JP2614416B2 - 超塑性2相ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

超塑性2相ステンレス鋼板の製造方法

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信義 岡登
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超塑性2相ステンレス
鋼板の製造方法に関し、特に、従来のものに比べて低い
温度(900 ℃前後)での成形加工であっても、超塑性特
性,すなわち小さい変形抵抗で良好な伸び特性を示す超
塑性2相ステンレス鋼板を製造する方法について提案す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、超塑性を発現するステンレス鋼と
しては、SUS 329 J4L 等に代表される、耐孔食2相ステ
ンレス鋼がよく知られている。このステンレス鋼は、本
来、海水中などの使用環境下における耐食性ならびに耐
酸化性の向上を意図して設計された材料である。
【0003】ところで、超塑性材料には、微細化超塑性
材と変態超塑性材とがあり、現在のところ前者が圧倒的
に多数を占めることは良く知られている。かかる微細化
超塑性材は、母相と第2相とが互いに粒成長を抑制する
作用を及ぼし合うことで、高温変形中に微細再結晶粒を
維持し、このことによって、良好な超塑性特性を発現す
るものと考えられている。そして、上記SUS 329 J4L
は、オーステナイトおよびフェライトの2相組織からな
り、これら2相の働きによって、超塑性を比較的容易に
発現するのである。
【0004】このSUS 329 J4L 系2相ステンレス鋼を、
超塑性が要求される用途、例えば、シンクや流し台,ゴ
ルフクラブヘッドのような、複雑形状を有する一体成形
加工品などに供する場合、1000℃以上の温度で成形する
ことが必要であった。なぜなら、これよりも低温で成形
すると、変形に際して、硬質の金属間化合物であるσ相
が析出するからである。それは、このσ相が生成する
と、σ/α,σ/γの各粒界が、α/γ,α/α,γ/
γの粒界に比べるとすべりにくいことから、変形に要す
る流動応力の上昇を招く。したがって、2相ステンレス
鋼を超塑性材料として利用するには、σ相が析出しない
温度域での成形が不可欠である。
【0005】以上説明したように、従来の超塑性2相ス
テンレス鋼の加工は、1000℃程度の高い温度で行わねば
ならないため、長時間の超塑性加工では、材料そのもの
の耐酸化性が求められる。なぜなら、2相ステンレス鋼
の場合、耐酸化性が悪いと、例えば材料の変形に伴い、
この材料内部にまで酸化が進行しやすくなり、ボイドの
発生や材料の破断の原因となるからである。このような
理由から、2相ステンレス鋼について、より低い温度域
(例えばTi合金超塑性材料で一般的な温度域である,900
℃程度)においても、超塑性が発現するようなものが求
められていた。というのは、低温でも超塑性を発現させ
ることができれば、成形加工条件が緩和され、酸化の抑
制と共により安定した成形加工を実現できる上、設備設
計を容易かつ安価にし、加工コストの削減や成形サイク
ルの向上に役立つからである。
【0006】このように900 ℃程度の低い温度域でも優
れた超塑性を発現させるようにするには、その低温度域
で、変形に必要な応力,すなわち流動応力が低く、歪速
度感受性指数,すなわちm値が高く、しかもσ相が析出
しない材料であることが望まれる。なお、m値とは、下
記式に示す関係にあるmの数値のことをいう。 lnδ=m×lnε+C (δ;応力、ε;歪み速度、C;定数)
【0007】これに対し従来、1000℃以下の温度におい
ても十分な加工性を有する2相ステンレス鋼について、
既に種々の提案がなされている。例えば、特公昭59−14
099号公報には、熱間加工性に加え、耐局部腐食性を向
上させた2相ステンレス鋼が開示されている。
【0008】ところが、上掲の各従来技術に示された2
相ステンレス鋼、あるいはSUS 329J4L に規定された2
相ステンレス鋼は、主として耐食性に主眼がおかれてお
