JP4549443B2 - 腫瘍細胞の成長を阻害するための方法および製薬学的組成物 - Google Patents
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Description
脂肪細胞は、エネルギーおよび恒常性において決定的に重要な役割を演じる、非常に特殊の細胞である。それらの主要な役割は、カロリー過剰のときにトリグリセリドを貯蔵すること、および、栄養欠乏の期間の間にこの保存物を流通させることである。脂肪細胞は、筋および軟骨の系列もまた生じさせる、中胚葉起源の多分化能幹細胞由来である。脂肪細胞分化は脂肪細胞特異的な遺伝子発現の同等の増加を特徴とする。
近年は、脂肪細胞分化の分子的基礎のわれわれの理解での重要な進歩をみた。(コルネリウス(Cornelius, P.)ら(1994)Annu. Rev. Nutr. 14:99-129;トントノス(Tontonoz, P.)ら(1995)Curr. Opin. Genet. Dev. 5:571-576)に概説される。)多数の転写因子が脂肪細胞分化において誘導され(C/EBPα、C/EBPβおよびADD1/SREBP1)、そしてある程度までこの過程に影響を及ぼす(フレイタグ(Freytag, S.O.)ら(1994)Genes Dev. 8:1654-63;キム(Kim, J.B.)とシュピーゲルマン(Spiegelman, B.M.)(1996)Genes Dev. 10:1096-1107;リン(Lin, F.T.)とレーン(Lane, M.D.)(1994)PNAS USA 91:8757-61;サミュエルソン(Samuelsson, L.)ら(1991)EMBO J. 10:3787-93;トントノス(Tontonoz, P.)ら(1993)Mol Cell Biol 13:4753-9;ウメク(Umek, R.M.)ら(1991)Science 251:288-92;ウ(Wu, C.L.)ら(1995)Mol Cell Biol 15:253646;イェ(Yeh, W.C.)ら(1995)Genes Dev. 9:168-81)。
ペルオキシソーム増殖体(proliferator)に活性化されるレセプター、すなわち「PPAR」は、レセプターのステロイド/甲状腺スーパーファミリーのタイプIIクラスの構成員であり、そしてペルオキシソーム増殖体の多形質発現の影響を仲介する。核レセプターのタイプIIクラスは、PPAR、甲状腺ホルモンレセプター(T3R)およびビタミンD3レセプター(VD3R)を包含する。タイプIIレセプターは、機能的には、糖質コルチコイドレセプター、プロゲステロンレセプターおよびエストロゲンレセプターのような古典的ステロイドレセプターと別個である(ストゥンネンバーク(Stunnenberg, H.G.)(1993)BioEssays Vol.15(5):309-15に概説される)。3個の特性がこれら2つのクラスを区別する。第一に、タイプIIレセプターはリガンドの非存在下にそれらの応答性要素に結合することが可能である(ダム(Damm)ら(1989)Nature 339:593-597;サップ(Sap)ら、Nature 340:242-244;デ・テ(De The)ら(1990)Nature 343:177-180)一方、リガンド結合はタイプIレセプター−hsp90複合体を解離させるのに必要とされ、そしてこれゆえにDNA結合を間接的に制御する。第二に、タイプIIレセプターは、タイプIレセプターにより必要とされる3ヌクレオチドにより常に分離されるパリンドロームに配置された半部位(half-sites)とは対照的に、直接反復として配置される半部位から成る応答性要素を結合しかつこれによりトランスに活性化する。最後に、タイプIIレセプターはホモダイマーとしてそれらのそれぞれの結合部位に結合しないが、しかし、高親和性結合のために補助因子RXR(例えばRXRα、RXRβ、RXRγ)を必要とする(ユ(Yu)ら(1991)Cell 67:1251-1266;バッジ(Bugge)ら(1992)EMBO J. 11:1409-1418;クリーヴァー(Kliewer)ら(1992)Nature 355:446-449;ライト(Leid)ら(1992)Cell 68:377-395;マークス(Marks)ら(1992)EMBO J. 11:1419-1435;チャン(Zhang)ら(1992)Nature 355:441-446)。タイプIIレセプター間の相互作用はC末端ドメイン中のある領域を必要とする(ユ(Yu)ら(1991)Cell 67:1251-1266;クリーヴァー(Kliewer)ら(1992)Nature 355:446-449;ライト(Leid)ら(1992)Cell 68:377-395;マークス(Marks)ら(1992)EMBO J. 11:1419-1435)。結合後に、標的遺伝子(すなわち特定のDNA配列を伴う遺伝子)の転写活性が、レセプターヘテロダイマーに結合されたリガンドの機能として高められる。
発明の要約
本発明は、PPARγの活性化が、活発に増殖するPPARγ発現細胞、とりわけ形質転換された脂肪前駆細胞の終末分化(terminal differentiation)による成長停止の誘導において重要な役割を演じるという知見を基礎とする。
従って、本発明の一局面は、PPARγ応答性の過剰増殖性細胞を、当該細胞の分化を誘導するのに有効な量のPPARγアゴニストと接触させることを含んで成る、当該細胞の増殖の阻害方法を提供する。例えば、本方法は、例えばPPARγ応答性の過剰増殖性細胞の成長を阻害するのに有効な量のPPARγアゴニストの製薬学的調製物を投与することによる、PPARγ応答性の過剰増殖性細胞の異常な細胞増殖を特徴とする障害の治療もしくは予防的防御(prophylactically prevention)に使用され得る。
一態様において、本発明の方法は、肉腫、癌腫および/もしくは白血病の治療で使用される。そのために主題の方法が単独でもしくはある治療計画の一部として使用され得る例示的障害は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆道癌、上毛上皮腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫を包含する。
ある態様において、本発明の方法は、乳房、前立腺、腎、膀胱もしくは結腸の組織から生じる癌腫のような障害を治療するのに使用される。
他の態様において、本発明の方法は、脂肪細胞腫瘍、例えば、脂肪腫、線維脂肪腫、脂肪芽細胞腫、脂肪腫症、冬眠腺腫、血管腫および/もしくは脂肪肉腫のような脂肪組織中に生じる過形成性もしくは新生物形成性の障害を治療するのに使用される。
さらに他の態様において、本発明の方法は、造血系の過形成性もしくは新生物形成性の障害、例えば白血病性癌を治療するのに使用される。好ましい一態様において、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。
好ましい態様において、本発明の方法で使用されるPPARγアゴニストは、PPARγタンパク質の転写活性を活性化するPPARγタンパク質のリガンドである。例えば、PPARγアゴニストは、チアゾリジンジオンもしくはその類似物であり得る。例示的PPARγアゴニストは、ピオグリタゾン、トログリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、BRL49653、およびそれらの化学的誘導体を包含する。ある好ましい態様において、PPARγアゴニストは、一般式:
あるいはその互変異性体、またはその製薬学的に許容できる塩、またはその製薬学的に許容できる溶媒和物で表わされ、式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒に1個の結合を表わし;A2は、原子価が許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす。
他の態様において、PPARγアゴニストは、アラキドン酸代謝物、例えばPGD2の代謝物のような、前記レセプターの天然に存在するリガンドであり得る。
PPARγアゴニストでの治療に対するある望まれない副作用を回避するもしくは最小限にするためには、PPARγアゴニストが、PPARα、PPARδもしくはRaR依存性の転写の同一レベルの活性化に必要とされるより最低1桁より小さい濃度でPPARγ依存性の転写を活性化することが、主題の方法のある態様で望ましいであろう。
PPARγアゴニストは、単独で、もしくはある治療計画の治療の一部として別の作用物質とともに投与され得る。例えば、PPARγアゴニストは、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、核酸挿入剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アポトーシスを促進する作用物質、および/もしくは免疫応答を増大させる作用物質のような1種もしくはそれ以上の作用物質とともに共同して投与され得る。他の態様において、PPARγアゴニストはRxRアゴニストとともに投与され得る。こうしたRxRアゴニストは天然もしくは合成のレチノイドであり得る。例示的RxRアゴニストは、一般式:
で表わされる。なお別の態様において、PPARγアゴニストはMAPキナーゼ阻害剤とともに投与され得る。こうした阻害剤は、MAPキナーゼ活性を特異的に封鎖する天然もしくは合成の作用物質、例えばPD098059(パーク・デービス(Parke-Davis))であり得る。
本発明のさらに別の局面は、最低1種のPPARγアゴニストおよび最低1種のRxRアゴニストを投与するための組成物およびキットを提供する。例えば、双方の作用物質は、好ましくは製薬学的に許容できる担体中で予め混合され得る。あるいは、これら作用物質は、(i)製薬学的に許容できる担体中にPPARγリガンドを包含する第一の製薬学的組成物、および(ii)製薬学的に許容できる担体中にRxRアゴニストを包含する第二の製薬学的組成物、を含むキットの形態で別個に提供され得、PPARγリガンドおよびRxRアゴニストは、投与に際して対象動物でのPPARγ応答性の過剰増殖性細胞の終末分化を誘導するのに治療上有効な量で存在する。
本発明のなお別の局面は、最低1種のPPARγアゴニストおよび最低1種のMAPキナーゼ阻害剤を共同して投与するための組成物およびキットを提供する。例えば、双方の作用物質は、好ましくは製薬学的に許容できる担体中で予め混合され得る。あるいは、これら作用物質は、(i)製薬学的に許容できる担体中にPPARγリガンドを包含する第一の製薬学的組成物、および(ii)製薬学的に許容できる担体中にMAPキナーゼ阻害剤を包含する第二の製薬学的組成物、を含むキットの形態で別個に提供され得、PPARγリガンドおよびMAPキナーゼ阻害剤は、共同した投与に際して対象動物でのPPARγ応答性の過剰増殖性細胞の終末分化を誘導するのに治療上有効な量で存在する。
同様に、本発明の方法で有用なPPARγアゴニストは、治療されるべき過剰増殖性細胞の例えば成長もしくはこれに対する免疫応答を遂げる他の作用物質とともに投与され得る。上のように、二次的作用物質は、PPARγアゴニストと予め混合され得るか、または、(i)製薬学的に許容できる担体中にPPARγリガンドを包含する第一の製薬学的組成物、および(ii)有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、核酸挿入剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アポトーシスを促進する作用物質、および腫瘍に対する免疫応答を増大させる作用物質から成る群から選択される1種もしくはそれ以上の作用物質を包含する1種もしくはそれ以上の付加的製薬学的組成物(1種もしくは複数)を含むキットの一部として提供され得る。
本発明はまた、PPARγが、他の軟組織肉腫に比較して主要な組織学的型のヒト脂肪肉腫のそれぞれで一貫してかつ選択的に発現されるという驚くべき発見にも関する。従って、本発明の別の局面は、形質転換された細胞のサンプル中で診断レベルのPPARγのmRNAもしくはPPARγタンパク質の一方もしくは双方を検出することを含んで成る、脂肪肉腫を診断するもしくはその診断を増強させる(augmenting)方法を提供し、ここで、サンプルの細胞でのPPARγのmRNAもしくはタンパク質の上昇された発現はサンプル中の脂肪肉腫細胞の存在を示す。例えば、診断的アッセイが、軟組織の過形成もしくは新形成から得られた生検で実施され得る。
本発明はまた、PPARγが、ヒト乳房腺癌および進行性転移性乳房腫瘍で一貫してかつ選択的に発現されるという驚くべき発見にも関する。従って、本発明の別の局面は、形質転換された細胞のサンプル中で診断レベルのPPARγのmRNAもしくはPPARγタンパク質の一方もしくは双方を検出することを含んで成る、乳癌を診断するもしくはその診断を増強させる方法を提供し、ここで、サンプルの細胞でのPPARγのmRNAもしくはタンパク質の上昇された発現はサンプル中の腺癌細胞の存在を示す。例えば、診断的アッセイが、軟組織の過形成もしくは新形成から得られた生検で実施され得る。
本発明の実務は、別の方法で示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、移植遺伝子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の慣習的技術を使用することができ、これらは当該技術分野の技術内にある。こうした技術は文献に記述されている。例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版、サンブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)とマニアティス(Maniatis)により編(コールドスプリングハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press):1989);DNA Cloning、第IおよびII巻(グローヴァー(D.N. Glover)編、1985);Oligonucleotide Synthesis(ガイト(M.J. Gait)編、1984);マリス(Mullis)ら米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(ヘイムズ(B.D. Hames)とヒギンズ(S.J. Higgins)編 1984);Transcription And Translation(ヘイムズ(B.D. Hames)とヒギンズ(S.J. Higgins)編 1984);Culture Of Animal Cells(フレッシュニー(R.I. Freshney)、アラン R.リス インク(Alan R. Liss, Inc.)、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL プレス(IRL Press)、1986);パーバル(B. Perbal)、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);専門書、Methods In Enzymology(アカデミック プレス インク(Academic Press, Inc.)、ニューヨーク);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(ミラー(J.H. Miller)とカロス(M.P. Calos)編、1987、コールドスプリングハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory));Methods In Enzymology、Vol.154および155(ウ(Wu)ら編)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(メイヤー(Mayer)とウォーカー(Walker)編、アカデミック プレス(Academic Press)、ロンドン、1987);Handbook Of Experimental Immunology、第I〜IV巻(ヴァイル(D.M. Weir)とブラックウェル(C.C. Blackwell)編、1986);Manipulating the Mouse Embryo、(コールドスプリングハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1986)を参照。
本発明の他の特徴および利点は以下の詳述された記述および請求の範囲から明らかであろう。
図面の詳細な説明
図1は、空ベクター(NIH−ベクター)の感染した対照細胞と比較した、PPARγを異所性に発現するNIH−3T3細胞(NIH−PPARγ)の成長停止および脂肪分化の刺激におけるピオグリタゾンの影響を示す一団の写真である。矢印は細胞質中に脂質滴を含有する分化された脂肪細胞を示す。
図2A、2Bおよび2Cは、PPARγリガンドの存在もしくは非存在下でのNIH−PPARγ、NIH−ベクターもしくはHIB1B細胞の成長を描くグラフを示す。図2Aは、5μMピオグリタゾンで処理されないもしくは処理された細胞の累積的成長を描くグラフである。図2Bは、未処理のプレートに関してのピオグリタゾン処理されたプレート中の細胞数の減少パーセントを示す棒グラフである。図2Cは、2種のチアゾリジンジオン、ピオグリタゾン(5μM)もしくはBRL49653(1μM)なしでもしくはこれらで5日間処理された指数的に成長する細胞を示す棒グラフである。
図3は、細胞の成長の負の調節機能に対するPPARγの転写因子活性の影響を示す棒グラフである。左のパネルは野生型のPPARγ1および2、もしくは突然変異体のPPARγ2のcDNAの概略表示を示す。右パネルは、ピオグリタゾンでもしくはこれなしで処理された、野生型もしくは突然変異体の形態のPPARγを発現する細胞の成長速度に対するピオグリタゾン処理の影響を示す。
図4は多様なヒト組織から調製されたRNAのノーザン分析を示す。図の左に示されるように、ブロットは、PPARγおよび脂肪細胞特異的結合タンパク質aP2のcDNAとハイブリダイゼーションさせた。
図5Aは多様な脂肪肉腫(SP107、SP144、SP147、SP154、SP158、SP160、SP115、SP155、SP156、SP200、SP204、SP116)から調製されたRNA中のPPARγのRNAの発現のノーザン分析を示す。脂肪および筋組織から調製されたRNAを対照として示す。ブロットは、PPARγのcDNAとハイブリダイゼーションさせた。
図5Bは、悪性線維性組織球腫(MFH)、平滑筋肉腫、血管肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNS)、もしくは悪性線維性組織球腫(MFH)を包含する多様な他の型の軟組織肉腫と比較した2種の脂肪肉腫(SP155およびSP156)でのPPARγのRNAの発現のノーザン分析を示す。脂肪組織から調製されたRNAを対照として示す。ブロットはPPARγのcDNAとハイブリダイゼーションさせた。
図6は、hPPARγのリガンド結合ドメインに連結された酵母のGAL4 DNA結合ドメインを有する融合発現プラスミドと共発現されるGAL4上流活性化配列を含有するレポータープラスミドのCV−1細胞での発現の誘導におけるチアゾリジンジオン化合物の相対的能力を描くグラフである。活性化のレベルを、チアゾリジンジオン化合物BRL49653(黒丸により示される)、ピオグリタゾン(白丸により示される)およびトログリタゾン(黒四角により示される)の濃度に関して示す。
図7は、PPARγリガンド、ピオグリタゾンの非存在(パネルA、CおよびE)ならびに存在(パネルB、DおよびF)下に培養された脂肪肉腫細胞の一次培養物を示す一団の写真である。パネルAおよびBはそれぞれ処理されないおよび処理された細胞を表わし;パネルCおよびDはそれぞれ処理されないおよび処理された細胞を表わし;そしてパネルEおよびFはそれぞれ処理されないおよび処理された細胞を表わす。
図8は、トランスフェクションされないNIH細胞(NIH−ベクター)、レトロウイルスベクターからPPARγを発現するNIH細胞(HIH−PPARγ)およびヒト脂肪肉腫細胞(LS857)での脂肪細胞特異的マーカーの発現を示すノーザン分析である。処理されない培養物(−)、および、ピオグリタゾン単独(pio)、RXR特異的リガンドLG268もしくは双方で処理された培養物が示される。左に示されるように、ブロットは、PPARγ、aP2およびアジプシンとハイブリダイゼーションさせた。
図9は、示されたリガンド、すなわちLG268、ピオグリタゾン(pio)、双方のリガンド(pioおよびLG268)、単独(BRL)もしくはLG268と共同した(BRLおよびLG268)BRL49653での、ヒト脂肪肉腫細胞(LS857)の一次培養物に対するRXRもしくはPPARγ特異的リガンドの処理の形態学的影響を示す写真である。
図10は、ヌードマウスでの脂肪細胞腫瘍の大きさの低減に対するチアゾリジンジオン、トログリタゾンの投与の影響を描くグラフである。
図11は、多様なヒト癌細胞系でのPPARγ亜型の発現を立証するノーザンブロットを表わす。
図12および13は、HL−60(白血病)細胞系に対するLG268(「lg」)およびピオグリタゾン(「pio」)の影響を描くグラフである。
図14は、ヒト前立腺癌細胞系PC3に対するLG268(「化合物268」)およびピオグリタゾン(「pio」)の影響を描くグラフである。
図15は、乳癌細胞系および腫瘍におけるPPARγのmRNAの発現を立証するノーザン分析である。乳房細胞系および腫瘍のノーザンブロット分析は、レーンあたり30μgの全RNAを用いて実施した。ヒト脂肪からのmRNAのサンプルを比較のため示す。PPARγ、36B4およびアクチンのcDNAプローブへのハイブリダイゼーションを、方法で記述されたように行った。
図16は、PPARγに対する抗体での転移性乳癌および正常乳房組織の免疫細胞化学染色を示す。連続的切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン、もしくは1000倍希釈のPPARγウサギ抗体のいずれかで染色した。パネルaおよびbは、ヘマトキシリン−エオシン(a)もしくはPPARγ抗体(b)で染色された、肺に転移した乳房腺癌の組織学的切片を示す。転移性腺癌細胞の極度の褐色の核染色(矢印1)および肺の肺細胞の褐色の核染色(矢印2)に注意せよ。パネルcおよびdは、ヘマトキシリンおよびエオシン(c)もしくはPPARγ抗体(d)で染色された正常乳房組織の組織学的切片を示す。周辺の正常脂肪細胞の極度の褐色の核染色(矢印4)に注意せよ。
図17はPPARγリガンドにより誘導される乳癌細胞での脂質の蓄積を示す。脂質についての染色を、オイルレッドO(a、c)もしくはナイルレッド蛍光色素(b)を用いて実施した。中性脂質はオイルレッドOで、およびナイルレッドで黄色に染色する。a.21PT細胞を、10μMのピオグリタゾンもしくはトログリタゾン、またはベヒクルで7日間処理した。b.21PT細胞を、10μMのM2化合物(PPARγに対する親和性をもたないトログリタゾンの不活性代謝物)、10μMのトログリタゾンもしくは5μgの15−デオキシ−Δ12,14−PGJ2で5日間処理した。c.21MT細胞を、10μMのピオグリタゾン、トログリタゾンもしくはベヒクルで15日間処理した。
