JP4539657B2 - 反射防止用光学素子 - Google Patents

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Description

本発明は、反射防止用光学素に関する。具体的には、凸部または凹部からなる構造体が基体表面に多数設けられた反射防止用光学素子に関する。
従来より、ガラスやプラスチックなどの透光性基板を用いた光学素子においては、表面反射による光を減少させ、透過特性を上げるための方法として、光学素子表面に微細且つ緻密な凹凸(サブ波長構造体;蛾の目)形状を形成する方法がある。一般に、光学素子表面に周期的な可視光程度の波長構造体を設けた場合、ここを光が透過するときには回折が発生し、透過光の直進成分が大幅に減少する。しかし、サブ波長構造体のピッチが透過する光の波長よりも短い場合には回折は発生せず、例えばサブ波長構造体を錐面が凹状に窪まされた錐体としたときに、そのピッチや深さなどに対応する単一波長の光に対して有効な反射防止効果と優れた透過特性とを得ることができる(例えば非特許文献1参照)。以下では、錐面が凹状に窪まされた形状をテント状、錐面が凸状に膨らまされた形状を釣鐘状または釣鐘型と称する。
上述したテント状のサブ波長構造体を有する光学素子は以下のようにして作製される。まず、Si基板上のフォトレジストに電子線記録により凹凸パターンを形成し、凹凸フォトレジストパターンをマスクにし、Si基板をエッチングする。これにより、テント状を有する微細なサブ波長構造体(ピッチ:約300nm、深さ:約400nm)が基板表面に形成され、Si原盤が作製される(図18参照)。この微細な構造体は、正方格子状または六方格子状に設けられる。
上述のようにして作製したSi原盤では、広い波長域を有する光に対して反射防止効果を得ることができる。特に、図19に示すように、テント状を有する微細なサブ波長構造体を六方格子状に設けた場合、可視光域において高性能な反射防止効果(反射率1%以下)を得ることができる(図20参照)。なお、図20中、l1、l2はそれぞれSi平坦部の反射率、パターン部の反射率を示す。
次に、作製したSi原盤のNiめっきスタンパを作製する(図21参照)。このスタンパの表面には、図22に示すように、Si原盤の凹凸構造とは反対の凹凸構造が形成される。次に、このスタンパを用いて、ポリカーボネートの透明樹脂に凹凸パターンを転写する。これにより、目的とする光学素子(複製基板)が得られる。この光学素子も高性能な反射防止効果(反射率0.3%以下)を得ることができる(図23参照)。なお、図23中、l3、l4はそれぞれパターン無しの反射率、パターン有りの反射率を示す。
反射防止体 Moth Eye Anti-reflective Nano-structure、[online]、[平成18年12月12日検索]、インターネット<http://keytech.ntt-at.co.jp/nano/prd_0016.html>
しかしながら、テント状のサブ波長構造体を有する光学素子では、図23に示すように、長波長領域(700〜800nm)において反射率が増加するという問題がある。
したがって、本発明の目的は、優れた反射防止特性を有する反射防止用光学素を提供することにある。
本発明者らは、従来技術が有する上述の課題を解決すべく、鋭意検討を行った。以下にその概要を説明する。
本発明者らは、長波長領域(700〜800nm)において反射率の増加を抑制すべく鋭意検討を行った結果、サブ波長構造体を釣鐘型の楕円錐形状または楕円錐台形状にした場合、十分な無反射効果が得られ、長波長領域(700〜800nm)において反射率増加が低減されることを見出すに至った。
そして、本発明者らは、釣鐘型の楕円錐形状または楕円錐台形状のサブ波長構造体を有する光学素子について、鋭意検討を重ねたところ、この光学素子は、反射率が波長の増加に伴って微少振幅のサイン波形状を示すという波長依存性を有することを見出すに至った。今後、更なる反射防止効果の向上が要求されることを考慮すると、上述の反射率の波長依存性を低減することが好ましい。
そこで、本発明者らは、上述の波長依存性を低減すべく鋭意検討を重ねた。その結果、深さ分布を有するサブ波長構造体を光学素子に設けることで、波長依存性を低減できることを見出すに至った。
本発明は以上の検討に基づいて案出されたものである。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
構造体は、深さ分布を有し、
構造体は、頂部の傾きが緩やかで底部にかけて徐々に急峻な傾きの楕円錐形状または楕円錐台形状を有し、
構造体は、基体表面において複数列の円弧状トラックをなすように設けられ、
楕円錐形状または楕円錐台形状は、トラックの円周方向に長軸方向を有することを特徴とする反射防止用光学素子である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
構造体は、深さ分布を有し、
構造体は、基体表面において複数列の円弧状トラックをなすように設けられ、
円弧状トラックの円周方向における構造体の深さは、円弧状トラックの径方向における構造体の深さよりも小さいことを特徴とする反射防止用光学素子である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
構造体は、深さ分布を有し、
各構造体の深さ分布の形成が、基体表面に、少なくとも2種以上の値で選択的に、もしくは連続的に、もしくは区分的に連続に変化してなされていることを特徴とする反射防止用光学素子である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
構造体は、深さ分布を有し、
各構造体の深さ分布の形成が、基体表面にステップ関数状に変化してなされていることを特徴とする反射防止用光学素子である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
構造体は、深さ分布を有し、
各構造体の深さ分布の形成が、基体表面にステップ関数状に変化してなされ、少なくとも一つ以上の深さの種類の存在する割合が、他の深さの種類の存在する割合と異なるように、選択的に構造体を形成していることを特徴とする反射防止用光学素子である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている反射防止用光学素子作製用複製基板であって、
