JP4749009B2 - 反射鏡製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、複雑な形状物の加工が難しく、熟練した作業者の技術が要求されるため、設計寸法通りに成形することが困難であり、同一形状、同一品質のものを量産できないことから、加工コストも著しく高価という問題があった。
また、加工温度が約2000℃と著しく高温であるため、エネルギーの消費量が多く、ひいては地球温暖化ガスであるCO2の大量発生につながるという懸念がある。
これらの反射鏡を比較検討してみたところ、良品は反射鏡表面のガラス組織が密で凹凸がないのに対し、明るさの劣る反射鏡表面は、表面の一部あるいは全面のガラス組織が比較的粗く梨地状の微細な凹凸が形成されているものがあることが判明した。
このため発明者らが、粗面が形成される原因を究明すべく試験・研究を行ったところ、顆粒状に造粒された焼結用ガラス材料に用いられている球状シリカに混合されているバインダの態様に影響していることが判明した。
即ち、バインダ粒子が大きい分、球状シリカの密度が低くなるため焼結時に巣が入りやすく、また、バインダを揮発燃焼させるのに時間がかかるため焼結時に完全に揮発燃焼されないままガラス組織内に閉じ込められて粗面が形成されることが判明した。
これによれば、図7(a)に示す焼結用ガラス材料を用いて製造した場合と同様に製品表面にガラス組織の粗い梨地状の微細な凹凸が形成されることはなくなったが、焼結の際に不均一に変形する場合があり、反射面が設計された形状から250μm以上も逸脱して、所望の反射光特性が得られないものが見られた。
請求項2の発明は、乾式プレスにより成形する反射鏡型成形体を、そのランプ挿通口側から反射光照射開口部側に向って反射面となる部分の肉厚分布を漸増させた形状又は均一にした形状に成形することとした。
請求項3の発明は、反射面の反射光照射開口部側に変曲点を介して環状曲面が形成され、光軸を含む切断面内において、変曲点における光軸の垂線と環状曲面の接線との交差角を、光軸の垂線と反射面接線との交差角より大きく、且つ、90度以下に選定して反射鏡型成形体を形成することとした。
請求項4は、焼結用ガラス材料として、パラフィン系バインダ及びステアリン酸系バインダの一方又は双方を含むバインダがシリカを主成分とするコアの表面に隙間なくコーティングされて成るガラス原料粉末を集合させて顆粒状に形成したものを用いた。
また、このように生成された焼結用ガラス材料のガラス原料粉末は、コアにバインダをコーティングすることによりその表面に形成されたバインダ層は薄膜状になっているので、これを集合させて顆粒状に形成したときにガラス原料粉末の密度が高くなる。
したがって、これを型に入れて乾式プレスするときに、表面に付着されているバインダが潤滑材となって個々のガラス原料粉末を流動させると共に、ガラス原料粉末が稠密に固められる。
また、加熱焼結したときに巣が入りにくく、同時に、その表面に形成されているバインダ層は比較的薄く均一であるのでバインダが揮発燃焼されやすい。
したがって、製品表面にガラス組織の粗い梨地状の微細な凹凸が形成されることがなく、ガラス組織が密で高品質の反射鏡を低コストで量産できるという効果がある。
図1は本発明に用いた焼結用ガラス材料を示す拡大模式図、図2はその製造方法を示す説明図、図3は反射鏡の製造方法を示す説明図、図4は反射鏡型成形体の一例を示す説明図、図5は反射鏡型成形体に作用する力を示す説明図、図6は反射鏡型成形体の他の例及び比較例を示す説明図である。
球状シリカは、シリカ100%が理想であるが、製造過程でアルミナが不純物として混入し、その量によって焼結温度及び焼結された石英ガラスの性状に影響を与える。
すなわち、球状シリカは、半導体産業に多く使用される基板であるシリコンウエハをカットした残砕物(切れ端)やシリコンウエハの不良品を破砕した後、アルミナ製ボールミルで粉状化して生成するため、粉状化する際にアルミナ(Al2O3)が混入し、その量は粉砕時間によって変化する。
粉砕時間は、ボールミルに投入するシリコンウエハの破片の大きさ等で加減されるため一定ではなく、またアルミ成分(Al)は、球状シリカを最も多く利用している半導体パッケージ内の絶縁材料の指定不純物としては規制されていないためその混在量には大きなバラツキがある。
そして、アルミ成分がシリカに対して70ppmを超えると焼結温度が1350℃を超えてしまい、70ppm以下だと1300℃以上1350℃以下の焼結温度でガラス組織が密で歪のない焼結体が得られることが分かった。
