JP3964269B2 - ヘルドバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、織機用部品の一つであるヘルドバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
織機を構成するヘルドバーは、長さが例えば1.5〜4m程度の長尺な形鋼からできており、織機の運転時には、その幅方向両端部のエッジに対してヘルドが絶え間なく接触する。このことから、そのエッジ部には高い耐摩耗性、すなわち高い硬度が要求されている。ところで、従来のヘルドバーは、SUS304やSUS420といったステンレス鋼の丸棒を圧延によって平板状に加工して製造されており、この製法によってエッジ部の断面は円形状に形成され、織機の滑らかな動きが維持されるようになっている。ただし、この製法によると、加工度としては幅方向中央部がエッジ部よりも大きいため、その中央部の方がエッジ部よりも硬くなる。硬さとしては、例えば、中央部が460〜510Hv、エッジ部が450〜470Hvといった数値が一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の製法では、エッジ部の硬さを高めるためには中央部の硬さをそれ以上に高める必要があることは自ずと明らかである。しかしながら、例えば中央部を500Hv超の硬さに加工すると、加工時あるいは織機運転時に突発的な折れが生じる場合があり、これはすなわちエッジ部の硬さを高めるには限度があることを示している。そこで、エッジ部が十分な硬さを有しながらも折れが生じにくいヘルドバーが要望されていた。
よって本発明は、エッジ部が十分な硬さを有するとともに折れが生じにくいヘルドバーを提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のヘルドバーは、単一の金属材料で長尺平板状に成形されたヘルドバーであって、幅方向の中央部の硬さが430〜500Hvであり、幅方向両端のエッジ部の硬さが中央部よりも高く、かつ470Hv以上であることを特徴としている。また、別のパラメータとしては、幅方向の中央部の硬さが430〜500Hvであり、幅方向両端のエッジ部の硬さが中央部よりも10%以上高いことを特徴としている。
【0005】
本発明のヘルドバーによれば、中央部の硬さが430〜500Hvであって、この中央部よりもエッジ部の方が上記のように硬いので、エッジ部が十分な硬さを有しており、したがってエッジ部は優れた耐摩耗性を発揮する。また、中央部を上記硬さに抑えることができるので、柔軟性が確保され折れが生じにくい。
【0006】
本発明のヘルドバーは、織機の滑らかな動きが維持されるように、エッジ部の断面が円形状に形成され、かつ、そのエッジ部の厚さがエッジ部以外の部分の厚さよりも厚い形状であることを好ましい形態とする。
【0007】
また、本発明のヘルドバーは、その成分が、C:0.03〜0.30wt%、Si:3.0wt%以下、Mn:3.0wt%以下、Ni:5.0〜10.0wt%、Cr:15.0〜25.0wt%、N:0.02〜0.30wt%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼製であることを特徴とする。この成分では、とりわけCr量が多いことを特徴としており、そのため耐食性の向上が図られる。織機には、水ジェットによってヘルドバーの糸孔に糸を通する形式のものがあり、その場合には、ヘルドバーに錆びが発生しやすくなるが、上記成分を有することにより、錆びの発生を効果的に抑えることができる。
【0008】
図1(a),(b)は、本発明のヘルドバーの一例を示しており、このヘルドバー10は、図1(b)に示すように、幅方向両端のエッジ部11の断面が円形状に形成され、エッジ部11間の均一厚さの中央部12よりも、エッジ部11の厚さが厚い。寸法例としては、全体の幅Wが9.5mm、エッジ部11の厚さT1が1.51〜1.53mm、中央部12の厚さT2が1.50mmであり、長さLは織機の仕様によって適宜とされるが、概ね1.5〜4m程度である。
【0010】
