JP4534356B2 - 窒化物半導体層の製造方法および窒化物半導体基板の製造方法ならびに窒化物半導体基板製造用基体 - Google Patents

窒化物半導体層の製造方法および窒化物半導体基板の製造方法ならびに窒化物半導体基板製造用基体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物化合物半導体層を備えた半導体装置の製造などに用いられる、窒化物半導体層の製造方法および、窒化物半導体基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN、InN、AlN等の窒化物半導体は、青色や緑色のLEDや、青色半導体レーザ、高温動作可能な高速トランジスタなどに用いる材料として、好適である。窒化物半導体を成長させるための基板として、従来サファイア基板などが広く用いられている。ただし、サファイアなどの窒化物半導体層とは異なる材料の基板を用いた成長では、窒化物半導体と異種材料基板との熱膨張係数の差による、基板の反り、クラックの発生、それらに伴う結晶性の悪化があった。
【0003】
そこで、上記の課題を解決するために、窒化物半導体基板を作製し、この上に窒化物半導体によるデバイスを作製しようとする試みがなされている。この場合の窒化物半導体の製造方法は、母材基板上に厚く窒化物半導体層を成長し、母材基板を除去するという方法である。例えば、特開平7−277884号公報には、サファイアなどの母材基板に加工を施すことによりGaNを成長させたときの熱膨張係数差に基づく歪を基板側に開放してGaNを厚膜成長し、母材基板を除去してGaN基板を得る方法が示されている。また、特開平10−114600号公報には、GaNと熱膨張係数が比較的近いGaAsを母材基板として、GaNを厚膜成長し、GaAsをエッチングなどで除去する方法が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の窒化物半導体基板の製造方法では、1枚の窒化物半導体基板を得るごとに、母材基板を消費するため、低価格で大量の窒化物半導体を提供することが困難であった。また、サファイアの除去やGaAsのエッチングなどの工程では、非常に厚い母材基板を加工したり除去するために、相当の時間をかけ、相当量の研磨材料やエッチング液などを要し、また、それらから発生する多量の廃液の処理も要するため、コスト面で非常に大きな課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、比較的簡便なプロセスで、かつ低コストで、厚い窒化物半導体層をクラックなく成長させる手段を提供し、母材基板の再利用が可能な窒化物半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。また、比較的簡便なプロセスで、かつ低コストで、窒化物半導体基板を製造できる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の窒化物半導体層の製造方法および窒化物半導体基板の製造方法ならびに窒化物半導体基板製造用基体は、以下に示す構成よりなるものである。
【0007】
本発明の窒化物半導体層の製造方法は、母材基板上に半導体層を設ける工程と、前記半導体層上に窒化物半導体層を設けて前記半導体層に欠陥を生じせしめる工程とを有するものである。
【0008】
この構成により、熱膨張係数差による歪は半導体層で緩和されるため、クラックなく厚い窒化物半導体層を成長させることができる。
【0009】
本発明の窒化物半導体層の製造方法は、母材基板上に半導体層を設ける工程と、前記半導体層上に窒化物半導体層を、前記母材基板の主面の一部分に形成する工程とを有するものである。
【0010】
この構成により、半導体層へより歪を集中させることができる。
【0011】
本発明の窒化物半導体層の製造方法は、かかる構成につき、半導体層を設ける工程は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さい半導体層を形成する工程を有することにより、半導体層に応力が集中する構成を実現し、易破壊性を付与することができる。
【0012】
本発明の窒化物半導体層の製造方法は、かかる構成につき、母材基板がサファイア基板であり、前記半導体層がシリコン層であることにより、シリコン層に応力を集中させることができる。
【0013】
本発明の窒化物半導体層の製造方法は、かかる構成につき、シリコン層の厚さが0.01μm以上1μm以下であることにより、シリコン層の結晶性が保たれると同時にシリコン層にクラックを発生させやすくできる。
【0014】
本発明の窒化物半導体層の製造方法は、母材基板上に半導体層を設ける工程と、前記半導体層上に第1の窒化物半導体層を設ける工程と、前記半導体層および前記第1の窒化物半導体層の一部を前記母材基板が露出するまで除去する工程と、前記第1窒化物半導体層上に第2の窒化物半導体層を成長する工程とを有するものである。
