JP4540160B2 - 黒色系焼結石英 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学薬品用容器光学ガラス用容器電子回路用基板光フイバー用保持管および外管半導体工業用のベルジャールツボ炉心管治具類超音波バッフーロッド暖房用発熱体液体クロマトグラフ用フローセル液晶表示素子用スペーサー光学分析用セル赤外線吸収・放射体磁気デスク基板用保持部材等、従来、石英ガラス(黒色着色および不透明を含む)を使用していた分野に幅広く利用できる黒色系焼結石英に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、赤外線加熱等の熱処理プロセスにおいては、透明な石英ガラスが使用されていた。しかし、透明な石英ガラスは、光を透過してしまうために熱効率が低くエネルギーロスが大きいという問題があった。そのために、熱効率の良い黒色石英ガラスの技術が開発されるようになり、この黒色石英ガラスは、主として熱線遮断効果および遮光性を利用した分野に使用されている。
【0003】
石英ガラスの黒色化は、石英ガラス中にVのような周期律表第5a族金属あるいはFeのような遷移金属酸化物を着色剤として添加することによって作製されている(特公昭58−29259号特開平4−254433号特開平7−196335号各公報参照)。しかし、このように石英ガラス中にVのような周期律表第5a族金属あるいはFeのような遷移金属酸化物を着色剤として添加した場合、高温で熱加工する際に表面が結晶化し白色化するため、その結果として光を吸収しにくくなり、熱効率が低くなる。そのために、半導体製造における熱処理プロセス用部材に用いるには決して好ましいとは言えなかった。
【0004】
これに対し、石英ガラスに炭化珪素や炭素を添加することで石英ガラスを均質に黒色化する方法が提案されている(特開平5−170477号特開平5−306142号各公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−170477号公報の方法では、石英ガラスを焼結させる温度において炭化珪素は焼結不足となるため気孔を多く含有するものであり、特開平5−306142号公報の方法では、1400〜1700℃の温度に加熱発泡させて製造するものであるため気孔を多く含有するものであり、緻密化が阻害され低密度の多孔体または発泡体となり、気孔が多く存在するために、この気孔のエッジが薬品等(特にフッ化水素酸に溶解しやすい)による浸食を加速させるという問題があった。
【0006】
そもそも従来の石英ガラスでは、気孔を少なくすることが困難であり、特に黒色系石英ガラスの場合は、透光性が求められないことから、上述したように気孔を多く含有するものであった。そのために、この気孔を少なくするためには、熱間静水圧プレス等を用いる必要があり、大幅なコストアップになるという課題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の黒色石英ガラスの製造方法にとらわれることなく、鋭意研究を積み重ねた結果、SiOを主成分として、0.05〜1.0量%の炭素と、1000量ppm以下のアルミニウムと、総100量ppm以下の炭素,ケイ素,アルミニウム以外の核形成剤を含有、厚み1mmにおける波長190〜3200nmの範囲の直線透過率が1%未満であり、吸水率が0.1%未満である黒色系焼結石英とすることにより、前記の課題を解決できることを見出した。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
本発明の黒色系焼結石英は、従来の黒色石英ガラスとは全く異なるものであり、その特徴は、SiO粉末を所定形状に成形し脱脂した、真空中または非酸化雰囲気中にて焼成することにより得られる焼結体であり、このようにして製造することで、容易に緻密な焼結体を得ることができる。
【0010】
そして、この焼結体が黒色系の色調を呈し、SiOを主成分として、0.05〜1.0量%の炭素と、1000量ppm以下のアルミニウムと、総100量ppm以下の炭素,ケイ素,アルミニウム以外の核形成剤を含有、厚み1mmにおける波長190〜3200nmの範囲の直線透過率が1%未満であり、吸水率が0.1%未満であることを特徴とする。
【0011】
さら、好ましく、表面の少なくとも一部を非晶質相で形成することを特徴とする。そして、常温の46%HF(フッ化水素酸)液に10分間浸漬した後の量減少率が10%未満であることを特徴とする。
【0012】
本発明の黒色系焼結石英は、黒色系の色調を呈し、焼成においても、また高温の環境に曝されても変色せず、耐薬品性に優れているばかりでなく、低い製造コストでプロセス管理を容易とすることができる。
【0013】
