JP4539374B2 - 複合ブレーキの協調制御装置 - Google Patents

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本発明は、回生制動装置と、液圧式や電動式などの摩擦制動装置の2種類のブレーキ装置を併設した複合ブレーキの協調制御装置、特に、摩擦制動の開始時における減速度変動を緩和し得るようにした複合ブレーキの協調制御装置に関するものである。
複合ブレーキとしては、モータ/ジェネレータにより車輪回転エネルギーを電力に変換して制動力を発生する回生制動装置と、ブレーキ液圧や電磁力により車輪の摩擦式ブレーキユニットを作動させる摩擦制動装置との組み合わせになる複合ブレーキ装置が代表的なものとして知られている。
かかる複合ブレーキの協調制御装置としては従来、例えば特許文献1に記載のごとく、
車両の運転状態や走行状態に応じて要求される目標制動トルクを回生制動と摩擦制動との組み合わせにより実現し、
通常はエネルギー回収率を高めるために、実現可能な可能最大回生制動トルクを使い切るような回生制動と摩擦制動との組み合わせとするが、車速の低下につれ回生制動による制動トルクの微少制御精度が低下するようになると、可能最大回生制動トルクを減少させて回生制動トルクを低下させると共にその分だけ摩擦制動トルクを増大させ、これにより全体的な制動トルクとしては目標値を維持し得るようにしたものがある。
左右前輪に対して回生制動装置を具え、前輪を回生制動と摩擦制動とにより制動し、左右後輪を摩擦制動のみにより制動するようにした複合ブレーキ付き車両において、車両の目標制動トルクがマスターシリンダ液圧Pmc(運転者の制動操作状態)に対し図21に実線で示すごときものである場合につき、上記複合ブレーキの協調制御を説明する。
マスターシリンダ液圧Pmcが低くて目標制動トルクが可能最大回生制動トルク以下の小さなものである間は、前輪に付設した回生制動装置による回生制動のみで車両の制動を行い、エネルギーの回収効率を高めて燃費の向上を図る。
マスターシリンダ液圧Pmcの上昇により目標制動トルクが可能最大回生制動トルクを越えて増加すると、回生制動のみ目標制動トルクを実現し得ないことから、回生制動に摩擦制動が付加されて車両の制動を行う。
つまり、先ず非回生輪である後輪の摩擦制動トルクを可能最大回生制動トルクに付加する協調制御により目標駆動トルクを実現する。
そして、マスターシリンダ液圧Pmcの更なる上昇により目標制動トルクが一層大きくなると、前後輪が同時にロックするような理想前後輪制動トルク配分を実現する要求から、回生輪である前輪の摩擦制動トルクをも可能最大回生制動トルクに付加する共に、その分、後輪の摩擦制動トルクを減ずる協調制御により目標駆動トルクを実現する。
このような制動トルク配分による協調制御が行われる場合、図22に示すように目標制動トルクTdcomが経時変化し、これとの関連で理想前後輪制動トルク配分とするのに必要な目標前輪制動トルクTdcomfが同図に示すようなものであり、実現可能な可能最大回生制動トルクTmmaxが同図に示すようなものである制動について述べると、
かかる制動中の瞬時t1に後輪摩擦制動が開始され、瞬時t2に前輪摩擦制動が開始され、瞬時t3に前輪摩擦制動が終了し、瞬時t4に後輪摩擦制動が終了し、瞬時t5に後輪摩擦制動が開始され、瞬時t6に前輪摩擦制動が開始されるというように、
ブレーキペダルを1回踏み込んだ一制動中に、摩擦制動ユニットを成すキャリパーとロータが接触・非接触を何回も繰り返すこととなる。
ところで、摩擦制動装置は回生制動装置に比べて応答遅れや、そのばらつきが大きく、これら装置を併用した複合ブレーキの協調制御による制動中には、摩擦制動が開始される時において車両の減速度変動を生じやすく、その傾向は、摩擦制動トルクが0の状態から摩擦制動を開始する場合において特に顕著となる。
それにもかかわらず上記のように、ブレーキペダルを1回踏み込んだ一制動中に、摩擦制動ユニットを成すキャリパーとロータが接触・非接触を何回も繰り返すのでは、摩擦制動が開始される度に生ずる車両の減速度変動が高い頻度で発生して車両の乗り心地を低下させるという問題がある。
一方で従来、例えば特許文献2に記載のごとく、制動中に繰り返されるキャリパー/ロータ間の開放/接触に起因する減速度変動を防止する技術として、制動中は常に所定の摩擦制動を行わせ続ける技術が提案された。
この技術は、図21および図22におけると同じ条件のもとでの制動トルク配分として示すと図23および図24に示すごときもので、回生制動のみによる制動を行っていた図24のハッチング領域において前輪および後輪の摩擦制動を継続的に行わせ、その分回生制動を制限して目標制動トルクTdcomに対し総制動トルクが過不足を生ずることのないようにすることを主旨とする。
特開2000−102108号公報 特開平11−048954号公報
しかし特許文献2に記載の従来技術においては、本来は回生制動のみを行う時にも制動中は常に所定の摩擦制動を行わせるため、車両の実際の総制動トルクが目標制動トルクTdcomに対し過不足を生ずることがないようにすることが必須であることを考慮すると、図24のハッチング領域において摩擦制動トルク分だけ回生制動トルクを制限する必要がある。
そのため、図24のハッチング領域において回生制動量が減少されることとなり、エネルギー回収効率の低下による燃費の悪化が懸念されるほか、制動操作の初期において摩擦制動のみにより目標制動トルクTdcomを実現することとなり、摩擦制動装置の応答遅れが回生制動装置のそれに比べ大きいことに起因して制動操作開始時の制動応答遅れが大きくなるという問題も懸念される。
更に、摩擦制動装置の応答遅れは回生制動装置のそれに比べてバラツキも大きいため、制動操作初期において回生制動のみによる制動に比べて減速度変動が発生しやすいという問題も避けられない。
本発明は、上記の問題がとりもなおさず、回生制動のみによる制動が要求されている間も常時摩擦制動を行わせることに起因するとの事実認識にもとづき、
摩擦制動の実行時期はこれを変更せず、その代わりに、摩擦制動の開始時おける制動トルクの変化を緩やかにすることで、前記した減速度変動に関する問題を解消し得るようにした複合ブレーキの協調制御装置を提供することを目的とする。
この目的のため、本発明による複合ブレーキの協調制御装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず前提となる複合ブレーキについて説明するに、これは、
車両の運転状態や走行状態に応じて決まる目標制動トルクを回生制動および摩擦制動の協働により実現するようにし、
車両の運転状態や走行状態に応じて決まる実現可能な可能最大回生制動トルクを回生制動トルクが越えることのないよう、前記目標制動トルクを回生制動トルク指令値と摩擦制動トルク指令値とに配分して、回生制動トルクおよび摩擦制動トルクをこれら指令値に基づき制御するようにしたものである。
本発明は、かかる車両の複合ブレーキに対し、
前記摩擦制動の開始時に摩擦制動開始車輪に係わる摩擦制動トルク指令値の変化率を制限する摩擦制動トルク指令値変化率制限手段と、
この変化率制限による摩擦制動トルク指令値の変化分が相殺されるよう、前記配分により決定した基本的な回生制動トルク指令値および/または摩擦制動開始車輪以外の他輪に係わる基本的な摩擦制動トルク指令値を変化させて、車両制動トルクの補償を行う制動トルク補償手段とを設けた構成に特徴づけられる。
かかる本願発明による複合ブレーキの協調制御装置によれば、
摩擦制動トルク指令値変化率制限手段が、摩擦制動の開始時に摩擦制動開始車輪に係わる摩擦制動トルク指令値の変化率を制限し、
制動トルク補償手段が、上記の変化率制限による摩擦制動トルク指令値の変化分が相殺されるよう、基本的な回生制動トルク指令値および/または摩擦制動開始車輪以外の他輪に係わる基本的な摩擦制動トルク指令値を変化させて車両制動トルクの補償を行うため、
摩擦制動の開始時に摩擦制動開始車輪の摩擦制動トルク配分が小さくされると共に、それを補うよう回生制動トルクや、摩擦制動開始車輪以外の既に制動中の他輪に係わる摩擦制動トルクが修正されることとなり、
前記したとおり大きな応答遅れやそのバラツキの大きさが問題となる摩擦制動開始車輪が摩擦制動トルク配分量が少なくなる分だけ、摩擦制動開始車輪の摩擦制動開始時における応答遅れやそのばらつきに起因した制動の応答遅れや減速度変動に関する問題を解消することができる。
しかも上記の作用効果を達成するのに、制動中常に摩擦制動を行わせる従来の手法を採用するのではなく、摩擦制動の実行時期はこれを変更せず、摩擦制動の開始時おける制動トルクの変化を緩やかにすることで達成するようにしたから、
