JP4549975B2 - タイヤ状態推定方法 - Google Patents
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Description
従来、タイヤをセンサのように用いてタイヤに発生している力を推定する方法としては、例えば、タイヤサイド部を磁化するとともに、タイヤ外部に設置した磁気センサにより上記タイヤサイド部の捩じれ度合を測定し、この測定された捩じれ度合からタイヤの前後力を推定したり、タイヤが横力を受けた際にベルトリング全体が変形することを利用して、上記磁気センサの検出出力の大きさからタイヤに発生している横力を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
詳細には、タイヤに横力が発生すると、トレッドとベルトからなるタイヤは、踏面部においてタイヤ軸方向に力を受ける。このとき、タイヤトレッドリングが変形するため、その接地形状が、図15(a),(b)の模式図に示すように、タイヤ軸方向中心に対して一方の側の接地長が長くなり、他方の側が短くなることが知られている。そこで、このようなタイヤ踏面の挙動を検出することにより、タイヤに加わっている力をモニタリングできるのではないかと考え、幾つかの検出方法を検討して実施した。その結果、タイヤ踏面のタイヤ軸方向中心に対して両側(車体側、反車体側=外側)に位置する2点の接地長を計測しこれらの比(接地長比)と横力の大きさとの関係を調べたところ、上記接地長比と横力の大きさは良好な相関関係を示すことが分かった。特に、この2点がタイヤ軸方向中心に対して等距離にある場合には極めて良好な相関関係を示す。また、横力が発生した場合でも、上記2点の接地長の平均値と荷重との間にも良好な相関関係があることから、タイヤに加わる荷重についても精度よく求めることができる。
したがって、タイヤトレッド部にセンサを配置して走行中のタイヤの車体側と外側との接地長をそれぞれ検出することにより、横力や荷重などのタイヤ発生力を正確に検出することができ、タイヤの状態を精度良く推定することができる。
なお、この関係はタイヤのグリップ限界近傍でも同様であって、スリップ角が大きくなって横力が上限値に近くなると、接地長比も横力と同様にある程度の値よりは大きくならない。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤ状態推定方法において、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長の平均値を算出し、上記算出された接地長の平均値からタイヤに加わっている荷重を推定するとともに、上記推定された荷重の推定値を用いて上記横力の推定値を補正することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のタイヤ状態推定方法において、上記接地長比から走行中のタイヤの発生する横力を推定するとともに、上記推定された姿勢角の推定値を用いて上記推定された横力の推定値を補正することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、走行中のタイヤの状態を推定する方法であって、タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤと、車輪速計測手段とを用い、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長比を算出するとともに、上記算出された接地長比の変化の度合をモニタリングし、上記モニタリングした接地長比の変化の度合いからタイヤと路面間の摩擦係数(路面摩擦係数)を推定することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のタイヤ状態推定方法において、駆動輪の車輪速と従動輪の車輪速とからスリップ率を算出し、この算出されたスリップ率に基づいて、上記推定された路面摩擦係数を補正することを特徴とする。
また、上記推定された横力や荷重などの推定値を車両制御にフィードバックすることにより、車両の走行状態を安定して制御することが可能となる。
12A,12B 送信機、13A,13B バッテリ、14 車輪速センサ、
15 接地長演算手段、16 記憶手段、16M マップ、17 横力推定手段、
20 センサ内蔵タイヤ、21 タイヤトレッド部、
21V トレッドブロック、22 タイヤベルト層。
最良の形態1.