図18は、21PT乳癌細胞の成長および遺伝子発現に対するPPARγ活性化の影響を示す。(a)ピオグリタゾン(10μM)、LG268(100nM)もしくはピオグリタゾンおよびLG268の組み合わせ、またはベヒクルのみで7日間処理された21PT細胞からのRNAのノーザンブロット分析。30μgの全RNAをレーンあたりに負荷した。(b)10μMのピオグリタゾンもしくはトログリタゾンに3もしくは7日間曝露された場合に指数的に成長していた細胞でのチミジンの取り込み。細胞をその後、トログリタゾン、ピオグリタゾンもしくはベヒクルと2μCi/mlの3H−チミジンとともにさらなる24時間インキュベーションした。誤差の線(error bar)は標準偏差を表わす。(c)最初にトログリタゾンもしくはベヒクルで15日間処理され(方法を参照)、そしてその後トログリタゾン(10μM)の存在もしくは非存在下で10cm皿あたり104個の細胞で再プレート培養された(replated)細胞でのクローン原性アッセイ。トログリタゾンに曝露された細胞はクローン性成長の低下を示す。
図19は、MAPキナーゼ阻害が21MT細胞でのPPARγのリガンド活性化を増強することを示す。(a)脂質蓄積についてのオイルレッドO染色および(b)mRNAのノーザンブロット分析。21MT細胞を、10μMのトログリタゾン、4μMのMEK阻害剤PD098059もしくは双方の組み合わせで7日間処理した。(c)10μMのトログリタゾン、40μMのMEK阻害剤PD098059、双方の組み合わせもしくはベヒクルとともに4時間培養された細胞からのタンパク質抽出物のウェスタンブロット分析。MAPキナーゼに対する抗体は、この酵素のリン酸化されたすなわち活性化された形態のみを認識するように特別に調製した。PPARγに対する抗体は、より速く移動するリン酸化されない形態(−)およびよりゆっくり移動するリン酸化された形態(P)双方を認識する。
発明の詳細な記述
終末分化の誘導はある悪性病変の慣習的化学療法に対する有望な代替物を表わす。「分化療法(differentiation therapy)」として知られる原則は、癌細胞は発達の未熟な段階で止められるようであるという観察結果を基礎とする。ある腫瘍細胞が、インビトロおよびインビボの双方で、処理されない腫瘍細胞と同じくらい迅速には増殖しない、例えば見かけ上の静止表現型に復帰する細胞に最終的に分化するよう誘導され得ることが立証されている。細胞の終末分化を誘導することが既知の一群の作用物質はレチノイドである。骨髄球系統の細胞の分化および悪性形質転換で重要な役割を演じるレチン酸レセプターα(RARα)が急性前骨髄球性(promyelocytic)白血病(APML)での介入の標的として使用されている(ウォレル(Warrel, R.P.)ら、(1993)N. Engl. J. Med. 329:177-189)。全transレチン酸を用いる分化療法はこの疾患の治療の標準となっている。
本発明に従えば、ペルオキシソーム増殖体に活性化されるレセプター(PPAR)ファミリーのレセプターもまた分化療法の標的を表わす。より詳細に本明細書に記述されるように、PPARγ下位ファミリーのアゴニストが多様な過形成性および新生物形成性の組織の増殖を阻害するのに使用され得る。本発明に従い、PPARγアゴニストが、PPARγ応答性細胞の望まれない成長を特徴とする病的および非病的双方の増殖状態の治療で使用され得る。こうした状態は、例えば癌腫、肉腫、白血病、ならびに進行性転移性乳房腫瘍のような形質転換された細胞を有する組織を包含する。
脂肪肉腫は、軟組織肉腫のうちで頻度のみで悪性線維性組織球腫に次ぐ。脂肪肉腫は形質転換された脂肪前駆細胞から生じる。これらの腫瘍は成人で最も普遍的な軟組織悪性病変であり、この年齢群における全肉腫の最低20%に相当する。脂肪肉腫腫瘍(loposarcoma tumor)は末端、とりわけ大腿および腹膜後腔で最もしばしば発生する。脂肪肉腫の3種の主要な組織学的分類が認識されている。すなわち、十分な分化/脱分化、粘液様/円形細胞、および多形態性である。苦しめられた四肢の切断を包含する外科手術は限局された疾患の治療の主要な様式のままである。転移性脂肪肉腫は極めて不十分な予後を伴い、平均5年生存は腫瘍の型に依存して70%から25%までの範囲にわたる。転移性脂肪肉腫の慣習的化学療法はわずか約10%の症例で完全な応答につながり、そして大部分の患者にとってそれはおおむね対症的である。(スレーカンタイア(Sreekantaiah)ら(1994)Am. J. Pathol. 144:1121-1134)。
乳癌はいかなる他の悪性病変よりも米国人女性の間のより多くの死亡の主な原因である。原発性乳癌の現在の治療は、疾患の程度に依存して照射もしくは化学療法を伴うもしくは伴わない外科的切除を包含する。慣習的な補助化学療法(adjuvant chemotherapy)は2個の主要な理由から最適状態に及ばない。すなわち、それは重大な毒性を伴い、また、それは患者の20〜25%のみに有益でありうる。進行性転移性乳癌の標準的な細胞傷害性の化学療法は主として対症的であり、生存率のわずかな向上のみを引き起こす。
一局面において、臨床的および実験的証拠は、脂肪細胞での分化および悪性病変が逆相関することを示す。とりわけ、例えば脂肪肉腫の治療でのような脂肪系統の細胞の悪性形質転換の治療的治療(therapeutic treatment)は、PPARγを包含する転写複合体の活性化を引き起こす作用物質(1種もしくは複数)で終末脂肪細胞分化を誘導することにより実施され得る。本発明の方法は、部分的に、合成チアゾリジンジオンリガンド(TZD)のようなPPARγアゴニストの投与がインビボで脂肪細胞腫瘍の大きさの低減に有効であるという予期されない知見を基礎とする。付属として付けられる実施例に記述されるように、PPARγの活性化は、対数的に成長する細胞で細胞周期の停止を引き起こす、ならびに、脂肪形成を開始するのに十分であることが示される。加えて、PPARγは、主要な組織学的型のヒト脂肪肉腫のそれぞれ、および乳癌細胞からの腺癌で一貫して発現されることが示される。異所性に添加されたレセプターリガンドでのこのレセプターの活性化は、インビトロおよびインビボで原発性脂肪肉腫細胞の終末分化を促進することが示される。
本発明の方法はまた、部分的に、PPARγの強力な負の調節体であることが既に示されたMAPキナーゼの阻害が比較的非応答性の細胞のTZDリガンド感受性を向上させるという知見もまた基礎とする。これはこの酵素がPPARγの機能を妨害し得ることを示唆する。さらに、原発性および転移性双方のヒト乳房腫瘍由来の培養された細胞でのこのレセプターのリガンド活性化が広範囲の脂質蓄積を伴う劇的な形態の転換を引き起こすことが立証されている。加えて、より分化されたより少なく悪性の状態に関連する乳房上皮の遺伝子発現の変化が存在する。形態および遺伝子発現でのこれらの変化と一致して、細胞の成長速度およびクローン原性能力の低下が存在する。総合すれば、PPARγリガンドおよびMAPキナーゼ阻害剤は、悪性の乳房上皮細胞の終末分化を誘導し得、そしてかように新規の非毒性の療法を提供し得る。
軟組織損傷に加え、PPARγアゴニストはまた、造血およびリンパ組織に影響を与える増殖性障害、ならびにある固形組織の増殖性障害の治療で好都合に使用され得る。付属として付けられる実施例は、多様な癌腫および白血病由来の細胞でのPPARγの発現を記述する。さらに、PPARγアゴニストは、こうした細胞の増殖を阻害することが可能であることが立証されており、従って、それによりPPARγ応答性の過剰増殖性細胞の成長が調節され得る一般的規範を確立している。
RXR特異的リガンドもまた、PPARγ/RXRαヘテロダイマーを発現する細胞での強力な脂肪形成剤であること、ならびに、PPARγおよびRXR双方に特異的なリガンドでの脂肪肉腫細胞の処理が付加的な分化刺激をもたらすことも立証されている。これらの結果は、単独もしくは組み合わせでのチアゾリジンジオンのようなPPARγリガンドおよびRXR特異的レチノイドが脂肪肉腫の分化療法として有用であることを示す。
本発明のさらなる記述の前に、本明細書、実施例および付属として付けられる請求の範囲で使用されるある用語を便宜上ここに収集する。
「PPARγ」という用語は、とりわけ脂肪細胞の細胞および造血細胞中で発現され(ブラッサン(Braissant, O.)らEndocrinology 137(1):354-66)、また、分化の重要な調節体として機能する、ペルオキシソーム増殖体に活性化されるレセプターのファミリーの構成員を指す。本定義内には、例えば、一次RNA転写物の代替のスプライシングにより生じられる異なるN末端を有する2種のアイソフォームであるPPARγ1およびPPARγ2(トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)、Genes & Dev. 8:1224-34;チュー(Zhu)ら(1993)J. Biol. Chem. 268:26817-20)のようなその変異体も企図されている。
「PPARγ応答性の過剰増殖性細胞」および「PPARγ応答性の新生物細胞」という用語は本明細書で互換的に使用され、そしてPPARγアゴニストに応答性である新生物細胞を指す。この新生物細胞は、細胞増殖を阻害することおよび/もしくは分化特異的遺伝子の発現を誘導することによりPPARγレセプターの活性化に応答する。この用語は、PPARγリガンドに応答して脂肪細胞系統に分化する腫瘍由来の細胞、例えばヒト脂肪肉腫細胞を包含する。
本発明の方法で有用である、本明細書で使用されるところの「PPARγアゴニスト」は、新生物細胞中のPPARγレセプターの転写活性を増強する、誘導する、もしくは別の方法で高める作用物質を指す。ある態様において、アゴニストは、例えばレセプターの本来のリガンドを模倣することによるようなPPARγ転写複合体により転写活性化を誘導しうる。他の態様において、アゴニストはPPARγリガンドに対するレセプターの感受性を増強する。例えば、アゴニストでの処理はある特定のレベルのレセプター依存性の遺伝子活性化を誘導するのに必要とされるリガンド濃度を低下させる。
本発明の方法で有用である、本明細書で使用されるところの「PPARγリガンド」という用語は、PPARγタンパク質に選択的かつ特異的に結合し、そして結合に際してPPARγ応答性要素を含有する遺伝子の転写を活性化する、いかなる天然に存在するもしくは天然に存在しない作用物質も包含する。こうしたリガンドの例は、チアゾリジンジオン化合物、例えば、ピオグリタゾン、トログリタゾン、BRL49653およびそれらの誘導体、もしくはプロスタグランジン(PG)代謝物、例えばプロスタグランジン15−デオキシ−Δ12,14PGJ2およびそれらの誘導体を包含するがしかしこれらに限定されない。
「MAPキナーゼ阻害剤」という用語は、MAPキナーゼ活性を特異的に封鎖するいずれかの作用物質、例えばPD098059を示すのに本明細書で使用される。
「作用物質(agent)」という用語は、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子、または、細菌、植物、真菌もしくは動物(とりわけ哺乳類)の細胞もしくは組織のような生物学的物質から作成される抽出物を示すのに本明細書で使用される。作用物質は、例えば本明細書に下に記述されるようなスクリーニングアッセイの使用により、抗増殖剤としての活性について評価され得る。
「PPARγの活性化」という用語は、例えば、遺伝子のPPARγ依存性の転写を増大させることによりPPARγ依存性の遺伝子発現を選択的に活性化するある化合物の能力を指す。
PPARγレセプターの「転写活性」は、それにPPARγレセプターが結合したDNAの部位に隣接するDNA配列の転写を引き起こすために、リガンド依存性の様式でDNAに結合しそしてそれ自身でもしくは他の因子との複合体でRNAポリメラーゼの活性化を引き起こすレセプターの能力を指す。PPARγレセプターは、リガンドと複合体形成された状態でそれがリガンドの非存在下より高いレベルの遺伝子発現を引き起こす場合に「転写的に活性化される」。
「新形成」という用語の普遍的な医学的意味は、正常の成長制御、例えば新生物細胞の成長に対する応答性の喪失として生じる「新たな細胞の成長」を指す。「過形成」は異常に高い成長速度を経験する細胞を指す。しかしながら、本明細書で使用されるところの新形成および過形成という用語は、それらの状況が示すことができるように互換的に使用され得、一般に、異常な細胞成長速度を経験する細胞を指す。新形成および過形成は「腫瘍」を包含し、これは良性、前癌もしくは悪性のいずれかであってよい。
本明細書で使用されるところの「過剰増殖性の」および「新生物形成性の」という用語は互換的に使用され、そして迅速な増殖または新生物を特徴とする異常な症状もしくは状態にある細胞を指す。この用語は、侵襲性の組織病理学的型もしくは段階に関係なく、全部の型の癌の成長もしくは腫瘍発生過程、転移組織または悪性に形質転換された細胞、組織もしくは器官を包含することを意味する。「病的過剰増殖性」細胞は悪性腫瘍の成長を特徴とする疾患状態で存在する。
「脂肪細胞腫瘍」という用語は、脂肪細胞系統の細胞から生じる、例えば脂肪細胞もしくは脂肪前駆細胞から生じる全ての癌すなわち新形成を指す。脂肪細胞腫瘍は、脂肪腫、筋肉内および筋肉間の脂肪腫、神経線維脂肪腫、脂肪芽細胞腫、脂肪腫症、冬眠腺腫、血管腫および脂肪肉腫のような、普遍的および異常な良性および悪性の双方の損傷、ならびに脂肪を含有する軟組織塊を模倣しうる損傷を包含する。
「癌腫」という用語は当業者により認知されており、そして、呼吸器系の癌、消化器系の癌、尿生殖器系の癌、睾丸癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系の癌および黒色腫を包含する上皮もしくは内分泌組織の悪性病変を指す。例示的癌腫は、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭部および頸部、結腸ならびに卵巣の組織から生じるものを包含する。この用語はまた、例えば、癌性および肉腫性組織から成る悪性腫瘍を包含する癌肉腫も包含する。「腺癌」は、腺組織由来の、もしくはその中で腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。
「肉腫」という用語は当業者により認知されており、そして間葉性異常の悪性腫瘍を指す。
本明細書で使用されるところの「白血病性癌」という用語は、造血および免疫系(血液およびリンパ系)の全部の癌すなわち新形成を指す。血液、骨髄細胞(骨髄腫)およびリンパ組織(リンパ腫)の他の型の腫瘍と一緒になった急性および慢性の白血病は、全癌死の約10%、ならびに小児および30歳未満の成人の全癌死の約50%を引き起こす。慢性顆粒球性白血病(CGL)としてもまた知られる慢性骨髄性白血病(CML)は造血幹細胞の新生物形成性障害である。
「白血病」という用語は当業者により認知されており、そして、血液および骨髄での白血球およびそれらの前駆体のゆがまされた増殖および発達を特徴とする血液形成器官の進行性悪性疾患を指す。
「抗新生物形成剤」および「抗増殖剤」という用語は本明細書で互換的に使用され、そして、PPARγ応答性細胞の増殖を阻害する、例えば、こうした特徴を有する新生物、とりわけ脂肪細胞新生物もしくは造血新生物の発達もしくは進行を阻害するという機能特性を有する作用物質を指す。
本明細書で使用されるところの、PPARγアゴニストの「治療上有効な抗新生物量」は、患者への単一もしくは複数の用量の投与に際して、新生物形成性のPPARγ応答性細胞の成長の阻害、もしくはこうした治療の非存在下で期待されるものを越えるこうした新生物形成細胞をもつ患者の生存の延長において有効である作用物質の量を指す。本明細書で使用されるところの新生物の「成長を阻害すること」は、その成長および転移を遅らせる、中断する、停止するもしくは終了させることを指し、そして必ずしも新生物形成性の成長の完全な排除を示さない。
本明細書で使用されるところの、化合物の「予防的に有効な抗新生物形成性量」は、患者への単一もしくは複数の用量の投与に際して、新生物性疾患状態の発症の発生もしくは再発の予防もしくは遅延で有効であるPPARγアゴニストの量を指す。
「増殖指数(proliferative index)」という用語は当業者により認知されており、そして細胞分裂が起こる速度を指す。
例えば、2個の状態の間の定量的差異を示す、「誘導する」、「阻害する」、「増強する」、「上昇させる」、「増大させる」、「減少させる」などという用語は、2個の状態の間の少なくとも統計学的に有意の差異を指す。例えば、「PPARγ応答性の過剰増殖性細胞の成長を阻害するのに有効な量」は、その細胞の成長速度が、処理されない細胞と少なくとも統計学的に有意に異なることができることを意味する。こうした用語は、本明細書で、例えば細胞増殖速度、発現レベル、および転写活性レベルに適用される。
「PPARγレセプタータンパク質の情報伝達」は化学的シグナルの細胞内プロセッシング(processing)であり、核レセプターの活性化の結果として発生し、また、リガンド結合、ヘテロダイマー複合体形成、DNA結合および/または転写の直接もしくは間接的活性化のようないくつかの機構の1個もしくはそれ以上により発生しうる。情報伝達経路での変化は、最終的に、分化特異的遺伝子の増大された発現および/もしくは細胞周期からの離脱(withdrawal)により検出される。
本明細書で使用されるところの「レポーター遺伝子構築物」は、転写調節配列に操作可能に連結される「レポーター遺伝子」を包含する核酸である。レポーター遺伝子の転写はこれらの配列により制御される。典型的には、レポーター遺伝子構築物は、PPARγ応答要素(PPRE)の直接反復として配置される1個もしくはそれ以上の応答性要素との影響を及ぼす連結にあるレポーター遺伝子を包含することができる。これらの制御配列の最低1個もしくはそれ以上の活性はPPARγの核レセプタータンパク質により直接調節される。転写調節配列は、プロモーター、および、プロモーターの活性を調節するエンハンサー配列のような他の調節領域を包含する。例えば、最低1個もしくはそれ以上のPPRE応答要素に結合されたPPARγリガンドとのPPARγ/RXRの高親和性ヘテロダイマー複合体の活性化は、プロモーター領域へのRNAポリメラーゼ結合を変えることにより、もしくは、あるいは、mRNAの転写もしくは伸長の開始を高めることにより、プロモーターの活性を高めうる。
I.PPARγ応答性の過剰増殖性細胞の増殖の阻害方法
一局面において、本発明は、PPARγ応答性の過剰増殖性細胞をPPARγアゴニストと接触させることによる、当該細胞の増殖を阻害しそして/もしくは形質転換された表現型を復帰する方法を特色とする。一般に、当該方法は、過剰増殖性細胞の分化を促進するのに有効なPPARγアゴニストのある量と病的に過剰増殖性の細胞を接触させる段階を包含する。本方法は、培養物中の細胞で、例えばインビトロもしくはエクスビボで実施され得るか、または、例えばインビボの治療プロトコルの一部として動物被験体に存在する細胞で実施され得る。この治療計画はヒトもしくは他の動物被験体で実施され得る。PPARγアゴニストに応答してのインビボでの形質転換された細胞の終末分化の誘導は、化学療法の慣習的な高度に毒性の計画に対する代替を表わす。
PPARγアゴニストは単独で利用され得る一方、被験体の分化療法は、例えば、細胞周期阻害剤、アポトーシスを促進する作用物質、免疫応答を強化する作用物質、RxRアゴニスト、および/もしくはMAPキナーゼ阻害剤のような他の治療薬と組み合わせられ得る。共投与される治療薬のいくつか、とりわけ細胞傷害性の効果をもつもしくは治療される細胞に対する特異性を欠くものは、添加物、およびときにPPARγアゴニストとの相乗効果により、より小さな用量で与えられてよい。
一態様において、治療されるべき細胞は、例えば脂肪細胞もしくは脂肪前駆細胞から生じる脂肪細胞系統の過剰増殖性細胞である。例えば、本方法は、脂肪細胞腫瘍の増殖を予防するために実施され得る。脂肪腫瘍細胞は脂肪肉腫のものであり得る。「脂肪肉腫」という用語は当業者により認知されており、そして、ときに正常脂肪細胞の細胞増殖巣(focus)をもつ大型の未分化脂肪芽細胞を特徴とする悪性腫瘍を指す。本発明により治療され得る例示的な脂肪肉腫の型は、十分な分化/脱分化、粘液様/円形細胞、および多形態性を包含するがしかしこれらに制限されない(スレーカンタイア(Sreekantaiah, C.)ら、(1994)上記に概説される)。
本発明により治療されうる別の脂肪細胞腫瘍は、脂肪腫、例えば通常は成熟脂肪細胞から成る良性脂肪腫瘍を包含する。同様に、本発明の方法は、脂肪軟骨腫、脂肪線維腫および脂肪肉芽腫の治療および/もしくは予防で使用され得る。脂肪軟骨腫は成熟した脂肪腫性および軟骨性要素から成る腫瘍であり;脂肪線維腫は線維症の領域を含有する脂肪腫であり;そして脂肪肉芽腫は肉芽腫性炎症を伴う類脂質物質の結節を特徴とする。
主題の方法はまた、例えば、骨髄性、リンパ球性、もしくは赤血球の系統、またはそれらの前駆細胞から生じる造血起源の過形成/新生物形成性細胞の増殖を阻害するのにも使用されてよい。例えば、本発明は、急性前骨髄性(promyeloid)白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)を包含するがしかしこれらに制限されない多様な骨髄性障害の治療を包含する(ヴァイクス(Vaickus, L.)(1991)Crit Rev. in Oncol./Hematol. 11:267-97に概説される)。主題の方法により治療されうるリンパ性悪性病変は、B系統ALLおよびT系統ALLを包含する急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性(prolymphocytic)白血病(PLL)、有毛状細胞性白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を包含するがしかしこれらに限定されない。本発明の治療方法により企図される悪性リンパ腫の付加的な形態は、非ホジキンリンパ腫およびその変異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大型顆粒球性リンパ性白血病(LGF)ならびにホジキン病を包含するがしかしこれらに限定されない。
主題の方法はまた、肺、乳房、リンパ系、消化管および尿生殖路を冒すもののような多様な器官系の悪性病変、ならびに、大部分の大腸癌、腎細胞癌、前立腺癌および/もしくは睾丸腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸癌ならびに食道癌のような悪性病変を包含する腺癌の治療でも使用され得る。形質転換された細胞の分化におけるPPARγの関与の一般的規範に従えば、本発明の方法により治療され得る例示的固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆道癌、絨毛上皮癌、精上皮癌、胎児性癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫などであるが、しかしこれらに限定されず、PPARγ応答性の表現型をもつ肉腫および癌腫を包含する。
