JP4548760B2 - 耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼 - Google Patents

耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アブレッシブな摩耗に曝される環境下で優れた耐食性および耐摩耗性を有し、製品のめっきや熱処理を必要としない、例えば床材や織機、機械、電気・電子機器などの各種部品として好適な高強度ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、靴や砂・石などの接触により摩耗する床材や、糸との接触により摩耗する織機部材、他の部品との摺動摩擦により摩耗する機械部材など、耐摩耗性が要求されている用途において、炭素鋼およびそのめっき材、浸炭処理材、窒化処理材などが広く使用されている。
一方、使用環境によっては、素材自身に優れた耐食性が要求されることも多く、そのような用途分野では、SUS420J2などの焼入れ硬化型ステンレス鋼やSUS301などの加工硬化型ステンレス鋼へのステンレス化が進んでいる。
この場合、SUS420J2は焼入れ・焼戻し処理で、SUS301は冷間圧延・加工による強度上昇により、耐摩耗性の確保を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、炭素鋼あるいはSUS420J2、SUS301では、以下のような課題を抱えている。
すなわち、炭素鋼やその浸炭処理材、窒化処理材は耐食性に劣り、使用環境によっては発銹により耐摩耗性や摺動性が劣化する。耐食性の維持のために表面にめっきした炭素鋼では、そのめっき工程のために製造コストが高くなるとともに、摩耗部分でめっき層が欠落することがある。一方、SUS420J2の焼入れ・焼戻し鋼では、優れた耐摩耗性を呈するものの、厳しい使用環境によっては発銹することがあり、炭素鋼の場合と同様、耐摩耗性や摺動性が低下する。さらに、SUS301の冷間圧延・加工材は、これらの鋼種の中では最も耐食性に優れるものの、耐摩耗性が必ずしも十分でなく、問題視されることもある。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、製品でのめっきや熱処理を行わなくとも、優れた耐食性と耐摩耗性を兼備し、耐摩耗性用途として好適な高強度ステンレス鋼を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼は、その目的を達成するため、質量%で、C:0.03超え〜0.15%、Si:0.2〜2.0%、Ni:2.0〜5.0%、Cr:14.0〜17.0%、N:0.03超え〜0.10%、B:0.0010〜0.0070%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、85体積%以上のマルテンサイト相を有するとともに、析出炭化物総量を0.05〜1.0質量%にしたものである。
さらに、炭化物形成元素として、Ti、Nb、Zr、V、Wのうちの1種または2種以上を合計で2.0質量%以下含有させることも、あるいは耐食性を向上させるためにMo、Cuの1種または2種を合計で2.0質量%以下含有させることもできる。
【0005】
【作用】
本発明者らは、前述の用途などで用いられる部材の摩耗損傷部に、細かい線状に研削されたような疵を見つけ、その周囲や対象物からアルミナ、シリカ、炭化珪素などの硬質粒子の付着を検出した。研削されたような疵や硬質粒子の付着から、上記用途における摩耗現象は、硬質粒子が介在したアブレッシブな摩耗であると判断した。
このようなアブレッシブな摩耗に対し、鋼のマトリックスとして、残留オーステナイトやδフェライトが少ないマルテンサイトとすることとともに適当量の炭化物を分散析出させることが重要であることを見出した。
さらに、分散析出炭化物として、アルミナ、シリカ、炭化珪素などと同等の硬さを有するTi、Nb、Zr、V、Wなどの炭化物を析出させることにより、より耐摩耗性を向上し得ることを突き止めた。
【0006】
一方、優れた耐食性を維持することも必要で、Crやその他元素の含有量を調整することが必須であるばかりでなく、過剰の炭化物析出を抑制することが重要である。
そこで、本発明者らはさらに研究を重ねた結果、成分組成を調整し、析出した炭化物の総量を所定範囲に調整することにより、優れた耐摩耗性と耐食性を両立させ得ることを見出した。
【0007】
【実施の態様】
次に、本発明鋼の内容を具体的に説明する。ただし組成の%表示は何れも質量%である。
C:0.03超え〜0.15%
Cは、固溶強化により鋼の強度を上昇させるとともに、高温でのδフェライトの生成を抑制して常温でマルテンサイト組織を得、また炭化物として消費させる上で重要である。このCの有効な効果を得るためには0.03%を超える含有が必要である。しかし、0.15%を超えて多量に含有させると、最終焼鈍後に多量のオーステナイトが残留し、マルテンサイト組織を得るのが困難になるばかりでなく、過剰の炭化物析出のために耐食性が劣化し易くなる。
