JP4539344B2 - 内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
イオン電流は、絶縁碍子92から突出した中心電極93の表面に、燃焼室において発生した陽イオンが吸着して電子を受け取ることにより中心電極93に流れる電流である。それ故、イオン電流の検出によって内燃機関の燃焼状態を充分に把握するためには、絶縁碍子92から突出した中心電極93の突出部932の表面積を充分に確保することが必要である。
上記接地電極は、上記取付金具に接合された基端部から先端に向かって上記中心電極に近付くように傾斜した傾斜部と、該傾斜部の先端側において屈曲部を介して上記中心電極の軸方向に略平行に形成された直伸部とを有し、
該直伸部の内側面と上記中心電極の側面との間に、上記火花放電ギャップが形成されており、
上記接地電極の上記直伸部の内側面には、貴金属チップが配設されており、該貴金属チップの直径をd、上記直伸部の幅をWとしたとき、W−d≦1.5mmであり、
上記接地電極の上記直伸部の内側面と上記貴金属チップとの接合部の全周に、レーザ溶接による溶接部が形成され、
該溶接部は、上記接合部の全周にわたって、上記直伸部の内側面上に配置されており、
上記接地電極の上記直伸部は、1.8〜3.0mmの長さを有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグにある(請求項1)。
上記スパークプラグにおいては、上記接地電極が、上記屈曲部を介して形成された上記傾斜部と上記直伸部とを有する。そして、該直伸部の内側面と上記中心電極の側面との間に、上記火花放電ギャップが形成されている。これにより、接地電極が中心電極の側面に沿うような形状となり、中心電極の側面と接地電極との間に形成される空間を小さくすることができる。そのため、中心電極の側面の広範囲において、接地電極との間で火花放電させることができる。
上記取付金具の先端に、上記接地電極を構成するための電極材を接合する電極接合工程と、
直棒状の上記電極材に、先端部を広げるように曲げ加工を施して屈曲部を形成する屈曲工程と、
該屈曲工程の後に、貴金属チップを上記屈曲部よりも先端側における上記電極材の内側面にレーザ溶接するチップ溶接工程と、
該チップ溶接工程の後に、上記電極材を、基端部において内側に向かって曲げ加工することにより、上記電極材における上記屈曲部よりも基端側の部分を、基端部から先端に向かって上記中心電極に近付くように傾斜した傾斜部とし、上記屈曲部よりも先端側の部分を上記中心電極の軸方向に略平行に形成された直伸部とすると共に、上記貴金属チップと上記中心電極の側面との間に上記火花放電ギャップを形成するギャップ形成工程とを有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある(請求項4)。
上記製造方法においては、上記屈曲工程の後であって上記ギャップ形成工程の前に、上記チップ溶接工程を行う。そのため、貴金属チップを上記電極材の内側面にレーザ溶接するに当たり、上記取付金具、上記中心電極、或いは他の上記接地電極用の電極材等が邪魔になりにくい。これにより、貴金属チップを、上記電極材の内側面に対して、接合部の全周にわたってレーザ溶接を行うことが容易となる。また、チップ溶接工程の後にギャップ形成工程を行うため、火花放電ギャップの大きさを容易に調整することができる。
本明細書において、上記スパークプラグにおける、内燃機関の燃焼室に挿入する側を先端側とし、その反対側を基端側とする。
即ち、上記中心電極の断面積及び突出部の表面積を、上記の範囲に規定することにより、多少の燃焼残渣物が中心電極に付着したとしても、充分な面積の健全部を確保することができる。そのため、イオン電流の検出性の低下を防ぐことができる。また、中心電極の熱容量が大きくなりすぎることがなく、着火性を充分に確保することができる。
また、上記接地電極には、上記貴金属チップが配設されているため、着火性の向上を図ることができる。そして、上記貴金属チップの断面積及び突出高さが上記の範囲にあることにより、熱容量を小さくして、着火性を確保することができる。
また、上記中心電極の突出部の表面積が10mm2未満の場合には、充分なイオン電流の検出が困難となるおそれがある。一方、上記突出部の表面積が30mm2を超える場合には、着火性が低下するおそれがある。
