JP6854671B2 - 発泡性熱可塑性樹脂粒子、およびその製造方法 - Google Patents

発泡性熱可塑性樹脂粒子、およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、発泡性熱可塑性樹脂粒子、およびその製造方法に関する。
発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性等を有するバランスに優れた発泡体であり、従来から食品容器箱、保冷箱、緩衝材、及び住宅等の断熱材として広く利用されている。
近年、地球温暖化等の諸問題に関連し、住宅等建築物の断熱性向上による省エネルギー化が志向されつつあり、スチレン系樹脂発泡成形体の需要拡大が期待されている。また、それと共に、スチレン系樹脂発泡成形体の断熱性のさらなる向上について、種々の検討がなされている。
一方、スチレン系樹脂発泡成形体は、断熱材としてはグラスウール等他素材との競合市場にある。それゆえ、スチレン系樹脂発泡成形体の製造にあたっては、徹底したコストダウンが求められている。発泡倍率が40倍以上のスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡倍率が大きくなるほど熱伝導率が大きくなり断熱性が悪化するため、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率をより低くすることが望まれている。熱伝導率がより低いスチレン系樹脂発泡成形体であれば、発泡倍率をより高くした場合にも、発泡倍率の低い従来のスチレン系樹脂発泡成形体と同等の断熱性が得られるため、原料である発泡性スチレン系樹脂粒子の使用量を減らすことができる。従って、スチレン系樹脂発泡成形体を備える断熱材を安価に製造することができる。
また、スチレン系樹脂発泡成形体に含有されるブタン又はペンタン等の発泡剤は、熱伝導率の低減効果があるが、このような発泡剤は、時間の経過と共にスチレン系樹脂発泡成形体から逸散して大気(空気)と置換されるため、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率は時間経過と共に大きくなり、従って、時間経過と共に断熱性は悪化することが知られている。そのため、スチレン系樹脂発泡成形体に含有されるブタン又はペンタン等の発泡剤が空気に置換された後も、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率を低く維持することが求められている。
熱伝導率を低く維持する方法として、スチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用する方法が知られている。輻射伝熱抑制剤は、発泡成形体中を伝わる伝熱機構のうち輻射伝熱を抑制することができる物質であって、樹脂、発泡剤、セル構造、及び密度が同一である無添加系の発泡成形体と比較して、熱伝導率を低くすることができる効果を有する。
例えば、特許文献1には、処理により35g/L又はこれより小さい密度を有する発泡体をもたらすことができ、かつ均斉に分布されたグラファイト粉末を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
特許文献2には、密度が10〜100kg/m3、独立気泡率が60%以上、平均気泡径が20〜1000μmであり、グラファイト粉を0.05〜9重量%含有し、このグラファイト粉は、アスペクト比が5以上、体積平均粒子径(50%粒子径)が0.1〜100μm、比表面積が0.7m2/cm3以上、90%粒子径を10%粒子径で除した値1〜20である、スチレン系樹脂発泡成形体が記載されている。
特許文献3には、ポリスチレン系樹脂、難燃剤、グラファイト、及び揮発性発泡剤を含む樹脂組成物を押出機内で溶融混練し、得られた溶融混練物をダイから加圧された水中に押出し、押出された溶融混練物を切断することにより発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法が提案されている。
特許文献4には、平均粒径が50μmを超えるグラファイトを0.1〜25質量%含有する発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
特許文献5には、グラファイト及びノニオン性界面活性剤の存在下に懸濁水性液中で重合され、DIN52612に準じて10℃で測定した熱伝導率が0.032W/mK未満、及び密度が25g/L未満である、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。
特表2001−525001号 特開2005−2268号 特開2013−75941号 特表2002−530450号 特表2008−502750号
特許文献1〜5の発明は、発泡性樹脂粒子にグラファイトを添加することで、発泡性及び断熱性を両立するものであるものの、発泡性及び断熱性について、さらなる改善の要求がある。
従って、本発明の目的は、発泡倍率が高く、かつ、低い熱伝導率を有するスチレン系樹脂発泡成形体を与えうる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
本願の発明者らは、前述した課題を解決すべくグラファイトの分散状態を分析したところ、分散混練能力の高い二軸押出機で粉末グラファイトと熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子であっても、グラファイトが粗大粒子状で存在することを見出した。さらに検討を重ねた結果、グラファイトの粗大粒子を低減して、光の散乱量を増加させることにより、グラファイトの輻射伝熱抑制効果の更なる向上に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明における第1の発明は、グラファイトを含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子であって、前記グラファイトの含有量が2〜8重量%であり、前記グラファイトの平均粒径が2〜9μmであり、次の(a)または(b)を満たす発泡性熱可塑性樹脂粒子(以下、「本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子」と称することがある。)に関する。
(a)単位面積あたりの、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の個数が0.025個/μm2以下である。
(b)全グラファイト中の、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の面積率が30%以下である。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記面積率が20%以下であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子中のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が6.5{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子は発泡性スチレン系樹脂粒子であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡倍率50倍の発泡成形体にし、前記発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した中心温度23℃での熱伝導率が、0.0306W/mK以下であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率50倍の発泡成形体とした際の、前記発泡成形体の平均セル径が100〜250μmであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の予備発泡粒子は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡して作製する熱可塑性樹脂の予備発泡粒子に関する。
本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体は、本発明の熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を成形した熱可塑性樹脂発泡成形体に関する。
本発明における第2の発明は、グラファイトを含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、下記式(1)を満たす、グラファイトおよび熱可塑性樹脂を含有する混合物を二軸の撹拌機を備えた混練装置で撹拌してグラファイト含有マスターバッチを得る工程、および、
式(1):Mmin≦M≦80[重量%]
(ここで、上記式(1)において、2≦D50<5のときMmin=41であり、5≦D50≦9のときMmin=419×C1.34である。Mは混合物100重量%におけるグラファイトの含有量[重量%]、Cはグラファイトの嵩密度[g/cm3]、D50はグラファイトの平均粒径[μm]を示す。)
前記グラファイト含有マスターバッチおよび熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練する工程を含み、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子が、前記グラファイトの含有量が2〜8重量%であり、前記グラファイトの平均粒径が2〜9μmであり、次の(a)または(b)を満たす、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法(以下、「本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法」と称することがある。)に関する。
(a)単位面積あたりの、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の個数が0.025個/μm2以下である、
(b)全グラファイト中の、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の面積率が30%以下である。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記面積率が20%以下であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子が発泡性スチレン系樹脂粒子であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記混合物が、荷重:3.5kgf/cm2以上、樹脂温度:Tg+50℃以上(ここで、Tgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度である)混練時間:10分以上で混練されることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤を含有する溶融物を押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより切断する工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記押出機以降に取り付けた小孔を複数有するダイスを通じて溶融物を押し出し、カッターにより切断して熱可塑性樹脂粒子を得る工程、および、
前記熱可塑性樹脂粒子を水中に懸濁させて発泡剤を含浸させる工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子中のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が6.5{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の予備発泡粒子の製造方法は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法によって作製された発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡させて熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を作製する工程を備える。
