JP4530492B2 - 容器殺菌装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は容器殺菌装置、特に殺菌液の噴霧量の制御機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、細菌などが発育する可能性がある食品あるいは飲料等を充填した缶等の容器は充填後、加熱殺菌を行なうが、内容物自体の劣化を防ぐため、フレーバをよくするため、及び内容物に高温をかけられない場合、あるいは容器に用いられる塗料、フィルム等の耐熱性が低い場合には、容器への無菌充填を行なう必要がある。
【0003】
この場合、このような容器については、あらかじめ無菌状態としておくことが要求される。
そこで、従来から、容器に過酸化水素等の揮発性殺菌液を吹付け、殺菌を行なっている。その後、熱風(温風)乾燥等が行なわれている。
【0004】
前記殺菌を行なう装置としては、殺菌液を扱う殺菌装置ではなく、本来は塗料等を塗布するものであるが、例えば特公平8−22422号公報等に示された一般的な吹付け装置等が用いられる。
例えば図7に示すように前記塗料に代えて過酸化水素水等の揮発性殺菌液10を過酸化水素水タンク12に入れる。この過酸化水素水タンク12の殺菌液10は吸引ポンプ14により圧力をかけて噴霧ノズル16に供給され、噴霧ノズル16から容器である缶18等に吹付けられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、容器の殺菌を適正に行なうには、以下の理由から噴霧ノズル16からの噴霧量を一定量に保つことが非常に重要な課題となる。
すなわち、殺菌液の噴霧量にばらつきが生じ、殺菌不足であると、細菌及び微生物等の繁殖により容器の充填内容物が変敗しまうこともある。一方、余剰な殺菌液を吹き付けてしまうと、乾燥時、容器に付着した余剰殺菌液が液滴痕として残ってしまうこともある。
【0006】
このために、従来においては、前記噴霧ノズル16からの噴霧量を、流量センサ、或いは圧力センサ等のセンサ20により監視し、コンピュータ22により噴霧量が適正か否かの簡易な判断をすることが行なわれている。
しかしながら、食品あるいは飲料等を容器へ無菌充填を行なう場合、殺菌液を対象容器に安定して均一に噴霧することが、殺菌不足あるいは殺菌液残りの不良品が良品に混入してしまうという危険性を回避する上で、あるいは品質的にも重要であり、噴霧量の調整については、未だ改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は殺菌液の噴霧量の調整が適正に行なえる容器殺菌装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明にかかる容器殺菌装置は、流量調整弁と、流量センサと、圧力センサと、制御情報記憶手段と、流量制御手段と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記流量調整弁は、配管中の殺菌液の送液流量を調整し、噴霧手段からの噴霧量を調整可能とする。
【0009】
また、前記流量センサは、前記流量調整弁の後段に設けられ、前記噴霧手段からの噴霧量を、配管中の殺菌液の送液流量に基づいて監視するための殺菌液の送液流量情報を出力する。
前記圧力センサは、前記流量調整弁の後段に設けられ、前記噴霧手段からの噴霧量を、配管中の殺菌液の送液圧力に基づいて監視するための殺菌液の送液圧力情報を出力する。
【0010】
前記制御情報記憶手段は、所望の噴霧量が得られた時に予め得ておいた前記流量センサの出力と前記圧力センサの出力の関係を制御情報として記憶する。
前記流量制御手段は、前記流量センサからの出力及び圧力センサからの出力が前記制御情報記憶手段に記憶されている制御情報での所望の噴霧量が得られる出力となるように、前記流量調整弁に流量調整を行わせる。
なお、本発明においては、診断手段を備えることが好適である。
【0011】
ここで、前記診断手段は、前記制御情報記憶手段に記憶されている流量センサの出力と圧力センサの出力のそれぞれに、正常値範囲が設定されており、少なくともいずれか一方のセンサ出力が該センサに対応する正常値範囲から外れた場合は、これを噴霧量の異常として判断する。
