JP6885314B2 - ファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、アルミナは焼結体内部の気泡を排除しても結晶粒が複屈折を持つため透光性を示すだけにとどまっており、焼結体内部の残留歪みやそれに伴う光弾性効果に関する情報は記されてない。
1. 立方晶の希土類複合酸化物の焼結体からなるファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法であって、下記組成式(1)又は(2)
(Tb 1-x-y Sc x Ce y ) 3 (Al 1-z Sc z ) 5 O 12 (1)
(式中、0<x<0.08、0≦y≦0.01、0.004<z<0.16である。)
(Tb x Y 1-x ) 2 O 3 (2)
(式中、0.3≦x≦1.0である。)
で表される複合酸化物の焼結用原料粉末を含む分散質と分散媒とからなるスラリー又は泥漿を型容器に封入し、遠心分離により型容器内で分散質と分散媒とに分離させると共に焼結用原料粉末を含む分散質を所定形状の成形体とする遠心成形工程を有するファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
2. 上記焼結用原料粉末は更に焼結助剤を含む1記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
3. 上記焼結用原料粉末は、上記式(1)又は(2)の組成を構成する各元素の酸化物粒子及び焼結助剤を分散混合処理した後、スプレードライ処理を行って顆粒状原料とし、これを焼成処理して得たものである2記載のファラデー回転子用セラミックスの製造方法。
4. 上記分散質は、焼結用原料粉末と結合剤を含む1〜3のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
5. 上記分散媒は、水及び/又は低級アルコールである1〜4のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
6. 上記泥漿は、焼結用原料粉末を含む分散質と分散媒とからなるスラリーを所定時間静置して得た沈殿物である1〜5のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
7. 上記型容器が筒状の容器であり、該型容器の長手方向を遠心方向として上記遠心分離を行うものである1〜6のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
8. 上記成形体を脱脂した後、焼結し、更に熱間等方圧プレス処理して希土類複合酸化物焼結体を得る1〜7のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
9. 上記希土類複合酸化物焼結体は、ガーネット型又はビックスバイト型の結晶構造を有する1〜8のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
10. JIS C5877−2:2012の偏光子試験方法に従い測定される光路長10mm、波長1064nmにおける消光比が30dB以上である透明セラミックスを得る1〜9のいずれかに記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
以下、本発明に係るファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法について説明する。
本発明に係るファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法は、立方晶の希土類複合酸化物の焼結体からなるファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法であって、焼結用原料粉末を含む分散質と分散媒とからなるスラリー又は泥漿(スリップ)を型容器に封入し、遠心分離により型容器内で分散質と分散媒とに分離させると共に焼結用原料粉末を含む分散質を所定形状の成形体とする遠心成形工程を有することを特徴とする。
ここでは、以下の手順でファラデー回転子用透明セラミックスを製造する。
本発明におけるファラデー回転子用透明セラミックスの焼結用原料粉末としては、焼結後に所望の透明性が得られる希土類複合酸化物の原料粉末であれば特に限定されない。
ここで、焼結用原料粉末の出発原料としては金属粉末、ないしは硝酸、硫酸、尿酸等の水溶液、あるいは酸化物粉末等が好適に利用できる。これらの原料を所定の比率で配合し、混合してから焼成して所望の構成の立方晶希土類複合酸化物を主成分とする焼結用原料粉末を得る。
ガーネット型透明セラミックス材料は、下記式(1)で表される複合酸化物からなるものである。
(Tb1-x-yScxCey)3(Al1-zScz)5O12 (1)
(式中、0<x<0.08、0≦y≦0.01、0.004<z<0.16である。)
ビックスバイト型透明セラミックス材料は、下記式(2)で表される複合酸化物からなるものである。
(TbxY1-x)2O3 (2)
(式中、0.3≦x≦1.0である。)
パイロクロア型透明セラミックス材料は、下記式(3)で表される複合酸化物からなるものである。
Tb2xHf2(2-x)O8-x (3)
(式中、0.8≦x≦1.3である。)