【0015】
この構成により、所望の組成や特性を有する第2の窒化物半導体層を、ほとんどクラックなく成長させることができる。
【0016】
本発明の窒化物半導体基板の製造方法は、母材基板上に半導体層を設ける工程と、前記半導体層上に窒化物半導体層を設けて前記半導体層に欠陥を生じせしめる工程と、前記母材基板と前記窒化物半導体層を分離する工程とを有するものである。
【0017】
この構成により、母材基板上にほとんどクラックなく厚い窒化物半導体層を成長でき、分離によってクラックをほとんどなくした窒化物半導体層を得ることができる。
【0018】
本発明の窒化物半導体基板の製造方法は、母材基板上に半導体層を設ける工程と、前記半導体層上に窒化物半導体層を、前記母材基板の主面の一部分に設ける工程と、前記母材基板と前記窒化物半導体層を分離する工程とを有するものである。
【0019】
この構成により、半導体層に応力を集中させ、窒化物半導体層のクラックを防ぐことができ、クラックのほとんどない基板を得ることができる。
【0020】
本発明の窒化物半導体基板の製造方法は、かかる構成につき、半導体層を設ける工程は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さい半導体層を形成する工程を有することにより、半導体層に応力が集中し、易破壊性を付与することができる。
【0021】
本発明の窒化物半導体基板の製造方法は、かかる構成につき、母材基板がサファイア基板であり、前記半導体層がシリコン層であることにより、シリコン層に応力を集中させることができ、クラックのほとんどない窒化物半導体基板を得ることができる。
【0022】
本発明の窒化物半導体基板の製造方法は、母材基板上に半導体層を設ける工程と、前記半導体層上に第1の窒化物半導体層を設ける工程と、前記半導体層および前記第1の窒化物半導体層の一部を前記母材基板が露出するまで除去する工程と、前記第1の窒化物半導体層上に第2の窒化物半導体層を成長する工程と、前記母材基板と前記第2の窒化物半導体層とを分離する工程とを有するものである。
【0023】
この構成により、所望の組成や特性を有する第2の窒化物半導体層を、ほとんどクラックなく成長させることができ、それによりクラックのほとんどない窒化物半導体基板を得ることができる。
【0024】
本発明の窒化物半導体基板製造用基体は、母材基板上に、前記母材基板よりも薄くかつ欠陥が多い半導体層が設けられたものである。
【0025】
この構成により、窒化物半導体を成長させたときに、半導体層にクラックを集中させることができ、窒化物半導体中でのクラックの発生を抑制することができる。
【0026】
本発明の窒化物半導体基板製造用基体は、かかる構成につき、半導体層は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さい層であることにより、半導体層へ応力を集中させ、窒化物半導体中でのクラックの発生を抑制させることができる。
【0027】
本発明の窒化物半導体基板製造用基体は、かかる構成につき、母材基板がサファイア基板であり、前記半導体層がシリコン基板であることにより、シリコン層へ応力を集中させ、窒化物半導体中でのクラックの発生を抑制させることができる。
【0028】
本発明の窒化物半導体基板製造用基体は、かかる構成につき、母材基板上に、前記母材基板の主面の一部分を被覆する半導体層が形成され、前記半導体層上に窒化物半導体層が形成されたことにより、半導体層によりクラックを集中させることができ、より窒化物半導体中でのクラックの発生を抑制させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における窒化物半導体基板製造用基体である。サファイア基板1は、直径2インチ、厚さ400μmであり、面方位は(0001)と等価な面である。サファイア基板1の上には、熱化学気相堆積(以下熱CVDと略する)装置で成長したシリコン層2が形成されている。シリコン層2の面方位は(111)と等価な面である。
【0031】
以下、図2を参照しながら、図1の窒化物半導体基板製造用母材基板および窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法について説明する。
【0032】
サファイア基板1は、直径2インチ、厚さ400μmであり、面方位は(0001)と等価な面である(図2(a))。サファイア基板1の上にシリコン層2の熱CVD装置で成長を行った。本実施の形態では、シランガスを用いた熱CVD法を用いて、基板温度1000℃で0.1μmの厚さの結晶成長を行った。シリコン層2の面方位は(111)と等価な面であった(図2(b))。以上の工程によって、図1に示す窒化物半導体基板製造用基体が完成する。