【0008】
Si:0.2〜2.0%
Siは、固溶強化能が大きくマトリックスを強化する。この作用はSi含有量が0.2%以上で顕著に現れる。しかし、2.0%を超えて含有させても固溶強化作用は飽和するとともに、δフェライト相の生成が助長され、耐摩耗性および熱間加工性の劣化が目立つようになる。
【0009】
Ni:2.0〜5.0%
Niは、同じオーステナイト生成元素であるCおよびNの一部を置換して、多量のC添加による耐食性の低下を防止する上で有効である。また、δフェライト相の生成を抑制し、マルテンサイト組織を得る上でも重要である。この効果を有効に得るためには、最低2.0%のNi含有が必要である。しかし、5.0%を超えて多量に含有させると、残留オーステナイト量が多くなりすぎ、耐摩耗性および強度の低下をもたらす。
【0010】
Cr:14.0〜17.0%
Crは、優れた耐食性を得る上で少なくとも14.0%必要である。しかし、16.5%を超えると、鋳造組織および最終製品のδフェライト量が多くなる。若干のδフェライトは耐摩耗性にそれほど悪影響を及ぼさないが、17.0%を超えるCrを含有させると、δフェライトの増加に起因して耐摩耗性の低下が顕著になる。この場合、δフェライト生成を抑制するために成分調整を図ろうとすると、他のオーステナイト生成元素の多量の添加が必要となり、最終焼鈍後に多量のオーステナイトが残留して強度および耐へたり性の低下を招くことになる。
【0011】
N:0.03超え〜0.10%
Nは、Cと同様δフェライトの生成を抑制するとともに、固溶強化作用により強度向上に寄与する。また、Cの一部をNで置換してCの多量添加を抑制することにより、中間あるいは最終焼鈍後冷却時における粒界近傍でのCr炭化物析出に起因した耐食性劣化を回避することができる。このようなNの作用を有効に得るためには、少なくとも0.03%を超えるNの含有が必要である。しかし、0.10%を超えて多量に含有させると、最終焼鈍後残留オーステナイト量が多くなりすぎるために、良好な耐摩耗性や高強度が得られないことがある。またこの際、Nよりも固溶強化能が大きいCを低減すると高強度が得られなくなると言う弊害が生じる。
【0012】
B:0.0010〜0.0070%
Bは、本発明鋼においては熱間圧延時の肌割れを抑制し、また中間焼鈍におけるSの粒界偏析を抑制し、その後の冷間圧延時の耳割れ発生を回避する上で非常に重要な元素である。その効果を有効に得るには0.0010%以上の含有が必須である。しかし、0.0070%を超えて多量に含有させても耳割れ発生抑制作用は飽和するとともに、B系析出物の粒界析出により、耐食性ならびに靭性が顕著となる。
【0013】
以上必須の成分について説明したが、他に製鋼過程から必然的に含有される元素について説明する。
Mnは、高温域でδフェライト相の生成を抑制する。しかし、多量の含有は焼鈍後の残留オーステナイト量を多くするので、Mn含有量は1.0%以下とすることが好ましい。
Pは、靭性および耐食性を劣化させる原因となるので、少ないほど望ましく、0.06%以下とすることが好ましい。
Sは、MnSなどの非金属介在物として鋼中に存在し、靭性に悪影響を及ぼす。また、熱間加工時には粒界に偏析して熱間加工性を著しく劣化させる。したがってS含有量は少ないほど望ましく、0.01%以下にすることが好ましい。
【0014】
Ti、Nb、Zr、V、W:2.0%以下
本発明で対象とする鋼は、必要に応じてTi、Nb、Zr、V、Wのうち1種あるいは2種以上を含有させることができる。これらの元素で構成される炭化物は、アルミナ、シリカ、炭化珪素などの硬質粒子とほぼ同等の硬さを有し、アブレッシブな摩耗を抑制するのに効果的である。ただし、これらの元素は一般的に高価であり、多量の添加は原料コスト増を招くとともに、合計で2.0%を超えて含有させても、その含有量に対する耐摩耗性向上効果は小さい。したがって、これらの元素を含有させる場合は合計で2.0%以下にすることが好ましい。
【0015】
Mo、Cu:2.0%以下
さらに、本発明の対象鋼では、必要に応じてMo、Cuのうちの1種または2種を含有させることができる。これらの元素は、炭化物が析出した状態においても優れた耐食性を維持する上でも有効である。しかし、これらの元素は比較的高価であるとともに、合計で2.0%を超えて多量に含有させても耐食性向上の効果は小さく、かえって残留オーステナイトやδフェライトが生成しやすくなり、耐摩耗性を劣化させることになる。したがって、これらの元素は、合計で2.0%以内の範囲で含有させることが好ましい。
【0016】
マルテンサイト相:85体積%以上
