JP4383210B2 - 高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents

高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4383210B2
JP4383210B2 JP2004071110A JP2004071110A JP4383210B2 JP 4383210 B2 JP4383210 B2 JP 4383210B2 JP 2004071110 A JP2004071110 A JP 2004071110A JP 2004071110 A JP2004071110 A JP 2004071110A JP 4383210 B2 JP4383210 B2 JP 4383210B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stainless steel
less
mass
corrosion resistance
carbide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004071110A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005256114A (ja
Inventor
修平 堤
雄二 池上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Yakin Kogyo Co Ltd filed Critical Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Priority to JP2004071110A priority Critical patent/JP4383210B2/ja
Publication of JP2005256114A publication Critical patent/JP2005256114A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4383210B2 publication Critical patent/JP4383210B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
  • Looms (AREA)

Description

本発明は、耐摩耗性及び耐食性が要求されるステンレス鋼材に関する。詳細には、耐摩耗性及び耐食性を要求される、例えば、筬羽、ヘルド等のような機料品用途に適した高強度ステンレス鋼材に関する。
図6の織機の模式図を用いて機織の基本動作について説明する。図6中の筬羽、ヘルドは、それぞれ経糸、緯糸をガイドするために用いられるものである。緯糸は、ヘルドによって支えられて交互に上下運動し、等間隔に配列された筬羽の間を通過する。一方、経糸は、緯糸が交互に上下運動する毎に、例えばエアージェットやウオータージェットの動力により駆動され、緯糸の間を通過する。次に、経糸の通過後に筬羽が前後に動いて、緯糸、経糸が織物へと織られる。
機織時には糸は高速で通過するので、上記のように緯糸、経糸と接触している筬羽、ヘルドは一定期間使用すると摩耗してくる。筬羽、ヘルドが摩耗すると、摩耗部が糸切れや毛羽立ちの原因となるため、そのつど交換が必要となる。そのため、筬羽、ヘルドの糸に対する耐摩耗性は、筬羽、ヘルドの寿命を決定する最も重要な品質の一つと言える。
機織時の周囲の雰囲気は、ウオータージェット方式の織機では常時湿潤環境にある。また、エアージェット方式の織機の場合でも、染料などにより腐食環境にさらされる場合が多い。そのため、筬羽、ヘルドに錆が発生した場合には、摩耗を受けた場合と同様、錆発生箇所が糸切れや毛羽立ちの原因となる。従って、筬羽、ヘルドについては、耐食性も要求される。
従って、機織部品には、SUS301ハード材に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼や、SUS420J2に代表される炭化物を含有するマルテンサイト系ステンレス鋼などの、高強度ステンレス鋼が用いられている。
特開2003−105504号公報 特開2003−147493号公報
ところで、前記SUS301ハード材は耐食性を有しているが、機織部品用には耐磨耗性が不十分である。そのため、セラミックコーティング方法等により、磨耗を受ける表層部を硬質化させる対応策がとられてきた。ところが、このような表面処理方法は製造コストが高くなるという問題点があった。
一方SUS420J2は耐摩耗性に優れるが、耐食性に有効なCr量が少ないため、耐食性に劣っている。また、強度を確保するために、焼入れや焼戻しを行うので製造コストが高くなるという問題点があった。
耐食性を保ちつつ耐摩耗性を向上させるには、オーステナイト系ステンレス鋼の耐摩耗性を向上させる方法が有効である。特開2003−105504号公報には、オーステナイト系ステンレス鋼において、圧延後に長時間熱処理を行うことにより、母相にCr炭窒化物を多量に析出させて耐摩耗性を向上させる内容の技術が記載されている。
しかし、この方法では、粗大なCr炭化物および炭窒化物が多量に析出し、これらを起点に冷間圧延時に耳割れが発生して、圧延時に破断の危険が高くなるという問題があった。さらに、耐食性に有効である母相中のCr量が炭化物および炭窒化物に取られることから、耐食性が劣化するという問題もあった。
従って本発明は、機織部品等に必要な耐摩耗性及び耐食性を具備した材料を、より容易に作製し、提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、下記の工程を備えたことを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
