体は、断熱材などとして建材分野で用いられている。このような断熱材に必要な性能として、断熱性に加えて難燃性が必要となる場合が多いが、施工場所によっては更に防蟻性についても求められる場合がある。
しかしながら、難燃性に加え防蟻性を付与するために単に臭素系難燃剤と防蟻剤とを併用してスチレン系樹脂に添加して用いた場合、溶融混練時に臭素系難燃剤の分解が促進され、結果的に樹脂劣化(樹脂分解)を引き起こし、スチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下する問題、スチレン系樹脂発泡成形体が予期せずに着色してしまう(樹脂劣化による着色)という問題がある。また、押出機から大気中に直接発泡体が押出されてくる場合、押出機ダイ先端から大気中に分解ガスが放出されるという問題もある。更に、イミダクロプリドやシラフルオフェン等の防蟻剤も熱分解しやすく、やはり押出機ダイ先端から大気中に分解ガスが放出されるという問題もある。
このような問題発生を回避するために、臭素系難燃剤を他の難燃剤に置き換えることは可能であるが、難燃性が低下してしまう傾向がある。これを補うために、難燃剤添加量を増大させると、結果的にスチレン系樹脂発泡成形体の機械的物性が低下することがあり、コストアップにもなる。
特許文献1に記載された製造方法によれば、防蟻剤を含まない発泡性スチレン系樹脂粒子を懸濁重合法、シード重合法又は押出法により製造した後、防蟻剤を溶解した溶液を発泡性スチレン系樹脂粒子に被覆又は含浸(吸収)させて発泡性スチレン系樹脂粒子を製造している。
特許第4125167号公報
この特許文献1に記載された製造方法によれば、分解ガスが発生する、異臭がする、発泡体の機械的強度が低下する、発泡体が予期せず着色(樹脂劣化による着色)するといった問題発生を抑止することはできるが、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造した後に防蟻剤を吸収させるという余分な工程を実施する必要があるため、生産性が悪く、また、製造コストも増大する。
従って本発明の目的は、余分な工程を付加することなく、防蟻性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子を押出法で直接的に製造できる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、スチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法及びスチレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法を提供することにある。
本発明によれば、スチレン系樹脂100重量部に対し、臭素系難燃剤0.5重量部以上、10重量部以下と、防蟻剤0.005重量部以上、2.5重量部以下とを含有させ、発泡剤とともに溶融混練して溶融樹脂とし、溶融樹脂を小孔を有するダイを通じて加圧水中に押し出し、加圧水中に押し出された溶融樹脂を回転カッターにより切断する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
特定量の臭素系難燃剤(スチレン系樹脂100重量部に対し、臭素系難燃剤0.5重量部以上、10重量部以下と)と、特定量の防蟻剤(スチレン系樹脂100重量部に対し、防蟻剤0.005重量部以上、2.5重量部以下)とすることにより、溶融混練工程を含んでいても、防蟻剤の分解又は臭素系難燃剤の分解が抑制され、良好な防蟻性及び難燃性を発現させることができるとともに、分解ガスの発生が低減できることから、より安全に発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。しかも、押出法によって直接的に発泡性スチレン系樹脂粒子を製造しても、分解ガス発生、異臭発生、発泡体の機械的強度低下、及び発泡体の予期しない着色(樹脂劣化による着色)といった問題発生を防止することができる。押出法による直接製造を行えば、工程が簡素化し、生産性が良好となり、製造コストの上昇を抑止することができる。また、たとえ、分解ガスの発生が完全に抑制できない場合であっても、押出機ダイ先端から放出される分解ガスが、加圧水に溶解するので、分解ガスが大気放出されることを抑制することができる。
臭素系難燃剤と防蟻剤との重量比(臭素系難燃剤重量/防蟻剤重量)が、10以上、60以下であることが好ましい。これにより、難燃性、防蟻性、及び断熱性のバランスに優れた発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができる。
スチレン系樹脂100重量部に対し、臭素系難燃剤0.8重量部以上、7重量部以下と、防蟻剤0.02重量部以上、2.5重量部以下とを含有させたことがより好ましい。これにより、防蟻性能及び難燃性能をより満足させつつ発泡性スチレン系樹脂粒子を押出法で直接的に製造することができる。
加圧水の電気伝導率は、0.00mS/m以上、25mS/m以下であることも好ましい。電気伝導率をこの範囲とすることにより、分解ガスに基因する加圧水の異臭が低減されるという効果が得られる。
加圧水に、アルカリ性物質、酸性物質、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を溶解又は懸濁させることも好ましい。これにより、適切な中和剤等が溶解した加圧水となり、発生する分解ガスの中和、無害化が可能となる。
溶融樹脂の樹脂温度が、200℃未満であることにより、分解ガス発生、異臭発生、発泡体の機械的強度低下、及び発泡体の予期しない着色(樹脂劣化による着色)といった問題発生をいっそう防止することができる。
臭素系難燃剤が、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体及び/又は2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンであることも好ましい。
防蟻剤が、カーバメート系防蟻剤、ピレスロイド系防蟻剤、ピレスロイド様化合物系防蟻剤、クロルニコチル系防蟻剤、トリアジン系防蟻剤、クロルニコチル系防蟻剤、天然物系防蟻剤及び無機系防蟻剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい。
防蟻剤が、ピレスロイド系防蟻剤、ピレスロイド様化合物系防蟻剤、及びクロルニコチル系防蟻剤の群から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい。
スチレン系樹脂100重量部に対し、グラファイトを3重量部以上、8重量部以下を含有させたことも好ましい。
この場合、グラファイトの平均粒径が3μm以上、7μm以下であることがより好ましい。
本発明によれば、さらに、上述した製造方法によって得られる発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させる発泡スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
本発明によれば、さらにまた、上述した製造方法によって得られる発泡スチレン系樹脂粒子を型内発泡成形させるスチレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法が提供される。この方法によれば、難燃性、防蟻性及び断熱性に優れたスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
本発明によれば、溶融混練工程を含んでいても、防蟻剤の分解又は臭素系難燃剤の分解が抑制され、良好な防蟻性及び難燃性を発現させることができるとともに、分解ガスの発生が低減できることから、より安全に発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。しかも、押出法によって直接的に発泡性スチレン系樹脂粒子を製造しても、分解ガス発生、異臭発生、発泡体の機械的強度低下、及び発泡体の予期しない着色(樹脂劣化による着色)といった問題発生を防止することができる。押出法による直接製造を行えば、工程が簡素化し、生産性が良好となり、製造コストの上昇を抑止することができる。また、たとえ、分解ガスの発生が完全に抑制できない場合であっても、押出機ダイ先端から放出される分解ガスが、加圧水に溶解するので、分解ガスが大気放出されることを抑制することができる。
以下、実施形態により、本発明の製造方法を説明する。
[発泡性スチレン系樹脂粒子]
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子中に発泡剤、臭素系難燃剤及び防蟻剤を含有したものである。また、必要に応じて、他の添加剤を含有することができ、このような他の添加剤としては、例えば、グラファイト、グラフェン、活性炭、カーボンブラックおよび酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物等(輻射伝熱抑制剤)を含有させることができる。該化合物は、スチレン系樹脂型内発泡成形体の熱伝導率を低下させる効果を有し、断熱性の高いスチレン系樹脂型内発泡成形体を得る上で、好ましい態様である。
また、他の添加剤として、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の熱安定剤、あるいは無機化合物等の造核剤、難燃助剤等も含有させることができる。
以下、本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子が含有する必須成分及び任意成分をさらに詳しく説明する。
(スチレン系樹脂)
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、スチレン単独重合体(ポリスチレンホモポリマー)のみならず、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体が共重合されていても良い。ただし、後述する臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体は除く。
スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びトリクロロスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物又はその誘導体;無水マレイン酸、及び無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2)−クロロフェニルマレイミド、N−(4)−ブロモフェニルマレイミド、及びN−(1)−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物等があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、上述のスチレン単独重合体、及び/又は、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体との共重合体に限らず、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の他の単量体又は誘導体の単独重合体、又はそれらの共重合体とのブレンド物であっても良い。