回生制動が大きく制限されてエネルギー回収効率が低下(燃費が悪化)するという前記の問題や、減速度変動に関する前記の問題を生ずることなしに上記の作用効果を達成することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明のー実施例になる協調制御装置を具えた複合ブレーキの制御システム図で、本実施例においては複合ブレーキを、車輪1(図では、1個の駆動前輪のみを示す)に関連して設けられたホイールシリンダ2への液圧供給により制動力を発生する液圧ブレーキ装置(摩擦制動装置)と、駆動前輪1に歯車箱3を介して駆動結合された交流同期モータ4により車輪回転エネルギーを電力に変換する回生ブレーキ装置(回生制動装置)との組み合わせにより構成する。
かかる複合ブレーキにおいて、液圧ブレーキ装置(摩擦制動装置)と回生ブレーキ装置(回生制動装置)との協調制御は、交流同期モータ4により回生制動トルクを制御して主たる制動力を得る間に、ホイールシリンダ2へのブレーキ液圧を減圧制御することで回生エネルギーを効率的に回収することを旨とする。
先ず液圧ブレーキ装置を説明するに、5は運転者が希望する車両の制動力に応じて踏み込むブレーキペダルで、該ブレーキペダル5の踏力が油圧ブースタ6により倍力され、倍力された力でマスターシリンダ7の図示せざるピストンカップが押し込まれることによりマスターシリンダ7はブレーキペダル5の踏力に応じたマスターシリンダ液圧Pmcをブレーキ液圧配管8に出力するものとする。
なお、ブレーキ液圧配管8を図1では、1個の駆動前輪1に設けたホイールシリンダ2のみに接続しているが、図示せざる他の3輪(他方の駆動前輪、2個の従動後輪)に係わるホイールシリンダにも接続することは言うまでもない。
油圧ブースタ6およびマスターシリンダ7は共通なリザーバ9内のブレーキ液を作動媒体とする。
油圧ブースタ6はポンプ10を具え、このポンプはリザーバ9から吸入して吐出したブレーキ液をアキュムレータ11内に蓄圧し、アキュムレータ内圧を圧力スイッチ12によりシーケンス制御する。
油圧ブースタ6は、アキュムレータ11内の圧力を圧力源としてブレーキペダル5の踏力を倍力し、この倍力した踏力でマスターシリンダ7内のピストンカップを押し込み、マスターシリンダ7はリザーバ9からのブレーキ液をブレーキ配管8内に封じ込めてブレーキペダル踏力に対応したマスターシリンダ液圧Pmcを発生させ、これを元圧としてホイールシリンダ液圧Pwcをホイールシリンダ2に供給する。
ホイールシリンダ液圧Pwcは、アキュムレータ11のアキュムレータ内圧を用いて後述のごとくにフィードバック制御可能とし、これがためブレーキ配管8の途中に電磁切替弁13を挿置し、該電磁切替弁13よりもホイールシリンダ2の側においてブレーキ配管8に、ポンプ10の吐出回路から延在すると共に増圧弁14を挿置した増圧回路15、およびポンプ10の吸入回路から延在すると共に減圧弁16を挿置した減圧回路17をそれぞれ接続する。
電磁切替弁13は、常態でブレーキ配管8を開通させることによりマスターシリンダ液圧Pmcをホイールシリンダ2に向かわせ、ソレノイド13aのON時にブレーキ配管8を遮断すると共にマスターシリンダ7をストロークシミュレータ26に通じさせてホイールシリンダ2と同等の油圧負荷を与え、これによりブレーキペダル5に通常時と同じ操作フィーリングを与え続け得るようになす。
増圧弁14は、常態で増圧回路15を開通してアキュムレータ11の圧力によりホイールシリンダ液圧Pwcを増圧するが、ソレノイド14aのON時に増圧回路15を遮断してホイールシリンダ液圧Pwcの増圧を中止するものとし、
減圧弁16は、常態で減圧回路17を遮断しているが、ソレノイド16aのON時に減圧回路17を開通してホイールシリンダ液圧Pwcを減圧するものとする。
ここで増圧弁14および減圧弁16は、切替弁13がブレーキ配管8を開通している間、対応する増圧回路15および減圧回路17を遮断しておき、これによりホイールシリンダ液圧Pwcがマスターシリンダ液圧Pmcにより決定されるようにする。
また、増圧弁14または減圧弁16によるホイールシリンダ液圧Pwcの増減圧が行われる間は、切替弁13のONによりブレーキ配管8を遮断しておくことでマスターシリンダ液圧Pmcの影響を受けることなく、増圧弁14または減圧弁16によるホイールシリンダ液圧Pwcの増減圧を行い得るようにする。
切替弁13、増圧弁14および減圧弁16の制御は液圧ブレーキコントローラ18により行い、これがため当該コントローラ18には、運転者が要求する車両の制動力を表すマスターシリンダ液圧Pmcを検出する圧力センサ19からの信号と、液圧制動トルクの実際値を表すホイールシリンダ液圧Pwcを検出する圧力センサ20からの信号とを入力する。
左右駆動前輪1に歯車箱3を介して駆動結合された交流同期モータ4は、モータトルクコントローラ21からの3相PWM信号により直流・交流変換用電流制御回路(インバータ)22での交流・直流変換を介して制御され、モータ4による左右前輪1の駆動が必要な時は直流バッテリ23からの電力で車輪1を駆動し、車輪1の制動が必要な時は回生制動トルク制御により車両運動エネルギーをバッテリ23ヘ回収するものである。
液圧ブレーキコントローラ18およびモータトルクコントローラ21は、複合ブレーキ協調コントローラ24との間で通信を行いながら、該コントローラ24からの指令により対応する液圧制動装置および回生制動装置を後述するごとくに制御する。
モータトルクコントローラ21は、複合ブレーキ協調コントローラ24からの回生制動トルク指令値Tmcomに基づいてモータ4による回生制動トルクを制御し、また、左右前輪1の駆動要求時にはモータ4による車輪1の駆動トルク制御を行なう。
さらにモータトルクコントローラ21は、バッテリ23の充電状態や温度などで決まるモータ4に許容される許容最大回生制動トルクTmmax0を算出して複合ブレーキ協調コントローラ24ヘ対応する信号を送信する。
これがため複合ブレーキ協調コントローラ24には、液圧ブレーキコントローラ18を経由した圧力センサ19,20からのマスターシリンダ液圧Pmcおよびホイールシリンダ液圧Pwcに関する信号を入力するほか、車輪(左前輪)1の車輪速Vwflを検出する車輪速センサ25からの信号を入力し、さらに、右前輪(図示せず)の車輪速Vwfr、左後輪(図示せず)の車輪速Vwrl、右後輪(図示せず)の車輪速Vwrrに関する信号を入力する。
複合ブレーキ協調コントローラ24は、これら入力情報を基に図2に機能別ブロック線図および図3〜7にフローチャートで示すような処理により複合ブレーキの協調制御を行う。
図3は、10msecごとの定時割り込みにより繰り返し実行されるメインルーチンで、先ずステップS1において、マスターシリンダ液圧Pmcおよび車輪のホイールシリンダ液圧Pwcを算出する。
次のステップS2では、各車輪の車輪速Vwfl, Vwfr, Vwrl, Vwrrを計測してその平均値(平均車輪速)Vwを求めると共に、この平均車輪速Vwを次式の伝達関数Fbpf(s)で示されるバンドパスフィルタに通して(近似微分処理して)車輪減速度(車両減速度)αvを求める。
Fbpf(s)=s/{(1/ω)s+(2ζ/ω)s+1}・・・(1)
s:ラプラス演算子
ただし実際には、タスティン近似などで離散化して得られた漸化式を用いて算出する。
ステップS3では、モータトルクコントローラ21との間の高速通信受信バッファから、モータ4により達成可能な許容最大回生制動トルクTmmax0を読み込む。
この許容最大回生制動トルクTmmax0は、モータトルクコントローラ21がバッテリ23の充電率などに応じて決定する。
ステップS4では、マスターシリンダ液圧Pmcと、予めROMに記憶しておく車両諸元に応じた定数K1とを用いて、車両の目標減速度αdemを次式により算出する。
αdem=Pmc×K1・・・(2)
なお、ここでは減速度を正の値として取り扱うこととする。
なお車両目標減速度αdemは、マスターシリンダ液圧Pmcにより運転者が指令する物理量により決まるだけでなく、車間距離制御装置や、車速制御装置を搭載した車両においては、これら装置による自動ブレーキによる物理量に応じても決定し得ること勿論である。
図3のステップS5においては、図8のフィードフォワード補償器51を用いて目標減速度αdemを実現するのに必要な制動トルク指令値Tdff(制動トルクのフィードフォワード補償量)を以下により算出する。