本発明の熱可塑性樹脂の発泡成形体の製造方法は、本発明の熱可塑性樹脂の予備発泡粒子の製造方法によって作製した熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を成形する工程を備える。
本発明によれば、高い発泡倍率、及び、低い熱伝導率を有する熱可塑性樹脂発泡成形体を与えうる発泡性熱可塑性樹脂粒子を提供することができる。
また、本発明によれば、安価に入手できるグラファイトを使用しても優れた分散性を実現できるため、量産化におけるコスト優位性に優れる。
実施例1で作製したプレス品の一断面のSEM観察画像に映し出されたグラファイトの断面図 比較例4で作製したプレス品の一断面のSEM観察画像に映し出されたグラファイトの断面図 本発明の発泡成形体プレス品の一断面のSEM観察画像に映し出されたグラファイトの断面図
以下、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子およびその製造方法の実施形態を詳しく説明する。
[発泡性熱可塑性樹脂粒子]
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂、および、平均粒径2〜9μmのグラファイトを含有する。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、前記熱可塑性樹脂および前記グラファイトに加え、一般的な発泡性熱可塑性樹脂粒子に含有される成分を同様に含有することができる。具体的には、熱可塑性樹脂及び発泡剤を含有し、必要に応じて、輻射伝熱抑制剤、難燃剤、熱安定剤、ラジカル発生剤、及びその他の添加剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を含有できる。好ましくは、熱可塑性樹脂、発泡剤及び難燃剤を含有し、難燃剤を除く前述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよく、より好ましくは、熱可塑性樹脂、発泡剤、難燃剤及び熱安定剤を含有し、難燃剤及び熱安定剤を除く前述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよく、さらに好ましくは、熱可塑性樹脂、発泡剤、難燃剤、熱安定剤及び造核剤を含有し、難燃剤、熱安定剤及び造核剤を除く前述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよい。
(熱可塑性樹脂)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に使用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(耐熱PS)、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(HIPS)、N−フェニルマレイミド−スチレン−無水マレイン酸の三次元共重合体及び、それとASとのアロイ(IP)などのスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、シクロオレフィン系(共)重合体などのポリオレフィン系樹脂及びこれらに分岐構造、架橋構造を導入してレオロジーコントロールされたポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性PPE)、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などのエンジニアリングプラスチック、などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも、安価で、且つ、発泡成形が容易な発泡性樹脂粒子が得られる点から、スチレン系樹脂が好ましい。
スチレン系樹脂は、スチレン単独重合体(ポリスチレンホモポリマー)のみならず、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、スチレンと、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体とが、共重合されていても良い。ただし、後述する臭素化スチレン・ブタジエン共重合体は除く。
スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びトリクロロスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物又はその誘導体;無水マレイン酸、及び無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2)−クロロフェニルマレイミド、N−(4)−ブロモフェニルマレイミド、及びN−(1)−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物等があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
スチレン系樹脂は、前述のスチレン単独重合体、及び/又は、スチレンと、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体との共重合体に限らず、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、前述の他の単量体又は誘導体の単独重合体、又はそれらの共重合体とのブレンド物であっても良い。
スチレン系樹脂には、例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレン、及び/又はポリフェニレンエーテル系樹脂等をブレンドすることもできる。
スチレン系樹脂の中では、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の水蒸気等で発泡成形ができ、断熱性、難燃性、緩衝性のバランスに優れることから、スチレンホモポリマー、スチレン−アクリロニトリル共重合体、又はスチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましい。
(グラファイト)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子では、平均粒径2〜9μmのグラファイトを含有する。
グラファイトは、輻射伝熱抑制剤として発泡性熱可塑性樹脂粒子に含有されることで、高い断熱性を有する熱可塑性樹脂発泡成形体が得られる。ここでいう輻射伝熱抑制剤とは、近赤外又は赤外領域の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する物質をいう。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いられるグラファイトは、公知のグラファイトを使用でき、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、又は人造黒鉛等が挙げられる。なお、本明細書において、「鱗片状」という用語は、鱗状、薄片状又は板状のものをも包含する。これらの黒鉛は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、発泡成形体に使用する場合に輻射伝熱抑制効果が高い点から、鱗片状黒鉛を主成分とする黒鉛混合物が好ましく、鱗片状黒鉛がより好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いられるグラファイトは平均粒径が2〜9μmである。発泡性熱可塑性樹脂粒子製造時のハンドリング性および発泡成形体に使用する場合の輻射伝熱抑制効果の観点から2〜6μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。本明細書において、グラファイトの平均粒径は、ISO13320:2009,JIS Z8825:2013に準拠したMie理論に基づくレーザー回折散乱法により粒度分布を測定・解析し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径D50(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を平均粒径とする。
グラファイトは平均粒径が大きいほど製造コストが低くなる。特に平均粒径が2μm以上であるグラファイトは、粉砕のコストを含む製造コストが低いため、非常に安価であり、発泡性熱可塑性樹脂粒子のコストを低くできる。さらに、グラファイトの平均粒径が2μm以上であると、グラファイトの嵩密度が比較的大きいため発泡性熱可塑性樹脂粒子製造時のハンドリング性に優れ、かつ、断熱性の良好な発泡成形体を製造することが可能となる。平均粒径が9μm以下であると、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造する際に、セル膜が破れにくくなるため、高発泡化が容易であったり、成形容易性が増加したり、発泡成形体の圧縮強度が増加したりする傾向がある。
グラファイトの平均粒径が2μm以上であれば、発泡成形体に適用した場合に、より低い熱伝導率、従ってより高い断熱性を得ることができる。また、グラファイトの平均粒径が6μm以下であれば、成形体の表面美麗性に優れ、より低い熱伝導率、従ってより高い断熱性を得ることができる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に使用されるグラファイトは、特に限定されるわけではないが、発泡性熱可塑性樹脂粒子製造時のハンドリング性の観点から、嵩密度が0.10g/cm3以上であること好ましく、嵩密度が0.15g/cm3以上がより好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性系樹脂粒子のグラファイト含有量は目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、熱伝導率低減効果等のバランスの点から、発泡性熱可塑性樹脂粒子100重量%において2重量%以上8重量%以下であることが望ましい。グラファイト含有量が2重量%以上では、熱伝導率低減効果が十分となる傾向があり、一方、8重量%以下では、発泡性熱可塑性樹脂粒子から、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造する際に、セル膜が破れにくくなるため、高発泡化が容易であり、発泡倍率の制御が容易になる傾向がある。
発泡性熱可塑性樹脂粒子のグラファイト含有量は、3重量%以上7重量%以下であることがより好ましい。グラファイトの含有量が3重量%以上であることにより、熱伝導率が低くなり従ってより高い断熱性を得ることができる。また、グラファイトの含有量が7重量%以下であることにより、発泡性、成形体の表面美麗性が良好となる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、単位面積あたりの粗大粒子の個数が0.025個/μm2以下であることを特徴とする。また、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子のもう一方の形態としては、全グラファイト中の粗大粒子の面積率を30%以下であることを特徴とする。ここで、粗大粒子とは、熱可塑性樹脂に各々分散しているグラファイトの内、最大径が2.0μm以上であり、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚さが1.0μm以上であるグラファイト集合体を指す。従来のグラファイト含有発泡性熱可塑性樹脂粒子について本発明者がグラファイトの分散状態を分析したところ、グラファイトの粗大粒子が含まれていることを突き止めた。グラファイトの粗大粒子は個数としては少ないものの体積としては大きいため、グラファイトによる輻射伝熱抑制を効率的に発現させることができておらず、熱伝導率を更に向上できる余地があることを見出した。本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、グラファイトの粗大粒子が効果的に低減させて光拡散作用を高め(分散性を高め)、より低い熱伝導率を実現することができる。
