JPH11286852A - 複相組織ステンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯 - Google Patents

複相組織ステンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯

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JPH11286852A
JPH11286852A JP10188398A JP10188398A JPH11286852A JP H11286852 A JPH11286852 A JP H11286852A JP 10188398 A JP10188398 A JP 10188398A JP 10188398 A JP10188398 A JP 10188398A JP H11286852 A JPH11286852 A JP H11286852A
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mass
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teeth
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highly durable
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Katsuhisa Miyakusu
克久 宮楠
Takashi Igawa
孝 井川
Hiroshi Fujimoto
廣 藤本
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性,耐糸摩耗性,素材平坦度,打抜き
性,バレル研摩性,形状修正性の全てにおいて、バラン
スのとれた良好な特性を有する安価な「おさ歯」を提供
する。 【解決手段】 C:0.01〜0.15質量%、Cr:10.0〜2
0.0質量%、Ni,Mn,Cuのうち1種または2種以
上を合計で0.3〜5.0質量%を含有し、必要に応じてM
o:1.0質量%以下、B:0.03質量%以下、Al:0.20
質量%以下の範囲で含有し、金属組織がフェライト相と
マルテンサイト相の複相組織であるステンレス鋼素材か
らなる高耐久性おさ歯。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動織機の「おさ
(筬)」を構成する、「おさ歯」に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1に、自動織機(力織機)の基本的な
構成の概略を示す。ヘルドは緯糸の織り込みのたびに経
糸を交互に上下させる働きをする。リードは経糸に交差
して挿入された緯糸を押さえ込んで織り込む働きをす
る。リードは「おさ(筬)」とも称され、おさ歯(デン
ツ)と称される薄い板を等間隔に配列して櫛状に組み立
てられている。経糸はリードの櫛状の隙間に通され、お
さ歯で緯糸を押さえ込むことにより織布の織り込みが成
される。
【0003】緯糸は高速の空気流(エアージェット)や
水流(ウォータージェット)で経糸の間に挿入される。
水流による緯糸装入の場合は、水や繊維に含まれる不純
物により、おさ歯に湿食が生じるので、おさ歯には耐食
性が要求される。
【0004】経糸を締め付ける際に、おさ歯と経糸との
間には摺動が生じる。このため、おさ歯は摩耗する。摩
耗が大きくなると、糸道と称される細い溝ができ、糸の
毛羽立ちや糸切れ等の異常が発生し、織布の品質低下を
招く。また、自動織機の予期せぬ運転中断および部品交
換作業により生産性が低下する。したがって、おさ歯に
は耐糸摩耗性が要求される。
【0005】リード製造メーカーでは、おさ歯用の素材
をおさ歯形状に打抜いたのち、「バリ取り」や糸との摺
動を円滑にする「端部丸耳化」のためのバレル研摩を行
い、さらに、素材の平坦度不足や打抜き時の変形に起因
して生じた「形状不良」の修正を行う。したがって、お