本発明の黒色系焼結石英においては、焼結体が黒色であることが重要である。例えば、透明な石英ガラスを赤外線加熱等の熱処理プロセスに使用した場合は、光を透過してしまうために熱効率が低くエネルギーロスが大きい。そのために透明な石英ガラスを熱線遮断効果や遮光性を要求される部材に使用することができない。
【0014】
そこで、本発明の黒色系焼結石英を熱線遮断効果および遮光性を要求される部材に使用した場合、黒を呈する色調により、光を吸収しやすく熱効率が高いので、赤外線加熱等の熱処理プロセスにおけるエネルギロスを大幅に削減することができる。さらには、熱線遮断効果および遮光性に優れている特性を利用して、光フイバ用保持管や光学分析用セル等に幅広く且つ効率よく使用することができる。ここで、黒色のレベルとしては、光透過率測定装置を用い、黒色系焼結石英の厚み1mmにおける波長190〜3200nmの範囲で測定した直線透過率が1%未満であるものとする。
【0015】
また、本発明の黒色系焼結石英は炭素含有率が0.05〜1.0量%であることが重要である。0.05量%未満の場合は、色むらが生じて均質な黒色体を得ることが困難であり、直線透過率が1%以上と大きくなり、これを熱線遮断効果や遮光性を要求される部材に使用した場合、熱効率の向上が認められない。一方、炭素含有率が1.0量%を超える場合は、焼結性が急激に低下し、所定の焼結体が得られず、これを焼結させるには焼結温度を高くする必要がある。しかしながら、焼結温度を高くすることにより結晶化が進み過ぎて、クリストバライト結晶質相を増加させることになり、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差によりクラックが発生し、焼結体の耐薬品性を大幅に低下させることになる。なお、炭素は、黒色系焼結石英の成形時において、添加した有機バインダーを分解して生成させればよい
【0016】
また、本発明の黒色系焼結石英では、アルミニウム含有量は1000量ppm以下であることが重要である。1000量ppmを超えると、核形成速度が早くなり結晶化が進み過ぎて、クリストバライト結晶質相が増加する。これに伴い、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差により、クラックが発生し、焼結体の耐薬品性が大幅に低下する。
【0017】
また、本発明の黒色系焼結石英では、炭素ケイ素アルミニウム以外の核形成剤の総量を100量ppm以下にすることが重要であり、炭素ケイ素アルミニウム以外の核形成剤の総量が100量ppmを超えると、核形成速度が急激に早くなり結晶化が進み過ぎて、クリストバライト結晶質相の増加に伴い、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差により、クラックが発生し、焼結体の耐薬品性が大幅に低下する。ここで、炭素ケイ素アルミニウム以外の核形成剤の総量は50量ppm以下がより望ましい。
【0018】
なお、核形成剤とは、結晶化を促進するための核となる成分のことであり、具体的には、SZnTiCrMnFeCoNiZrSnPtAuがある。
【0019】
これらの核形成剤は、SiO粉末に含有されていたり、調合工程脱脂工程焼成工程等からの混入もあるが、核形成剤の総量を100量ppmを超えないようにする方法としては、例えば含有されている核形成剤の総量100量ppmを超えないSiO 粉末を使用したり、前述した各工程において、100質量%を超える核形成剤の混入のない装置や設備等を使用する方法を採用することが望ましい。
【0020】
さらに、本発明の黒色系焼結石英は吸水率を0.1%未満にすることが重要である吸水率が0.1%以上であれば、気孔またはクラックが多く存在するということであり、気孔またはクラックのエッジが薬品による浸食を加速させ、耐薬品性が大幅に低下するからである。さらに吸水率は、0.05%未満にすることがより望ましい。なお、本発明の黒色系焼結石英は、SiO粉末を成形し、焼成して製造することによって、容易に緻密な焼結体が得られるが、特に吸水率を上記範囲に制御するためには、炭素含有率を0.5〜1.0量%の範囲て、焼結不足により生じる気孔をなくすることが重要である。
【0021】
また、本発明の黒色系焼結石英を腐食性の薬品に曝される部位に用いるときに、腐食性の薬品に曝される面に研削またはラップ等の除去加工を行なうことが好ましい。本発明の黒色系焼結石英の焼結直後の表面は、主としてクリストバライト結晶質相から形成され、焼結体の内部においては、非晶質相が主体である。しかしながら、クリストバライト結晶質相は、耐薬品性が悪いという欠点を有している。そこで、本発明の黒色焼結石英の少なくとも腐食性の薬品に曝される面研削またはラップ等の加工を行い、クリストバライト結晶質相を除去し、非晶質相とすることで、耐薬品性に優れた黒色系焼結石英を提供することができる。