本発明で用いられるスチレン系樹脂には、例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレン、及び/又はポリフェニレンエーテル系樹脂等をブレンドすることもできる。
本発明で用いられるスチレン系樹脂の中では、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の水蒸気等で発泡成形ができ、断熱性、難燃性、緩衝性のバランスに優れることから、スチレンホモポリマー、スチレン−アクリロニトリル共重合体、又はスチレン−アクリル酸ブチル共重合体が望ましい。
(難燃剤)
本発明で用いられる臭素系難燃剤としては、特に限定されず、従来からスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる臭素系難燃剤を使用すればよい。本発明で用いられる臭素系難燃剤としては、例えば、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル))、又は2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル))、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS等の臭素化ビスフェノール系化合物、臭素化スチレン−ブタジエン共重合体、等の臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、特表2009−516019号公報に開示されている)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、モノ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ジ(2,3−ジブロモプロピルイソシアヌレート)、モノ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート等の臭素化イソシアヌレート系化合物、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン等の臭素化脂環族化合物、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ペンタブロモベンジルブロマイド、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル等の臭素化芳香族化合物、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジンなどの臭素および窒素原子含有化合物、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー等の臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェート等の臭素および燐原子含有化合物、臭化アンモニウム等の臭素化無機化合物、等が挙げられる。
このような臭素系難燃剤の中でも、炭素原子と臭素原子の結合(C−Br結合)を有する臭素系難燃剤の場合、C−Br結合の解離エネルギーはおおむね280kJ/モルであることが知られており、本発明の効果の一つである臭素系難燃剤の分解抑制の観点では、同レベルの分解抑制効果が期待できる。このようなC−Br結合を有する臭素系難燃剤としては、上記例示した中の、臭化アンモニウム等の臭素化無機化合物以外、の臭素系難燃剤を挙げることができる。
このようなC−Br結合を有する臭素系難燃剤の中でも、難燃性あるいは環境適合性に優れる観点から、臭素化ビスフェノール系化合物、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体、臭素化イソシアヌレート系化合物、及び臭素化脂環族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体及び/又は臭素化ビスフェノール系化合物であることがより好ましい。臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体及び/又は臭素化ビスフェノール系化合物の中では、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体及び/又は2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンであることが最も好ましい。
これら臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における臭素系難燃剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上、10重量部以下であり、好ましくは0.8重量部以上、7重量部以下、より好ましくは1重量部以上、4重量部以下、である。
臭素系難燃剤の添加量を上述の範囲とすることにより、良好な難燃性が発現すると共に、防蟻剤と併用する場合においても防蟻剤の分解又は臭素系難燃剤の分解が抑制され、分解ガスの発生が低減でき、より安全な発泡性スチレン系樹脂粒子の製造が可能となり易い。
臭素系難燃剤の添加量が0.5重量部未満では難燃性が低下する傾向があり、10重量部を超えると、後述するスチレン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率が低下し、その結果、型内発泡成形により得られるスチレン系樹脂型内発泡成形体が著しく収縮し、良好な製品を得にくくなる傾向がある。また、防蟻剤と併用する場合において、防蟻剤の分解又は臭素系難燃剤の分解による分解ガスの発生が抑制しにくくなる傾向がある。
(防蟻剤)
本発明で用いられる防蟻剤としては、特に限定されず、従来からスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる防蟻剤を使用すればよい。本発明で用いられる防蟻剤としては、例えば、カルバリル、フェノルカルブ、プロポクスル等のカーバメート系防蟻剤、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン等のピレスロイド系防蟻剤、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド様化合物系防蟻剤、イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン等のクロルニコチル系防蟻剤、トリプロピルイソシアネート(TPIC)等のトリアジン系防蟻剤、カプリン酸、ヒバ中性油、ウコン等の天然物系防蟻剤、ホウ素、ホウ酸、ホウ酸亜鉛等の無機系防蟻剤が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でも、低添加量で防蟻性を発現させることができる観点から、ピレスロイド系防蟻剤、ピレスロイド様化合物系防蟻剤、及びクロルニコチル系防蟻剤の群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、イミダクロプリド及び/又はシラフルオフェンであることが最も好ましい。イミダクロプリド及び/又はシラフルオフェンの場合、低添加量で防蟻性を発現させることが可能であり、その結果、断熱性等の他の物性を低下させることなく、物性バランスの優れたスチレン系樹脂発泡成形体を得易いものとなる。
本発明における防蟻剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上、2.5重量部以下であり、好ましくは0.02重量部以上、2.5重量部以下、より好ましくは0.05重量部以上、2重量部以下、である。特に、上記イミダクロプリド及び/又はシラフルオフェンを用いる場合は、0.02重量部以上、2重量部以下、である。
防蟻剤の添加量が0.005重量部未満では防蟻性が低下する傾向があり、2.5重量部を超えると、分解ガスの発生が抑制しにくくなる傾向がある。
臭素系難燃剤及び防蟻剤の添加量については上述の通りであるが、難燃性、防蟻性、及び断熱性のバランスに優れたものとなる観点からは、含有させる臭素系難燃剤と防蟻剤との重量比(臭素系難燃剤重量/防蟻剤重量)が、10以上、60以下であることが好ましく、13以上、55以下がより好ましく、14以上、50以下が最も好ましい。
(発泡剤)
本発明で用いられる発泡剤は、特に限定されないが、炭素数4〜5の炭化水素が望ましい。炭素数4〜5の炭化水素であれば、十分な発泡力が得られ易く、高発泡化し易いものとなる。炭素数4〜5の炭化水素としては、例えばノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、又はシクロペンタン等の炭化水素が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における発泡剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以上、15重量部以下であり、より好ましくは4重量部以上、9重量部以下であり、最も好ましくは5重量部以上、8重量部以下である。
発泡剤の添加量を上記範囲とすることにより、難燃性および防蟻性に優れたスチレン系樹脂型内発泡成形体を製造しやすくなり、また、高発泡化も可能となり、50倍以上の高発泡倍率のスチレン系樹脂型内発泡成形体を製造することもできるようになる。
(難燃助剤)
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子においては、難燃助剤をさらに含有することにより、高い難燃性を発現することができる。特に、熱により分解しラジカルを発生する難燃助剤(ラジカル発生剤)が好適に用いられる。
本発明における難燃助剤は、用いるスチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、難燃剤の種類及び含有量に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる難燃助剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ポリ−1,4−イソプロピルベンゼン、及び有機ニトロキシラジカル化合物等のラジカル発生剤が挙げられる。これらの中でも、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、及び2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が、難燃性の観点からより好ましい。難燃助剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明における難燃助剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、3重量部以下、より好ましくは0.05重量部以上、2重量部以下、最も好ましくは0.1重量部以上、1重量部以下、である。