天然に存在しないPPARγリガンドの特定の例は、チアゾリンジオンとして知られるチアゾリジン(TZD)誘導体、例えば、プログリタゾン(AD−4833およびU−72107Eとしてもまた知られる)、トログリタゾン(CS−045としてもまた知られる)(三共(Sankyo))ならびにCl−991(パーク・デービス(Parke-Davis))、BRL49653、シグリタゾン、エングリタゾン、ならびにそれらの化学的誘導体を包含する。これらの化合物は慣習的に糖尿病の治療について既知である。こうした化合物の例示的供給源については、例えば米国特許第4,812,570;4,775,687;4,725,610;4,582,839;および4,572,912号を参照。米国特許第5,521,201号、ならびに欧州特許出願第0008203、0139421、0155845、0177353、0193256、0207581および0208420号、ならびに、Chem. Pharm. Bull 30(10)3580-3600は、チアゾリジンジオン誘導体に関し、そして多様なTZDおよびTZD様類似物についての商業的供給源/合成スキームを記述し、これらは本発明の方法の実施で有用でありうる。
天然に存在するPPARγリガンドの特定の例は、アラキドン酸代謝物、例えばプロスタグランジンJ2(PGJ2)代謝物、例えば15-デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2を包含する。Δ12−PGJ2および15−デオキシ−Δ12,14−PGJ2を包含するプロスタグランジンJ2の脱水および異性化生成物は、ヒト血漿もしくはヒト血清アルブミンの存在下のプロスタグランジンD2(PGD2)のインキュベーションにより生じることが示されている(フィッツパトリック(Fitzpatrick)とワイヴァルダ(Wyvalda)(1983)J. Biol. Chem. 258:11713-18)。Δ12−PGJ2はヒトおよびサルの尿中に存在する重要なPGD2代謝物であることが示されており、PGJ2代謝物もまたインビボで見出されることを示す(ヒラタ(Hirata)ら(1994)PNAS USA 91:11192-96)。
本発明の方法での使用のための他の作用物質は、全身にもしくはインビトロで投与される場合にアラキドン酸代謝物の内因性の産生を刺激する化学物質を包含する。内因性のアラキドン酸代謝物の高められた産生は、前駆体グリセロリン脂質からのアラキドン酸の遊離の最低ひとつを刺激すること、シクロオキシゲナーゼ酵素による遊離のアラキドン酸の酸素添加、および特異的な生物学的に活性のプロスタグランジン代謝物へのプロスタグランジンH2の代謝により発生しうる(スミス(Smith, W.)(1989)Biochem. J. 259:315-24に概説される)。
一般に、例えばPPARαおよび/もしくはPPARδに関してそのPPARのアイソフォームを特異的に活性化するPPARγアゴニストを選ぶことが好ましいことができる。本発明に従えば、PPARγアイソフォームに対する特異性は、PPARα仲介性の肝発癌のような望まれない副作用を低減し得る。とりわけ、本方法のPPARγアゴニストは、好ましくは、PPARα依存性の転写を活性化するものより最低1桁より小さい濃度で、そしてなおより好ましくは最低2、3、4もしくは5桁より小さい濃度でPPARγ依存性の転写を活性化する。
一態様において、PPARγアゴニストは、一般式:
あるいはそれらの互変異性体、および/またはその製薬学的に許容できる塩、および/またはその製薬学的に許容できる溶媒和物により表わされ、式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)、または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒に1個の結合を表わし;A2は、原子価が許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす。
適する芳香族ヘテロ環基は、各環中に酸素、イオウもしくは窒素から選択される4個までのヘテロ原子を含む置換もしくは未置換の単一もしくは融合環の芳香族ヘテロ環基を包含する。好ましい芳香族ヘテロ環基は、4ないし7個の環原子、好ましくは5もしくは6個の環原子を有する置換もしくは未置換の単環芳香族ヘテロ環基を包含する。とりわけ、芳香族ヘテロ環基は、酸素、イオウもしくは窒素から選択される1、2もしくは3個、とりわけ1もしくは2個のヘテロ原子を含んで成る。
A1が5員芳香族ヘテロ環基を表わす場合にそれに適する置換基は、チアゾリルおよびオキサゾリル、とりわけオキサゾリルを包含する。A1が6員芳香族ヘテロ環基を表わす場合にそれに適する置換基は、ピリジルもしくはピリミジニルを包含する。
好ましい態様において、R2およびR3はそれぞれ水素を表わす。
好ましくは、A1は式(a)、(b)もしくは(c):
の部分を表わし、
式中:
R4およびR5はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、または置換もしくは未置換のアリール基を表わすか、あるいは、R4およびR5がそれぞれ隣接する炭素原子に結合される場合には、それらが結合される炭素原子と一緒になったR4およびR5はベンゼン環を形成し、その中でR4およびR5により表わされる各炭素原子は一緒に置換もしくは未置換で;また、式(a)の部分にあってもよく;そして、Xは酸素もしくはイオウを表わす。
好ましい一態様において、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、アルキル、または置換もしくは未置換のフェニル基を表わし、また、より好都合には、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、アルキルもしくはフェニルを表わす。さらに好ましい一態様において、R4およびR5は一緒になって式(d):
の部分を表わし、
式中、R6およびR7はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは未置換のアルキルもしくはアルコキシを表わす。好ましい態様において、R6およびR7は水素を表わす。
好ましくは、式(a)の部分について、R4およびR5は一緒に式(d)の部分を表わす。
好ましくは、式(b)もしくは(c)の部分について、R4およびR5双方は水素を表わす。
A2の5個の置換基が3個の任意の置換基を包含することが真価をみとめられることができる。部分A2に適する任意の置換基は、ハロゲン、置換もしくは未置換のアルキルもしくはアルコキシを包含する。
好ましくは、A2は、式(e):
の部分を表わし、
式中、R8およびR9はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは未置換のアルキルもしくはアルコキシを表わす。
好ましい一局面において、本発明はある一定クラスの化合物を提供し、これらは一般式:
またはそれらの互変異性体、および/もしくはそれらの製薬学的に許容できる塩、および/もしくはそれらの製薬学的に許容できる溶媒和物により表わされ、式中、A1、R1、R2、R3およびnは上で定義されたとおりであり、また、R8およびR9は式(e)に関して定義されたとおりである。
好ましくは、nは整数2、3もしくは4、とりわけ2もしくは3、そして特別には2を表わす。
いずれのヘテロ環基にも適する置換基は、アルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲンから成る群から選択される4個までの置換基を包含するか、もしくは、それらが結合される炭素原子と一緒になった隣接する炭素原子上のいずれか2個の置換基がアリール基、好ましくはベンゼン環を形成してもよく、また、ここで、前記2個の置換基により表わされるアリール基の炭素原子はそれら自体置換もしくは未置換であってよい。
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、ハロゲン、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルキルカルボニル基から選択される、5個まで、好ましくは3個までの基で場合によっては置換されたフェニルおよびナフチルを包含する。
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素;好ましくは塩素を指す。
本明細書で使用される場合、「アルキル」および「アルコキシ」という用語は、12個までの炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状の炭素鎖を有する基に関する。
本明細書で使用される場合、「アシル」という用語はアルキルカルボニル基を包含する。
適するアルキル基は、C1-12のアルキル基、とりわけC1-6アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはtert−ブチル基である。
いかなるアルキル基にも適する置換基は「アリール」という用語に関して上で示されたものを包含する。
本発明を実施するのに有用な化合物、およびこれらの化合物の作成方法は既知である。PPARγアゴニストの例は、PCT公開WO 91/07107;WO 92/02520;WO 94/01433;WO 89/08651;WO 95/18533;WO 95/35108号;日本国特許公開第69383/92;ならびに、米国特許第5,523,314;5,521,202;5,510,360;5,498,621;5,496,621;5,494,927;5,480,896;5,478,852;5,468,762;5,464,856;5,457,109;4,287,200;4,340,605;4,438,141;4,444,779;4,461,902;4,572,912;4,687,777;4,703,052;4,725,610;4,873,255;4,897,393;4,897,405;4,918,091;4,948,900;5,002,953;5,061,717;5,120,754;5,132,317;5,194,443;5,223,522;5,232,925および5,260,445号に開示される。
例示的PPARγアゴニストは、5−[4−[2−(5−エチルピリジン−2−イル)エトキシル]ベンジル]チアジアゾリジン−2,4−ジオン:(ピオグリタゾン);5−[4−[(1−メチルシクロヘキシル)メトキシ]ベンジル]チアジアゾリジン−2,4−ジオン:(シグリタゾン);5−[(2−ベンジル−2,3−ジヒドロベンゾピラン)−5−イルメチル]チアジアゾリン−2,4−ジオン:(エングリタゾン);5−[(2−アルコキシ−5−ピリジル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−[(置換3−ピリジル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−(2−メチル−2−フェニルプロポキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]メトキシ]ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]−メトキシ]ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]メトキシ]ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[3−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]メトキシ]ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[3−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]メトキシ]ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[2−[3−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]エトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[2−[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]エトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−[3−(4−ピリジル)−2−オキソオキサゾリジン−5−イル]メトキシ]ベンジル−2,4−チアゾリジンジオン;5−[[4−[(3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ]フェニル]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン:(トログリタゾン);4−(2−ナフチルメチル)−1,2,3,5−オキサチアジアゾール−2−オキシド;5−[4−[2−[N−(ベンゾキサゾル−2−イル)−N−メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]−5−メチルチアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[2−(2,4−ジオキソ−5−フェニルチアゾリジン−3−イル)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[2−[N−メチル−N−(フェノキシカルボニル)アミノ]エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−(2−フェノキシエトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[2−(4−クロロフェニル)エチルスルホニル]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[3−(5−メチル−2−フェニルオキサゾル−4−イル)プロピオニル]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;5−[[4−(3−ヒドロキシ−1−メチルシクロヘキシル)メトキシ]ベンジル]チアジアゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾル−4−イル)エトキシル]ベンジル]チアジアゾリジン−2,4−ジオン;5−[[2−(2−ナフチルメチル)ベンゾキサゾル]−5−イルメチル]チアジアゾリン−2,4−ジオン;5−[4−[2−(3−フェニルウレイド)エトキシル]ベンジル]チアジアゾリン−2,4−ジオン;5−[4−[2−[N−(ベンゾキサゾル−2−イル)−N−メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]チアジアゾリン−2,4−ジオン;5−[4−[3−(5−メチル−2−フェニルオキサゾル−4−イル)プロピオニル]ベンジル]チアジアゾリン−2,4−ジオン;5−[2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾル−4−イルメチル)ベンゾフラン−5−イルメチル]オキサゾリジン−2,4−ジオン;5−[4−[2−[N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ]エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン;および5−[4−[2−[N−(ベンゾキサゾル−2−イル)−N−メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]オキサゾリジン−2,4−ジオンのような化合物のなかから選択され得る。
別の態様において、主題の方法は、PPARγアゴニストの使用を1種もしくはそれ以上のRxR特異的リガンドと組み合わせる。例えば、主題の方法は、上述されたようなPPARγアゴニストならびに天然および/もしくは合成のレチノイドのようなRxRアゴニストを使用する治療により実施され得る。主題の方法での使用に適切な広範なRxRリガンドが当該技術分野で既知である。例示的な天然のRxRリガンドは、全transレチン酸およびフィタン酸を包含する。例示的な合成のRxRリガンドは、9−cis−レチン酸、LG268、AGN191701、SR11217、SR11237、SR11236、SR11246、SR11249、SR11256、LGD1069、多様な三環レチノイド、レチノイドのテラビニル−アルカジもしくはトリエン酸誘導体、ならびに、レチン酸のフェニルメチルヘテロ環およびテトラヒドロナフチル類似物を包含する(アプフェル(Apfel)ら(1995)JBC 270:30765;ミヌッチ(Minucci)ら(1996)PNAS 93:1803;ヘンブリー(Hembree)ら(1996)Cancer Res 56:1794;キザキ(Kizaki)ら(1996)Blood 87:1977;レモッテ(Lemotte)ら(1996)Eur J Biochem 236:328;ならびに、米国特許第5,552,271;5,466,861;5,514,821号;PCT公開WO 96/05165;WO 96/20914;WO 94/15901;WO 93/21146号;および欧州特許公開EP 0694301号を参照)。
さらに具体的に説明するために、RxRリガンドは、一般式:
および米国特許第5,466,861号に表わされる化合物であり得る。
2種(もしくはそれ以上)の化合物が本発明により組み合わせで投与される。この文脈上、「組み合わせで」という用語は、薬物が同時に(simultaneously)もしくは連続してのいずれかで、本質的に同時存在的に(contemporaneously)与えられることを意味する。連続して与えられる場合、第二の化合物の投与の開始で、2種の化合物の第一は好ましくは治療部位で有効な濃度でなお検出可能である。
なお別の態様において、主題の方法はPPARγアゴニストの使用を1種もしくはそれ以上のMAPキナーゼ阻害剤と組み合わせる。例えば、主題の方法は、上述されたようなPPARγアゴニストおよびMAPキナーゼ阻害剤を使用する治療により実施され得る。こうした阻害剤の一例はPD098059である。
主題の方法は、PPARγアゴニスト(ならびに任意のRxRアゴニストおよび/もしくはMAPキナーゼ阻害剤)の使用に加えて、1種もしくはそれ以上の他の抗腫瘍物質を必要としてよい。PPARγアゴニストと組み合わせる例示的併用(conbinatorial)療法は、ビンブラスチンのような有糸分裂阻害剤;シスプラチン、カルボプラチンおよびシクロホスファミドのようなアルキル化剤、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素もしくはN−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸のような代謝拮抗物質;例えばアドリアマイシンおよびブレオマイシンのようなインターカレーティング抗生物質;アスパラギナーゼのような酵素;エトポシドのようなトポイソメラーゼ阻害剤;例えば、インターフェロンのような抗腫瘍応答を高める生物学的応答調節剤;アクチノマイシンDのようなアポトーシス剤;ならびに抗ホルモン、例えば、タモキシフェンのような抗エストロゲン、もしくは、例えば、4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリドのような抗アンドロゲンのような作用物質の使用を包含する。こうした共同した治療は、治療の個々の成分の同時、連続もしくは別個の投与によって達成されてよい。
本発明の別の局面は、従って、他の治療化合物を伴うPPARγアゴニストの投与を実施するためのキットに関する。一態様において、このキットは、製薬学的担体中に処方されたPPARγアゴニスト、および、PPARγアゴニストとともに処方された、もしくは、適切なように1個もしくはそれ以上の別個の製薬学的調製物中の、RxRアゴニスト、MAPキナーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、核酸挿入剤、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロンの最低1種を含んで成る。
PPARγアゴニストの治療上有効な抗新生物形成性量および予防上有効な抗新生物形成性量の決定、例えば分化療法の設計は、既知の技術の使用および類似の情況下で得られた結果を観察することにより、当業者としての医師もしくは獣医(「担当臨床家」)により容易になされ得る。用量は、担当臨床家の判断における患者の要件、治療されている状態の重篤度、および使用されている特定の化合物に依存して変動されてよい。治療上有効な抗新生物形成性量もしくは用量、および予防上有効な抗新生物量すなわち用量の決定において、影響を与えられる特定の過形成/新生物形成性細胞;特定の作用物質の薬物動態の特徴ならびにその投与の様式および経路;治療の所望の時間経過;哺乳動物の種;その大きさ、齢および全身の健康;影響を与えられる特定の疾患;疾患の関与の程度もしくは重篤度;個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与様式;投与される製剤の生物学的利用性の特徴;選択される投与計画;付随する治療の種類(すなわち、PPARγアゴニストの他の共投与される治療薬との相互作用);ならびに他の関連する情況を包含するがしかしこれらに制限されない多数の要因が担当臨床家により考慮される。例えば、米国特許第5,427,916号は、個々の患者での抗新生物療法の有効性を予測する方法を記述し、そして、本発明の治療プロトコルとともに使用され得るある方法を具体的に説明する。
治療は、その化合物の至適用量より少ない、より少ない投薬量で開始され得る。その後、投薬量は、その情況下で至適の効果が達せられるまで少量の増分ずつ増大されるべきである。便宜上、総1日投薬量は、所望の場合は、その日の間で分割されそして部分で(in portion)投与されてよい。PPARγアゴニストの治療上有効な抗新生物量および予防上有効な抗新生物形成性量は、1日に体重1キログラムあたり約0.1ミリグラム(mg/kg/日)から約100mg/kg/日まで変動することが期待される。
動物、例えば、イヌ、げっ歯類での腫瘍の予防もしくは治療に有効であると決定される化合物はまた、ヒトでの腫瘍の治療でも有用でありうる。ヒトでの腫瘍の治療の当業者は、動物研究で得られたデータを基礎として、ヒトへのその化合物の投薬量および投与経路を知ることができる。一般に、ヒトでの投薬量および投与経路の決定は動物での投与を決定するのに使用されるものに類似であることが期待される。
過形成性/新生物形成性の疾患状態のための予防的治療が必要である患者の同定は、当業者の能力および知識内に十分ある。特定の疾患状態の発生の家族歴、および対象患者でのその疾患状態の発症に関連する危険因子の存在のような、主題の方法により治療され得る新生物形成性疾患状態を発症する危険にある患者の同定のための方法のあるものは、医学技術分野で認知されている。本出願はまた、本発明の方法の使用についての臨床的予測を行うもしくは増強するのに使用され得る他の予後試験も記述する。当該技術分野の熟練した臨床家は、例えば臨床検査、身体検査および病歴/家族歴の使用により、こうした候補患者を容易に同定し得る。