本発明では、上記のようにして作製した焼結用原料粉末を含む分散質と分散媒とからなるスラリー又は泥漿(スリップ)を型容器に封入し、遠心分離により型容器内で分散質と分散媒とに分離させると共に焼結用原料粉末を含む分散質を所定形状の成形体とする。詳しくは、以下のようにして遠心成形を行う。
本発明の一つの実施態様として、上記焼結用原料粉末を含む分散質と、分散媒とからなる成形用スラリーを作製する。分散媒中に上記焼結用原料粉末を含む分散質を添加して分散、混合処理を行いスラリーを得る。
本発明の一つの態様において、所定の量のスラリー又は泥漿を遠沈管(型容器)に充填し、この型容器を遠心分離機にかけて分散質と分散媒とを遠心分離すると共に、焼結用原料粉末を含む分散質を型容器内で成形してセラミックス成形体を得る。
なお、本発明における遠心力(G)は、遠心分離機のロータの最大半径をr(m)、成形時における回転数をN(rpm)、重力加速度をg(m/s2)とした場合、r×(2πN/60)2/gと定義する。
本発明の製造方法においては、通常の乾燥工程を好適に利用できる。即ち、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等を好適に利用できる。加熱や減圧することで乾燥速度を高めることも可能であるが、急激な乾燥は成形体の割れの原因となるため適宜調節する必要がある。型容器内において成形体の乾燥を行うとよい。
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
本発明の製造方法においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス等が好適に利用できる。また、減圧下(真空中)で焼結してもよい。
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP)処理を行う工程を設けることができる。
本発明の製造方法においては、HIP処理を終えた後に、得られた希土類複合酸化物焼結体中に酸素欠損が生じてしまい、薄灰色の外観を呈する場合がある。その場合には、前記HIP処理温度以下(例えば、1000〜1500℃)の条件にて酸化アニール処理を施すことが好ましい。このアニール処理により、薄灰色の外観を呈してしまった希土類複合酸化物焼結体も、酸素欠陥吸収のない透明なセラミックス体にすることができる。
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経た希土類複合酸化物焼結体(即ち、透明セラミックス)について、その光学的に利用する軸上にある両端面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は測定波長λ=633nmの場合、λ/8以下が好ましく、λ/10以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
本発明の製造方法で製造された透明セラミックスは、光路長10mm当たりの波長1064nmでの光透過における全光線透過率が99%以上となり得る。なお、本発明において、「全光線透過率」とは、測定光路中にサンプルを置かずにブランク(空間)状態で測定した透過率を100%とした場合における全光線透過率を意味し、サンプルには中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜がコーティングされた状態とする。
本発明の製造方法で製造されたTbを含む希土類複合酸化物からなる透明セラミックスは、磁気光学デバイス用途に好適であり、特に波長0.9〜1.1μmの光アイソレーターのファラデー回転子として好適に使用される。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化イットリウム粉末、酸化スカンジウム粉末、大明化学(株)製の酸化アルミニウム粉末、及び中国製の酸化ハフニウム粉末を入手した。さらにキシダ化学(株)製のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及び関東化学(株)製のポリエチレングリコール200の液体を入手した。純度は粉末原料がいずれも99.9質量%以上、液体原料が99.999質量%以上であった。上記原料を用いて、混合比率を調整して表1に示す最終組成となる計3種類の結晶構造をもつ以下の酸化物原料を作製した。
テルビウムとアルミニウム、及びスカンジウムのモル数がそれぞれTb:Sc:Al=2.988:0.162:4.850となるよう秤量した(Tb0.996Sc0.004)3(Al0.97Sc0.03)5O12用混合粉末を用意した。続いて焼結助剤としてTEOSを、その添加量がSiO2換算で表1の質量%になるように秤量して加え、原料とした。
テルビウム及びイットリウムのモル数がそれぞれTb:Y=1:1となるよう秤量したTbYO3用混合粉末を用意した。続いて焼結助剤として酸化ハフニウムを、その添加量がHfO2換算で表1の質量%になるように秤量して加え、原料とした。
Tb:Hf=1:1となるよう秤量したTb2Hf2O7用混合粉末を原料として用意した。
実施例として遠心鋳込成形を行った。上記3種類の焼成原料粉末をそれぞれポリエチレン製のポットに入れ、分散剤としてポリエチレングリコール200を酸化物粉末に対して0.5質量%になるように添加した。そして、それぞれエタノール中でボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった
比較例としてプレス成形を行った。上記3種類の焼成原料をそれぞれ互いの混入を防止するよう注意しながら再度エタノール中でボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間はいずれも24時間であった。その後、スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。得られた3種類の顆粒状原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での静水圧プレス(CIP)処理を施してプレス成形体を得た。
なお、実施例1−1及び比較例1−1は外観が灰色を呈していたため、HIP処理した焼結体を再び酸素雰囲気炉に仕込み、1300℃、4時間の条件で酸化アニール処理を行った。
続いて、上記光学研磨したサンプルについて中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。
各透明セラミックスの長さ10mmにおける全光線透過率をJIS K7105(ISO 13468−2:1999)を参考に測定した。測定は分光光度計(日本分光(株)製、V−670)を用いた。光源はハロゲンランプ、検出器は光電子増倍管(波長750nm未満)及びPbS光電セル(波長750nm以上)を用いて、ダブルビーム方式により測定を行った。全光線透過率はそれぞれ波長1064nmの値を用いた。全光線透過率はそれぞれ5検体ずつ測定し、有効数字2桁、単位はパーセントで評価した。
消光比の測定は、JIS C5877−2:2012を参考に、レーザー光源(NKT Photonics社製)とパワーメータ(Gentec社製)並びにGeフォトディテクタ(Gentec社製)及び偏光子(シグマ光機(株)製)を用いて組んだ光学系で行った。使用したレーザー光は波長1064nm、ビーム径1〜3mmφとした。測定時の室温は24℃であった。
まず、サンプルのない状態で2つの偏光子を回転させ、光のパワーが最大になる位置に偏光子を固定し光のパワーP//を測定した。その後、2つの偏光子の間にサンプルを挿入し、ディテクタ側の偏光子(検光子)を90°回転させ、直交ニコルとしたときの光のパワーP⊥を測定した。消光比(dB)は以下の式に基づき求めた。
消光比(dB)=10log10(P///P⊥)
110 ファラデー回転子
112 光軸
120 偏光子
130 検光子
140 磁石
150 筐体
Claims (10)
- 立方晶の希土類複合酸化物の焼結体からなるファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法であって、下記組成式(1)又は(2)
(Tb 1-x-y Sc x Ce y ) 3 (Al 1-z Sc z ) 5 O 12 (1)
(式中、0<x<0.08、0≦y≦0.01、0.004<z<0.16である。)
(Tb x Y 1-x ) 2 O 3 (2)
(式中、0.3≦x≦1.0である。)
で表される複合酸化物の焼結用原料粉末を含む分散質と分散媒とからなるスラリー又は泥漿を型容器に封入し、遠心分離により型容器内で分散質と分散媒とに分離させると共に焼結用原料粉末を含む分散質を所定形状の成形体とする遠心成形工程を有するファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。 - 上記焼結用原料粉末は更に焼結助剤を含む請求項1記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- 上記焼結用原料粉末は、上記式(1)又は(2)の組成を構成する各元素の酸化物粒子及び焼結助剤を分散混合処理した後、スプレードライ処理を行って顆粒状原料とし、これを焼成処理して得たものである請求項2記載のファラデー回転子用セラミックスの製造方法。
- 上記分散質は、焼結用原料粉末と結合剤を含む請求項1〜3のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- 上記分散媒は、水及び/又は低級アルコールである請求項1〜4のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- 上記泥漿は、焼結用原料粉末を含む分散質と分散媒とからなるスラリーを所定時間静置して得た沈殿物である請求項1〜5のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- 上記型容器が筒状の容器であり、該型容器の長手方向を遠心方向として上記遠心分離を行うものである請求項1〜6のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- 上記成形体を脱脂した後、焼結し、更に熱間等方圧プレス処理して希土類複合酸化物焼結体を得る請求項1〜7のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- 上記希土類複合酸化物焼結体は、ガーネット型又はビックスバイト型の結晶構造を有する請求項1〜8のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
- JIS C5877−2:2012の偏光子試験方法に従い測定される光路長10mm、波長1064nmにおける消光比が30dB以上である透明セラミックスを得る請求項1〜9のいずれか1項記載のファラデー回転子用透明セラミックスの製造方法。
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