つまり、先ず車両諸元により決まる定数K2を用いて目標減速度αdemを制動トルクに換算し、次いで、図8における規範モデル52の特性Fref(s)に、制御対象車両54の応答特性Pm(s)を一致させるためのフィードフォワード補償器(位相補償器)51の、次式で表される特性CFF(s)に上記目標減速度(αdem)対応の制動トルクを通して目標減速度αdem用の制動トルク指令値Tdff(フィードフォワード補償量)を求める。
なお実際には、目標減速度αdem用の制動トルク指令値Tdff(フィードフォワード補償量)も前述と同様に離散化して計算を行う。
CFF(s)=Fref(s)/Pm(s) ・・・(3)
=(Tp・s+1)/(Tr・s+1)・・・(4)
Tp:時定数
Tr:時定数
Pm:制御対象車両の車両モデル特性
(制動トルク指令値に対する車両減速度の特性)
次いでステップS6において、マスターシリンダ液圧Pmcが微少設定値以上か否かによりブレーキペダル操作が有ったか否かを判定し、ブレーキペダル操作が有る時はステップS7において以下のごとくに、目標減速度αdem用の制動トルク指令値Tdfb(フィードバック補償量)を求めると共に、目標減速度αdemを実現するのに必要な総制動トルク指令値Tdcomを求める。
本実施例においては減速度制御器を、図8に示すような「2自由度制御系」で構成し、前記したフィードフォワード補償器51および規範モデル52のほかにフィードバック補償器53を有するようなものとする。
制御の安定性や耐外乱性などの閉ループ性能は、フィードバック補償器53で実現され、目標減速度αdemに対する応答性は基本的には(モデル化誤差がない場合)フィードフォワード補償器51で実現される。
フィードバック補償量Tdfbの算出に当たっては先ず目標減速度αdemを、次式で表される特性Fref(s)を持った規範モデル52に通して規範モデル応答減速度αrefを求める。
Fref(s)=1/(Tr・s+1) ・・・(5)
更に図8に示すように、規範モデル応答減速度αrefと、制御対象車両54の実減速度αv(ステップS2参照)との間における減速度フィードバック偏差Δαを求める。
△α=αref−αv ・・・(6)
そしてこの減速度フィードバック偏差Δαを、次式で表される特性CFB(s)のフィードバック補償器53に通して制動トルクフィードバック補償量Tdfbを求める。
CFB(s)=(Kp・s+Ki)/s ・・・(7)
ただし本実施例では、この特性を基本的なPI制御器で実現することとし、制御定数Kp,Kiはゲイン余裕や位相余裕を考慮して決める。
また(5)式および(7)式は、前述と同様に離散化して計算を行う。
次に図8に示すように、前記した目標減速度αdem用の制動トルク指令値Tdff(フィードフォワード補償量)と、制動トルクフィードバック補償量Tdfbとを合算して、総制動トルク指令値Tdcomを求める。
図3のステップS7は、以上のようにして総制動トルク指令値Tdcomを求めるもので、従って図2における総制動トルク指令値演算手段31に対応する。
ステップS6でブレーキペダル操作がないと判定する間は、ステップS8において、制動トルクフィードバック補償量Tdfbと、これを求める時に用いる(7)式で表されるディジタルフィルタの内部変数とを初期化してPI制御器の積分項を初期化する。
図3における次のステップS9においては、ステップS2で求めた車輪速平均値(車速)Vwに基づき、ステップS3で求めた許容最大回生制動トルクTmmax0に制限を施して、実際に制動トルク配分に用いることが可能な可能最大回生制動トルクTmmaxを決定する。
この決定に際し本実施例では、図9に示すように設定した回生制動トルク制限係数Kvのマップをもとに車輪速平均値Vw(車速)から回生制動トルク制限係数Kvを検索し、
Tmmax=Tmmax0×Kv ・・・(8)
の演算により可能最大回生制動トルクTmmaxを求める。
従ってステップS9は、図2における可能最大回生制動トルク設定手段32に相当する。
なお本明細書中「可能最大回生制動トルク」と称するは、上記のようにして求めたTmmaxそのもののほかに、
アンチスキッド制御装置の作動時に回生制動と摩擦制動との協調が適切に行われるよう、上記のTmmaxを予め定めた法則により減じたものや、
制動システムのアクチュエータとか制御のバラツキによる影響を受けないように上記のTmmaxよりも若干小さく定めたものをも含むものとし、
諸般の事情に応じて上記のTmmaxを越えないよう任意に設定される可能最大回生制動トルクの全てを意味するものとする。
なお、回生制動トルク制限係数Kvを図9のように制限開始車速から車速低下につれて小さくし、制限終了車速未満で0にした理由は、低車速域でのクリープ制御性能や回生制動トルク制御性能を考慮して、これら車速域では回生制動を抑制する必要があるからである。
そしてステップS9においては更に、回生制動トルク制限係数Kvが1で、可能最大回生制動トルクTmmaxが許容最大回生制動トルクTmmax0に対し制限されない間は、このことを示すように最大回生制動トルク制限フラグfTMLMTを0にし、回生制動トルク制限係数Kvが1未満で、可能最大回生制動トルクTmmaxが許容最大回生制動トルクTmmax0に対し制限される間は、このことを示すように最大回生制動トルク制限フラグfTMLMTを1にして後述の制御に供するものとする。
次のステップS10においては、回生協調ブレーキ制御のために前記の総制動トルク指令値Tdcom(ステップS7)を、基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0と、基本的な液圧(摩擦)制動トルク指令値Tbcom0とに配分する。
従ってステップS10は、図2における液圧/回生制動トルク配分手段33に対応する。
図2では便宜上、基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0を液圧/回生制動トルク配分手段33の出力として示した。
なお、基本的な液圧(摩擦)制動トルク指令値Tbcom0は更に、左右前輪(駆動輪)1用の基本的な液圧制動トルク指令値Tbcom0fと、図示せざる後輪(従動輪)用の基本的な液圧制動トルク指令値Tbcom0rとに配分する。
本実施例では、回生ブレーキ用モータ4を駆動輪である前輪1のみに設定しているため、通常の制動力前後配分を崩さずにすむ場合の後記したモード1,2と、通常の制動力前後配分が崩れる場合の後記したモード3,4とが発生する。
先ず総制動トルク指令値Tdcomを、予め記憶した図10に例示するマップデータをもとに通常通りに前後配分して、通常時の前輪制動トルク指令値Tdcomfおよび後輪制動トルク指令値Tdcomrを求める。
通常の前後制動トルク配分は、制動中における前後輪荷重移動に伴う後輪ロック防止、車両挙動の安定性、制動距離の短縮などを考慮して決められた、回生制動中でない時の基準となる前後制動力配分特性のことである。
以下に示すとおり、下記条件(モード)ごとに基本的な前輪液圧制動トルク指令値Tbcom0fと、基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rと、基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0とを求めて回生協調ブレーキ制御に資する。
(モード4)
Tmmax≧(Tdcomf+Tdcomr)の場合:回生制動のみ
Tbcom0f=0
Tbcom0r=0
Tmcom0=Tdcomf+Tdcomr
(モード3)
Tdcomf+Tdcomr >Tmmax≧Tdcomfの場合:回生制動+後輪液圧制動
Tbcom0f=0
Tbcom0r=Tdcomf+Tdcomr−Tmmax
Tmcom0=Tmmax
(モード2)
Tdcomf>Tmmax≧微少設定値の場合:回生制動+前後輪液圧制動
Tbcom0f=Tdcomf−Tmmax
Tbcom0r=Tdcomr
Tmcom0=Tmmax
(モード1)
上記以外の場合:液圧制動のみ
Tbcom0f=Tdcomf
Tbcom0r=Tdcomr
Tmcom0=0
次のステップS11では、上記のように求めた基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0および前後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0f,Tbcom0rを、図4〜図7につき後述する処理により可能最大回生制動トルクTmmaxを用いて、本発明の目的が達成されるよう補正することにより最終的な回生制動トルク指令値Tmcomおよび前後輪液圧制動トルク指令値Tbcomf,Tbcomrを求める。
従ってステップS11は、図2における制動トルク指令値補正手段34に対応する。