II.製薬学的組成物
別の局面において、本発明は、1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容できる担体(添加物)および/もしくは希釈剤と一緒に処方される、治療上有効な量のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニストならびに/またはMAPキナーゼ阻害剤の1種もしくはそれ以上を含む製薬学的に許容できる組成物を提供する。下に詳細に記述されるように、本発明の製薬学的組成物は、以下、すなわち(1)経口投与、例えば飲薬(水性もしくは非水性の溶液もしくは懸濁液)、錠剤、巨丸、粉末、顆粒、ペースト(paste);(2)例えば滅菌の溶液もしくは懸濁液のような、例えば皮下、筋肉内もしくは静脈内注入による非経口投与;(3)例えば皮膚に適用されるクリーム、軟膏もしくはスプレーのような局所適用;(4)例えばペッサリー、クリームもしくは泡沫のような膣内もしくは直腸内;または(5)例えば当該化合物を含有する水性エアゾル、リポソーム製剤もしくは固形粒子のようなエアゾル、に適合されたものを包含する固体もしくは液体の形態での投与のため特別に処方されてよい。
本明細書で使用されるところの「治療上有効な量」という句は、いずれかの医学的治療に適用可能な合理的な利益/危険比で動物の細胞の少なくとも亜分画の増殖を阻害することおよび/もしくは分化を誘導することにより何らかの所望の治療効果を生じさせるのに有効である、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)、物質、またはある化合物を含む組成物のその量を意味する。
「製薬学的に許容できる」という句は、本明細書で、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険比に対応して過剰な毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織と接触しての使用に適する、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト、物質、組成物ならびに/または投与剤形を指すのに使用される。
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という句は、一器官もしくは身体部分から別の器官もしくは身体部分へ主題の化学物質を運搬もしくは輸送することに関与する、液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくは被包化物質のような製薬学的に許容できる物質、組成物もしくはベヒクルを意味する。各担体は、その処方の他の成分と適合性でありかつ患者に傷害性でないという意味で「許容でき」なくてはなならない。製薬学的に許容できる担体としてはたらき得る物質のいくつかの例は、(1)乳糖、ブドウ糖およびショ糖のような糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン類;(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートのようなその誘導体;(4)粉末にされたトラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐剤蝋(suppository wax)のような賦形剤;(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油類;(10)プロピレングリコールのようなグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのような多価アルコール類;(12)エチルオレエートおよびエチルラウレートのようなエステル類;(13)アガー;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理的食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)製薬学的処方で使用される他の非毒性の適合性物質を包含する。
「製薬学的に許容できる塩」という用語は、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニストの比較的非毒性の無機および有機酸の付加塩を指す。これらの塩は、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニストの最後の単離および精製の間にインシトゥで、または、その遊離塩基の形態の精製されたPPARγおよび/もしくはRXRアゴニストを適する有機もしくは無機酸と別個に反応させ、そしてかように形成された塩を単離することにより製造され得る。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプト酸塩、ラクトビオ酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などを包含する(例えば、ベルジュ(Berge)ら(1977)“Pharmaceutical Salts”、J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。
他の場合には、本発明の方法で有用なPPARγアゴニストは、1種もしくはそれ以上の酸性官能基を含有してよく、そして、従って、製薬学的に許容できる塩基と製薬学的に許容できる塩を形成することが可能である。これらの例での「製薬学的に許容できる塩」という用語は、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)の比較的非毒性の無機および有機塩基の付加塩を指す。これらの塩は、同様に、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)の最後の単離および精製の間にインシトゥで、または、その遊離酸の形態の精製されたPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)を、製薬学的に許容できる金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩のような適する塩基、アンモニアもしくは製薬学的に許容できる有機一級、二級もしくは三級アミンと別個に反応させることにより製造され得る。代表的なアルカリもしくはアルカリ土類塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩などを包含する。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどを包含する(例えば、ベルジュ(Berge)ら、上記を参照)。
湿潤剤、乳化剤、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、ならびに、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤および香料、保存剤ならびに抗酸化剤もまた、当該組成物中に存在し得る。
製薬学的に許容できる抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性抗酸化剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどのような脂溶性抗酸化剤;ならびに、(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤を包含する。
本発明の方法で有用な処方は、経口、鼻、局所(口腔および舌下を包含する)、直腸、膣、エアゾルならびに/もしくは非経口投与に適するものを包含する。当該処方は、便宜的には単位投与剤形で提示されてよく、また、薬学の技術分野で公知のいずれかの方法により製造されてよい。単一投薬形態を製造するため担体物質と組み合わせられ得る有効成分の量は、治療されている宿主、特定の投与様式に依存して変動することができる。単一投薬形態を製造するため担体物質と組み合わせられ得る有効成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物のその量であることができる。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1パーセントから約99パーセントまで、好ましくは約5パーセントから約70パーセントまで、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントまでの有効成分の範囲にわたることができる。
これらの処方もしくは組成物の製造方法は、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)を、担体、および場合によっては1種もしくはそれ以上の付属成分との連合にもたらす段階を包含する。一般に、当該処方は、PPARγアゴニストを、液体担体もしくは微細に分割された固体担体、またはその双方との連合に均一かつ密接にもたらすこと、そしてその後、必要な場合は生成物を造形することにより製造される。
経口投与に適する処方は、それぞれ有効成分として予め決められた量のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)を含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ(風味をつけた基剤、通常はショ糖およびアカシアもしくはトラガカントを使用する)、粉末、顆粒の形態で、または水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液として、または、水中油もしくは油中水の液体乳剤として、または、エリキシルもしくはシロップとして、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはショ糖およびアカシアのような不活性基剤を使用する)として、ならびに/あるいは口内洗浄剤などとしてであってよい。化合物は、巨丸剤、舐剤もしくはペーストとして投与されてもまたよい。
経口投与のための固形の投薬形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣丸、粉末、顆粒など)においては、有効成分は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/または以下すなわち(1)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトールおよび/もしくはケイ酸のような増量剤(filler)すなわち増量剤(extender);(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/もしくはアカシアのような結合剤;(3)グリセロールのような湿潤剤(humectant);(4)アガーアガー、炭酸カルシウム、バレイショもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸塩および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶解妨害剤;(6)四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)例えばアセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤(wetting agent);(8)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸着剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物のような滑沢剤;ならびに(10)着色剤のいずれかのような、1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容できる担体と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、当該製薬学的組成物は緩衝剤もまた含んでよい。類似の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用する軟および硬充填ゼラチンカプセル中の充填物としてもまた使用されてよい。
錠剤は、場合によっては1種もしくはそれ以上の付属成分とともに圧縮もしくは成型により作成されてよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムもしくは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤すなわち分散助剤を使用して製造されてよい。成型錠剤は、適する機械中で、不活性液体希釈剤で湿らされた粉末にされたペプチドもしくはペプチド模倣物の混合物を成型することにより作成されてよい。
錠剤、ならびに、糖衣丸、カプセル剤、丸剤および顆粒のような他の固体の投薬形態は、場合によっては割線を付けられてよいか、もしくは腸溶コーティングおよび製薬学的処方技術で公知の他のコーティングのようなコーティングおよび外皮をもって製造されてよい。それらはまた、変動する比率の例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用してその中の有効成分の遅延したすなわち制御された放出を提供するように処方されて、所望の放出プロフィル、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/もしくは小球体を提供することもできる。それらは、例えば細菌保持フィルターを通しての濾過、もしくは、使用直前に滅菌水もしくは何らかの他の滅菌の注入可能な媒体に溶解され得る滅菌の固体の組成物の形態で滅菌剤を取り込むことにより滅菌されてよい。これらの組成物はまた、場合によっては不透明化剤を含有してもよく、また、それらが有効成分(1種もしくは複数)を、場合によっては遅延された様式で、消化管のある部分で単にもしくは優先的に放出する組成物のものであってよい。使用され得る包埋組成物の例はポリマー性物質および蝋を包含する。有効成分は、適切な場合は、上述された賦形剤の1種もしくはそれ以上とともに微小被包化された形態にもまたあり得る。
経口投与のための液体の投薬形態は、製薬学的に許容できる乳剤、ミクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを包含する。有効成分に加え、液体の投薬形態は、例えば水もしくは他の溶媒、可溶化剤、ならびに、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(とりわけ、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール類ならびにソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物のような乳化剤のような当該技術分野で普遍的に使用される不活性希釈剤を含有してよい。
不活性希釈剤の他に、当該経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、矯味矯臭剤、着色剤、香料ならびに保存剤のような補助物質もまた包含し得る。
懸濁液は、活性のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)に加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガーアガーおよびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁化剤を含有してよい。
直腸もしくは膣投与のための処方は坐剤として提示されてよく、これらは、1種もしくはそれ以上のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)を、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤蝋もしくはサリチレートを含む1種もしくはそれ以上の適する非刺激性賦形剤もしくは担体と混合することにより製造されてよく、また、これらは、室温で固体であるがしかし体温で液体であり、そして従って直腸もしくは膣の内腔で融解しかつ有効成分を放出することができる。
膣投与に適する処方は、適切であることが当該技術分野で既知であるような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫もしくはスプレーの処方もまた包含する。
PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)の局所もしくは経皮投与のための投薬形態は、粉末、スプレー、軟膏、パスタ剤、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼付物および吸入剤を包含する。有効成分は、滅菌条件下で、製薬学的に許容できる担体、および必要とされうるいずれかの保存剤、緩衝剤もしくは噴射剤と混合されてよい。
軟膏、パスタ剤、クリームおよびゲルは、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)に加え、動物および植物性脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、もしくはそれらの混合物のような賦形剤を含有してよい。
粉末およびスプレーは、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)に加え、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミドの粉末、もしくはこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有し得る。スプレーは、付加的に、クロロフルオロヒドロカーボン類、ならびにブタンおよびプロパンのような揮発性の未置換の炭化水素のような通例の噴射剤を含有し得る。
PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)は、あるいはエアゾルにより投与され得る。これは、化合物を含有する水性エアゾル、リポソーム製剤もしくは固体粒子を製造することにより成し遂げられる。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液が使用され得る。音波噴霧吸入器(sonic nebulizer)が好ましい。なぜなら、それらは、化合物の分解をもたらし得る剪断変形への作用物質の曝露を最小限にするからである。
通常、水性エアゾルは、作用物質の水性溶液もしくは懸濁液を慣習的な製薬学的に許容できる担体および安定化剤と一緒に処方することにより作成される。これら担体および安定化剤は特定の化合物の要件とともに変動するが、しかし、典型的には、非イオン性界面活性剤(トゥイーン(Tween)、プルロニック(Pluronic)もしくはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害のタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンのようなアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類もしくは糖アルコール類を包含する。エアゾルは一般に等張溶液から製造される。
経皮貼付物は身体にPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)の制御された送達を提供するという付加された利点を有する。こうした投薬形態は、作用物質を適正な媒体に溶解もしくは分散させることにより作成され得る。吸収促進剤もまた、皮膚を横断するペプチド模倣物の流れを増大させるのに使用され得る。こうした流れの速度は、速度を制御する膜を提供すること、またはペプチド模倣物をポリマーマトリックスもしくはゲル中で分散させることのいずれかにより制御され得る。
眼の処方、眼軟膏、粉末、溶液などもまた本発明の範囲内にあるとして意図される。
非経口投与に適する本発明の製薬学的組成物は、1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容できる滅菌の等張の水性もしくは非水性の溶液、分散剤、懸濁液もしくは乳液、または、使用直前に滅菌の注入可能な溶液もしくは分散剤に再構築されうる滅菌の粉末と共同して1種もしくはそれ以上のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)を含んで成り、これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、当該処方を意図された受領者の血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは濃厚化剤を含有してよい。
本発明の製薬学的組成物で使用されてよい適する水性および非水性担体の例は、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのような)およびそれらの適する混合物、オリーブ油のような植物性油、ならびにエチルオレエートのような注入可能な有機エステルを包含する。適正な流動性は、例えば、レシチンのような被覆物質の使用、分散剤の場合は必要とされる粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持され得る。
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散助剤のような補助物質もまた含有してよい。微生物の活動の予防が、多様な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含により確実にされてよい。糖類、塩化ナトリウムなどのような等張剤を当該組成物に包含することもまた望ましいことができる。加えて、注入可能な製薬学的形態の延長された吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の包含によりもたらされてよい。
いくつかの場合で、薬物の効果を延長するために、皮下もしくは筋肉内注入からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、乏しい水溶性を有する結晶もしくは無定形の物質の液体の懸濁液の使用により成し遂げられてよい。薬物の吸収速度は、その場合、その溶解速度に依存し、溶解速度は順に結晶の大きさおよび結晶形に依存しうる。あるいは、非経口で投与された薬物形態の遅延された吸収は、薬物を油性ベヒクル中に溶解もしくは懸濁することにより成し遂げられる。
注入可能なデポー製剤の形態は、PPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)の微小被包マトリックスを、ポリアクチドポリグリコリドのような生物分解性ポリマー中で形成することにより作成される。ポリマーに対する薬物の比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度が制御され得る。他の生物分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を包含する。デポー製剤の注入可能な処方は、薬物を、身体組織と適合性であるリポソームもしくはミクロエマルション中に捕捉することによってもまた製造される。
