JP4543550B2 - ビニル基およびジメチルシロキサン結合を有するシランカップリング剤 - Google Patents
ビニル基およびジメチルシロキサン結合を有するシランカップリング剤 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シランカップリング剤、このシランカップリング剤で被覆されたガラス繊維、このガラス繊維を含むガラス繊維強化熱硬化性樹脂、このガラス繊維強化熱硬化性樹脂からなる層を含むプリント配線板用積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気製品の小型化が進み、それに用いられるプリント配線板も薄層化・多層化等により小型化することが必要となってきている。プリント配線板は、ガラス繊維とマトリックス樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層と導体層とを備えたプリント配線板用積層板から製造され、プリント配線板へ加工する過程には、通常、溶融半田に浸漬する工程や半田リフロー工程等の高温処理工程が含まれる。したがって、小型化されたプリント配線板においては特に、層間剥離(ブリスター)やミーズリング(ガラス繊維織り交点での剥離)が生じやすく、耐熱性が不充分となっている。また、ガラス繊維フィラメント間にボイドが残留しやすく、電食も問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、マトリックス樹脂含浸に先立ってガラス繊維を処理するカップリング剤の改良が試みられている。例えば、特開平4−178432号公報には、硬化速度の遅いシランカップリング剤を用いることにより硬化歪みを減少させ、加圧成形時の脱泡性も向上させる方法が開示されている。また、特開平5−183246号公報には、マトリックス樹脂と反応性の異なる2種以上のシランカップリング剤により表面処理を施した複数のガラスクロスを用いることによりボイドの少ないプリント配線板を製造する方法が開示されている。
【0004】
さらに、特開平8−2946号公報には、シランカップリング剤とチタネートカップリング剤とを併用してガラス繊維織物を処理することにより、マトリックス樹脂との濡れ性が向上する旨記載されている。また、特公昭48−20609号公報には、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン1モルに対してビニルベンジルクロライド1モルを反応させることにより得られる、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されたカップリング剤でガラス繊維織物を被覆した場合であっても、ガラス繊維織物のマトリックス樹脂含浸性が充分とはいえず、プリント配線板におけるボイドの発生を防止することが困難であるという問題があった。また、充分な含浸性を得るためには長時間のマトリックス樹脂の含浸が必要となる場合が多く、生産性の観点から工業的な実施が困難であるという問題があった。さらには、半田溶融温度にプリント配線板を加熱することにより、プリント配線板に膨れ等が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス繊維織物を被覆することにより、マトリックス樹脂の含浸を迅速化してプリント配線板用積層板の生産性を向上させ、さらに、プリント配線板におけるボイドの発生を抑制するとともに、半田溶融温度の加熱による膨れの発生をも充分なレベルまで低減することが可能なシランカップリング剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、このシランカップリング剤で被覆されたガラス繊維、このガラス繊維を含むガラス繊維強化熱硬化性樹脂、およびこのガラス繊維強化熱硬化性樹脂からなる層を備え、半田溶融温度の加熱による膨れの発生が抑制されたプリント配線板用積層板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、メトキシ基を有したアミノシラン化合物であって、メトキシ基とケイ素原子の間にジメチルシロキサン骨格を有する化合物と、ビニル基とハロゲン原子を有した化合物とを等モルで反応させてなるシランカップリング剤を用いることにより、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のシランカップリング剤は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物1モルに対して、下記一般式(2)で表されるビニル化合物1モルを反応させてなることを特徴とする。
【化6】
[式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、nは0〜3の整数、mは1〜5の整数をそれぞれ示す。ただし、R1が複数存在するときは、R1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化7】
[式中、R3は炭素数1〜10の2価の有機基、Xはハロゲン原子をそれぞれ示す。]
【0010】
本発明のシランカップリング剤は、また、下記一般式(1)で表されるシラン化合物における、窒素原子に結合した水素原子の少なくとも1つが、下記一般式(3)で表される1価の基で置換されてなることを特徴とする。
【化8】