次のステップS12においては、ステップS11で求める前後輪液圧制動トルク指令値Tbcomf,Tbcomrをもとに、予めROMに記憶しておいた車両諸元による定数K3を用いて、前後輪液圧制動トルク指令値Tbcomf,Tbcomrに対応した前後輪のホイールシリンダ液圧指令値Pbcomf,Pbcomrを次式により算出する。
Pbcomf=(Tbcomf×K3)
Pbcomr=(Tbcomr×K3)
図2では便宜上、これら前後輪のホイールシリンダ液圧指令値Pbcomf,Pbcomrを制動トルク指令値補正手段34の出力として示した。
最後のステップS13において図1の複合ブレーキコントローラ24は、図2にも示すが、ステップS11で求める回生制動トルク指令値Tmcom、およびステップS12で上記のごとくに求めた前後輪ホイールシリンダ液圧指令値Pbcomf,Pbcomrをそれぞれ、モータトルクコントローラ21および液圧ブレーキコントローラ18に向けて通信する。
モータトルクコントローラ21はインバータ22を介し回生制動トルク指令値Tmcomが達成されるようモータ4を制御し、液圧ブレーキコントローラ18は電磁弁13,14,16の制御を介し前輪ホイールシリンダ2への液圧を指令値Pbcomfになるよう制御すると共に、後輪ホイールシリンダ液圧も同様にして指令値Pbcomrになるよう制御する。
以下、図3のステップS11で本発明の目的が達成されるよう基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0および前後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0f,Tbcom0rを補正して、回生制動トルク指令値Tmcomおよび前後輪液圧制動トルク指令値Tbcomf,Tbcomrを求める処理を、図4〜図7により詳述する。
先ず図4のステップS111において、前記した最大回生制動制限フラグfTMLMT(図3のステップS9参照)が1か否かにより、ステップS9での前記した最大回生制動の制限が行われているかかをチェックする。
ステップS111でfTMLMT=1でないと判定する最大回生制動の非制限中は、ステップS112で、本発明が狙いとする後輪の予備増圧が行われる前か、行われているか、完了しているかを、後輪第1予備増圧モードRPREMDlのチェックにより判定する。
ここで後輪第1予備増圧モードRPREMDlは後述するところから明らかなように、後輪の予備増圧が行われる前は0にされ、後輪の予備増圧が行われている間は1にされ、後輪の予備増圧が完了したら2にされるものとする。
ステップS112で後輪第1予備増圧モードRPREMDlが2でないと判定する後輪予備増圧中、または後輪予備増圧前は、ステップS113において、前記基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0(ステップS10)と、可能最大回生制動トルクTmmax(ステップS9)との差分である余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が設定値Tm1未満の正値か否かにより(以下では、制動トルクを負値として取り扱う)、後輪予備増圧をすべき時期か否かを判定する。
この時期は、図21と同じ条件での制動トルク配分を示す図14の瞬時t1〜t2中を意味し、この瞬時t1〜t2間は、ステップS114において、後輪予備増圧が開始されたことを示すように後輪第1予備増圧モードRPREMDlを1にする。
上記の余剰回生制動トルクに関する設定値Tm1は、後輪摩擦制動装置の諸元値を用いて、運転者が体感できない減速度変動幅の最大値をトルク換算した値である。
なお、運転者が体感可能な許容減速度変動幅は車両減速度の大きさにより図11のごとくに変化するものであり、先ず車両減速度から許容減速度変動幅を求め、これをトルク換算して余剰回生制動トルクに関する設定値Tm1は決定する。
次のステップS115においては、回生制動トルク指令値Tmcomに対し後輪予備増圧によると同等の制動トルク分だけ上昇制限を施し、回生制動トルク指令値Tmcomを図14の瞬時t1〜t2間における実線で示すごとく緩やかに上昇させる。
実際には、1回当たりの後輪予備増圧による制動トルク変化幅を△Tbrとすると、次式にて回生制動トルク指令値Tmcomを決定する。
Tmcom=Tmcom(前回値)+△Tbr
また、1回当たりの後輪予備増圧による制動トルク変化幅△Tbrは次式により求められる。
△Tbr=Kbr×△Tbr0
ここで△Tbr0は、1回当たりの後輪予備増圧による制動トルク変化幅△Tbrの基準値であり、摩擦制動装置が追従可能な制動トルク変化幅とする。
またKbrは、後輪予備増圧制限係数(0≦Kbr≦1)であり、例えば図12に実線で示すような予定のマップをもとに、基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0と最大回生制動トルクTmmaxとの差分である余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)から検索により決定する。
なお図12の実線では、余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が設定値Tm1の時を境としステップ状に後輪予備増圧制限係数Kbrを0と1との間で切り替えているが、後輪予備増圧制限係数Kbrは破線で示すように摩擦制動装置の応答特性などに応じ調整してもよい。
いずれにしても後輪予備増圧制限係数Kbrは、余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が設定値Tm1以上である間0となって△Tbr=0により後輪予備増圧を行わないようにし、余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が設定値Tm1未満である時、余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が小さくなるにつれ1に向け増大して1回当たりの後輪予備増圧による制動トルク変化幅△Tbrを基準値△Tbr0へ向けて増大させるものとする。
次のステップS116においては、ステップS115で上記のごとくに求めた回生制動トルク指令値Tmcomが図14の瞬時t2におけるように、図3のステップS10で配分して求めた基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0に達したか否かにより、後輪予備増圧を完了させてもよいか否かを判定する。
ステップS116で回生制動トルク指令値Tmcomが基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0に達する前と判定する間、つまり、図14の瞬時t2よりも前で後輪予備増圧を継続すべきと判定する間は、ステップS117をスキップして制御をそのまま後輪予備増圧ステップS118へ進め、ステップS116で回生制動トルク指令値Tmcomが基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0に達した後、つまり、図14の瞬時t2に至って後輪予備増圧を完了させてもよいと判定した後は、制御をステップS117を経てステップS118へ進める。
ステップS117においては、回生制動トルク指令値Tmcomを基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0と同じ値にして回生制動トルク指令値Tmcomを図14の瞬時t2以後の実線で示すごとくに設定すると共に後輪予備増圧中を示すように後輪第1予備増圧モードRPREMD1を2にセットする。
ステップS118においては、前輪液圧制動トルク指令値Tbcomfを、図3のステップS10で配分した基本的な前輪液圧制動トルク指令値Tbcom0fと同じ値にすると共に、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを、図3のステップS10で配分した基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rおよび基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0と、回生制動トルク指令値Tmcomとに基づく次式
Tbcomr=Tbcom0r+(Tmcom0−Tmcom)
により定めて後輪予備増圧を行わせる。