本発明のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)が医薬としてヒトおよび動物に投与される場合、それらは、それ自体で、もしくは、製薬学的に許容できる担体と協同して例えば0.1ないし99.5%(より好ましくは0.5ないし90%)の有効成分を含有する製薬学的組成物として与えられ得る。
作用物質の製剤は、経口で、非経口で、局所で、もしくは直腸で与えられてよい。それらはもちろん、各投与経路に適する形態により与えられる。例えば、それらは、錠剤もしくはカプセル剤の形態で、注入、吸入、眼ローション、軟膏、坐剤などにより、注射(injection)、注入(infusion)もしくは吸入による;ローションもしくは軟膏による局所;および坐剤による直腸投与で投与される。経口投与が好ましい。
本明細書で使用されるところの「非経口投与」および「非経口で投与される」という句は、通常は注入による腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、そして、制限なしに、静脈内、筋肉内、動脈内、硬膜下腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内および胸骨下の注射(injection)および注入(infusion)を包含する。
本明細書で使用されるところの、「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」および「末梢に投与される」という句は、それが患者の組織(system)に進入しそして従って代謝および他の類似の処理を受けるような中枢神経系に直接に以外のPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)、薬物または他の物質の投与、例えば皮下投与を意味する。
これらのPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)は、経口で、例えばスプレーによるような鼻で、直腸で、膣内に、非経口で、槽内に、ならびに、口腔でおよび舌下でを包含する粉末、軟膏もしくはドロップによるような局所でを包含するいずれかの適する投与経路により治療のためヒトおよび他の動物に投与されてよい。
選択された投与経路に関係なく、適する水和された形態で使用されてよいPPARγおよび/もしくはRXRアゴニスト(1種もしくは複数)、ならびに/または本発明の製薬学的組成物は、当業者に既知の慣習的方法により製薬学的に許容できる投薬形態に処方される。
本発明の製薬学的組成物中の有効成分の実際の投薬量レベルは、患者に対し毒性であることなく特定の患者、組成物および投与様式に所望の治療応答を達成するのに有効である有効成分の量を得るように変動されてよい。
III.診断的用途
なお別の局面において、PPARγのRNAおよび/もしくはタンパク質の発現の検出が、過形成性および新生物の細胞の障害を検出および/もしくは表現型分類する(phenotype)のに有用な診断方法を提供し得る。例えば、付属として付けられる実施例で記述されるように、PPARγは、平滑筋肉腫、線維肉腫、血管肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNS)もしくは悪性線維性組織球腫(MFH)のような他の形態の軟組織肉腫で見出される検出できないレベルの発現と対照的に、脂肪肉腫で選択的に発現されることが見出される(図10Bを参照)。従って、PPARγは、他の組織学的型の軟組織肉腫と脂肪細胞腫瘍を区別するためのマーカーであるようである。
さらになお別の局面においては、PPARγのRNAおよび/もしくはタンパク質の発現の検出が、乳癌細胞の障害を検出および/もしくは表現型分類するのに有用な診断方法を提供し得る。例えば、付属として付けられる実施例で記述されるように、PPARγは、多くのヒト乳房腺癌ならびに進行性転移性乳房腫瘍のかなりの部分で有意のレベルで発現されることが見出される。加えて、MAPキナーゼの阻害は比較的非応答性の細胞のTZDリガンド感受性を向上させ、この酵素が乳癌細胞でPPARγの機能を妨害し得ることを示唆する。
特異的なPPARγのRNAもしくはタンパク質の量は、適することが当業者に既知のいずれかの方法を使用して測定されてよい。例えば、RNAの発現は、ノーザンブロットもしくはRNAを基礎とするポリメラーゼ連鎖反応を使用して検出されてよい。特異的タンパク質産物はウェスタンブロットにより検出されてよい。好ましくは、検出技術は定量的もしくは少なくとも半定量的であることができる。
一態様において、mRNAを細胞のサンプルから得、そしてPPARγレセプターをコードする転写物を検出する。具体的に説明するため、生検サンプルの分散から得られることができるような最初の粗細胞懸濁物を、超音波処理するかもしくは別の方法で処理して、粗細胞抽出物が得られるように細胞膜を破裂させる。生化学の既知の技術(例えば、タンパク質の優先的沈殿)を、所望の場合は最初の精製に使用し得る。粗細胞抽出物、もしくはそれから部分的に精製されたRNA部分をその後処理してRNAをさらに分離する。例えば、粗細胞抽出物を、1インチ×31/2インチのニトロセルロースチューブ中で、5.7M塩化セシウム、10mMトリス−塩酸、pH7.5、1mMEDTAの5mlの緩衝材(cushion)の上面に層状にし得、そしてSW27ローター(ベックマン インスツルメンツ コーポレーション(Beckman Instruments Corp.)、カリフォルニア州フラートン)中で27,000rpmで15℃で16時間遠心分離し得る。遠心分離後、チューブ内容物をデカンテーションし、チューブから液体を排出し、そして澄明なRNAペレットを含有する底部0.5cmを剃刀の刃で切り離す。ペレットをフラスコに移し、そして20mlの10mMトリス−塩酸、pH7.5、1mMEDTA、5%サルコシルおよび5%フェノールに溶解する。この溶液をその後、塩化ナトリウムを0.1Mにし、そして40mlの1:1のフェノール:クロロホルム混合物とともに振とうする。RNAを、0.2M酢酸ナトリウムpH5.5の存在下にエタノールで水相から沈殿させ、そして遠心分離により収集する。細胞起源からRNAを単離するいずれかの他の方法をこの方法の代わりに使用してよい。コムチンスキ(Chomczynski)法(米国特許第4,843,155号に記述される)のような他のmRNA単離プロトコルが公知である。
mRNAは、mRNAの分解を除外する条件下で供給源細胞から単離しなくてはならない。RNアーゼ酵素の作用はとりわけ避けられるべきである。なぜならこれらの酵素はRNAのヌクレオチド配列の加水分解切断が可能であるからである。細胞からの抽出の間にRNアーゼを阻害するのに適する方法は、細胞破裂段階の間の4Mチオシアン酸グアニジウムおよび1Mメルカプトエタノールの使用を必要とする。加えて、低温および5.0付近のpHが、単離されたRNAのRNアーゼ分解をさらに抑制するのに役立つ。
ある態様においては、次段階は、mRNAの単離された不均質な配列に相補的なDNAを形成することであってよい。この反応のため選ぶべき酵素は逆転写酵素であるが、とは言え、原則として、mRNA鋳型の忠実な相補DNAのコピーを形成することが可能ないかなる酵素も使用し得る。逆転写酵素の反応により生じられるcDNA転写物は、個々の転写物の開始および終止点での変動によりmRNAの鋳型に関して5’端および3’端の配列に関していくぶん不均質である。5’端の変異性は、合成を開始するのに使用されるオリゴ−dTプライマーがmRNAのポリアデニル酸化領域に沿った多様な遺伝子座で結合することが可能であるという事実によることが考えられる。cDNA転写物の合成はポリA領域の中間点で開始し、そして、多様な長さのポリA領域がオリゴ−dTプライマーの最初の結合部位に依存して転写される。それにより転写反応を開始するための好ましいかつ定義された結合部位を有することができるプライマーを生じさせる、オリゴ−dT領域(tract)に加えてRNA配列それ自身の1もしくは2ヌクレオチドを含有するプライマーの使用により、この不確定性を回避することが可能である。
例示的一態様において、PPARγ転写物のセンスもしくはアンチセンス配列にハイブリダイゼーションすることが可能であるヌクレオチド配列の一領域を包含する(精製された)オリゴヌクレオチドプローブを含む核酸組成物が提供される。細胞の核酸がハイブリダイゼーションのため接近可能にされ、プローブがサンプルの核酸に曝露され、そしてサンプルの核酸へのプローブのハイブリダイゼーションが検出される。こうした技術はmRNA転写物のレベルを定量的に測定するのに使用され得る。
ある態様において、PPARγ転写物の検出は、アンカーPCRもしくはRACE PCRのようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195および4,683,202号を参照)、または、連結連鎖反応(LCR)(例えば、ランデグラン(Landegran)ら(1988)Science 241:1077-1080;およびナカザワ(Nakazawa)ら(1994)PNAS 91:360-364を参照)のプローブ/プライマーを利用する。具体的に説明する一態様において、当該方法は、(i)患者から細胞のサンプルを収集すること、(ii)核酸(例えばmRNA)をサンプルの細胞から単離すること、(iii)核酸サンプル(もしくは場合によってはそれ由来のcDNA調製物)を、転写物(存在する場合)の少なくとも一部分のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下でPPARγ転写物に特異的にハイブリダイゼーションする1種もしくはそれ以上のプライマーと接触させること、そして(iv)増幅産物の存在もしくは非存在を検出すること、の段階を包含する。
検出および/もしくは増幅は、例えばストリンジェント条件下でPPARγ転写物をコードする核酸にハイブリダイゼーションするプローブを用いて実施され得る。検出のためには、このプローブは、好ましくは、核酸に結合されかつ検出されることが可能な標識基をさらに含んで成る。
なお別の態様においては、当該アッセイが、例えば、イムノアッセイ、ゲル電気泳動などによるCDK阻害タンパク質の濃度を測定することにより、細胞サンプルの細胞中のPPARγタンパク質の存在もしくは非存在を検出する。
IV.薬物スクリーニング
別の局面では、本発明はPPARγ応答性の過剰増殖性細胞の増殖を阻害する抗新生物形成性作用物質、例えば上述された方法で使用され得る作用物質の同定方法を特色とする。以下の薬物スクリーニングアッセイのいずれかにおいて、PPARγの選択的結合/活性化が、分化スクリーニング、例えば、PPARγが例えばPPARα、PPARδ、RxRレセプターなどにより置き換えられることを除き同一である近接(side-by-side)アッセイにより試験化合物を試験する(run)ことにより評価され得ることが真価をみとめられることができる。こうしたアッセイは、レセプターのPPARγ亜型に選択的である化合物を選択するのに使用され得る。
一態様において、当該アッセイは、(i)PPARγ応答性の過剰増殖性細胞の培養物を樹立すること;(ii)形質転換された細胞を試験化合物と接触させること;そして(iii)増殖および/もしくは分化の一を検出すること、の段階を包含し、ここで、化合物は、試験化合物の存在下で増殖の程度(もしくは分化された表現型の外観)の統計学的に有意の減少を観察することにより選択される。例えば、試験細胞の増殖の変化は、処理されない対照に比較して、潜在的PPARγアゴニストで処理された培養物中のブロモデオキシウリジン(BrdU)で標識された細胞の数を比較することによりアッセイされ得る。例えば脂肪細胞分化の程度は、例えば、細胞の形態の変化、細胞内脂質の蓄積、脂肪細胞特異的遺伝子、例えばaP2およびアジプシンの誘導、ならびに/もしくは細胞周期からの離脱の最低1種を検出することにより決定され得る。
細胞を基礎とするアッセイで化合物を試験するのに先立ち、例えば精製されたもしくは半精製されたPPARγタンパク質を使用する単純な結合アッセイが、レセプターに少なくとも結合する試験化合物を単離するのに使用され得る。例えば、競争結合アッセイが実施されてよく、これは、未標識の試験化合物の非存在もしくは存在下で、標識されたリガンド、例えば[3H]−TZDとともにPPARγレセプタータンパク質をインキュベーションすること;そして標識されたリガンドと特異的に競争する(compete off)化合物を同定することを含んで成り、ここで、置き換えられたリガンドの量の統計学的に有意の差異は、その試験化合物がPPARγに特異的に結合することを示す(レーマン(Lehmann)ら(1995)J. Biol. Chem. 270:12953-56を参照)。甲状腺ホルモンレセプターへのリガンド結合を分析するのに普遍的に使用されるようなスキャッチャード分析が、リガンド結合の程度を決定するのに使用されてよい(アレンビー(Allenby)ら(1993)PNAS USA、90:30-4;バナー(Banner)ら、Annal. Biochem. 200:163-70)。細胞を基礎とするアッセイは、その場合、作動的、拮抗的および偶然の結合の間を識別するための機能的アッセイを提供する。
本発明のさらにさらなる一態様に従えば、(i)PPARγを発現しかつPPARγ依存性の様式で発現されるレポーター遺伝子を有するレポーター遺伝子構築物を包含する試薬細胞の培養物を樹立すること:(ii)試薬細胞を試験化合物と接触させること;そして(iii)レポーター遺伝子の発現の量をモニターすること、を含んで成る、PPARγシグナル伝達(signaling)経路の活性化を検出することにより試験化合物がPPARγリガンドであるかどうかを評価する方法が提供される。レポーター遺伝子の発現は、PPARγタンパク質の転写活性、および従って活性化されたレセプターPPARγ−リガンド複合体の存在を反映する。任意のさらに好ましい一態様においては、転写活性化アッセイにより検出される見かけのPPARγアゴニストが、その後、その作用物質をPPARγ応答性の過剰増殖性細胞と接触させることによりさらに試験され得る。
典型的には、レポーター遺伝子構築物は、例えば当該技術分野で既知のPPARγ応答要素(PPRE)のような、PPARγに応答性の1種もしくはそれ以上の転写調節要素との影響を及ぼす連結にあるレポーター遺伝子を包含することができる。レポーター遺伝子からの転写の量は、適することが当業者に既知のいずれかの方法を使用して測定されてよい。例えば、特異的mRNA発現がノーザンブロットを使用して検出されてよいか、もしくは、特異的タンパク質産物が特徴的染色、イムノアッセイもしくは固有の活性により同定されてよい。
好ましい態様においては、レポーターの遺伝子産物はその産物に関連した固有の活性により検出される。例えば、レポーター遺伝子は、酵素活性により色、蛍光もしくはルミネセンスを基礎とする検出シグナルを生じさせる遺伝子産物をコードしてよい。レポーター遺伝子からの発現量を、その後、試験化合物の非存在下での同一の細胞での発現量と比較するか、もしくは、それを、特異的レセプターを欠く本質的に同一の細胞での転写量と比較してよいかのいずれかである。転写量のいずれかの統計学的にもしくは別の方法での有意の差異は、その試験化合物が何らかの様式で特異的レセプターの活性を変えたことを示す。
あるいは、内因性レセプターからの妨害を伴わないPPARγ活性についてのアッセイを確立するために、酵母のGAL4 DNA結合ドメイン、もしくは細菌のLexA DNA結合ドメインのような異種タンパク質のDNA結合タンパク質に融合されたPPARγのリガンド結合ドメインを有するキメラタンパク質を発現する細胞が構築され得る。こうした構築物が、レポーター遺伝子に操作可能に連結されたGAL4もしくはLEX4の応答要素を含有するレポーター構築物とともに使用される。
ある試験化合物を潜在的PPARγアゴニストと同定した後に、主題のアッセイの実施者は、インビトロおよびインビボ双方で、選択された化合物の有効性および特異性を試験することを継続することができる。その後のインビボの試験のためであれ承認された薬物としての動物への投与のためであれ、主題のアッセイで同定された作用物質は、動物、好ましくはヒトへのインビボ投与のために、上述されたような製薬学的調製物に処方され得る。
本発明は今や一般的に記述されたため、それは、単に本発明のある局面および態様の具体的な説明の目的上包含されかつ本発明を制限することを意図されない以下の実施例の参照により一層容易に理解されることができる。本出願を通じて引用される全ての参考文献、特許出願、特許および公開された特許出願の内容はこれにより引用により組み込まれる。
実例
実施例1
PPARγは細胞周期離脱を誘導する
(i)実験手順
細胞培養、トランスフェクションおよびプラスミド
PPARγ2、PPARγ1、PPARγ−M2、PPARγ−M1のウイルス発現ベクター(トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)上記;トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)Cell 79:1147-56)および3xwt−E2F−ルシフェラーゼ(クレック(Krek, W.)ら(1993)Science 262:1557-60)構築物の調製は既に記述された。PPARγ2−CDのcDNA(アミノ酸1〜494をコードする)を、PCRによりPPARγ2のcDNAから増幅し、そしてpBabe−Puroレトロウイルス発現ベクターに挿入した。
野生型もしくは突然変異体の形態のPPARγを発現する安定細胞系を記述されたように(トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)Cell 79:1147-56)生じさせた。BOSC23細胞を90mm皿で培養し、そして、記述されたように(ピア(Pear, W.S.)ら(1993)PNAS USA 90:8392-6)10μgのpBabe由来の発現ベクターを用いるリン酸カルシウム沈殿法により80%集密でトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後にウイルスの上清を収集し、そして、NIH−3T3細胞を50%集密で等しい力価の組換えウイルスに感染させた。上清を、10%普遍的(cosmic)仔ウシ血清(ハイクローン(Hyclone))および4μg/mlのポリブレンを含有するDMEM中の細胞に適用した。感染24時間後に細胞を分割し、そして10%仔ウシ血清および2μg/mlのピューロマイシンを含有するDMEM中でプレート培養して、感染した細胞を選択した。空ベクター、または野生型もしくは突然変異体の形態のPPARγのcDNAを含有するウイルス発現ベクターに感染したNIH−3T3細胞系、ならびに、HIB1Bおよび3T3−F442A細胞系を、10%普遍的仔ウシ血清を含有するDEME中で培養した。ピオグリタゾン(5−[4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)−エトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン)(アップジョン(Uphohn))をDMSOに溶解し、そして細胞培養実験で使用した。
RNAおよびタンパク質の分析
全RNAをイソチオシアン酸グアニジン抽出(シャーグウィン(Chirgwin, J.M.)ら(1979)Biochemistry 18:5294-9)により培養された細胞から単離した。ホルムアミドおよびホルムアルデヒド中で変性されたRNAを、記述されたように(マニアティス(Maniatis, T.)ら(1989)コールドスプリングハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)ホルムアルデヒド含有アガロースゲルを通して電気泳動した。ウェスタンブロット分析のため、細胞抽出物を記述されたように(マニアティス(Maniatis, T.)ら(1989)コールドスプリングハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)調製し、ブロッティングし、そして適切な抗体(アップステイト バイオテック インク(Upstate Biotech. Inc.))でプロービングした。
BrdU取り込み実験
BrdU取り込み実験を、供給元(ベーリンガー マンハイム バイオケミカル(Boehringer Mannheim Biochemical))により提供されるプロトコルに記述されたように実施した。簡潔には、カバーガラス上で成長された細胞を10μMのBrdUで1時間標識した。サンプルを洗浄し、そしてエタノール−グリシン緩衝液で固定しかつ抗BrdUモノクローナル抗体とともにインキュベーションした。抗マウスIg−アルカリホスファターゼとのインキュベーション、次いで基質反応の後に、結合された抗BrdU抗体を光学顕微鏡検査(light microscopy)により可視化した。
(ii)PPARγの活性化は細胞周期離脱につながる
細胞成長に対するPPARγ活性化の影響を研究するため、われわれはレトロウイルストランスフェクション系を使用してNIH−3T3細胞中でPPARγを発現させた。この系は、われわれが数千の細胞中で比較的等しいレベルで異所遺伝子を発現することを可能にする。PPARγは2種のアイソフォーム、PPARγ1およびPPARγ2を有し、これらは代替スプライシングにより形成される異なるN末端を有する(トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)上記;チュー(Zhu, Y.)ら(1993)J. Biol. Chem. 268:26817-20)。NIH−3T3線維芽細胞を、PPARγ1もしくは2をコードするcDNAを含有するレトロウイルス発現ベクター(NIH−PPARγ)、または空ベクター(NIH−ベクター)に感染させて安定細胞系を創製した。NIH−PPARγ細胞は、ノーザン分析により測定されたように、分化された脂肪細胞で観察された内因性のPPARγのレベルのおよそ1/3を発現した(データは示されない)。
指数的に成長するNIH−PPARγおよびNIH−ベクター細胞を、チアゾリジンジオン抗糖尿病薬の分類に属する合成PPARγリガンド、ピオグリタゾン(レーマン(Lehmann, J.M.)ら(1995)J. Biol. Chem. 270:12953-6)で処理した。ピューロマイシンでの選択後に細胞を溜め、そしてピオグリタゾン(5μM)とともにもしくは伴わずに5日間培養した。図1に示されるように、5μM濃度のピオグリタゾンでの処理は、空ベクターを含有する細胞に対する明らかな影響を有しなかった。対照的に、この作用物質は、NIH−PPARγ細胞に対し劇的な影響を有し、細胞増殖を阻害しかつ激烈な形態の変化を誘導した。処理後およそ48時間後に開始して、増大する数のNIH−PPARγ細胞が、細長い線維芽細胞の形状から、円形の形態および細胞質内の脂質の小滴の蓄積を伴う脂肪細胞様の形態に変化した(図1、矢印)。