難燃助剤の添加量を上述の範囲とすることにより、得られるスチレン系樹脂型内発泡成形体の難燃性が安定して発現し、1つのスチレン系樹脂型内発泡成形体から切り出した試験片ごとの難燃レベルも安定かつ高度なものとなりやすい。また、スチレン系樹脂型内発泡成形体の機械的強度の低下を抑制しやすくなる。
(他の添加剤)
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、輻射伝熱抑制剤、熱安定剤、造核剤、加工助剤、耐光性安定剤、発泡助剤、帯電防止剤、及び顔料等の着色剤よりなる群から選ばれる1種以上の他の添加剤を含有していてもよい。本発明における他の添加剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対し、他の添加剤が0重量部以上、20重量部以下であることが好ましい。
(輻射伝熱抑制剤)
本発明で用いられる輻射伝熱抑制剤(近赤外又は赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する物質)としては、例えば、グラファイト、グラフェン、活性炭、カーボンブラック、酸化チタン、及び金属アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂型内発泡成形体の断熱性向上の観点から、グラファイト、グラフェン、活性炭、カーボンブラック、及び酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、グラファイトが最も好ましい。
グラファイトについて、更に詳述する。
本発明で用いられるグラファイトは、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、又は人造黒鉛等が挙げられる。なお、本明細書において、「鱗片状」という用語は、鱗状、薄片状又は板状のものをも包含する。これらの黒鉛は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、輻射伝熱抑制効果が高い点から、鱗片状黒鉛を主成分とする黒鉛混合物が望ましく、鱗片状黒鉛がより望ましい。
本発明で用いられるグラファイトは平均粒径が2.5μm以上、9μm以下であることが望ましい。さらに3μm以上、7μm以下であることがより望ましく、4μm以上、6μm以下であることが最も望ましい。本発明のグラファイトの平均粒径は、ISO13320:2009,JIS Z8825−1に準拠したMie理論に基づくレーザー回折散乱法により粒度分布を測定・解析し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を平均粒径とした。
このような平均粒径のグラファイトであれば、スチレン系樹脂予備発泡粒子の高発泡化が可能となり易く、また、スチレン系樹脂型内発泡成形体を得る際の成形性が良好であると共に、得られるスチレン系樹脂型内発泡成形体の断熱性も良好となり易い。
以上のような輻射伝熱抑制剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、10重量部以下、より好ましくは1重量部以上、9重量部以下、最も好ましくは3重量部以上、8重量部以下、である。
輻射伝熱抑制剤の添加量を上述の範囲とすることにより、得られるスチレン系樹脂型内発泡成形体の断熱性が良好となり易い。
(熱安定剤)
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子においては、さらに、熱安定剤を併用することによって、製造工程における臭素系難燃剤の分解による難燃性の悪化及び発泡性スチレン系樹脂粒子の劣化を抑制することができる。
本発明における熱安定剤は、用いられるスチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、臭素系難燃剤の種類及び含有量、難燃助剤の種類及び含有量、輻射伝熱抑止剤の種類及び含有量、等に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる熱安定剤としては、熱安定剤と臭素系難燃剤との混合物の熱重量分析における1%重量減少温度を任意に制御できる点から、ヒンダードアミン化合物、リン系化合物、又はエポキシ化合物が望ましい。熱安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、これらの熱安定剤は、耐光性安定剤としても使用できる。より具体的には、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
本発明における熱安定剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.0001重量部以上、1重量部以下、より好ましくは0.001重量部以上、0.7重量部以下、最も好ましくは0.01重量部以上、0.5重量部以下、である。
熱安定剤の添加量を上述の範囲とすることにより、臭素系難燃剤の分解による難燃性の悪化及び発泡性スチレン系樹脂粒子の劣化を効率的に抑制することができる。
(造核剤)
本発明で用いられる造核剤としては、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、又はタルク等の無機化合物、メタクリル酸メチル系共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の高分子化合物、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、又はエチレンビスオレイン酸アマイド等の脂肪酸ビスアマイド等が挙げられる。
本発明における造核剤の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0重量部以上、3重量部以下、より好ましくは0.01重量部以上、1重量部以下、最も好ましくは0.05重量部以上、0.5重量部以下、である。
造核剤の添加量を上述の範囲とすることにより、得られるスチレン系樹脂予備発泡粒子の平均セル径(平均気泡径)が均一となり易く、スチレン系樹脂型内発泡成形体の表面性も美麗なものとなり易い。
(上記以外の他の添加剤)
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、加工助剤、耐光性安定剤、発泡助剤、帯電防止剤、及び顔料等の着色剤等を添加することができる。
加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、又は流動パラフィン等が挙げられる。
耐光性安定剤としては、前述したヒンダードアミン類、リン系安定剤、エポキシ化合物の他、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、又はベンゾトリアゾール類等が挙げられる。
発泡助剤としては、大気圧下での沸点が200℃以下である溶剤を望ましく使用でき、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、又はキシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、又はメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、又は酢酸ブチル等の酢酸エステル等が挙げられる。
なお、帯電防止剤及び着色剤としては、各種樹脂組成物に用いられるものを特に限定なく使用できる。
これらの他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
以上のような臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤あるいは他の添加剤は、そのまま使用しても良いが、あらかじめスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂とマスターバッチ化したマスターバッチ樹脂として使用しても良い。この際、臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤あるいは他の添加剤の複数をあらかじめ混合してマスターバッチ樹脂としても良い。
また、マスターバッチ樹脂を添加する場合、マスターバッチ樹脂をそのまま添加しても良いが、あらかじめ副押出機等を採用して溶融混練し、溶融したマスターバッチ樹脂を主押出機、あるいは主押出機からダイの間のいずれかの位置にて添加することも可能である。
マスターバッチ樹脂中の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤あるいは他の添加剤の濃度に特に制限は無いが、例えば臭素系難燃剤であれば、作業性の観点から、マスターバッチ樹脂100重量%中、20重量%以上、80重量%以下の濃度とすることが好ましい。
また、マスターバッチ化に用いられる熱可塑性樹脂に特に制限は無いが、スチレン系樹脂であることが好ましく、主原料のスチレン系樹脂と同一の樹脂を用いることがより好ましい。
[発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法]
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂100重量部に対し、臭素系難燃剤0.5重量部以上、10重量部以下と、防蟻剤0.005重量部以上、2.5重量部以下含有させ、発泡剤とともに溶融混練して溶融樹脂とし、該溶融樹脂を小孔を有するダイを通じて加圧水中に押し出し、加圧水中に押し出された溶融樹脂を回転カッターにより切断する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
該製造方法を実施するに当たっては、例えば、主押出機とダイを連続的に接続した装置を採用することができる。但し、主押出機とダイの間に、スタティックミキサー、スタティッククーラー、ギアポンプ、継続配管、スクリーンチェンジャー、ダイバーターバルブ等を設けることも可能である。
また、主押出機としては公知のものを使用でき、例えば、単軸押出機や二軸押出機を採用することが可能であり、二軸押出機を採用する場合のスクリュー回転方向は、同方向であっても異方向であっても構わない。また、主押出機は1機、あるいは2機以上を用いても良い。例えば2機を用いる場合は、第1押出機と第2押出機を直列に連結したタンデム型を採用することが可能であり、このような第1押出機と第2押出機を合わせて、主押出機という。第1押出機と第2押出機の接続には、必要に応じて継続配管を用いることができる。