また、本発明においては、前記配管中の発泡エアを外部に抜くためのエア抜き手段を備えることも好適である。
【0012】
さらに、本発明においては、前記噴霧手段に殺菌液のショット噴霧(間欠的な噴霧)を行なわせるショット噴霧制御手段と、前記流量センサと前記流量制御手段との間に設けられた補正手段と、を備え、
前記流量センサは、検出した流量に比例した数のパルス信号を出力し、
前記補正手段は、前記流量センサからの各パルス信号の時間間隔を監視し、前段のパルス信号との時間間隔が所定の時間間隔より小さいパルス信号を逆流パルスと判断し、
前記流量制御手段は、前記流量センサからの出力のうち、前記補正手段で判断された逆流パルス信号を除いた数のパルス信号を、流量センサの真の出力とみなすことも好適である。
【0013】
ここにいう容器とは、例えば食品あるいは飲料等を充填するための缶等をいう。この場合、缶内面、外面、底面はもちろん、缶を密閉する際に用いられる缶蓋等を含めたものをいう。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、殺菌液として過酸化水素水を想定し、これを容器としての缶に噴霧する場合について説明する。
図1には、本発明の一実施形態にかかる容器殺菌装置の概略構成が示されており、図2には、該本実施形態にかかる容器殺菌装置の制御系のブロック図が示されている。なお、前記図7と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
【0015】
図1,2に示す殺菌装置124は、缶(容器)118の搬送手段125と、噴霧ノズル116(噴霧手段)と、過酸化水素水冷却供給タンク112(以下、「殺菌液タンク」と呼ぶ)と、配管126と、エア抜きユニット(エア抜き手段)128と、加圧用圧力源(加圧手段)114と、ニードル自動可変バルブ130(流量調整弁)と、流量センサ132と、圧力センサ120と、コンピュータ122(流量制御手段、制御情報記憶手段、診断手段)を含んで構成される。
【0016】
ここで、前記噴霧ノズル116は、搬送手段125により自転しながら搬送される缶(容器)118に低濃度の過酸化水素水(揮発性殺菌液)を霧状に噴霧する。
また、前記殺菌液タンク112は、過酸化水素水を入れる。
【0017】
前記配管126は、前記殺菌液タンク112内の過酸化水素水を噴霧ノズル116に供給する。
前記加圧用圧力源114は、殺菌液タンク112内の過酸化水素水に圧力をかけて噴霧ノズル116に供給している。
すなわち、加圧用圧力源114からの圧縮エア又は窒素ガス(以下、総称して「圧縮空気」と呼ぶ)は、殺菌液タンク112に供給され、該殺菌液タンク112内の低濃度の過酸化水素水に一定圧力をかけて、噴霧ノズル116に供給している。
【0018】
前記ニードル自動可変バルブ130は、配管126内部の流路面積を変え、該配管126中の過酸化水素水の送液流量を調整している。これにより噴霧ノズル116からの噴霧量を調整可能にしている。
前記流量センサ132は、ニードル自動可変バルブ130の後段に設けられ、噴霧ノズル116への実噴霧量(実際の噴霧量)情報を電気パルス信号として出力する。
【0019】
前記圧力センサ120は、ニードル自動可変バルブ130の後段に設けられ、噴霧ノズル116からの噴霧圧力情報を、電気電圧比例信号として出力する。
図2に示される前記コンピュータ122は、制御情報記憶手段(例えばHDD等)134と、演算処理部136を含む。
ここで、前記制御情報記憶手段134は、所望の噴霧量が得られた時にあらかじめ取得しておいた流量センサ132の送液流量情報、及び圧力センサ120の送液圧力情報の関係を制御情報として記憶している。
【0020】
前記演算処理部136は、流量センサ132からの出力及び圧力センサ120からの出力が、制御情報記憶手段134に記憶されている制御情報での、所望の噴霧量が得られる出力となるように、ニードル自動可変バルブ130に流量調整を行なわせている。
【0021】
一方、加圧用圧力源114による殺菌液タンク112内での圧力、圧縮エア又は窒素ガス供給タンク137内での圧力は、例えばコンピュータ122等により、ある一定圧力に設定されている。