構造体は、深さ分布を有することを特徴とする反射防止用光学素子作製用複製基板である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている、反射防止用光学素子作製用複製基板の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光の波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の凹凸構造を転写して複製基板を作製する第5の工程と
を有し、
レーザ光は、振幅が周期的または非周期的に変動する鋸波状または三角波状に変調されることを特徴とする、反射防止用光学素子作製用複製基板の製造方法である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光の波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の凹凸構造を転写して複製基板を作製する第5の工程と
を有し、
レーザ光は、振幅が周期的または非周期的に変動する矩形波状に変調されることを特徴とする、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光の波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の凹凸構造を転写して複製基板を作製する第5の工程と
を有し、
レーザ光は、振幅が周期的または非周期的に変動すると共に、時間幅が周期的または非周期的に変動する矩形波状に変調されることを特徴とする、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光の波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の凹凸構造を転写して複製基板を作製する第5の工程と
を有し、
レーザ光は、多値ステップ波形に変調されることを特徴とする、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光の波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の凹凸構造を転写して複製基板を作製する第5の工程と
を有し、
レーザ光は、選択的多値ステップ波形に変調されることを特徴とする、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光の波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の凹凸構造を転写して複製基板を作製する第5の工程と
を有し、
レーザ光は、区分的に連続な波形に変調されることを特徴とする、反射防止用光学素子の作製用複製基板の製造方法である。
本願発明は、
凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基板表面に多数設けられている反射防止用光学素子の製造方法であって、
表面にレジスト層が形成された基板を準備する第1の工程と、
基板を回転させるとともに、レーザ光を基板の回転半径方向に相対移動させながら、レジスト層にレーザ光を間欠的に照射して、可視光波長よりも短いピッチで潜像を形成する第2の工程と、
レジスト層を現像して、深さ分布を有するレジストパターンを基板の表面に形成する第3の工程と、
レジストパターンをマスクとするエッチング処理をレジスト層に施すことで、基板の表面に凹凸構造を形成する第4の工程と、
基板の複製基板を作製し、複製基板の凹凸構造の上に金属メッキ層を形成する第5の工程と、
金属メッキ層を複製基板から剥離して、凹凸構造が転写された成形金型を作製する第6の工程と、
成形金型を用いて凹凸構造が表面に形成された透明基体を成形する第7の工程と
を有することを特徴とする反射防止用光学素子の製造方法である。
本願発明の光学素子および複製基板では、構造体は、基体表面において複数列の円弧状トラックをなすように設けられていることが好ましい。この場合、楕円錐形状または楕円錐台形状は、トラックの円周方向に長軸方向を有することが好ましい。また、構造体は、隣接するトラック間において準六方格子パターンを構成することが好ましい。
本願発明の光学素子および複製基板では、同一トラック内における構造体の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。
本願発明の光学素子および複製基板の製造方法では、第2の工程では、隣接するトラック間において準六方格子パターンを構成するように潜像を形成することが好ましい。
本願発明の光学素子および複製基板の製造方法では、第4の工程では、レジストパターンをマスクとするエッチング処理とレジストパターンに対するアッシング処理とを繰り返し行うと共に、エッチング処理時間を徐々に長くすることが好ましい。
本願発明の光学素子および複製基板の製造方法では、第5の工程では、基板の表面に光硬化樹脂層を形成した後、該光硬化樹脂層を剥離し、凹凸構造が転写された複製基板を作製することが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、光学素子に深さ分布を有する構造体を設けるので、反射特性の波長依存性を低減することができる。したがって、優れた反射防止特性を有する光学素子を実現することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(光学素子の構成)
図1Aは、本発明の実施形態による光学素子1の構成の一例を示す概略平面図である。図1Bは、図1Aに示した光学素子1の一部を拡大して表す平面図である。図1Cは、図1BのC−C線における断面図である。図1Dは、図1Bに示した構造体3に対応する潜像をパターニングする際に用いられるレーザ光変調波形を示す略線図である。図2は、図1Aに示した光学素子1の一部を拡大して表す斜視図である。