なお、継続配管とは、押出機、あるいはスタティックミキサー、スタティッククーラー、ギアポンプ、スクリーンチェンジャー、ダイバーターバルブ等を適宜組み合わせて接続する際に、接続を容易ならしめるために有用なものである。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法においては、スチレン系樹脂が主押出機に投入されるが、臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および上述した他の添加剤は、あらかじめスチレン系樹脂とブレンドしておく等して、スチレン系樹脂と同時に添加することができる。あるいは、スチレン系樹脂添加口とは別の添加口を設けておき、スチレン系樹脂とは別々に主押出機に投入しても良い。
主押出機で溶融混練される溶融樹脂は、100℃以上、300℃以下の樹脂温度とすることができるが、分解ガス発生、異臭発生、発泡体の機械的強度低下、及び発泡体の予期しない着色を抑制する観点、及び生産性の観点からは、150℃以上、200℃未満であることが好ましい。
なお、本発明のおける溶融樹脂の樹脂温度は、主押出機からダイに至るまでの溶融樹脂の樹脂温度を指すものであり、後述するダイを通過中の溶融樹脂の樹脂温度を指すものではなく、ダイから押し出された溶融樹脂の樹脂温度を指すものでもない。
本発明において、発泡剤は、主押出機に直接添加しても良く、主押出機からダイに至る途中で添加しても良い。
発泡剤を主押出機に直接添加する場合、主押出機中でスチレン系樹脂が可塑化されやすくなるため、主押出機における樹脂温度を低くすることが可能となり、臭素系難燃剤や防蟻剤の分解を抑制し易くなる。また、主押出機のスクリュートルクを低くした運転が可能となるため、消費電力を抑制できるという利点、あるいはスクリュー等の主押出機構成部品の消耗が進みにくいという利点もある。
なお、発泡剤は従来公知の圧入ポンプ等で圧入することができ、必要に応じてあらかじめ加温や冷却するなどして温度コントロールすることもできる。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法においては、溶融樹脂を小孔を有するダイを通じて加圧水中に押し出す方法を採用する。
この場合、ダイは加圧水と直接接触することになることから、ダイの設定温度が低すぎると小孔が樹脂で詰まる恐れがあり、これを回避するため、ダイの設定温度は200℃以上、300℃以下とすることが好ましく、230℃以上、270℃以下がより好ましい。このような設定温度であれば、小孔が詰まることなく、かつ所望の粒子形状の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られ易くなる。また、発泡性スチレン系樹脂粒子が意図せず発泡してしまうこともなく、ダイから押出された溶融樹脂の粘度も適度なものとなり、溶融樹脂が回転カッターに巻きつくこともなく、安定した発泡性スチレン系樹脂粒子の製造が可能となる。
なお、上述の通り、ダイは加圧水と直接接触するため、ダイを通過する溶融樹脂の樹脂温度は、加圧水による冷却効果により実質的にダイの設定温度よりも低くなると考えられる。また、ダイを通過する溶融樹脂の樹脂温度が200℃を超える場合においても、ダイの通過に要する時間は非常に短時間である。このようなことから、例え、ダイの設定温度が200℃以上であっても、分解ガス発生、異臭発生、発泡体の機械的強度低下、及び発泡体の予期しない着色といった問題は顕在化しないと推定している。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において用いられる小孔を有するダイの小孔の数は、一つでも良いが、生産性の観点からは、複数の小孔を有することが好ましい。小孔の形状や大きさに特に制限はないが、例えば、直径0.3mm以上、2.0mm以下の小孔が挙げられ、より好ましくは0.4mm以上、1.0mm以下の小孔が挙げられる。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において用いられる加圧水の電気伝導率は、0.00mS/m以上、25mS/m以下であることが望ましい。電気伝導率をこの範囲とすることにより、分解ガスに基因する加圧水の異臭が低減されるという効果が得られ易くなる。
このような電気伝導率の加圧水を得る方法に特に制限はなく、蒸留法、イオン交換樹脂法等、従来知られた技術により製造することができる。また、種々の電気伝導率を有する加圧水を適宜混合することにより、電気伝導率を調整することも可能である。
加圧水の温度としては特に制限はなく適宜調整されるものであるが、40℃以上、80℃以下であることが好ましい。この温度範囲であれば、ダイの小孔が詰まりにくく、また、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子がアグロメレーションしたり発泡したりすることなく、生産性を確保し易くなる。
加圧水の圧力としては特に制限はなく適宜調整されるものであるが、0.5MPa(ゲージ圧)以上、1.5MPa(ゲージ圧)以下であることが好ましい。この圧力範囲であれば、ダイの小孔が詰まりにくく、また、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子がアグロメレーションしたり発泡したりすることなく、生産性を確保し易くなる。
また、この加圧水に、アルカリ性物質、酸性物質、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を溶解又は懸濁させることが望ましい。このような物質としては一般的に知られているものを使用すれば良いが、アルカリ性物質としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、等が挙げられ、酸性物質としては、例えばクエン酸、蓚酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられ、pH調整剤としては、例えばリン酸二水素ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム系緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム系緩衝液、炭酸水素ナトリウム−水酸化ナトリウム系緩衝液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム系緩衝液等が挙げられる。このような物質が溶解した加圧水を用いることにより、発生する分解ガスの中和、無害化が可能となるものであり、
発生する分解ガスの種類(性質)に従って、無害化が可能となり得る物質を適宜選択することができる。例えば、分解ガスが臭化水素等の酸性ガスであれば、これを中和するために、加圧水にアルカリ性物質を溶解又は懸濁させて用いることが好ましい。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において、加圧水中に押し出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されないが、例えば、ダイリップに接触する回転カッターで切断されて小球化され、加圧水中を発泡することなく、遠心脱水機まで移送されて脱水・集約される装置、等が挙げられる。なお、加圧水は、廃水発生を抑制する観点から循環利用することが好ましい。
[スチレン系樹脂予備発泡粒子]
本発明のスチレン系樹脂予備発泡粒子は、前述した本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子を後述の方法で発泡させて得ることができ、後述するスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法等により発泡性スチレン系樹脂粒子をおおむね10倍以上、110倍以下に発泡させたものである。
なお、最終的に得られるスチレン系樹脂予備発泡粒子における臭素系難燃剤、防蟻剤、発泡剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量は、例えば、発泡性スチレン系樹脂粒子中の臭素系難燃剤、防蟻剤、発泡剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量を適宜選択することにより調整できる。但し、スチレン系樹脂予備発泡粒子中の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量割合は、後述する予備発泡工程での発泡剤の揮散等により、発泡性スチレン系樹脂粒子中の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量割合よりも若干増加する傾向があるので、その点を考慮して、発泡性スチレン系樹脂粒子の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量を選択すればよい。
[スチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法]
本発明におけるスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、従来公知の予備発泡工程を採用することができる。該予備発泡工程によれば、例えば、加熱水蒸気によっておおむね10倍以上、110倍以下に発泡させてスチレン系樹脂予備発泡粒子とすることができる。
以下に、予備発泡工程について詳述する。
予備発泡機としては公知のものを使用でき、例えば、撹拌装置を備え、発泡性スチレン系樹脂粒子が収容される缶と、この缶の下方に設置され、水蒸気を缶に供給する蒸気チャンバーと、予備発泡粒子排出口とを備えた予備発泡機が用いられる。蒸気チャンバーには、ボイラーから水蒸気が供給される。水蒸気と圧縮空気とを混合して蒸気チャンバーに供給することもできる。本明細書において、水蒸気温度は蒸気チャンバーに導入される水蒸気の温度であり、より具体的には、蒸気チャンバーの水蒸気導入口から10cm上流側における水蒸気の温度である。また、水蒸気投入時間(秒)は、缶内に入れた発泡性スチレン系樹脂粒子に水蒸気の供給を開始してから、その発泡性スチレン系樹脂粒子が予備発泡粒子となり、それを予備発泡機の缶外に取り出すまでの間に水蒸気を投入していた時間である。予備発泡機の缶内に水蒸気を複数回に分けて投入する場合は、その投入されている時間の合計を水蒸気投入時間とする。
缶内圧力(ゲージ圧)は、例えば、排気弁の開度を調整することにより制御できる。本明細書において、缶内圧力は、水蒸気投入中の缶の内部圧力であり、水蒸気投入中に内部圧力に変動がある場合は、所定時間(例えば1秒)毎に内部圧力を測定し、得られた測定値の算術平均値として求められる。加圧発泡法では水蒸気投入を間欠的に実施する場合がある。蒸気チャンバーから缶内への水蒸気供給は停止していても缶内での水蒸気雰囲気は継続していることから、この場合は缶内圧力が大気圧を超える状態で保持されている時間は水蒸気投入時間に含める。