そして、本実施形態において、圧縮エア又は窒素ガス供給タンク137内の圧縮空気は、ソレノイドバルブ138を介して噴霧ノズル116に供給されている。
【0022】
このため、コンピュータ122によりソレノイドバルブ138と噴霧ノズル116内のソレノイドバルブ(図示省略)を同期させて開作動すると、噴霧ノズル116では過酸化水素水を圧縮空気で霧状にして缶118に噴霧する。
このコンピュータ122によりソレノイドバルブ138を閉作動すると、噴霧ノズルへの圧縮空気の供給が止まり、更に噴霧ノズル内のソレノイドバルブ(図示省略)と同期して閉動作すると、缶118への過酸化水素水の噴霧が止まる。
【0023】
以上のようにして本実施形態にかかる容器殺菌装置124を構成することにより、缶118に過酸化水素水の噴霧を行なうか否かの制御が行なわれる。
【0024】
<噴霧量の調整>
ところで、殺菌を適正に行うためには噴霧ノズル116からの殺菌液の噴霧量を一定量に制御しなければならない。このために、本実施形態では、ニードル自動可変バルブ130の後段にエア抜きユニット128を配置し、配管126中で発生する殺菌液の発泡エアを抜く。
【0025】
そして、エア抜きユニット128の後段に噴霧ノズル116への実噴霧量を監視するための流量センサ132及び圧力センサ120が設けられている。
そして、これらのセンサ132,120からの出力に基づいて、ニードル自動可変バルブ130の例えばPID動作、或いは位相差補償等のフィードバック制御が行なわれ、過酸化水素水の送液流量を適量に調整している。
【0026】
すなわち、本実施形態では、流量センサ132により配管126中の過酸化水素水の送液流量が監視され、かつ圧力センサ120により配管126中の過酸化水素水の送液圧力が監視されている。
これにより噴霧ノズル116からの噴霧量が正規稼動時にはリアルタイムに監視される。
【0027】
そして、これらのセンサ132,120の出力は、それぞれのアンプ140,142を介してコンピュータ122に入力されている。
この総合コンピュータ122の演算処理部136では、アンプ140,142からのそれぞれのセンサ132,120の出力に基づいて、ニードル自動可変バルブ130のフィードバック制御が行われる。
【0028】
ここで、コンピュータ122の制御情報記憶手段134には、所望の一定噴霧量が得られた時にあらかじめ取得しておいた流量センサ132の送液流量情報、及び圧力センサ120の送液圧力情報の関係が制御情報として記憶されている。このため、演算処理部136は、流量センサ132からの出力及び圧力センサ120からの出力が、制御情報記憶手段134の噴霧量と送液流量情報及び送液圧力情報の関係での所望の噴霧量が得られる出力となるように、ニードル自動可変バルブ130の流量調整が行なわれる。
【0029】
このようにして本実施形態では、正規稼動時、噴霧ノズル116からの噴霧量は流量センサ132と圧力センサ120によりリアルタイムに監視され、演算処理部136は、流量センサ132からの出力及び圧力センサ120からの出力が、制御情報記憶手段134の噴霧量と送液流量情報及び送液圧力情報の関係での所望の噴霧量が得られる出力となるように、ニードル自動可変バルブ130による配管126の内部の流路面積の調整を行なわれるので、送液流量、すなわち噴霧量が適量に調整される。
【0030】
この噴霧量の調整精度の向上機構の詳細であるが、本実施形態に用いられる低濃度の過酸化水素水は揮発性を有する殺菌液であるため、他の液体を噴霧する場合に比較し低い圧力をかけて噴霧する必要がある。
ここで、制御情報に関して、圧力センサからでは、ノズルの磨耗、ノズルの目詰まり、過酸化水素水の発泡、エア抜きユニットからの排出流量による圧力の増減値などが検出可能であるが、一方の流量センサからでは、実噴霧量の瞬時流量及び平均流量しかわからない。
【0031】
このように一種類のセンサからではこのような噴霧量制御に微妙な影響を与える情報を監視するのは非常に困難であるが、流量センサ及び圧力センサの出力の相互関係を用いることにより、低い圧力で噴霧する場合でも、前記の微妙な影響をもしっかり監視できる。
【0032】
この結果、本実施形態では、噴霧ノズル116からの噴霧量を、流量センサのみ、或いは圧力センサのみにより監視し、殺菌液タンク内の過酸化水素水にかける圧力を調整した場合に比較し、より微妙な噴霧量の調整を迅速に可能にしていると共に、下記のような正規稼動時の診断機構を構成可能にしている。