本実施形態による光学素子1は、基体2の表面に凸部からなる構造体3が可視光の波長(約400nm)以下の微細ピッチで多数設けられた構成を有している。この光学素子1は、基体2を図2の−Z方向に透過する光について、構造体3とその周囲の空気との界面における反射を防止する機能を有している。
この光学素子1は、例えばディスプレイ、光エレクトロニクス、光通信(光ファイバー)、太陽電池、照明装置など種々の光学デバイスに用いて好適なものであり、具体的には例えば種々の波長域を有する光ファイバーやディスプレイ導光板などに用いることができる。
基体2は、例えばポリカーボネート(PC)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明性合成樹脂、ガラスなどの透光性を有する透明基体である。また、基体2の形状は、例えば、上述した各種光学デバイスなどの本体部分や、これらの光学デバイスなどに取り付けられるシートあるいはフィルム状の反射防止機能部品の形状などに合わせて選ばれる。このような形状としては、例えばフィルム状、シート状、プレート状、ブロック状などが挙げられる。
構造体3は深さ分布を有している。ここで、深さ分布とは、2種以上の深さ(高さ)を有する構造体3が基体2の表面に設けられていることを意味する。すなわち、基準となる高さを有する構造体3と、この構造体3とは異なる高さを有する構造体3とが基体2の表面に設けられている。例えば、図2に示すように、高さH1を有する構造体3と高さH2を有する構造体3とが基体2の表面に設けられている。基準とは異なる高さを有する構造体は、例えば基体2の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられている。その周期性の方向としては、例えば円周方向、半径方向または円周方向に対して±θ方向が挙げられる。
構造体3は、例えば基体2と一体的に形成されている。各構造体3はそれぞれ同一の形状を有しているが、これに限られない。構造体3は、例えば底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形あるいは卵形の錐体構造で、頂部が例えば曲面または平坦な形状に形成されている。特に、頂部の傾きが緩やかで例えば中央部から底部に徐々に急峻な傾きの楕円錐形状(図2参照)であることが好ましい。長波長領域(700〜800nm)における反射率の増加を抑えることができるからである。
各構造体3は、図1Aに示すように、基体2の表面において複数列の円弧状のトラックT1,T2,T3,・・・(以下総称して「トラックT」ともいう。)をなすように設けられている。各構造体3は、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された各構造体3の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体3が設けられていることが好ましい。すなわち、図1Bに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する準六方格子パターンを形成するように各構造体3が設けられていることが好ましい。基体2の表面における構造体3の充填密度を高くできるからである。なお、準六方格子パターンとは、正六方格子パターンと異なり、トラックTの円弧状に沿って歪んだ六方格子パターンを意味する。
同一トラック内における各構造体3は、例えば一定の配置ピッチP1(a1−a2間距離)で設けられており、その配置ピッチP1は、例えば約330nmに選ばれる。また、円周方向に対して±θ方向、例えば±約60°方向において、各構造体3は、例えば一定の配置ピッチP2(a1−a7(a2−a7)間距離)で設けられており、その配置ピッチP2は、例えば約300nmに選ばれる。
また、図1Bに示すように、同一トラック(例えばT1)内における各構造体3の配置ピッチP1(a1−a2間距離)は、例えば、隣接する2つのトラック(例えばT1およびT2)間における構造体3の配置ピッチ、すなわち円周方向に対して±約60°方向における構造体3の配置ピッチP2(例えばa1−a7,a2−a7間距離)よりも長くなっている。
構造体3の深さ(高さ)Hは、例えば300nm〜380nm程度である。円弧状トラックTの円周方向における構造体3の深さは、円弧状トラックTの径方向における構造体3の深さよりも小さくなっている。構造体3のアスペクト比(深さH/配置ピッチ(平均周期)P)は、好ましくは0.91〜1.40の範囲内である。この範囲内で、非常に優れた透過特性が得られるからである。
(光学素子の製造方法)
次に、以上のように構成される光学素子の製造方法の一例について説明する。この光学素子の製造方法は、原盤の製造工程と、複製基板の製造工程と、成形金型の製造工程と、光学素子の作製工程と、切り出し工程とを有する。以下、図3〜図7を参照しながら、これらの工程を順次説明する。
[原盤の製造工程]
まず、図3Aに示すように、ディスク状(円盤状)の基板11を準備する。この基板11は、例えば石英基板などである。次に、図3Bに示すように、基板11の表面にレジスト層12を形成する。レジスト層12は、例えば有機系レジストからなる。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。
次に、図3Cに示すように、基板11を回転させると共に、レーザ光(露光ビーム)13をレジスト層12に照射する。このとき、レーザ光13を基板11の半径方向に移動させながら、レーザ光13を間欠的に照射することで、レジスト層12を全面にわたって露光する。これにより、レーザ光13の軌跡に応じた潜像12aが、可視光波長よりも短いピッチでレジスト層12の全面にわたって形成される。レーザ光13としては、例えば周期的または非周期的(ランダム)に振幅が変化する波形を有するものが用いられる。このような波形の形状としては、例えばサイン波状、矩形波状、鋸波状を挙げることができる。
なお、この露光工程の詳細については後述する。
この露光工程では、例えば、レジスト層12に対するレーザ光13の照射周期を1トラック毎に変化させながら行うことにより、隣接する3列のトラック間において構造体(潜像)を準六方格子パターン状に設けることが好ましい。また、レーザ光13の照射周期は、例えば、基板11を角速度一定で回転させ、円周方向の構造体3の配置ピッチP1が一定となるようにレーザ光13のパルス周波数を最適化する。より具体的には、トラック位置が基板中心から遠ざかるに従い、レーザ光13の照射周期が短くなるように変調制御する。これにより、基板全面において空間周波数が一様なナノパターンを形成することが可能となる。