り、超塑性の発現とその向上を目的として設計されたも
のではない。
【0009】そこで、発明者らは、超塑性特性の向上を
主目的とし、ステンレス鋼本来の特性である耐食性を維
持しつつ、従来に比べてより低い温度域で優れた超塑性
(変形抵抗が小さくかつ伸び特性に優れる)を発現させ
ることができる超塑性2相ステンレス鋼を開発するため
に、種々の合金成分組成について鋭意研究を行った。そ
の結果、発明者らは、先に、σ相の析出がなく、従来に
比べて低温( 900℃程度)でも超塑性特性を有し、しか
も耐食性を有する実用的な超塑性2相ステンレス鋼を開
発した(特願平5−185667号参照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、発明者
らが開発した上記超塑性2相ステンレス鋼は、超塑性特
性を発現するそれ以前の材料に比べて、900 ℃前後での
超塑性特性に優れるものの、実用上は、更にm値が高く
流動応力の低い材料が求められており、なお超塑性特性
を改善する必要があった。
【0011】本発明の目的は、900 ℃程度の低い温度域
における超塑性特性の一層の向上を目指し、特に、低温
での超塑性加工用に設計された2相ステンレス鋼の超塑
性特性を更に向上させることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】発明者らは、超塑性特性
を支配する合金成分組成以外の因子に着目し、上記目的
の実現に向けさらに鋭意検討を行った。その結果、発明
者らは、以下に述べる内容を要旨構成とする手段を採用
することが、上記課題解決のために有効であるとの知見
を得て、本発明方法を完成させるに到ったのである。
【0013】すなわち、本発明は、 .超塑性特性を発現する成分組成からなる2相ステン
レス鋼の鋳造スラブを熱間圧延し、次いで、得られた熱
延鋼板をσ相が発生する上限温度超〜1000℃、好ましく
は 900〜1000℃にて熱処理し、その後、冷間圧延を行う
ことを特徴とする超塑性2相ステンレス鋼板の製造方法
である。 .超塑性特性を発現する成分組成からなる2相ステン
レス鋼の鋳造スラブを熱間圧延し、次いで、得られた熱
延鋼板をσ相が発生する上限温度超〜1000℃、好ましく
は 900〜1000℃にて熱処理し、その後、冷間圧延および
焼鈍を行うことを特徴とする超塑性2相ステンレス鋼板
の製造方法である。 .なお、上記の超塑性特性を発現する2相ステンレス
鋼として、C:0.05wt%以下、Si:1.5 wt%以下、M
n:3.0 wt%以下、Cr:17.0〜26.0wt%、Ni:3.0〜10.0
wt%、好ましくは 4.0〜8.0 wt%、Cu: 0.1〜 2.0wt
%、好ましくは 1.0〜2.0 wt%、N:0.08〜0.20wt%及
びS:0.002 wt%以下を含み、残部はFe及び不可避的不
純物からなる成分組成の2相ステンレス鋼を用いるまた、上記の超塑性特性を発現する2相ステンレス
鋼として、上記に記載の発明における成分組成に加
えて、さらに、Mo: 0.1〜 2.0wt%及び REM: 0.005〜
0.05wt%の1種又は2種を含有させた成分組成の塑性か
らなる2相ステンレス鋼を用いることもできる。また、本発明においては、C,Si,Mn,Cr,Ni,M
o,Cu,Nの含有量を、下記式(1) で定義されるCr
eqと、下記式(2) で定義されるNieqとの差(Creq−N
ieq)が、12.0〜17.0を満足する範囲に規制することを
特徴とする
【0014】
【作用】さて、発明者らは、超塑性特性を支配する合金
成分以外の因子として熱処理条件に着目し、特に熱間圧
延後に行う熱処理の温度について検討した。その結果、
熱間圧延後の熱処理を施すこととし、しかもその温度を
低くすることが超塑性特性の向上に有効であることを見
出したのである。しかし、上記熱処理の温度をσ相析出
上限温度よりも低い温度にすると、σ相が発生して、加
工中に試験片が破損するという問題があった。すなわ
ち、σ相が発生するような温度域での熱処理は、超塑性
性能を高めるものの材料の靱性を劣化させるという実用
上の問題があった。そこで、本発明において、熱間圧延