【0033】
<診断機能>
本実施形態では、正規稼動時において、コンピュータ122が、流量センサ132の送液流量情報、圧力センサ120の送液圧力情報のいずれか一方でも、該センサに対応する正常値範囲を外れた場合は、これを噴霧量等の異常として判断する診断手段としての機能をも有する。
【0034】
すなわち、制御情報記憶手段134に記憶されている、ある一定の噴霧量と、流量センサ出力及びの圧力センサ出力の関係のうちで、流量センサの送液流量情報、圧力センサの送液圧力情報にそれぞれの正常値範囲を設定している。
【0035】
そして、コンピュータ122は、ある一定噴霧量を得るのに、一方のセンサの出力が正常値範囲にあるにもかかわらず、他方のセンサの出力が正常値範囲を外れた状態が所定の時間以上続いた場合は、このような正常値範囲外の出力を示したセンサ、ニードル自動可変バルブ130、配管126の経路、噴霧ノズル116等に不具合が生じていると判断している。
【0036】
また、本実施形態では、コンピュータ122は、噴霧ノズル116の目詰まりと、その開放状態(噴霧している状態)、またエアー抜き量を検知するために、噴霧時の圧力センサの正常値範囲を設定している。これにより噴霧時の圧力センサ120の出力から瞬時にその判断が可能である。
【0037】
このようにしてコンピュータ122は、流量センサ132からの出力及び圧力センサ120からの出力に基づいて、センサ自体の不具合やニードル自動可変バルブ130等の部品の不具合や、噴霧ノズル116の目詰まり、開放状態、およびエアー抜き量を検出可能にしている。
また、本実施形態では、フィルタ144,146の目詰まりは、その前後に設けられた圧力センサ148,150により監視されている。
【0038】
例えばコンピュータ122は、圧力センサ148,150の出力を検知しており、その圧力出力偏差が正常値範囲を外れた状態が所定の時間以上続いた場合は、これをフィルタ144,146に目詰まりが発生したものと判断する。
そして、コンピュータ122は、異常ありと判断した場合、NG信号を発生し、その不具合の内容を使用者に知らせる。
【0039】
このように本実施形態では、圧力センサ120及び流量センサ132による噴霧量の管理だけでなく、該噴霧量の管理に影響を及ぼすであろう各種の要素の診断を可能にしたことにより、そのような工夫のない場合に比較し、噴霧量を常に適量に調整することができる。
【0040】
<気泡対策>
本実施形態においては、容器殺菌装置124のスタート時、または再スタート時は、配管126中に気泡が発生することがある。
このため、本実施形態では、エア抜きユニット128の電磁弁149により過酸化水素水の大流量排出を強制的に行っている。
すなわち、コンピュータ122は、配管126内から発泡エアが排除されてセンサ132,120の出力が安定するまで、エア抜きユニット128の電磁弁149から、配管126内の発泡エアを過酸化水素水と共に強制的に大流量排出させる。
【0041】
これにより、配管126に過酸化水素水を均一に供給することが可能になるので、短時間で流量は安定状態になる。
このように本実施形態では、配管126内で発泡したエアは、過酸化水素水と共に強制的に排出されるので、安定性を増大させることができる。これにより早い時間に流量コントロールが容易となる。
【0042】
そして、コンピュータ122は、センサ132,120の出力が演算処理部136の制御情報記憶手段134と比較し、一致したのを確認した後は、演算処理部136により制御されている一定量ニードルバルブ151によりエア抜きユニット128の排出流量を元の一定流量に戻し、更にニードル自動可変バルブ130の制御も同時に行ない、前記本実施形態において特徴的な流量管理を再開することとなる。
【0043】
なお、一定量ニードルバルブ151は、手動でも切り替えることができる。
また、過酸化水素水は、温度上昇により気体となる性質を持っており、前述のように配管126中や噴霧ノズル116内に発泡エアが混じると、安定した流量制御が行えないので、恒温に保つ必要がある。
そこで、本実施形態にかかる容器殺菌装置124では、殺菌液タンク112に冷却機能を持たせている。
【0044】