予備発泡工程において、水蒸気投入時間は50秒〜500秒であり、望ましくは80秒〜300秒、より望ましくは100秒〜200秒である。水蒸気投入時間が上述の範囲内であることによって、発泡倍率及び独立発泡率が高く、さらに表面美麗性にも優れた本発明のスチレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができる。また、グラファイトのような輻射伝熱抑制剤を添加する場合においては、製造当初から長期間にわたって非常に低い熱伝導率を維持することが可能となる。このような効果が得られる理由は現状では十分明らかではないが、グラファイトのような輻射伝熱抑制剤を高含有するにもかかわらず、輻射伝熱抑制剤がセル膜に穴を開けることが抑制されるためであると推測される。なお、予備発泡工程で水蒸気投入時間を選択することは、通常に行われることであるが、グラファイトを高含有する系において、水蒸気投入時間がどのような影響を及ぼすかは現状では明らかではない。
水蒸気投入時間が50秒未満では、発泡性スチレン系樹脂粒子を所定の発泡倍率にするために、水蒸気温度を高くする必要があるが、そうすると、予備発泡中の発泡性スチレン系樹脂粒子同士が接着するブロッキング現象が発生し易くなり、予備発泡収率を低下させる傾向がある。水蒸気投入時間が500秒を超えると、得られたスチレン系樹脂予備発泡粒子の収縮が大きくなるため、高発泡倍率のスチレン系樹脂予備発泡粒子を得ることが難しく、高発泡倍率(特に50cm/g以上)のスチレン系樹脂型内発泡成形体を得ることが難しくなったり、得られたスチレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が損なわれたりする傾向がある。
水蒸気投入時の缶内圧力(ケージ圧)は特に限定されないが、望ましくは0.001〜0.15MPa、より望ましくは0.01〜0.10MPa、さらに望ましくは0.03〜0.08MPaである。このような缶内圧力範囲であれば、高発泡倍率(特に65cm/g以上)を得る場合であっても、予備発泡に要する時間を短縮でき、水蒸気投入時間を500秒以下にし易くなる。また、ブロッキング現象も発生しにくく、高い予備発泡収率を獲得し易い。
なお、水蒸気を空気と混合することにより、水蒸気温度を調整したり、予備発泡粒子が所定の発泡倍率に達するまでの水蒸気投入時間の制御が容易になったり、予備発泡粒子の独立気泡率を高めたりすることもできる。
缶内に導入される水蒸気の温度は特に限定されないが、望ましくは95℃を超え、130℃以下、より望ましくは100〜125℃、さらに望ましくは105〜120℃である。このような温度範囲であれば、高発泡倍率(特に65cm/g以上)を得る場合であっても、予備発泡に要する時間を短縮でき、水蒸気投入時間を500秒以下にし易くなる。また、ブロッキング現象も発生しにくく、高い予備発泡収率を獲得し易い。
発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡は、一段階で行うことが望ましい。一段階での予備発泡を行うことにより、単に断熱性及び軽量性に優れるだけでなく、表面美麗性や、内部における発泡粒子同士の融着性が一層向上したスチレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができる。予備発泡を二段階で行う場合には、容易に高発泡倍率(例えば50cm/g以上)とすることができるが、表面美麗性や、内部における発泡粒子同士の融着性が低下する傾向がある。
また、予備発泡工程は、連続法及びバッチ法のいずれでも行うことができる。
連続法は、缶内への発泡性スチレン系樹脂粒子の供給、及び缶上部に設けられた排出口からの予備発泡粒子の排出を連続的に行う方法である。予備発泡粒子の発泡倍率は、例えば、発泡性スチレン系樹脂粒子の缶内への時間当たりの投入量(重量)を適宜選択することにより調整できる。連続法の場合は缶内へ発泡性スチレン系樹脂粒子が供給されてから予備発泡粒子が排出されるまでの予備発泡機缶内での滞留時間を水蒸気投入時間とする。
また、バッチ法は、缶内に所定量の発泡性スチレン系樹脂粒子を入れ、これを所定の発泡倍率に予備発泡させた後に水蒸気の供給を停止し、次いで必要に応じて空気を缶内に吹き込んで予備発泡粒子を冷却及び乾燥し、缶内から取り出す方法である。スチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、発泡性スチレン系樹脂粒子のバッチあたりの缶内への投入量(重量)を適宜選択することにより調整できる。バッチ法は、投入された発泡性スチレン系樹脂粒子を所定容積まで予備発泡させる方法であることから、バッチ当りの投入量を減らすほど、得られる予備発泡粒子の発泡倍率は高くなる。
[スチレン系樹脂型内発泡成形体]
本発明のスチレン系樹脂型内発泡成形体は、前述した本発明のスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形したものである。
スチレン系樹脂型内発泡成形体における臭素系難燃剤、防蟻剤、発泡剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量は、例えば、発泡性スチレン系樹脂粒子中の臭素系難燃剤、防蟻剤、発泡剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量を適宜選択することにより調整できる。なお、スチレン系樹脂型内発泡成形体中の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量割合は、予備発泡工程及び成形工程での発泡剤の揮散等により、発泡性スチレン系樹脂粒子中の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量割合よりも若干増加する傾向があるので、その点を考慮して、発泡性スチレン系樹脂粒子の臭素系難燃剤、防蟻剤、難燃助剤および他の添加剤の含有量を選択すればよい。
スチレン系樹脂型内発泡成形体の平均セル径は、望ましくは70μm以上、250μm以下、より望ましくは90μm以上、200μm以下、さらに望ましくは100μm以上、180μm以下に調整することが望ましい。平均セル径が上述の範囲にあることによって、断熱性の高いスチレン系樹脂型内発泡成形体となる。平均セル径は、例えば、造核剤の量を適宜選択することにより調整できる。
また、本発明では、スチレン系樹脂予備発泡粒子、及びスチレン系樹脂型内発泡成形体の独立気泡率をそれぞれ95%以上、100%以下に調整することが望ましい。この範囲に調整することで、高発泡倍率のスチレン系樹脂型内発泡成形体となり易く、また、表面が美麗で、断熱性にも優れたスチレン系樹脂型内発泡成形体となり易い。独立気泡率は、例えば、予備発泡工程における缶内、又は成形工程における成形金型内に、水蒸気と空気との混合物を導入し、該混合物における水蒸気の割合を適宜選択することにより、調整できる。
本発明のスチレン系樹脂型内発泡成形体において、グラファイトのような輻射伝熱抑制剤を添加する場合は、発泡倍率が50倍(cm/g)又は70倍(cm/g)の高倍率であっても、非常に低い熱伝導性を有する。例えば、グラファイトを用いた場合は、発泡倍率50倍で0.0278〜0.0289W/m・Kの範囲の非常に低い熱伝導率とすることも可能であり、更に50℃という発泡剤が揮散し易い温度下で30日保存後も熱伝導率は0.0300〜0.0310と非常に低く、長期にわたって非常に低い熱伝導率ひいては高い断熱性を維持することも可能である。また、発泡倍率70倍で0.0289〜0.0307W/m・Kの範囲の非常に低い熱伝導率を示し、さらに50℃という発泡剤が揮散し易い温度下で30日保存後も熱伝導率は0.0313〜0.0324と非常に低く、長期にわたって非常に低い熱伝導率ひいては高い断熱性を維持することも可能である。また、発泡剤が十分に逸散した後でもより低い熱伝導率を発揮することができるため、長時間経過後も高い断熱性を維持することができる。
さらに、スチレン系樹脂発泡成形体は発泡倍率が高いほど原料である発泡性スチレン系樹脂粒子の使用量が少なくなることから、高発泡倍率のスチレン系樹脂型内発泡成形体をより安価に製造することができる。なお、従来のスチレン系樹脂型内発泡成形体においては、発泡倍率が40倍以上では発泡倍率が高いほど熱伝導率が大きくなり、断熱性が悪化する欠点があった。しかし、本発明においてグラファイトを添加したスチレン系樹脂型内発泡成形体は、発泡倍率50倍以上であっても低い熱伝導性を有しているため、高い断熱性を有し、軽量で取扱性が良く、かつより安価な断熱材を供給することができる。
本発明のスチレン系樹脂型内発泡成形体の発泡倍率は、特に制限は無く、要求される発泡倍率のものとすることができるが、好ましくは10倍(cm/g)以上、100倍(cm/g)以下である。
前述のようにグラファイトを添加した場合は、より好ましくは50倍(cm/g)以上、更に好ましくは70倍(cm/g)以上である。即ち、50倍以上のスチレン系樹脂型内発泡成形体とした場合でも低い熱伝導率を達成できるため、製造コストが安い、より高発泡のスチレン系樹脂型内発泡成形体として、高性能な断熱性を発現できる。特に、発泡倍率を70倍以上とした場合には、製造コストはさらに安価となる上に軽量性でも有利なスチレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができる。
[スチレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法]
本発明におけるスチレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法としては、従来公知の成形機を用いた成形工程を採用することができる。そして、使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
成形工程としては、次の(1)〜(6)の工程を含む成形工程を例示できる。
(1)成形機に搭載した固定型と移動型からなる金型に、充填機を通して金型内にスチレン系樹脂予備発泡粒子を充填する工程(充填工程)。
(2)金型内に水蒸気を流すことにより、金型及び金型チャンバー内に存在する空気を追い出すと共に、金型全体を加熱する工程(予備加熱工程)。
(3)固定型側から移動型側に水蒸気を流すことにより、金型内に充填されたスチレン系樹脂予備発泡粒子の間に存在する空気を追い出すと共に加熱する工程(一方加熱工程)。
(4)次いで、移動型側から固定型側に水蒸気を流すことにより、金型内に充填されたスチレン系樹脂予備発泡粒子の間に存在する空気を更に追い出すと共に、加熱する工程(逆一方加熱工程)。
(5)固定型側と移動型側の両方から水蒸気を流すことにより、金型内に充填されたスチレン系樹脂予備発泡粒子表面が軟化する迄、充分温度を上昇させて、スチレン系樹脂予備発泡粒子同士を最終的に融着せしめ、一定形状のスチレン系樹脂型内発泡成形体とする工程(両面加熱工程)。
(6)金型を冷却した後、金型を開き、スチレン系樹脂型内発泡成形体を取り出す工程(冷却・取り出し工程)。
[スチレン系樹脂型内発泡成形体の用途]
本発明のスチレン系樹脂型内発泡成形体は、例えば、建築用断熱材等に好適に使用できる。
(建築用断熱材)
住宅等の断熱材は、難燃性が重要な課題であり、かつ、10年以上使用されるため、長期間経過後の断熱性維持が重要な課題となっている。本発明で得られるスチレン系樹脂型内発泡成形体は、安定した難燃性及び防蟻性を示し、また、長期間経過後の熱伝導率を低くすることができるため、住宅用基礎部分、床、壁、屋根等に用いられる建築用断熱材として好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