図1は、本最良の形態1に係るタイヤ状態推定装置10の構成を示す機能ブロック図で、図2は本発明によるセンサ内蔵タイヤ20の模式図である。このタイヤ状態推定装置10は、センサ内蔵タイヤ20に埋設された、タイヤトレッド部21の所定の位置が路面に接し、路面からの入力が発生したことを検出するための入力検出手段である圧力センサ11A,11Bと、上記圧力センサ11A,11Bの検出データ送信するための送信機12A,12Bと、上記圧力センサ11A,11B及び上記送信機12A,12Bに電力を供給するためのバッテリ13A,13Bと、車輪速検出用のギアセンサなどの車輪速計測手段である車輪速センサ14と、この車輪速センサ14の出力と圧力センサ11A,11Bの出力とに基づいて、タイヤ20の回転中の接地時間と車輪速とをそれぞれ算出し、上記接地時間と車輪速とを掛けあわせることにより、上記圧力センサ11A,11Bが埋設された位置の接地長LA及び接地長LBをそれぞれ検出する接地長演算手段15と、上記接地長LA及び接地長LBの比(接地長比;R=LA/LB)を算出するとともに、予め記憶手段16に記憶された接地長比Rと横力の大きさとの関係を示すマップ16Mを用いて、上記算出された接地長比Rからタイヤ20の発生する横力を推定する横力推定手段17とを備えている。
なお、上記圧力センサ11A,11Bは特に限定されるものではなく、例えば、圧電素子や歪ゲージタイプが用いられる。本例では、上記圧力センサ11A,11Bとして検出方向がタイヤ径方向である圧力センサを用いるとともに、上記圧力センサ11A,11Bをセンサ内蔵タイヤ20のタイヤトレッド部21のタイヤベルト層22より径方向外側で、トレッドブロック21Vの接地部の径方向内側に位置するトレッドゴム内に埋設した。
なお、バッテリ13A,13Bの代わりに小型発電装置を用いて圧力センサ11A,11Bや送信機12A,12Bを駆動してもよい。更には、外部から無線給電できるように受信回路を設けて、圧力センサ11A,11Bや送信機12A,12Bを駆動するようにすれば、上記バッテリ13A,13Bを省略することが可能である。
上記圧力センサ11A,11Bが埋設された位置に対応するトレッドブロック21Vの接地部が路面に接すると、上記圧力センサ11A,11Bにはタイヤ径方向の圧力が作用するので、上記圧力センサ11A,11Bからは上記圧力値に相当する出力信号が出力される。上記圧力値の信号は送信機12A,12Bから接地長演算手段15に送られる。一方、車輪速センサ14からは車輪速が上記接地長演算手段15に送られる。
接地長演算手段15では、上記出力信号の継続時間を計測するとともに、上記継続時間と車輪速とを乗算することにより、上記圧力センサ11A,11Bが埋設された位置に対応するトレッドブロック21Vの接地長LA及び接地長LBをそれぞれ算出する。横力推定手段17では、上記接地長LAと接地長LBとを用いて接地長比R=LA/LBを算出し、予め記憶手段16に記憶された接地長比Rと横力の大きさとの関係を示すマップ16Mを用いて、上記算出された接地長比Rからタイヤ20の発生する横力を推定する。
本例では、上記圧力センサ11A,11Bを、図2に示すように、タイヤ軸方向中心に対して等距離に配設しているので、図3に示すように、上記算出された接地長比R=LA/LBと横力の大きさとは線形性の高い関係を有しており、また相関性が高い。したがって、上記接地長比Rと、上記図3のデータに基づいて作成されたマップ16Mとを用いてタイヤ20の発生する横力を推定するようにすれば、横力を精度良く推定することができる。
上記最良の形態1では、センサ内蔵タイヤ20のタイヤ軸方向中心に対して車体側の接地長LAと反車体側の接地長LBとの比である接地長比R=LA/LBを算出して横力を推定する場合について説明したが、図4に示すように、荷重推定手段18を設け、上記接地長LA及び接地長LBとの平均値である平均接地長LABを算出し、この平均接地長LABを用いて、上記タイヤ20に加わる荷重を推定するようにすれば、横力とともに荷重についても推定することのできるタイヤ状態推定装置10Aを構成することができる。
タイヤ20に横力が発生すると、図15に示すように、その接地形状はタイヤ軸方向中心に対して一方の側の接地長が長くなり、他方の側が短くなるため、1点の接地長のみで荷重を推定しようとすると、横力の影響が出てしまう。すなわち、同じ荷重が加わっても、横力入力時には一方の接地長が長くなり、他方が短くなる。しかしながら、平均接地長LABと荷重とは、横力発生中であっても、図5に示すように、線形性の高い関係を有しており、また相関性が高い。