この殺菌液タンク112は、該殺菌液タンク112内の過酸化水素水を冷却するための冷却フィン(図示省略)が、例えばその外周囲とほぼ中心部のそれぞれに設けられている。
また、この殺菌液タンク112の外周及び内部フィンにはチラー154からの冷却水を循環させている。
【0045】
すなわち、本実施形態では、チラー154からの冷却水は、殺菌液タンク112の外周及び内部フィンに供給され、該殺菌液タンク112内の過酸化水素水の冷却を行い、再度チラー154に供給される。
また、殺菌液タンク112内に攪拌装置を設け、過酸化水素水の発泡が発生しない程度に攪拌し、過酸化水素水の温度のムラを大幅に低減する。チラー154に戻った冷却水の温度は再調整され、殺菌液タンク112に供給されている。
【0046】
この結果、噴霧ノズル116に供給する過酸化水素水の温度を適温に維持することができる。したがって、本実施形態では、配管126内で発生する過酸化水素水中のエアを最小限に抑えられるので、流量制御が非常に容易となる。
また、過酸化水素水は、配管126中を流れているだけで、配管126内の面抵抗等によっても温度が上昇し、かつ過酸化水素水が発泡してしまう場合もある。
【0047】
このために、本実施形態では、配管126の内面を鏡面研磨、電解研磨等の処理された面抵抗の少ない通過路材としたり、たまり等の段差等をなくしたり、屈曲している部分では内面を大きなRで構成する等して、配管126内では面抵抗が少ない構造としている。
この結果、たまりがなくなるので、過酸化水素水をよりスムースに流すことができる。
【0048】
したがって、そのような工夫のない場合に比較し、前記面抵抗等による過酸化水素水の発熱、及び発泡をより大幅に低減することができる。また、配管の内径を小径としたり、その全長を短くしても、過酸化水素水の温度上昇、及び発泡を低減することができる。
あるいは、このような冷却機構に代えて、図3に示すような2重構造の配管126、例えば内側導路を過酸化水素水の導路156、外側導路を冷却水の導路158としたものを用いることも可能である。これにより前記殺菌液タンク112と同様、過酸化水素水の冷却を良好に行なえる。
【0049】
ここで、前記2重構造の配管126を用いた場合は、冷却水は、過酸化水素水を流す方向とは逆方向に流すのが好ましい。
すなわち、前記2重構造の配管126を用いる場合は、前記冷却水を噴霧ノズル116の接続付近から入れ、殺菌液タンク112との接続付近から出すように構成している。
【0050】
この結果、殺菌液タンク112付近に比較し、温度上昇が予想される噴霧ノズル116付近の過酸化水素水を積極的に冷却することができる。
一方、殺菌液タンク112付近の過酸化水素水は、あまり温度が上昇していないので、噴霧ノズル116の付近を流れた後の冷却水でも、十分に適温に冷却することができる。
【0051】
したがって、前記2重構造の配管126を用いた場合は、冷却水の流れ方向を考慮しない場合に比較し、過酸化水素水の冷却を効率的に行なうことが可能となる。
また、本実施形態では、エア抜きユニット128からの過酸化水素水は、その圧力が途中で大気圧に戻されて、回収タンク160に回収される。
この回収タンク160内の過酸化水素水は、送液ポンプ161により殺菌液タンク112に送液されている。
【0052】
このとき、過酸化水素水は、濃度管理装置162により適当濃度に再調整され、フィルタ144,146を介して殺菌液タンク112に供給される。このようにしてエア抜きユニット128からの回収された過酸化水素水を再利用することにより、省資源化が図られる。
また、この濃度管理装置162には、さらに高濃度過酸化水素水用の配管164と、純水用の配管166をそれぞれ設けることが好ましい。
【0053】
この配管164からの高濃度過酸化水素水と、配管166からの純水は、前記濃度管理装置162により混合されて、回収されて再利用される過酸化水素水と合わせて適当濃度に調整され、殺菌液タンク112に供給される。
【0054】