(スチレン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率の測定)
空気比較式比重計(BECKMAN社製、930型)を用いて、得られたスチレン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡体積を測定した後、該測定に用いたスチレン系樹脂予備発泡粒子全量を用いて別途エタノール浸漬法で見かけ体積(エタノールを入れたメスシリンダーにスチレン系樹脂予備発泡粒子全量を投入、浸漬し、エタノール上面の上昇分から求めた体積)を求め、独立気泡体積を見かけ体積で除することにより、独立気泡率を算出した。
(スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率の測定)
一般的に熱伝導率の測定平均温度が大きい方が熱伝導率の値は大きくなることが知られており、断熱性を比較するためには測定平均温度を定める必要がある。本明細書では発泡プラスチック保温材の規格であるJIS A9511:2006Rで定められた23℃を基準に採用している。
以下の実施例及び比較例では、熱伝導率は、スチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定サンプルを切り出し、サンプルを50℃温度下で48時間静置し、さらに、23℃の温度下にて24時間静置した後に測定した。
より詳しくは、スチレン系樹脂発泡成形体から、長さ300mm×幅300mm×25mmのサンプルを切り出した。サンプルを50℃温度下にて48時間静置し、さらに、23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC−074)を用いて、JIS A1412−2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率Aを測定した。
(グラファイトの平均粒径D50(μm)及びレーザー散乱強度(%)の測定)
(1)試料溶液調整条件
(a)測定対象が、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、又は発泡成形体の場合、
試料500mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させる。
(b)測定対象が、混練前のグラファイト、即ち原材料のグラファイト自体の場合、
グラファイト20mg及びスチレン系樹脂(A)480mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させる。
(c)測定対象が、グラファイトマスターバッチの場合、
グラファイトマスターバッチ40mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させる。
次いで、超音波洗浄器にて、上記の試料溶液に超音波を照射し、グラファイトの凝集を緩和させる。
(2)超音波照射条件
使用装置 :アズワン株式会社製 超音波洗浄器 型番USM
発振周波数:42kHz
照射時間 :10分
温度 :室温
(3)粒径測定条件
測定機 :マルバーン社製 レーザー回折式粒度分布測定装置 マスターサイザー3000
光源 :632.8nm赤色He−Neレーザー及び470nm青色LED
分散ユニット:湿式分散ユニット Hydro MV
以下の設定で分析を実施し、ISO13320:2009,JIS Z8825−1に準拠したMie理論に基づくレーザー回折・散乱法による測定・解析により、体積分布を求め、サンプル中のグラファイトのD50粒径を算出した。
粒子の種類 :非球形
グラファイト屈折率 :2.42
グラファイト吸収率 :1.0
分散媒体 :0.1%(w/w)スパン800トルエン溶液
分散媒体の屈折率 :1.49
分散ユニット中の攪拌数:2500rpm
解析モデル :汎用、単一モードを維持
測定温度 :室温
(4)測定手順
0.1%(w/w)スパン800トルエン溶液120mLを分散ユニットに注入し、2500rpmで攪拌し、安定化させた。測定セルに試料溶液サンプルが存在せず、分散媒体のみの状態で632.8nm赤色He−Neレーザー光を照射した際の中央検出器で測定された光の強度を透過光の強度Lbとした。次いで、超音波処理した試料溶液を2mL採取し、分散ユニットに追加した。試料溶液を追加して1分後の632.8nm赤色He−Neレーザー光を照射した際の中央検出器で測定された光の強度を透過光の強度Lsとした。また、同時に粒径(D50)を測定した。得られたLs及びLbより、以下の式で試料溶液のレーザー散乱強度Obを算出した。
Ob=(1−Ls/Lb)×100(%)
中央検出器はレーザー光の出力に対して対向した正面に位置する検出部であり、ここで検出される光が散乱に使用されなかった透過光の尺度である。レーザー散乱強度とは、解析装置のレーザーに試料を散乱させた際に失われるレーザー光の量の尺度である。
(5)発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、又は発泡成形体単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、又は発泡成形体単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、又は発泡成形体単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))=レーザー散乱強度(Ob)/{サンプル重量(500mg)/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)}
単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度とは、測定したレーザー散乱強度をトルエン中のサンプル濃度で割った値である。この測定装置は溶液で測定する必要のある装置であるため、トルエン溶液中のサンプル濃度を一定とし、一定のサンプル量における測定値を得ている。
(6)発泡性スチレン系樹脂粒子中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、発泡性スチレン系樹脂粒子中に含有されるグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
発泡性スチレン系樹脂粒子中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=発泡性スチレン系樹脂粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/発泡性スチレン系樹脂粒子のグラファイト含有量(重量%)
同じ重量のグラファイトであっても発泡性スチレン系樹脂粒子に含有されるグラファイトの状態、即ち分散されている濃度を調節することによって断熱性を向上できることが本発明の本質である。上記グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を用いることによって本発明を表現することができる。
(7)予備発泡粒子中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、予備発泡粒子中に含有されるグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
予備発泡粒子中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=予備発泡粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/予備発泡粒子のグラファイト含有量(重量%)
(8)発泡成形体中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、発泡成形体中に含有されるグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
発泡成形体中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=発泡成形体単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/発泡成形体のグラファイト含有量(重量%)
(9)混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}=レーザー散乱強度(Ob)/[{グラファイト重量(20mg)+スチレン系樹脂(480mg)}/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)]
(10)混練前のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度
以下の式にて、混練前のグラファイト、即ち原材料グラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
混練前のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物中のグラファイト含有量(20/500×100=4重量%)
(11)グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))=レーザー散乱強度(Ob)/{マスターバッチ重量(40mg)/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)}
(12)グラファイトマスターバッチ中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、グラファイトマスターバッチ中のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
グラファイトマスターバッチ中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/グラファイトマスターバッチのグラファイト含有量(重量%)
(押出時の状況(安全性評価))
発泡性スチレン系樹脂粒子を製造するに当たり、後述するとおり、第1の押出機と第2の押出機を直列に連結したタンデム型二段押出機を用い、第2の押出機の先端に取り付けられた継続配管を介して設置されたダイから、溶融樹脂を加圧循環水中に押出した。
この際、ダイ近傍の環境と加圧水(加圧循環水)について、以下のようにして安全性を評価した。
・ダイ近傍の環境
○:ダイ近傍において、ガスの発生及び異臭がなく、製造中、作業者は目やのどに刺激を感じることがない、
△:ダイ近傍において、ガスの発生及び/又は異臭がやや認められるが、製造中、作業者は目やのどに刺激を感じることがない、
×:ダイ近傍において、明らかにガスの発生及び/又は異臭が認められ、製造中、作業者が目やのどに刺激を感じるため、ダイ近傍雰囲気の排気処理が必要である。
・加圧水
○:製造中に循環されている加圧水から採取したサンプルにおいて、異臭がない、
