JPH0813093A - 変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2相ステンレス鋼 - Google Patents

変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2相ステンレス鋼

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JPH0813093A
JPH0813093A JP15227094A JP15227094A JPH0813093A JP H0813093 A JPH0813093 A JP H0813093A JP 15227094 A JP15227094 A JP 15227094A JP 15227094 A JP15227094 A JP 15227094A JP H0813093 A JPH0813093 A JP H0813093A
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信義 岡登
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐食性を維持しつつ、従来に比べてより低い
温度域で優れた超塑性を発現させることができる超塑性
2相ステンレス鋼を提案すること。 【構成】 C:0.05wt%以下、Si:1.5 wt%以下、Mn:
3.0 wt%以下、Cr:17.0〜26.0wt%、Ni:3.0 〜10.0wt
%、Mo:0.1 〜2.0 wt%、N:0.08〜0.20wt%、S:0.
002 wt%以下、B:0.0005〜0.01wt%を含み、残部Feお
よび不可避的不純物からなる変形抵抗が小さくかつ伸び
特性に優れる超塑性2相ステンレス鋼である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、既知の超塑性2相ス
テンレス鋼に比べ、比較的低温度領域での成形加工であ
っても変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2
相ステンレス鋼についての提案である。
【0002】
【従来の技術】従来、超塑性を発現するステンレス鋼と
しては、SUS 329J4Lなどに代表される、耐孔食2相ステ
ンレス鋼が良く知られている。本来、海水中などの使用
環境下における耐食性向上を意図して設計された,この
2相ステンレス鋼は、オーステナイトおよびフェライト
の2相組織からなり、これら2相が互いに粒成長を抑制
する作用を及ぼし合うことで、高温変形中に微細再結晶
粒を維持し、このことによって、良好な超塑性特性を発
現するものと考えられている。
【0003】このSUS 329J4L系2相ステンレス鋼を、超
塑性が要求される用途、例えば、流し台やゴルフクラブ
ヘッドのような、複雑形状を有する一体成形加工品など
に供する場合、1000℃以上の温度で成形 (超塑性成形)
することが必要である。なぜなら、これよりも低温で成
形すると、変形に際して硬質の金属間化合物であるσ相
が析出するからである。このσ相は、「粒の成長を抑え
るので超塑性性能を高める」という説と、「硬質である
ため変形抵抗を大きくして超塑性性能を劣化させる」と
いう説があるが、常温で材料中に存在すると、材料の靱
性を著しく劣化させることから、結局、最終的には材料
中から完全に消失させる必要がある。そのための手段と
して、σ相の析出温度域より高い温度で超塑性成形した
のち急冷する方法、あるいは、超塑性成形した後、材料
をσ相の析出温度域より高い温度に保持し、急冷する方
法がある。しかしながら、超塑性材料は、高温で極めて
やわらかいために、熱処理中に形状が変化し易く、実際
には成形後の熱処理は不可能である。したがって、2相
ステンレス鋼を超塑性材料として利用するには、σ相が
析出しない温度域での成形が必要となるのである。
【0004】一方、2相ステンレス鋼について、より低
い温度域,例えば 900℃程度において、超塑性が発現す
るものが求められている。というのは、低温で超塑性を
発現させることができれば、高温での成形加工条件が緩
和され、より安定した成形加工を実現できる上、その設
備設計を容易かつ安価に実施し得ることから、加工コス