以上のように本実施形態にかかる容器殺菌装置124によれば、このような配管126中の適所に設けられた圧力センサ120、及び流量センサ132により噴霧量をリアルタイムに監視し、演算処理部136により、流量センサ132からの出力及び圧力センサ120からの出力が制御情報記憶手段134の噴霧量と送液流量情報及び送液圧力情報の関係での所望の噴霧量が得られる出力となるように、ニードル自動可変バルブ130に流量調整を行なわせることにより、噴霧ノズル116からの噴霧量をより適量に調整することができる。これにより、噴霧量の調整の精度が要求される殺菌装置であっても、満足のゆく精度が得られる。
【0055】
また、本実施形態では、圧力センサ120及び流量センサ132による噴霧量の管理だけでなく、噴霧量の調整に影響を及ぼすであろう各種の要素の診断を可能にしたことにより、そのような工夫のない場合に比較し、噴霧量を常に適量に調整することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、配管中の発泡エアを外部に抜くためのエア抜きユニット128を流量センサ132の前段に備えることにより、過酸化水素中の発泡エアを外部に効率良く、かつ良好に抜くことができるので、配管中に流れる過酸化水素水の流量制御が迅速かつ容易となるので、スタート時、或いは再スタート時でも、噴霧量の制御をより適正に行なえる。
【0057】
なお、本発明の容器殺菌装置は、前記各構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形が可能である。
例えば、前記各構成では、揮発性殺菌液として過酸化水素水を用い、これを圧縮空気で霧状にして容器に噴霧した例について説明したが、本発明の殺菌装置は、これに限定されるものではなく、圧縮空気で霧状にすることなくそのまま吹付けたり、他の種類の殺菌液や殺菌対象物、例えば紙や合成樹脂製の容器等にも適用してもよい。
【0058】
また、前記構成では、流量センサ132の後段に圧力センサ120を設けた例について説明したが、本発明の容器殺菌装置は、これに限定されるものではなく、流量センサ132の前段に圧力センサ120を設けてもよい。
また、前記構成では、連続噴霧を行う例について説明したが、噴霧ノズル116の内部に装着されているソレノイドバルブ(図示省略)を演算処理部136により制御して、下記のようにショット噴霧(間欠噴霧)を行うことも可能となる。
【0059】
<ショット噴霧への適用>
連続噴霧を行う際、噴霧ノズル116からの噴霧量を監視するためには、通常流量センサが用いられるが、ショット噴霧を行う際についても、流量センサを用いた場合には、噴霧量を正確に監視できず、従来は、ショット噴霧量を監視するためには圧力センサが用いられる。
【0060】
しかしながら、この場合、連続噴霧を行う場合とショット噴霧を行う場合とで例えば別の殺菌装置を用意する必要があり、面倒であった。
そこで、本発明者らが、前記ショット噴霧に流量センサを用いた場合の噴霧量取得情報の信頼性低下について鋭意検討を行った結果、下記のような原因を究明した。
【0061】
すなわち、図4(A)に示すような縦軸に実際の積算流量を、横軸に時間を取った積算流量と、同図(B)に示すような縦軸にセンサ出力レベルを、横軸に時間を取った流量センサ出力について、例えば正流パルスP1の立下りエッジが来てから次のパルスP2の立上りエッジが来るまでの間(時間t1−t2間)での積算流量を比較すると、時間はt1〜t2へと経過していても、実際の積算流量は増加しておらず、逆流が生じていると考えられる。
【0062】
一方、流量センサでは、時間t1−t2の間に、逆流によって戻された体積により歯車が逆転したときに、正転で一度検出部を通過した被検出体(殺菌液)が再び検出部を通過することにより、歯車の一つの被検出体が正転、逆転、正転し、計3回検出部を通過するので、パルスP2分だけ、1パルス余計に検出されることになる。
【0063】
このため、同図(B)に示すような流量センサ出力をそのまま流量の算出に用いると、同図(A)に示すような実際の流量よりも大きな出力が出てしまい、正確な流量制御、つまり正確なショット噴霧量制御が行なえない。
そこで、本実施形態においては、図5に示すように、検出した流量に比例した数のパルス信号を出力する流量センサ132としての歯車式流量センサと演算処理部136の流量制御手段170との間に補正手段172を設けている。
【0064】
この補正手段172は、流量センサ132からの各パルスの時間間隔を監視し、前段のパルスとの時間間隔が最小パルス時間間隔(所定の時間間隔)tiより小さいパルスを逆流パルスと判断する。