この式により求めた後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrは、図14の瞬時t1〜t2間において実線(ステップS115で求めた回生制動トルク指令値Tmcom)および一点鎖線間の差値を表し、後輪液圧(摩擦)制動の開始時に後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrの変化率を制限するものである。
従ってステップS118は、本発明における摩擦制動トルク指令値変化率制限手段に相当する。
また、ステップS115は前記したように、回生制動トルク指令値Tmcomに対しステップS118での後輪予備増圧によると同等の制動トルク分だけ上昇制限を施し、回生制動トルク指令値Tmcomを図14の瞬時t1〜t2間における実線で示すごとく緩やかに上昇させるもので、本発明における制動トルク補償手段に相当する。
以上のようにステップS111〜ステップS118での処理を行った後は、制御を図3のステップS112に戻す。
ステップS113で余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が設定値Tm1以上であったり負値であると判定する、図14中の瞬時t1以前または瞬時t2以後の後輪予備増圧不要時は、制御をステップS119に進めて後輪第1予備増圧モードRPREMDlが1か否かにより、前回後輪予備増圧が行われていたか否かをチェックする。
後輪予備増圧中だった場合は、制御をステップS115以後に進めて前記の後輪予備増圧を継続させる。
ステップS119で後輪予備増圧中でないと判定する後輪予備増圧開始前や、ステップS112で後輪第1予備増圧モードRPREMDlが2であると判定する後輪予備増圧完了後であれば、制御を図5のステップS1191に進める。
ステップS1191では、図3のステップS10で配分した基本的な後輪摩擦制動トルクTbcom0rが、本発明の目的を達成するために行う前輪予備増圧による1回当たりの制動トルク増大量△Tbf以下(基本的な後輪液圧制動トルクが、前輪予備増圧による制動トルク増大量△Tbf分だけ低下させ得る大きさ)か否かを判定する。
ここで、1回当たりの前輪予備増圧による制動トルク変化幅△Tbfは次式により求められる。
△Tbf=Kbf×△Tbf0
なお△Tbf0は、1回当たりの前輪予備増圧による制動トルク変化幅△Tbfの基準値であり、摩擦制動装置が追従可能な制動トルク変化幅とする。
またKbfは、前輪予備増圧制限係数(0≦Kbf≦1)であり、例えば図13に実線で示すような予定のマップをもとに、基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rと理想前後輪制動力配分(図10)に基づく目標後輪制動トルクTdcomrとの差分である後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)から検索により決定する。
なお図13の実線では、後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)が設定値Tb1の時を境としステップ状に前輪予備増圧制限係数Kbfを0と1との間で切り替えているが、前輪予備増圧制限係数Kbfは破線で示すように摩擦制動装置の応答特性などに応じ調整してもよい。
いずれにしても前輪予備増圧制限係数Kbfは、後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)が設定値Tb1以上である間0となって△Tbf=0により前輪予備増圧を行わないようにし、後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)が設定値Tb1未満である時、後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)が小さくなるにつれ1に向け増大して1回当たりの前輪予備増圧による制動トルク変化幅△Tbfを基準値△Tbf0へ向けて増大させるものとする。
なお後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)に関する設定値Tb1は、摩擦制動装置の諸元値を用いて運転者が体感できない減速度変化幅の最大値をトルク換算したものである。
ところで、運転者が体感可能な許容減速度変動幅は車両減速度の大きさにより図11のごとくに変化するものであり、先ず車両減速度から許容減速度変動幅を求め、これをトルク換算して後輪制動トルク不足量に関する設定値Tb1は決定する。
Tbcom0r≦△Tbfであれば、前輪予備増圧を行っても、これによる前輪制動トルクの増大を後輪液圧の低下により補償し得るが、Tbcom0r>△Tbfであれば、前輪予備増圧を行った時の制動トルク増大を後輪液圧の低下により補償し得なくて前輪予備増圧を行うべきでないから、
ステップS1199において、回生制動トルク指令値Tmcom、前輪液圧制動トルク指令値Tbcomf、および後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrにそれぞれ、図3のステップS10で配分した基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0、前輪液圧制動トルク指令値Tbcom0f、および後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rと同じ値を設定し、制御を図3のステップS12に戻す。
ステップS1191でTbcom0r≦△Tbfと判定する前輪予備増圧可能時は、ステップS1193〜ステップS1198において、本発明が狙いとする以下のような前輪予備増圧を行う。
先ずステップS1192において、前輪の予備増圧が行われる前か、行われているか、完了しているかを、前輪第1予備増圧モードFPREMDlのチェックにより判定する。
ここで前輪第1予備増圧モードFPREMDlは後述するところから明らかなように、前輪の予備増圧が行われる前は0にされ、前輪の予備増圧が行われている間は1にされ、前輪の予備増圧が完了したら2にされるものとする。
ステップS1192で前輪第1予備増圧モードFPREMDlが2でないと判定する前輪予備増圧中、または前輪予備増圧前は、ステップS1193において、前記基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0r(ステップS10)と、理想前後輪制動力配分に基づく目標後輪制動トルクTdcomr(図10)との差分である後輪制動トルク不足量(Tbdom0r−Tdcomr)が設定値Tb1未満の正値か否かにより、前輪予備増圧をすべき時期か否かを判定する。
この時期は、図21と同じ条件での制動トルク配分を示す図14の瞬時t3〜t4中を意味し、この瞬時t3〜t4間は、ステップS1194において、前輪予備増圧が開始されたことを示すように前輪第1予備増圧モードFPREMDlを1にする。
ステップS1194においては更に、回生制動トルク指令値Tmcomに図3のステップS10で配分して求めた基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0を設定すると共に、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrに対し前輪予備増圧によると同等の制動トルク分だけ上昇制限を施し、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを図14の瞬時t3〜t4間における二点鎖線で示すごとく緩やかに上昇させる。
実際には、1回当たりの前輪予備増圧による制動トルク変化幅を△Tbfとすると、次式にて後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを決定する。
Tbcomr=TBcomr(前回値)+△Tbf
次のステップS1195においては、ステップS1194で上記のごとくに求めた後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrが、図14の瞬時t4におけるように図3のステップS10で配分して求めた基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rに達したか否かにより、前輪予備増圧を完了させてもよいか否かを判定する。