後の熱処理温度は、その下限値をσ相が発生する上限温
度とし、一方、1000℃超では、歪速度感受性指数(m
値),流動応力および伸びがいずれも低下する傾向にあ
るので、その上限値は1000℃とした(実施例参照)。
【0015】さて、発明者らは当初、結晶粒度が小さい
材料ほど超塑性特性が優れていることから、上記熱処理
温度の限定による超塑性特性向上の効果は、結晶粒の微
細化によるものと考えていた。しかし、2相ステンレス
鋼のミクロ組織観察をしたところ、超塑性材料のフェラ
イト結晶粒やオーステナイト結晶粒の大きさにはほとん
ど変化が見られなかった。そこで、さらにミクロな組織
について観察を行った。その結果、熱間圧延後に熱処理
をし、かつその温度を低くしたものでは、α相の成長が
抑制され、α相に囲まれたγ相が熱処理後にも残留して
いることが判った。すなわち、上記熱処理後に施す冷間
圧延、もしくは冷間圧延,焼鈍後の材料は、α相,γ相
自体の大きさにはほとんど変化が見られないが、α相内
のα/α粒界が著しく増えていることを発見したのであ
る。このことから、熱間圧延後に行う熱処理の温度を低
くすれば、α相内のα/α粒界が増えて、超塑性特性が
大きく向上するものとの結論に達したのである。
【0016】また、本発明においては、必要に応じて冷
間圧延後に焼鈍を行うことが望ましい。これにより、材
料が軟化し、ガスブロー成形を行う際のガスシールド性
が容易になるからである。この焼鈍は、σ相が発生する
上限温度〜1000℃×5 min.の条件にて行うことが好ま
しい。
【0017】上述したように、本発明方法において、90
0 ℃程度の低い温度域における超塑性特性をより一層向
上させるには、熱間圧延後の熱処理温度を低くすること
が重要であるが、さらには2相ステンレス鋼の成分組成
の制御も必要であると考え、以下に述べるような成分組
成とした。 C:0.05wt%以下 Cは、その含有量が0.05wt%を超えると、粒界腐食感受
性が増大し、耐孔食性が劣化するとともに、炭化物の析
出により熱間加工性が低下する。しかも、冷間圧延に際
して硬化を来すため、その後の加工等を困難にする。従
って、Cは、0.05wt%を上限とする。
【0018】Si:1.5 wt%以下 Siは、金属間化合物であるσ相の構成元素であり、この
Si量が増えるにしたがってσ相が析出する速度が速くな
り、析出温度の上昇が見られる。そこで、このSiの作用
によって900 ℃前後でもσ相が析出しないようにするた
めに、このSiは、1.5 wt%以下とする必要がある。
【0019】Mn:3.0 wt%以下 Mnは、溶解,精錬時に脱酸元素として作用すると共に、
Sと化合して硫黄化物を精製し、熱間脆性の発生を防止
するのに有効な元素であるが、3.0 wt%を超えると耐酸
化性が劣化する。従って、このMnは、3.0 wt%以下とす
る必要がある。
【0020】Cr:17.0〜26.0wt% Crは、フェライト形成元素であり、かつσ相構成元素で
もある。このCrの含有量が26.0wt%を超えると、σ相の
析出が顕著となり、σ相の析出を促進するSiなどの元素
を少なくしても900 ℃前後でσ相の析出が生じる結果、
熱間加工性およびα相形成温度域における超塑性が劣化
する。一方、Cr含有量が17.0wt%未満では、下記Niと同
様に、オーステナイト量が増大するために、α相による
γ粒成長の抑制効果が消失し、超塑性性能の劣化を招く
と共に、鋼の耐酸化性が低下し、超塑性成形における高
温長時間保持による材料の酸化が著しく、良好な伸びを
得ることができない。従って、このCrは、17.0〜26.0wt
%とする。
【0021】Ni:3.0 〜10.0wt% Niは、オーステナイト形成元素であり、3.0 wt%未満に
なると、他のフェライト形成元素やオーステナイト形成
元素によって調整しても、γ(オーステナイト)相の比
率が30wt%以下となり、超塑性変形中にα(フェライ
ト)相の粒成長を抑制するという効果が低下し、超塑性
特性の劣化を招く。一方、10wt%を超えると、逆にγ相
の比率が高くなり、γ相の粒成長速度が増大して材料の
高温での流動応力の上昇を招く。従って、このNiは、3.