【0033】
引き続いてAl0.1Ga0.9N層3を10μmの厚さ有機金属気相成長(以下MOVPEと略する)装置で成長した。Al0.1Ga0.9N層3の成長方法は特に限定するものではないが、アンモニアをV族原料とし、トリメチルガリウムとトリメチルアルミニウムをIII族原料とするMOVPE法で、基板温度1000℃で成長させた(図2(c))。以上の工程で成長したAl0.1Ga0.9N層3の主面は(0001)のIII族面であった。
【0034】
成長後、基板温度を室温に下げる工程で、サファイア、シリコン、窒化物半導体の熱膨張係数差による応力が各層に生じる。
【0035】
本実施の形態では、室温に下げた状態で、欠陥、ときにはクラックがシリコン層2に生じ、サファイア基板1およびAl0.1Ga0.9N層3にはクラックがほとんど生じなかった(図2(d))。なお、図2中で(d)のみハッチングを施していない。以上によって、クラックのほとんどないAl0.1Ga0.9N層3を得ることができた。
【0036】
次に、サファイア基板1とAl0.1Ga0.9N層3を分離する工程を実施した。サファイア基板1とAl0.1Ga0.9N層3の分離は、フッ酸と硝酸の混合溶液で行った。
【0037】
サファイアおよびGaNは、フッ酸と硝酸の混合溶液で溶解せず、シリコンのみが溶解されるためシリコン層2は消失した。2インチ径で厚さ10ミクロンのAl0.1Ga0.9N基板3aが得られた(図2(e))。以上により、クラックのないAl0.1Ga0.9N基板3aを得ることができた。以上の工程で作製したAl0.1Ga0.9N基板3aは、シリコン層2が接していた側の主面(裏面)が、(0001)V族面であり、反対側の主面(表面)が(0001)III族面であった。
【0038】
図3は、本構成において、成長温度から温度を1000℃低下させたときの各層の応力分布を示す。図3より、各層のなかで一番薄く、かつ、熱膨張係数が最も小さなシリコン層2に応力が集中していることがわかる。この構成によって、シリコン層2に易破壊性が付与され、Al0.1Ga0.9N層3およびサファイア基板1にはクラックがほとんど生じなかった。
【0039】
とりわけシリコン層2の熱膨張係数は、サファイア基板1の熱膨張係数およびAl0.1Ga0.9N層3の熱膨張係数のいずれよりも小さいので、シリコン層2に応力が集中し、シリコン層2に容易にクラックを生じさせることができる。
【0040】
なお、シリコン層2の形成方法は、CVDの他、スパッタやレーザーアブレーションや貼り合せとエッチングやこれらの組み合わせなどを用いることができ、特に限定するものではない。
【0041】
なお、シリコン層2に易破壊性を付与する、すなわちシリコン層2にクラックを生じさせて破壊を促進させるために、シリコン層2を、サファイア基板1ないしAl0.1Ga0.9N層3のいずれよりも薄くするのがよい。シリコン層2の具体的な値として、0.01μm以上で、かつ1μm以下であればよい。なぜならば、シリコン層2の厚さが0.01μmより小さい場合、サファイア基板1とAl0.1Ga0.9N層3との間でシリコン層2が歪量子井戸的に形成されてクラックが発生しにくくなると同時に、エッチングによりシリコン層2を除去する際にエッチャントがシリコン層2に回り込みにくくなり、エッチングがしにくくなるという問題が生じるからであり、シリコン層2の厚さが1μmより大きい場合、サファイア基板1とシリコン層2との間の格子不整合によりシリコン層2の結晶性が悪くなるという問題が生じるからである。
【0042】
なお、本実施の形態では、シリコン層2の上にAl0.1Ga0.9N層3を成長したが、Al0.1Ga0.9N層3に替えて、窒素をV族の主成分とする他の窒化物半導体層、例えばBxAlyGa1-x-y-zInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)、AlyGa1-y-zInz1-rAsr(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦r≦1)またはAlyGa1-y-zInz1-rr(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦r≦1)よりなる層や、これら窒化物半導体層による積層構造を形成してもよいことはいうまでもない。
【0043】
また、シリコン層2の成長とAl0.1Ga0.9N層3の成長を別の成長炉で行ったが、原料供給を共通化することで、同一の炉で成長することができる。
【0044】
なお、Al0.1Ga0.9N基板3aの表面、裏面ともに鏡面であるので、どちらへもデバイスを形成することが可能である。
【0045】
なお、本実施の形態において作製したAl0.1Ga0.9N基板3aは10μmと非常に薄く、扱い方によっては容易に割れてしまうので、サファイア基板1とAl0.1Ga0.9N層3との分離に先立って、Al0.1Ga0.9N層3にフッ酸と硝酸の混合溶液で溶解しない接着剤等で、サファイア基板1とAl0.1Ga0.9N層3との間を固定する保持体を設けてもよい。
