JPH0768304A

JPH0768304A - 棒鋼圧延用ロール

Info

Publication number: JPH0768304A
Application number: JP21839093A
Authority: JP
Inventors: Mitsuyoshi Horiuchi; 満喜堀内; Kuniyoshi Fuchigami; 訓由渕上; Toshiyuki Hattori; 敏幸服部; Masahiko Oshima; 昌彦大島
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Proterial Ltd
Priority date: 1993-09-02
Filing date: 1993-09-02
Publication date: 1995-03-14
Anticipated expiration: 2017-07-29
Also published as: JP3308058B2

Abstract

(57)【要約】【目的】噛合い刃の耐欠損性に優れ、かつ耐摩耗性を
有した棒鋼圧延用ロールを提供する。【構成】隣接する孔型との間に所定の角度を保持して
噛合い刃を設け、その噛合い刃にて圧延材を２分割する
棒鋼圧延用ロールにおいて、面積比で粒状炭化物を２〜
２０％と、非粒状炭化物を２〜１５％とを含有し、化学
成分が重量比でＣ１．５〜２．７％、Ｓｉ０．３〜３．
０％、Ｍｎ０．３〜１．５％、Ｃｒ２．０〜７．０％、
Ｖ３．０〜９．０％、Ｗ１５．０％以下、Ｍｏ９．０％
以下、残部Ｆｅおよび不純物元素からなり、さらにＣ
ｏ、Ｎｂ、Ｎｉ、Ｎ、Ｂ等を含むことができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は耐摩耗性に富み、かつ噛
合い刃部分が耐欠損性を有する棒鋼圧延用ロールに関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】棒鋼圧延においては、例えば実開昭６４
−３８１０２号公報に記載されたスリット圧延用ロール
に用いるものがある。これは、図３（ａ）、（ｂ）に示
すようにスリット圧延用ロール１、２間に設けられた互
いに隣接する孔型３の間に所定の角度を保持して噛合い
刃４を設け、その噛合い刃４にて棒鋼を二分割すること
を特徴としている。このようなスリット圧延では、棒鋼
圧延中に噛合い刃付近に応力が集中する。そのためクラ
ックが発生、進展して、最終的には噛合い刃の欠損が起
こりやすい。

【０００３】そのため、従来から一般にスリット圧延用
ロールとしては、ダクタイル鋳鉄が広く用いられてい
る。これは組織的にクラックが進展しやすい炭化物のか
わりに黒鉛を晶出させ、耐欠損性を得ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記のダクタイル鋳鉄
をスリット圧延用ロールに用いた場合、噛合い刃付近の
欠損は生じにくくなるが、炭化物の晶出が少ないために
硬さが低い。そのため孔型部が摩耗しやすく、圧延機に
組み込まれたロールを頻繁に交換する必要があり、生産
効率を悪化させる問題があった。そこで、ダクタイル鋳
鉄よりも耐摩耗性のすぐれた、非粒状炭化物を３０〜４
０％晶出させたチルドあるいはグレン鋳鉄を用いた場合
では、孔型の寿命は伸びるが、噛合い刃欠損が生じやす
く、性能の点で不十分であった。したがって、本発明の
目的は、噛合い刃の耐欠損性に優れ、かつ耐摩耗性に優
れた棒鋼圧延用ロールを提供するためになされたもので
ある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の棒鋼圧延用ロー
ルは、隣接する孔型との間に所定の角度を保持して噛合
い刃を設け、その噛合い刃にて圧延材を２分割する棒鋼
圧延用ロールにおいて、面積比で粒状炭化物を２〜２０
％と、非粒状炭化物を２〜１５％とを含有する組織から
なることを特徴とする。