△:製造中に循環されている加圧水から採取したサンプルにおいて、やや異臭がする、
×:製造中に循環されている加圧水から採取したサンプルにおいて、明らかに異臭がする。
(発泡倍率の測定)
スチレン系樹脂発泡成形体から、熱伝導率の測定の場合と同様に、長さ300mm×幅300mm×厚さ25mmのサンプルを切り出した。サンプルの重量(g)を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、厚さ寸法を測定した。測定された各寸法からサンプルの体積(cm)を計算し、下記計算式に従って発泡倍率を算出した。
発泡倍率(cm/g)=サンプル体積(cm)/サンプル重量(g)
なお、スチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率「倍」は慣習的に「cm/g」でも表されている。
(難燃性の評価)
作製された発泡成形体に対して、60℃温度下にて48時間静置し、さらに23℃温度下にて24時間静置した後、JIS K7201に準じて、酸素指数を測定した。
(防蟻性の評価)
防蟻効力試験による質量減少率は、試験片のサイズを20mm×20mm×10mm(スチレン系樹脂発泡成形体のほぼ中央から、長さ20mm×幅20mm×10mmのサンプルを切り出す)とした点を除き、そのサイズの3つの試験片により、JWPS−TW−S.1(社団法人日本木材保存協会規格:表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法及び性能基準、一般試験名:強制摂食試験)に従って測定した。
具体的には、20mm×20mm×10mmのサイズとした各試験片を60±2℃で48時間乾燥し、デシケータ内で約30分間冷却した後、0.01gまで秤量することにより試験前の質量(W1)を測定した。また、底板及び蓋を有する円筒状の飼育容器(アクリル樹脂製、外径8cm、高さ6cm、肉厚5mm) の底板上に、厚さが5mmとなるように硬石膏を注入、硬化させた。
この飼育容器内の硬石膏上に、柾目(まさめ) 面を上下にしたアカマツ辺材をブランクとして載置すると共に、3つの試験片をそれぞれ水平に載置した状態で、イエシロアリの巣から無作為に取り出した職蟻150頭、兵蟻15頭を飼育容器内に投入し、蓋をした後、28±2℃の暗所に21日間静置した。そして、21日経過後に飼育容器から試験片を取り出し、その表面に付着した蟻土を丁寧に取り除いた上、60±2℃ で48時間乾燥し、デシケータ内で約30分間冷却した後、0.01gまで秤量することにより試験後の質量(W2)を測定した。
質量減少率は、次の数式に従って算出し、3つの試験片についての平均値とした。なお、ブランクとしてのアカマツ辺材の質量減少率は、27.5%であった。
質量減少率(%) ={(W1−W2)/W1}×100
また、21日経過後の試験片について、目視により最大直線寸法が1mm以上の大きな穿孔があるか否かの穿孔観察を行った。
その上で、次の基準に従って防蟻性を総合評価した。
○:試験体の質量減少率が3%未満であると共に、大きな穿孔がない、
△:試験体の質量減少率が3%未満であるが、一部に大きな穿孔がある、
×:試験体の質量減少率が3% 以上であると共に、大きな穿孔がある。
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
(スチレン系樹脂)
(A)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、680]
(グラファイト)
(B1)グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、鱗片状黒鉛SGP−40B]
グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度:4.0{%/(mg/ml)}/重量%
(臭素系難燃剤)
(C1)2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン[第一工業製薬(株)製、SR−130、臭素含有量=66重量%]
(C2)臭素化スチレン-ブタジエン共重合体[ケムチュラ社製、EMERALD INNOVATION 3000、臭素含有量=65重量%]
(熱安定剤)
(D1)テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン[(株)ADEKA製 LA−57]
(D2)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製 PEP−36]
(D3)3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン[ADDIVANT社製 Ultranox626]
(D4)ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][ADDIVANT社製 ANOX20]
(D5)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[ハンツマンジャパン(株)製、ECN−1280,エポキシ当量212〜233g/eq.]
(防蟻剤)
(E1)イミダクロプリド[バイエルクロップサイエンス(株)製、アドマイヤー顆粒水和剤(イミダクロプリド濃度50.0wt%)]
(E2)シラフルオフェン[バイエルクロップサイエンス(株)製、Mr.ジョーカー水和剤(シラフルオフェン濃度20.0wt%)]
(E3)ホウ酸亜鉛[ユーエスボラックス製、ファイヤーブレイクZB]
(発泡剤)
(F1)ノルマルペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(F2)イソペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(その他添加剤)
(G)エチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH−50S]
(グラファイトマスターバッチ)
(I)バンバリーミキサーに、スチレンホモポリマー(A)49重量%、グラファイト(B1)50重量%、エチレンビスステアリン酸アミド(G)1重量%の全重量(A+B1+G)が100重量%となる様に原料投入して、5kgf/cmの荷重をかけた状態で加温冷却を行わずに20分間溶融混練した。この際、樹脂温度を測定したところ180℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイを通して吐出250kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチを得た。マスターバッチ中のグラファイト含有量は50重量%であった。得られたマスターバッチ中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度はb=6.1{%/(mg/ml)}/重量%であった。なお、混練前のグラファイトSGP40Bのレーザー散乱強度はa=4.0{%/(mg/ml)}/重量%であった。このことから、b=1.53aであった。
(臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ)
(J1)2軸押出機に、スチレンホモポリマー(A)を供給して溶融混練した後、押出機途中より臭素系難燃剤(C1)、安定剤(D1)及び(D2)の混合物を供給して、さらに溶融混練した。ただし、各材料の重量比率は、(A):(C1):(D1):(D2)=70:28.5:0.6:0.9、(A)+(C1)+(D1)+(D2)=100重量%とした。押出機先端に取り付けられた小穴を有するダイを通して、吐出300kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、切断して臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチを得た。このとき押出機の設定温度は170℃で実施した。マスターバッチ中の臭素含有量は18.8重量%であった。
(J2)2軸押出機に、スチレンホモポリマー(A)、臭素系難燃剤(C2)、安定剤(D3)、(D4)、及び(D5)を供給して、溶融混練した。ただし、各材料の重量比率は、A:C2:D3:D4:D5=42.25:50:0.25:5:2.5、A+C2+D3+D4+D5=100重量%とした。押出機先端に取り付けられた小穴を有するダイを通して、吐出300kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、切断して臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチを得た。このとき押出機の設定温度は150℃で実施した。得られたマスターバッチ中の、臭素含有量は32.5重量%であった。
(加圧水)
(K1):イオン交換水(電気伝導率0.05mS/m)
(K2):炭酸ナトリウム溶解水((K1)のイオン交換水に炭酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、和光一級)を溶解させ濃度0.1モル/Lとした、pH11〜12)
(K3):大阪府内地下水(電気伝導率49mS/m)
(K4):(K1)/(K3)=50/50の重量比で混合した水(電気伝導率25mS/m)
なお、電気伝導率は、ハンナインスツルメンツ・ジャパン(株)製の電気伝導率計HI98308PWTピュア(10mS/m未満測定時)、あるいは電気伝導率計HI98311ディスト5(10mS/m以上測定時)を用い、23℃で測定した。
(実施例1)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]
スチレンホモポリマー(A)、臭素系難燃剤(C1)と熱安定剤の混合物のマスターバッチ(J1)、バンバリーミキサーを用いて上述のごとく作製したグラファイト(B1)のマスターバッチ(I)、及び防蟻剤(E1)を、それぞれブレンダーに投入して、10分間ブレンドし、樹脂混合物を得た。但し、マスターバッチ(J1)及びマスターバッチ(I)に含まれるスチレンホモポリマー(A)をも考慮し、スチレンホモポリマー(A)のトータル量100重量部に対し、臭素系難燃剤(C1)2.5重量部、グラファイト(B1)4重量部、及び防蟻剤(E1)が0.1重量部(イミダクロプリドとしては0.05重量部)となるよう配合した。
口径40mmの同方向2軸押出機(第1の押出機)と口径90mmの単軸押出機(第2の押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機の第1の押出機に、得られた樹脂混合物を供給し、第1の押出機回転数150rpmにて溶融混練した。第1の押出機の途中から、上記樹脂組成物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(F1)80重量%とイソペンタン(F2)20重量%の混合物]を7重量部の割合で圧入した。この時、第1の押出機先端に設置された熱電対により測定した樹脂温度は、190℃であった。その後、継続配管を通じて、口径90mm押出機(第2の押出機)に供給した。