0 〜10.0wt%とする。好ましくは 4.0〜8.0 wt%の範囲
とする。
【0022】Mo: 0.1〜2.0 wt% Moは、加工後における耐孔食性や耐隙間腐食性などの耐
食性の向上に寄与する元素であり、かつ固溶強化元素で
もある。そのため、Mo含有量が 2.0wt%を超えると、超
塑性変形における変形抵抗が著しく上昇し、一方、Mo含
有量が 0.1wt%未満では、長時間の超塑性加工における
材料の酸化が著しくなり、材料の破断等を招きやすくな
る。そのため、大きな超塑性伸びを要求されるような用
途においては、このMo含有量を 0.1〜 2.0wt%とする。
好ましくは 1.0〜2.0 wt%の範囲とする。
【0023】Cu: 0.1〜2.0 wt% Cuは、加工後における耐孔食性や耐隙間腐食性などの耐
食性の向上に寄与する元素であるが、多く添加しすぎる
と熱間加工性を劣化させる。そのため、 2.0wt%を上限
とし、耐食性改善の効果が現れ始める 0.1wt%を下限と
する。好ましくは 1.0〜2.0 wt%の範囲である。
【0024】N:0.08〜0.20wt% Nは、Cと同様にオーステナイト形成元素であり、その
ためN含有量は、他のフェライト形成元素との兼ね合い
のもとで組織バランスから定める必要がある。また、こ
のNは、耐孔食性を向上させるという効果もある。従っ
て、このNは0.08wt%を下限とする。一方、N含有量が
0.20wt%を超えると熱間加工性が極めて悪くなるため、
0.08〜0.20wt%の範囲に限定する。
【0025】S:0.002 wt%以下 Sは、粒界に偏析して2相ステンレス鋼の熱間加工性を
著しく劣化させることが知られている。そのため、実用
上、0.002 wt%以下に抑えて、熱間加工性を確保するこ
とが好ましい。
【0026】REM: 0.005〜0.05wt% REM(希土類元素のうちから選ばれるいずれか1種ま
たはミッシュメタルのような2種以上の混合物であり、
特に La,CeおよびYが好適である。)は、超塑性加工に
おいて、耐酸化性の向上に寄与する元素であるが、0.05
wt%を超えて添加すると、表面疵の原因となったり、非
金属介在物となって鋼中に残留して耐食性劣化の原因と
なる。そのため、0.05wt%を上限とし、耐酸化性改善の
効果が現れ始める 0.005wt%を下限とする。
【0027】次に、αおよびγ相の比について説明す
る。発明者らは、2相ステンレス鋼の超塑性変形におい
て最も重要な役割を果たしていると考えられる,α/γ
粒界の影響を調べるために、幅広いα/γ比の組成の2
相ステンレス鋼について実験を行った。その結果、この
α/γ比は超塑性特性の一つである歪速度感受性指数
(m値)との間で強い相関があることを見出した。な
お、上記α/γ比は〔Creq−Nieq〕で示すことができる
が、この値を好適範囲にしたとき、高いm値が得られる
ことが判った。さて、「Progress in Materials Scienc
e 」 (Vol.33(1989) p.169) によれば、微細化超塑性材
の特徴として、その構成する2相によるZener 効果によ
り、超塑性変形の途中において、互いに粒成長を抑制し
合って、微細再結晶粒の維持を通じ、粒界面積を減少さ
せずに、粒界すべりを活発化する点が挙げられる。そし
て、異相の粒成長を抑制するには、2相の組織比率を5
0:50にすることが望ましい旨も言及しているが、これ
は、2相の強度レベルが同等か、またはそれに近いこと
が前提となっている。しかし、超塑性変形下のαおよび
γ各相間では、γ相の強度が高くなっているため、変形
抵抗の減少を考慮したとき、硬質母相より軟質母相とす
ることの方が有利となる。従って、αおよびγ相の比
は、軟質のα相を1:1よりも高くすることが、必要と
言える。
【0028】そこで、上記α/γ比,即ち〔Creq−N
ieq〕を適正にするために、α層/γ相の比の指標であ
る、上述した式(1) および(2) で定義されるCreqおよび