【０００６】また、前記棒鋼圧延用ロールの化学成分が
重量比でＣ１．５〜２．７％、Ｓｉ０．３〜３．０％、
Ｍｎ０．３〜１．５％、Ｃｒ２．０〜７．０％、Ｖ３．
０〜９．０％、Ｗ１５．０％以下、Ｍｏ９．０％以下、
残部Ｆｅおよび不純物元素からなることを特徴とする。
さらに上記元素の他に、Ｃｏ、Ｎｂ、Ｎｉ、Ｎ、Ｂの１
種または２種以上を含有することができ、その含有量は
重量比でＣｏ８．０％以下、Ｎｂ５．０％以下、Ｎｉ
５．０％以下、Ｎ０．１５％以下、Ｂ０．０３％以下と
する。

【０００７】すなわち、本発明は棒鋼圧延用ロールにお
いて、Ｆｅ基合金からなるロールの化学成分にＭＣ系等
のいわゆる粒状炭化物と、Ｍ₂₃Ｃ₆やＭ₂Ｃ系等のいわゆ
る非粒状炭化物とを含有しその含有率を特定することに
より、すぐれた耐摩耗性と耐欠損性を得ることを図った
ものである。

【０００８】

【作用】以下、本発明を詳細に説明する。本発明におい
て、ＭＣ系等のいわゆる粒状炭化物の好ましい含有率は
面積比で２〜２０％である。この含有率の範囲外になる
と耐摩耗性が十分でなくなる。また、Ｍ₂₃Ｃ₆やＭ₂Ｃ系
等のいわゆる非粒状炭化物の好ましい含有率は面積比で
２〜１５％含有である。この含有率の範囲外になると、
金属組織的にクラックが進展しやすくなり、耐欠損性の
点で好ましくない。

【０００９】次に、本発明による棒鋼圧延用ロールの化
学成分の含有量（重量比）の限定理由を述べる。Ｃ：１．５〜２．７％Ｃは耐摩耗性向上のための炭化物形成に必要な元素であ
る。その量が１．５％未満の場合、晶出炭化物量が少な
く、耐摩耗性の点で十分でない。またＶとのバランスに
おいて、下限値未満では粒界に非粒状炭化物が晶出し
て、耐欠損性においても不十分である。一方、Ｃが２．
７％を超えるとＶとのバランスがくずれ、ＶＣの基地中
での均一な分布が得られず、耐欠損性の点で劣るように
なる。

【００１０】Ｓｉ：０．３〜３．０％Ｓｉは脱酸剤として必要な元素である。その量が０．３
％未満の場合、脱酸効果がなく鋳造欠陥を生じやすい。
また３．０％を超えると脆化が生じやすくなるため好ま
しくない。

【００１１】Ｍｎ：０．３〜１．５％Ｍｎは脱酸効果があるとともに、不純物であるＳをＭｎ
Ｓとして固定する効果がある。そのため、その量は０．
３％以上必要である。しかし１．５％を超えると残留オ
ーステナイトが生じやすくなり、安定して十分な硬さを
維持できない。

【００１２】Ｃｒ：２．０〜７．０％Ｃｒは焼入れ性を向上させる効果がある。その量が２．
０％未満では十分な焼入れ性が得られない。しかし、
７．０％を超えるとＭＣ等の硬質な粒状炭化物に比べ、
硬さが低く網目状のＣｒ系炭化物が過多となり、耐欠損
性、耐摩耗性を低下させるため好ましくない。

【００１３】Ｖ：３．０〜９．０％Ｖは網目状のセメンタイトやＭ₂₃Ｃ₆等に比べ耐欠損性
を有し、耐摩耗性の向上に効果のあるＭＣ系粒状炭化物
を形成するための必須元素である。その量は３．０％以
下では、上記Ｃの範囲とＶとのバランスにおいて、ＭＣ
系粒状炭化物を形成するには十分な量ではない。しか
し、９．０％を超えるとＭＣ系粒状炭化物が均一に分布
しにくくなり好ましくない。

【００１４】Ｗ：１５．０％以下Ｗは焼戻し軟化抵抗性の向上や高温硬さの向上に効果が
ある。その量は１５．０％を超えると、ＣとＶとのバラ
ンスにおいてＭ₆Ｃ系非粒状炭化物が増加し、耐欠損性
上好ましくない。