そして、流量制御手段170は、流量センサ132からの出力に対し、前段の補正手段172で判断された逆流パルスを除いた数のパルスを、流量センサ132の真の出力とみなしている。
【0065】
すなわち、補正手段172が、正流パルスエッジから次のパルスエッジが来るまでの時間間隔を計測し、最小パルス時間間隔tiを用いて、以下に示す判定条件により正流パルスか、逆流パルスかの判定を行なっている。
【0066】
正流パルスの判定条件
▲1▼一定時間以上(最小パルス時間間隔ti以上)、同一レベル継続後のエッジは正流のものとして取り込む。すなわち、通常は一定流速で流体が流れているので、その状態で一定未満のパルス間隔にはならないからである。
▲2▼逆流パルスは2度続かないという前提条件より、逆流パルス終了後のエッジは正流のものとみなす。
【0067】
逆流パルスの判定条件
▲1▼正流立下りパルスエッジから最小パルス時間間隔ti未満に次のパルスの立ち上りエッジがあり、かつ変化後、最小パルス時間間隔ti未満にそのパルスの立下りエッジが来たとき、このパルスは正流方向としては前提条件によりありえない速さのパルスである。このようなパルスを逆流によって生じたパルス、つまり逆流パルスとみなして、このパルスのエッジは有効とせず、周期計測は逆流パルス発生前の立下りから継続する。
【0068】
このように本実施形態では、正流パルスの立下りエッジから次のパルスが来るまでの時間間隔を計測し、次のパルスエッジが来たときに正流パルスか、或いは逆流パルスかの判定を行なう。最小パルス間隔未満であれば、逆流パルスと判定する。
【0069】
この結果、流量制御手段170は、図6(A)に示すような正流パルスP1の立下りエッジから最小パルス間隔ti未満で立上りエッジが来た逆流パルスP2を流量の算出には用いず、流量センサ132からの出力に対し、同図(B)に示すように、補正手段172で判断された逆流パルスP2を除き、1つのパルスP3とする補正を行ない、これを流量センサ132の真の出力とみなすので、本来の流量を求めることができる。
【0070】
しかも、前記連続噴霧を行う殺菌装置124を用いてショット噴霧を行った場合であっても、前述のようにして得られた正流パルスの数のみに基づいて、正確な流量情報が得られるので、連続噴霧とショット噴霧とで別の殺菌装置を用いた場合に比較し、汎用性が向上される。
【0071】
なお、本実施形態では、正流パルスか、或いは逆流パルスかの判定に用いられる前記最小パルス時間間隔tiは、流量センサ132のパルスレートと最大流速の2項目により算出する。
パルスレート:q〔ml/P〕
最大流速:m〔ml/min〕
最大周波数:f=m/60/q〔Hz〕
最大周期:τ=1/f〔s〕
最小パルス時間間隔:ti=τ/2〔s〕
【0072】
また、コンピュータ122は、噴霧ノズル116の不具合前兆を監視するために、1ショット噴霧毎の圧力を移動平均化、比較する機能を有している。
例えば、コンピュータ122は、1ショット噴霧毎の圧力の平均値が所定の正常値範囲より外れた場合、これを噴霧ノズル116の不具合の前兆として判断する。
【0073】
この結果、噴霧ノズル116の内部のニードル弁、シート、パッキング、スプリング等の部品(図示省略)の不具合を監視することが可能となる。
なお、コンピュータ122は、必要に応じてNG信号等を送信し、噴霧ノズル116の不具合を使用者に知らせることも可能である。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる容器殺菌装置によれば、流量調整弁の後段に設けられた流量センサ及び圧力センサにより噴霧手段からの噴霧量をリアルタイムに監視し、流量センサからの出力及び圧力センサからの出力が制御情報記憶手段に記憶されている制御情報での所望の噴霧量が得られる出力となるように流量調整弁に流量調整を行わせる流量制御手段を備えることとしたので、噴霧手段からの噴霧量の制御が適正に行なえる。
また、本発明においては、少なくとも一方のセンサ出力が該センサに対応する正常値範囲を外れた場合は、噴霧量に異常ありと判断する診断手段を備えることにより、噴霧量の制御が常に正確に行なえる。
