JP3602201B2 - 高強度複相組織ステンレス鋼帯又は鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、機械部品,バネ等の各種高強度部品に使用される材料として好適な高強度複相組織ステンレス鋼帯又は鋼板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高強度ステンレス鋼として、マルテンサイト系ステンレス鋼が広く知られている。また、SUS301,SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼を冷間圧延し、加工硬化によって強度を高めたステンレス鋼も、高強度ステンレス鋼として使用されている。他方、バネ用ステンレス鋼としては、SUS301−CSP,SUS304−CSP等のオーステナイト系,SUS420J2−CSP等のマルテンサイト系,SUS631−CSP等の析出硬化系ステンレス鋼が知られている。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ処理又は焼入れ焼戻し処理によって高強度化される。しかし、たとえば代表的なマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS420J2は、Cr含有量が12.00〜14.00重量%と低く耐食性が不十分であることに加え、0.26〜0.40重量%ものCを含有するため靭性が劣り製造性に問題がある。また、ユーザ側での焼入れ焼戻し熱処理が必要とされ、最終製品でのコストアップが避けられない。
【0003】
他方、オーステナイト系ステンレス鋼は、固溶化熱処理状態では軟質である。このオーステナイト系ステンレス鋼を高強度化するためには、固溶化熱処理後に更に調質圧延又は冷間圧延を行い、加工硬化によって強度を高める方法が採用される。しかし、強度向上のためには冷間圧延率を大きくする必要があり、圧延負荷の大きさや形状性等で製造上の問題がある。また、SUS301ステンレス鋼は、加工硬化が大きく、冷間圧延率に応じて硬さが大きく変動する。その結果、圧延によって得られた材質が不安定になり易い。更に、オーステナイト系ステンレス鋼は、高価なNiを多量に含むことから、鋼材コストが高い欠点もある。
【0004】
この点、フェライト+マルテンサイトの混合組織にした複相組織ステンレス鋼帯(板)は、延性及び強度に優れており、機械部品,バネ材等の各種高強度部品に適した材料である。本発明者等は、この複相組織ステンレス鋼帯(板)の製造方法を特開昭63−7338号公報,特開昭63−169330号公報,特開昭63−169331号公報,特開平1−172524号公報等で紹介した。提案した方法では、高温でフェライト+オーステナイト組織を呈するように成分調整された鋼スラブを熱延及び冷延を経て鋼帯とし、仕上げ熱処理としてフェライト+オーステナイト二相組織を呈するAc1 点以上の適正温度域に加熱保持し、適正冷却速度で冷却する連続熱処理を施すことにより、複相組織ステンレス鋼帯(板)を製造する。また、このようにして得られた複相組織ステンレス鋼帯(板)に時効処理を施すとき、優れたバネ性が得られることを特開平3−56621号公報で紹介した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フェライト+マルテンサイトの複相組織ステンレス鋼は、適度の高強度と良好な延性及び靭性をもっている。その強度は、基本的にはマルテンサイト量及びマルテンサイト相の強度に依存している。
したがって、強度をより向上させるためには、オーステナイト生成元素であるNi,Mn,Cu,C,N等を増量してマルテンサイト量を増加させたり、同じマルテンサイト量であっても相対的にC,Nの含有量を上昇させて高強度のマルテンサイト相にする必要がある。しかし、マルテンサイト量を多くすると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延の際に耳切れが発生する場合もある。
【0006】
他方、複相組織ステンレス鋼板の硬さは、C含有量を増加させることにより上昇する。しかし、C含有量を増加させると、材質上で靭性が低下し、製品及び製造性に悪影響を及ぼすことになる。そのため、複相組織ステンレス鋼板の強度レベルは、複相化処理ままのビッカース硬さでHV=420程度に止まっている。本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、目標硬さに応じて冷間圧延の圧延率を設定することにより、ビッカース硬さがHV300以上で変動幅が小さく且つ面内異方性が小さなバネ特性を呈する複相組織ステンレス鋼帯又は鋼板を安定して製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の製造方法は、その目的を達成するため、C:0.01〜0.15重量%,Cr:10.0〜20.0重量%及びNi,Mn,Cuの少なくとも1種又は2種以上を合計で0.3〜5.0重量%含み、マルテンサイトが30〜90体積%で残部がフェライトからなる二相混合組織をもつ複合組織鋼帯又は鋼板を冷間圧延する際、鋼成分から次式(1)で求められた冷間圧延前の硬さHV1及び冷間圧延後の目標硬さHV2から次式(2)で求められ且つ15〜50%の範囲にある圧延率Redで冷間圧延することを特徴とする。