(a)成分組成として、C:0.03〜0.30mass%、Si:3.0mass%以下、Mn:3.0mass%以下、Ni:5.0〜20.0mass%、Cr:15.0〜30.0mass%以下、N:0.30mass%以下を含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物からなるステンレス鋼材のスラブを用意する工程と
(b)前記スラブに熱間圧延加工を行ってから、固溶化熱処理を施す工程と
(c)次いで、圧延率が30%以上66%以下の冷間圧延後に700〜950℃の温度範囲で焼鈍時間0.5分以上10分以下の連続焼鈍を行う工程を、1回以上施して炭化物および炭窒化物を析出させる工程と
(d)その後、仕上冷間圧延する工程
本発明の第2の態様は、前記の、冷間圧延を行い、引続いて、700〜950℃の温度範囲で連続焼鈍を施して炭化物を析出させることを、1回以上繰り返し、その後、仕上冷間圧延することを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
本発明の第3の態様は、前記冷間圧延の圧延率が30%以上であることを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
本発明の第4の態様は、前記仕上冷間圧延の後に、200〜700℃の温度範囲で熱処理を行うことを特徴とする耐耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
本発明の第5の態様は、前記ステンレス鋼材は、成分組成として、さらにMoを4.0mass%以下含有することを特撤とする耐耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
本発明の第6の態様は、前記ステンレス鋼材は、成分組成として、さらにV:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Nb:1.0%以下、Zr:1.0%以下のうちから選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする耐磨耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
本発明の第7の態様は、前記ステンレス鋼材の金属組織中に析出した炭化物及び炭窒化物の占める面積率が10%以上であり、かつ析出した炭化物及び炭窒化物の平均直径が1μm以下であることを特徴とする耐磨耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法である。
本発明によれば、オーステナイトをベースに炭化物および炭窒化物を析出、分散させることで良好な耐摩耗性、耐食性および製造性を有するステンレス鋼を得ることができる。本発明品を用いることで、耐摩耗性および耐食性が要求される分野、例えば、筬羽、ヘルドなどの機料品、プレスプレート、スイッチコネクター、刃物等に使用すると寿命を延ばす等の効果があり、本発明鋼の存在は極めて有効である。
表面処理をしないで耐摩耗性を向上させるには、母相を硬質化すること、母相中に硬質な第2相粒子を均一に分散させること、が有効なことは周知である。本発明では、表面処理により表層を硬質化するのではなく、母相に硬質な炭化物及び炭窒化物を析出、分散させて耐摩耗性を向上させることを特徴とする。さらにそれをオーステナイト系ステンレス鋼で行って耐食性も確保することを特徴とする。
母相に析出させる硬質な炭化物及び炭窒化物は、粗大ではなく、微細に均一に分散させる。これより冷間圧延に耐えうる延性を保ち、さらに耐摩耗性を向上させ、また耐食性の劣化も防止できる。
炭化物や炭窒化物の析出は、フェライト系ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼の一部鋼種で認められる。しかし、フェライト系ステンレス鋼では母相の硬質化が限られており、耐摩耗性には炭化物のみの効果しかないため、耐摩耗性の向上にはおのずと限界がある。
一方マルテンサイト系ステンレス鋼は、母相の硬度を確保することも可能であるが、マルテンサイト組織を得るためには耐食性に有効なCr量を増加することができないため、耐食性に問題がある。またその製造工程で焼入れ、焼戻し処理が必ず必要となるので、製造コストが高くなるということもある。
そのため、オーステナイト系ステンレス鋼を用いた高耐磨耗性、高耐食性について検討を進め、ステンレス鋼に析出させることが容易であるCrを主体とする炭化物および炭窒化物を母相中に分散させることに着手した。
ところが、炭化物および炭窒化物の析出量を多くしすぎると、耐食性に有効である母相中のCrが析出物に取られてしまい、耐食性が劣化する。従って、耐磨耗性および耐食性の面から、炭化物および炭窒化物の析出量、すなわち面積率を規定する。
また、析出させる炭化物および炭窒化物が粗大であると、冷間圧延時に割れの起点となり、圧延破断の原因となる。従って、炭化物および炭窒化物は、その平均直径に上限を設ける。
析出させる炭化物および炭窒化物の析出量や大きさは、冷間圧延率およびその後の熱処理温度条件によって制御できる。本発明に言う30%以上の加工率で冷間圧延を行い、その後連続焼鈍による(短時間の)熱処理を行うことにより、炭化物および炭窒化物を均一かつ微細に分散させることができる。
本件発明では、下記成分組成および残部がFeおよび不可避不純物からなるステンレス鋼材のスラブを用意し、熱間圧延加工を行ってから、固溶化熱処理を施し、次いで冷間圧延を行い、引き続いて、700〜950℃の温度範囲で連続焼鈍を施して炭化物および炭窒化物を析出させ、その後、仕上冷間圧延することを特徴とする。
まず発明において、成分組成を限定する理由について以下に述べる。