「単位面積あたりの粗大粒子の個数」は、発泡性熱可塑性樹脂粒子に含有されるグラファイト全体に対する粗大粒子の含有率を示すことを意図する。「単位面積あたりの粗大粒子の個数」は次のとおりに求められる。発泡成形体、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子のいずれかの試料を溶融及び圧縮して成形されたフィルム状プレス品の断面(厚み方向)をSEM画像で観察される全粗大粒子の個数を、全グラファイト面積により除して求める。単位面積[μm2]は、SEM観察画像中のグラファイトの合計面積1μm2を指す。全粗大粒子の個数は、特定の観察条件・観察領域・撮影枚数の全てのSEM観察画像中の、粗大粒子の個数の合計を指す。グラファイトの面積はSEM観察画像中のグラファイトの最大径と最大厚みの積を指す。粗大粒子の面積についても、同様にSEM観察画像中の粗大粒子の最大径と最大厚みの積を指す。全グラファイト面積は、前記観察条件・観察領域・撮影枚数の全てのSEM観察画像中の、全てのグラファイトの面積についての和を指す。単位面積あたりの粗大粒子の個数は、0.023個/μm2以下が好ましく、0.022個/μm2以下がより好ましく、0.020個/μm2以下がさらに好ましい。
「全グラファイト中の粗大粒子の面積率」は、前記「単位面積あたりの粗大粒子の個数」と同様、発泡性熱可塑性樹脂粒子に含有されるグラファイト全体に対する粗大粒子の含有率を示す指標の一つである。「全グラファイト中の粗大粒子の面積率」は前記SEM観察における、全粗大粒子の面積を全グラファイト面積で除すことにより求められる。全粗大粒子の面積は、前記観察条件・観察領域・撮影枚数の全てのSEM観察画像中の、全ての粗大粒子の面積の和を指し、詳細は後述のとおりである。より低熱伝導率を得る観点から、当該面積率は20%以下であることがより好ましい。
前記観察条件は、加速電圧5kV、SE2検出器、観察倍率5000倍を指し、このときSEM観察画像1枚あたりに写る前記プレス品断面の大きさは23μm×16μmである。前記観察領域は、前記プレス品断面において、プレス品の厚み方向中央の位置からプレス品の表裏の方向にそれぞれ20μm以内の領域である。ここでプレス品において、プレス機の上板側の面を表、下板側の面を裏とする。前記撮影枚数は、グラファイトの総数が300個以上となるように、前記観察領域から無作為に選んだ異なる撮影位置から取得し、少なくとも5枚以上である。以上のSEM観察全般に関しての詳細は後述のとおりである。
(レーザー散乱強度)
本発明のグラファイト含有発泡性熱可塑性樹脂粒子は、グラファイトの粗大粒子が低減され、グラファイトの分散性が向上していることから、従来品よりも非常に高いレーザー散乱強度を示す。レーザー散乱強度が高いことは、光の散乱量、すなわちグラファイトの輻射伝熱抑制性能が高いことを示すため、発泡成形体とした場合に熱伝導率が低減する。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が6.0{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが好ましい。このレーザー散乱強度が6.0{%/(mg/ml)}/重量%以上であると、発泡成形体にした時にグラファイトの含有量に対して高い熱伝導率低減効果を得ることが可能となる。すなわち、発泡性樹脂粒子に用いた場合に、高発泡倍率で低い熱伝導率、従って高い断熱性、を得ることができる。グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が6.5{%/(mg/ml)}/重量%以上であることがより好ましく、10{%/(mg/ml)}/重量%以下であることがさらに好ましい。このレーザー散乱強度が6.5%以上であるとより十分な熱伝導率低減効果を得ることが可能となり、すなわち、さらに低い熱伝導率、従ってさらに高い断熱性を得ることができる。また、レーザー散乱強度が10{%/(mg/ml)}/重量%以下であると、混練によりグラファイトの平均粒子径が小さくなりすぎず、熱伝導率改善効果を得やすくなる。
本発明におけるグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度は、以下のようにして求められる。まず、測定対象(ここでは、発泡性熱可塑性系樹脂粒子)を含有しない溶媒に波長632.8nmのHe−Neレーザー光を照射した際の透過光の強度Lbと、測定対象を溶媒に所定重量分散させた溶液に波長632.8nmのHe−Neレーザー光を照射した際の透過光の強度Lsとから、レーザー散乱強度Ob(%)を式:Ob=(1−Ls/Lb)×100から求める。次に、求めたレーザー散乱強度Obから測定対象の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を求める。そして、求めた単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を所定重量の測定対象内のグラファイトの含有量(重量%)で割って算出されるレーザー散乱強度が、グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度である。なお、溶媒は、発泡性樹脂粒子における樹脂がスチレン樹脂である場合はトルエン、その他の樹脂である場合は、該樹脂を溶解できる溶媒であれば特に問わない。
(発泡剤)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子で用いられる発泡剤は、特に限定されないが、発泡性と製品ライフのバランスが良く、実際に使用する際に高倍率化しやすい観点から、揮発性発泡剤が好ましく、炭素数4〜6の炭化水素がより好ましい。発泡剤の炭素数が4以上であると揮発性が低くなり、発泡性熱可塑性樹脂粒子から発泡剤が逸散しにくくなるため、実際に使用する際に発泡工程で発泡剤が十分に残り、十分な発泡力を得ることが可能となり、高倍率化が容易となるため好ましい。また、炭素数が6以下であると、発泡剤の沸点が高すぎないため、予備発泡時の加熱で十分な発泡力を得やすく、高発泡化が易しい傾向となる。炭素数4〜6の炭化水素としては、例えばノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサン等の炭化水素が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、炭素数4の炭化水素および/または炭素数5の炭化水素が含まれることがさらに好ましい。特に高倍率化が容易であることから、発泡剤が、炭素数4〜6の炭化水素の群から選択される少なくとも2種を含み、少なくとも2種のうち1種が炭素数4または5の炭化水素であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、発泡剤の添加量は、発泡剤を含まない熱可塑性樹脂、前記グラファイト、およびその他添加剤からなる混合物100重量部に対して、4〜10重量部であることが好ましい。前記範囲であれば、発泡速度と発泡力のバランスがより良く、より安定して高倍率化しやすい、という効果を奏する。発泡剤の添加量が4重量部以上では、発泡に必要な発泡力が十分であるから、高発泡化が容易となり、50倍以上の高発泡倍率の発泡成形体を製造し易くなる傾向がある。また、発泡剤の量が10重量部以下であると、難燃性能が良好となると共に、発泡成形体を製造する際の製造時間(成形サイクル)が短くなるため、製造コストが低くなる傾向となる。なお、発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、4.5〜9重量部であることがより好ましく、5〜8重量部であることがさらに好ましい。
(難燃剤)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子で用いられる難燃剤としては、特に限定されず、従来から発泡成形体に用いられる難燃剤をいずれも使用できるが、その中でも、難燃性付与効果が高い臭素系難燃剤が望ましい。臭素系難燃剤としては、例えば、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル))、又は2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル))等の臭素化ビスフェノール系化合物、テトラブロモシクロオクタン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、又は臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、特表2009−516019号公報に開示されている)等が挙げられる。これら臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
臭素系難燃剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、グラファイト添加時の難燃性等のバランスの点から、発泡成形体全量に対して、臭素含有量は0.8重量%以上であることが好ましく、5.0重量%以下であることがより好ましい。臭素含有量が0.8重量%以上であると、難燃性付与効果が大きくなる傾向にあり、5.0重量%以下であると、得られる発泡成形体の強度が増加しやすい。臭素含有量は、より好ましくは1.0〜3.5重量%になるように、発泡性熱可塑性樹脂粒子に配合される。
(熱安定剤)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子においては、さらに、熱安定剤を併用することによって、製造工程における臭素系難燃剤の分解による難燃性の悪化及び発泡性熱可塑性樹脂粒子の劣化を抑制することができる。
熱安定剤は、用いられる熱可塑性樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、輻射伝熱抑止剤の種類及び含有量、臭素系難燃剤の種類及び含有量等に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。
熱安定剤としては、臭素系難燃剤含有混合物の熱重量分析における1%重量減少温度を任意に制御できる点から、ヒンダードアミン化合物、リン系化合物、又はエポキシ化合物が好ましい。熱安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、これらの熱安定剤は、後述するように耐光性安定剤としても使用できる。
(ラジカル発生剤)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子においては、ラジカル発生剤をさらに含有することにより、臭素系難燃剤と併用することによって、高い難燃性能を発現することができる。
ラジカル発生剤は、用いる熱可塑性樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、輻射伝熱抑止剤の種類及び含有量、臭素系難燃剤の種類及び含有量に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、又はポリ−1,4−イソプロピルベンゼン等が挙げられる。ラジカル発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
(その他の添加剤)
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、輻射伝熱抑制剤、加工助剤、耐光性安定剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、及び顔料等の着色剤よりなる群から選ばれる1種以上のその他添加剤を含有していてもよい。