【0008】
得られた複相組織鋼板は、実質的にフェライト+マルテンサイトの加工組織になり、ビッカース硬さがHV300以上になる。
所定の圧延率Redで冷間圧延した後、300〜650℃の温度範囲で時効処理するとき、ビッカース硬さがHV350以上でバネ特性の面内異方性が小さくなる。
【0009】
【作用】
本発明者等は、先に提案したマルテンサイト相とフェライト相との混合複相組織をもつ高延性・高強度ステンレス鋼帯(板)を素材とするとき、耐摩耗性,耐疵付き性,バネ特性等が著しく優れた材料が得られることを見い出した。本発明は、このような優れた特性を呈する複相組織ステンレス鋼帯(板)に更に高強度を付与したものであり、ステンレスフレーム,電子部品,機械部品等の各種用途において従来にない特性が発揮される。
本発明が対象とする複相組織ステンレス鋼は、高温でフェライト+オーステナイト組織を呈するように成分調整された鋼帯又は鋼板に、Ac1 点以上の適正温度域に加熱保持する仕上げ熱処理を施すことにより製造される。このとき、Ac1 点〜(Ac1 +100℃)の温度域では硬さ変動が実質的に生じないので、複相化処理の加熱温度を(Ac1 +100℃)以上に設定することが好ましい。しかし、過度に高い加熱温度では、却って硬さが低下する傾向がみられ、多量の熱源を必要とすることから製造コストが上昇する。そのため、加熱温度の上限を1200℃に設定することが好ましい。
【0010】
複相化熱処理時の冷却速度は、高温でのオーステナイトがマルテンサイトに変態するのに十分な速度に設定される。実操業的には、1〜1000℃/秒の範囲で冷却速度が設定される。オーステナイトがマルテンサイトに変態した後の冷却速度は、任意に選定される。
複相化処理後の硬さHV1 は、ステンレス鋼の合金設計と密接な相関関係を持っている。この相関関係は、本発明者等による多数の実験結果から見い出されたものである。すなわち、前掲した式(1)によるとき、複相化処理後、換言すれば冷間圧延前の硬さHV1 を精度良く推定できる。
複相組織ステンレス鋼は、30〜95体積%のマルテンサイトを含むフェライト+オーステナイト二相組織をもち、最終的に15%を超える冷間圧延を施すことにより高強度を発現する。圧延率15%以上の冷間圧延は、加工硬化率を低下させる作用を呈する。逆に、複相化熱処理後の冷間圧延において、圧延率が15%に達しない領域では加工硬化能が大きく、圧延率の変動に応じて硬さの変動幅が大きくなる傾向になる。したがって、複相化熱処理後の冷間圧延は、硬さの変動幅を少なくする上で圧延率15%以上で行うことが必要とされる。
【0011】
他方、50%を超える圧延率では、加工硬化は飽和する傾向にあり、圧延率の増加に見合う硬さの上昇は得られない。また、延性の低下や異方性の増大を招く原因になる。そこで、目標とする硬さに応じて圧延率を15〜50%の範囲に設定する。
圧延率が低い領域で加工硬化能が大きくなるのは、本発明が対象とする複相組織ステンレス鋼においては、低圧延領域では軟質なフェライトの加工硬化が優先的に生じるためと推察される。
【0012】
本発明では、この現象を利用して圧延率の調整により目標硬さHV2 を得る。前掲した式(2)は、本発明者等による多数の実験から求められた関係式である。式(2)に従って冷間圧延前の硬さHV1 及び目標硬さHV2 から圧延率Red(%)を定め、この圧延率Redで冷間圧延するとき、必要とする高強度特性をもつ鋼帯又は鋼板が精度良く製造される。また、圧延率Redが15%以上であるため、得られた高強度特性にバラツキが少なく、品質安定性に優れた製品が得られる。
冷間圧延された複相組織ステンレス鋼板を時効処理するとき、更に高位に安定した硬さが得られる。時効処理の加熱温度は、特に本発明を制約するものではないが、300〜650℃の範囲に設定することが好ましい。300℃に達しない加熱温度では、時効処理による強度向上が十分でない。しかし、650℃を超える加熱温度では、たとえ短時間加熱であっても複相化熱処理後に過飽和状態で固溶していたCがクロム炭化物として粒界及び粒内に析出する量が多くなり、強度低下の原因となる。また、特に粒界に析出したクロム炭化物に起因して鋼材が鋭敏化し、耐食性の低下が顕在化する。
【0013】