C:0.03〜0.30%、Cは強力なオーステナイト形成元素であるばかりか、炭化物、炭窒化物を構成する元素であるため、耐摩耗性向上には多いほど好ましく、0.03wt%以上は必要である。しかしながら、0.30wt%を超えて含有すると、粗大な未固溶炭化物が生成し冷間圧延破断の危険が高まるばかりか、耐食性も劣化させるため、0.03〜0.30wt%、好ましくは0.05〜0.25wt%、より好ましくは0.10〜0.25wt%とする。
Si:3.0以下、Siは、脱酸に必要な元素であるとともに高強度化に有効な元素であるが、3.0wt%を超えて含有すると冷間圧延破断の危険が高まるため3.0wt%以下とする。
Mn:3.0%以下、MnもSi同様に脱酸に必要な元素であり、かつオーステナイト形成元素であるため、オーステナイト組織を得るのに必要であるが、3.0wt%を超えて含有すると焼鈍酸洗時に異常酸化の原因を招き、歩留まり低下につながるため3.0wt%以下とする。
Ni:5.0〜20.0%、Niは、強力なオーステナイト形成元素であり、5wt%以上必要である。しかしながら高価な元素であり、上限を20wt%とし、5.0〜20.0wt%、好ましくは5.0〜15.0wt%とする。
Cr:15.0〜30.0%以下、Crは、炭化物を形成する元素であり、かつ耐食性向上にも有効なことから、15.0wt%を超えて含有することが必要である。しかしながら30.0wt%を超えて含有すると、σ相が析出し、逆に耐食性を害するほか、製造性も劣化させるので上限を30.0wt%とし、15.0超え〜30.0wt%、好ましくは15.0超え〜25.0wt%とする。
N:0.30%以下、Nは、0.30wt%を超えて含有すると冷間圧延破断の危険が高まるため0.30wt%以下とする。ただし、高強度化や耐食性向上に有効であるため、これらの効果を必要とする場合には、好ましくは0.02〜0.25wt%、より好ましくは0.05〜0.20wt%とする。
Pは、スクラップ中に含有する元素であり、かつ精錬での除去が困難な元素であるが、0.045%を超えて含有すると耐食性を劣化させるため、0.045wt%以下が望ましい。
Sは、スクラップ中に含有する元素であり、精錬での除去にはコストがかかるが、0.01wt%を超えて含有すると耐食性を劣化させるほか、熱間加工性も劣化させるため、0.01wt%以下が望ましい。
本発明では、スラブに熱間圧延加工を行って所定の厚みの帯を得た後に、熱間圧延中に生成した粗大な炭化物および炭窒化物の母相への固溶、および熱間圧延中に生じた歪を除去するために固溶化熱処理を行う。温度範囲は1000〜1,150℃、時間は30秒〜10分が望ましい。炉は大気雰囲気の連続焼鈍炉を用いるのが適当である。
本発明では、冷間圧延での圧延率を大きくとることにより、後の連続焼鈍において、炭化物および炭窒化物の析出サイトが多くなり、微細な炭化物および炭窒化物を一様に分散させることが可能となる。
連続焼鈍については、連続焼鈍温度を低くしすぎると、析出に必要な駆動力が足りなく、十分な析出量に達しないだけでなく熱処理後に延性に乏しくなって、その後の圧延工程で破断の危険が高まる。従って、工業的には700℃以上で実施する必要がある。一方熱処理温度を高温に設定した場合、析出量は減少する。また炭化物および炭窒化物が母相へ再固溶して耐磨耗性が劣化するため、上限は950℃とした。なお好ましくは800〜900℃とする。
焼鈍時間は30秒〜10分が望ましい。焼鈍時間が長いと炭化物および炭窒化物が粗大となり、圧延工程での破談の危険が高まるばかりか耐食性も劣化する。また、生産性が低下するということもある。焼鈍時間が短いと、析出に必要な駆動力が足りなく、十分な析出量に達しない。その結果、耐摩耗性が劣化する。
焼鈍炉は、水素−窒素雰囲気で焼鈍を行う光輝焼鈍(BA)炉、または大気雰囲気にて焼鈍を行う連続焼鈍炉等をもちいることが望ましい。
本発明では、前記の、冷間圧延を行い、引続いて、700〜950℃の温度範囲で連続焼鈍を施して炭化物を析出させることを、1回以上繰り返し、その後、仕上圧延する。
すなわち、上記の炭化物および炭窒化物は、Crを主体とする析出物である。前述のように炭化物および炭窒化物を形成するために、1回もしくは2回以上連続焼鈍を繰り返し炭化物を析出させる。
例えば、長時間のバッチ焼鈍を行うと、析出炭化物および炭窒化物の量は増加し耐磨耗性は向上するが、粒径が粗大となって延性に乏しくなり、圧延破断の可能性が高まる。また、析出炭化物および炭窒化物量が多いと、母相中のCr量が滅少し耐食性も劣化する。このため炭化物析出熱処理は、バッチによる長時間熱処理は避け、冷間圧延および連続焼鈍による短時間熱処理を選択する。
冷間圧延と連続焼鈍を繰返すと、炭化物および炭窒化物が多量に析出するため耐摩耗性が向上する。しかし、繰返し数を多くすると、材料の靭性低下につながり、圧延破断の危険が高まる。また、母相中のCr量が低下するため耐食性の劣化も引き起こす。従って、繰返し数は、好ましくは1〜3回とする。
本発明では、前記冷間圧延の圧延率を30%以上とすることを特徴とする。すなわち、30%以上とする理由は、連続焼鈍工程での炭化物および炭窒化物の析出サイトが多くなり、微細な炭化物および炭窒化物を一様に分散させることが可能になるからである。30%を下回ると、連続焼鈍工程での炭化物および炭窒化物の析出サイトが少なく、炭化物および炭窒化物が粗大となり、析出量も少なくなる。
本発明では、前記仕上冷間圧延後、200〜700℃の温度範囲で応力除去熱処理を行うことを特徴とする。この応力除去熱処理を行うことにより、耐摩耗性の向上、および靭性を向上させることができ、その後の織機部品等への加工が容易となる。また、板の形状を修正するということもある。
本発明では、成分組成として、Moを添加しても良い。Moは、耐食性向上に有効な元素であるが、非常に高価な元素であるため、4.0wt%以下で含有しても構わないとする。