さ歯用素材には、打抜き前の平坦度が高いこと、打抜き
性が良いこと(すなわち、打抜き時に変形しにくく、か
つバリが発生しにくいこと)、形状修正が容易であるこ
とが望まれる。
【0006】おさ歯は一般的にステンレス鋼素材で作ら
れる。従来の一般的なおさ歯用素材として、マルテンサ
イト系ステンレス鋼のSUS420J2がある。この素材は高硬
度に調質されているため耐糸摩耗性に優れる。しかし、
高硬度を得るうえで焼入れ・焼戻しの熱処理が不可欠で
あるため、13%Cr系にもかかわらず素材コストが比較
的高く、熱処理時に変態による「ひずみ」が生じるので
素材の平坦度があまり良くない。また、13%Cr系であ
ること、および焼戻し時にCr炭化物が生じることか
ら、耐食性があまり高くない。
【0007】耐食性が良好な高強度素材として、準安定
オーステナイト系ステンレス鋼を冷圧延して加工硬化さ
せたSUS301やSUS304EH材がある。これらは、冷間圧延率
を大きくすることで、おさ歯に必要な耐糸摩耗性を得る
ことができる。しかし、冷間圧延率を増大させると、板
の平坦度が劣化したり、圧下率や圧延速度による圧延材
の温度変動の影響が出やすく、コイル長手方向やロット
間で素材特性(強度,形状等)のバラツキが生じやす
い。打抜き加工時には強圧延で生じた内部残留応力のバ
ランスが崩れて形状不良が生じやすい。この系統の素材
で、おさ歯に望まれる諸特性を全て満たすことは困難で
ある。また、Niを多量に含有するため素材コストも高
くつく。
【0008】近年、安価なおさ歯用素材として、SUS403
(0.1%C−13%Cr系)の焼きなまし材を冷間で強度
に圧延してビッカース硬さを350〜400に調質したものが
出現している。しかし、焼なまし時に多量のCとCrが
結合してCr炭化物が形成するため耐食性に寄与する実
質固溶Cr量は少なくなっており、したがって、この素
材も耐食性があまり高くない。また、強度の冷間圧延を
受けているため、前述の鋼種と同様に、素材特性のバラ
ツキや打抜き加工時の形状不良が生じやすい。さらにこ
の素材は、打抜き剪断面に大きな「剪断バリ(返り)」
が生じやすく、後工程のバレル研摩に重度の負担がかか
る。大きな剪断バリが生じやすい原因は、強度の冷間圧
延で発達した圧延方向の繊維状下部組織にあると推測さ
れる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、耐食性,
耐糸摩耗性,素材平坦度,打抜き性,バレル研摩性,形
状修正性の諸特性を全て満足できるレベルに兼ね備えた
おさ歯は、未だ出現していないのが実状である。加え
て、昨今の自動織機の高速化や、硬質な新素材繊維の開
発に伴い、糸との摺動による摩耗は一層過酷化しつつあ
る。特に、糸との摺動による「糸道」の発生・増大を防
止するには、単におさ歯の硬さを増すだけでは充分な対
応が困難であると言われている。
【0010】このような現状下で高品質の織布を安定的
に生産するための対策として、安価で適度な耐糸摩耗
性を有するおさ歯を短期間で早めに交換する方法、お
さ歯素材を従来のSUS420J2からC含有量の多いSUS440A
クラスの素材に変更する方法が提唱されている。しか
し、の方法では生産性の低下が避けられない。の方
法では素材コストが高くなる。
【0011】本発明は、比較的安価な素材を採用しなが
ら、耐食性,耐糸摩耗性,素材平坦度,打抜き性,バレ
ル研摩性,形状修正性の全てにおいて不足のない特性を
兼ね備えた、耐久性の高いおさ歯を提供することを目的
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は、C:0.01〜
0.15質量%、Cr:10.0〜20.0質量%、Ni,Mn,C
uのうち1種または2種以上を合計で0.3〜5.0質量%を
含有し、必要に応じてMo:1.0質量%以下、B:0.03
質量%以下、Al:0.20質量%以下の範囲で含有し、金
属組織がフェライト相とマルテンサイト相の複相組織で
あるステンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯によって
達成される。
【0013】特に、C:0.01〜0.15質量%、Cr:12.0
〜18.0質量%、Si:0.2〜3.0質量%、Ni,Mn,C
uのうち1種または2種以上を合計で0.3〜5.0質量%、
N:0.005〜0.07質量%、B:0.001〜0.02質量%を含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、金属組織
がフェライト相とマルテンサイト相の複相組織であるス
テンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯を提供する。
【0014】また、これらのおさ歯のうち、特に、ステ
ンレス鋼素材が複相化熱処理後に圧延率10〜40%の冷間
圧延を受けたものである高耐久性おさ歯を提供する。
【0015】さらに、これらのおさ歯のうち、特に、金
属組織がフェライト相と50〜90体積%のマルテンサイト
相の複相組織、好ましくはフェライト相と60〜85体積%
のマルテンサイト相の複相組織である高耐久性おさ歯を
提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のおさ歯は、実質的にCr
炭化物を含まないことから、同一Cr含有量で比較する
と、先述のSUS420J2やSUS403のものより耐食性が優れて
いる。Cr含有量が最大20.0質量%のものまで使用でき
るため、必要に応じて、SUS420J2やSUS403を用いたもの
より格段に優れた耐食性レベルも実現できる。
【0017】本発明のおさ歯は、マルテンサイト相をか
なり多く含有しているため、13%Cr系ステンレス鋼の
冷間圧延調質材を用いたおさ歯レベルの、高い耐糸摩耗
性を有している。この耐糸摩耗性レベルは、SUS420J2の
焼入れ・焼戻し材を用いたおさ歯には及ばないものの、
実用上充分なレベルである。むしろ耐食性レベルが優っ
ている分、総合的な耐久性では本発明のおさ歯の方がSU
S420J2のものより優れている。
【0018】本発明のおさ歯に用いる素材は強度の冷間
圧延で硬さの増大を狙ったものではないため、打抜き前
の平坦度に優れている。また、硬質なマルテンサイトを
少量の軟質なフェライト相でつなぎ合わせたような金属
組織となっているため、打抜き加工においてバリの発生
はほとんど認められず、理想的な剪断面となる。このた
め、後工程のバレル研摩は極めて短時間で効率よく実施
できる。
【0019】本発明のおさ歯は、形状修正性にも優れて
いる。素材の強化方法が後述するような複相化熱処理に
よるものであるため、素材内部の残留応力が少なく、し
かも残留応力の方向性および分布のバラツキが小さい。
このため、打抜き後の形状不良はほとんど生じないか、
生じたとしても形状修正時に微細で軟質なフェライト相
が効果的に初期変形するため、形状修正作業は極めて簡
単となる。
【0020】本発明のおさ歯に特徴的な金属組織は、次
のようにして得られる。鋼成分を、高温でフェライト+
オーステナイト組織、常温でフェライト+マルテンサイ
ト組織を呈する組成に調整する。そのような鋼をフェラ
イト+オーステナイト組織を呈する高温に加熱保持し、
高温でのオーステナイト相がマルテンサイト相に変態す
るのに充分な冷却速度で冷却する。すると、微細なフェ
ライト相とマルテンサイト相の複相組織が得られる。
【0021】上記熱処理(複相化熱処理)における高温
での保持温度は、少なくともAc1点(昇温時にフェライ
ト+オーステナイトの2相組織となり始める温度)以上
にしなくてはならないが、Ac1点よりわずかに高い温度
ではオーステナイト生成量が少なく、冷却後に生じるマ
ルテンサイト量が不足して充分な耐糸摩耗性が得られな
い恐れがある。発明者らの調査によれば、(Ac1+100
℃)未満の温度では耐糸摩耗性の顕著な向上は望めない
ことがわかった。したがって、複相化熱処理の加熱温度
は(Ac1+100℃)以上の温度にするのが好ましい。た
だし、1200℃を超えるような高温にした場合、耐糸摩耗