以下、本発明で規定した合金成分,含有量等を説明する。
C:0.01〜0.15重量%
強力なオーステナイト生成元素であると共に、マルテンサイト強化能が大きいことから、Ac1 点以上の温度に加熱熱処理を行った後のマルテンサイト量を調整でき、強度の制御及び高強度化に有効に作用する。これらの作用は、0.01重量%以上のC含有量で顕著になる。しかし、0.15重量%を超える多量のCが含まれると、熱間圧延中にマルテンサイトが過剰に生成し、熱間加工性を低下させる。また、C含有量の増加に伴って、熱処理後に多量の炭化物が生成するようになり、耐食性や靭性が低下する。
【0014】
Cr:10.0〜20.0重量%
ステンレス鋼としての耐食性を維持する上で、少なくとも10.0重量%のCrを含ませる必要がある。しかし、20.0重量%を超える過剰のCr量は、靭性を低下させる。また、マルテンサイト相を生成させて高強度を得るために必要なC,Ni,Mn,Cu,N等のオーステナイト生成元素の添加量がC
r量に応じて多くなるので、鋼材コストの上昇を招く。
Ni,Mn,Cuの少なくとも1種又は2種以上:合計で0.3〜5.0重量%Ni,Mn及びCuは、何れもオーステナイト生成元素として作用し、高温でフェライト+オーステナイトの組織(常温でフェライト+マルテンサイトの組織)を得るために必要な合金元素である。Ni,Mn及び/又はCuの含有量が増加するに従ってマルテンサイト量が増加し、硬さ(強度)を上昇させることができる。このような作用は、Ni,Mn,Cuの少なくとも1種又は2種以上を合計で0.3重量%以上含ませたとき顕著になる。しかし、過剰にNi,Mn,Cu等を含ませると、高温でのオーステナイト量が多くなりすぎ、熱間加工性が劣化する。したがって、Ni,Mn及びCuの含有量は、合計で
5.0重量%以下に規制する。
【0015】
本発明が対象とする複相組織ステンレス鋼では、各合金成分の個々の含有量を以上のように規制すると共に、常温でフェライト+マルテンサイトの複相組織が得られるように各合金成分を相互に調整する。なお、必要とする強度を低下させない限り、耐食性を一層向上させるためMoを添加したり、耐酸化性を向上させるためにYやREM(希土類金属)を添加したり、更に各種の特性向上を目的としてB,V,Al等の合金元素を添加することができる。これらの合金元素は、後述する実施例にも示されているが、好ましくはMo≦2.50重量%,Y≦0.20重量%,REM≦0.10重量%,V≦0.20重量%,B≦0.030重量%,Al≦0.10重量%にそれぞれの含有量が規制される。
マルテンサイト:30〜90体積%
マルテンサイト量が30体積%未満では、強度的に十分ではない。逆に90体積%を超えるマルテンサイト量では、延性の低下が著しく、強度−延性バランスに優れるというフェライト+マルテンサイト複合組織ステンレス鋼の特徴
が損なわれる。
【0016】
【実施例】
実施例1:
表1に示した2種の鋼A,Bを溶製し、熱間圧延によって板厚4.5mmの熱延鋼帯にした後、780℃×均熱6時間・炉冷の熱延板焼鈍を施し、板厚1.0mmに冷間圧延した。次いで、冷延板を1020℃に1分間加熱した後、急冷することにより複相化熱処理を施し、フェライト+マルテンサイトの複相組織ステンレス鋼帯を製造した。複相化熱処理後のマルテンサイト量は、鋼Aで50%,鋼Bで70%であった。
【0017】
【表1】
【0018】
各複相組織ステンレス鋼帯から試験片を切り出し、冷間圧延時の圧延率と硬さとの関係を調査した。冷間圧延前の計算硬さHV1 は、表1に示した組成から鋼Aで281.9,鋼Bで366.2とそれぞれ算出される。冷間圧延後の目標硬さHV2 を表2に示すように設定したとき、その目標硬さHV2 に必要な圧延率Redが式(2)から算出される。求められた圧延率Redで冷間圧延した鋼帯の実測硬さHVは、表2に示すように高い精度で目標硬さHV2 に一致していた。
【0019】
【表2】
【0020】
表2の結果から、フェライト+マルテンサイトの複相組織ステンレス鋼では、予め実験によって求められている式(1),(2)等の関係式を用い、合金成分の含有量に応じて定まる計算硬さHV1 から目標硬さHV2 を得るために必要な冷間圧延率Redを推定できることが確認された。また、このようにして推定された圧延率Redで冷間圧延するとき、得られる冷延板は、目標硬さHV2 に高精度で一致した硬さをもつものとなる。
更に、冷延板に種々の条件下で時効処理を施し、硬さに対する時効処理の影響を検討した。この場合には、時効処理による硬さの上昇分δHVを見込んで、同様に計算硬さHV1 から(目標硬さHV2 −δHV)を得るために必要な圧延率Redを算出し、この圧延率Redを目標圧延率として冷間圧延する。このようにして得られた複相組織ステンレス鋼帯の実測硬さHVも、目標硬さHV2 との一致性が良好であった。