加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、又は流動パラフィン等が挙げられる。耐光性安定剤としては、前述したヒンダードアミン類、リン系安定剤、エポキシ化合物の他、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、又はベンゾトリアゾール類等が挙げられる。造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、もしくはタルク等の無機化合物、メタクリル酸メチル系共重合体、もしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の高分子化合物、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、又はメチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、もしくはエチレンビスオレイン酸アマイド等の脂肪酸ビスアマイド等が挙げられる。発泡助剤としては、大気圧下での沸点が200℃以下である溶剤を望ましく使用でき、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、もしくはキシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、もしくはメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、又は酢酸エチル、もしくは酢酸ブチル等の酢酸エステル等が挙げられる。なお、輻射伝熱抑制剤、帯電防止剤及び着色剤としては、各種樹脂組成物に用いられるものを特に限定なく使用できる。これらの他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法]
本発明において、粗大粒子を減少させる手段としては、例えば撹拌機やスクリュの選定等による混練性能の向上や、熱可塑性樹脂とグラファイトの親和性の向上等であってもよい。熱可塑性樹脂とグラファイトの親和性の向上手段の具体例としては、グラファイトの表面処理や、適切な分散剤の添加等であってもよい。また、予めグラファイトを高濃度で存在させた状況下で熱可塑性樹脂と混練して、グラファイト含有マスターバッチを調製することが好ましい。具体的には、次の式(1)を満たす、グラファイトおよび熱可塑性樹脂を含有する混合物を二軸の攪拌機を備えた混練装置で攪拌してグラファイト含有マスターバッチを調製することが好ましい。式(1):Mmin≦M≦80[重量%]
ここで、上記式(1)において、2≦D50<5のとき、Mmin=41であり、5≦D50≦9のとき、Mmin=419×C1.34である。Mは混合物100重量%におけるグラファイトの含有量[重量%](以下、「グラファイト含有量M」と称することがある。)を示し、Cはグラファイトの嵩密度[g/cm3]を示す。
マスターバッチを作製する際のグラファイト含有量MがMmin重量%以上である場合、グラファイトの体積が多いことでマスターバッチ作製時のハンドリング性に劣るため、通常は積極的には取り扱われない。また、同様の理由でグラファイトの嵩密度が小さいほどマスターバッチ製造時のグラファイト含有量すなわち濃度を低下させるのが一般的な考え方である。しかし、本発明では、敢えてグラファイト含有量MをMmin重量%以上とすることで、グラファイトの分散性が顕著に向上され、グラファイトの輻射伝熱抑制効果を十分発現することが可能となっている。また、マスターバッチを作製する際のグラファイト含有量Mが80重量%を超えると、グラファイト表面が樹脂で十分濡れず、グラファイトの樹脂中への分散が進行しないため、グラファイトの輻射伝熱抑制効果を十分発現することができない。
グラファイト含有量Mは、高い輻射伝熱抑制効果を安定的に発現する観点から、次の式(2)の関係式を満たすように含有されることがより好ましく、さらに式(3)の関係式を満たすように含有されることがより好ましい。
式(2):Mmin2≦M≦80[重量%]
式(3):61≦M≦80[重量%]
(ここで、上記式(2)において、2≦D50<7.5のときMmin2=51であり、7.5≦D50≦9のときMmin2=419×C1.34である。Cはグラファイトの嵩密度[g/cm3]を示す。)
混合物には、上述の熱可塑性樹脂およびグラファイトの他に、添加剤を配合してもよい。例えば、離型剤、可塑剤、分散剤、滑剤等が挙げられる。とくに、二軸の撹拌機を備えた混練装置からの離型のしやすさ等の理由で、エチレンビスステアリン酸アミド等を加えても良い。
本発明においては、上述の式(1)を満たす熱可塑性樹脂およびグラファイトを含有する混合物を二軸の撹拌機を備えた混練装置により混練を行うことにより、光の散乱量を示すレーザー散乱強度の増大、すなわちグラファイトの輻射伝熱抑制性能が高くなるために、発泡成形体に使用した場合に熱伝導率が低減する。また、混練の際、グラファイトの分散、微細化、剥離が複合的に生じ、グラファイトの粒子数が増えているものと推測される。
二軸の撹拌機を備えた混練装置としては、公知の混練装置を使用できる。例えば、インテンシブミキサー、インターナルミキサー、又はバンバリーミキサー等が挙げられる。中でも、荷重の負荷による混合性向上の観点から、インターナルミキサー、又はバンバリーミキサーが好ましい。
二軸の撹拌機を備えた混練装置による、熱可塑性樹脂及びグラファイトを含有する混合物の混練は、荷重をかけながらの混練が好ましく、具体的には荷重3.5kgf/cm2以上で10分以上で混練し、樹脂温度Tg+50℃以上で混練を終えることが好ましく、荷重4kgf/cm2以上で15分以上混練し、樹脂温度Tg+50℃以上で混練を終えることがより好ましい。樹脂温度は、熱可塑性樹脂の分解を回避する観点から、300℃以下が好ましい。バンバリーミキサー等の混練装置では、荷重をかけることで混合性を増す事ことができる。また、混練を15分以上行うことで、バンバリーミキサー内での熱可塑性樹脂の粘度をグラファイトと混合しやすい粘度とすることができ、マスターバッチ中にグラファイトが十分に分散されるため、発泡成形体にした時に低い熱伝導率を得やすい。
荷重が4kgf/cm2以上であれば、低い熱伝導率を得やすい。すなわち、熱可塑性樹脂中のグラファイトが十分に混練され、レーザー散乱強度を高めることができる。
前述したマスターバッチを作製する撹拌工程が、荷重5kgf/cm2以上で20分以上混練することも好ましい。
荷重5kgf/cm2以上で混練することが、低い熱伝導率を得やすいことから好ましい。つまり、安定的にレーザー散乱強度を高めることができる。また、20分以上混練することが低い熱伝導率を得やすいことから好ましい。つまり、安定的にレーザー散乱強度を高めやすくすることができる。
本発明の好ましい一実施形態として、熱可塑性樹脂としてスチレン系樹脂を用いてマスターバッチを作製する場合には、二軸の撹拌機を備えた混練装置による混練は、荷重3.5kgf/cm2以上で10分以上混練し、樹脂温度160℃以上で混練を終えることが好ましく、荷重4kgf/cm2以上で15分以上混練し、樹脂温度170℃以上で混練を終えることがより好ましく、荷重5kgf/cm2以上で20分以上混練することがさらに好ましい。スチレン系樹脂中にグラファイトが分散しやすい粘度とするためには樹脂温度は170℃以上となるまで混合することが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、マスターバッチが熱可塑性樹脂(新たな熱可塑性樹脂)と混練されて得られる場合には、マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂と、新たな熱可塑性樹脂とは、同一であってもよいし、異なっていても良い。グラファイトの分散性、及び発泡成形性の観点から、マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂と、新たな熱可塑性樹脂とは、互いに相溶性に優れるものであることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製法においては、グラファイトの分散状態が優れる(高い分散性で、かつ高濃度で含まれる)マスターバッチを熱可塑性樹脂と溶融混練することによって、グラファイトの分散性に優れ、優れた断熱性を発揮しうる発泡性熱可塑性樹脂粒子を得られうる。使用されるグラファイト含有マスターバッチは、グラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が、5.5{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが好ましく、より好ましくは6.0{%/(mg/ml)}/重量%以上であり、さらに好ましくは6.5{%/(mg/ml)}/重量%以上である。
本発明の発泡性樹脂粒子を製造する方法としては、押出機を用いて熱可塑性樹脂、グラファイト、各種成分を溶融混練した後、粒子状に切断する溶融混練法が挙げられる。溶融混練法には、以下の第1の溶融混練法及び第2の溶融混練法の2つがあり、適宜選択することができる。
第1の溶融混練法としては、熱可塑性樹脂およびグラファイト、必要に応じて難燃剤、ラジカル発生剤、熱安定剤などの添加剤を押出機で溶融混練し、発泡剤を上記押出機、または、押出機以降に設けられた混合設備によって溶融物に溶解・分散させ、押出機以降に取り付けられた小孔を多数有するダイスを通じて加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出し、押出直後から回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する方法がある。この際、押出機による溶融混練は、単独の押出機を使用する場合、押出機を複数連結する場合、及び、押出機とスタティックミキサーやスクリューを有さない撹拌機など第2の混練装置を併用する場合があり、適宜選択することができる。
第2の溶融混練法としては、熱可塑性樹脂およびグラファイト、並びに必要に応じて、難燃剤、ラジカル発生剤、熱安定剤等の添加剤を押出機で溶融混練し、小孔を多数有するダイスを通じて押出した後カッターで切断することにより熱可塑性樹脂粒子を得た後(コールドカット法又はホットカット法)、該樹脂粒子を水中に懸濁させると共に、該樹脂粒子に発泡剤を含有させる方法がある。
第1および第2の溶融混練法における押出機の溶融混練部の設定温度は、100℃〜250℃が好ましい。また、押出機に樹脂及び各種成分を供給してから溶融混練終了までの押出機内滞留時間が10分以下であることが好ましい。
押出機の溶融混練部での設定温度が250℃以下の場合、及び/又は、溶融混練終了までの押出機内滞留時間が10分以下の場合には、臭素系難燃剤の分解が起こりにくく、所望の難燃性を得ることが可能となり、所望の難燃性を付与するために難燃剤を過剰に添加する必要がないという効果を奏する。
一方、押出機の溶融混練部での設定温度が100℃以上の場合には、押出機の負荷が小さくなって押出が安定となる。
ここで、押出機の溶融混練部とは、単軸又は二軸スクリューを有する押出機から構成される場合はフィード部以降から下流側最終押出機先端までを意味する。第1の押出機に付随してスタティックミキサーやスクリューを有さない撹拌機など第2の混練装置を併用する場合は第1の押出機のフィード部から第2の混練装置の先端までを意味する。
押出機中にて樹脂中に発泡剤、輻射伝熱抑制剤、必要に応じて、臭素系難燃剤、熱安定剤、及び造核剤等のその他添加剤が溶解又は均一分散され、必要に応じて適切な温度まで冷却された溶融樹脂(溶融混練物)は、複数の小孔を有するダイスから、加圧された冷却水中に押出される。
第1および第2の溶融混練法において使用される押出機は、公知の押出機を使用でき、単軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよいし、単軸押出機および/または二軸押出機を組み合わせたタンデム型の構成であってもよい。マスターバッチ及び熱可塑性樹脂を含む混合物を押出機で溶融混練する工程において、グラファイト含有量が60重量%以上のマスターバッチを用いる場合には、二軸押出機を使用することがグラファイトの分散の観点から好ましい。単軸押出機では、特にグラファイト含有量が70重量%以上のマスターバッチを用いる場合にはグラファイトの分散不良が生じることがあるが、単軸押出機の後にスタティックミキサーを設置する等で混練性能を改善することにより、グラファイトを十分に分散できる場合がある。
第1および第2の溶融混練法で用いられるダイスは特に限定されないが、例えば、好ましくは直径0.3mm〜2.0mm、より好ましくは0.4mm〜1.0mmの小孔を有するものが挙げられる。
なお、第1の溶融混練法において、ダイスより押出される直前の溶融樹脂の温度は、発泡剤を含まない状態での熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとすると、Tg+40℃以上であることが好ましく、Tg+40℃〜Tg+100℃であることがより好ましく、Tg+50℃〜Tg+70℃であることがさらに好ましい。