【0022】
また、本発明の黒色系焼結石英においては、常温の46%HF液に10分間浸漬した後の量減少率が10%未満であることが好ましく、これによれば、従来の黒色石英ガラスに比べ耐薬品性に優れている。例えば、炭素を1〜5量%含有している黒色石英ガラス発泡体では、常温の46%HF液に10分間浸漬した後の量減少率は、57.5%と大きい。
【0023】
本発明の黒色系焼結石英を製造する方法としては、ず、イオン交換水を溶媒として、平均粒径0.3〜3μm、含有されている核形成剤の総量が100量ppm以下であるSiO粉末をボールミルで湿式解砕した後、有機バインダーを添加してスラリーを作製する。スラリーの作製に用いる解砕用ボールには、高純度のSiOボールが有効である。また、有機バインダーは、焼成によって分解し、最終的に炭素として存在し、焼結石英を黒色化するためのものである。
【0024】
有機バインダとしては、パラフンワックスワックスエマルジョン(ワックス+乳化剤)PVA(ポリビニルアルコル)PEO(ポリエチレンオキサイド)等が有効である。
【0025】
ここで、SiO粉末の平均粒径は、0.3〜3μmが望ましい。
【0026】
また、湿式にて解砕および粉砕等を行う場合、溶媒は特に限定しない。安全面および環境問題上から、例えば、水を利用しても本発明の黒色系焼結石英には何ら影響しない。
【0027】
その後、上記スラリーをスプレードライにて造粒して顆粒とする。次に、この顆粒を用いて、金型プレス成形にて所定形状に成形する。成形方法としては、目的とする部材の形状に合わせた適当な成形方法を選択して構わない。具体的には金型プレス成形等方静水圧プレス成形等の乾式成形法鋳込み成形押し出し成形射出成形プ成形等の湿式成形法のいずれも利用できる。
【0028】
そして、このような方法で成形した成形体中の有機バインダの脱脂を行い、有機バインダを分解させて炭素を生成させることにより、炭素をSiO成形体中に固溶しやすい状態に転化する。
【0029】
この脱脂は、使用するSiO粉末の平均粒径が小さい場合や成形体が厚肉の場合には、特に重要である。一方、この有機バインダの熱分解が不十分であると、焼結体の気孔が増加するばかりでなく、焼結性を著しく低下させる。逆に、有機バインダの熱分解が過剰であると、焼結体の炭素含有率が低くなりすぎて黒色体は得られなくなる。ここで、有機バインダーの脱脂条件としては、270〜380℃が望ましい。
【0030】
このようにして脱脂した脱脂体を真空中または非酸化雰囲気中のいずれかにて、1350〜1475℃で焼成する。ここで、大気中で焼成した場合には、炭素含有率が0.05量%未満になり黒色体が得られない。
【0031】
このようにして焼成して得られた黒色系焼結石英は、焼結体表面がクリストバライト結晶質相であり、そのクリストバライト結晶質相の厚みは、200μm以下であり、焼結体内部は非晶質相である。
【0032】
最後に、この焼結体の少なくとも腐食性の薬品に曝される面研削またはラップ等の加工を行い、クリストバライト結晶質相を除去し、非晶質相とすることで、耐薬品性に優れた本発明の黒色系焼結石英を得ることができる。
【0033】
このようにして得られた本発明の黒色系焼結石英は、焼結体嵩密度2.11〜2.19g/cm、線熱膨張率測定温度25〜800℃で6×10−7/℃以下、ヤング率は57〜70GPa、熱伝導率1.1〜1.2W/mKである。なお、本発明の黒色系焼結石英、1400℃で熱処理を行っても、変形および変色いものである
【0034】
このようにして得られる本発明の黒色系焼結石英は、化学薬品用容器光学ガラス用容器光フイバ用保持管および外管半導体工業用のベルジャー,ルツボ炉心管治具類超音波バッファーロッド暖房用発熱体液体クロマトグラフ用フロセル液晶表示素子用スペー,光学分析用セル赤外線吸収・放射体磁気デスク基板用保持部材等、従来、石英ガラス(黒色着色および不透明を含む)を使用していた分野に幅広く利用できる。
【0035】
【実施例】
実施例1
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0036】
平均粒径0.3μmのSiO粉末原料を用いて、以下に述べる方法で黒色系焼結石英を作製し、特性を評価した。
【0037】
黒色系焼結石英の作製方法は、まずイオン交換水を溶媒としてボールミルにて原料を湿式解砕した後、有機バインダーを添加してスラリーを作製した。この原料の解砕時の解砕用ボールは、高純度SiOボールを用いた。そして、このスラリーをスプレードライにて造粒して顆粒とした後、この顆粒を用いて78.4MPaの荷重で金型プレス(成形体形状:φ60mm×10mm厚み)にて成形した。その後、この成形体を所定の条件で脱脂した。このようにして作製した脱脂体を、真空中(<70Pa)にて焼成し、得られた焼結体の少なくとも腐食性の薬品に曝される面を研削した後、各種特性を測定した。特性評価は、色調直線透過率炭素含有率核形成剤総量吸水率結晶相耐薬品性について行った。測定方法については、以下の通りであり、その結果を表1に示す。