【0046】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る窒化物半導体基板製造用基体である。図4(a)は断面図である。サファイア基板11は、直径2インチ、厚さ400μmであり、面方位は(0001)と等価な面である。サファイア基板11の上に熱CVD法により形成した、厚さ1μmのシリコン層12が形成されており、シリコン層12にはパタニングが施されている。図4(b)は、シリコン層12を上主面から見たときのパターンの拡大図である。
【0047】
以下、図5を参照しながら、図4で示した窒化物半導体製造用基体の製造方法および、窒化物半導体層の製造方法および、窒化物半導体基板の製造方法を示す。
【0048】
サファイア基板11は、直径2インチ、厚さ400μmであり、面方位は(0001)と等価な面である(図5(a))。サファイア基板11の上にシリコン層12を、熱CVD装置で成長した。シリコン層12の形成方法は特に限定するものではないが、シランガスを用いた熱CVD法を用いて、基板温度1000℃で厚さ1μmの結晶成長を行った。シリコン層12の面方位は(111)と等価な面であった(図5(b))。
【0049】
次に、シリコン層12のパタニングを行った(図5(c))。パターンは、特に限定するものではないが、面内均等に応力を加える目的で、図5(d)に示すパターンを形成し、シリコンのドット(以下シリコンドット12aという)を形成した。各シリコンドット間のピッチは、大きくするほうがGaNとサファイアの接触面積が小さくなり、シリコンへの応力集中が大きくなるが、後のGaNの成長で所望の膜厚で連続膜にならないという問題が生じるので、好ましくはシリコン層12の厚さ以上で、続いて積層されるGaN層13の厚さの20倍以下である。また、シリコンドットは小さいほうが接触面積を小さくできて好ましいが、通常のアライナなどによるパタニングが困難になるので、本実施の形態では5μmとした。ドットパターン以外のストライプなどのパターンでも、好ましいピッチやパターン幅はおおよそ同じである。パタニングの方法などは特に限定するものではないが、フォトリソグラフィによって、所望の形状を有するフォトレジスト(図示せず)をシリコン層12上に形成し、フッ酸と硝酸を含んだ酸によりシリコン層12をエッチングした(図示せず)。以上の工程により、図4で示した窒化物半導体基板製造用基体が完成する。
【0050】
引き続いて、厚さ100μmのGaN層13をハイドライド気相成長(以下HVPEと略す)装置で成長した。GaとHClを800℃で反応させて形成するGaClをIII族原料とするHVPE法を用いた。成長圧力は1気圧で、成長温度は1000℃である。
【0051】
高温では、サファイアやシリコンに接しては、GaNが成長しにくいので成長速度が低下するが、シリコン層12の上面のほうが、サファイア基板11の露出面よりも見込む立体角が大きいため、GaNの核形成が比較的起こりやすい(図6(a))。一度、シリコン層12の上にGaN核13aが形成されると、サファイア上では付着が困難なため原料はマイグレーションしているが、GaN核13aに到達した原料が結晶化し、GaN核13aは加速度的に大きくなる(図6(b))。最終的に、GaN層13は、サファイアとはほとんど接しない状態で連続膜となり成長される(図6(c))。以上の工程で成長したGaN層13の主面は、(0001)Ga面であった。
【0052】
室温に下げた状態で、欠陥、ときにはクラックがシリコン層12に生じ、サファイア基板11およびGaN層13にはクラックが生じなかった。また、サファイア基板11の厚さが400μm、GaN層13の厚さが100μmと、双方共に厚いので、反りが発生し一部のシリコンは、完全にクラックで分離された状態になった(図6(d))。なお、図6(d)では、クラックなどの様子を明瞭に表すためハッチングを省略している。以上の工程により、クラックのほとんどない窒化物半導体層13が形成される。
【0053】
つぎに、サファイア基板11とGaN層13を完全に分離する工程を実施した。サファイア基板11とGaN層13の分離は、フッ酸と硝酸の混合溶液で行った。
【0054】
サファイアおよびGaNは、フッ酸と硝酸の混合溶液で溶解せず、シリコンのみが溶解されるため、シリコン層12は消失し、2インチ径で厚さ100ミクロンのGaN基板13bが得られた(図7)。本実施の形態におけるGaN基板13bのように100μmの厚さがあれば、デバイス作製における膜形成やエッチング工程や加熱工程でも自立する2インチ径のGaN基板が得られる。なお、デバイス形成に好ましい基板の厚さは2インチ径で30μm以上、より好ましくは60μm以上である。
【0055】