次に、基板11を回転させながら、レジスト層12上に現像液14を滴下して、図4Aに示すように、レジスト層12を現像処理する。これより、深さ分布を有するレジストパターンがレジスト層12に形成される。なお、レジスト層12をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザ光13で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図4Bに示すように、露光部(潜像12a)に応じたパターンがレジスト層12に形成される。
次に、基板11の上に形成されたレジスト層12のパターン(レジストパターン)をマスクとして、基板11の表面をエッチング処理する。これにより、図4Cに示すように、基板11の一主面に深さ分布を有する凹部パターン15aが形成され、原盤15が作製される。エッチング方法は、例えばドライエッチングによって行われる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に繰り返し行うことにより、例えば釣鐘型錐体状の凹部15aのパターンを形成することができると共に、レジスト層12の3倍以上の深さ(選択比3以上)のマスタを作製でき、構造体3の高アスペクト比化を図ることができる。
上述のようにして潜像12aを現像し、得られたレジストパターンをマスクとするエッチング処理を施すことにより、例えば、円弧状トラックの円周方向に長軸方向をもつ楕円錐台形状などの構造体3を得ることができる。特に、楕円錐台形状の構造体3としては、中央部の傾きが先端部および底部の傾きよりも急峻に形成されるものが好ましい。これにより、耐久性および転写性を向上させることが可能であるからである。また、同一トラック内における構造体3の配置ピッチP1が、例えば、隣接する2トラック間における構造体3の配置ピッチP2よりも長い準六方格子パターンを得ることができ、これにより、構造体3の充填密度の更なる向上を図れるようになる。
以上の工程により、図4Cに示す原盤15が製造される。この原盤15は、図1に示した光学素子1を形成するマスタ原器である。この原盤15の凹部15aからなる表面凹凸構造により、後述する複製基板および成形金型を経て、光学素子1の構造体3が形成される。したがって、原盤15の凹部15aは、例えば、原盤15の円周方向に歪んだ準六方格子パターンを形成するように設けられている。
次に、図5を参照して、図3Cに示した露光工程の詳細について説明する。図5に示す露光装置は、光学ディスク記録装置をベースにして構成されている。
レーザ21は、基板11の表面に着膜されたレジスト層12を露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの遠紫外線レーザ光13を発振するものである。レーザ21から出射されたレーザ光13は、平行ビームのまま直進し、電気光学変調器(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学変調器22は、一般的にレーザ光源のノイズを低減するために用いられるが、この一実施形態では、入射するレーザ光13を、周期的または非周期的に振幅が変動する所定の周期波または非周期波に変調する。例えば、電気光学変調器22は、図1Dに示すように、周期的または非周期的に振幅が変動するサイン波状に入射レーザ光13を変調する。ここで、振幅の変動は、例えば、基準となる振幅に対して±10%程度の変動である。電気光学変調器(EOM:Electro Optical Modulator)22を透過したレーザ光13は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能を有する。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学変調器22を制御してレーザ光13の位相変調を行う。
変調光学系25において、レーザ光13は、集光レンズ26により、石英(SiO2)などからなる音響光学変調器(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザ光13は、音響光学変調器27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザ光13は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、ミラー34および対物レンズ35を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザ光13は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、ミラー34および対物レンズ35を介して、基板11上のレジスト層12へ照射される。基板11は、スピンドルモータ36に接続されたターンテーブル(図示省略)の上に載置されている。そして、基板11を回転させると共に、レーザ光13を基板11の回転半径方向に移動させながら、レジスト層12へレーザ光13を間欠的に照射することにより、レジスト層12の露光工程が行われる。形成された潜像12aは、例えば円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザ光13の移動は、移動光学テーブル32を矢印R方向へ移動することにより行われる。
図5に示した露光装置は、レジスト層12に対して図1Bに示した準六方格子の2次元パターンからなる潜像12aを形成するための制御機構を備えている。制御機構は、フォーマッタ29とドライバ30とを備える。フォーマッタ29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層12に対するレーザ光13の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学変調器27を制御する。