【0038】
色調については、目視にて判定した。直線透過率については、黒色系焼結石英の任意の場所より1mm厚みの試料を作製し、光透過率測定装置を用い波長190〜3200nmの範囲で測定し、最大値を示した。炭素含有率については、カーボン分析装置を用い赤外吸収法にて炭素を検出した。ここで、赤外吸収法に用いた加熱炉は、管状抵抗炉であり、助燃剤として、および銅を用いた。
【0039】
核形成剤の総量については、SZnTiCrMnFeCoNiZrSnPtAuの各元素をICP分析により定量し、その総量を示した。吸水率については、アルキメデス法にて測定した。また、黒色系焼結石英の少なくとも腐食性の薬品に曝される表面の結晶相については、薄膜X線回折法にて測定した。
【0040】
また、常温の46%HF(フッ化水素酸)10分間浸した後の量減少率については、黒色系焼結石英の任意の場所より、15mm×15mm×2.4mmの大きさで切り出し、その全面をダイヤモンド砥石#400番で研磨し、試料とした。そして、この試料を流水、純水の順に洗浄し、110℃で1時間乾燥した後、デシケーター内で冷却後、量を測定した。次に、常温の46%HF(フッ化水素酸)液に10分間浸漬した後、洗浄して乾燥させて質量を測定し、量減少率を算出して耐薬品性を評価した。ここで、耐薬品性の評価に46%HF液を使用した理由は、一般に石英材料は、耐食性試験用薬品の中で、HF液に最も侵されるからである。
【0041】
【表1】
Figure 0004540160
【0042】
【表2】
Figure 0004540160
【0043】
表1の結果によれば、本発明の範囲内の試料No.4〜68〜1012〜1418〜22は、従来の石英ガラス(表2の比較例12)と比較して、常温の46%HF(フッ化水素酸)液に対する優れた耐薬品性を有していた。
【0044】
また、試料No.1〜2は、炭素含有率が1.0量%を超えているため、焼結性著しく低下、その結果焼結不足となり気孔が増加して吸水率0.1%を超えており、耐薬品性が大幅に低下している。試料No.3においては、緻密体を得るために試料No.12より焼成温度を高くしたところ、結晶化が黒色系焼結石英の内部に進行し、クリストバライト結晶質相が増加したため、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差によりクラックが発生し、その結果、吸水率が増加し、耐薬品性が低下した。また、試料No.16,17は脱脂温度が390℃以上と高く、有機バインダーの脱脂が過剰であったために、炭素含有率が0.05質量%未満となり、焼結石英は黒色とはなっていない
【0045】
また、試料No.4〜6,No.8〜10,No.12〜14において、炭素含有率が増加するに伴い耐薬品性が低下している。これは、前述のように炭素含有量が増加するに従い焼結性が低下し、その結果気孔が増加し吸水率も高くなり、薬品に侵されやすくなることが原因である。焼結性の低下を招かないためには、焼結温度を高くする必要があるが、焼結温度を高くすると結晶化が内部まで進み、クリストバライト結晶質相の増加に伴い、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差によりクラックが発生し、焼結体の耐薬品性を大幅に低下させることとなる。これらの結果から、炭素含有率0.05〜1.0量%であ、吸水率0.1%未満であることが重要である。
【0046】
核形成剤の総量に着目してみると、試料No.2〜3,No.7,No.11,No.15において核形成剤の総量が100量ppmを超えると急激に耐薬品性が低下している。これは、核形成剤の総量が100量ppmを超えることにより、核形成速度および核成長速度が著しく早くなり、その結果クリストバライト結晶質相が増加して、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差によりクラックが発生するからである。
【0047】
そして、核形成剤の総量が少なくなるに従い、耐薬品性は向上している。これらの結果から、核形成剤の総量は100量ppm以下であることが重要である。
【0048】
試料No.18〜23、脱脂温度が同じであり、核形成剤の総量および炭素含有量が概略同等であり、焼結温度が異なるものである。No.20〜21において、吸水率が0.05%と低く、耐薬品性も良好であることから、最適焼結温度は1400〜1425℃である。この結果より、耐薬品性を向上させるには、クリストバライト結晶質相を最限に抑えることが重要であることが分かる。そのためには、最適焼結温度で焼成することが大事であり、核形成剤の総量を100量ppm以下にすることは大変重要である。