なお、本実施の形態のように、シリコン層12が連続膜でない場合は、シリコン層12に易破壊性を付与するためにはシリコン層12の膜厚とシリコン層12のサファイア基板11の被覆率が重要で、シリコン層12の膜厚に被覆率を乗じた値が、GaN層13の厚さまたはサファイア基板11の厚さより小さければよい。
【0056】
なお、シリコン層12をエッチングで除去し、サファイア基板11とGaN層13を分離しなくても、GaN層13はクラックがほとんど発生しないので、GaN層13上に半導体レーザやトランジスタなどの半導体装置を形成させることができる。
【0057】
本実施の形態で、GaN基板13bの作製のため消耗する原料は、シリコン層12を1μm結晶成長させるための若干のシランガスと、1μmのシリコン層をエッチングするための若干のフッ酸と硝酸だけであるため、基板を全て研磨ないしエッチングする場合に比べ、著しく原料の使用量を少なくすることができる。すなわちサファイア基板11を再利用することができる。
【0058】
なお、シリコンドット12aの、上方から見た形状としては、上記実施の形態において示した円以外に、図8に示すように、正方形(図8(a))、長方形(図8(b))、正六角形(図8(c))、ストライプ(図8(d))等であってもよい。
【0059】
また、シリコンドット12aの断面形状としては、上記実施の形態において示した矩形以外に、図9に示すように、台形(図9(a))、三角形(図9(b))等であってもよい。
【0060】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る窒化物半導体基板製造用基体である。図10(a)は断面図である。サファイア基板21は、直径4インチ、厚さ500μmであり、面方位は(0001)と等価な面である。サファイア基板21の上に熱CVD法により形成したシリコン層22が0.1μm形成されており、シリコン層22の上に、MOVPE法で形成したAlNバッファ層31が0.2μm、MOVPE法で形成したGaNバッファ層32が2μm形成されている。シリコン層22、AlNバッファ層31、GaNバッファ層32にはパタニングが施されている。図10(b)は、GaNバッファ層32を上主面から見たときのパターンの拡大図である。
【0061】
以下、図11を参照しながら、図10で示した窒化物半導体製造用基体の製造方法および、窒化物半導体層の製造方法ならびに窒化物半導体基板の製造方法を示す。
【0062】
サファイア基板21は、直径4インチ、厚さ500μmであり、面方位は(0001)と等価な面である(図11(a))。サファイア基板21の上にシリコン層22の熱化学気相堆積(以下熱CVDと略する)装置で成長を行った。シリコン層22の形成方法は特に限定するものではないが、シランガスを用いた熱CVD法を用いて、基板温度1000℃で0.1μmの厚さとして成長を行った。シリコン層22の面方位は(111)と等価な面であった(図11(b))。
【0063】
引き続いて、窒化物半導体層の成長を行った。MOVPE法を用い、シリコン層に接してはGaN層よりもAlN層のほうが付着しやすいので、まず1000℃でAlNバッファ層31を0.2μm成長し、引き続いてGaNバッファ層32を2μm成長した(図11(c))。以上の工程で成長したGaNバッファ層32の主面は、(0001)Ga面であった。以下、サファイア基板21に何らかの層が形成されたものを単に基板という。
【0064】
基板をMOVPE炉から取り出し、次に、AlNバッファ層31、GaNバッファ層32およびシリコン層22のパタニングを行った。(図12(a))パターンは、特に限定するものではないが、面内均等に応力を加える目的で、図12(b)に示すパターンを形成した。パタニングの方法などは特に限定するものではないが、フォトリソグラフィーによって、所望の形状を有するフォトレジストをGaNバッファ層32上に形成し、BCl3をエッチングガスとするリアクティブイオンエッチングでエッチングを行った。圧力は3Paとし、プラズマを発生させる高周波のパワーは200Wとした。BCl3は、GaN、AlN、シリコンのいずれもほぼ同じ速度でエッチング可能なので、シリコンまでをエッチングする時間エッチングを行った。サファイアに対しては、エッチング速度がGaNの1/10程度と非常に遅いので、サファイアはほとんどエッチングされなかった。なお、好ましいパターン形状に関しては、実施の形態2で述べた事情とほぼ同じである。
【0065】
以上の工程により、図10の窒化物半導体基板製造用基体が完成する。
【0066】
引き続いて、厚さ500μmのGaN層23をハイドライド気相成長(以下HVPEと略す)装置で成長した。成長条件などは実施の形態2と同じである。既にGaNバッファ層32が存在するため、これを核にGaN層23が成長する(図13(a))。引き続き成長を行って500μm成長した(図13(b))。以上の工程で成長したGaN層23の主面は、(0001)Ga面であった。