制御機構は、潜像12aの2次元パターンが空間的にリンクするように、1トラック毎に、音響光学変調器27によるレーザ光13の強度変調と、スピンドルモータ36の駆動回転速度と、移動光学テーブル32の移動速度とをそれぞれ同期させる。基板11は、例えば角速度一定(CAV:Constant Angular Velocity)で回転制御される。そして、スピンドルモータ36による基板11の適切な回転数と、音響光学変調器27によるレーザ光強度の適切な周波数変調と、移動光学テーブル32によるレーザ光13の適切な送りピッチとでパターニングを行う。これにより、レジスト層12に対して準六方格子パターンの潜像12aを形成する。
例えば、図1に示したように、円周方向の配置ピッチ(周期)P1を330nm、円周方向に対して約60度方向(約−60度方向)の配置ピッチ(周期)P2を300nmにする場合、送りピッチを251nmにすればよい。また、極性反転部の制御信号を、空間周波数(潜像12aのパターン密度、P1:330nm、P2:300nm)が一様になるように徐々に変化させる。より具体的には、レジスト層12に対するレーザ光13の照射周期を1トラック毎に変化させながら露光を行い、各トラックTにおいて配置ピッチP1がほぼ330nmとなるように制御機構においてレーザ光13の周波数変調を行う。すなわち、トラック位置が基板中心から遠ざかるに従い、レーザ光13の照射周期が短くなるように変調制御する。これにより、基板全面において空間周波数が一様なナノパターンを形成することが可能となる。ナノパターン形成波形帯域は、例えば10〜20MHz程度である。
なお、レジスト層12のパターンは、基板11の半径方向と円周方向とで現像後の層厚が異なっており、半径方向の層厚よりも円周方向の層厚が薄い。これは、露光工程において基板11を回転させながらレーザ光13を照射するため、レーザ光13の照射時間が基板半径方向よりも円周方向の方が長くなり、これが現像後においてレジスト層12の層厚の違いとなって現れるからである。その後のエッチング処理においては、基板11の円周方向と半径方向とでのレジスト層12の層厚の違いによって、形成される凹部15aに形状の異方性が付される。
ここで、図8を参照して、構造体の深さ分布を制御するレーザ光変調波形の例について説明する。上記レーザ光変調波形の帯域は、例えば数kHz〜数10kHzである。
図8A、図8Bは、構造体の深さを均一に分布させる場合のレーザ光変調波形の例を示す。このような変調波形を得るためには、例えば、レーザ光13は以下のように変調される。すなわち、レーザ光13は、電気光学変調器22において、振幅が周期的または非周期的に例えば±10%程度変動する鋸波状または三角波状に変調される。なお、この変調されたレーザ光13は変調光学系25に導かれる。
図8Cは、構造体3の深さを2値化に分布させる場合のレーザ光変調波形の例を示す。このような変調波形を得るためには、例えば、レーザ光13は以下のように変調される。すなわち、レーザ光13は、電気光学変調器22において、振幅が周期的または非周期的に例えば±10%程度変動する矩形波状に変調される。なお、この変調されたレーザ光13は変調光学系25に導かれる。
図8Dは、構造体3の深さを2値化して存在割合を変えて分布させる場合のレーザ光変調波形の例を示す。このような変調波形を得るためには、例えば、レーザ光13は以下のように変調される。すなわち、レーザ光13は、電気光学変調器22において、振幅が周期的または非周期的に例えば±10%程度変動すると共に、時間幅(パルス幅)が周期的または非周期的に変動する矩形波状に変調される。
図8Eは、構造体3の深さを多値化して分布させる場合のレーザ光変調波形の例を示す。このような変調波形を得るためには、例えば、レーザ光13は以下のように変調される。すなわち、レーザ光13は、電気光学変調器22において、多値ステップ波形に変調される。
図8Fは、構造体3の深さを選択的に多値化して分布させる場合のレーザ光変調波形の例を示す。このような変調波形を得るためには、例えば、レーザ光13は以下のように変調される。すなわち、レーザ光13は、電気光学変調器22において、選択的多値ステップ波形(中央値なし)に変調される。
図8Gは、構造体3の深さを区分的に選択して分布させる場合のレーザ光変調波形の例を示す。このような変調波形を得るためには、例えば、レーザ光13は以下のように変調される。すなわち、レーザ光13は、電気光学変調器22において、区分的に連続な波形(中央領域なし)に変調される。ナノパターンモスアイ形状波形と上記深さ分布を制御するレーザ変調波形の重畳波形となる。
次に、図6を参照して、原盤15から光学素子1が作製されるまでの工程について説明する。
[複製基板の製造工程]
まず、作製した原盤15の凹凸構造面に紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂を塗布し、その上にアクリル板などの透明基板16aを重ねて配置する。そして、透明基板16aの上から紫外線などを照射し光硬化樹脂を硬化させた後、原盤15から剥離する。これにより、図6Aに示すように、透明基板16aの一主面に光硬化樹脂からなる構造体16bが設けられ、複製基板16が作製される。
[成形金型の製造工程]
次に、作製した複製基板16の凹凸構造面に導電化膜を無電界メッキ法により形成した後、電界メッキ法によって金属メッキ層を形成する。これら無電解メッキ膜および電界メッキ層の構成材料には、例えばニッケル(Ni)が好適である。そして、金属メッキ層の形成後、複製基板16から金属メッキ層を剥離し、必要に応じて外形加工を施する。これにより、図6Bに示すように、深さ分布を有する凹部17aが一主面に設けられた成形金型17が作製される。
[光学素子の作製工程]
次に、作製した成形金型17を射出成形機の所定位置に設置し、金型を閉じキャビティを形成した後、ポリカーボネートなどの溶融樹脂を充填する。次に、溶融樹脂を冷却した後に金型を開き、固化した樹脂を取り出す。これにより、図6Cに示したように、深さ分布を有する構造体3が基体2の一主面に一体形成されたディスク状基板1Wが作製される。
[切り出し工程]