[式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、nは0〜3の整数、mは1〜5の整数をそれぞれ示す。ただし、R1が複数存在するときは、R1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化9】
[式中、R3は炭素数1〜10の2価の有機基を示す。]
【0011】
本発明は、さらに、下記一般式(4)で表されるシランカップリング剤を提供するものである。
【化10】
[式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、R3は炭素数1〜10の2価の有機基、nは0〜3の整数、mは1〜5の整数をそれぞれ示す。ただし、R1が複数存在するときは、R1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0012】
本発明のシランカップリング剤においては、前記R1がエチレン基であり、R2がプロピレン基であり、R3が−C6H4−CH2−で表される2価の基であり、nが1、mが1〜3の整数であることが好ましい。
【0013】
本発明は、また、上記シランカップリング剤で被覆されたガラス繊維、該ガラス繊維と熱硬化性樹脂とを含むガラス繊維強化熱硬化性樹脂、および、該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂からなるガラス繊維強化熱硬化性樹脂層と、該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂層の最外層に接合された導体層とを備えるプリント配線板用積層板を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のシランカップリング剤は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(以下、「化合物1」という。)1モルに対して、下記一般式(2)で表されるビニル化合物(以下、「化合物2」という。)1モルを反応させてなるものである。
【化11】
【化12】
【0015】
化合物1において、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、nは0〜3の整数、mは1〜5の整数をそれぞれ示す。ただし、R1が複数存在するときは、R1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、化合物2においては、R3は炭素数1〜10の2価の有機基、Xはハロゲン原子をそれぞれ示す。
【0016】
化合物1は分子中にアミノ基を有しており化合物2はハロゲン原子を有しているため、両者の反応により縮合反応が生じ、HX(Xはハロゲン原子)が脱離する。この縮合反応は、アルコール等の有機溶剤の存在下または不存在下で行うことができる。反応に際しては、必要に応じて公知の縮合反応用の触媒を添加することも可能であり、また、反応温度は室温〜80℃、反応時間は数十分〜数時間とすることができる。
【0017】
上記の反応により、化合物1における、窒素原子に結合した水素原子の少なくとも1つが、下記一般式(3)で表される1価の基で置換されたシランカップリング剤が得られる。
【化13】
【0018】
化合物1におけるnが0である場合は、化合物1と化合物2の反応により生成するシランカップリング剤は下記一般式(5)で表される化合物となる。
【化14】
[式中、R2、R3、mは、それぞれ前記R2、R3、mと同義である。]
【0019】
一方、化合物1におけるnが1〜3である場合は、化合物1と化合物2の反応により生成するシランカップリング剤は、複数の構造を有するシランカップリング剤の混合物になると考えられる。すなわち、化合物1と化合物2の反応生成物は、例えば、化合物1の末端の−NH2における水素原子が上記一般式(3)で表される1価の基で置換された下記一般式(4)で表されるシランカップリング剤や、
【化15】
化合物1における(R1−NH)nの繰り返し単位中の水素原子の1つが上記一般式(3)で表される1価の基で置換されたシランカップリング剤を含むものになると考えられる。また、本発明においては、化合物1と化合物2を等しいモル比で反応させるものであるが、化合物1中の窒素原子に結合した水素原子の2以上が上記一般式(3)で表される1価の基で置換されたシランカップリング剤が生じる場合もあると考えられる。
【0020】
化合物1においては、R1は炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、1〜3のアルキレン基であることがより好ましい。R2は炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましい。また、mは1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。なお、化合物1は、mの数値が上記の範囲内である限り、mの数が異なるシラン化合物の混合物であってもよい。
【0021】
化合物2におけるR3は炭素数1〜10の2価の有機基であるが、当該2価の有機基としては、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価の脂環式炭化水素基が挙げられる。これらの基は、炭素数の合計が上記範囲内であれば置換基を有していてもよい。
【0022】