本発明では、各成分元素の含有量を上記の範囲に調整するとともに、マルテンサイトが85体積%以上になるように成分あるいは製造条件が調整される。マルテンサイト量が85体積%に満たないと、優れた耐摩耗性を得るのが困難となる。このマルテンサイトの体積率は、焼鈍や調質圧延、冷間加工のいずれの製造方法によって得られても良いし、マルテンサイト相以外の相は、残留オーステナイト相であってもフェライト相であっても良い。
【0017】
例えば、各元素量が請求項1で規定する範囲にあり、仕上げ焼鈍後に残留オーステナイト量が15%を超える場合には、適度の冷間加工あるいは調質圧延を施すことにより加工誘起マルテンサイトを生成させて、マルテンサイトの総量を85%以上にすることにより、優れた耐摩耗性を確保することができる。ただし、その加工の際の加工率あるいは調質圧延率が高くなるに伴い強度が高くなり、延性や靭性が低下し易くなるので、加工歪みおよび調質圧延率ともに10%以下とすることが好ましい。
仕上げ焼鈍後にフェライトが15%を超えて生成すると、その後の冷間加工等で消失させることができず、優れた耐摩耗性を得ることが困難となるため、δフェライトが15%を超えないように成分調整する必要がある。
【0018】
析出炭化物総量:0.05〜1.0%
本発明で対象とする鋼は、析出炭化物総量が0.05〜1.0%であることが必要である。請求項1で特定される高強度ステンレス鋼ではCr系炭化物が、請求項2で特定される高強度ステンレス鋼ではCr炭化物に加えて、Ti、Nb、Zr、V、Wで構成される炭化物が析出する。いずれの炭化物においても、炭化物の総量が0.05%よりも少ないと場合によっては十分な耐摩耗性が得られないことがある。炭化物の総量が増えるにしたがい耐摩耗性は向上する。同量の析出量では、Ti、Nb、Zr、V、Wで構成される炭化物の方が、それ自身の硬度が高いためにCr系炭化物よりも耐摩耗性向上効果は大きい。
【0019】
しかし、いずれの炭化物においても、1.0%を超えて増加させても耐摩耗性向上効果は小さく、一方、耐食性の低下が顕著となる。したがって、炭化物の総量は0.05〜1.0%の範囲にする必要がある。
本発明で規定する析出炭化物総量を得る手段としては、仕上げ焼鈍時の冷却速度を調整する、あるいは仕上げ焼鈍後に焼戻しを行うことが挙げられる。
ただし、炭化物の析出挙動は、化学成分、特にCやTi、Nbなど炭化物構成元素の添加量の影響を受けるので、適正な炭化物量が得られるよう、化学成分によって冷却速度や焼戻し温度を調整する必要がある。
【0020】
【実施例1】
表1に示す化学組成を有する鋼を真空溶解し、300kgの鋼塊から熱間圧延を経て板幅250mm、板厚3.0mmの熱延鋼帯を製造した。表1において、A1〜A8が本発明で規定する化学成分を有した発明対象鋼である。B1〜B3は比較鋼であり、それぞれNi、C、Crが本発明の規定範囲を外れている。C1は従来のSUS301,C2はSUS420J2である。
【0021】
Figure 0004548760
【0022】
発明対象鋼A1〜A8および比較鋼B1〜B3の熱延板を700℃×1hrのバッチ型焼鈍を行い、スケール除去後板厚1mmまで冷間圧延を施した後、連続焼鈍炉により1020℃へ加熱し、1020℃から室温まで平均17℃/sの冷却速度で冷却する仕上げ焼鈍を行った。
一部の鋼については、仕上げ焼鈍後さらに圧延率5%の調質圧延を施した。一方、C1のSUS301については、熱延板焼鈍、スケール除去および板厚1.7mmまでの冷間圧延を行い、さらに仕上げ焼鈍および冷延率42%の調質圧延を行うことにより、板厚1mmの調質圧延材を作製した。C2のSUS420J2は、熱延板をバッチ焼鈍、スケール除去、板厚1mmまでの冷間圧延および1050℃からの焼入れを経て、300℃焼戻し材を作製した。
【0023】
それぞれの鋼について、マルテンサイト量、炭化物析出量および比摩耗量を測定した。マルテンサイト量は、光学顕微鏡組織から測定したδフェライト量および振動試料型磁力計を用いて測定した残留オーステナイト量を除く残部とした。炭化物析出量は、試験片をヨウ素アルコール溶液に浸漬し、超音波照射しながら鋼材を溶解した後、液中に残った炭化物量の残渣量より求めた。
【0024】
アブレッシブな摩耗に対する耐摩耗性は、ピンオンディスク型の摩擦摩耗試験機を用いて調査した。接触面が直径5mmの円柱状試験片をピンに取り付け、シリカ粉末を塗布した研磨紙をディスクに貼り付けた。ピン側の試験片に30Nの付加荷重F(N)を加え、回転しているディスクに摩擦速度0.7m/sで摩擦距離L=0.5kmを摺動させた後、試験片の摩耗量Wを測定した。
測定値から、次式にしたがって比摩耗量Cを算出した。比摩耗量Cで耐摩耗性を判定し、100×10-8mm2/N未満を○、それ以上を×と評価した。C2のSUS420J2を除く調査結果を表2に示す。
【0025】
また、表2に示した測定結果の一部について、マルテンサイト量と比摩耗量の関係を表したグラフを図1に示す。なお、表には示されていないが、いずれの鋼もビッカース硬さ400HV20を超える高強度ステンレス鋼である。