ピオグリタゾン処理後の多様な時間点での時間経過の研究は、リガンド処理されたプレートのNIH−PPARγ細胞の数が、処理後2日までに対照に関してほぼ40%、およびピオグリタゾンとともに5日後に80%減少したことを示した(図2A、B)。同一の数のNIH−PPARγ、NIH−ベクターもしくはHIB1B細胞を、PPARγリガンドの存在(+)もしくは非存在(−)下のいずれかで培養した。細胞数を、示された時間点で測定した。細胞成長に対するリガンドの影響を、処理されない対照プレートに関する処理されたプレートの細胞数の減少パーセントとして表わす。ピオグリタゾン処理されたNIH−ベクター細胞の成長は、処理されない対照細胞に比較してこの期間にわたり10%減少した。これは、これらの細胞での少量のPPARγの存在によるかも知れない(データは示されない)。PPARγの別の合成チアゾリジンジオンリガンド、1μMのBRL49653(レーマン(Lehmann, J.M.)ら(1995)上記)の添加は、NIH−PPARγ細胞の細胞成長に対する同一程度の阻害を発揮することが見出された(図2C)。明らかな細胞傷害性の影響は、われわれがこれらの化合物を使用した濃度で観察されなかった。
PPARγを発現する細胞のピオグリタゾン処理が特定の細胞周期段階により発達に影響するかどうかを分析するため、われわれは蛍光活性化細胞選別(FACS)分析およびBrdU取り込み実験を実施した。リガンド処理は、細胞周期のG0/G1期の細胞集団の蓄積につながった(データは示されない)。5日のピオグリタゾン処理後にDNA合成を経験する細胞のパーセントを、細胞のBrdUを取り込む能力により測定した。表1に示されるように、リガンド処理はNIH−ベクター細胞でのBrdU取り込み率を変化させなかったが、しかしそれは5日の処理後にNIH−PPARγおよび3T3−F442A前脂肪細胞でのBrdU取り込み率の80%低下を引き起こした。一緒のこれらの結果は、PPARγのリガンド活性化が迅速に増殖する細胞においてさえ細胞周期離脱を引き起こすのに十分であることを立証する。とくに、カバーガラス上で培養された細胞が処理されなかったかもしくは5日間5μMピオグリタゾンで処理され、そしてその後BrdUを1時間間歇的に投与されたことが表1で示される。カバーガラスを固定し、そして材料および方法で記述されたように処理した。BrdUへの曝露の間にDNA合成を経験する細胞を免疫組織化学染色により決定し、そしてBrdU陽性と考えた。このデータは、およそ400個の細胞をサンプルあたりで計数した2回の独立の実験の平均を表わす。
表1:正常NIH−PPARγ細胞、F442A前脂肪細胞および形質転換されたHIB1B細胞での細胞周期離脱の発生におけるPPARγの活性化の影響を示す。
(iii)転写因子活性がPPARγ仲介性の細胞周期離脱に必要とされる
成長停止に必要なPPARγの構造的要件のいくつかを決定するため、NIH−3T3細胞を、野生型もしくは多様な突然変異体の形態のPPARγのcDNAを含有するレトロウイルス発現ベクターに感染させた。指数的に成長する細胞を5日間ピオグリタゾンで処理し、そして細胞数を測定した。図3に示されるように、PPARγ1およびPPARγ2双方のリガンド活性化は類似の成長停止を誘導した。われわれは、PPARγ2のN末端の127アミノ酸を欠くPPARγの対立遺伝子(PPARγ−M1)もまた検査した。以前の研究は、この対立遺伝子が脂肪形成の誘導に関して野生型よりも活性であることを示している(トントノス(Tontonoz, P.)とシュピーゲルマン(Spiegelman, B.M.)(1994)Cell 79:1147-56)。PPARγ−M1を含有するNIH−3T3細胞(NIH−M1)での成長阻害は、野生型のPPARγ1もしくはPPARγ2を異所性に発現する細胞より高くさえあった。PPARγのDNA結合および転写活性化ドメインが細胞成長に対するその影響に必要とされるかどうかを検討するため、NIH−3T3細胞を2種の突然変異体の形態のPPARγ、すなわち、DNA結合ドメイン中に2個の点突然変異を含有するPPARγ−M2、および全部の核レセプターのC末端領域に配置される活性化ドメイン(AF−2)を欠くC末端を欠失されたPPARγ−CD(マンゲルスドルフ(Mangelsdorf)とエヴァンス(Evans)、1995により概説される)に感染させた。NIH−M2細胞は、位置156および159でDNA結合ドメインのシステイン残基がセリンに変化されているPPARγ2レセプターを発現し;NIH−CD細胞は、保存されたC末端トランス活性化ドメインを欠く短くされた形態のPPARγ2を発現する。かように、ピオグリタゾン処理は、NIH−M2およびNIH−CD細胞の細胞成長および脂肪形成に何らかの影響を有しなかった。ピオグリタゾンでの処理は、NIH−ベクター細胞での細胞成長の約10%の減少を引き起こした。細胞数を、5μMのピオグリタゾンなしでもしくはこれでの5日の処理後に測定した。処理されたプレートでの細胞数の減少を、処理されない対照プレートに対する相対的変化として表わした。このデータは最低3回の独立した実験の平均を表わす。これらの結果は、PPARγ1および2双方が細胞周期離脱を刺激し得ることを立証する。これらのデータは、DNA結合タンパク質および転写因子としてのPPARγの活性が細胞成長に対するその影響に必要とされることもまた示唆する。
(iv)PPARγのリガンド活性化は形質転換された細胞での成長停止を誘導する
われわれは、PPARγの活性化がPPARγを異所性に発現する正常線維芽細胞の細胞周期離脱につながることを示した。PPARγの活性化が形質転換された細胞に対し同一の影響を有するかどうかを試験するため、われわれはモデル系としてSV40ラージT抗原(SV40LT)で形質転換されたHIB1B細胞を使用した。大量のPPARγ1を発現するHIB1B細胞を、脂肪細胞特異的なaP2プロモーターの制御下にSV40LTを構成的に発現するトランスジェニックマウスの褐色脂肪腫瘍から樹立した(ロス(Ross, S.R.)ら(1992)PNAS USA 89:7561-5)。指数的に成長するHIB1B細胞をピオグリタゾンで処理し、細胞数を測定し、そして、BrdU取り込み実験を実施して細胞周期の進行に対するPPARγ活性化の影響を評価した。図2A、2Cおよび図3に示されるように、ピオグリタゾンもしくはBRL49653によるPPARγの活性化はこれらの細胞の成長を強く抑制した。新たに合成されたDNAへのBrdU取り込みもまた、ピオグリタゾンでの5日の処理後に85%減少した(表1)。これらの結果は、PPARγの活性化がSV40LTに駆動される(driven)形質転換を克服し得、そして、HIB1B細胞での細胞周期離脱を引き起こし得ることを示す。
実施例2
PPARγおよびRXR特異的リガンドにより誘導されるヒト脂肪肉腫細胞の終末分化
(i)実験手順
組織サンプルおよび細胞遺伝学
正常ヒト組織、脂肪肉腫および他の軟組織肉腫を、ボストンのブリガム アンド ウイメンズ病院(Brigham and Women’s Hospital)での手術症例から得た。全組織サンプルは切除されたサンプルの均一かつ生存可能な部分から病理学者により採取され、そして摘出10分以内に凍結した。各軟組織肉腫のヘマトキシリンおよびエオシン染色された切片が単一の病理学者(C.F.)により再検査され、そして組織学的型、段階(grade)、分裂活性および外科的縁に従って分類した。組織学的分類は、慣習的診断基準(エンツィンガー(Enzinger)95、フレッチャー(Fletcher)CDM 95 1043-1096)を使用する形態学的パターン認識を単に基礎とした。分裂活性の計数を0.120mm2の高倍率視野の大きさで実施し、そして腫瘍の大部分の細胞領域からの最低50の高倍率視野を計数した。細胞遺伝学的分析のため、腫瘍をコラゲナーゼで解離させ(disaggregated)、そしてT25フラスコ中での3〜7日の培養後に収穫した(フレッチャー(Fletcher)ら、1990、Cancer Res)。分裂中期の細胞の収穫およびスライド作成の方法は既に記述された(CR)。分裂中期細胞を、トリプシン−ギムザ(シーブライト(Seabright)(1971)Lancet)およびキナクリンマスタード結合(フレッチャー(Fletcher)(1991)Am J Path)により分析した。
ノーザン分析
全RNAを、イソチオシアン酸グアニジウム抽出および塩化セシウム遠心分離(シャーグウィン(Chirgwin, J.M.)ら(1979)Biochemistry 18:5294-5299)により腫瘍および正常ヒト組織から調製した。RNAをホルムアルデヒド−アガロースゲルを通して電気泳動し、バイオトランス(BioTrans)ナイロンメンブレン(ICN)にブロッティングし、そして製造元により指図されたようにハイブリダイゼーションさせた。cDNAプローブは、最低109cpm/μgの非活性までランダムプライミング法により[α−32P]−dCTPで標識した。
細胞培養
一次脂肪肉腫細胞を、既に(フレッチャー(Fletcher, J.A.)ら(1991)NEJM 324:436-443)およびその中の参考文献に記述されたように、選択された新たに収穫された腫瘍から単離した。一次細胞を最低細胞2×105個/mlの密度でプレート培養し、そして、60mm皿中、15%普遍的仔ウシ血清(ハイクローン(Hyclone))および5μg/mlインスリンを含有するRPMI中で培養した。ピオグリタゾン(アップジョン(Upjohn))、トログリタゾン(ワーナー・ランバート(Warner-Lambert))、BRL49653(BIOMOL)およびLG268(リガンド ファーマシューティカルズ(Ligand Pharmaceuticals))をDMSOに溶解し、そして5μl未満の体積で細胞に適用した。NIH−PPARγおよびNIH−ベクター細胞は、記述されたように(トントノス(Tontonoz, P.)ら、(1994)上記)レトロウイルス感染により生じさせた。分化された細胞を中性脂肪についてオイルレッド−Oで染色した(グリーン(Green, H.)とケヒンデ(Kehinde, O.)(1974)Cell 1:113-116)。BrdU標識を、製造元の説明書に従って標識キット(ベーリンガー マンハイム(Boehringer Mannheim))を使用して実施した。
トランスフェクションアッセイ
GAL4−PPARγ発現ベクターをPPARγにより構築した。CV−1細胞を、10%樹脂−炭ストリップ(resin-chacoal-stripped)仔ウシ血清を含有するDMEM中で培養した。トランスフェクションを、製造元の説明書に従ったDOTAP(ベーリンガー マンハイム(Boehringer Mannheim))を使用するリポフェクション法により、10%樹脂−炭ストリップウシ胎児血清を含有するフェノールレッドを含まないDMEM中で実施した。2時間後にリポソームを除去し、そして細胞を、示されたようにチアゾリジンジオンの存在もしくは非存在下で追加の40時間培養した。ルシフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼアッセイを既に記述されたように(フォーマン(Forman, B.M.)ら、(1995)Cell 83:803-812)実施した。
(ii)ヒト組織中でのPPARγのmRNAの分布
PPARγはマウスおよびラットの脂肪組織中で高レベルで発現される(トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)Nucleic Acids Res. 22:5628-5634;ブラッサン(Braissant, O.)ら、(1996)上記)。ヒトでのこのレセプターの組織分布を決定するため、われわれは、多様なヒト組織から調製されたRNAのノーザン分析を実施した。図4に示されるように、ヒトPPARγは脂肪組織で最高レベルで、また、肺および腎を包含するいくつかの他の組織でずっとより低いレベルで発現される。他の組織サンプルのいずれかもまた脂肪細胞を含有したかどうかを決定するため、このブロットを、脂肪細胞特異的結合タンパク質aP2のcDNAともまたハイブリダイゼーションさせた。心および筋のサンプルは有意の量のaP2のmRNAを含有することがみられ得、これらの組織での少なくとも若干の低レベルのPPARγ発現が少数の脂肪細胞の存在から生じることを示唆する。
(iii)ヒト脂肪肉腫でのPPARγの発現
腫瘍形成は、分化された表現型の開始および維持の原因である遺伝子の不活性化もしくはダウンレギュレーションを頻繁に伴う。PPARγが脂肪細胞の分化過程で中心的役割を演じるようであるため、われわれは、一連のヒト脂肪肉腫でのPPARγの発現を検査した。この系列は、脂肪肉腫の3種の主要な組織学的亜型、すなわち、十分な分化/脱分化、粘液様/円形細胞、および多形態性のそれぞれから調製されたRNAを包含した。各腫瘍の組織学的および細胞遺伝学的特徴を表2に与える。ほとんどの部分について、十分分化された/脱分化された腫瘍は環状染色体および巨大マーカー染色体を表わし、粘液様/円形細胞の脂肪肉腫は特徴的なt(12;16)(Q13p11)転座を表わし、そして多形態性の形態は複雑な転位を表わした。驚くべきことに、分化におけるそれらの封鎖にもかかわらず、検査された各脂肪肉腫は正常な脂肪のものに匹敵するレベルのPPARγのRNAを発現することが見出された(図5A)。これらの結果は、全部でない場合は大部分の脂肪肉腫がPPARγ発現の誘導後の分化過程の一点で形質転換されたことを示唆する。対照的に、PPARγのRNAは、平滑筋肉腫、線維肉腫、血管肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNS)、もしくは悪性線維性組織球腫(MFH)を包含する、検査されたいずれの他の型の軟組織肉腫でも有意のレベルで発現されなかった(図5B)。かように、PPARγは、脂肪肉腫を他の組織学的型の軟組織肉腫と区別するための感受性のマーカーであるようである。
表2:それらの組織学、細胞遺伝学的特徴、分裂指数、および一次細胞培養物を基礎とした多様な脂肪肉腫腫瘍の分類
(iv)PPARγおよびRXR特異的リガンドにより誘導されるヒト脂肪肉腫細胞の分化
一過性トランスフェクション実験を実施してヒトPPARγの活性化のプロフィールを特徴づけした。トランスフェクションされた細胞中の内因性レセプターからの妨害を排除するため、異種応答要素により転写を活性化し得たキメラhPPARγレセプターを利用した(フォーマン(Forman, B.M.)ら、(1995)上記)。hPPARγのリガンド結合ドメインに連結された酵母のGAL4 DNA結合ドメインを含有する融合タンパク質発現ベクターを構築した。この構築物を、その後、GAL4上流活性化配列を含有するレポータープラスミドとともにCV−1細胞にコトランスフェクションした。チアゾリジンジオン抗糖尿病薬は、最近、マウスのPPARγ相同物のリガンド活性化体と同定されている。図6に示されるように、チアゾリジンジオンBRL49653、トログリタゾンおよびピオグリタゾンはヒトPPARγの効果的な活性化体であり、また、それらの相対的能力はインビボでのインスリン感作剤としてのそれらの能力に対応する(BRL>トログリタゾン>ピオグリタゾン)。
脂肪肉腫は、おそらく、正常な脂肪細胞の発達の経過を妨害する1個もしくはそれ以上の遺伝子欠損を獲得した(クロザ(Crozat, A.)ら、(1993)Nature 363:640-644;フレッチャー(Fletcher, J.A.)ら、(1991)上記)。PPARγがこれらの腫瘍中で一貫して発現されるという観察結果は、悪性細胞は、PPARγ経路を最大に活性化することにより分化プログラムを完了することを余儀なくさせられるかも知れないという可能性を生じさせた。この可能性を取り扱うために、3種のヒト脂肪肉腫から単離された一次細胞をインビトロで培養した(材料および方法を参照)。一次細胞株LS857およびLS175は十分分化された腫瘍由来であり、また、LS707は粘液様腫瘍由来であった(表2を参照)。高段階の(high-grade)多形態性の脂肪肉腫細胞は分化の研究を可能にするのに十分な数に増殖し得なかった。一次平滑筋肉腫細胞系LM203を対照として培養した。これらの培養物が悪性腫瘍由来細胞から成ったことを確認するため、細胞遺伝学的分析を実施した。表2に示されるように、各培養物中の細胞の核型は親脂肪肉腫に特徴的であった。十分分化された脂肪肉腫は、頻繁に環状染色体および巨大マーカー染色体を含有する一方、粘液様脂肪肉腫はt(12:16)転座を特徴とする(フレッチャー(Fletcher, J.A.)ら、(1991)上記)。
ウシ胎児血清およびインスリンの存在下すなわち脂肪細胞の分化を可能にする条件で培養される場合、全3種の細胞系は線維芽細胞の形態を維持する。LS175細胞はこれらの条件下で少量の染色可能な脂質を含有した。培養物を10μMのPPARリガンド、ピオグリタゾンで7日間処理した場合、細胞は容易に脂質を蓄積し、そして成熟した培養された脂質細胞に特徴的な形態をとった(図7)。脂質の蓄積はPPARγを発現しないLM203平滑筋肉腫細胞で観察されなかった(示されない)。形態学的に認識可能な分化の程度はLS857細胞での40%からLS175細胞での75%まで変動した。チアゾリジンジオンとの7日間のインキュベーション後、細胞は、ピオグリタゾンを回収した場合でさえそれらの分化された形態を維持した。この実験は各細胞株を用いて最低2回実施し、量的におよび質的に類似の結果を伴った。分化の誘導は、チアゾリジンジオンBRL49653およびトログリタゾンでもまた観察された一方、影響はBRL49653への不活性合成前駆体、化合物66で観察されなかった。
以前の研究は、PPAR/RXRヘテロダイマーの最大の転写活性は双方のレセプターがそれらのそれぞれのリガンドにより結合される場合に達成されることを示唆している(クリーヴァー(Kliewer, S.A.)ら(1992)Nature 358:771-774;トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)上記)。われわれは、能力のある細胞のPPARγおよびRXR特異的リガンド双方への同時の曝露がPPARγのリガンド単独より強い脂肪形成シグナルを提供するかも知れないと仮定した。RXR特異的リガンドLG268の脂肪細胞分化を促進する能力を、レトロウイルスベクターからPPARγを発現するNIH−3T3線維芽細胞(トントノス(Tontonoz, P.)ら(1994)上記)を使用して検討した。われわれは既に、野生型NIH−3T3細胞がRXRαを発現するがしかしPPARγを発現しないことを示した。表3に示されるように、50nMのLG268での7日間の集密NIH−PPARγ細胞の処理は、1μMのピオグリタゾン単独での7日の処理でみられたものに匹敵する脂肪細胞分化の有意の刺激をもたらした。双方の活性化体への同時の曝露は相加的影響をもたらした。LG268はNIH−ベクター細胞に対し影響を有さず、この化合物の脂肪形成活性が、ピオグリタゾンのものと同様、PPARγの存在に依存することを示す。類似の結果が、PPARγおよびRXRα双方を発現する前脂肪細胞の細胞系3T3−L1および3T3−F442Aで得られた(データは示されない)。ノーザン分析は、ピオグリタゾンおよびLG268が、NIH−PPARγ細胞での脂肪細胞特異的遺伝子aP2およびアジプシンの誘導に対する相加的影響を有したことを確認した(図8)。脂肪細胞の遺伝子発現の誘導は、類似の条件下でNIH−ベクター細胞で観察されなかった。
表3:ピオグリタゾン単独、LG268単独もしくは組み合わせの非存在もしくは存在下で培養された、トランスフェクションされないNIH細胞(NIH−ベクター)もしくはレトロウイルスベクターからPPARγを発現するNIH細胞(NIH−PPARγ)における脂肪細胞分化の変化。脂肪細胞分化の程度を脂質含有細胞のパーセントとして示す。
われわれは、次に、ヒト脂肪肉腫細胞の分化を促進するLG268の能力を検査した。図9に示されるように、50nMのLG268でのLS857細胞の処理は、10μMのピオグリタゾン単独でみられたものに類似の有意の程度の脂肪細胞分化につながった。LS857細胞をLG268およびチアゾリジンジオン(ピオグリタゾンもしくはBRL49653のいずれか)で同時に処理した場合に、分化に対する相加的影響が観察された。脂肪肉腫細胞に対するPPARγおよびRXRリガンドの影響をさらに特徴づけるため、われわれはノーザンブロッティングにより脂肪細胞特異的なマーカーの発現を検査した(図8)。LS857細胞は、それからそれらが得られた腫瘍と同様にPPARγのmRNAを発現する(図5A、腫瘍204SPを参照)。ピオグリタゾンでのLS857細胞の処理は、終末の脂肪細胞分化の2種のマーカー、aP2およびアジプシンをコードするmRNAの誘導につながる(図8)。ピオグリタゾンおよびLG268での同時の処理は脂肪細胞の遺伝子発現の相加的誘導をもたらす。要するに、チアゾリジンジオンおよびRXR特異的レチノイドでのLS857細胞の処理は、終末の脂肪細胞分化と矛盾しない形態の変化および遺伝子発現につながる。
インビトロおよびインビボの白色脂肪細胞の終末分化は細胞周期からの永久離脱を特徴とする。決定的に重要な疑問は、脂肪肉腫細胞のチアゾリジンジオンで誘導される分化が成長停止を伴うかどうかである。この問題を取り扱うために、LS857細胞をピオグリタゾンの存在もしくは非存在下で培養した。形態学的分化の誘導後にピオグリタゾンを回収した。ピオグリタゾンの非存在下での48時間の継続された培養後に、細胞をブロモデオキシウリジン(BrdU)で48時間標識した。標識期間の間にDNA合成を経験する細胞は、固定および酵素結合されたモノクローナル抗体とのインキュベーション後にBrdU取り込みについて陽性に染色するはずである(実験手順を参照)。表4に示される実験では、35%の細胞が可視的な細胞質の脂質を含有した。この培養物の28%の細胞は光顕微鏡検査によりBrdU取り込みについて陽性に染色したが;しかしながら、脂質を含有するそれらの細胞のうち、2%のみがBrdUについて陽性に染色する。分化された培養物をトリプシン処理しかつ再プレート培養した場合、脂質含有細胞は、BrdU標識により測定されるように細胞周期に再び入ることに失敗した(データは示されない)。これらの結果は、LS857細胞のジアゾリジンジオンに誘導される分化が永久の細胞周期離脱につながることを立証する。
表4:ピオグリタゾンの存在もしくは非存在下でのヒト脂肪肉腫細胞(LS857)の一次培養物の成長停止誘導におけるピオグリタゾンの影響。脂肪細胞分化の程度を脂質含有細胞のパーセントとして示す。増殖の程度をBrdUを取り込んだ細胞の数により示す。
実施例3
チアゾリジンジオンの投与はインビボでの脂肪細胞腫瘍の大きさの低減に有効である
(i)実験手順
ヌードマウスの研究
HIB1B細胞(動物あたり細胞2×106個)を24匹の雄性ヌードマウス(7週のNCRw/w)の上背部に皮下に注入した。注入13日後にマウスをトログリタゾン(粉末飼料との0.2%混合物)で処理した。腫瘍体積(mm3で測定される)の発達を、処理されない対照と比較して、トログリタゾン処理後14、19および26日に測定した。各点は、示された時間間隔の間、トログリタゾンで処理されたもしくは処理されない12匹のマウス(最後の点を除く、ここでn=11)からの平均±標準偏差(SD)を表わす。
サンプル数の算出
腫瘍の大きさの変化を評価するため、各動物群について11〜12例からの平均(SD)を検査して、統計学的に有意の差異を検出する85%の見込み(chance)を確実にした(両側検体t検定を仮定する)。