ダイスより押出される直前の溶融樹脂の温度がTg+40℃以上の場合は、押出された溶融樹脂の粘度が低くなり、小孔が詰まることが少なくなり、実質小孔開口率の低下のために得られる樹脂粒子が変形しにくくなる。一方で、ダイスより押出される直前の溶融樹脂の温度がTg+100℃以下の場合は、押出された溶融樹脂が固化しやすくなり、発泡してしまうことが抑制される。また、押出された溶融樹脂の粘度が低くなりすぎず、回転カッターにより安定的に切断されることが可能となり、押出された溶融樹脂が回転カッターに巻き付きにくくなる。
第1の溶融混練法における循環加圧冷却水に押出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されないが、例えば、ダイスリップに接触する回転カッターで切断されて小球化され、加圧循環冷却水中を発泡することなく、遠心脱水機まで移送されて脱水・集約される装置、等が挙げられる。
第1の溶融混練法の利点は発泡性樹脂粒子まで同じ設備で製造できるため、第2の溶融混練法と比較してランニングコストが低くなることである。
第2の溶融混練法の利点は、一般的な発泡性樹脂粒子の製造に使用される装置を使用して樹脂粒子に発泡剤を含浸できるため、大きな設備投資又は設備変更が必要ないこと、及び、グラファイト量、グラファイト粒径等を変更しても樹脂粒子の生産安定性が高いことにある。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂は、一般的な発泡性樹脂粒子の製造に使用されるシード重合によっても製造できる。具体的には、熱可塑性樹脂及びグラファイトを押出機で溶融混練し、小孔を有するダイスを通じて押出して、カッターで切断することにより、グラファイト含有樹脂種粒子を得た後、該グラファイト含有樹脂種粒子を水中に懸濁させ、重合単量体、開始剤、必要に応じて、臭素系難燃剤、造核剤などのその他添加剤を供給してシード重合を行い、重合前及び/又は重合中及び/又は重合後に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。
重合法の利点は、一般的な発泡性樹脂粒子の製造に使用される装置を使用して重合及び発泡剤を含浸できるため、大きな設備投資又は設備変更が必要ないことである。
[予備発泡粒子および発泡成形体]
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、従来公知の予備発泡工程、例えば、加熱水蒸気によって10〜110倍に発泡させて予備発泡樹脂粒子とし、必要に応じて一定時間養生させた後、成形に使用される。得られた予備発泡樹脂粒子は、従来公知の成形機を用い、水蒸気によって成形(例えば型内成形)されて発泡成形体が作製される。使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
本発明の発泡成形体は、発泡倍率が80倍の高倍率であっても、非常に低い熱伝導性を有することができる。具体的には、発泡倍率80倍の発泡成形体であれば、後述の熱伝導率Aは0.0306W/mK以下の非常に低い熱伝導率を示すことが好ましい。また、前記発泡成形体において、さらに50℃という発泡剤が揮散し易い温度下で30日保存後の、後述の熱伝導率Bは0.0324W/mK以下と非常に低いことが好ましく、この場合長期にわたって非常に低い熱伝導率ひいては高い断熱性を維持することができる。なお、発泡倍率50倍の発泡成形体においては、熱伝導率Aは0.0284W/mK以下、熱伝導率Bは0.0306W/mK以下を示すことが好ましい。
発泡成形体の平均セル径は、好ましくは70〜250μm、より好ましくは90〜200μm、さらに好ましくは100〜180μmである。平均セル径が前述の範囲にあることによって、断熱性のより高い発泡成形体となる。平均セル径が70μm以上では、発泡成形体の独立気泡率が増加し、また、250μm以下では、熱伝導率が低下する。平均セル径は、例えば、造核剤の量を適宜選択することにより調整できる。
さらに、発泡成形体は発泡倍率が高いほど原料である発泡性熱可塑性樹脂粒子の使用量が少なくなることから、本発明によれば、高発泡倍率の発泡成形体を安価に製造することができる。
発泡成形体の発泡倍率は、好ましくは70倍以上、より好ましくは80倍以上である。本発明によれば、80倍以上の発泡成形体とした場合でも低い熱伝導率を達成できるため、製造コストが安く、軽量性でも有利な、より高発泡のスチレン系樹脂発泡成形体としても高性能な断熱性を発現できる。
なお、本明細書において、発泡倍率を「倍」又は「cm3/g」という単位で示すがこれらは互いに同じ意味である。
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂発泡成形体は、低い熱伝導率を有すると共に、自己消火性を有し、かつ酸素指数26以上に調整することが可能であり、その場合には建築用断熱材として特に好適に使用できる。
[用途]
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて得られる発泡成形体は、長期間経過後の熱伝導率を低くすることができるため、床、壁、屋根等に用いられる建築用断熱材、魚等の水産物を輸送する箱や野菜等の農産物を輸送する箱などの農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク断熱材のような各種用途に使用できる。
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一実施形態の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の一実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
(スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率Aの測定)
一般的に熱伝導率の測定平均温度が大きい方が熱伝導率の値は大きくなることが知られており、断熱性を比較するためには測定平均温度を定める必要がある。本明細書では発泡プラスチック保温材の規格であるJIS A9511:2006Rで定められた23℃を基準に採用している。すなわち、発泡成形体の中心温度23℃での熱伝導率を測定した。
以下の実施例及び比較例では、熱伝導率Aは、スチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定サンプルを切り出し、サンプルを50℃温度下で48時間静置し、さらに、23℃の温度下にて24時間静置した後に測定した。
より詳しくは、スチレン系樹脂発泡成形体から、長さ300mm×幅300mm×25mmのサンプルを切り出した。厚み方向はスチレン系樹脂発泡成形体の厚さ25mmをそのまま使用した。従ってサンプルの長さ300mm×幅300mmの2面はスチレン系樹脂発泡成形体の成形された時の表面のままである。このような、成形された時の表面を一般的に「表面スキン」と呼んでおり、該明細書中では「表層」と定義する。サンプルを50℃温度下にて48時間静置し、さらに、23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC−074)を用いて、JIS A1412−2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率Aを測定した。
(アニーリング後のスチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率Bの測定)
長期間後において発泡剤が空気に置き換わった場合の熱伝導率Bを評価するためにスチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定サンプルを切り出し、サンプルを50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、熱伝導率Bを測定した。
50℃で30日間乾燥(アニーリング)することにより、スチレン系樹脂発泡成形体中に含有されるブタン、ペンタン等の炭化水素系発泡剤の含有量は0.5%以下となっており、熱伝導率に与える影響は軽微となり、スチレン系樹脂発泡成形体を常温で長期間使用した場合の熱伝導率Bをほぼ正確に評価することができる。
より詳しくは、スチレン系樹脂発泡成形体から、熱伝導率Aの測定と同様に長さ300mm×幅300mm×厚さ25mmのサンプルを切り出した。サンプルを50℃温度下にて30日間静置し、さらに、23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC−074)を用いて、JIS A1412−2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率Bを測定した。
(グラファイトの嵩密度の測定)
容量200mlのメスシリンダーを直立から30°傾けた状態で、これにグラファイト145〜155mlをさじを用いて徐々に投入した。次にメスシリンダーを垂直に立てた状態で3cmの高さから30回落下させ、以後30回落下させる間のグラファイトの体積変化が0.5ml未満となるまでこの操作を繰り返した後、グラファイトの質量および体積を測定した。このとき、グラファイトの嵩密度は以下の式にて計算した。
グラファイトの嵩密度[g/cm3]=グラファイトの質量[g]/グラファイトの体積[cm3]。
(グラファイト含有量の測定)
発泡性スチレン系樹脂粒子を約10mg採取しサンプルとした。このサンプルを、熱分析システム:EXSTAR6000を備えた熱重量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、TG/DTA 220U)を用いて、下記I〜IIIを連続で実施し、IIIにおける重量減少量をグラファイト重量とし、試験片重量に対するパーセントで表した。
I. 200mL/分の窒素気流下で40℃から600℃まで20℃/分で昇温した後600℃で10分保持、
II. 200mL/分の窒素気流下で600℃から400℃まで10℃/分で降温した後400℃で5分保持、
III.200mL/分の空気気流下で400℃から800℃まで20℃/分で昇温した後800℃で15分保持。
(グラファイトの平均粒径D50(μm)及びレーザー散乱強度(%)の測定)
(1)試料溶液調整条件
(a)測定対象が、発泡性スチレン系樹脂粒子の場合
試料500mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させた。
(b)測定対象が、混練前のグラファイト、即ち原材料のグラファイト自体の場合
グラファイト20mg及びスチレン系樹脂(A)480mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させた。
(c)測定対象が、グラファイトマスターバッチの場合
グラファイトマスターバッチ40mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させた。
(a)〜(c)において、分散とは、樹脂が溶解して、グラファイトが分散している状態のことをいう。
次いで、超音波洗浄器にて、前記の試料溶液に超音波を照射し、グラファイトの凝集を緩和させた。
(2)超音波照射条件
使用装置 :アズワン株式会社製 超音波洗浄器 型番USM
発振周波数:42kHz
照射時間 :10分
温度 :室温。
(3)粒径測定条件
測定装置 :マルバーン社製 レーザー回折式粒度分布測定装置 マスターサイザー3000
光源 :632.8nm赤色He−Neレーザー及び470nm青色LED
分散ユニット:湿式分散ユニット Hydro MV
以下の設定で分析を実施し、ISO13320:2009,JIS Z8825:2013に準拠したMie理論に基づくレーザー回折・散乱法による測定・解析により、体積分布を求め、サンプル中のグラファイトの平均粒径D50を算出した。
粒子の種類 :非球形
グラファイト屈折率 :2.42
グラファイト吸収率 :1.0
分散媒体 :0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液
分散媒体の屈折率 :1.49
分散ユニット中の撹拌数:2500rpm
解析モデル :汎用、単一モードを維持
測定温度 :室温。
(4)測定手順