トの削減や成形サイクルの短縮に役立つからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の一般
的な2相ステンレス鋼は、主として耐食性の改善を目的
として開発されており、いわゆる超塑性の発現とその向
上を目的として設計されたものではない。従って、上述
した要請にも拘わらず、従来の2相ステンレス鋼は、依
然として低温で超塑性を発現させる技術が確立されてい
ないのが実情である。
【0006】そこで、この発明の主たる目的は、超塑性
特性をより一層向上させることにあり、そしてこの発明
の他の目的は、ステンレス鋼本来の特性である耐食性を
維持しつつ、従来に比べてより低い温度域で優れた超塑
性を発現させることができる超塑性2相ステンレス鋼を
提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】さて、900 ℃程度の低い
温度域で優れた超塑性を発現させるためには、その低温
度域で、変形に必要な応力,すなわち流動応力が低く、
歪速度感受性指数,すなわちm値が高く、しかもσ相が
析出しない材料であることが必要である。なお、m値と
は、下記式に示す関係にあるmの数値のことをいう。 lnδ=m×lnε+C (δ;応力、ε;歪み速度、C;定数) また、たとえ超塑性特性の向上を主目的としているとは
いえ、超塑性成形後の材料が適度な耐食性を示さなけれ
ばステンレス鋼としての特徴を失うことになるから、あ
る程度の耐食性を維持することも必要である。すなわ
ち、900 ℃程度の低い温度域で流動応力が低く、優れた
伸びを示し、かつ耐食性に優れた材料が求められてい
る。
【0008】そこで、発明者らは、これらの前提を踏ま
え、上記目的実現に向け種々の合金成分について鋭意検
討した。その結果、 900℃程度の低い温度域で優れた超
塑性特性を有し、σ相の析出がなく、しかも実用的な耐
食性を有する超塑性2相ステンレス鋼を開発した。
【0009】すなわち、この発明は、 C:0.05wt%以下、 Si:1.5 wt%以下、Mn:3.
0 wt%以下、 Cr:17.0〜26.0wt%、Ni:3.0 〜10.0
wt%、 Mo:0.1 〜2.0 wt%、N:0.08〜0.20wt%、
S:0.002 wt%以下、B:0.0005〜0.01wt%を含み、残
部Feおよび不可避的不純物からなる変形抵抗が小さくか
つ伸び特性に優れる超塑性2相ステンレス鋼(第1発
明)。 上記に記載の発明における基本成分に加えて、さ
らに、Cuを 0.1〜2.0 wt%含有させた組成からなる変形
抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2相ステンレ
ス鋼(第2発明)。 上記またはに記載の発明における基本成分に加
えて、さらに、REM (希土類元素)を0.005 〜0.05wt%
含有させた組成からなる変形抵抗が小さくかつ伸び特性
に優れる超塑性2相ステンレス鋼(第3発明)。 Cr、Ni、Mo、Si、C、Mn、CuおよびNの含有量を、
下記式(1) で定義されるCreqと下記式(2) で定義される
Nieqとの差〔Creq−Nieq〕が、12.0〜17.0を満足する範
囲に規制する上記第1、第2または第3発明に記載の変
形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2相ステン
レス鋼(第4発明)。 記 Creq=Cr+Mo+0.5 Si ・・・(1) Nieq=Ni+30C+0.5 Mn+0.5 Cu+20N ・・・(2)
【0010】
【作用】以下、この発明に従う2相ステンレス鋼におけ
る、各合金組成の含有量を前記の範囲に限定した理由に
ついて説明する。 C:0.05wt%以下 Cは、その含有量が0.05wt%を超えると、粒界腐食感受
性が増大し、耐孔食性が劣化するとともに、炭化物の析
出により熱間加工性が低下する。しかも、超塑性材料と
してみても、Cが0.05wt%を超えると冷間圧延に際して
硬化をきたすため、その後の加工などにおける取扱いを
困難にする。従って、Cは、0.05wt%を上限とする。
【0011】Si:1.5 wt%以下 Siは、金属間化合物であるσ相の構成元素であるため、
このSi量が増えるにしたがってσ相が析出する速度が速
くなり、析出温度範囲の上限温度の上昇が見られる。そ
こで、 900℃前後でもσ相が析出しないようにするため
に、このSiは、1.5 wt%以下とする必要がある。