ステップS1195で後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrが基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rに達する前と判定する間、つまり、図14の瞬時t4よりも前で前輪予備増圧を継続すべきと判定する間は、ステップS1196をスキップして制御をそのまま前輪予備増圧ステップS1197へ進め、ステップS1195で後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrが基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rに達した後、つまり、図14の瞬時t4に至って前輪予備増圧を完了させてもよいと判定した後は、制御をステップS1196を経てステップS1197へ進める。
ステップS1196においては、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを基本的な後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rと同じ値にして後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを図14の瞬時t4以後の一点鎖線および二点鎖線間の値として示すごとくに設定すると共に前輪予備増圧中を示すように前輪第1予備増圧モードFPREMD1を2にセットする。
ステップS1197においては、前輪液圧制動トルク指令値Tbcomfを、図3のステップS10で配分した基本的な前輪液圧制動トルク指令値Tbcom0fおよび後輪液圧制動トルク指令値Tbcom0rと、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrとに基づく次式
Tbcomf=Tbcom0f+(Tbcom0r−Tbcomr)
により定めて前輪予備増圧を行わせる。
この式により求めた前輪液圧制動トルク指令値Tbcomfは、図14の瞬時t3〜t4間において実線(ステップS1194で設定した回生制動トルク指令値Tmcom)および二点鎖線間の差値を表し、前輪液圧(摩擦)制動の開始時に前輪液圧制動トルク指令値Tbcomfの変化率を制限するものである。
従ってステップS1197は、本発明における摩擦制動トルク指令値変化率制限手段に相当する。
また、ステップS1194は前記したように、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrに対しステップS1197での前輪予備増圧によると同等の制動トルク分だけ上昇制限を施し、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを図14の瞬時t3〜t4間における一点鎖線および二点鎖線間の間隔として示すごとく緩やかに上昇させるもので、本発明における制動トルク補償手段に相当する。
以上のようにステップS1191〜ステップS1197での処理を行った後は、制御を図3のステップS112に戻す。
ステップS1193で後輪制動トルク不足量(Tbcom0r−Tdcomr)が設定値Tb1以上であったり負値であると判定する、図14中の瞬時t3以前または瞬時t4以後の前輪予備増圧不要時は、制御をステップS1198に進めて前輪第1予備増圧モードFPREMDlが1か否かにより、前回前輪予備増圧が行われていたか否かをチェックする。
前輪予備増圧中だった場合は、制御をステップS1194以後に進めて前記の前輪予備増圧を継続させる。
ステップS1198で前輪予備増圧中でないと判定する後輪予備増圧開始前や、ステップS1192で前輪第1予備増圧モードFPREMDlが2であると判定する前輪予備増圧完了後であれば、制御を図3のステップS12に戻す。
図4および図5につき上述した処理は、図4のステップS111で最大回生制動制限フラグfTMLMT(図3のステップS9)が0と判定する場合(図3のステップS9での最大回生制動の制限が行われていない場合)の後輪予備増圧および前輪予備増圧処理であるが、
図4のステップS111で最大回生制動制限フラグfTMLMT=1と判定する場合(最大回生制動の制限が行われている場合)は、後輪予備増圧および前輪予備増圧処理を図6および図7に示すように行う。
図6の後輪予備増圧処理は、図4の後輪予備増圧処理と同様なもので、図4におけるステップS112〜ステップS119がそれぞれ図6におけるステップS1111〜ステップS1118に対応し、ステップS112、ステップS114、ステップS117およびステップS119における後輪第1予備増圧モードRPREMD1を、ステップS1111、ステップS1113、ステップS1116およびステップS1118においては後輪第2予備増圧モードRPREMD2と読み替える点が異なるのみであるため、重複説明を避けるため図6の説明をここでは省略する。
また図7の前輪予備増圧処理は、図5の前輪予備増圧処理と同様なもので、図5におけるステップS1191〜ステップS1199がそれぞれ図7におけるステップS11181〜ステップS11189に対応し、ステップS1192、ステップS1194、ステップS1196およびステップS1198における前輪第1予備増圧モードFPREMD1を、ステップS11182、ステップS11184、ステップS11186およびステップS11188においては前輪第2予備増圧モードFPREMD2と読み替える点が異なるのみであるため、重複説明を避けるため図7の説明をここでは省略する。
ところで本実施例になる複合ブレーキの協調制御装置によれば、後輪(非回生輪)の液圧(摩擦)制動開始時は図14の瞬時t1〜t2間におけるごとく後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrの変化率を制限し、前輪(回生輪)の液圧(摩擦)制動開始時は図14の瞬時t3〜t4間におけるごとく前輪液圧制動トルク指令値Tbcomfの変化率を制限し、
かかる液圧制動トルク指令値TbcomrまたはTbcomfの変化率制限による摩擦制動トルクの変化分が相殺されるよう、基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0および/または摩擦制動開始車輪以外の他輪に係わる基本的な摩擦制動トルク指令値Tbcom0fまたはTbcom0rを変化させて車両制動トルクの補償を行うため、
摩擦制動の開始時に摩擦制動開始車輪の摩擦制動トルク配分が小さくされると共に、それを補うよう回生制動トルクや、摩擦制動開始車輪以外の既に制動中の他輪に係わる摩擦制動トルクが修正されることとなり、
大きな応答遅れやそのバラツキの大きさが問題となる摩擦制動開始車輪が摩擦制動トルク配分量が少なくなる分だけ、摩擦制動開始車輪の摩擦制動開始時における応答遅れやそのばらつきに起因した制動の応答遅れや減速度変動に関する問題を解消することができる。
しかも上記の作用効果を達成するのに、制動中常に摩擦制動を行わせる従来の手法を採用するのではなく、摩擦制動の実行時期はこれを変更せず、摩擦制動の開始時おける制動トルクの変化を緩やかにすることで達成するようにしたから、
回生制動が大きく制限されてエネルギー回収効率が低下(燃費が悪化)するという前記の問題や、減速度変動に関する前記の問題を生ずることなしに上記の作用効果を達成することができる。
上記の作用効果を、図22と同じ条件での動作タイムチャートを示す図15により詳述するに、制動操作開始時t0から瞬時t1までの期間Aにおいては、回生制動のみにより目標制動トルクTdcomを実現可能であるから車両は回生制動トルク指令値Tmcomのみにより制動され、前後輪の摩擦制動トルク指令値Tbcomf,Tbcomrは0である。
目標制動トルクTdcomが図示のように増大するブレーキペダルの踏み増し操作につれ、回生制動トルク指令値Tmcomが可能最大回生トルクTmmaxに近づくが、可能最大回生トルクTmmaxと回生制動トルク指令値Tmcom(この領域では基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0に等しい)との差(Tmcom0−Tmmax)が設定値Tm1よりも小さくなる瞬時t1から期間Bにおいて、回生制動トルク指令値Tmcomが上昇を後輪予備増圧による制動トルク増大分だけ制限され、この制動トルク増大分だけ後輪の摩擦制動を前記の予備増圧により行わせる。
かかる後輪摩擦制動の開始時における後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrの上昇制限ΔTbrにより、また、これに伴う制動トルク変化ΔTbrを回生制動トルク指令値Tmcomの修正で補償することにより、この制限および補償を行わない場合の動作タイムチャートを示す図16(a)と比較して示す同図(b)からも明らかなように、