次に、ディスク状基板1Wを所定の製品サイズに応じて切り出す。例えば、ディスク状基板1Wが直径200mmを有する円形状である場合、図7Aに示すように、ディスク状基板1Wから携帯電話機用(例えば横2.5インチ)の光学素子1を4枚、あるいは、図7Bに示すように、ディスク状基板1Wから携帯ゲーム装置用(例えば横4.3インチ)の光学素子1を2枚切り出すことができる。以上により、図1に示す光学素子1が作製される。
なお、構造体3は、上述したように露光装置を用いて基板11のレジスト層12に形成した露光パターンをもとに形成されるので、ディスク状基板1Wから所定サイズに切り出した光学素子1では、各構造体3は、基体2の表面において複数列の円弧状のトラックTをなすように設けられている。
以上、本実施形態によれば、光学素子1の構造体3に深さ分布を設けているので、反射特性の波長依存性を低減することができる。したがって、優れた反射防止特性を有する光学素子を実現することができる。
また、光ディスク記録装置を応用した露光装置を用いて原盤15を作製できるので、光学素子1を短時間で効率良く製造することができると共に基板111の大型化にも対応可能である。したがって、光学素子1の生産性の向上を図ることができる。
また、構造体3が、複数列の円弧状トラックをなすと共に、隣接する3列のトラック間において準六方格子パターンをなすように設けられている場合には、基体2の表面における構造体3の充填密度を高くすることができるので、可視光の反射防止効率を高めることができる。したがって、反射防止特性に優れ、且つ透過率の極めて高い光学素子1を提供することができる。
また、各構造体3を釣鐘状の錐体とした場合には、図18に示した従来のテント状の微細なサブ波長構造体に比べて、構造体3の耐久性を高めることができると共に、複製基板16、成形金型17およびディスク状基板1Wの各凹凸構造面の転写性を高めることが可能となる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、上述の実施形態と対応する部分には同一の符号を付す。
実施例1〜2および比較例1〜2では、サブ波長構造体16bの深さ分布について検討を行った。
(実施例1)
[原盤の作製]
石英基板11上に、化学増幅型またはノボラック系ポジ型レジスト層12を厚さ150nm程度塗布し、このレジスト層12に、図5に示した露光装置を用いて準六方格子パターンの潜像12aを形成した。レーザ光13の波長は266nm、レーザパワーは0.50mJ/mとした。なお、レーザ光13は、電気光学変調器22において、振幅が非周期的に±10%程度変動するサイン波形に変調した後、変調光学系25に導いた。また、レジスト層12に対するレーザ光13の照射周期を1トラック毎に変化させた。その後、レジスト層12に対して現像処理を施して、準六方格子状のレジストパターンを作製した。現像液としては、無機アルカリ性現像液(東京応化社製)を用いた。
次に、O2アッシングによりレジストパターンを除去し開口径を広げるプロセスと、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングで石英基板11をエッチングするプロセスとを繰り返し行った。その結果、石英基板11の表面が露出している準六方格子パターン径が徐々に広がりながら、エッチングが進行し、その他の領域はレジストパターンがマスクとなりエッチングされず、図4Cに模式的に示したような釣鐘型楕円錐体状を有し、かつ、深さ分布を有する凹部15aが形成された。なお、エッチング量はエッチング時間によって変化させた。最後に、O2アッシングによりレジストパターンを完全に除去した。
ここで、上述のアッシングおよびエッチングのプロセスの詳細について説明する。まず、(1)O2アッシング4秒、CHF3エッチング1分、(2)O2アッシング4秒、CHF3エッチング1.5分、(3)O2アッシング4秒、CHF3エッチング2分、(4)4.O2アッシング4秒、CHF3エッチング3分、(5)O2アッシング4秒、CHF3エッチング4分、(6)O2アッシング4秒、CHF3エッチング5分のプロセスを、プロセス(1)〜(6)の順序で順次行った。最後に、O2アッシングを10秒行うことにより、レジストパターンを完全に除去した。
以上により、円周方向の配置ピッチP1が330nm、円周方向に対して約60°方向(約−60°方向)の配置ピッチP2が300nmの凹部準六方格子パターンを有する石英マスタ(原盤)15が作製された。
[複製基板の作製]
次に、作製した石英マスタ15上に紫外線硬化樹脂を塗布した後、アクリル板16aを紫外線硬化樹脂上に密着させた。そして、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、石英マスタ15から剥離した。以上により、準六方格子状にサブ波長構造体16bが設けられた複製基板16が作製された。
(実施例2)
石英マスタ(原盤)15の作製工程におけるアッシング時間およびエッチング時間を変える以外は実施例1と同様にして、複製基板16を作製した。
ここで、上述のアッシングおよびエッチングのプロセスの詳細について説明する。まず、(1)O2アッシング4秒、CHF3エッチング1分、(2)O2アッシング4秒、CHF3エッチング2分、(3)O2アッシング4秒、CHF3エッチング3分、(4)O2アッシング4秒、CHF3エッチング4分、(5)O2アッシング4秒、CHF3エッチング3分、(6)O2アッシング4秒、CHF3エッチング2分、(7)O2アッシング4秒、CHF3エッチング1分のプロセスを、プロセス(1)〜(7)の順序で順次行った。最後に、O2アッシングを10秒行うことにより、レジストパターンを完全に除去した。
(比較例1)
電気光学変調器22において、振幅が一定のサイン波形にレーザ光を変調すること以外は実施例2と同様にして、複製基板16を作製した。
(比較例2)
電気光学変調器22において、振幅が一定のサイン波形にレーザ光を変調すること以外は実施例1と同様にして、複製基板16を作製した。
(形状の評価)
上述のようにして作製した実施例1、比較例1および比較例2の複製基板について、走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)により観察を行った。その結果を図9〜図11に示す。
図9〜図11から以下のことが分かる。