【0012】Mn:3.0 wt%以下 Mnは、溶解,精錬時に脱酸元素として作用すると共に、
Sと化合して硫黄化物を生成し、熱間脆性の発生を防止
するのに有効な元素であるが、3.0 wt%を超えると耐酸
化性が劣化する。従って、このMnは、3.0 wt%以下とす
る必要がある。
【0013】Cr:17.0〜26.0wt% Crは、フェライト形成元素であり、かつσ相構成元素で
もある。このCrの含有量が26wt%を超えると、σ相の析
出が顕著となり、σ相の析出を促進するSiなどの元素を
少なくしても 900℃前後でσ相の析出が生じる結果、熱
間加工性およびσ相形成温度域における超塑性が劣化す
るため、上限を26.0wt%とする。一方、Cr含有量が17.0
wt%未満では、下記Niと同様に、オーステナイト量が増
大するために、α相によるγ粒成長の抑制効果が消失
し、超塑性性能の劣化を招くと共に、鋼の耐酸化性が低
下し、超塑性成形における高温長時間保持による材料の
酸化が著しく、良好な伸びを得ることができないため、
下限は17.0wt%とする。
【0014】Ni:3.0 〜10.0wt% Niは、オーステナイト形成元素であり、3.0 wt%未満に
なると、他のフェライト形成元素やオーステナイト形成
元素によって調整しても、γ( オーステナイト) 相の比
率が30wt%以下となり、超塑性変形中にα( フェライ
ト)相の粒成長を抑制するという効果が低下し、超塑性
特性の劣化を招くため、下限を3.0 wt%とする。一方、
10wt%を超えると、逆にγ相の比率が高くなり、γ相の
粒成長速度が増大して材料の高温での流動応力の上昇を
招くため、上限を10.0wt%とする。
【0015】Mo:0.1 〜2.0 wt% Moは、2相ステンレス超塑性材料において極めて重要な
役割を担う元素である。なぜなら、Moは、加工後におけ
る耐孔食性や耐隙間腐食性などの耐食性の向上に寄与す
る元素であり、耐食性2相ステンレス鋼においては欠く
ことのできない重要な元素だからである。しかしなが
ら、2相ステンレス鋼の超塑性特性に関する発明者らの
実験によれば、このMoは、σ相の析出を促進する働きが
あり、流動応力(超塑性変形における変形抵抗)を著し
く上昇させることが判った。特に、この流動応力の上昇
は、900 ℃近傍の低温度域において著しく、また添加量
が2.0 wt%を超えると顕著になる。従って、Moは、上限
を2.0 wt%とする。一方で、このMoは、材料の高温での
耐酸化性を著しく向上させる働きがある。そのため、Mo
を添加しない材料では、流動応力は低いものの高温に長
時間さらされるために、超塑性伸びでは良好な結果が得
られない。この点、発明者らの実験によれば、Moを 0.1
wt%以上添加すると、超塑性伸びが著しく改善されるこ
とが判った。従って、Moは、下限を 0.1wt%とする。
【0016】Cu: 0.1〜2.0 wt% 一般に、超塑性成形は、複雑な形状への対応、ならびに
金型費用の低減を図るため、通常の成形加工よりも加圧
力が低いガス圧力によるブロー成形を採用している。従
って、超塑性2相ステンレス鋼を実用化するためには、
その材料の流動応力を低くすることが必要である。とこ
ろが、この2相ステンレス鋼は、超塑性成形の温度を従
来の1000℃から 900℃に下げると、流動応力の増加が著
しい。従って、超塑性2相ステンレス鋼の実用化にとっ
ては、流動応力の低減が最も重要な課題であった。そこ
で、発明者らは、2相ステンレス鋼の超塑性特性に関す
る研究を行ったところ、Cuは、一般に耐食性、隙間腐食
性の改善に寄与する元素であるが、流動応力を小さくす
る効果もあることに気付いた。このCuは、2.0 wt%を超
えて含有すると、超塑性伸びの低下を招き、実用上好ま
しくない。従って、Cuは、 2.0wt%を上限とし、流動応
力改善の効果が現れ始める 0.1wt%を下限とする。好ま
しくは、流動応力の顕著な低減効果がみられる1.0 wt%
以上を含有することが望ましい。上述したようなCuの効
果により、超塑性2相ステンレス鋼はより実用的なもの
となった。なお、このCuによる流動応力低減の詳細な機
構については未だ明らかではないが、Cuが粒界に偏析し
て粒界滑りを容易にすることで、流動応力を小さくする
ものと考えている。
【0017】N:0.08〜0.20wt% Nは、Cと同様にオーステナイト形成元素であり、その