また、本発明においては、配管中の発泡エアを外部に抜くためのエア抜き手段を備えることにより、噴霧量の制御をより適正に行なえる。
さらに、本発明においては、補正手段により流量センサからの各パルス信号の時間間隔を監視し、前段のパルス信号との時間間隔が所定の時間間隔より小さいパルス信号を逆流パルスと判断し、流量制御手段により、前記流量センサからの出力のうち、補正手段で判断された逆流パルス信号を除いた数のパルス信号を流量センサの真の出力とみなすことにより、ショット噴霧量の制御が適正に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる容器殺菌装置の概略構成の説明図である。
【図2】図1に示した容器殺菌装置の制御系のブロック図である。
【図3】前記図1に示した容器殺菌装置に好適に用いられる配管の説明図である。
【図4】ショット噴霧を行なう際の問題点の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる容器殺菌装置によりショット噴霧を行なうのに好適に用いられる逆流パルス信号の補正手段の説明図である。
【図6】図5に示した補正手段の作用の説明図である。
【図7】従来の容器殺菌装置の概略構成の説明図である。
【符号の説明】
112…過酸化水素水タンク(殺菌液タンク)
114…加圧用圧力源(加圧手段)
116…噴霧ノズル(噴霧手段)
118…缶(容器)
120…圧力センサ
122…コンピュータ(制御情報記憶手段、流量制御手段、診断手段、ショット噴霧制御手段、補正手段)
124…容器殺菌装置
126…配管
128…エア抜きユニット(エア抜き手段)
130…ニードル自動可変バルブ(流量調整弁)
132…流量センサ
Claims (4)
- 容器に霧状揮発性殺菌液を噴霧する噴霧手段と、前記殺菌液を入れる殺菌液タンクと、前記殺菌液タンク内の殺菌液を前記噴霧手段に供給するための配管と、前記殺菌液タンク内の殺菌液に圧力をかけて前記噴霧手段に供給する加圧手段と、を備えた容器殺菌装置において、
前記配管中の殺菌液の送液流量を調整し、前記噴霧手段からの噴霧量を調整可能な流量調整弁と、
前記流量調整弁の後段に設けられ、前記噴霧手段からの噴霧量を、配管中の殺菌液の送液流量に基づいて監視するための殺菌液の送液流量情報を出力する流量センサと、
前記流量調整弁の後段に設けられ、前記噴霧手段からの噴霧量を、配管中の殺菌液の送液圧力に基づいて監視するための殺菌液の送液圧力情報を出力する圧力センサと、
所望の噴霧量が得られた時に予め得ておいた前記流量センサ出力と前記圧力センサ出力の関係を制御情報として記憶する制御情報記憶手段と、
前記流量センサからの出力及び圧力センサからの出力が前記制御情報記憶手段に記憶されている制御情報での所望の噴霧量が得られる出力となるように、前記流量調整弁に流量調整を行わせる流量制御手段と、
を備えたことを特徴とする容器殺菌装置。 - 請求項1記載の容器殺菌装置において、
前記制御情報記憶手段に記憶されている流量センサの出力と圧力センサの出力のそれぞれに、正常値範囲が設定されており、少なくともいずれか一方のセンサ出力が該センサに対応する正常値範囲から外れた場合は、これを噴霧量の異常として判断する診断手段を備えたことを特徴とする容器殺菌装置。 - 請求項1又は2記載の容器殺菌装置において、
前記配管中の発泡エアを外部に抜くためのエア抜き手段を備えたことを特徴とする容器殺菌装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の容器殺菌装置において、
前記噴霧手段に殺菌液のショット噴霧を行なわせるショット噴霧制御手段と、
前記流量センサと前記流量制御手段との間に設けられた補正手段と、
を備え、
前記流量センサは、検出した流量に比例した数のパルス信号を出力し、
前記補正手段は、前記流量センサからの各パルス信号の時間間隔を監視し、前段のパルス信号との時間間隔が所定の時間間隔より小さいパルス信号を逆流パルスと判断し、
前記流量制御手段は、前記流量センサからの出力のうち、前記補正手段で判断された逆流パルス信号を除いた数のパルス信号を、流量センサの真の出力とみなすことを特徴とする容器殺菌装置。
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