(1)光ディスク記録装置を応用した露光装置を用いて、サブ波長構造体3を一主面に有する複製基板16を作製することができる(図9〜図11参照)。
(2)レジスト層12に対するレーザ光13の照射周期を1トラック毎に変化させることにより、楕円錐形状のサブ波長構造体3を準六方格子状に形成できる(図9〜図11参照)。
(3)振幅が一定のサイン波形にレーザ光13を変調することにより、深さ分布がないサブ波長構造体3を形成することができるのに対して(図10、図11参照)、振幅が非周期的に±10%程度変動するサイン波形にレーザ光13を変調することにより、深さ分布を有するサブ波長構造体3を形成することができる(図9、円により囲んだ領域参照)。
(4)石英マスタのエッチング工程において、アッシングとエッチングとを繰り返し交互に行うと共に、エッチングの時間を徐々に長くすることにより、サブ波長構造体3の形状を、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの楕円錐形状にできる(図9〜図11参照)。
また、上述のようにして作製した実施例1〜2および比較例1〜2の複製基板について、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察を行った。そして、AFMの断面プロファイルから各複製基板のサブ波長構造体16bの深さ(高さ)を求めた。その結果を表1に示す。
なお、サブ波長構造体16bの円周方向の深さは半径方向の深さよりも小さく、また、サブ波長構造体16bの円周方向以外の部分の深さが半径方向の深さとほぼ同一であったことから、サブ波長構造体16bの深さを半径方向の深さで代表した。
また、平均周期Pは以下の式(1)により定義される。
平均周期P=(P1+P2+P2)/3=(330+300+300)/3=310 ・・・(1)
表1から以下のことが分かる。すなわち、エッチング時間を変えることにより、サブ波長構造体3の形状を変えられることが分かる。したがって、エッチング時間を変えることにより、所望の特性を有する光学素子1を作製できることが分かる。
(反射特性の評価)
上述のようにして作製した実施例1〜2および比較例1〜2の複製基板の反射率を測定した。なお、反射率の測定には、紫外可視分光光度計(日本分光社株式会社製、商品名:V−500)を用いた。その測定結果を図12〜図15に示す。
図12〜図15から、実施例1〜2および比較例1〜2の反射特性それぞれについて以下のことが分かる。
(b)実施例1の反射特性(図12参照)
実施例1では、反射率波長依存特性(波長350〜800nm)はほとんどなく、反射率変動が0.04%pp以下である。また、反射率は0.2%程度、最大反射率0.22%以下であり非常に良好な無反射性能が得られた。
(a)実施例2の反射特性(図13参照)
実施例2では、反射率波長依存特性(波長350〜800nm)はほとんどなく、反射率変動が0.1%pp以下である。また、反射率は0.35%程度、最大反射率0.4%以下であり良好な無反射性能が得られた。
(c)比較例1の反射特性(図14参照)
比較例1では、反射率は波長依存性(波長350〜800nm)が有り、反射率が波長の増加に伴って微少振幅のサイン波形状を示している。また、反射率は0.2〜0.7%程度である。
(d)比較例2の反射特性(図15参照)
比較例1では、反射率は波長依存性(波長350〜800nm)が有り、反射率が波長の増加に伴って微少振幅のサイン波形状を示している。また、平均反射率は0.2%、最大反射率0.3%、最小反射率0.1%である。
以上の点を考慮すると、サブ波長構造体16bに深さ分布を持たせることで、反射率の波長依存特性を低減することができる。また、反射率の波長依存特性を低減し、かつ、より優れた反射防止特性を得るためには、アスペクト比は0.91〜1.41であることが好ましい。
また、実施例1〜2の無反射性能は、現存の無反射技術により達成できるものではない。すなわち、実施例1〜2の複製基板16は、格段に優れた無反射性能を有している。
実施例3では、複製基板16を用いて成形金型17を作製した後、この成形金型17を用いて光学素子1を作製した。
(実施例3)
[原盤の作製・複製基板の作製]
まず、原盤の作製および複製基板の作製を実施例1と同様にして行い、複製基板16を作製した。
[成形金型の作製]
次に、作製した複製基板16の凹凸パターン上に、無電界メッキ法によりニッケル皮膜でなる導電化膜を形成した。そして、導電化膜層が形成された複製基板を電鋳装置に設置し、電気メッキ法により導電化膜上に300±5μm程度の厚さのニッケルメッキ層を形成した。続いて、複製基板からニッケルメッキ層をカッターなどを用いて剥離した後、転写された凹凸構造面をアセトンで洗浄し、凹部準六方格子パターンを有するNi金属マスタ(成形金型)17を作製した。
[光学素子の作製]
次に、作製したNi金属マスタ17を用いてポリカーボネート樹脂の射出成形基板を作製し、表面に凸部準六方格子パターンを有するディスク状基板1Wを得た。その後、このディスク状基板1Wを所定サイズに切り出して、光学素子1を作製した。
(光学素子の評価)
上述のようにして作製した光学素子1を走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)により観察を行った。その結果、実施例1と同様の形状および配置を有するサブ波長構造体3が基体2の表面に形成されていることが分かった。
また、上述のようにして作製した光学素子1の反射特性を実施例1と同様にして評価した。その結果、実施例3では、実施例1と同様の反射特性が得られることが分かった。
参考例1〜9では、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)シミュレーションによりサブ波長構造体3の深さ分布について検討を行った。
(参考例1)
釣鐘型の楕円錐形状を有し、かつ、深さ分布のないサブ波長構造体3が設けられた光学素子について、RCWAシミュレーションを行った。その結果を図16に示す。なお、円周方向の配置ピッチP1を325nm、円周方向に対して約60°方向(約−60°方向)の配置ピッチP2を300nm、アスペクト比を0.9とした。
(参考例2〜6)
アスペクト比を1.0、1.1、1.2、1.3、1.4に変えること以外は参考例1と同様にして、RCWAシミュレーションを行った。その結果を図16に示す。