ため優れた超塑性特性を得るためには、このNの含有量
は、他のフェライト形成元素との兼ね合いのもとで組織
バランスを十分勘案して定める必要がある。なぜなら、
後述するように、超塑性特性の発現に必要な結晶粒の微
細化は、γ相とα相の量に最も大きく依存するからであ
る。具体的には、〔Creq−Nieq〕の値が12.0から17.0の
範囲におさまるようなN量が好ましい。また、このN
は、耐孔食性を向上させるという効果もある。この効果
を得るためには、Nの含有量は、少なくとも0.08wt%以
上とする必要がある。しかしながら、N含有量が0.20wt
%を超えると熱間加工性が極めて悪くなる。従って、こ
のNは、0.08〜0.20wt%とする。
【0018】S:0.002 wt%以下 Sは、粒界に偏析して2相ステンレス鋼の熱間加工性を
著しく劣化させることが知られている。そのため、実用
上、0.002 wt%以下に抑えて、熱間加工性を確保するこ
とが好ましい。
【0019】B:0.0005〜0.01wt% Bは、粒界に偏析して粒界を強化することが知られてい
るが、流動応力の上昇を引き起こすことから、従来、超
塑性の向上に不利とされていた。しかしながら、発明者
らの実験によれば、0.0005wt%以上を添加すれば、以外
にも極めて高い伸びが得られ、超塑性の向上に有効であ
ることが判った。すなわち、このBは、この発明におい
て極めて重要な役割を担う元素であり、この作用効果
は、酸化の影響のないAr雰囲気中で顕著にみられた。具
体的には、0.0005wt%以上の添加で超塑性伸び向上の効
果が確認され、さらに好ましくは 0.005 wt %以上が望
ましい添加量と言える。しかしながら、0.01wt%を超え
てBを添加すると、粒界にB化合物が析出して流動応力
の急激な上昇を招き、超塑性伸び向上の効果が見られな
くなる。従って、このBの含有量は0.0005〜0.01wt%の
範囲に限定した。
【0020】REM :0.005 〜0.05wt% 先に述べたように、一般に、超塑性2相ステンレス鋼の
超塑性成形は、その加工温度が 900〜1000℃程度と極め
て高い。そのため、成形時間に長時間を要する場合に
は、材料そのものに、ある程度の耐酸化性が要求され
る。その理由は、耐酸化性がないと、材料の変形にとも
ない、材料内部にまで酸化が進行し、ボイドの発生、材
料の破断が生じてしまい、実用性が乏しくなるからであ
る。この点に関し発明者らは、超塑性2相ステンレス鋼
の耐酸化性の向上に寄与する元素として、REM (希土類
元素のうちから選ばれるいずれか1種またはミッシュメ
タルのような2種以上の混合物であり、特に La,Ceおよ
びYが好適である。)に着目した。従来、このREM の添
加による耐酸化性の向上に関する研究は、数多く報告さ
れているが(例えば、日本金属学会会報 vol.18, p192,
1979 等が参照される)、主としてフェライト系の鉄鋼
材料に関するものであり、2相ステンレス鋼については
ほとんど例がない。なぜなら、REM の耐酸化性効果が一
般に酸化スケールの密着性を改善する点にあることか
ら、熱膨張差の大きいα相とγ相が共存する2相ステン
レス鋼では、繰り返し酸化などの試験によっては前記効
果が実質認められないためと考えられる。この点、発明
者らが行った超塑性伸びの実験では、材料が一定温度に
保持されて実施されるので、2相ステンレス鋼において
もREM の効果が顕著に現れ、その結果、材料の耐酸化性
が大幅に向上し、優れた超塑性伸びを示す材料が得られ
ることが判った。以上説明したように、REM は、超塑性
加工において、耐酸化性の向上に寄与する元素である
が、0.05wt%を超えて添加すると、表面疵の原因となっ
たり、非金属介在物となって鋼中に残留して耐食性劣化
の原因となる。そのため、0.05wt%を上限とし、耐酸化
性改善の効果が現れ始める0.005 wt%を下限とする。
【0021】〔Creq−Nieq〕:12.0〜17.0 従来、2相ステンレス鋼の超塑性の発現機構に関する研
究報告は多く、中でも、合金元素の影響、加工状態の影
響、σ相析出の影響などについての研究報告が多い。発
明者らは、2相ステンレス鋼の超塑性変形において最も
重要な役割を果たしていると考えられる、α/γ粒界の
影響を調べるために、幅広いα/γ比の組成の2相ステ
ンレス鋼について実験を行った。その結果、α/γ比と