なお、アルミ成分がシリカに対して100ppm以上になると焼結温度が1370℃を超え、さらに220ppmを超えると1400℃以上に加熱しても焼結せずクリストパーライト化してしまうことが判明した。
したがって、アルミ成分をシリカに対して70ppm以下とすれば、加工時の作業温度(軟化点)が2000℃近い石英ガラスでも、1300〜1350℃の低温度で良好な焼結体を得ることができる。
しかし、1350℃を超える場合には、歪の発生があり、更に1400℃の様な高温度では、僅かな不純物を核としてクリストバーライト化してしまう。
したがって、アルミ成分をシリカに対して50ppm以下としたときは、1280℃以上1350℃以下の低温度で良好な焼結体を得ることができる。
まず、コア3となる球状シリカに前記バインダ2を約3.4重量%混合し、粘性値10〜20mPa・sとなるように純水を加え、水分率60%に調整した後、メッシュの個々の開口が縦横38μmに設計されたフィルタにより異物を除去してスラリ(懸濁液)を得る。
コア3は、不純物となるアルミ成分がシリカに対して70ppm以下にコントロールされている。
図2はこのような噴霧乾燥機11を示し、下端部に顆粒回収口12が形成された直径1.5m程度のホッパ型チャンバ13の天井部中央に、スラリを噴霧する回転霧化ディスク14aを備えたアトマイザ14が配されている。
また、チャンバ13の上端側周壁面に水平接線方向から熱風を流入させる給気ダクト15が接続されると共に、チャンバ13内には前記顆粒回収口12に対向して開口する排気ダクト16が配されている。
本例では、パラフィン系バインダとステアリン酸系バインダの融点が何れも100℃以下であるので、給気ダクト15の開口部における流入熱風温度を220℃とし、排気ダクト16の開口部における排気熱風温度を130℃として、いずれも、バインダ2の融点よりも高くなるように熱風の温度が制御されるようになっている。
なお、排気熱風温度がバインダ2の融点より高ければ、流入熱風温度は必ずその温度より高いので、流出口16aのみに温度センサ19を配して温度コントロールしても同様である。
給気ダクト15からチャンバ13に流入した熱風は、チャンバ13の周壁に沿って回転しながら螺旋状に流下していく。
また、コア3の表面温度もバインダ2の融点より高くなっているので、バインダ2はコア3の表面を流れて、均一で薄膜状のコーティング層が隙間なく形成されたガラス原料粉末4が形成される。
そして、多数のガラス原料粉末4がチャンバ13の熱風に乗って乾燥される過程で、その表面にコーティングされたバインダ2を介在して溶着され、直径50μm程度の顆粒状の焼結用ガラス材料1が生成される。
その際に、螺旋状に流下してきた熱風により運ばれてきた顆粒状の焼結用ガラス材料1は、熱風の流れが上向に反転されるときに熱風から分離されて顆粒回収口12に落下して回収される。
図1はこのように製造した焼結用ガラス材料1の顆粒の模式図であって、表面にバインダ2が隙間なくコーティングされたガラス原料粉末4が稠密に集合されている様子がわかる。
まず、顆粒状の焼結用ガラス材料1を成形用金型21の胴型22に入れた後(図3(a))、プランジャ23を降下させ、その挿通孔24に胴型22の中心ロッド25を挿入させながらプレス圧力を加えると反射鏡型成形体F1が成形される(図3(b))。
θ1<θ2≦90度
なお、ここでいう交差角θ1及びθ2は、光軸Xから変曲点34に至る垂線Yと、変曲点34からランプ挿通口36側へ伸びる接線L1及びL2との角度あるいはその対頂角をいう。
すなわち、反射面33のランプ挿通口36側の肉厚をt1、反射光照射開口部31側の肉厚をt2としたときに、肉厚分布がt1≦t2(本例ではt1=t2/2)となるように形成されている。
これにより、反射光照射開口部31を下向きに伏せて焼成炉28に置いて焼結する場合に、上方に位置するランプ挿通孔36の周囲は比較的軽くなるので、焼結により組織が不安定になるときでもランプ挿通口36近傍が重力で撓むことがない。
このようにして作成した反射鏡型成形体F 1 を、その反射光照射開口部31が下向きになるように焼成炉28内の載置面29に伏せて置き、酸化性雰囲気加熱焼結法と還元性雰囲気加熱焼結法によって焼結させて、反射鏡形状の石英ガラス体Mを製造した(図3(e))。
バインダを揮発燃焼させる温度は、使用するバインダの種類により異なるため、示差熱分析等で燃焼除去に適した温度を予め確認しておく必要がある。