上記貴金属チップの突出高さが0.3mm未満の場合には、着火性が低下するおそれがある。一方、上記突出高さが1.5mmを超える場合には、耐熱性、耐消耗性が低下するおそれがある。
これにより、充分に広い領域において、上記中心電極の側面を清浄化して、充分に広い健全部を確保することができ、イオン電流の検出性を向上させることができる。
この場合には、絶縁碍子の碍子先端部に沿った横飛火を抑制して、燃焼効率を確保することができる。
この場合には、接地電極と貴金属チップとの接合部に対して、レーザ照射を容易かつ確実に行うことができる。そのため、接地電極への貴金属チップの接合信頼性を確保することができる。
これにより、上記接地電極と貴金属チップとの接合信頼性を向上させることができる。
この場合には、中心電極の側面をより広い範囲で清浄化して、健全部を確保し、イオン電流の検出性をより向上させることができる。
この場合には、電極材と貴金属チップとの接合部に対して、レーザ照射を一層容易かつ確実に行うことができる。そのため、接地電極への貴金属チップの接合信頼性を一層向上させることができる。
本発明の実施例にかかる内燃機関用のスパークプラグにつき、図1〜図7を用いて説明する。
本例の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1、図2に示すごとく、外周に取付け用ネジ部41を設けた取付金具4と、碍子先端部21が突出するように上記取付金具4に保持される絶縁碍子2と、電極先端部31が上記碍子先端部21から突出するように上記絶縁碍子2に保持される中心電極3と、該中心電極3との間に火花放電ギャップ11を形成する接地電極5とを備えている。
そして、該直伸部54の内側面541と上記中心電極3の側面34との間に、上記火花放電ギャップ11が形成されている。
該貴金属チップ55と中心電極3との間に火花放電ギャップ11が形成されている。
また、火花放電ギャップ11の大きさをG、接地電極5と絶縁碍子2との間の最短距離をgとすると、g/G≧1.3を満たす。
また、図4に示すごとく、接地電極5の直伸部54の内側面541に配設された貴金属チップ55の直径をd、直伸部54の幅をWとしたとき、0≦W−d≦1.5mmを満たす。
また、スパークプラグ1は、上記接地電極5を複数備えている。本例においては、図1〜図3に示すごとく、接地電極5は、中心電極3を挟んで対極に2本配設されている。
また、接地電極5に対向する中心電極3の側面34部分は、スウェージングによって接合された貴金属部33によって構成されている。なお、中心電極3の電極先端部31の全体を貴金属によって構成してもよい。
即ち、上記屈曲工程においては、図7(A)に示すごとく、取付金具4の先端に、接地電極5を構成するための電極材50を接合する。この接合は、抵抗溶接により行うことができる。
上記チップ溶接工程においては、図7(C)に示すごとく、屈曲工程の後に、貴金属チップ55を屈曲部53よりも先端側における電極材50の内側面にレーザ溶接する。
また、貴金属チップ55は、レーザ溶接の前に、抵抗溶接によって電極材50に対して仮接合しておくが、この仮接合は、チップ溶接工程の前の何れの段階で行うこともできる。
そして、図6に示すごとく、電極材50と貴金属チップ55との接合部における全周からレーザ光Lを照射し、レーザ溶接を行う。このとき、取付金具4が邪魔になり、電極材50と貴金属チップ55との接合部のうちの取付金具4側の溶接ポイントPに対して、平面視において垂直にレーザ光Lを照射しようとすると、死角となる領域Zが生ずる。
そこで、上記溶接ポイントPに対しては、平面視で斜めにレーザ光Lを入射させることにより、レーザ溶接を行う。
上記スパークプラグ1においては、図1〜図3に示すごとく、接地電極5が、屈曲部53を介して形成された傾斜部52と直伸部54とを有する。そして、該直伸部54の内側面541と中心電極3の側面34との間に、火花放電ギャップ11が形成されている。これにより、接地電極5が中心電極3の側面34に沿うような形状となり、中心電極3の側面34と接地電極5との間に形成される空間を小さくすることができる。そのため、中心電極3の側面34の広範囲において、接地電極5との間で火花放電させることができる。
そのため、優れたイオン電流の検出性を確保しつつ、優れた着火性を確保することができる。