0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液120mLを分散ユニットに注入し、2500rpmで撹拌し、安定化させた。測定セルに試料溶液サンプルが存在せず、分散媒体のみの状態で632.8nm赤色He−Neレーザー光を照射した際の中央検出器で測定された光の強度を透過光の強度Lbとした。次いで、超音波処理した試料溶液を2mL採取し、分散ユニットに追加した。試料溶液を追加して1分後の632.8nm赤色He−Neレーザー光を照射した際の中央検出器で測定された光の強度を透過光の強度Lsとした。また、同時にD50を測定した。得られたLs及びLbより、以下の式で試料溶液のレーザー散乱強度Obを算出した。
Ob=(1−Ls/Lb)×100(%)
中央検出器はレーザー光の出力に対して対向した正面に位置する検出部であり、ここで検出される光が散乱に使用されなかった透過光の尺度である。レーザー散乱強度とは、解析装置のレーザーに試料を散乱させた際に失われるレーザー光の量の尺度である。
(5)発泡性スチレン系樹脂粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、発泡性スチレン系樹脂粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
発泡性スチレン系樹脂粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))=レーザー散乱強度(Ob)/{サンプル重量(500mg)/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)}。
単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度とは、測定したレーザー散乱強度をトルエン中のサンプル濃度で割った値である。この測定装置は溶液で測定する必要のある装置であるため、トルエン溶液中のサンプル濃度を一定とし、一定のサンプル量における測定値を得ている。
(6)発泡性スチレン系樹脂粒子中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、発泡性スチレン系樹脂粒子中に含有されるグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
発泡性スチレン系樹脂粒子中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=発泡性スチレン系樹脂粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/発泡性スチレン系樹脂粒子のグラファイト含有量(重量%)。
同じ重量のグラファイトであっても発泡性スチレン系樹脂粒子に含有されるグラファイトの状態、即ち分散されている濃度を調節することによって断熱性を向上できることが本発明の一実施形態の本質である。前記グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を用いることによって本発明の一実施形態を表現することができる。
(7)混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}=レーザー散乱強度(Ob)/[{グラファイト重量(20mg)+スチレン系樹脂(480mg)}/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)]。
(8)混練前のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度
以下の式にて、混練前のグラファイト、即ち原材料グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
混練前のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/混練前のグラファイトとスチレン系樹脂との混合物中のグラファイト含有量(20/500×100=4重量%)
(9)グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))=レーザー散乱強度(Ob)/{マスターバッチ重量(40mg)/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)}。
(10)グラファイトマスターバッチ中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、グラファイトマスターバッチ中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
グラファイトマスターバッチ中のグラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=グラファイトマスターバッチ単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/グラファイトマスターバッチのグラファイト含有量(重量%)。
(グラファイトの粗大粒子の評価)
ここではSEM観察により、グラファイトの大きさを把握するために径に加え、厚みを評価する。これらを同時に評価するためには、グラファイトを側面から観察する必要がある。そこで本発明では、まず発泡成形体などの試料を溶融・圧縮することでフィルム状のプレス品を作製することで、グラファイトをプレスした面に平行に配向させる。次に、作製したフィルム状のプレス品から試料切片を切り出すと、その断面の観察によりグラファイトを側面から観察でき、グラファイトの径および厚みを測定できる。以下にその詳細を示す。
(1)プレス品の作製
以下でプレス品とする試料は発泡成形体、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子のいずれかであればよい。試料の重量は0.2gとした。また、以下では均一な厚みのプレス品を得るために、ステンレス製の50μm厚スペーサーを使用した。試料を前記スペーサーとともに、150mm×150mm×0.2mmのポリイミド製フィルム2枚で挟み、これを上板200℃/下板205℃で十分予熱されたプレス機に置いて、プレス機の上板と下板との間隔を2mmとした状態で2分間保持し、試料を十分溶融・脱泡した。次にプレスにより50kgf/cm2まで加圧し、2分間保持することでフィルム状のプレス品を得た。ここでプレス品において、プレス機の上板側の面を表、下板側の面を裏と称する。次にプレス品をポリイミド製フィルムで挟んだまま、前記プレス機とは別の室温のプレス機で50kgf/cm2まで加圧し、室温まで冷却した。ここで室温は10〜30℃を目安とし、室温までの冷却に要する時間の目安は5分である。冷却したプレス品をポリイミド製フィルムから剥がし、以下の(2)に進んだ。
(2)SEM観察用試料の作製
SEM観察用試料を以下の手順に沿って作製した。
・前記プレス品の中心を含むように5mm×5mmで切り出して試料切片を得た。
・前記試料切片の表裏に保護剤として熱硬化性樹脂を塗布した。
・90℃にて30分以上加熱し、熱硬化性樹脂を固化させた。
・前記試料切片の断面をサンドペーパー(#2000)にて鏡面研磨した(以後、この断面を「研磨断面」と称する。)。
・前記研磨断面の仕上げを行うため、装置としてGatan製Ilion+もしくはこれに準じるものを用い、液体窒素冷却をしながら加速電圧6kVにて前記研磨断面をブロードイオンビーム加工した。
・最後に白金の蒸着にて前記研磨断面に導電性処理を施し、SEM観察用試料とした。
(3)SEM観察
前記研磨断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察し、SEM観察画像を得た。装置にはZeiss製UltraPlusもしくはこれに準じる解像度をもつものを用いた。観察条件は、加速電圧5kV、SE2検出器、観察倍率5000倍とし、このときSEM観察画像1枚あたりに写る前記研磨断面の大きさは23μm×16μmであった。観察領域は、前記研磨断面内において、プレス品の厚み方向中央の位置からプレス品の表裏の方向にそれぞれ20μm以内の領域とした。撮影枚数については、グラファイトの総数が300個以上となるように、前記観察領域から無作為に選んだ異なる撮影位置から少なくとも5枚以上取得した。
前述のとおり、グラファイトはプレスした面に平行に配向するため、前記SEM観察画像上において観察されるグラファイトはグラファイトの側面方向からの観察像と見なした。
従来のグラファイトを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体では、一部のグラファイトが粗大粒子として確認されている。ここで本発明における粗大粒子は、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体と定義する。粗大粒子の例を図1〜3に示す。前記グラファイト集合体は、1個または2個以上から構成されるグラファイトを指し、隣り合うグラファイト間の最小間隔が0.20μm以上であるものは別個のグラファイト集合体と見なした。最大径は、グラファイト内で最大となる径とし、例えば粗大粒子の最大径は図1〜3中の実線が該当する。厚み方向は、最大径に垂直な方向とした。例えば粗大粒子の最大厚みは、図1〜3中の破線が該当する。グラファイトの一部が観察画像内に収まっていないものについては、評価の対象外とした。
本発明では、以下のものを定義し、グラファイトの分散性の評価指標とした。
単位面積あたりの粗大粒子の個数[個/μm2]=全粗大粒子の個数[個]/全グラファイト面積[μm2
全グラファイト中の粗大粒子の面積率[%]=全粗大粒子の面積[μm2]/全グラファイト面積[μm2]×100
ここで上記の定義により、単位面積あたりの粗大粒子の個数、および全グラファイト中の粗大粒子の面積率は、いずれも少ないほどグラファイトの分散性が良いことを指す。尚、単位面積[μm2]は、SEM観察画像についての単位面積ではなく、SEM観察画像中のグラファイトについての単位面積を言い、すなわちSEM観察画像中のグラファイトの合計面積1μm2を指す。全粗大粒子の個数は、前記観察条件・観察領域・撮影枚数の全てのSEM観察画像中の、粗大粒子の個数の合計を指す。グラファイトの面積はグラファイトの最大径と最大厚みの積で定義した。粗大粒子の面積についても、同様に粗大粒子の最大径と最大厚みの積で定義した。全グラファイト面積は、前記観察条件・観察領域・撮影枚数の全てのSEM観察画像中の、全てのグラファイトの面積についての和と定義した。同様に、全粗大粒子の面積は、前記観察条件・観察領域・撮影枚数の全てのSEM観察画像中の、全ての粗大粒子の面積の和と定義した。
(臭素含有量の測定)
臭素の含有量は、酸素フラスコ燃焼法を行った後、イオンクロマト法(以下、IC法と称する)により、臭素の定量分析を行って求めた。
(1)酸素フラスコ燃焼法
導火部を有する濾紙の中央に、試料(スチレン系樹脂発泡成形体5mg)を置き、導火部を固定したまま濾紙を縦方向に三つ折りした。その後、濾紙を横方向に三つ折りにし、試料を包含した濾紙を、500mlの燃焼フラスコの共栓部(ガラス栓)に取り付けた白金バスケットに入れた。他方、燃焼フラスコの三角フラスコには、25mlの吸収液(飽水ヒドラジン1滴を滴下した超純水)を入れ、さらに酸素を満たしておいた。
濾紙の導火部に点火し、濾紙が固定された白金バスケットを三角フラスコに挿入し、三角フラスコ内部で試料を燃焼させた。燃焼終了後に、燃焼フラスコを傾斜させて2分間振盪し、その後1時間放置することにより、燃焼により発生した臭素を吸収液に吸収させた。
(2)IC法
酸素フラスコ燃焼法により得られた吸収液に対して、IC法により臭素イオン量を測定した。
使用装置 :ダイオネクス社製、ICS−2000
カラム :IonPac AG18、AS18(4mmφ×250mm)
溶離液 :KOHグラジエント(溶離液ジェネレータ使用)
容離液流量:1.0ml/分
試料注入量:50μl
検出器 :電気伝導度検出器
試料中の臭素濃度は、下式を用いて算出した。
試料中の臭素濃度(%)=[{スチレン系樹脂発泡成形体のIC測定結果(mg/l)−バックグラウンド試験結果(mg/l)}×25(ml)×1000]/{試料採取量(mg)×10000}
(発泡倍率の測定及び発泡性能、成形性能の評価)