【0021】
鋼A及びBについて複相化熱処理後の実績圧延率と実測硬さとの関係を、通常のSUS304及びSUS301ステンレス鋼帯と比較して図1に示す。なお、SUS304及びSUS301ステンレス鋼帯としては、冷延焼鈍版を使用した。また、鋼A,Bの時効処理には、425℃×均熱1分のバッチ式短時間時効を採用した。
図1から明らかなように、鋼A,Bでは冷間圧延率が15%を超える付近から硬さの上昇度合いが小さくなり、ビッカース硬さでHV=300以上の安定した硬さが得られていた。硬さは、時効処理を施すことによりビッカース硬さでHV=30程度更に上昇した。これに対し、SUS304及びSUS301ステンレス鋼帯では、冷間圧延率が高くなるに従って硬さの上昇がみられるものの、硬さが安定する領域がなかった。また、ビッカース硬さでHV=300〜450を得るためには、鋼A,Bに比較してより大きな圧延率を必要とした。
【0022】
図1に示す結果から、フェライト+マルテンサイトの複相組織ステンレス鋼板では、次の実用上の利点が導き出される。
(1)ビッカース硬さHV=300〜450の強度範囲で、目標とする高強度材料が工業的に且つ経済的に安定して得られる。
(2)時効処理を施すことにより硬さが更に上昇し、高強度材料が工業的に且つ経済的に安定して得られる。
(3)短時間時効処理によって強度が発現されるため、素材メーカー側で鋼帯の連続時効処理が可能になり、加工メーカー側での時効処理が不要になる。そのため、ユーザー側の負担が軽減される。
【0023】
実施例2:
表3に示す組成をもつ鋼を溶製し、スラブに鋳造した。鋼材番号1〜8の鋼は、本発明が対象とするステンレス鋼であり、熱間圧延によって板厚4.5mmの熱延鋼帯にした後、780℃×均熱6時間・炉冷の熱延板焼鈍を施した。更に、酸洗した後、冷間圧延によって板厚1.0mmの冷延鋼帯を製造した。鋼材番号8はフェライト単相が生成されるように成分設計された鋼材であり、鋼材番号10は焼きなまし状態で使用される鋼材である。
【0024】
【表3】
【0025】
鋼材番号1〜9の冷延鋼帯を温度1000〜1050℃で連続熱処理し、更に連続式又はバッチ式の時効処理を施した。鋼材番号10については、Ac1 点以下で連続熱処理した後、冷間圧延し、更に連続式又はバッチ式の時効処理を施した。
冷間圧延又は時効処理後の特性に各種製造条件が及ぼす影響を表4に示す。なお、同一鋼で製造条件が異なるものは、コイルを適宜分割して製造したことを示す。また、時効処理が「なし」と表示されているものについては、式(1)から求められた冷間圧延前の計算硬さHV1 及び目標硬さHV2 を式(2)に代入して得られた計算圧延率Redを目標値とする冷間圧延を行った。他方、時効処理が「あり」と表示されているものについては、時効処理による硬度の上昇をHV=25と仮定し、式(1)で定まる計算硬さHV1 及び(目標硬さHV2 −25)を式(2)に代入して得られた計算圧延率Redを目標値とする冷間圧延を行った後、時効処理を施した。
【0026】
【表4】
【0027】
表4から明らかなように、時効処理の有無に拘らず、式(1)及び(2)を用いて求められた圧延率Redで冷間圧延したとき、目標硬さHV2 と実測硬さHVとの差がΔHV≦10に収められていた。特に、硬さがHV≧400の高強度材についてΔHV≦10に収めることは、容易でなかったことを考慮するとき、本発明の効果として注目されるものである。このようにして、本発明によるとき、高い硬さレベルを示す複相組織ステンレス鋼板が得られ、時効処理を施すことにより硬さが更に上昇し、高いバネ限界値Kbを示す鋼材が得られることが確認された。
【0028】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、合金成分の含有量に基づいて冷間圧延前の硬さHV1 を算出し、この計算硬さHV1 と目標硬さHV2 から求められる圧延率Redで冷間圧延している。冷間圧延された鋼帯又は鋼板は、硬さのバラツキが少なく、HV≧300の安定した強度レベルを示す。このようにして得られた複相組織ステンレス鋼帯又は鋼板は、各種ステンレスフレーム,電子部品,機械部品等の高強度及びバネ特性が要求される分野で高品質及び品質安定性に優れた材料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】高強度複相組織ステンレス鋼板の冷間圧延率と硬さとの関係を従来のオーステナイト系ステンレス鋼と比較したグラフ
Claims (2)
- 請求項1に記載した鋼帯又は鋼板を同項に記載した圧延率R ed で冷間圧延した後、300〜650℃の温度範囲で時効処理する高強度複相組織ステンレス鋼帯又は鋼板の製造方法。
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