【0049】
さらに、本発明の黒色系焼結石英は、試料No.12〜14に示すように、炭素含有率を0.05量%、吸水率を0.03%にし、炭素ケイ素アルミニウム以外の核形成剤の総量を100量ppm以下にすることで、量減少率を1.2%以下にすることができた。
【0050】
実施例2
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0051】
黒色系焼結石英の試料作製方法および特性評価は、実施例1に準じて行った。なお、実施例2においては、アルミニウム含有量に着目した実験を行い、アルミニウム含有量については、Alの元素をICP分析により定量した。その結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
Figure 0004540160
【0053】
表3の結果によれば、本発明の範囲内の試料No.24〜2830〜34は、腐食性の薬品に対して、従来の石英ガラス(表2の比較例12)と比較して、常温の46%HF(フッ化水素酸)液に対する優れた耐薬品性を有していた。
【0054】
一方、本発明の黒色系焼結石英の対象外の試料No.2935は、アルミニウムの含有量が1000量ppmを超えたことで、結晶化が黒色系焼結石英の内部に進行し、クリストバライト結晶質相が増加したために、非晶質相とクリストバライト結晶質相の熱膨張差によりクラックが発生し、その結果、吸水率が増加して耐薬品性が低下する結果となった。アルミニウムの含有量は、1000量ppm以下であることが重要である。
【0055】
また、本発明の黒色系焼結石英について、その他の特性を測定した結果は、以下の通りである。
【0056】
焼結体密度は、嵩密度をアルキメデス法にて測定したところ2.11〜2.19g/cm であった。線熱膨張率については、JISR1618に準拠して行い、昇温速度10℃/minとし、Air雰囲気中で測定したところ測定温度25〜800℃で6×10−7/℃以下であった。ヤング率については、JISR1602−1995に準拠して超音波パルス法にて室温で測定したところ57〜70GPaであった。熱伝導率については、JISR1611に準拠してレーザーフラッシュ法にて行ない、温度24℃、湿度60%RH、片面Au蒸着、両面黒化処理後測定したところ1.1〜1.2W/mKであった。
【0057】
また、本発明の黒色系焼結石英を、1400℃で熱処理を行たところ、変形および変色していなかった。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明によれば、SiOを主成分として、0.05〜1.0量%の炭素と、1000量ppm以下のアルミニウムと、総100量ppm以下の炭素,ケイ素,アルミニウム以外の核形成剤を含有、厚み1mmにおける波長190〜3200nmの範囲の直線透過率が1%未満であり、吸水率が0.1%未満であることにより、黒色を呈する色調によって、光を吸収しやすく熱効率が高いので、赤外線加熱等の熱処理プロセスにおけるエネルギーロスを大幅に削減することができる。
【0059】
また、吸水率0.1%未満であることにより、気孔抑制されたクラックの少ない黒色系焼結石英であることから、耐薬品性に優れている。
【0060】
さらに、黒色系焼結石英の少なくとも腐食性の薬品に曝される面研削またはラップ等の加工を行い、クリストバライト結晶質相を除去し、非晶質相とすることで、耐薬品性に優れた黒色系焼結石英を得ることができる。
【0061】
そして、焼成において、熱間静水圧プレスを用いなくて済むため、低い製造コストでプロセス管理を容易とすることができ、従来、黒色石英ガラス(不透明石英ガラスおよび着色石英ガラスを含む)を使用していた分野に、黒色石英ガラスに比べ耐熱性および耐薬品性に優れた黒色系焼結石英より安価に幅広く提供することができる。

Claims (3)

  1. SiOを主成分として、0.05〜1.0量%の炭素と、1000量ppm以下のアルミニウムと、総100量ppm以下の炭素,ケイ素,アルミニウム以外の核形成剤を含有、厚み1mmにおける波長190〜3200nmの範囲の直線透過率が1%未満であり、吸水率が0.1%未満であることを特徴とする黒色系焼結石英。
  2. 表面の少なくとも一部が非晶質相からなることを特徴とする請求項1に記載の黒色系焼結石英。
  3. 常温の46%HF(フッ化水素酸)液に10分間浸漬した後の量減少率が10%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色系焼結石英。
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