本発明においては、耐熱性の観点からR3は炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、当該芳香族炭化水素基としては、一般式−CpH2p−C6H4−CqH2q−(p、qは、p+qが0〜4となるような整数)で表される2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、当該一般式におけるpおよびqのいずれか一方が0であることがさらに好ましい。この場合において、化合物2のビニル基(CH2=CH−)は直接芳香環に結合していることが好ましい。R3としては−C6H4−CH2−が特に好ましい。また、化合物2におけるXはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子であるが、ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。
【0023】
本発明においては、R1がエチレン基であり、R2がプロピレン基であり、R3が−C6H4−CH2−で表される2価の基であり、nが1であり、且つ、mが1〜3の整数であることが特に好ましい。この場合において、化合物1は下記一般式(1a)で表されるシラン化合物(以下、「化合物1a」という。)となり、化合物2は下記一般式(2a)で表される化合物と(以下、「化合物2a」という。)となる。
【化16】
[式中、mは前記mと同義である。]
【化17】
[式中、Xは前記Xと同義である。]
【0024】
化合物2aにおけるXとしては、上述したように塩素原子が好ましい。また、芳香環における置換位置(−CH2−X基の置換位置に対するCH2=CH−基の置換位置)は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。
【0025】
化合物1aと化合物2aとを等しいモル比で反応させてなるシランカップリング剤は、下記一般式(4a)で表されるシランカップリング剤(以下、「化合物4a」という。)を含有するものとなる。本発明においては、当該化合物4aを含むシランカップリング剤が特に好ましい。
【化18】
[式中、mは前記mと同義である。]
【0026】
以上説明した本発明のシランカップリング剤を用いてガラス繊維を被覆した場合、非常に迅速なマトリックス樹脂の含浸が可能になる。一方、上記公報に開示されたカップリング剤や、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の一般のシランカップリング剤でガラス繊維を被覆した場合は、マトリックス樹脂の含浸速度は本発明のシランカップリング剤を用いる場合に比較して大幅に遅くなる。
【0027】
このような含浸速度の違いが生じる理由は必ずしも明らかではないが、上記公報に開示されたカップリング剤や上記一般のシランカップリング剤においては、極性基同士の引き合いにより、カップリング剤中のアミノ基等の極性基がガラス表面に吸着しやすく、この結果、本来ガラス表面と反応すべきアルコキシシリル基等の加水分解性基がマトリックス樹脂界面側に存在するようになるためであると考えられる。アルコキシシリル基がマトリックス樹脂界面に存在する場合は、アルコキシシリル基の撥水性等のためにマトリックス樹脂がガラス繊維間に浸透しづらくなり、このためにマトリックス樹脂を充分に含浸させるために長時間が必要となったり、ガラス繊維とマトリックス樹脂の間でボイドが生じたりするようになると考えられる。
【0028】
一方、本発明のシランカップリング剤は分子中のアミノ基(極性基)における水素原子が一般式(3)で表される1価の基で置換されているために、シランカップリング剤中のアミノ基のガラス繊維への吸着が立体障害により抑制されると考えられる。この抑制効果は化合物2におけるR3が−C6H4−CH2−で表される2価の基であるときに特に優れており、該2価の基は芳香環を有しているため得られるガラス繊維強化熱硬化性樹脂(およびこれを含むプリント配線板)の耐熱性向上にも貢献する。
【0029】
また、本発明のシランカップリング剤においては、上記化学式に示されるように、メトキシ基とケイ素原子の間にジメチルシロキサン骨格を有する。このために、メトキシ基がガラス表面と結合した場合にガラス表面とシランカップリング剤が柔軟なジメチルシロキサンを介して結合し、このような結合が生じないシランカップリング剤に比較して、ガラス繊維やガラス繊維織物の風合いを柔軟にすることができる。このために、マトリックス樹脂の含浸性がさらに向上し、ボイドの発生も低減されると考えられる。
【0030】
本発明のシランカップリング剤は上記のような特性を有するため、生産性高くプリント配線板用積層板を作成することが可能になり、さらに、ボイドの発生も抑制されるため、半田溶融温度の加熱によってもプリント配線板の膨れの発生を充分なレベルまで低減することが可能になる。
【0031】
上述した本発明のシランカップリング剤を用いてガラス繊維を被覆することができるが、本発明のシランカップリング剤で被覆するガラス繊維は、ガラス繊維モノフィラメント、複数のガラス繊維モノフィラメントからなるガラス繊維ストランド、ガラス繊維ストランドに撚りをかけて得られるガラス繊維ヤーンのいずれの態様を有していてもよい。ガラス繊維モノフィラメントの繊維径は、例えば3〜30μmとすることができ、ガラス繊維ストランドとしては、当該モノフィラメントを例えば50〜800本集束したものが使用できる。
【0032】