また、本発明では、V,Ti,Nb、Zrのいずれか1種以上を1.0wt%以下添加したステンレス鋼材のスラブを用いることができる。すなわち、V,Ti,Nb、ZrはCまたはNと結合し、安定な炭化物および炭窒化物を形成してオーステナイト組織を微細化する。
従って、本発明の炭化物および炭窒化物の析出熱処理を行った場合には、Cr炭化物および炭窒化物の生成サイトとなって、Cr炭化物および炭窒化物の形成に有利に作用するため、1.0wt%以下の範囲であれば添加してもかまわない。しかし、いずれの元素も高価であることや、1.0wt%を超えて添加すると、粗大な炭化物および炭窒化物を形成して製造性を害するため、1.0wt%以下、好ましくは0.5wt%以下の範囲であれば添加してもかまわない。
上記方法により得られたステンレス鋼材の組織は、オーステナイト、冷間圧延により形成された加工誘起マルテンサイト、それに連続焼鈍時に析出した炭化物及び炭窒化物からなる。本発明では、析出炭化物及び炭窒化物の占める面積率が10%以上となる。炭化物及び炭窒化物の析出により耐摩耗性は大幅に向上できるが、10%未満では効果が小さいので下限は10%である。
さらに、本発明では、析出炭化物および炭窒化物の平均直径が1μm以下となる。耐摩耗性が良好であるためには、析出炭化物および炭窒化物が微細に分散していることが望ましい。また、平均直径が1μmを超えると、析出炭化物および炭窒化物が冷間圧延破断の起点になり製造性を害するので、平均直径は1μm以下である。
ここで、析出炭化物および炭窒化物の面積率や直径は、電子顕微鏡により撮影した写真を用いて求めることができる。
図1としての表1に示した組成のステンレス鋼材を用い、製造方法を変えて評価を行った。図2としての表2、及び図3としての表3に示したa〜dが本発明例である。板厚が3.5mmの熱間圧延板について、1100℃で1分間の固溶化熱処理を行った後、冷間圧延と炭化物化熱処理を繰り返し、仕上冷間圧延を行った後、各評価を行った。
表2、及び表3のe〜hは比較例である。eは、板厚が3.5mmの熱間圧延板について、固溶化熱処理と冷間圧延を擦り返して所定の板厚にするという、通常のステンレスハード材の製造工程を用いて製造した。f〜hの比較例は、熱間圧延板もしくは冷間圧延板に12〜36時間の長時間炭化物析出熱処理を施し、その後冷間圧延を行う工程を用いて製造した。
表3には評価結果をまとめて示した。まず、金属組織について説明する。得られた板材の組織は、オーステナイト、冷間圧延により形成された加工誘起マルテンサイト、それに熱処理によって析出した炭化執及び炭窒化物からなる。代表的な組織を図4としての写真に示した。写真中で白い点状に見えるものが炭化物および炭窒化物を示している。板材の組織観察は電子顕微鏡を用いて行った。なお、前処理は、製造した板材を圧延方向に直角に切断して表面研磨をし、次に塩酸とピクリン酸アルコールの混液を用いてエッチングして行った。
次に、炭化物の面積率について説明する。炭化物の面積率は、電子顕微鏡により撮影した3000倍の写真を用い点算法で求める。具体的には、写夫視野上に縦、横が5mm間隔の桝目を設け、例えば縦に10個、横に10個、計100個の桝目の格子点に触れる、又は格子点上にある炭化執の数を求める。この作業を10視野繰り返し、その平均値を面積率とする。
すなわち、面棟率は次の式で示されるものである。
n÷(p×f)×100=炭化物面積率(%)であり、n、p、fは以下を示す。
p:視野内の総格子点数
f:視野数
n:f個の視野における炭化物によって占められる格子点中心の数
炭化物の大きさについては、電子顕微鏡により撮影した3000倍の写真を用い、写真視野内の粒子を選択して円相当直径を求め、この作業を10視野行いその平均値を求めて炭化物および炭窒化物粒径の平均値とした。硬さは、JISG0555に準じて求めたビッカース硬度とした。
耐摩耗性は、糸を一定張力(35g)で一定時間(5時間)供試材の表面を通過させて加速度的に磨耗を形成させ、形成した鹿耗痕の最大深さを表面租さ計(メーカー;(株)東京精密、型番:1400A−3DF)で求めた。その結果は、表3に合わせて示した。図5の、磨耗痕の最大深さ(μm)と炭化執面積率(%)との関係を示した.これから、炭化物面積率が高いほど、すなわち炭化物析出量が多いほど良好な耐摩耗性を示すことがわかる。特に炭化物の面積率が10%以上でその効果が大きい。本発明例では、磨耗痕深さは15μm以下であり、SUS301の23μmに比べて、耐磨耗性が優れており、もちろんSUS420J2の12μmと比べても遜色ない値である。
耐食性については、孔食電位測定(JISG0577に準じた方法)を求めて評価した。孔食電位が高いほど耐食性に優れることを意味する。本発明品は、いずれもSUS420Jに比べ優れた耐食性を示し、SUS301に比べても遜色がない。また発明品は、長時間の炭化物析出熱処理を行ったものより孔食電位が高く、以前の発明品と比較して耐磨耗性及び耐食性の双方が向上した。
冷間圧延時の破断の危険性について、最大耳割れ長さにて評価を行った。耳割れは冷間圧延後に試験片の縁が割れてくる現象で、これが発生すると、耳割れが起点となり圧延破斬が起こる危険性が高まる。加工性に劣る材料ほど大きな耳割れが起こり、炭化物および炭窒化物の直径が大きいほど加工性に劣る。本発明品は冷間圧延工程での耳割れは発生しなく、製造上間遠はない。
耐摩耗性及び耐食性を要求される、例えば、筬羽、ヘルド等のような機料品に用いることができる。
図1として示した表1であり、成分組成表である。 図2として示した表2であり、製造工程一覧表である。 図3として示した表3であり、試験結果一覧表である. 本発明ステンレス鋼組織の代表写真である。 磨耗長の最大深さと炭化物面積率との関係を示した図である。 織機の模式図である。