Nieqとの差〔Creq−Nieq〕を、12.0〜17.0を満足する範
囲に規制することとした。この限定の理由は、〔Creq
Nieq〕を12.0以上とすることによって、母相を軟質化さ
せることができ、一方、〔Creq−Nieq〕が17.0以下であ
れば、異相の粒成長抑制効果を阻害することがないから
である。
【0029】
【実施例】表1に示す成分組成を有する10kgの2相ステ
ンレス鋼を、大気雰囲気下で高周波炉にて誘導溶解した
後、10kgの金型に鋳造し、次いで、1150〜1200℃の温度
域で熱間圧延して10mmの厚さの熱延板とした。その後、
この熱延板を 850〜1050℃の温度域で熱処理を施し、さ
らに、脱スケール処理してから圧下率84%の冷間圧延を
施し、必要に応じてさらに1000℃×5minの焼鈍を施し、
板厚1.6mm の試験片(冷延板)を作製した。なお、この
試験片の形状は、平行部長さが10mm、幅5mmのものであ
る。
【0030】このようにして得られた試験片を、超塑性
成形温度である900 ℃に加熱してから、この温度に約70
分間保持したのち、引張試験に供し、超塑性特性を評価
した。この引張試験には、通常のクロスヘッド速度が一
定の一軸引張試験法ではなく、高温強度試験法の一つと
して行われている、ステップ・ストレイン・レイト法を
採用した。これは、当初、極低速のクロスヘッド速度
(0.005 mm/min )で引張を開始して、応力ピークを迎
えた後に、クロスヘッド速度を順次に上昇させて行き、
各クロスヘッド速度での応力ピークを求め、この操作を
20mm/min まで続けることによって、変形抵抗(流動応
力)および歪速度感受性指数(m値)などを求めること
ができる試験法である。
【0031】なお、超塑性についての明確な定義はない
が、これまでのところ、伸びが200%以上および上記m
値が 0.3以上となるときに、超塑性を示すと判断して良
いとされている。従って、超塑性は流動応力、m値およ
び伸びの3指標をもって評価した。その結果を表2に示
す。この表2に示す結果から明らかなように、本発明に
よって製造した超塑性2相ステンレス鋼は、従来の製造
方法によって製造される超塑性2相ステンレス鋼に比べ
て、流動応力が小さく、m値が高く、かつ伸びに優れた
超塑性特性を示すことが判った。特に、熱間加工後の熱
処理温度を 925℃とすることにより、超塑性特性(m
値,流動応力,伸び)は、従来(熱処理温度が1000℃超
の場合)に比べて1割以上も向上させることができた。
また、冷間圧延後に焼鈍を施した試験片は、焼鈍を施さ
ない冷間圧延後の材料に比較すると、m値,流動応力が
10%程度低下するものの、良好なガスシールド性という
新たな効果を示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】次に、本発明の製造方法によって製造した
2相ステンレス鋼について、m値に及ぼす〔Creq−N
ieq〕の影響についても試験した。その結果を図1に示
す。すなわち、図1は、歪速度が2.0 ×10-4-1のとき
の歪速度感受性指数(m値)と、本発明方法にかかる鋼
および従来方法にかかる鋼の〔Creq−Nieq〕との関係を
示したもので、m値は〔Creq−Nieq〕が12.0〜17.0の範
囲で高くなり、その範囲で良好な超塑性特性が得られる
ことが判る。なお、●印は、本発明方法にかかる鋼を示
し、○印は、従来方法にかかる鋼を示す。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように本発明の方法によれ
ば、熱間加工後の熱処理温度を低くするという極めて簡
単な操作により、低温での超塑性加工用に設計された2
相ステンレス鋼の超塑性特性を更に向上させることがで
きる。しかも、従来のものに比べて低い温度(900 ℃前
後)での成形加工であっても、変形抵抗が小さくかつ伸