比摩耗量C(mm2/N)=W/(L×F)×10-4
【0026】
Figure 0004548760
【0027】
表2に示されるように、Ni、C、Cr含有量が請求項1に規定する範囲内にあり、かつマルテンサイト量が85体積%以上であって炭化物析出量が0.05質量%以上のものでは、比摩耗量が100×10-8mm2/N未満で、耐摩耗性に優れていることがわかる。これに対して、Ni、C、Cr含有量が請求項1に規定する範囲を外れる比較例B1〜B2はマルテンサイト量が85体積%に達せず、十分な耐摩耗性が得られていない。また、各元素の含有量が規定の範囲内であってもマルテンサイト量が85体積%未満の場合(試験番号7)には耐摩耗性が低い。
【0028】
図1に示すように、比摩耗量が100×10-8mm2/N未満の、十分な耐摩耗性を確保するには、マルテンサイト量が85体積%以上になるように調整する必要がある。A7およびB2は、仕上げ焼鈍後に多量の残留オーステナイトが残留するために、焼入れマルテンサイトが少なくなっている。A7については、焼鈍後圧延率5%という軽圧下の調質圧延を施すことによって、残留オーステナイトの一部を加工誘起マルテンサイトへ変態させ、全体としてのマルテンサイト量を85体積%以上とすることで、耐摩耗性を優れたものとすることができた。
一方、B2は圧延率5%程度の調質圧延では十分なマルテンサイト量が得られず、耐摩耗性は低い。さらに、B1およびB3は、仕上げ焼鈍後に15%を超えるフェライトが存在するために十分な耐摩耗性が得られず、調質圧延を施しても改善されなかった。
【0029】
【実施例2】
表1に示したA2およびA3の鋼について、仕上げ焼鈍温度および冷却条件を調整、あるいは焼戻しを行うなどにより、これら熱処理後の炭化物析出量を変化させた。それぞれの鋼について、マルテンサイト量、炭化物析出量、比摩耗量および耐食性を調査した。耐食性に関しては、JIS H8502に準拠したキャス試験を10日間実施し、その後発銹が認められたものを×、認められなかったものを○と評価した。調査結果を表3に、従来鋼C2の結果と併せて示す。
【0030】
Figure 0004548760
【0031】
表3に示されるように、含有成分と熱処理条件を調整することにより、本発明で規定するようなマルテンサイト量および炭化物析出量としたものは、耐摩耗性および耐食性ともに優れている。これに対して、炭化物析出量が1.0質量%を超える鋼(試験番号20、23および24)では、10日間のキャス試験で発銹が起こり、耐食性に劣る。また高温からの急冷により析出物量を0.05質量%未満にした鋼(試験番号17)では、耐摩耗性がやや悪い。
なお、SUS420J2であるC2は、優れた耐摩耗性を有するものの、キャス試験後は、ほぼ板の半分以上の表面で発銹しており、表1に示した本発明鋼および比較鋼に比べかなり耐食性に劣っていた。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、ステンレス鋼の成分組成を調整するとともに、マルテンサイト量が85体積%以上かつ炭化物析出量が0.05〜1.0質量%になるように金属組織を調整することにより、耐摩耗性と耐食性の両方に優れた高強度ステンレス鋼が得られる。
これにより、例えば床材や織機、機械、電気・電子機器などの各種部品のように、アブレッシブな摩耗に曝される環境下で優れた耐食性および耐摩耗性が要求される分野においてその性能が最大限発揮できる材料を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 使用した高強度ステンレス鋼のマルテンサイト量と比摩耗量の関係を表す図

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.03超え〜0.15%、Si:0.2〜2.0%、Ni:2.0〜5.0%、Cr:14.0〜17.0%、N:0.03超え〜0.10%、B:0.0010〜0.0070%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、85体積%以上のマルテンサイト相を有するとともに、析出炭化物総量を0.05〜1.0質量%にしたことを特徴とする耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼。
  2. さらに、Ti、Nb、Zr、V、Wのうちの1種または2種以上を合計で2.0質量%以下含有する請求項1に記載の耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼。
  3. さらに、Mo、Cuの1種または2種を合計で2.0質量%以下含有する請求項1または2に記載の耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼。
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