大きな応答遅れやそのバラツキの大きさが問題となる摩擦制動開始車輪(後輪)が摩擦制動トルク配分量を少なくされる分だけ、摩擦制動開始車輪(後輪)の摩擦制動開始時における応答遅れやそのばらつきに起因した制動の応答遅れや減速度変動に関する問題を解消することができる。
更に回生制動トルク指令値Tmcomの制限量を、ステップS115におけるように摩擦制動装置が追従可能な後輪予備増圧による制動トルク変化幅基準値△Tbr0を最大値としてこれに係数Kbr(図12参照)を乗じた値とするため、摩擦制動装置の応答遅れを小さく抑えることが可能である。
また、回生制動トルク指令値Tmcomと可能最大回生制動トルクTmmaxとの間における回生制動トルク偏差が制動状態に応じた設定値Tm1よりも小さくなった時から、摩擦制動開始車輪(後輪)が摩擦制動トルクを発生し始めるよう当該車輪の摩擦制動トルク指令値TbcomrをΔTbrの変化率制限下に立ち上がらせ、この摩擦制動トルク指令値Tbcomrが基本的な摩擦制動トルク指令値Tbcom0rとなったとき以後、摩擦制動開始車輪(後輪)の摩擦制動トルク指令値Tbcomrを基本的な摩擦制動トルク指令値Tbcom0rとなすようにし、
上記変化率制限下に立ち上がっている摩擦制動開始車輪(後輪)の摩擦制動トルク指令値相当分ΔTbrだけ、基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0を修正するようにしたから、
摩擦制動装置の応答遅れが発生し易い領域や、この応答遅れが大きくばらつく領域で、後輪摩擦制動への配分自体が少なくなることとなり、応答遅れが発生しても減速度へ及ぼす影響を小さくすることが可能である。
上記のような制御に寄らず、図17(a)のごとく回生制動トルク指令値Tmcomが可能最大回生制動トルク指令値Tmmaxに至ってからの期間Δt1において摩擦制動開始車輪(後輪)の摩擦制動トルク指令値Tbcomrの上昇制限を行うと共にこれによる制動トルク変化を補償する回生制動トルク指令値Tmcomの修正を行った場合の動作タイムチャートと比較して示す同図(b)により上記の作用効果を以下に詳述する。
回生制動トルクを優先的に使用するよう図17(a)のごとく制動トルクの配分を行った場合、要求制動トルクTdcomが可能最大回生制動トルクTmmaxを上回る際に、両者間の不足分(Tdcom−Tmmax)を摩擦制動にて実現する必要がある。
この場合、通常の配分では、摩擦制動装置の応答遅れや、その大きなバラツキに関係なく摩擦制動への配分が行われるため、車両の減速度変動が発生しやすい。
また上記のように回生制動トルクを既に使用した後に、摩擦制動を開始する瞬時からの期間Δt1において摩擦制動開始車輪(後輪)の摩擦制動トルク指令値Tbcomrの上昇制限を行うと共にこれによる制動トルク変化を補償する回生制動トルク指令値Tmcomの修正を行った場合、回生制動トルク指令値Tmcomが既に可能最大値Tmmaxとなっていて増加させることはできないため、図17(a)の一点差線丸枠部に示すように実現すべき摩擦制動が制限されてしまい、要求制動トルクを正確に精度よく実現することができない。
これに対し本実施例においては図17(a)に示すごとく、回生制動トルク指令値Tmcomと可能最大回生制動トルクTmmaxとの間における回生制動トルク偏差が制動状態に応じた設定値Tm1よりも小さくなった時(要求制動トルクが最大回生制動トルクとなる以前)からの期間Δt2において、摩擦制動開始車輪(後輪)が摩擦制動トルクを発生し始めるよう当該車輪の摩擦制動トルク指令値TbcomrをΔTbrの変化率制限下に立ち上がらせると共にこれによる制動トルク変化を補償する回生制動トルク指令値Tmcomの修正を行うことから、
図17(b)の一点差線丸枠部に示すように摩擦制動装置の応答遅れが発生し易い領域Δt2や、この応答遅れが大きくばらつく領域Δt2で、後輪摩擦制動への配分自体が少なくなることとなり、回生制動トルク指令値Tmcomが可能最大値Tmmax未満で増加可能なこともあって、応答遅れが発生しても要求制動トルクを精度よく実現でき、減速度変動を低減することができる。
また、ステップS115やステップS1114において後輪予備増圧によるトルク変化幅△Tbrを決定する際に用いる後輪予備増圧制限係数Kbrを図12に例示するごとくに定めたから、
可能最大回生制動トルクTmmaxと基本的な回生制動トルク指令値Tmcom0との偏差、つまり、余剰回生制動トルク(Tmcom0−Tmmax)が大きいほど、非回生輪(後輪)摩擦制動トルク指令値Tbcomrを小さくすることとなって、
後輪摩擦制動装置への制動トルク配分を図18に実線で示すものから波線で示すものへと変化させて更に徐々に行うことが可能となり、摩擦制動開始時の減速度変動をより低減することができると共に、回生制動トルクの制限量を図18のハッチング領域分だけ一層少なくし得てエネルギー回収率を高めることができる。
制動操作力の増大により目標制動トルクTdcomが図15の期間B以後さらに大きくなると、後輪制動トルク不足量(Tbcom0r−Tbcomr)が設定値Tb1よりも小さくなる瞬時t3から期間Cにおいて、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrを前輪予備増圧による制動トルク増大分だけ上昇制限し、この制動トルク増大分だけ前輪を前記の予備増圧(変化率制限)により行わせる。
これにより図15の瞬時t4において回生制動トルク指令値Tmcomおよび前輪摩擦制動トルク指令値Tbcomfの和値である前輪制動トルクと、後輪摩擦制動トルク指令値Tbcomrとの比率が理想前後輪制動力配分に達するが、この期間Cにおいても前記したと同様の作用効果を達成することができる。
ところで前輪の予備増圧(変化率制限)を図19(a)の丸枠部に示すごとく、理想前後輪制動力配分に達した瞬時t3より開始させると、前輪(回生輪)摩擦制動への配分を開始してから実際に摩擦制動装置が機能するまでに応答遅れがあることから、前輪摩擦制動の変化率を制限する必要がなくなるタイミングまでは依然として前輪(回生輪)制動トルク過多配分状態であり、その後、前後輪制動力理想配分に戻すまで前輪制動トルク過多配分状態が保持されるという問題がある。
しかし本実施例によれば、図15の期間Cにおけるように、そして、図19(b)の丸枠部に示すように、後輪制動トルク不足量(Tbcom0r−Tbcomr)が設定値Tb1よりも小さくなる瞬時t3より、後輪液圧制動トルク指令値Tbcomrの上昇を前輪予備増圧による制動トルク増大分ΔTbfだけ制限すると共にこの制動トルク増大分ΔTbfだけ前輪を予備増圧(変化率制限)し、更に、前輪予備増圧による制動トルク増大分ΔTbfを摩擦制動装置の応答特性に応じて設定したから、
前輪摩擦制動開始時における摩擦制動装置の応答遅れや、その大きなバラツキによる減速度変動を、図19(b)から明らかなように低減することができる。
また、かように機能する本実施例によれば、図19(b)の丸枠部に示すように、前輪摩擦制動装置が実際に応答を開始するまでの応答遅れにもかかわらず、変化率制限の必要性がなくなる瞬時t4において前後輪制動トルク配分を理想配分に戻すことができ、前輪(回生輪)制動トルク過多配分となる時間を短くすることができる。
更に、ステップS1194およびステップS11184において前輪予備増圧によるトルク変動幅△Tbfを決定する時に用いる前輪予備増圧制限係数Kbfを図13に示すごとく、基本的な後輪摩擦制動トルク指令値Tbcom0rと、理想前後輪制動トルク配分となるよう決定された目標後輪制動トルク指令値Tdcomrとの偏差に応じて決定するから、
回生制限線を図20に波線で示すものから実線で示すものへ変化させて前輪摩擦制動への制動トルク配分を更に徐々に行うことができ、前輪摩擦制動開始時の減速度変動をより低減することが可能である。
また回生協調を行う複合ブレーキでは、低車速域においてクリープ制御への移行や回生制動トルクの制御性能などの観点から、車速の低下に伴い回生制動を制限してこれから摩擦制動へ移行する必要がある。
このように回生制動トルクが制限される場合、図15の回生制動トルク制限領域におけるように、制動トルクの配分状態が回生制動のみ(t5〜t6)から、回生制動と後輪摩擦制動(t7〜t8)、回生制動と前後輪摩擦制動(t8〜t9)、そして摩擦制動のみ(t9以後)へと変化する。