図10および表5により立証されるように、チアゾリジンジオン、トログリタゾンの投与は、ヌードマウスの脂肪腫瘍の大きさの低減で有効である。これらの腫瘍は、SV40ラージT抗原で形質転換されたHIB1B細胞をヌードマウスに移植することにより実験的に誘導した。図10は、処理されないおよび14、19および26日間トログリタゾンで処理された移植されたヌードマウスでの脂肪腫瘍の進展を示す。点A〜CおよびD〜Fはそれぞれ処理されないおよびトログリタゾン処理された動物を表わす。各点は12匹のマウス(最後の点を除く、ここでn=11)からの平均±標準偏差を表わす。腫瘍体積の統計学的に有意の減少が、処理されない対照に比較して、トログリタゾンで処理された移植されたマウスで検出された。表5は、処理されない対照(群1)に比較した処理されたマウス(群2)での腫瘍体積(mm3で測定される)の平均(SD)を要約する。腫瘍体積は14、19および26日の処理後に測定した。体積は各動物群の外れ値点を含みもしくは含まずに示す。26日の処理後の両側2検体t検定による腫瘍体積の比較は、p=0.0019(外れ値を含まない);p=0.037(外れ値を含む)を示す。時のたつにつれての腫瘍の増大を評価するため、反復測定の分散分析を決定した。p=外れ値を含まず0.0014;p=外れ値を含み0.044。
表5 処理されない対照(群1)と比較した、トログリタゾンで処理されたHIB1B細胞を既に移植されたヌードマウス(群2)の腫瘍体積(平均(SD))。
実施例4
PPARγは多様なヒト癌細胞系で発現される
図11は、多様なヒト癌細胞系でのPPARγ亜型の発現を立証するノーザンブロットを表わす。ノーザンブロットは、示されたような多様な細胞系からの全RNAを用いて実施した。RNAの負荷は等しくなく、かつ、比較できない。
実施例5
PPARγアゴニストは白血病細胞の増殖を阻害する
われわれは、HL−60ヒト骨髄性白血病細胞系の増殖および分化に対するPPARγアゴニストの影響を検討した。5日の処理後のHL−60細胞数を示す図12は、PPARγアゴニストが細胞増殖の用量依存性の阻害を引き起こし得ることを立証する。簡潔には、HL−60細胞を細胞5000個/ウェルで24穴プレート中で培養し、そして変動する濃度のLG268およびピオグリタゾンで処理した。5日後にアリコートを取り出し、そしてコールターカウンターを介して細胞数を測定するのに使用した。主題のグラフで提供される値は三重の(triplicate)測定の平均値である。
図13は、PPARγアゴニストが、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)還元により測定されるように骨髄単球経路に沿って形質転換された白血病細胞の分化を誘導し得ることを立証する。簡潔には、指数増殖期のHL−60細胞を細胞5000個/ウェルで24穴プレート中に置き、そして変動する濃度のLG268およびピオグリタゾンで処理した。5日後に、細胞を、NBTアッセイを介して顆粒球/単球分化について評価した。より高レベルのNBTの転化は試験サンプル中のより多い数の分化された細胞に対応する。
実施例6
PPARγアゴニストは前立腺癌細胞の増殖を阻害する
図14は、ヒト前立腺癌細胞系PC3に対するLG268(「化合物268」)およびピオグリタゾン(「pio」)の影響を描くグラフである。簡潔には、PC3細胞を細胞2000個/ウェルで96穴プレートで培養し、そして変動する濃度のLG268およびピオグリタゾンで処理した。5日後に、生存率を、薬物で誘導される阻害の程度を決定するために臭化3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)アッセイにより評価した。MTTアッセイは、代謝的に活性の細胞による臭化テトラゾリウムの切断を基礎とし、定量的な青色を生じる。
実施例7
ヒト乳癌の終末分化:PPARγの発現およびリガンド活性化
(i)実験手順
化学的試薬および細胞系
ピオグリタゾンはアップジョン カンパニー(Upjohn Co.)、ミネソタ州カルマズー、により提供された。トログリタゾンおよびPD147275(M2)はパーク・デービス/ワーナー・ランバート(Parke-Davis/Warner-Lambert)、ミネソタ州アナーバーから得た。15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2およびPD098059はそれぞれケイマン ケミカル(Cayman Chemical)およびニュー イングランド バイオラブス(New England Biolabs)からであった。LG268はリガンド ファーマシューティカルズ(Ligand Pharmaceuticals)、カリフォルニア州ラホヤから得た。
細胞培養
細胞系ZR−75−1、MCF−7、BT−20、SK−BR3をATCCから得、そして示唆された培地中で培養した。21NT、21PTおよび21MT[バンド(Band, V.)ら、Cancer Research 50:7351-7357(1990)]細胞はα−培地[バンド(Band, V.)ら、Genes, Chromosomes & Cancer 48-58(1989)]中で成長させた。分化アッセイのため、細胞を、10%普遍的仔ウシ血清(ハイクローン(Hyclone))、2mML−グルタミン、2mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、5μg/mlのインスリン、2.8μMヒドロコルチゾン、および、21MTについては1μg/mlヒツジプロラクチンを含有するα−MEM中で培養した。細胞は48時間ごとに再飼養した(refed)。処理後7〜10日に全RNAを単離し、そして細胞を固定しかつオイルレッドO[グリーン(Greene, H.)*ケヒンデ(Kehinde, O.)、Biochemistry 18:5294-5299(1979)]もしくはナイルレッドで染色した。成長アッセイのため、指数的に成長する細胞を、細胞500個/ウェルで24穴プレート中で培養した。1日後、細胞を、10%炭ストリップFBS(ハイクローン(Hyclone))、2mML−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、5μg/mlのインスリン、1mMデキサメサゾンを含有するα−MEMで処理した。細胞を36〜48時間ごとに再飼養した。処理後3および7日に3H−チミジン(2μCi/ml)を細胞に18〜24時間添加し、そしてDNA中の取り込みをシンチレーション計数により検出した。クローン原性アッセイのため、ベヒクル(DMSO)もしくは10μMトログリタゾンの存在下に分化培地中で7〜10日の培養後に細胞をトリプシン処理し、トリパンブルー排除(exclusion)を用いて計数した。細胞をプレートあたり細胞103個で10cm2プレートで再培養した。15日後に培養物をクリスタルバイオレットで染色した。
RNA分析
全RNAを培養された細胞および組織からイソチオシアン酸グアニジン抽出[シャーグウィン(Chirgwin, J.M.)ら、Biochemistry 18:5294-5299(1979)]により単離した。RNAをホルムアミドおよびホルムアルデヒド中で変性させ、そして、記述されたように[マニアティス(Maniatis, T.)らMolecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(コールドスプリングハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989))]ホルムアルデヒドを含有するアガロースゲル中で電気泳動した。RNAを、製造元により指図されたように、バイオトランス(BioTrans)ナイロン(ICN ファーマシューティカルズ(ICN Pharmaceuticals))に移し、そしてメンブレンを架橋し(cross-linked)、ハイブリダイゼーションし、そして洗浄した。RNAの等しい負荷を、臭化エチジウム染色およびヒト酸性リボソームリンタンパク質PO(26B40)[ラボラダ(Laborada, J.)Nucleic Acids Res. 19:3998(1991)]のcDNAへのハイブリダイゼーションにより確実にし、また、アクチンcDNAプローブをランダムプライミング法[フィンバーグ(Finberg A.P.)とフォーゲルシュティーン(Vogelstien, B.A.)ら、Anal. Biochem 137:266-267(1984)]により最低109cpm/μgの比活性までα−32PdCTP(6000Ci/mmol)で標識した。
ウェスタンブロット分析
MT細胞からの全細胞抽出物について、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびタンパク質イムノブロットを、記述されたように[フー(Hu, E.)らScience 274:2100-2103(1996)]実施した。PPARγに対する抗体は既に記述されている[同じ箇所]。活性化されたリン酸化されたMAPキナーゼに対する抗体をプロメガ(Promega)から得、そして推奨されるように使用した。ポリクローナルウサギ抗ヒトPPARγ抗血清を、親和性精製されたグルタチオン−Sトランスフェラーぜ−完全長ヒトPPARγ融合タンパク質に対し生じさせた。
(ii)乳房の発達におけるPPARγ発現
PPARγが病的な乳房の発達で機能しうるかどうかを検討するため、われわれは最初に多様な乳房上皮癌細胞系でのmRNAレベルでの発現を検査した。対照として、われわれは、最高レベルのPPARγのmRNAを有することが既知の脂肪組織のRNAサンプルを負荷した(図15)ところが、半分が有意の発現を示し、レベルは脂肪でみられるものの10%から40%まで変動した。全てエストロゲンレセプター陰性の、これらの細胞系のうち3種はルース・セイガー(Ruth Sager)博士の研究室により乳房の浸潤性かつ管内の癌と診断された単一患者から開発された系列を表わす[バンド(Band, V.)ら、Cancer Research 50:7351-5357(1990)]。21NTおよび21PT細胞は原発性腫瘍由来であった一方、21MT細胞は、この同一の患者が肺に転移した乳癌を再発した場合の胸水由来であった。原発性および転移性双方の乳房細胞系がPPARγを発現する一方、21MT細胞は最高レベルを発現し、それは脂肪組織でみられたものの30%に達した。
(iii)正常乳房上皮組織におけるPPARγの発現
正常乳房上皮での、および原発性乳房腫瘍からのPPARγ発現の測定は、正常乳房中に含有される大量の脂肪により妨害されうる。この脂肪は原発性乳房腫瘍から完全に分離するのが困難である。この理由から、われわれは、肺に転移していた疾患を伴う4例の異なる患者を研究した。外科的に切除された転移性乳房腫瘍を正常の周囲の肺から完全に分離し、そしてノーザンブロッティングによりPPARγのmRNA発現について分析した。図15に示されるように、これらのサンプルのそれぞれは陽性であり、脂肪でみられるPPARγのmRNAのレベルのおよそ10%を示した。
良性および悪性の乳房組織中のPPARγタンパク質の分布を決定するため、われわれは、われわれの研究室で開発された、マウスPPARγに対し調製された抗体を使用するアビジン−ビオチン複合体免疫細胞化学を実施した;図16aは、標準的ヘマトキシリンおよびエオシン(HおよびE)染色での肺に転移した浸潤性管腺癌の典型的な外観を描く。PPARγ抗体で染色された同一の組織学的切片では(図16b)、転移性乳房腺癌細胞の極度の(褐色)核染色(矢印1)が存在する。一般に陰性の肺組織中に肺のタイプII肺細胞の陽性の核染色(矢印2)もまた存在する。われわれは、分析された全4例の転移性のヒト乳房組織について類似のPPARγ染色パターンをみた。正常乳房組織のPPARγの免疫組織化学は、正常乳房上皮細胞の内層管(lining duct)(矢印3)ならびに隣接する正常脂肪細胞(矢印4)の極度の褐色の核染色を立証した(図16c〜d)。免疫前血清は、乳癌、正常乳房組織、脂肪細胞もしくは肺の肺細胞の核染色を示さなかった(データは示されない)。
(iv)PPARγの活性化
悪性乳房細胞でのPPARγの活性化の影響を決定するため、TZDリガンドを、上で論考された21PTおよび21MT細胞に適用した。21PT細胞を2種の異なるPPARγリガンド、ピオグリタゾンおよびトログリタゾンで7日間処理した場合、細胞は、丸まりかつオイルレッドOで染色される中性脂肪で満たす形態の転換を経験した(図17a)。これらの細胞と対照的に、小さな程度の形態の転換のみが、それがより高レベルのPPARγのmRNAを発現した(図15)という事実にもかかわらず、21MT細胞系で観察された(図17c)。
これらのデータは、若干の乳癌細胞でのTZDに対する顕著な細胞応答を示唆する。この応答がPPARγ活性化の結果であることを確認するため、われわれは、完全に異なる化学的分類のPPARγの別のリガンド、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2(PGJ2)[クリーヴァー(Kliewer, S.A.)らCell 83:813-810(1995);トントノス(Tontonoz, P.)らProceedings National Academy of Sciences of the USA 94:237-241(1997)]を使用した。この化合物はまた、図3bで脂質についてのナイルレッド染色で具体的に説明されるように21PT細胞での有意の脂質蓄積も刺激する。対照的に、MSと命名される、PPARγに対し親和性を有しないトログリタゾンの代謝物(サルティエル(A. Saltiel)、私信)はこの応答を誘導しない(図17b)。かように、PPARγの活性化は、悪性乳房細胞系での劇的な形態の転換および脂質蓄積を刺激し得る。しかしながら、高レベルのPPARγを発現する最低1種の乳癌細胞系(21MT)は、レセプター活性化のこの結果に対する相対的抵抗性を具体的に説明する。
分子レベルでのPPARγ活性化の影響を特徴づけるため、われわれは、TZDで1週間処理された21PT細胞での遺伝子発現のパターンを検査した(図18a)。ピオグリタゾン(Pio)処理は、脂肪分化で示されているように[ブラン(Brun, R.P.)ら、Genes & Development 10:974-984(1996)]、これらの細胞でのPPARγのmRNAを誘導する。RXR特異的リガンドLG268(LG)もまたこれを行うが、しかしより制限された程度にである。これらの用量でのピオグリタゾンおよびLG268の組み合わせはTZD単独より有効でない。これらの作用物質は、脂肪形成の2種の十分に確立されたマーカー、アジプシン(データは示されない)およびaP2の発現につながらず、これらの脂質を満載した細胞が脂肪細胞への「トランス分化」を受けていないことを示す。われわれはまた、セリンプロテアーゼ阻害剤マスピンも検査した。これは、正常乳房上皮で通常発現されかつまた動物モデルで腫瘍リプレッサー活性も有する[ゾウ(Zou, Z.)らScience 256:526-529(1994)]。このmRNA発現は、ベヒクルで処理された細胞でほとんど検出不可能であるが、しかしピオグリタゾン処理により誘導される。逆に、その発現が悪性のマーカーとして使用されている2種の遺伝子、ケラチン19(K19)およびムチン−1(Muc−1)[レギンバルド(Regimbald, L.H.)らCancer Research 56:4244-4249(1995)]は、ピオグリタゾンもしくはLG268のいずれかでの処理により抑制される。若干のマーカー(Muc−1およびK19)は、それらがPPARγの活性化に対するのとほぼ同じくらいRXR刺激に対し感受性であるが、しかし、双方のレセプターの同時の活性化は、PPARγ単独のこの(おそらく最大の)刺激の上に付加的でない。これらの結果は、PPARγ/RXRヘテロダイマーの活性化が正常の非悪性の表現型により特徴的な遺伝子発現の変化を引き起こすことを示す。
細胞成長に対するPPARγのリガンド活性化の影響を、最初に21PT細胞のまばらな迅速に成長する培養物中のチミジン取り込みを検査することにより研究した。図18bに示されるように、ピオグリタゾンもしくはトログリタゾンでの4日の刺激はチミジンの取り込みの30%減少をもたらす。8日後、ベヒクルで処理された細胞での連続的な細胞成長を反映するチミジン取り込みのさらなる増大が存在した。対照的に、2種のTZDリガンド、トログリタゾンおよびピオグリタゾンで処理された培養物では、おそらくこれらの細胞での低下された成長速度のため、チミジン取り込みのさらなる増大は本質的に存在しなかった。これは急性の影響でないが、しかし分化型の応答に一致して、発生するのに数日かかることに注目すべきである。
(v)MAPキナーゼ阻害剤はPPARγの活性化を増強する
成長を2段階クローン原性アッセイでもまた検討した。これらの同一の細胞を最初に15日間トログリタゾンもしくはベヒクル(DMSO)で処理した。それらをその後トリプシン処理し、そして同一培地中に低密度でプレート培養したか、もしくは他の条件に「乗り換えた(crossed-over)」。プレート培養された細胞数の同等性および細胞の生存率を、細胞を計数すること、およびそれらのトリパンブルーを排除する能力を検査することにより確実にした。クローン原性の成長を2週間進行させた。図18cに示されるように、前処理および処理双方の間ベヒクル中にあった細胞は、最も夥しい最大かつ最も高密度のコロニーを発生した。処理前および処理後双方の間トログリタゾンに曝露された細胞は、大きさがより小さい最少のコロニーを示し、また、より少なく密にもまた染色していた。興味深いことに、対照培地で前処理されそしてその後トログリタゾン中に「乗り換えられた」細胞はコロニー数および密度の若干の減少を示した一方、トログリタゾンで前処理されそしてその後対照培地中に遊離された細胞は、リガンドに継続的に保たれたものと本質的に同等のクローン原性の成長の著しい低下を有する。これらの結果は、PPARγの活性化がクローン原性の細胞成長を低下させることを示し、そしてまた、この影響は一旦発生されればリガンドの除去により直ちに復帰されないことも示唆する。
最高レベルのPPARγ発現を有する乳房細胞系がTZD活性化に対し最小の応答を示すことは印象的である。われわれ[フー(Hu, E.)らScience 274:2100-2103(1996)]および他者[アダムス(Adams)ら、J Biol Chem 272:5128-5132(1997);キャンプ(Camp)ら、J Biol Chem 272:10811-10816(1997)]は、最近、MAPキナーゼがPPARγをセリン112で直接リン酸化し得、また、このリン酸化された形態のレセプターは大きく低下された転写活性および分化を促進するより小さい能力を有することを示した。われわれは、従って、21MT細胞に存在する高い内因性MAPキナーゼ活性がそれらの乏しい応答を説明し得るかどうかを求めた(asked)。図19aに示されるように、これらの細胞へのMAPキナーゼ(MEK)阻害剤PD098059の適用は、ベヒクルで処理された細胞に関して脂質蓄積の増大を引き起こした。さらに、トログリタゾン単独で処理された細胞のわずか10%がオイルレッドOで染色した一方、トログリタゾンおよびPD098059の組み合わせは細胞の少なくとも半分に脂質を蓄積させた。図19cは、PD098059がこれらの細胞での活性化されたMAPキナーゼのレベルを低下させたことを具体的に説明する。これらのデータに一致して、PD098059で処理された細胞は、リン酸化されない、より活性の形態のPPARγのより多くを示し、これらは、MAPキナーゼのリン酸化された形態より速い電気泳動での移動性を有することが示されている[フー(Hu, E.)ら、Science 274:2100-2103(1996)]。
トログリタゾンとPD098059との間の印象的な協同は遺伝子発現のレベルでもまたみられ得る。図19bは、トログリタゾンがPD098059がそうであるように21MT細胞でのマスピン発現の活性化に有効でないことを示す。しかしながら、双方の作用物質の組み合わせは、正常状態に特徴的なこのマーカーを効果的に活性化する。同様に、トログリタゾンは、MEK阻害剤の存在下でのMuc−1のmRNA発現のずっとより効果的な抑制体(suppresser)であり、MAPキナーゼがこれらの高度に悪性の細胞でPPARγの活性を抑制していることを強く示唆する。
TZDによるPPARγの活性化は乳癌細胞で顕著な形態学的および生化学的応答を引き起こす。中性脂肪の蓄積は、遺伝子発現の変化がそうであるように顕著である。これは、正常な乳房発達のマーカー、プロテアーゼ阻害剤マスピンの増大された発現を包含する。マスピンは異所性発現/移植の研究[ゾウ(Zou, Z.)らScience 256:526-529(1994)]で腫瘍抑制活性を有することが示されている。逆に、悪性状態に関連する2種の上皮マーカー、ムチン−1およびケラチン19は、双方ともPPARγ活性化により抑制される。細胞は培養された脂肪細胞に形態学的に類似に見える一方、それらはこの系統に特徴的なマーカーを発現しない。これゆえに、これらの細胞は、たぶん乳分泌応答のいくつかの回転(version)を反復して脂肪上皮分化を経験するとして最良に記述され得る。この応答は癌細胞に特異的であるように思われない。正常組織から樹立されたマウス細胞系HC11はPPARγのTZD活性化と類似の脂質蓄積および遺伝子発現の変化を示す(データは示されない)。
マスピンおよびMuc−1が悪性病変それ自身で重要な役割を有するかも知れないこともまた注目に値する。マスピンは、最初に乳房組織で同定されそして多数のインビトロおよびインビボの観察結果を基礎として腫瘍抑制遺伝子であることが提案されたセリンプロテアーゼ阻害剤である[ゾウ(Zou, Z.)ら、Science 256:526-529(1994)]。その発現パターンは正常な乳房組織および乳房由来の細胞で高い一方、多様な腫瘍細胞系は低いもしくはゼロの発現を示す。機能の研究は、マスピン発現が、培養物中のヒト乳房腫瘍細胞の自動運動性ならびにヌードマウスでの腫瘍の成長および転移を阻害することを立証した。Muc−1は、分泌性の乳房上皮細胞の先端の境界で通常発現される細胞に関連したムチン糖タンパク質である。それは転移性乳癌で非常に高レベルで異常に発現される[クフェ(Kufe, D.)らHybridoma 3:223-232(1984)]。Muc−1の厳密な機能は既知でないとは言え、癌腫でのその高発現は、おそらくその大きな大きさおよび大きな負の電荷により、細胞と細胞、および細胞と細胞外マトリックスの接触を低下させる。腫瘍の進行でのMuc−1の直接の役割はMuc−1 −/−マウスで立証されており、ここで、乳房組織中でポリオームミドルT抗原により誘発された腫瘍は、対照マウスに比較してMuc−1が不完全なマウスで有意により遅い成長速度を有することが見出された[スパイサー(Spicer, A.P.)ら、J B C 270:30093-30101(1995)]。