スチレン系樹脂発泡成形体から、熱伝導率の測定の場合と同様に、長さ300mm×幅300mm×厚さ25mmのサンプルを切り出した。サンプルの重量(g)を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、厚さ寸法を測定した。測定された各寸法からサンプルの体積(cm3)を計算し、下記計算式に従って発泡倍率を算出した。
発泡倍率(cm3/g)=サンプル体積(cm3)/サンプル重量(g)
なお、前述したように、スチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率「倍」は慣習的に「cm3/g」でも表されている。
さらに、得られた成形体について80倍のものの表面を観察し、粒子間の空隙が少ないものを表面美麗性が良い、空隙が目立つものを表面美麗性が悪いと判定した。
測定した発泡倍率及び成形体表面の美麗性に基づいて、スチレン系樹脂発泡体の発泡・成形性能について評価した。発泡・成形性能の評価は、○:80倍発泡可能で美麗な成形体が得られる、△:80倍発泡可能であるが、美麗な成形体が得られにくい、×:80倍発泡不可能で表される。
(難燃性の評価)
作製された発泡成形体に対して、60℃温度下にて48時間静置し、さらに23℃温度下にて24時間静置した後、JIS K7201に準じて、酸素指数を測定した。
(スチレン系樹脂発泡成形体の平均セル径の評価方法)
発泡倍率50倍のスチレン系樹脂発泡成形体をカミソリで切削し、その断面を光学顕微鏡(キーエンス社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−900)を用いて、観察倍率100倍で写真を撮影する。その断面内に存在する発泡粒子の中心部1000μm×1000μm四方の範囲内に存在するセル数をカウントする。そのセル数を用い、以下の式に基づき、セル径を算出した。
セル径(μm)=2×[1000μm×1000μm/(セル数×円周率)]0.5
上記の操作を、スチレン系樹脂発泡成形体の断面内に存在する発泡粒子5個について実施し、得られた5つのセル径の平均値を平均セル径とした。
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
(スチレン系樹脂)
(A)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、680]
(グラファイト)
(B1)グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、鱗片状黒鉛SGP−40B]
平均粒径D50:5.8μm
グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度:4.0{%/(mg/ml)}/重量%
(B2)グラファイト[(株)中越黒鉛工業所製、鱗状黒鉛BF−3AK]
平均粒径D50:3.2μm
グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度:5.8{%/(mg/ml)}/重量%
(B3)グラファイト[日本黒鉛工業(株)製、鱗片状黒鉛UCP]
平均粒径D50:13.3μm
グラファイト単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度:3.6{%/(mg/ml)}/重量%。
(臭素系難燃剤)
(C1)2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン[第一工業製薬(株)製、SR−130、臭素含有量=66重量%]。
(熱安定剤)
(D1)テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン[(株)ADEKA製 LA−57]
(D2)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製 PEP−36]。
(発泡剤)
(E1)ノルマルペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(E2)イソペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(E3)イソブタン[三井化学(株)]。
(その他添加剤)
(F)エチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH−50S]。
(製造例1)
バンバリーミキサーに、スチレン系樹脂(A)49重量%、グラファイト(B1)50重量%、エチレンビスステアリン酸アミド(F)1重量%の全重量(A+B1+F)が100重量%となる様に原料投入して、5kgf/cm2の荷重をかけた状態で加温冷却を行わずに20分間溶融混練した。この際、樹脂温度を測定したところ180℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して吐出250kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチ(I1)を得た。
(製造例2)
製造例1においてスチレン系樹脂(A)を39重量%、グラファイト(B1)を60重量%へ変更した以外は)製造例1と同様の手法により、グラファイトマスターバッチ(I2)を得た。
(製造例3)
製造例1においてスチレン系樹脂(A)を29重量%、グラファイト(B1)を70重量%へ変更した以外は製造例1と同様の手法により、グラファイトマスターバッチ(I3)を得た。
(製造例4)
製造例1においてスチレン系樹脂(A)を49重量%、グラファイト(B2)を50重量%へ変更した以外は製造例1と同様の手法により、グラファイトマスターバッチ(I4)を得た。
(比較製造例1)
製造例1においてスチレン系樹脂(A)を59重量%、グラファイト(B1)を40重量%へ変更した以外は製造例1と同様の手法により、グラファイトマスターバッチ(I5)を得た。
(比較製造例2)
製造例1においてスチレン系樹脂(A)を9重量%、グラファイト(B1)を90重量%へ変更した以外は製造例1と同様の手法により、グラファイトマスターバッチ(I6)を得た。
(比較製造例3)
製造例1においてスチレン系樹脂(A)を29重量%、グラファイト(B3)を70重量%へ変更した以外は製造例1と同様の手法により、グラファイトマスターバッチ(I7)を得た。
製造例1〜4、比較製造例1〜3で得られたマスターバッチ(I1)〜(I7)について、上述の測定方法に従って、グラファイト含有量、グラファイトの平均粒径D50、レーザー散乱強度を測定した。その測定結果及び評価結果を表1に示す。
Figure 0006854671
(臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ)
(J1)二軸押出機に、スチレン系樹脂(A)を供給して溶融混練した後、押出機途中より臭素系難燃剤(C1)、安定剤(D1)及び(D2)の混合物を供給して、さらに溶融混練した。ただし、各材料の重量比率は、(A):(C1):(D1):(D2)=70:28.5:0.6:0.9、(A)+(C1)+(D1)+(D2)=100重量%とした。押出機先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して、吐出300kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、切断して臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチを得た。このとき押出機の設定温度は170℃で実施した。マスターバッチ中の臭素含有量は18.8重量%であった。
(実施例1)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]
スチレン系樹脂(A)、マスターバッチ(J1)、及びグラファイトマスターバッチ(I1)を、それぞれブレンダーに投入して、10分間ブレンドし、樹脂混合物を得た。各材料の重量比は、(A):(J1):(I1)=83.65:8.35:8.00、(A)+(J1)+(I1)=100重量%であった。
得られた樹脂混合物を口径40mmの同方向二軸押出機(第1の押出機)と口径90mmの単軸押出機(第2の押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機へ供給し、口径40mm押出機の設定温度190℃、回転数150rpmにて溶融混練した。口径40mm押出機(第1の押出機)の途中から、前記樹脂組成物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(E1)80重量%とイソペンタン(E2)20重量%の混合物]を4.3重量部、イソブタン(E3)を2.2重量部の割合で圧入した。その後、200℃に設定された継続管を通じて、口径90mm押出機(第2の押出機)に供給した。
口径90mm押出機(第2の押出機)にて樹脂温度を160℃まで溶融樹脂を冷却した後、250℃に設定した第2の押出機の先端に取り付けられた直径0.65mm、ランド長3.0mmの小孔を60個有するダイスから、吐出量50kg/時間で、温度60℃及び0.8MPaの加圧循環水中に押出した。押出された溶融樹脂は、ダイスに接触する10枚の刃を有する回転カッターを用いて、1500rpmの条件にて切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。このとき、第1の押出機内滞留時間2分、第2の押出機の滞留時間は5分であった。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、ステアリン酸亜鉛0.08重量部をドライブレンドした後、15℃で保管した。
[予備発泡粒子の作製]
発泡性スチレン系樹脂粒子を作製し、15℃で保管してから2週間後に発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡機[大開工業株式会社製、BHP−300]に投入し、0.08MPaの水蒸気を予備発泡機に導入して発泡させ、発泡倍率80倍の予備発泡粒子を得た。
上記と同様にして発泡倍率50倍の予備発泡粒子を得た。
[スチレン系樹脂発泡成形体の作製]
得られた発泡倍率80倍の予備発泡粒子を、発泡スチロール用成形機[ダイセン工業(株)製、KR−57]に取り付けた型内成形用金型(長さ450mm×幅310mm×厚み25mm)内に充填して、0.06MPaの水蒸気を導入して型内発泡させた後、金型に水を3秒間噴霧して冷却した。スチレン系樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.015MPa(ゲージ圧力)なるまでスチレン系樹脂発泡成形体を金型内に保持した後に、スチレン系樹脂発泡成形体取り出して、直方体状のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。発泡倍率は80倍であった。
上記と同様にして発泡倍率50倍のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
(実施例2)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)84.98重量%、グラファイトマスターバッチ(I2)6.67重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(実施例3)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)85.94重量%、グラファイトマスターバッチ(I3)5.71重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(実施例4)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)83.65重量%、グラファイトマスターバッチ(I4)8.00重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(実施例5)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)75.65重量%、グラファイトマスターバッチ(I1)16.00重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(比較例1)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)81.65重量%、グラファイトマスターバッチ(I5)10.00重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(比較例2)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)87.15重量%、グラファイトマスターバッチ(I6)4.50重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(比較例3)