【００１５】Ｍｏ：９．０％以下Ｍｏも上記Ｗと同様な効果があり、その量が９．０％を
超えるとＷと同様Ｍ₆Ｃ系非粒状炭化物が過多になり、
好ましくない。

【００１６】本発明の棒鋼圧延用ロールに用いるＦｅ基
合金は、上記元素の他にＣｏ、Ｎｂ、Ｎｉ、Ｎ、Ｂの１
種または２種以上を含有することができる。Ｃｏ：８．０％以下Ｃｏは材質の靱性を向上させ、かつ熱間硬さを向上させ
る効果がある。その量は重量比にして８．０％にて上記
向上効果がほぼ飽和するため、上限は８．０％である。

【００１７】Ｎｂ：５．０％以下ＮｂはＶ同様に硬質のＭＣ系粒状炭化物を形成し、耐欠
損性、耐摩耗性に効果がある。その量は重量比にて５．
０％を超えると溶湯の酸化が激しくなり、大気中での溶
解、鋳造が困難になり好ましくない。

【００１８】Ｎｉ：５．０％以下Ｎｉは焼入れ性を向上させる効果があり、大型ロールの
ように焼入れ速度を速くできないものには効果的であ
る。その量は重量比にて５．０％を超えると、オーステ
ナイトが安定化しすぎ、熱処理後の残留オーステナイト
が過多となり、十分な硬さが得られず好ましくない。

【００１９】Ｎ：０．１５％以下Ｎは粒状炭化物を微細化し、分布を均一化する作用があ
る。そのためクラックが進展しにくく、耐欠損性に対す
る効果がある。この効果が認められるのは重量比にて
０．１５％以下である。より好ましい範囲は０．０３〜
０．１５％である。

【００２０】Ｂ：０．０３％以下Ｂは基地中の非粒状炭化物の生成を助長し、かつその中
に濃縮され、それを脆化する。脆化された非粒状炭化物
に沿ってクラックが進展しやすく、耐欠損性上好ましく
ない。その量は重量比にて０．０３％以下ならば、上記
現象が認められない。

【００２１】図４は本発明の棒鋼圧延用ロールを製造し
得る装置の一例を示す。本装置は、誘導加熱コイル８で
包囲された耐火枠５と、耐火枠５の下に同軸的に配置さ
れた緩衝型９及び冷却型６とからなる組合せモールド７
の内側に設けられた空間に、鋳鋼または鍛鋼からなる軸
材１２を同軸的に遊嵌させ、軸材１２とモールド７との
間に形成された空隙に前記組成のＦｅ基合金の溶湯１３
を注入するとともに、溶湯表面をフラックス１４でシー
ルし、軸材１２をモールド７に対して同軸的に下方へ移
動させて、溶湯１３を緩衝型９及び冷却型６に接触させ
て凝固させることにより形成した外層１５を軸材１２に
溶着させることにより、連続的に肉盛りを行うものであ
る。

【００２２】

【実施例】本発明を以下の具体実施例によりさらに詳細
に説明する。実施例１〜５として、鍛鋼製の軸材と表１
に示す組成のロール外層材溶湯を用いて、前記図４の鋳
造装置により、胴径３４０mm、胴長７００mmのロールを
鋳造し、熱処理を施した後、表面をそれぞれ図２に示す
ような孔型の形状に加工し、棒鋼圧延用ロールを製作し
た。

【００２３】また、比較例として表１に示す組成の比較
例１〜５の棒鋼圧延用ロールを製作した。比較例１〜３
はロール外層材の金属組織中に網目状炭化物が多いロー
ル、比較例４〜５は従来のダクタイル鋳鉄ロールであ
る。なお、本実施例１〜５及び比較例１〜３のロール
は、熱処理として１０６０℃の焼入れと、５３０℃で１
回、５４０℃で２回の焼戻しを施した。