び特性の良好な超塑性2相ステンレス鋼板を既存の量産
設備にて効率良く製造することができる。従って、本発
明は、鉄基超塑性材料の適用範囲を一層拡大することに
寄与し、安価な2相ステンレス超塑性材料の供給を可能
とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】歪速度感受性指数(m値)と〔Creq−Nieq〕と
の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小出 信也 神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社 研究開発本部 技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−210158(JP,A) 特開 平7−41906(JP,A) 特公 平1−16286(JP,B2)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.05wt%以下、 Si:1.5 wt%以下、 Mn:3.0 wt%以下、 Cr:17.0〜26.0wt%、 Ni:3.0 〜10.0wt%、 Cu: 0.1〜 2.0wt%、 N:0.08〜0.20wt%及びS:0.002 wt%以下 を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなる 超塑性特
    性を発現する2相ステンレス鋼の鋳造スラブを熱間圧延
    し、次いで、得られた熱延鋼板をσ相が発生する上限温
    度超〜1000℃にて熱処理し、その後、冷間圧延を行うこ
    とを特徴とする超塑性2相ステンレス鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】C:0.05wt%以下、 Si:1.5 wt%以下、 Mn:3.0 wt%以下、 Cr:17.0〜26.0wt%、 Ni:3.0 〜10.0wt%、 Cu: 0.1〜 2.0wt%、 N:0.08〜0.20wt%及びS:0.002 wt%以下 を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなる 超塑性特
    性を発現する2相ステンレス鋼の鋳造スラブを熱間圧延
    し、次いで、得られた熱延鋼板をσ相が発生する上限温
    度超〜1000℃にて熱処理し、その後、冷間圧延および焼
    鈍を行うことを特徴とする超塑性2相ステンレス鋼板の
    製造方法。ス鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】超塑性特性を発現する2相ステンレス鋼と
    して、 C:0.05wt%以下、 Si:1.5 wt%以下、 Mn:3.0 wt%以下、 Cr:17.0〜26.0wt%、 Ni:3.0 〜10.0wt%、 Cu: 0.1〜 2.0wt%、 N:0.08〜0.20wt%及びS:0.002 wt%以下 を含み、さらにMo: 0.1〜 2.0wt%及び REM: 0.005〜
    0.05wt% の1種又は2種を含有し、残部はFe及び不可避的不純物
    からなる成分組成の2相ステンレス鋼を用いることを特
    徴とする請求項1または2に記載の超塑性2相ステンレ
    ス鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】C,Si,Mn,Cr,Ni,Mo,Cu,Nの含有量
    を、下記式(1) で定義されるCreqと、下記式(2) で定義
    されるNieqとの差(Creq−Nieq)が、12.0〜17.0を満足
    する範囲に規制することを特徴とする請求項1, 2また
    は3に記載の超塑性2相ステンレス鋼板の製造方法。
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