Claims (4)

  1. 下記の工程を備えたことを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法。
    (a)成分組成として、C:0.03〜0.30mass%、Si:3.0mass%以下、Mn:3.0mass%以下、Ni:5.0〜20.0mass%、Cr:15.0〜30.0mass%以下、N:0.30mass%以下を含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物からなるステンレス鋼材のスラブを用意する工程と
    (b)前記スラブに熱間圧延加工を行ってから、固溶化熱処理を施す工程と
    (c)次いで、圧延率が30%以上66%以下の冷間圧延後に700〜950℃の温度範囲で焼鈍時間0.5分以上10分以下の連続焼鈍を行う工程を、1回以上施して炭化物および炭窒化物を析出させる工程と
    (d)その後、仕上冷間圧延する工程
  2. 前記仕上冷間圧延の後に、200〜700℃の温度範囲で熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の耐耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法。
  3. 前記ステンレス鋼材は、成分組成として、さらにMoを4.0mass%以下含有することを特撤とする請求項1または2に記載の耐耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法。
  4. 前記ステンレス鋼材の金属組織中に析出した炭化物及び炭窒化物の占める面積率が10%以上であり、かつ析出した炭化物及び炭窒化物の平均直径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造方法。
JP2004071110A 2004-03-12 2004-03-12 高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法 Expired - Lifetime JP4383210B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004071110A JP4383210B2 (ja) 2004-03-12 2004-03-12 高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004071110A JP4383210B2 (ja) 2004-03-12 2004-03-12 高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005256114A JP2005256114A (ja) 2005-09-22
JP4383210B2 true JP4383210B2 (ja) 2009-12-16