【0067】
室温に下げた状態で、クラックがシリコン層22に生じ、サファイア基板21およびGaN層23にはクラックがほとんど生じなかった。また、サファイア基板21の厚さが500μm、GaN層23の厚さが500μmと、双方共に厚いので、反りが発生し一部のシリコン層22は、完全にクラックで分離された状態になった(図13(c))。
【0068】
次に、サファイア基板21とGaN層23を完全に分離する工程を実施した。サファイア基板21とGaN層23の分離を、フッ酸と硝酸の混合溶液で行ったところ、サファイアおよびGaNは、フッ酸と硝酸の混合溶液で溶解せず、シリコンのみが溶解され、シリコン層22は消失し、4インチ径で約500μmの厚さのGaN基板23aが得られた(図13(d))。
【0069】
なお、GaN基板23aには、AlNバッファ層31が付着しているので、研磨などによってAlNバッファ層31を除去してもよい。
【0070】
AlNバッファ層31を研磨する工程を加えても、この場合のAlNバッファ層31は非常に薄いので、研磨にかかる時間や材料費は軽微にすることができる。また、実施の形態2と同様、GaN基板23aの作製のため消耗する原料は、シリコン層22を0.1μm成長させるための若干のシランガスと、厚さ0.1μmのシリコン層22をエッチングするための若干のフッ酸と硝酸のみのため、基板を全て研磨ないしエッチングする場合に比べ、著しく原料の使用量を少なくすることができた。
【0071】
上記実施の形態3においては、HVPE成長初期に既に一定量の大きさのGaNバッファ層32が存在するので、成長初期から原料がGaNバッファ層32に集まり、実施の形態2の成長初期のような成長速度の低下がない。したがって、同じ膜厚であれば実施の形態2より成長時間を短くできる。
【0072】
また、上記実施の形態3においては、サファイア基板21には、基板製造工程を通じて何らダメージや汚染物の堆積などがないので、サファイア基板21を再利用して、GaN基板を製造することが可能である。そのため、窒化物半導体基板の製造に係る原料費を著しく低減することが可能である。
【0073】
なお、上記実施の形態1〜3に説明したサファイア基板、シリコン層および窒化物半導体層以外に、例えば以下の表1に示す組み合わせを用いることができる。
【0074】
【表1】
Figure 0004534356
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の窒化物半導体層の製造方法によれば、反りやクラックや歪を低減した良好な結晶の窒化物半導体を得ることができるとともに、窒化物半導体基板を得るため厚い膜の製造方法や、歪が低減された良好な特性の窒化物半導体装置を製造することができる。
【0076】
また、本発明の窒化物半導体基板の製造方法によれば、反りや歪が低減された良好な結晶性の窒化物半導体による基板を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における窒化物半導体基板製造用基体の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法を表す断面図
【図3】本発明の実施の形態1における、各層の歪の関係を表す図
【図4】本発明の実施の形態2における窒化物半導体基板製造用基体の断面図
【図5】本発明の実施の形態2における窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法を表す断面図
【図6】本発明の実施の形態2における窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法を表す断面図
【図7】本発明の実施の形態2に示す製造方法により得られた窒化物半導体基板の断面図
【図8】本発明の実施の形態2におけるシリコンドットの一例を表す図
【図9】本発明の実施の形態2におけるシリコンドットの一例を表す断面図
【図10】本発明の実施の形態3における窒化物半導体基板製造用基体の断面図
【図11】本発明の実施の形態3における窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法を表す断面図
【図12】本発明の実施の形態3における窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法を表す断面図
【図13】本発明の実施の形態3における窒化物半導体層および窒化物半導体基板の製造方法を表す断面図
【符号の説明】
1、11、21 サファイア基板
2、12、22 シリコン層
3 Al0.1Ga0.9N層
3a Al0.1Ga0.9N基板
12a シリコンドット
13、23 GaN層
13a GaN核
13b、23a GaN基板
31 AlNバッファ層