図2(a)は、本発明のヘルドバーの好適な製造方法の一例を示している。この製造方法は、上記成分を有するステンレス鋼からなる平板状の素材板10Aを、一対のロール20,20の間に挟み、素材板20を長手方向に移動させることによって幅方向両端のエッジ部をロール圧延している。ロール20は、図2(b)に示すように、周面であるロール面が円弧状の凹溝となっており、この凹溝に素材板20のエッジ部が押し付けられて塑性変形することにより、エッジ部は図1(b)に示したように断面が円形状に形成される。なお、ロール圧延は何段階かにわたって行い、1回のロール圧延が終了した直後には、発熱による反り、曲がり、あるいは捻れ等を抑えるために水冷することが望ましい。
【0011】
【実施例】
次に、実施例を提示して本発明の効果をより明らかにする。
表1は、鋼種A,B,Cの成分を示している。鋼種A,Bは本発明の請求項4の成分範囲内のステンレス鋼であり、鋼種Cはその範囲外でSUS420系である。これら鋼種A,B,Cを用いて、表2に示す実施例1〜5および比較例1〜4のヘルドバーを製造した。比較例3のヘルドバーは、従来の製法、すなわち丸棒を平板状に圧延して製造した。また比較例3以外は、図2に示した方法、すなわち平板状の素材板のエッジ部をロール圧延する方法を適用して製造した。なお、製造した各ヘルドバーの寸法は、厚さが1.5mm、幅が9.5mm、長さが2100mmである。また、圧延時の圧下率を適宜に変えることで中央部の硬さに差異が生じるようにした。
【0012】
【表1】
【0013】
製造した各ヘルドバーのエッジ部および中央部についてビッカース硬さ(Hv)を調べた。また、JIS G0577に準拠する方法(30℃の3.5%食塩水中での孔食電位を調べる)で耐食性試験を行った。また、耐摩耗性試験として、各ヘルドバーを織機(津田駒社製:ZW403)に用いて通常の運転を1日当たり24時間連続して行い、幅が7mmになるまでの運転日数を調べた。これらの結果を、表2に併記する。
【0014】
【表2】
【0015】
表2から明らかなように、実施例1〜5のヘルドバーは、エッジ部の硬さが470Hv以上が確保されていることにより耐摩耗性が高く、また、Cr量の多い鋼種A,Bを用いているので優れた耐食性を発揮することが認められた。一方、エッジ部の硬さが450以下の比較例1〜3のヘルドバーは耐摩耗性に劣っており、鋼種Cを用いた比較例3,4は耐食性に劣っていた。特に比較例4は50日で腐食(錆び)が顕著に認められた。したがって、エッジ部の硬さが本発明のように規定され、かつCr量が確保されていることにより、優れた耐摩耗性および耐食性が得られることが確認された。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、幅方向両端のエッジ部の硬さを中央部の硬さよりも高くし、かつその硬さを規定したので、優れた耐摩耗性を有するとともに折れが生じにくいヘルドバーを提供することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るヘルドバーの一例を示す(a)側面図、(b)断面図である。
【図2】 本発明に係るヘルドバーの製造方法の一例を示す(a)側面図、(b)断面図である。
【符号の説明】
10…ヘルドバー、10A…素材板、11…エッジ部、12…中央部、
20…ロール。
Claims (3)
- 単一の金属材料で長尺平板状に成形された織機用ヘルドバーであって、幅方向両端のエッジ部がロール圧延されることによって、該エッジ部がエッジ部以外の部分の厚さよりも厚い断面円形状に形成され、さらに幅方向の中央部の硬さが430〜500Hvであり、前記エッジ部の硬さが前記中央部よりも高く、かつ470Hv以上であることを特徴とするヘルドバー。
- 単一の金属材料で長尺平板状に成形された織機用ヘルドバーであって、幅方向両端のエッジ部がロール圧延されることによって、該エッジ部がエッジ部以外の部分の厚さよりも厚い断面円形状に形成され、さらに幅方向の中央部の硬さが430〜500Hvであり、前記エッジ部の硬さが前記中央部よりも10%以上高いことを特徴とするヘルドバー。
- C:0.03〜0.30wt%、Si:3.0wt%以下、Mn:3.0wt%以下、Ni:5.0〜10.0wt%、Cr:15.0〜25.0wt%、N:0.02〜0.30wt%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1または2に記載のヘルドバー。
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