また、接地電極5には、貴金属チップ55が配設されているため、着火性の向上を図ることができる。そして、貴金属チップ55の断面積及び突出高さtが上記の範囲にあることにより、熱容量を小さくして、着火性を確保することができる(実施例3参照)。
また、スパークプラグ1は、接地電極5を複数備えているため、中心電極3の側面34をより広い範囲で清浄化して、健全部を確保し、イオン電流の検出性をより向上させることができる。
本例は、図8に示すごとく、電極材50を屈曲する前に貴金属チップ54を電極材50に溶接する例である。
即ち、図8(A)に示すごとく、実施例1と同様に電極接合工程を行った後、図8(B)に示すごとく、電極材50を屈曲する前に貴金属チップ54を電極材50に溶接する。次いで、図8(C)に示すごとく、電極材50を基端部51において内側に屈曲すると共に、貴金属チップ55を接合した先端部付近をスパークプラグ1の軸方向に平行となるように屈曲する。これにより、傾斜部52と屈曲部53と直伸部54とを形成する。
以上により、スパークプラグ1を組み立てる。
その他は、実施例1と同様である。
本例によっても、上記スパークプラグ1を容易に製造することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
本例は、図9に示すごとく、接地電極5に接合した貴金属チップ55の突出高さt(図3参照)と、スパークプラグ1の着火性との関係を調べた例である。
着火性の評価は、1.8L、直列4気筒のエンジンを用い、アイドル状態において、各スパークプラグ1による着火の限界となる空燃比(A/F)を調べることによって行った。
評価を行う試料としては、実施例1のスパークプラグ1において、貴金属チップ55の突出高さtをそれぞれ0.3mm、0.8mmとしたものを用意した。
評価結果を図9に示す。
また、◇にてプロットしたものは、中心電極3の直径を2.5mm(断面積4.9mm2、突出部32の表面積30mm2)、貴金属チップ55の直径を0.4mm(断面積0.12mm2)としたスパークプラグ1についての結果である。
また、◆にてプロットしたものは、中心電極3の直径を2.0mm(断面積3.1mm2、突出部32の表面積21mm2)、貴金属チップ55の直径を0.4mm(断面積0.12mm2)としたスパークプラグ1についての結果である。
即ち、突出高さtが0.3mm以上とすることにより、スパークプラグ1の着火性を確保することができる。
本例は、図10に示すごとく、スパークプラグ1の耐久試験による、中心電極3における健全部の面積の推移を調べた例である。
即ち、以下のスパークプラグ1を、2L、直列6気筒の自動車のエンジンに取り付けて運転した。
なお、本例において使用したスパークプラグ1は、中心電極3の断面積が3.1mm2、中心電極3の突出部32の表面積が25mm2、接地電極5に接合された貴金属チップ55の断面積が0.38mm2、突出高さtが0.8mmである。
試験結果を図10に示す。
特に、直伸部54の長さAが1.8mm以上のものについては、耐久試験開始直後に健全部が減少するものの、その後は殆ど減少しない。
これらの結果から、本発明のスパークプラグ1は、健全部の面積の減少が少なく、イオン電流の検出性に優れており、特に直伸部54の長さAを1.8mm以上とすることにより、更に、その効果が大きくなることが分かる。
本例は、図11に示すごとく、接地電極5と絶縁碍子2との間の最短距離gと、火花放電ギャップの大きさGとの比g/Gが、横飛火の頻度に与える影響につき調べた例である。
即ち、以下のスパークプラグ1を、1.8L、直列4気筒のエンジンに取り付けて、エンジンをアイドル状態で運転したときに、横飛火が生ずる頻度を確認した。
また、接地電極5と絶縁碍子2との間で飛火するものを、横飛火としてカウントした。また、接地電極5と中心電極3との間の正規の飛火と横飛火との合計に対する横飛火の割合を「横飛火の頻度」とした。また、横飛火の確認は、火花波形によって飛火位置を判断することにより行った。
試験結果を図11に示す。
従って、g/G≧1.3とすることが好ましいことが分かる。
本例は、表1に示すごとく、接地電極5用の電極材50に貴金属チップ55を溶接する際における、電極材50の内側面に対するレーザ照射角度θ(図5参照)及び接地電極5の幅W(図4参照)を種々変化させた場合の、溶接状態の違いについて調べた例である。
レーザ照射角度θは10〜60°の間で種々変化させ、接地電極5の幅Wは1.4〜2.6mmの間で種々変化させた。