性は逆に低下する傾向が見られるので注意を要する。高
温での保持時間は、0〜100分の範囲とすることが好まし
い。ここで0分とは、材料が所定温度に到達したのち直
ちに冷却することを意味する。
【0022】フェライト+オーステナイト組織を呈する
高温からの冷却速度は、オーステナイト→マルテンサイ
トの変態が完了する温度(鋼組成により多少変動する
が、例えば80℃)までを、30〜100℃/secの範囲とする
のが好ましい。該変態が完了した後は任意の速度で冷却
すればよい。
【0023】本発明のおさ歯において、マルテンサイト
相が少なすぎると耐糸摩耗性が不十分となるし、フェラ
イト相が少なすぎると素材平坦度,打抜き性,形状修正
性が不十分となる。金属組織は、フェライト相と50〜90
体積%のマルテンサイト相からなる複相組織とすること
が望ましく、特に好ましいのは、フェライト相と60〜85
体積%のマルテンサイト相からなる複相組織である。
【0024】次に、成分元素について説明する。Cは、
強力なオーステナイト生成作用を有するため、複相化熱
処理の高温におけるオーステナイト生成量、ひいては冷
却後のマルテンサイト量の調整に利用できる。また、マ
ルテンサイト相を強化する作用も有する。これらの作用
は、C含有量が0.01質量%以上で顕著になる。しかし、
0.15質量%を超えると、熱間圧延中にオーステナイト相
が過剰に生成して素材の製造性を害する他、複相化熱処
理後に多量の炭化物が生成しておさ歯の耐食性や靭性を
害する恐れがある。
【0025】Crは、おさ歯の耐食性を維持するうえで
少なくとも10.0質量%以上の含有が必要である。しか
し、20.0質量%を超えると靭性が劣化する他、フェライ
ト相の割合が増加して耐糸摩耗性が低下するので、その
分、C,Ni,Mn,Cu,N等のオーステナイト生成
元素を多量に添加する必要が生じ、コスト増を招く。
【0026】Ni,Mn,Cuは、いずれもオーステナ
イト生成元素であり、複相化熱処理の高温において適切
な相比のフェライト相+オーステナイト相の組織(常温
でフェライト相+マルテンサイト相の組織)を得るため
には、これらのうち少なくとも1種以上を合計で0.3質
量%以上含有させる必要がある。しかし、これらの元素
の合計含有量が5.0質量%を超えると、素材製造過程で
の熱間加工性が劣化する。
【0027】Nは、Cと同様にオーステナイト生成元素
であるが、製鋼時点で多量に添加することは表面欠陥の
増大を招くので、0.005〜0.07質量%の範囲とするのが
良い。
【0028】Moは、耐食性向上に有効であり、添加す
る場合には0.1〜1.0質量%の含有量とするのが好まし
い。
【0029】Bは、Cr炭化物の生成を抑制し、耐食性
を維持するのにも有効な元素であり、添加する場合には
0.001〜0.02質量%の含有量とするのが好ましい。
【0030】Alは、Cr炭化物の生成を抑制し、耐食
性を維持するのにも有効な元素であり、0.01〜0.20質量
%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0031】その他、耐酸化性を向上させるために希土
類元素を添加したり、炭化物を形成させて硬度を上昇さ
せる目的等でVを適宜添加してもよい。
【0032】本発明のおさ歯は、特に、複相化熱処理後
に圧延率10〜40%の冷間圧延を受けた複相組織鋼板を加
工して造ることが望ましい。冷間圧延を受けた素材を用
いると、一層高い耐糸摩耗性が得られる。ただし、40%
を超える冷間圧延を施したものでは、打抜き性,バレル
研摩性,形状修正性が低下するようになる。
【0033】
【実施例】表1に、素材の化学組成および金属組織を示
す。DP-1〜6は本発明で対象とする複相組織ステンレス
鋼である。A〜Cは比較材であり、Aは13Cr系のステ
ンレス鋼で、複相化熱処理が施されておらず金属組織が
フェライト相のもの、BはSUS420J2、CはSUS301であ
る。
【0034】
【表1】
【0035】DP-1〜6は、真空溶解炉で約500kgを溶解し
て120厚×220幅×2500長(mm)の鋼片を作製し、熱間圧延