32 GaNバッファ層

Claims (8)

  1. 母材基板の主面の一部にIII族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程と、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層上に窒化物半導体層を形成する工程とを有し、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さいIII族窒化物半導体とは異なる材料層を形成する工程を有し、
    前記母材基板がサファイア基板であり、前記III族窒化物半導体とは異なる材料層がシリコン層である窒化物半導体層の製造方法。
  2. 前記III族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程が、前記母材基板の断面からみて前記半導体層を矩形、台形または三角形にする請求項1記載の窒化物半導体層の製造方法。
  3. 前記III族窒化物半導体とは異なる材料層上に窒化物半導体層を形成する工程は、前記III族窒化物半導体とは異なる材料層の主面に対し選択的に窒化物半導体層を形成する工程である請求項1に記載の窒化物半導体層の製造方法。
  4. 母材基板上にIII族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程と、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層上に第1の窒化物半導体層を設ける工程と、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層および前記第1の窒化物半導体層の一部を前記母材基板が露出するまで除去する工程と、
    前記第1の窒化物半導体層上に第2の窒化物半導体層を成長する工程とを有し、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さいIII族窒化物半導体とは異なる材料層を形成する工程を有し、
    前記母材基板がサファイア基板であり、前記III族窒化物半導体とは異なる材料層がシリコン層である窒化物半導体層の製造方法。
  5. 母材基板の主面の一部にIII族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程と、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層上に窒化物半導体層を形成する工程と、
    前記母材基板と前記窒化物半導体層を分離する工程とを有し、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さい材料層を形成する工程を有し、
    前記母材基板がサファイア基板であり、前記III族窒化物半導体とは異なる材料層がシリコン層である窒化物半導体基板の製造方法。
  6. 前記III族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程が、前記母材基板の断面からみて前記半導体層を矩形、台形または三角形にする請求項記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  7. 前記III族窒化物半導体とは異なる材料層上に窒化物半導体層を形成する工程は、前記III族窒化物半導体とは異なる材料層の主面に対し選択的に窒化物半導体層を形成する工程である請求項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  8. 母材基板上にIII族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程と、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層上に第1の窒化物半導体層を設ける工程と、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層および前記第1の窒化物半導体層の一部を前記母材基板が露出するまで除去する工程と、
    前記第1の窒化物半導体層上に第2の窒化物半導体層を成長する工程と、
    前記母材基板と前記窒化物半導体層を分離する工程とを有し、
    前記III族窒化物半導体とは異なる材料層を設ける工程は、前記母材基板の熱膨張係数および前記窒化物半導体層の熱膨張係数のいずれよりも熱膨張係数の小さいIII族窒化物半導体とは異なる材料層を形成する工程を有し、
    前記母材基板がサファイア基板であり、前記III族窒化物半導体とは異なる材料層がシリコン層である窒化物半導体層の製造方法。
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