評価結果を表1に示す。同表において、溶接が良好に行われたものを○、溶接不良となったものを×、若干の溶接不良が生じたものを△とした。ここで、溶接不良としては、接地電極5又は貴金属チップ55のえぐれの発生や、両部材の一方のみを照射してしまうことが挙げられる。
そして、レーザ照射角度θが60°のものは、貴金属チップ55がえぐれたり、接地電極5のみが照射されたりする不具合が生じた。一方、レーザ照射角度θが10°のものは、接地電極5がえぐれたり、貴金属チップ55のみを照射したりする不具合が生じた。
以上の結果から、20≦θ≦55°、W−d≦1.5mmであることが好ましいことが分かる。
11 火花放電ギャップ
2 絶縁碍子
21 碍子先端部
3 中心電極
31 電極先端部
32 突出部
34 側面
4 取付金具
41 取付け用ネジ部
5 接地電極
51 基端部
52 傾斜部
53 屈曲部
54 直伸部
541 内側面
55 貴金属チップ
Claims (6)
- 外周に取付け用ネジ部を設けた取付金具と、碍子先端部が突出するように上記取付金具に保持される絶縁碍子と、電極先端部が上記碍子先端部から突出するように上記絶縁碍子に保持される中心電極と、該中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備えた内燃機関用のスパークプラグであって、
上記接地電極は、上記取付金具に接合された基端部から先端に向かって上記中心電極に近付くように傾斜した傾斜部と、該傾斜部の先端側において屈曲部を介して上記中心電極の軸方向に略平行に形成された直伸部とを有し、
該直伸部の内側面と上記中心電極の側面との間に、上記火花放電ギャップが形成されており、
上記接地電極の上記直伸部の内側面には、貴金属チップが配設されており、該貴金属チップの直径をd、上記直伸部の幅をWとしたとき、W−d≦1.5mmであり、
上記接地電極の上記直伸部の内側面と上記貴金属チップとの接合部の全周に、レーザ溶接による溶接部が形成され、
該溶接部は、上記接合部の全周にわたって、上記直伸部の内側面上に配置されており、
上記接地電極の上記直伸部は、1.8〜3.0mmの長さを有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。 - 請求項1において、上記接地電極の上記直伸部の内側面には、貴金属チップが配設されており、該貴金属チップの直径をd、上記直伸部の幅をWとしたとき、0.7mm≦W−d≦1.5mmであることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項1又は2において、上記スパークプラグは、上記接地電極を複数備えていることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを製造する方法であって、
上記取付金具の先端に、上記接地電極を構成するための電極材を接合する電極接合工程と、
直棒状の上記電極材に、先端部を広げるように曲げ加工を施して屈曲部を形成する屈曲工程と、
該屈曲工程の後に、貴金属チップを上記屈曲部よりも先端側における上記電極材の内側面にレーザ溶接するチップ溶接工程と、
該チップ溶接工程の後に、上記電極材を、基端部において内側に向かって曲げ加工することにより、上記電極材における上記屈曲部よりも基端側の部分を、基端部から先端に向かって上記中心電極に近付くように傾斜した傾斜部とし、上記屈曲部よりも先端側の部分を上記中心電極の軸方向に略平行に形成された直伸部とすると共に、上記貴金属チップと上記中心電極の側面との間に上記火花放電ギャップを形成するギャップ形成工程とを有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。 - 請求項4において、上記スパークプラグは、上記接地電極を複数備えていることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
- 請求項4又は5において、上記チップ溶接工程におけるレーザ溶接は、電極材の内側面に対するレーザ照射角度を20〜55°として行うことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
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