本発明のシランカップリング剤で被覆するガラス繊維は、上記ガラス繊維を編組することにより得られるガラス繊維編組物であってもよい。ここで、編組とはガラス繊維を編む、組む等して、互いに絡み合うように、あるいは重ねるように集合させることをいい、編組物とは編組により得られたものをいう。このようなガラス繊維編組物の態様としては、ガラス繊維織物、ガラス繊維編物、ガラス繊維組布、ガラス繊維不織布等が挙げられる。なお、ガラス繊維のガラス組成は特に制限されず、Eガラス、Sガラス、Cガラス、またはTガラスからなるガラス繊維がいずれも使用可能である。
【0033】
本発明のシランカップリング剤でガラス繊維を被覆する場合は、シランカップリング剤単体を用いてもよく、シランカップリング剤をアルコール等の溶剤および/または水に溶解または分散させた溶液を用いてもよい。これらには、必要に応じて酢酸等の酸やその他添加物を添加してもよい。ガラス繊維編組物への被覆方法としては、ガラス繊維編組物をシランカップリング剤(またはその溶液)に浸漬した後、スクイズロール等を用いて余分なシランカップリング剤や溶剤を除去し、乾燥機を用いて溶剤や水を除去する方法が挙げられる。また、塗工ローラーに接触させることにより塗工することも可能である。
【0034】
ガラス繊維を被覆するシランカップリング剤の重量(不揮発分としての重量)は、ガラス繊維100重量部に対して0.04〜0.30重量部であることが好ましく、0.05〜0.20重量部であることがより好ましい。
【0035】
本発明のガラス繊維強化熱硬化性樹脂は、上記のガラス繊維と熱硬化性樹脂とを含むものである。この場合のガラス繊維は上述のいずれの態様を有していてもよい。また、本発明のガラス繊維強化熱硬化性樹脂における熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示でき、この熱硬化性樹脂は硬化が完了していてもよく、半硬化の状態でプリプレグとして使用できるものであってもよい。なお、本発明のガラス繊維強化熱硬化性樹脂は、必要に応じて、低収縮剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0036】
本発明のプリント配線板用積層板は、上記ガラス繊維強化熱硬化性樹脂からなるガラス繊維強化熱硬化性樹脂層と、該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂層の最外層に接合された導体層とを備えるものである。本発明のプリント配線板用積層板における熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化物が好ましい。また、上記導体層としては、銅、銀、金等からなる導体層が挙げられる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
(I)シランカップリング剤の合成
冷却器、攪拌器、滴下ロート、温度計を取り付けた1000mLのセバラブルフラスコに、下記化合物1a(日本ユニカー社製、C1−031−07、重量平均分子量:622.5、mの平均値:1.8)124.5g(0.2モル)と、メタノール155.0gを入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、ビニルベンジルクロライド30.5g(0.2モル)をゆっ<りと滴下し、60℃で6時間反応させて、シランカップリング剤の50重量%メタノール溶液を得た。
【化19】
【0039】
(II)シランカップリング剤の合成の確認
(I)で得られたシランカップリング剤の塩素濃度を硝酸銀滴定法により測定したところ、2.2重量%であり、理論値が2.3重量%であることから、ビニルベンジルクロライドの95%が反応していることがわかった。また、シランカップリング剤中には、下記化合物4aが主成分として確認された。
【化20】
【0040】
(III)ガラス繊維織物被覆用の処理液の調製
(I)で得られたシランカップリング剤の50重量%メタノール溶液に希酢酸を添加し、(I)で得られたシランカップリング剤溶液が0.8重量%であってpHが3.5の水溶液(すなわち、(I)で得られたシランカップリング剤が0.4重量%の水溶液)を作製し、ガラス繊維織物被覆用の処理液とした。
【0041】
(IV)ガラス繊維織物の被覆
(III)で得られた処理液に、厚さ0.1mmのガラス繊維織物(日東紡績社製、WEA116E)を浸漬し、ピックアップ量が20重量%となるようにスクイズロールで絞り、110℃の熱風で5分間乾燥し、シランカップリング剤で被覆されたガラス繊維織物(以下、「シラン処理ガラス繊維織物」という。)を得た。また、このシラン処理ガラス繊維織物を4×4cm角に切断しシラン処理ガラス繊維織物試験片を作製した。
【0042】
(V)積層板試験片の作製
(IV)で得られたシラン処理ガラス繊維織物にNEMA規格FR−4処方に従って調合した下記表1に記載の組成を有するエポキシ樹脂ワニスを含浸させ、130℃で7分間乾燥してプリプレグを作成した。このプリプレグを4枚積層し、この表裏面に銅箔を重ね、30kg/cm2の圧力で、170℃、90分問加熱成形し、銅張積層板(プリント配線板用積層板)を得た。この銅張積層板からエッチングにより銅箔を除去し、4×4cm角に切断して、積層板試験片を作製した。
【0043】
【表1】
【0044】
(比較例1)