実施例1の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)85.65重量%、グラファイトマスターバッチ(I7)6.00重量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(比較例4)
スチレン系樹脂(A)、マスターバッチ(J1)、および粉末のグラファイト(B1)を、それぞれブレンダーに投入して、10分間ブレンドし、樹脂混合物を得た。各材料の重量比は、(A):(J1):(B1)=87.65:8.35:4.00、(A)+(J1)+(B1)=100重量%であった。
以降は実施例1の手順に従ってスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
(比較例5)
比較例4の[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)87.65重量%、粉末のグラファイト(B2)4.00重量%に変更した以外は、比較例4と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
実施例1〜5、比較例1〜5で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子及び、スチレン系樹脂発泡成形体について、上述の測定方法に従って、グラファイト含有量、グラファイトの平均粒径D50、レーザー散乱強度、成形性、臭素含有量、酸素指数、単位グラファイト面積あたりの粗大粒子の個数、全グラファイト中の粗大粒子の面積率、発泡倍率、平均セル径、並びに熱伝導率A及びBを測定した。 その測定結果及び評価結果を表2に示す。
Figure 0006854671
表2に示されるとおり、実施例1〜5で得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子は、グラファイトの粗大粒子が少なく、レーザー散乱強度が高いことからグラファイトの分散性が高いことが示されており、グラファイトによる輻射伝熱抑制が効果的に発現されていることが明確である。よって本発明により、従来品よりも発泡成形体の熱伝導率を低減可能となる。
以上述べた実施形態は全て本発明の一実施形態を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明の一実施形態は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の一実施形態の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

Claims (19)

  1. グラファイトを含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子であって、
    前記グラファイトの含有量が2〜8重量%であり、
    前記グラファイトの平均粒径が2〜9μmであり、
    単位面積あたりの、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の個数が0.025個/μm2以下である、発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  2. グラファイトを含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子であって、
    前記グラファイトの含有量が2〜8重量%であり、
    前記グラファイトの平均粒径が2〜9μmであり、
    全グラファイト中の、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の面積率が30%以下である、発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  3. 前記面積率が20%以下である、請求項2に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  4. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子中のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が6.5{%/(mg/ml)}/重量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  5. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子が発泡性スチレン系樹脂粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  6. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡倍率50倍の発泡成形体にし、前記発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した中心温度23℃での熱伝導率が、0.0306W/mK以下である、請求項5に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  7. 前記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率50倍の発泡成形体とした際の、前記発泡成形体の平均セル径が100〜250μmである、請求項5,6のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡した熱可塑性樹脂の予備発泡粒子。
  9. 請求項8に記載の熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を成形した熱可塑性樹脂発泡成形体。
  10. グラファイトを含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、
    下記式(1)を満たす、グラファイトおよび熱可塑性樹脂を含有する混合物を二軸の撹拌機を備えた混練装置で撹拌してグラファイト含有マスターバッチを得る工程、および、
    式(1):Mmin≦M≦80[重量%]
    (ここで、上記式(1)において、2≦D50<5のときMmin=41であり、5≦D50≦9のときMmin=419×C1.34である。Mは混合物100重量%におけるグラファイトの含有量[重量%]、Cはグラファイトの嵩密度[g/cm3]、D50はグラファイトの平均粒径[μm]を示す。)
    前記グラファイト含有マスターバッチおよび熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練する工程を含み、
    前記発泡性熱可塑性樹脂粒子が、
    前記グラファイトの含有量が2〜8重量%であり、
    前記グラファイトの平均粒径が2〜9μmであり、
    単位面積あたりの、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の個数が0.025個/μm2以下である、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  11. グラファイトを含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、
    下記式(1)を満たす、グラファイトおよび熱可塑性樹脂を含有する混合物を二軸の撹拌機を備えた混練装置で撹拌してグラファイト含有マスターバッチを得る工程、および、
    式(1):Mmin≦M≦80[重量%]
    (ここで、上記式(1)において、2≦D50<5のときMmin=41であり、5≦D50≦9のときMmin=419×C1.34である。Mは混合物100重量%におけるグラファイトの含有量[重量%]、Cはグラファイトの嵩密度[g/cm3]、D50はグラファイトの平均粒径[μm]を示す。)
    前記グラファイト含有マスターバッチおよび熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練する工程を含み、
    前記発泡性熱可塑性樹脂粒子が、
    前記グラファイトを2〜8重量%含有し、
    前記グラファイトの平均粒径が2〜9μmであり、
    全グラファイト中の、最大径2.0μm以上、かつ、前記最大径に対して垂直方向の最大厚みが1.0μm以上であるグラファイト集合体の面積率が30%以下である、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  12. 前記面積率が20%以下である、請求項11に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  13. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子が発泡性スチレン系樹脂粒子である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  14. 前記混合物が、
    荷重:3.5kgf/cm2以上、
    樹脂温度:Tg+50℃以上(ここで、Tgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度である)混練時間:10分以上で混練される、
    請求項10〜13のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  15. 前記押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤を含有する溶融物を押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより切断する工程をさらに備える、
    請求項10〜14のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  16. 前記押出機以降に取り付けた小孔を複数有するダイスを通じて溶融物を押し出し、カッターにより切断して熱可塑性樹脂粒子を得る工程、および、
    前記熱可塑性樹脂粒子を水中に懸濁させて発泡剤を含浸させる工程をさらに備える、
    請求項10〜14のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  17. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子中のグラファイトの単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が6.5{%/(mg/ml)}/重量%以上である、
    請求項10〜16のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  18. 請求項10〜17のいずれか一項に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法によって作製した発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡させて熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を作製する工程を備える、熱可塑性樹脂の予備発泡粒子の製造方法。
  19. 請求項18に記載の熱可塑性樹脂の予備発泡粒子の製造方法によって作製した熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を成形する工程を備える、熱可塑性樹脂の発泡成形体の製造方法。
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