(参考例7)
釣鐘型の楕円錐形状を有し、かつ、深さ分布を有するサブ波長構造体3が設けられた光学素子について、RCWAシミュレーションを行った。なお、円周方向の配置ピッチP1を325nm、円周方向に対して約60°方向(約−60°方向)の配置ピッチP2を300nm、深さ分布を2値化するため、アスペクト比を0.9と1.3の2値化とした。その結果を図17に示す。
(参考例8)
サブ波長構造体3の深さを多値化するため、アスペクト比を0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4とすること以外は参考例7と同様にして、RCWAシミュレーションを行った。その結果を図17に示す。
(参考例9)
サブ波長構造体3の深さを選択的多値化するため、アスペクト比を0.8、0.9、1.0、1.1、1.3、1.4とすること以外は参考例7と同様にして、RCWAシミュレーションを行った。その結果を図17に示す。
図16〜図17から以下のことが分かる。
(a)参考例1では、図16に示すように、長波長領域において反射率が増加しない。また、釣鐘型楕円錐状のサブ波長構造体3の深さにより、反射率の波長依存特性つまり微小振幅のサイン波の波長依存特性は異なる。
(b)参考例2では、図17に示すように、長波長領域において反射率の増加がなく、かつ、反射率の波長依存特性をなくすことができる。
以上の点を考慮すると、光学素子1のRCWAシミュレーション結果と、実際に作製した光学素子1または複製基板16の測定結果とは、ほぼ同様の傾向を示す。
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の実施形態および実施例では、基板をエッチング処理して原盤を形成する場合について説明したが、レジスト層のパターンが形成された基板をそのまま原盤として用いることも可能である。
また、上述の実施形態および実施例では、構造体が凸形状の場合について説明したが、構造体を凹形状としてもよい。この場合にも上述の実施形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
また、上述の実施形態および実施例において、各構造体の深さ分布の形成が、基体表面に、少なくとも2種以上の値で選択的に、もしくは連続的に、もしくは区分的に連続に変化してなされ、それぞれ深さの存在確率に重み付けがされて形成しているようにしてもよい。
本発明の実施形態による光学素子の構成の一例を示す概略図である 図1に示した光学素子1の一部を拡大して表す斜視図である。 原盤の製造工程を説明するための模式図である。 原盤の製造工程を説明するための模式図である。 原盤の製造工程に用いる露光装置の概略構成図である。 光学素子作製原盤から光学素子を作製するまでの概略工程を説明するための模式図である。 光学素子の切り出し工程を説明するための模式図である。 構造体の深さ分布を制御するレーザ光変調波形の例を示す略線図である。 実施例2の複製基板のSEM像を示す図である。 比較例1の複製基板のSEM像を示す図である。 比較例2の複製基板のSEM像を示す図である。 実施例1の反射特性を示すグラフである。 実施例2の反射特性を示すグラフである。 比較例1の反射特性を示すグラフである。 比較例2の反射特性を示すグラフである。 参考例1〜6のRCWAシミュレーションの結果を示すグラフである。 参考例7〜9のRCWAシミュレーションの結果を示すグラフである。 従来のSi原盤の構成を示す図である。 従来のSi原盤の構成を示す図である。 従来のSi原盤における波長と反射率との関係を示すグラフである。 従来のSi原盤のNiめっきスタンパの構成を示す図である。 図17に示したNiめっきスタンパを拡大して示す図である。 従来の光学素子における波長と反射率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 光学素子
1W ディスク状基板
2 基体
3,16b 構造体
11 基板
12 レジスト層
12a 潜像
13 レーザ光
14 現像液
15 原盤
15a,17a 凹部
16 複製基板
16a 透明基板
17 成形金型
21 レーザ
22 EOM
23,31,34 ミラー
24 PD
25 変調光学系
26 集光レンズ
27 AOM
28 コリメータレンズ
29 フォーマッタ
30 ドライバ
32 移動光学テーブル系
33 BEX
35 対物レンズ
36 スピンドルモータ

Claims (4)

  1. 凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
    上記構造体は、深さ分布を有し、
    上記構造体は、頂部の傾きが緩やかで底部にかけて徐々に急峻な傾きの楕円錐形状または楕円錐台形状を有し、
    上記構造体は、上記基体表面において複数列の円弧状トラックをなすように設けられ、
    上記楕円錐形状または楕円錐台形状は、上記トラックの円周方向に長軸方向を有することを特徴とする反射防止用光学素子。
  2. 凸部または凹部からなる構造体が可視光の波長以下の微細ピッチで基体表面に多数設けられている反射防止用光学素子であって、
    上記構造体は、深さ分布を有し、
    上記構造体は、上記基体表面において複数列の円弧状トラックをなすように設けられ、
    上記円弧状トラックの円周方向における上記構造体の深さは、上記円弧状トラックの径方向における上記構造体の深さよりも小さいことを特徴とする反射防止用光学素子。
  3. 上記構造体は、隣接するトラック間において準六方格子パターンを構成することを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止用光学素子。
  4. 同一トラック内における上記構造体の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における上記構造体の配置ピッチP2よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止用光学素子。
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