Family

ID=35082139

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004071110A Expired - Lifetime JP4383210B2 (ja) 2004-03-12 2004-03-12 高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4383210B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103451566A (zh) * 2013-08-02 2013-12-18 安徽三联泵业股份有限公司 高强度不锈钢泵轴材料及其制造方法
CN103451569A (zh) * 2013-08-02 2013-12-18 安徽三联泵业股份有限公司 耐腐蚀高强度泵盖不锈钢材料及其制造方法
CN103451568A (zh) * 2013-08-02 2013-12-18 安徽三联泵业股份有限公司 高碳不锈钢叶轮轴不锈钢材料及其制造方法
KR101877786B1 (ko) * 2016-12-21 2018-07-16 한국기계연구원 내산화성이 우수한 오스테나이트계 스테인리스강 및 그 제조 방법
CN114645113B (zh) * 2022-03-04 2024-06-28 中国科学院金属研究所 一种调控高Nb奥氏体不锈钢中碳化物形态的冷变形工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005256114A (ja) 2005-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5482971B2 (ja) 冷間鍛造性に優れた鋼線材または棒鋼
CN101389781B (zh) 高强度不锈钢弹簧及其制造方法
WO2007043318A9 (ja) 極軟質高炭素熱延鋼板およびその製造方法
WO2017029922A1 (ja) 高炭素冷延鋼板及びその製造方法
JP2019014933A (ja) 鋼板およびその製造方法
JP5235452B2 (ja) 耐食性と耐磨耗性に優れる織機部材用マルテンサイト系ステンレス鋼とその鋼帯の製造方法
JP2014530298A (ja) Twipおよびナノ双晶オーステナイト系ステンレス鋼ならびにその製造方法
JPWO2021090472A1 (ja) 高炭素冷延鋼板およびその製造方法並びに高炭素鋼製機械部品
JP2012246527A (ja) 高疲労強度、高靭性機械構造用鋼部品およびその製造方法
CN111727269B (zh) 马氏体系不锈钢板及其制造方法以及弹簧构件
JP2019039037A (ja) 鋼板およびその製造方法
CN107208233A (zh) 高拉伸钢丝
JP4383210B2 (ja) 高耐磨耗高耐食性ステンレス鋼材の製造方法
JP5370073B2 (ja) 機械構造用合金鋼鋼材
KR20110045184A (ko) 17-4ph 스테인레스강의 열처리방법
JP4825381B2 (ja) 耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材及びその製造方法
KR20220134780A (ko) 페라이트계 스테인리스강 및 페라이트계 스테인리스강의 제조 방법
JP5489497B2 (ja) 焼入性に優れたボロン鋼鋼板の製造方法
JP4221452B2 (ja) 耐摩耗性及び耐食性に優れた筬羽又はヘルド用ステンレス鋼材
WO2022153790A1 (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼材及びその製造方法
JP2024500865A (ja) 強度及び耐食性が向上したマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP5364908B2 (ja) 織機部品の製造方法
JP2021116477A (ja) 高炭素鋼板
JP3946370B2 (ja) 鋼製織機部材
JP2006265664A (ja) 無段変速機ベルトの製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070117

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090324

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20090410

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090430

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20090410

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090729

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090818

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090916

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090918

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121002

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4383210

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121002

Year of fee payment: 3

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R3D04

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121002

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131002

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term