して熱延鋼帯(板厚4.5mm)とし、焼鈍・酸洗→冷間圧
延→焼鈍・酸洗→冷間圧延→複相化熱処理の工程でおさ
歯用素材鋼帯(板厚0.4mm)に仕上げた。また、DP-1に
ついては、複相化熱処理後にさらに5〜50%の種々の冷
間圧延率で冷間圧延を施したもの(いずれも板厚0.4m
m)も作製した。ここで、複相化熱処理は、「900〜1050
℃×1分保持→冷却速度70〜100℃/secで約80℃まで水
冷」の条件で行った。これらDP-1〜6素材の金属組織は
いずれもフェライト相とマルテンサイト相の複相組織を
呈しており、各素材のマルテンサイト量は次のとおりで
あった。DP-1:71体積%,DP-2:83体積%,DP-3:73体
積%,DP-4:75体積%,DP-5:76体積%,DP-6:74体積
%。比較材A〜Cは板厚0.4mmの市販品を用いた。
【0036】これらの素材を「打抜き→バレル研摩→形
状修正」の工程でおさ歯に加工した。ここで、打抜きは
それぞれの素材に最適な条件で行い、バレル研摩は通常
条件で行い、形状修正はローラーレベラーを用いて所定
の平坦度が得られるまで複数回通板して行った。品質検
査にて「良品」と判定されたおさ歯について、打抜き
性,バレル研摩性,形状修正性を評価すると共に、耐食
性試験、および耐糸摩耗性試験を実施した。
【0037】耐食性は、JIS D 0201のキャス試験を行っ
て評価した。打抜き性は、打抜いた剪断面の形状(バリ
発生状況等)を観察して評価した。バレル研摩性は、作
業性(主に、所定の滑らかな性状が得られるまでの作業
時間)で評価した。形状修正性は、作業性(主に、所定
の形状が得られるまでのレベラー通板回数)で評価し
た。耐糸摩耗性試験は、おさ歯に、エステル(セミダ
ル)の50デニール20フィラメントの糸を押しつけ、おさ
歯と糸が摺動するよう、おさ歯を往復運動させた。この
際、糸には40gの張力を与え、摺動速度は1分当たり750
往復とし、連続5時間の試験に供した。その後、糸によ
る摺動摩擦で生じたおさ歯の摩耗部を顕微鏡観察し、摩
耗部の投影面積を測定して耐糸摩耗性を評価した。表2
に、複相化熱処理後の冷間圧延率が0%(=複相化熱処
理後に冷間圧延を施していないことを意味する。以下同
様)の素材を用いた本発明のおさ歯、および比較材A〜
Cを用いたおさ歯についての、上記評価の結果を示す。
【0038】
【表2】
【0039】本発明に係るDP-1〜6の複相組織ステンレ
ス鋼素材からなるおさ歯は、耐食性,打抜き性,バレル
研摩性,形状修正性および耐糸摩耗性の全てがバランス
良く備わったものであった。
【0040】これに対し、比較材A(複相化熱処理して
いない13Cr系)を用いたおさ歯は、耐食性,打抜き性
に劣り、バレル研摩性,形状修正性,耐糸摩耗性もあま
り良好ではなかった。比較材B(SUS420J2)を用いたお
さ歯は従来一般的なものであり、耐糸摩耗性が非常に優
れている他、打抜き性,バレル研摩性も良好であった。
しかし、耐食性に劣り、形状修正性もあまり良好ではな
いなど、おさ歯に要求される特性をバランス良く備えた
ものとは言えない。比較材C(SUS301)を用いたおさ歯
は、Cr含有量が高くかつ多量のNiを含有するため、
耐食性は本発明DP-1〜6のおさ歯よりも若干優れてい
た。しかし、打抜き性に劣り、バレル研摩性,形状修正
性,耐糸摩耗性もあまり良好ではなかった。
【0041】なお、AおよびCを用いたおさ歯は、剪断
部の「打抜きダレ」が大きく、また打抜き前の素材形状
が平坦であったにもかかわらず、打抜き後にはおさ歯の
長手方向に「反り」が生じていた。この「打抜きダレ」
に起因してバレル研摩性があまり優れず、「反り」に起
因して形状修正性があまり優れなかったものと考えられ
る。他の素材を用いたものにはこのような「打抜きダ
レ」や「反り」は見られなかった。
【0042】表3に、複相化熱処理後の冷間圧延率が5
〜50%のDP-1素材を用いたおさ歯についての、上記評価
の結果を示す。表3中には表2のデータの一部を重複し
て記載してある。
【0043】
【表3】