PPARγの活性化はここで研究された乳癌細胞で細胞成長の遅延もしくは停止を引き起こす。これは突然の細胞傷害性の応答でないが、しかし脂質蓄積がそうであるように数日にわたって発生する分化的(differentiative)応答以上であるようである。1個の潜在的に重要な知見は、一旦PPARγのTZD活性化が数日間発生すれば、薬物は除去され得、そして、大部分の細胞が生存可能であるままである間に、それらがクローン原性の成長についてのずっと低下された能力を保持するということである。われわれ[フー(Hu, E.)らScience 274:2100-2103(1996)]および他者[アダムス(Adams)ら、J Biol Chem 272:5128-5132(1997);キャンプ(Camp)ら、J Biol Chem 272:10811-10816(1997)]は、最近、PPARγがMAPキナーゼによるリン酸化の直接の標的であり、また、この修飾がこのレセプターの転写および脂肪形成の活性の劇的な低下をもたらすことを示した。乳癌を包含する多くの癌がMAPキナーゼの上昇されたレベルおよび/もしくは活性を伴っている[シヴァマラン(Sivamaran, V.S.)ら、Journal Clinical Investigation 99:1478-1483(1997)]ため、これが悪性病変の過程でPPARγの機能を封鎖している可能性があり、そしてまた合成化合物でのこのレセプターの活性化の有効性を制限もするかも知れないという懸念が存在する。21MT細胞系での研究はMAPキナーゼ阻害剤とのトログリタゾンの相乗効果を示し、このタンパク質キナーゼがこれらの細胞でPPARγの機能を調節し得ることを強く示唆する。
同等物
当業者は、わずかに慣例の実験を使用して、本明細書に記述された本発明の特定の態様に対する多くの同等物をはっきりと理解することができるか、もしくは確かめることが可能であることができる。こうした同等物は以下の請求の範囲により包含されることが意図される。
Claims (30)
- a)一般式:
但し式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;
R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;
R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒になって1個の結合を表わし;
A2は、原子価および安定性を許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;
そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす、
PPARγアゴニスト、又はその互変異性体もしくはその製薬学的に許容できる塩、又はその製薬学的に許容できる溶媒和物;及び
b)PD098059であるMAPキナーゼ阻害剤
の、PPARγ応答性過剰増殖性細胞の望ましくない増殖を特徴とする障害を対象動物において治療又は予防する医薬の製造時の使用。 - 障害が脂肪細胞腫瘍を含む、請求項1に記載の使用。
- 脂肪細胞腫瘍障害が、脂肪腫、線維脂肪腫、脂肪芽細胞腫、脂肪腫症、冬眠腺腫、血管腫および脂肪肉腫から成る群から選択される、請求項2に記載の使用。
- 脂肪細胞腫瘍障害が脂肪肉腫である、請求項2に記載の使用。
- 障害が肉腫、癌腫及び白血病から成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
- 障害が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆道癌、絨毛上皮腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞癌、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫から成る群から選択される、請求項5に記載の使用。
- 障害が、乳房、前立腺、腎、膀胱もしくは結腸の組織から生じる癌腫を含んで成る、請求項5に記載の使用。
- 障害が白血病性癌を含んで成る、請求項5に記載の使用。
- 対象動物が哺乳動物である、請求項1に記載の使用。
- 対象動物がヒトである、請求項9に記載の使用。
- (i)一般式:
但し式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;
R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;
R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒になって1個の結合を表わし;
A2は、原子価および安定性を許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;
そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす、
PPARγアゴニスト、あるいはその互変異性体もしくはその製薬学的に許容できる塩、またはその製薬学的に許容できる溶媒和物、;
(ii)有糸分裂阻害剤であるビンブラスチン;シスプラチン、カルボプラチン又はシクロホスホールアミドから成る群より選択されるアルキル化剤;5-フルオロウラシル、シトシンアルビノシド、ヒドロキシウレア又はN-[5-[N-(3,4-ジヒドロ-2-メチル-4-オキソキナゾリン-6-イルメチル)-N-メチルアミノ]-2-テノイル-L-グルタメートから成る群より選択される代謝拮抗物質;アドリアマイシン又はブレオマイシンから選択される核酸挿入剤抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤であるエトポシド、アポトーシスを促進する作用物質であるアクチノマイシンD;タモキシフェン、又は4’-シアノ-3-(4-フルオロフェニルスルフォニル)-2-ヒドロキシル-2-メチル-3’-(トリフルオロメチル)プロピオンアニリドから選択される抗ホルモン;および腫瘍に対する免疫応答を増大させるインターフェロン;から成る群より選択される少なくとも一種の作用物質;
(iii)PD098059であるMAPキナーゼ阻害剤と;
(iv)製薬学的に許容できる担体と
を含んで成る製薬学的組成物の、対象動物においてPPARγ-応答性過剰増殖性細胞の終末分化を誘導するための医薬の製造における使用。 - 一般式:
但し式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;
R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;
R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒になって1個の結合を表わし;
A2は、原子価および安定性を許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;
そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす、
PPARγアゴニスト、あるいはその互変異性体もしくはその製薬学的に許容できる塩、またはその製薬学的に許容できる溶媒和物と、PD098059であるMAPキナーゼ阻害剤とを薬学的に許容可能な担体中に含んで成る、製薬学的組成物の、対象動物におけるPPARγ-応答性過剰増殖性細胞の終末分化を誘導するための医薬の製造における使用。 - PPARγアゴニストが、ピオグリタゾン、トログリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾンおよびBRL49653の群から選択される化合物である、請求項11又は12に記載の使用。
- PPARγアゴニストが、PPARα、PPARδもしくはRAR依存性の転写の同一レベルの活性化に必要とされるより最低1桁より小さい濃度でPPARγ依存性の転写を活性化する、請求項11又は12に記載の使用。
- サンプル中のPPARγ-応答性過剰増殖性細胞の増殖を阻害するin vitroの方法であって、PPARγアゴニストに細胞を接触させる工程を含み、PPARγアゴニストは、より低い増殖指数の表現型への細胞分化を誘導するのに有効量であり、一般式:
但し式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;
R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;
R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒になって1個の結合を表わし;
A2は、原子価および安定性を許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;
そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす、
PPARγアゴニスト、あるいはその互変異性体もしくはその製薬学的に許容できる塩、またはその製薬学的に許容できる溶媒和物である、in vitroの方法。 - PPARγ-応答性過剰増殖性細胞の望ましくない増殖を特徴とする障害を治療又は予防するための医薬の製造におけるPPARγアゴニストの使用であって、前記PPARγアゴニストは、一般式:
但し式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;
R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;
R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒になって1個の結合を表わし;
A2は、原子価および安定性を許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;
そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす、
PPARγアゴニスト、あるいはその互変異性体もしくはその製薬学的に許容できる塩、またはその製薬学的に許容できる溶媒和物である、PPARγアゴニストの使用。 - PPARγ-応答性過剰増殖性細胞の増殖を阻害する方法であって、より低い増殖指数の表現型への細胞分化を誘導するために有効量の:プロスタグランジン 15-デオキシΔ12,14PGJ2、ピオグリタゾン、トログリタゾン、BRL 49653、シグリタゾン、エングリタゾン、5-[(2-アルコキシ-5-ピリジル)メチル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[(置換-3-ピリジル)メチル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-(2-メチル-2-フェニルプロポキシ)ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[3-(4-メトキシフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]-メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]-メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-トリフルオロメトキシフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-トリフルオロメチルフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[2-[3-(4-トリフルオロメチルフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]エトキシ]ベンジル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[2-[3-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]エトキシ]ベンジル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-ピリジル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]-ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、4-(2-ナフチルメチル)-1,2,3,5-オキサチアジアゾール-2-オキシド、5-[4-[2-[N-(ベンゾキサゾル-2-イル)-N-メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]-5-メチルチアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[2,4-ジオキソ-5-フェニルチアゾリジン-3-イル)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[N-メチル-N-(フェノキシカルボニル)アミノ]エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-(2-フェノキシエトキシ)ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-(4-クロロフェニル)エチルスルホニル]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[3-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)プロピオニル]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[[4-(3-ヒドロキシ-1-メチルシクロヘキシル)メトキシ]ベンジル]チアジアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシル]ベンジル]チアジゾリジオン2,4-ジオン、5-[[2-(2-ナフチルメチル)ベンゾキサゾル]-5-イルメチル]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[4-[2-(3-フェニルウレイド)エトキシル]ベンジル]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[N-(ベンゾキサゾル-2-イル)-N-メチルアミノ]エトキシ]ベンジ]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[4-[3-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)プロピオニル]ベンジル]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イルメチル)ベンゾフラン-5-イルメチル]-オキサゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ]エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、及び5-[4-[2-[N-(ベンゾキサゾル-2-イル)-N-メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]-オキサゾリジン-2,4-ジオンから成る群から選択されるPPARγアゴニストに細胞を異所的に接触させる工程を含んで成る、in vitroの方法。
- 対象動物において、PPARγ-応答性過剰増殖性細胞の望ましくない増殖を特徴とする障害を治療又は予防するための医薬の製造における:プロスタグランジン 15-デオキシΔ12,14PGJ2、ピオグリタゾン、トログリタゾン、BRL 49653、シグリタゾン、エングリタゾン、5-[(2-アルコキシ-5-ピリジル)メチル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[(置換-3-ピリジル)メチル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-(2-メチル-2-フェニルプロポキシ)ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[3-(4-メトキシフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]-メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]-メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-トリフルオロメトキシフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-トリフルオロメチルフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[2-[3-(4-トリフルオロメチルフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]エトキシ]ベンジル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[2-[3-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]エトキシ]ベンジル]-2,4-チアゾリジンジオン、5-[4-[3-(4-ピリジル)-2-オキソオキサゾリジン-5-イル]メトキシ]-ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン、4-(2-ナフチルメチル)-1,2,3,5-オキサチアジアゾール-2-オキシド、5-[4-[2-[N-(ベンゾキサゾル-2-イル)-N-メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]-5-メチルチアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[2,4-ジオキソ-5-フェニルチアゾリジン-3-イル)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[N-メチル-N-(フェノキシカルボニル)アミノ]エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-(2-フェノキシエトキシ)ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-(4-クロロフェニル)エチルスルホニル]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[3-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)プロピオニル]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、5-[[4-(3-ヒドロキシ-1-メチルシクロヘキシル)メトキシ]ベンジル]チアジアゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシル]ベンジル]チアジゾリジオン2,4-ジオン、5-[[2-(2-ナフチルメチル)ベンゾキサゾル]-5-イルメチル]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[4-[2-(3-フェニルウレイド)エトキシル]ベンジル]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[N-(ベンゾキサゾル-2-イル)-N-メチルアミノ]エトキシ]ベンジ]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[4-[3-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)プロピオニル]ベンジル]チアジアゾリン-2,4-ジオン、5-[2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イルメチル)ベンゾフラン-5-イルメチル]-オキサゾリジン-2,4-ジオン、5-[4-[2-[N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ]エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン、及び5-[4-[2-[N-(ベンゾキサゾル-2-イル)-N-メチルアミノ]エトキシ]ベンジル]-オキサゾリジン-2,4-ジオンから成る群から選択されるPPARγアゴニストの使用。
- 障害が脂肪細胞腫瘍を含む、請求項18に記載の使用。
- 脂肪細胞腫瘍障害が、脂肪腫、線維脂肪腫、脂肪芽細胞腫、脂肪腫症、冬眠腺腫、血管腫および脂肪肉腫から成る群から選択される、請求項19に記載の使用。
- 脂肪細胞腫瘍障害が脂肪肉腫である、請求項19に記載の使用。
- 障害が肉腫、癌腫及び白血病から成る群から選択される、請求項18に記載の使用。
- 障害が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆道癌、絨毛上皮腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞癌、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫から成る群から選択される、請求項28に記載の使用。
- 障害が、乳房、前立腺、腎、膀胱もしくは結腸の組織から生じる癌腫を含んで成る、請求項21に記載の使用。
- 障害が白血病性癌を含んで成る、請求項21に記載の使用。
- 対象動物が哺乳動物である、請求項18に記載の使用。
- 対象動物がヒトである、請求項9に記載の使用。
- サンプル中のPPARγ-応答性過剰増殖性細胞の増殖を阻害するin vitroの方法であって、細胞の増殖を阻害するのに有効量の、一般式:
但し式中、A1は置換もしくは未置換の芳香族ヘテロ環基を表わし;
R1は水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基(その中のアリール部分は置換もしくは未置換であってよく)または置換もしくは未置換のアリール基を表わし;
R2およびR3はそれぞれ水素を表わすか、もしくは、R2およびR3は一緒になって1個の結合を表わし;
A2は、原子価および安定性を許すように5個までの置換基を有するベンジルもしくはクロマニル部分を表わし;
そしてnは1から6までの範囲の整数を表わす、
PPARγアゴニスト、あるいはその互変異性体もしくはその製薬学的に許容できる塩、またはその製薬学的に許容できる溶媒和物と;MAPキナーゼ阻害剤とに細胞を接触させる工程を含む、方法。 - PPARγアゴニストが、ピオグリタゾン、トログリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾンおよびBRL49653の群から選択される化合物である、請求項1、16又は18に記載の使用。
- PPARγアゴニストが、ピオグリタゾン、トログリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾンおよびBRL49653の群から選択される化合物である、請求項15、17、又は28に記載の方法。
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