また、還元性雰囲気加熱焼結法では、予備加熱終了後、一酸化炭素を使用した還元性雰囲気において1280〜1350℃で加熱焼結を行う。本例では、1300℃で30分保持した。
また、反射面33の変形もほとんど見られず、外径約50mmの反射鏡において設計値からの逸脱量が最大で5μm以内であり、製品品質上許容範囲の変形であった。
これは、乾式プレス成形された反射鏡型成形体F1を焼結する際に、顆粒状の焼結用ガラス材料が均一のガラスに変化していく過程で組織が不安定となるが、ランプ挿通口36側の肉厚が薄いために、ランプ挿通口36近傍に作用する重力が小さいだけでなく、反射面33から反射光照射開口部31に至る環状曲面35が焼成炉28の載置面29に対して略直角であるので、反射光照射開口部31において重力の分力が外向きには作用しないためと考えられる。
また、その光源ユニットの寿命試験を行ったところ、寿命末期の2000時間まで、熟練者の試作反射鏡と、光学特性で何等遜色はなく良好な結果が得られた。
図6(a)の反射鏡型成形体F2は図4に示す反射鏡型成形体F1の肉厚分布をt1=t2としたものであり、焼結後の反射面33の変形はほとんど見られず、設計値からの逸脱量が最大で10μm以内であり、製品品質上許容範囲の変形であった。
図6(b)の反射鏡型成形体C2は図4に示す反射鏡型成形体F1の肉厚分布をt1=2t2とした場合の比較例である。この場合は、焼結後の反射面33は大きく変形し、設計値からの逸脱量は最大で250μm程度であり、製品品質上許容できない変形であった。
これは、ランプ挿通口36側の肉厚が厚いために組織が不安定となる焼結時にランプ挿通口36近傍に作用する重力が大き過ぎて反射面33が撓むためと考えられる。
例えば、肉厚分布を2t1=t2とした場合、焼結後の反射面42の設計値からの逸脱量が最大で10μm程度、肉厚分布をt1=t2とした場合は設計値からの逸脱量が最大で20μm程度であり、製品品質上許容範囲の変形であった。
これは、ランプ挿通口43側の肉厚が厚いために組織が不安定となる焼結時にランプ挿通口43近傍に作用する重力が大き過ぎて反射面42が撓むだけでなく、反射面42が反射光照射開口部41まで広がっているので、反射光照射開口部41において外向きに作用する重力の分力が大きくなるためと考えられる。
2 バインダ
3 コア
4 ガラス原料粉末
F1〜F3 反射鏡型成形体
31 反射光照射開口部
33 反射面
34 変曲点
35 環状曲面
36 ランプ挿通口
X 光軸
Y 垂線
L1、L2 接線
θ1、θ2 交差角
Claims (6)
- 焼結用ガラス材料を反射鏡成形用金型に充填して、光軸前方に反射光照射開口部を有し、光軸後方にランプ挿通口を有する反射鏡型成形体を乾式プレス成形し、得られた成形体を焼成炉で加熱焼結した後、その反射面に反射膜を形成する反射鏡製造方法であって、
乾式プレスにより成形された反射鏡型成形体を焼成炉で加熱焼結する際に、その反射光照射開口部が下向きになるように焼成炉内に置いて加熱焼結することを特徴とする反射鏡製造方法。 - 乾式プレスにより成形する反射鏡型成形体を、そのランプ挿通口側から反射光照射開口部側に向って反射面となる部分の肉厚分布を漸増させた形状又は均一にした形状に成形した請求項1記載の反射鏡製造方法。
- 反射面の反射光照射開口部側に変曲点を介して環状曲面が形成され、光軸を含む切断面内において、変曲点における光軸の垂線と環状曲面の接線との交差角を、光軸の垂線と反射面接線との交差角より大きく、且つ、90度以下に選定して反射鏡型成形体を形成する請求項1又は2記載の反射鏡製造方法。
- 前記焼結用ガラス材料が、パラフィン系バインダ及びステアリン酸系バインダの一方又は双方を含むバインダがシリカを主成分とするコアの表面に隙間なくコーティングされて成るガラス原料粉末を集合させて顆粒状に形成されてなる請求項1記載の反射鏡製造方法。
- 前記ガラス原料粉末に不純物として存在するアルミ成分の重量比率がシリカに対して70ppm以下に選定され、前記反射鏡型成形体の焼結温度が、1300℃以上1350℃以下である請求項4記載の反射鏡製造方法。
- 前記ガラス原料粉末に不純物として存在するアルミ成分の重量比率がシリカに対して50ppm以下に選定され、前記反射鏡型成形体の焼結温度が、1280℃以上1350℃以下である請求項4記載の反射鏡製造方法。
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