超塑性特性の一つである歪速度感受性指数(m値)との
間に強い相関があることを見出した。すなわち、上記α
/γ比は〔Creq−Nieq〕で示すことができるが、この値
を好適範囲にすると、高いm値が得られ、それよりαが
多くても少なくても、m値は減少する傾向にあることが
判った。さて、「Progress in Materials Science 」
(Vol.33(1989) p.169) によれば、微細化超塑性材の特
徴として、その構成する2相によるZener 効果により、
超塑性変形の途中において、互いに粒成長を抑制し合っ
て、微細再結晶粒の維持を通じ、粒界面積を減少させず
に、粒界すべりを活発化する点が挙げられる。そして、
異相の粒成長を抑制するには、2相の組織比率を50:50
にするのが望ましいことにも言及しているが、これは、
2相の強度レベルが同等か、またはそれに近いことが前
提となる。しかし、超塑性変形下のαおよびγ各相間で
は、γ相の強度が高くなっているため、変形抵抗の減少
を考慮したとき、硬質母相より軟質母相とすることの方
が有利となる。従って、αおよびγ相の比は、軟質のα
相を1:1よりも高くすることが、必要と言える。そこ
で、αおよびγ相の比の指標である、上記〔Creq−N
ieq〕を12.0〜17.0を満足する範囲に規制することとし
た。すなわち、〔Creq−Nieq〕を12.0以上とすることに
よって、母相を軟質化することができ、一方〔Creq−Ni
eq〕が17.0以下であれば、異相の粒成長抑制効果を阻害
することはない。
【0022】
【実施例】以下に、この発明の実施例を比較例と併せて
説明する。表1に示す成分組成からなる10kgの2相ステ
ンレス鋼を、大気雰囲気下で高周波炉にて誘導溶解した
後、10kgの金型に鋳造し、次いで1150〜1200℃の温度域
で熱間鍛造して10mmの厚さとし、その後、1000〜1200℃
の温度域で溶体化処理を施し、脱スケール後に圧下率84
%の冷間圧延を施し、板厚を1.6 mmに調整して試験片を
作製した。なお、試験片形状は、平行部長さが10mm、幅
5mmである。
【0023】このようにして得られた試験片は、超塑性
成形温度である900 ℃に加熱してから、この温度に約70
分間保持した後、引張試験に供し、超塑性特性を評価し
た。この引張試験には、通常のクロスヘッド速度が一定
の一軸引張試験ではなく、高温強度試験法の一つとして
行われているステップ・ストレイン・レイト法を採用し
た。これは、当初、極低速のクロスヘッド速度(0.005mm
/min) で引張を開始して、応力のピークを迎えた時点で
クロスヘッド速度を段階的に順次上昇させて行き、各ク
ロスヘッド速度での応力ピークを求め、この操作を20mm
/min まで続けることによって、変形抵抗(流動応力)
および歪速度感受性指数(m値)などを比較的簡便に求
めることができる試験法である。
【0024】なお、超塑性についての明確な定義はない
が、これまでのところ、一般には、伸びが 200%以上お
よび上記m値が0.3 以上となるときに、超塑性を示すと
判断してよいとされている。この二つの指標以外に、実
際の超塑性加工において重要な要素として、変形抵抗
(流動応力)がある。従って、超塑性特性は、流動応
力、m値および伸びの3指標をもって評価した。その結
果を表1に示す。表1に示す実施結果から明らかなよう
に、発明鋼は、流動応力が 900℃で20 MPa以下と小さ
く、m値>0.75と大きく、しかも、伸びは1000%以上と
大きく、上記3指標のいずれも良好な数値を示した。こ
れに対し、発明鋼の成分組成範囲から逸脱した比較鋼
は、超塑性特性の発現は認められるものの、流動応力,
m値または伸びの少なくともいずれかの指標が悪く、そ
れ故に、発明鋼の方が優れた超塑性特性を示すことが明
らかとなった。
【0025】
【表1】
【0026】次に、流動応力または伸びに及ぼすB添加
の影響について試験した。その結果を図1,図2に示
す。これらの図に示す結果から明らかなように、伸び
は、B添加によって向上する傾向が見られ、一方で、流
動応力は、B添加量の増加に伴って増加することが確認
された。以上の結果から、伸びと流動応力、m値のバラ
ンスを考慮すると、0.0005〜0.01wt%の範囲内であれ
ば、成形上の問題を起こすことなく、 900℃前後の低い
温度域での超塑性加工を実現し得る。