次いで、口径90mm押出機(第2の押出機)にて溶融樹脂の樹脂温度を160℃(第2の押出機先端に設置された熱電対により測定)まで冷却した後、第2の押出機の先端に取り付けられた継続配管を介して設置された、直径0.65mm、ランド長3.0mmの小孔を60個有するダイ(ダイ設定温度250℃)から、吐出量50kg/時間で、水温60℃/水圧0.8MPa(ゲージ圧)の加圧循環水中に押出した。押出された溶融樹脂は、ダイに接触する10枚の刃を有する回転カッターを用いて、1500rpmの条件にて切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、ステアリン酸亜鉛0.08重量部をドライブレンドした後、15℃で保管した。
[スチレン系樹脂予備発泡粒子の作製]
発泡性スチレン系樹脂粒子を作製し、15℃で保管してから2週間後に発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡機[大開工業株式会社製、BHP−300]に投入し、0.08MPa(ゲージ圧)の水蒸気を予備発泡機に導入して発泡させ、嵩倍率において発泡倍率50倍のスチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
[スチレン系樹脂型内発泡成形体の作製]
得られた嵩倍率50倍のスチレン系樹脂予備発泡粒子を、発泡スチロール用成形機[ダイセン工業(株)製、KR−57]に取り付けた型内成形用金型(長さ450mm×幅310mm×厚み25mm)内に充填して、0.06MPa(ゲージ圧力)の水蒸気を導入して型内発泡させた後、金型に水を3秒間噴霧して冷却した。スチレン系樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.015MPa(ゲージ圧力)なるまでスチレン系樹脂発泡成形体を金型内に保持した後に、スチレン系樹脂発泡成形体取り出して、直方体状のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。発泡倍率は、50倍であった。
実施例1の発泡性スチレン系樹脂粒子に含まれるグラファイトの平均粒径を測定し、スチレン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率も測定した。また、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る際の安全性、スチレン系樹脂発泡成形体の難燃性、防蟻性、及び断熱性を評価した。その測定結果及び評価結果を表1に示す。
Figure 0006692219
(実施例2〜14、比較例1〜5)
配合比率、樹脂温度、あるいは加圧水種を表1又は表2記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施し、発泡性スチレン系樹脂粒子に含まれるグラファイトの平均粒径を測定し、スチレン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率も測定した。また、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る際の安全性、スチレン系樹脂発泡成形体の難燃性、防蟻性、及び断熱性を評価した。その測定結果及び評価結果を表1又は表2に示す。
なお、比較例2では、押出時の分解ガスの発生と異臭が激しいため、実験を中止した。また、比較例5では、スチレン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率が低く、型内発泡成形した際に、収縮が激しいスチレン系樹脂型内発泡成形体となってしまい、良品(良好な発泡体)を得ることができなかった。このため、比較可能な評価になりえないことから、難燃性、防蟻性、及び断熱性評価は実施しなかった。
Figure 0006692219
(比較例6)
[スチレン系樹脂発泡体(押出発泡体)の作製]
スチレンホモポリマー(A)、臭素系難燃剤(C1)と熱安定剤の混合物のマスターバッチ(J1)、バンバリーミキサーを用いて上述のごとく作製したグラファイト(B1)のマスターバッチ(I)、及び防蟻剤(E1)を、それぞれブレンダーに投入して、10分間ブレンドし、樹脂混合物を得た。但し、マスターバッチ(J1)及びマスターバッチ(I)に含まれるスチレンホモポリマー(A)をも考慮し、スチレンホモポリマー(A)のトータル量100重量部に対し、臭素系難燃剤(C1)2.5重量部、グラファイト(B1)4重量部、及び防蟻剤(E1)が0.36重量部(イミダクロプリドとしては0.18重量部)となるよう配合した。
口径40mmの同方向2軸押出機(第1の押出機)と口径90mmの単軸押出機(第2の押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機に、更に冷却機を接続した装置を用い、第1の押出機に、得られた樹脂混合物を供給し、第1の押出機回転数150rpmにて溶融混練した。第1の押出機の途中から、上記樹脂組成物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(F1)80重量%とイソペンタン(F2)20重量%の混合物]を7重量部の割合で圧入した。この時、第1の押出機先端に設置された熱電対により測定した樹脂温度は、190℃であった。その後、継続配管を通じて、口径90mm押出機(第2の押出機)に供給した。
次いで、口径90mm押出機(第2の押出機)にて溶融樹脂の樹脂温度を160℃(第2の押出機先端に設置された熱電対により測定)まで冷却した後、冷却機にて樹脂温度を121℃にまで更に冷却した。そして、冷却機先端に設けた厚さ2mm×幅50mmの長方形断面の口金(スリットダイ)より大気中へ押出発泡させた後、口金に密着させて設置した成形金型とその下流側に設置した成形ロールにより、おおむね厚み50mm×幅150mmである断面形状の押出発泡板を得た。吐出量は50kg/時間であった。
この際、スリットダイ近傍(ダイ近傍)にて安全評価を行った。また、スチレン系樹脂発泡体(押出発泡体)の難燃性、及び防蟻性を評価した。その測定結果及び評価結果を表2に示す。
表1及び表2から、実施例1〜14は、防蟻性能を表す強制摂食試験の結果が○又は△で良好であり、かつ難燃性能を表す酸素指数が25〜30で良好である。従って、臭素系難燃剤を0.8重量部(実施例12)〜7重量部(実施例13)、かつ防蟻剤を0.02重量部(実施例8)〜2.5重量部(実施例7)含有することにより、防蟻性能及び難燃性能を満足させつつ発泡性スチレン系樹脂粒子を押出法で直接的に製造することができる。一方、比較例1は、防蟻剤が0.0025重量部と低すぎるため防蟻性能が不可であり、比較例2は、防蟻剤が過剰であるため分解ガスが発生し異臭が激しかった。比較例3及び4は臭素系難燃剤が0.3重量部と少ないため、酸素指数が20未満であり不可であった。また、比較例5は臭素系難燃剤が11重量部と過剰であるため、収縮の激しいスチレン系樹脂発布成形体しか得られず評価不能であった。また、比較例6はそもそも水中へ溶融樹脂を押出して切断する製造方法ではない。
実施例1〜7、及び9〜14のごとく、臭素系難燃剤を0.8重量部(実施例12)〜7重量部(実施例13)、かつ防蟻剤を0.05重量部(実施例1)〜2.5重量部(実施例7)含有することにより、防蟻性能及び難燃性能をより満足させつつ発泡性スチレン系樹脂粒子を押出法で直接的に製造することができる。
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

Claims (13)

  1. スチレン系樹脂100重量部に対し、臭素系難燃剤0.5重量部以上、10重量部以下と、防蟻剤0.005重量部以上、2.5重量部以下とを含有させ、発泡剤とともに溶融混練して溶融樹脂とし、該溶融樹脂を小孔を有するダイを通じて加圧水中に押し出し、加圧水中に押し出された溶融樹脂を回転カッターにより切断する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記臭素系難燃剤と前記防蟻剤との重量比(臭素系難燃剤重量/防蟻剤重量)が、10以上、60以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記スチレン系樹脂100重量部に対し、前記臭素系難燃剤0.8重量部以上、7重量部以下と、前記防蟻剤0.02重量部以上、2.5重量部以下とを含有させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 前記加圧水の電気伝導率が、0.00mS/m以上、25mS/m以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  5. 前記加圧水に、アルカリ性物質、酸性物質、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を溶解又は懸濁させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  6. 溶融樹脂の樹脂温度が、200℃未満であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  7. 前記臭素系難燃剤が、臭素化スチレン-ブタジエン共重合体及び/又は2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  8. 前記防蟻剤が、カーバメート系防蟻剤、ピレスロイド系防蟻剤、ピレスロイド様化合物系防蟻剤、クロルニコチル系防蟻剤、トリアジン系防蟻剤、クロルニコチル系防蟻剤、天然物系防蟻剤及び無機系防蟻剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  9. 前記防蟻剤が、ピレスロイド系防蟻剤、ピレスロイド様化合物系防蟻剤、及びクロルニコチル系防蟻剤の群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  10. スチレン系樹脂100重量部に対し、グラファイトを3重量部以上、8重量部以下を含有させたことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  11. 前記グラファイトの平均粒径が3μm以上、7μm以下である請求項10に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることを特徴とするスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
  13. 請求項12に記載の製造方法によって得られる発泡スチレン系樹脂粒子を型内発泡成形させることを特徴とするスチレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法。
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