【００２４】

【表１】

【００２５】図１に実施例１のロール、図２に比較例１
のロールの外層の金属組織をそれぞれ示す。これらの図
において、白色に見える部分が炭化物である。実施例１
のロールの金属組織は、比較例１のそれと比べて、非粒
状炭化物が少なくなっている。

【００２６】次に、これらの棒鋼圧延用ロールを用い、
実圧延機による圧延試験を行った。表２に圧延した量
（ｔｏｎ）とそのときのロール消耗量（ｍｍφ）との関
係、これを単位消耗量で整理した結果を示す。なお、こ
れらいずれのロールにおいても噛合い刃付近の欠損は発
生しなかった。また、表３に実施例および比較例ロール
の外層材のショア硬さ（Ｈｓ）、破壊靭性値（Ｋ
₁Ｃ）、粒状炭化物および非粒状炭化物の面積率を示
す。

【００２７】

【表２】

【００２８】

【表３】

【００２９】表２より、同じスリット形状の棒鋼圧延用
ロールどうしの実施例と比較例を比べると、本実施例ロ
ールの耐用圧延量は、比較例よりも優れており、特に比
較例４または５の従来のダクタイル鋳鉄ロールの４．０
〜４．６倍となり、著しく優れていることがわかる。

【００３０】

【発明の効果】本発明により、従来の４倍以上の耐摩耗
性と耐欠損性とを有する棒鋼圧延用ロールを製造するこ
とが可能となった。このことは、ロールの寿命延長のみ
ならず、ロール交換頻度の低減により生産効率を高め、
さらに圧延製品形状の改善等の効果をもたらすものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１ロール外層材の金属組織を示す顕微鏡
写真である。

【図２】比較例１ロール外層材の金属組織を示す顕微鏡
写真である。

【図３】スリット圧延用ロールの孔型例を示す図であ
る。

【図４】本発明の棒鋼圧延用ロールを製造し得る装置の
一例を示す図である。

【符号の説明】

１、２スリットロール、３孔型、４噛合い
刃、５耐火枠、６冷却型、７モールド、８
誘導加熱コイル、９緩衝型、１０冷却水入口、
１１冷却水出口、１２軸材、１３溶湯、１
４フラックス、１５外層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者大島昌彦福岡県北九州市若松区北浜一丁目９番１号日立金属株式会社若松工場内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】隣接する孔型との間に所定の角度を保持
して噛合い刃を設け、その噛合い刃にて圧延材を２分割
する棒鋼圧延用ロールにおいて、面積比で粒状炭化物を
２〜２０％と、非粒状炭化物を２〜１５％とを含有する
組織からなることを特徴とする棒鋼圧延用ロール。
【請求項２】請求項１に記載のロールにおいて、前記
ロール材の化学成分が重量比でＣ１．５〜２．７％、Ｓ
ｉ０．３〜３．０％、Ｍｎ０．３〜１．５％、Ｃｒ２．
０〜７．０％、Ｖ３．０〜９．０％、Ｗ１５．０％以
下、Ｍｏ９．０％以下、残部Ｆｅおよび不純物元素から
なることを特徴とする棒鋼圧延用ロール。
【請求項３】請求項２に記載のロールにおいて、前記
ロールにＣｏを重量比にて８．０％以下含有することを
特徴とする棒鋼圧延用ロール。
【請求項４】請求項２又は請求項３に記載のロールに
おいて、前記ロールにＮｂを重量比にて５．０％以下含
有することを特徴とする棒鋼圧延用ロール。
【請求項５】請求項２ないし請求項４のいずれかに記
載のロールにおいて、前記ロールにＮｉを重量比にて
５．０％以下含有することを特徴とする棒鋼圧延用ロー
ル。
【請求項６】請求項２ないし請求項５のいずれかに記
載のロールにおいて、前記ロールにＮを重量比にて０．
１５％以下含有することを特徴とする棒鋼圧延用ロー
ル。
【請求項７】請求項２ないし請求項６のいずれかに記
載のロールにおいて、前記ロールにＢを重量比にて０．
０３％以下含有することを特徴とする棒鋼圧延用ロー
ル。