【0044】複相化熱処理後に10%以上の冷間圧延を施
した素材を用いたおさ歯では、耐糸摩耗性の向上効果が
認められた。しかし、あまり強度の冷間圧延を施すと打
抜き性,バレル研摩性が低下するので、10〜40%の冷間
圧延率とするのが望ましい。
【0045】
【発明の効果】本発明のおさ歯は、耐食性,耐糸摩耗
性,素材平坦度,打抜き性,バレル研摩性,形状修正性
の全てにおいて、バランスのとれた良好な特性を有して
いる。耐糸摩耗性だけを単に比較すると従来のSUS420J2
を用いたおさ歯には及ばないが、他の特性(特に耐食
性)を含めた総合的な耐久性では本発明のおさ歯の方が
優る。また、素材コストおよびおさ歯への加工性(特に
形状修正性)の面でも本発明の複相組織ステンレス鋼を
用いる方が有利である。おさ歯に要求される種々の特性
をこのようにバランス良く兼ね備え、かつ素材コストも
低く抑えたおさ歯は、現時点で他に見出せない。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動織機の構成を表す概念図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.01〜0.15質量%、Cr:10.0〜2
    0.0質量%、Ni,Mn,Cuのうち1種または2種以
    上を合計で0.3〜5.0質量%を含有し、金属組織がフェラ
    イト相とマルテンサイト相の複相組織であるステンレス
    鋼素材からなる高耐久性おさ歯。
  2. 【請求項2】 C:0.01〜0.15質量%、Cr:10.0〜2
    0.0質量%、Ni,Mn,Cuのうち1種または2種以
    上を合計で0.3〜5.0質量%、Mo:0〜1.0質量%(無添
    加を含む)、B:0〜0.03質量%(無添加を含む)、A
    l:0〜0.20質量%(無添加を含む)を含有し、金属組
    織がフェライト相とマルテンサイト相の複相組織である
    ステンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯。
  3. 【請求項3】 C:0.01〜0.15質量%、Cr:12.0〜1
    8.0質量%、Si:0.2〜3.0質量%、Ni,Mn,Cu
    のうち1種または2種以上を合計で0.3〜5.0質量%、
    N:0.005〜0.07質量%、B:0.001〜0.02質量%を含有
    し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、金属組織
    がフェライト相とマルテンサイト相の複相組織であるス
    テンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯。
  4. 【請求項4】 ステンレス鋼素材が、複相化熱処理後に
    圧延率10〜40%の冷間圧延を受けたものである、請求項
    1〜3に記載の高耐久性おさ歯。
  5. 【請求項5】 金属組織がフェライト相と50〜90体積%
    のマルテンサイト相の複相組織である、請求項1〜4に
    記載の高耐久性おさ歯。
  6. 【請求項6】 金属組織がフェライト相と60〜85体積%
    のマルテンサイト相の複相組織である、請求項1〜4に
    記載の高耐久性おさ歯。
JP10188398A 1998-03-31 1998-03-31 複相組織ステンレス鋼素材からなる高耐久性おさ歯 Withdrawn JPH11286852A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002332546A (ja) * 2001-05-09 2002-11-22 Nisshin Steel Co Ltd 耐食性および耐摩耗性に優れた高強度ステンレス鋼
WO2019038925A1 (ja) 2017-08-25 2019-02-28 日新製鋼株式会社 糸道摩耗試験機および糸道摩耗試験方法
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