そこで、本例では、荷重推定手段18において、上記接地長演算手段15で得られたタイヤ軸方向中心に対して車体側の接地長LAと反車体側の接地長LBとの平均値である平均接地長LABを算出し、この算出された平均接地長LABと、上記図5のデータに基づいて作成され、予め記憶手段16に記憶された平均接地長と荷重との関係を示すマップ16Aとを用いて、タイヤに加わる荷重を求めるようにしている。これにより、横力が発生した場合でもタイヤに加わる荷重を正確に求めることができる。
また、上記横力はタイヤに加わる荷重によって変化するので、横力補正手段17Sを設けて、上記推定された荷重に基づいて上記横力推定手段17で推定された横力を補正するようにすれば、横力の推定精度を更に向上させることができる。
しかしながら、接地圧の時間変化、すなわち、上記圧力センサ11A,11Bで検出された圧力検出値PAあるいは圧力検出値PBの時間変化をみると、図7に示すように、スリップ角が大きくなると、その接地長が大きい側の接地圧は接地前半(踏み側)では大きく、接地後半(蹴り側)では小さくなる。一方、キャンバー角が大きくなった場合には、図8に示すように、接地前半と後半とでの接地圧は殆ど変わらない。そこで、接地前半の接地圧に対する接地後半の接地圧の比である接地圧比を算出して、接地長比Rと上記接地圧比との関係をグラフにすると、図9に示すように、キャンバー角を変化させたグラフは、キャンバー角0°のグラフをほぼ水平移動したものになる。すなわち、本グラフ上では、ある時点からキャンバー角が高くなれば右方向へ、スリップ角が高くなれば右上方向に動くことになる。したがって、本グラフを用いれば、接地長比Rと接地圧比の値から、キャンバー角及びスリップ角を推定することが可能となる。
また、この推定されたキャンバー角を用いて、接地長比Rから求めた横力を補正するようにすれば、タイヤ20に発生する横力を精度よく推定することができる。
更に、4輪のキャンバー角がわかれば、車輪のキャンバー角に加えて路面の傾斜具合も推定できるので、これを車両の姿勢制御に適用すれば、車両の走行安定性を向上させることができる。
最良の形態1,2では、圧力センサ11A,11Bからの圧力値の継続時間と車輪速センサ14からの車輪速とを用いて接地長比R=LA/LBや平均接地長LABを算出して横力や荷重を推定するタイヤ状態推定装置10,10Aについて説明したが、図10に示すように、上記タイヤ状態推定装置10に、グリップ力判定手段19を設けて、横力推定手段17で算出された接地長比R=LA/LBの変化の度合からタイヤがグリップ限界に近づいているかを推定するようにしてもよい。
横力が最大に近づいているとき、すなわち、タイヤグリップ限界に近づいていることを判定することは、車両制御あるいは運転者への警告として有用である。本発明では接地長比R=LA/LBをモニタリングしているので、グリップ力判定手段19にて、上記接地長比R=LA/LBの変化の度合が予め設定された閾値を超えたときにタイヤがグリップ限界に近づいていると判定するとともに、上記判定結果に従って適正な車両姿勢制御を行ったり、別途、運転者への警告信号を発する装置を構成して運転者に警告することにより、車両の走行安全性を確保することができる。
なお、上記判定としては、同時に操舵角や車速を検出しておき、これらの値が増加しているにもかかわらず接地長比R=LA/LBが増加しなくなってきたらタイヤがグリップ限界に近づいていると判定するようにしてもよい。
但し、タイヤは摩擦円の法則に従うことが知られている。すなわち、前後スリップ率が高くなると、タイヤ踏面内のすべり領域が増大し限界横力が低下する。これにより、接地長比R=LA/LBの限界値も低くなるので、駆動輪の車輪速と従動輪の車輪速とからスリップ率を算出し、この算出されたスリップ率に基づいて、上記推定された路面摩擦係数を補正することが好ましい。
また、圧力センサ11A,11Bの個数は2個に限るものではなく、例えば、周上に2箇所の合計4個のセンサを用いるなど、センサ個数を増やすことにより、精度や応答性を向上させることができる。
図11及び図12は、それぞれ、スリップ角に対する横力と接地長比との関係を示すグラフである。図13に示すように、横軸を接地長比とし、縦軸を横力としたグラフを作成すると、接地長比と横力とはグリップ限界近傍までかなりよい直線相関性を有している。
なお、速度やタイヤサイズを変えても同様の結果が得られた。