実施例1の(I)の工程において得られたシランカップリング剤の50重量%メタノール溶液に代えて化合物1aを用いた他は、実施例1の(III)の工程と同様にして、化合物1aが0.3重量%であってpHが3.5の水溶液を作製し、ガラス繊維織物被覆用の処理液とした。この処理液を用いて実施例1の(IV)の工程と同様にして、シラン処理ガラス繊維織物試験片を作製した。また、実施例1の(V)の工程と同様にして、銅張積層板および積層板試験片を作製した。
【0045】
(比較例2)
実施例1の(I)の工程において得られたシランカップリング剤の50重量%メタノール溶液に代えてN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを用いた他は、実施例1の(III)の工程と同様にして、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが0.4重量%であってpHが3.5の水溶液を作製し、ガラス繊維織物被覆用の処理液とした。この処理液を用いて実施例1の(IV)の工程と同様にして、シラン処理ガラス繊維織物試験片を作製した。また、実施例1の(V)の工程と同様にして、銅張積層板および積層板試験片を作製した。
【0046】
(比較例3)
実施例1の(I)の工程において得られたシランカップリング剤の50重量%メタノール溶液に代えて、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩の40重量%メタノール溶液(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、SZ−6032)を用いた他は、実施例1の(III)の工程と同様にして、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが0.4重量%であってpHが3.5の水溶液を作製し、ガラス繊維織物被覆用の処理液とした。この処理液を用いて実施例1の(IV)の工程と同様にして、シラン処理ガラス繊維織物試験片を作製した。また、実施例1の(V)の工程と同様にして、銅張積層板および積層板試験片を作製した。
【0047】
実施例1および比較例1〜3で得られたシラン処理ガラス繊維織物試験片および積層板試験片を用いて、以下のようにして、マトリックス樹脂含浸性および半田耐熱性を評価した。得られた結果は、まとめて以下の表2に示した。
【0048】
(シラン処理ガラス繊維織物試験片のマトリックス樹脂含浸性)
実施例1および比較例1〜3で得られたシラン処理ガラス繊維織物試験片を、上記(V)の工程で使用したエポキシ樹脂ワニスの上に浮かべ、ガラス繊維の繊維間への含浸終了までの時間を測定した。なおエポキシ樹脂ワニスは、試験に先立ってメチルエチルケトンで希釈し粘度150cpsに調整した。
【0049】
(積層板試験片の半田耐熱性)
実施例1および比較例1〜3で得られた積層板試験片を、121℃に設定したプレッシャークッカーに60分間、90分間、120分間、150分問、各時間3片ずつ入れ、積層板試験片の膨れの有無を目視で観察し、以下に示す3段階で評価した。
ランクA:膨れなし。
ランクB:膨れがあり、且つ、8mm以上の膨れがなく、4mm以上の膨れが3個以下あり。
ランクC:4mm以上の膨れが4個以上、または、8mm以上の膨れが1個以上あり。
【0050】
【表2】
【0051】
さらに、実施例1および比較例1〜3で得られた積層板試験片について、エポキシ樹脂ワニスの含浸の状態を目視により観察した。その結果、実施例1の積層板試験片の表面には全くカスレが発生していなかったが、比較例1の積層板試験片は全面にカスレが発生していた。また、比較例2の積層板試験片においては、ガラス繊維ストランド中に発生した気泡によるものと考えられるカスレが発生し、比較例3の積層板試験片には小さいカスレが観察された。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス繊維織物を被覆することにより、マトリックス樹脂の含浸を迅速化してプリント配線板用積層板の生産性を向上させ、さらに、プリント配線板におけるボイドの発生を抑制するとともに、半田溶融温度の加熱による膨れの発生をも充分なレベルまで低減することが可能なシランカップリング剤を提供することが可能になる。また、このシランカップリング剤で被覆されたガラス繊維、このガラス繊維を含むガラス繊維強化熱硬化性樹脂、およびこのガラス繊維強化熱硬化性樹脂からなる層を備え、半田溶融温度の加熱による膨れの発生が抑制されたプリント配線板用積層板を提供することが可能になる。
Claims (7)
- 前記R1がエチレン基、R2がプロピレン基、R3が−C6H4−CH2−で表される2価の基、nが1、mが1〜3の整数である請求項1〜3のいずれか一項に記載のシランカップリング剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のシランカップリング剤で被覆されたガラス繊維。
- 請求項5記載のガラス繊維と、熱硬化性樹脂と、を含むガラス繊維強化熱硬化性樹脂。
- 請求項6記載のガラス繊維強化熱硬化性樹脂からなるガラス繊維強化熱硬化性樹脂層と、該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂層の最外層に接合された導体層と、を備えることを特徴とするプリント配線板用積層板。
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