この変化において、瞬時t6に後輪摩擦制動の開始が発生し、瞬時t8に前輪摩擦制動の開始が発生するが、これら摩擦制動開始時も、図6および図7に示す制御により、瞬時t6からのD期間では後輪摩擦制動トルク指令値Tbcomrの経時変化として示すような後輪の予備増圧を介し、また、瞬時t8からのE期間では前輪摩擦制動トルク指令値Tbcomfの経時変化として示すような前輪の予備増圧を介し、前述したと同様な作用効果を達成することができる。
本発明の一実施例になる協調制御装置を具えた複合ブレーキの制御システム図である。 同複合ブレーキの協調制御装置における複合ブレーキ協調コントローラが実行する制御内容を示す機能別ブロック線図である。 同複合ブレーキ協調コントローラが実行する協調制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。 同協調制御プログラム内における回生制動トルク指令値および摩擦制動トルク指令値の算出処理に関したサブルーチンの一部を示すフローチャートである。 同協調制御プログラム内における回生制動トルク指令値および摩擦制動トルク指令値の算出処理に関したサブルーチンの他の一部を示すフローチャートである。 同協調制御プログラム内における回生制動トルク指令値および摩擦制動トルク指令値の算出処理に関したサブルーチンの更に他の一部を示すフローチャートである。 同協調制御プログラム内における回生制動トルク指令値および摩擦制動トルク指令値の算出処理に関したサブルーチンの更に別の一部を示すフローチャートである。 車両の減速度制御器を例示するブロック線図である。 回生制動トルクの制限係数の変化特性を示す線図である。 通常の制動トルク理想前後配分特性を例示する特性図である。 許容減速度変動幅の変化特性を例示する線図である。 後輪予備増圧制限係数の変化特性を示す線図である。 前輪予備増圧制限係数の変化特性を示す線図である。 図4および図5の制御プログラムにより回生制動トルク指令値および摩擦制動トルク指令値を求めた場合の、マスターシリンダ液圧に対する制動トルク配分変化を示す特性線図である。 図3の制御プログラムによる協調制御の動作タイムチャートである。 図3の制御プログラムによる協調制御を行った場合の減速度変化の低減効果を示す動作タイムチャートで、 (a)は、従来の協調制御を行った場合の動作タイムチャート、 (b)は、図3の制御プログラムによる協調制御を行った場合の動作タイムチャートである。 摩擦制動開始車輪の予備増圧を行うタイミングが、図3の制御プログラムによる協調制御を行った場合ものである時と、これとは異なるものである時とで比較して示す動作タイムチャートで、 (a)は、従来のタイミングで予備増圧を行った場合の動作タイムチャート、 (b)は、図3の制御プログラムによるタイミングで予備増圧を行った場合の動作タイムチャートである。 図3の制御プログラムによる協調制御を行った場合の緩やかな摩擦制動トルク変化を示す動作タイムチャートである。 摩擦制動開始車輪の予備増圧を行うタイミングが、図3の制御プログラムによる協調制御を行った場合ものである時と、これとは異なるものである時とで比較して示す動作タイムチャートで、 (a)は、従来のタイミングで予備増圧を行った場合の動作タイムチャート、 (b)は、図3の制御プログラムによるタイミングで予備増圧を行った場合の動作タイムチャートである。 図3の制御プログラムによる協調制御を行った場合の緩やかな摩擦制動トルク変化を示す動作タイムチャートである。 従来の協調制御を行った場合のマスターシリンダ液圧に対する制動トルク配分の変化状況を示す特性線図である。 図21の協調制御を行った場合の制動トルク配分の時系列変化を示す動作タイムチャートである。 従来の別の協調制御を行った場合のマスターシリンダ液圧に対する制動トルク配分の変化状況を示す特性線図である。 図23の協調制御を行った場合の制動トルク配分の時系列変化を示す動作タイムチャートである。
符号の説明
1 車輪
2 ホイールシリンダ
3 歯車箱
4 交流同期モータ(回生ブレーキ装置)
5 ブレーキペダル
6 油圧ブースタ
7 マスターシリンダ
8 ブレーキ液圧配管
9 リザーバ
10 ポンプ
11 アキュムレータ
12 圧力スイッチ
13 電磁切替弁
14 増圧弁
15 増圧回路
16 減圧弁
17 減圧回路
18 液圧ブレーキコントローラ
19 圧力センサ
20 圧力センサ
21 モータトルクコントローラ
22 直流・交流変換用電流制御回路(インバータ)
23 直流バッテリ
24 複合ブレーキ協調コントローラ
25 車輪速センサ
26 ストロークシミュレータ
31 総制動トルク指令値演算手段
32 可能最大回生制動トルク設定手段
33 液圧/回生制動トルク配分手段
34 制動トルク指令値補正手段

Claims (5)

  1. 車両の運転状態や走行状態に応じて決まる目標制動トルクを回生制動および摩擦制動の協働により実現するようにし、
    車両の運転状態や走行状態に応じて決まる実現可能な可能最大回生制動トルクを回生制動トルクが越えることのないよう、前記目標制動トルクを回生制動トルク指令値と摩擦制動トルク指令値とに配分して、回生制動トルクおよび摩擦制動トルクをこれら指令値に基づき制御するようにした車両の複合ブレーキにおいて、
    前記摩擦制動の開始時に摩擦制動開始車輪に係わる摩擦制動トルク指令値の変化率を制限する摩擦制動トルク指令値変化率制限手段と、
    この変化率制限による摩擦制動トルク指令値の変化分が相殺されるよう、前記配分により決定した基本的な回生制動トルク指令値および/または摩擦制動開始車輪以外の他輪に係わる基本的な摩擦制動トルク指令値を変化させて、車両制動トルクの補償を行う制動トルク補償手段とを具備することを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。
  2. 前記可能最大回生制動トルクを越えない範囲で回生制動トルク指令値ができるだけ大きくなるよう前記配分を行う請求項1に記載の複合ブレーキの協調制御装置において、
    前記摩擦制動トルク指令値変化率制限手段は、前記回生制動トルク指令値と可能最大回生制動トルクとの間における回生制動トルク偏差が制動状態に応じた所定値よりも小さくなった時から、摩擦制動開始車輪が摩擦制動トルクを発生し始めるよう該摩擦制動開始車輪の摩擦制動トルク指令値を前記変化率制限下に立ち上がらせ、この摩擦制動トルク指令値が、前記配分により決定した摩擦制動開始車輪の基本的な摩擦制動トルク指令値となったとき以後、摩擦制動開始車輪の摩擦制動トルク指令値を基本的な摩擦制動トルク指令値となすものであり、
    前記制動トルク補償手段は、前記変化率制限下に立ち上がっている前記摩擦制動開始車輪の摩擦制動トルク指令値相当分だけ、前記配分により決定した前記基本的な回生制動トルク指令値を修正するものである複合ブレーキの協調制御装置。
  3. 前記目標制動トルクの増大につれ、この目標制動トルクを順次、回生制動トルク指令値のみに配分し、回生制動トルク指令値および非回生輪摩擦制動トルク指令値に配分し、回生制動トルク指令値および非回生輪摩擦制動トルク指令値並びに回生輪摩擦制動トルク指令値に配分するようにした請求項1または2に記載の複合ブレーキの協調制御装置において、
    前記摩擦制動トルク指令値変化率制限手段は、目標とすべき非回生輪制動トルクと前記非回生輪摩擦制動トルク指令値との間における非回生輪制動トルク偏差が制動状態に応じた所定値よりも小さくなった時から、回生輪が摩擦制動トルクを発生し始めるよう回生輪摩擦制動トルク指令値を前記変化率制限下に立ち上がらせ、この回生輪摩擦制動トルク指令値が、前記配分により決定した回生輪の基本的な回生輪摩擦制動トルク指令値となったとき以後、回生輪摩擦制動トルク指令値を基本的な回生輪摩擦制動トルク指令値となすものであり、
    前記制動トルク補償手段は、前記変化率制限下に立ち上がっている前記回生輪の摩擦制動トルク指令値相当分だけ、前記配分により決定した前記基本的な非回生輪摩擦制動トルク指令値を修正するものである複合ブレーキの協調制御装置。
  4. 請求項3に記載の複合ブレーキの協調制御装置において、
    前記摩擦制動トルク指令値変化率制限手段は、前記回生制動トルク指令値と可能最大回生制動トルクとの間における回生制動トルク偏差が大きいほど、前記非回生輪摩擦制動トルク指令値を小さくするものである複合ブレーキの協調制御装置。
  5. 請求項3に記載の複合ブレーキの協調制御装置において、
    前記目標とすべき非回生輪制動トルクと前記非回生輪摩擦制動トルク指令値との間における非回生輪制動トルク偏差が大きいほど、前記回生輪摩擦制動トルク指令値を小さくするものである複合ブレーキの協調制御装置。
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