これにより、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出し、上記接地長の比を求めることにより、タイヤの発生する横力を精度良く推定できることが確認された。
すなわち、タイヤ姿勢角が変化する実際の車両装着状態においても、本発明が有効であることが明らかになった。
Claims (9)
- タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤと、車輪速計測手段とを用い、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長比を算出し、上記算出された接地長比から走行中のタイヤの発生する横力を推定することを特徴とするタイヤ状態推定方法。
- タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤと、車輪速計測手段とを用い、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長の平均値を算出し、上記算出された接地長の平均値からタイヤに加わっている荷重を推定することを特徴とするタイヤ状態推定方法。
- タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長の平均値を算出し、上記算出された接地長の平均値からタイヤに加わっている荷重を推定するとともに、上記推定された荷重の推定値を用いて上記横力の推定値を補正することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ状態推定方法。
- タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤと、車輪速計測手段とを用い、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長比を算出するとともに、上記タイヤ入力検出手段の検出した踏み側の検出値である接地前半の検出値と蹴り側の検出値である接地後半の検出値との比である接地圧比を算出し、上記接地長比と上記接地圧比とからタイヤの姿勢角を推定することを特徴とするタイヤ状態推定方法。
- 上記接地長比から走行中のタイヤの発生する横力を推定するとともに、上記推定された姿勢角の推定値を用いて上記推定された横力の推定値を補正することを特徴とする請求項4に記載のタイヤ状態推定方法。
- タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤと、車輪速計測手段とを用い、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長比を算出するとともに、上記算出された接地長比の変化の度合をモニタリングし、上記モニタリングした接地長比の変化の度合いからタイヤがグリップ限界に近づいているかどうかを推定することを特徴とするタイヤ状態推定方法。
- タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤと、車輪速計測手段とを用い、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置における接地長をそれぞれ検出して接地長比を算出するとともに、上記算出された接地長比の変化の度合をモニタリングし、上記モニタリングした接地長比の変化の度合いからタイヤと路面間の摩擦係数を推定することを特徴とするタイヤ状態推定方法。
- 駆動輪の車輪速と従動輪の車輪速とからスリップ率を算出し、この算出されたスリップ率に基づいて、上記推定されたタイヤと路面間の摩擦係数を補正するようにしたことを特徴とする請求項7に記載のタイヤ状態推定方法。
- タイヤベルト層より径方向外側のトレッドゴム内のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置にそれぞれ配置されて、タイヤトレッド部に作用する路面からの入力を検出するタイヤ入力検出手段を備えたセンサ内蔵タイヤを用いて検出した、タイヤトレッド部のタイヤ軸方向中心に対して軸方向等距離の線対称の位置におけるタイヤ入力検出手段の検出値の比をモニタリングし、上記モニタリングした検出値の比が予め設定された閾値を超えている時間が所定時間以上継続した場合に、タイヤの片減り摩耗が進行していると推定することを特徴とするタイヤ状態推定方法。
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