【0027】また、m値に及ぼす〔Creq−Nieq〕の影響
についても試験した。その結果を図3に示す。この図に
示す結果から明らかなように、m値は、〔Creq−Nieq
が12〜17の範囲で高くなり、その範囲で良好な超塑性特
性が得られることが判った。
【0028】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明の超塑性2
相ステンレス鋼は、900 ℃前後でのσ相の析出がなく、
しかも流動応力が低く、高いm値を有する材料であるの
で、 900℃前後の低い温度域での超塑性加工を実現し得
る。しかも、この発明によれば、加工後の製品にはσ相
がないので、脆化、耐食性の劣化などの問題の生じない
極めて実用的な製品が得られる。従って、この発明は、
鉄基超塑性材料の適用範囲を一層拡大することに寄与
し、さらに、Ti合金などとの超塑性接合といった,従来
は成形温度の違いから不可能であった製造方法をも可能
とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】流動応力とB添加量との関係を示すグラフであ
る。
【図2】伸びとB添加量との関係を示すグラフである。
【図3】歪速度感受性指数(m値)と〔Creq−Nieq〕と
の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小出 信也 神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日 本冶金工業株式会社研究開発本部技術研究 所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.05wt%以下、 Si:1.5 wt%以
    下、 Mn:3.0 wt%以下、 Cr:17.0〜26.0wt%、 Ni:3.0 〜10.0wt%、 Mo:0.1 〜2.0 wt%、 N:0.08〜0.20wt%、 S:0.002 wt%以下、 B:0.0005〜0.01wt%を含み、残部Feおよび不可避的不
    純物からなる変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超
    塑性2相ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】C:0.05wt%以下、 Si:1.5 wt%以
    下、 Mn:3.0 wt%以下、 Cr:17.0〜26.0wt%、 Ni:3.0 〜10.0wt%、 Mo:0.1 〜2.0 wt%、 N:0.08〜0.20wt%、 S:0.002 wt%以下、 B:0.0005〜0.01wt%を含み、さらに、 Cu: 0.1〜2.0 wt%を含有し、残部Feおよび不可避的不
    純物からなる変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超
    塑性2相ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の鋼がそれぞ
    れ、 REMを0.005 〜0.05wt%含有する組成からなる、変
    形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2相ステン
    レス鋼。
  4. 【請求項4】 Cr、Ni、Mo、Si、C、Mn、CuおよびNの
    含有量を、下記式(1) で定義されるCreqと、下記式(2)
    で定義されるNieqとの差〔Creq−Nieq〕が、12.0〜17.0
    を満足するように規制することを特徴とする請求項1〜
    3のいずれか1つに記載の変形抵抗が小さくかつ伸び特
    性に優れる超塑性2相ステンレス鋼。 記 Creq=Cr+Mo+0.5 Si ・・・(1) Nieq=Ni+30C+0.5 Mn+0.5 Cu+20N ・・・(2)
JP6152270A 1994-07-04 1994-07-04 変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる超塑性2相ステンレス鋼 Expired - Fee Related JP2661875B2 (ja)

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