JP4527844B2 - 電池用電極板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池用電極板の製造方法に関する。さらに詳細には、電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良を低減することのできる電池用電極板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化や化石燃料等の資源の枯渇が問題となっている。このため、ガソリン車に替わって、電池のみ、あるいは電池とガソリンの双方によって走行する電気自動車等の電動車輌が普及し始めている。現在、この電動車輌の駆動源としては、ニッケル・水素蓄電池が用いられている。そして、今後も、このニッケル・水素蓄電池や、リチウムイオン二次電池を駆動源とした電動車輌の市場はさらに拡大することが期待されている。
【0003】
これらの電池に使用される電極板は、フラット状の電極シートを所定の寸法に切断することにより得られる。従来、電池用電極板の切断方法としては、図4、図5に示すように、電極シート3の切断予定部4の両側全面をそれぞれ電極板と同じ面積を有する上下一対のフラット状の切断金型6によって挟持固定し、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型6をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させることにより、電極シート3を所定の寸法に切断する方法が採用されている。また、切断後の電極板に発生するバリを抑制するために、電極シートの切断予定部の厚みを薄くして切断する方法も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の切断方法では、電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良の主な原因である異物の電極板表面への付着やエッジバリが発生する。異物の電極板表面への付着は、切断予定部の両側全面にフラット状の切断金型を接触させた状態で電極シートを切断する場合に、切断カスが切断金型によって電極板の表面に圧着されることにより生じる。また、エッジバリは、フラット状の電極シートを切断する際に生じる。さらに、電極シートの切断予定部の厚みが薄い場合であっても、その薄い部分が切断時に曲げられ、かつ、バリの抑制も不十分であるために、エッジバリが生じる。
【0005】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、切断カスの電極板表面への付着やバリの発生を抑制することにより、電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良を低減することのできる電池用電極板の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る電池用電極板の製造方法は、活物質を保持した三次元金属多孔体基板からなる電極シートを切断金型によって所定の寸法に切断する電池用電極板の製造方法であって、前記電極シートの切断予定部とその両側近傍の厚みを、前記電極シートの本体の厚みよりも予め薄く形成しておき、前記電極シートを切断する際に、前記薄く形成した部分の前記切断予定部の両側近傍のみをそれぞれ一対の前記切断金型によって挟持固定し、前記切断予定部の両側にそれぞれ位置する前記一対の切断金型をそれぞれ前記電極シートに垂直な逆方向に相対的に移動させることにより、前記電極シートを切断することを特徴とする。この電池用電極板の製造方法によれば、電極シートの切断時に発生する切断カスが切断金型によって電極板の表面に圧着される頻度を小さくして、電極板の表面への異物の付着を減少させることができると共に、電極板の表面にバリが発生することも防止することができる。三次元金属多孔体基板はスポンジ状であるため、薄くすることによって鋼状となり、表面バリ(電極板の表面からのバリの高さ)は基板厚みが大きいほど高くなる傾向にあるからである。その結果、このようにして得られた電極板群が電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良を低減することができる。尚、ここでいう『切断予定部の両側近傍』の近傍とは、切断された電極板の幅寸法の1/10以内、長さ寸法の1/20以内の領域を指す(以下、同様)。
【0007】
また、前記本発明の電池用電極板の製造方法においては、前記薄く形成した部分の厚みが前記電極シートの本体の厚みの1/2〜1/5であるのが好ましい。薄い方がバリは出にくいが、薄すぎると切断しにくくなるからである。
また、前記本発明の電池用電極板の製造方法においては、前記電極シートの前記切断予定部とその両側近傍を圧縮成形することにより、前記切断予定部とその両側近傍の厚みを薄くするのが好ましい。
【0008】
また、前記本発明の電池用電極板の製造方法においては、前記電極シートが、前記三次元金属多孔体基板に前記活物質を充填したものであるのが好ましい。
【0009】
また、前記本発明の電池用電極板の製造方法においては、前記電極シートが、前記三次元金属多孔体基板に前記活物質を充填したものであり、前記電極シートを切断する以前の段階で、前記電極シートの切断予定部の両側近傍を樹脂で被覆する工程又は樹脂成分を含む液体を含浸させる工程を、前記電極シートの前記切断予定部とその両側近傍の厚みを、前記電極シートの本体の厚みよりも薄く形成する工程と順不同で有するのが好ましい。この好ましい例によれば、電極板の表面への異物の付着をさらに減少させることができると共に、電極板の表面にバリが発生することもさらに防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
本発明の電池用電極板の製造方法は、活物質を保持した電極シートを切断金型によって所定の寸法に切断することにより、電池用の電極板を製造する方法である。この場合、電極シートの切断予定部の両側近傍をそれぞれ上下一対の切断金型の切断刃によって挟持固定し、切断予定部の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型をそれぞれ電極シートに垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させることにより、電極シートが切断される。
【0012】
そして、この切断方法によれば、電極シートの切断時に発生する切断カスが切断金型によって電極板の表面に圧着される頻度を小さくして、電極板の表面への異物の付着を減少させることができる。その結果、このようにして得られた電極板群が電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良を低減することができる。
【0013】
また、本発明においては、電極シートの切断予定部とその両側近傍の厚みを、電極シートの本体の厚みよりも予め薄く形成しておき、電極シートを切断する際に、薄く形成した部分の切断予定部の両側をそれぞれ一対の切断金型によって挟持固定するのが望ましい。この切断方法によれば、電極板の表面への異物の付着を減少させることができるばかりでなく、電極板の表面にバリが発生することも防止することができるので、このようにして得られた電極板群が電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良をさらに低減することができる。
【0014】
電極シートを切断する際に発生するバリは、切断予定部周辺の電極シートの厚みに比例して大きくなるので、電極シートの切断予定部とその両側近傍の厚みは電極シートの本体の厚み以下、さらには、電極シートの本体の厚みの1/2〜1/5程度にするのが望ましい。
【0015】
また、本発明においては、電極シートの切断予定部の両側近傍を予め樹脂で被覆するのが望ましい。これにより、切断面端部における針状の尖ったバリの発生を抑えることができる。また、バリが発生したとしても、このバリの端部が絶縁性の樹脂で覆われているため、電極板群が電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良を低減することができる。
【0016】
この場合、樹脂で被覆する方法としては、樹脂フィルムを熱溶着する方法が簡便であるが、加熱溶融させたホットメルト接着剤を塗布してもよい。
【0017】
また、本発明においては、電極シートの切断予定部の両側近傍を予め樹脂成分を含む液体を含浸させるのが望ましい。これにより、切断予定部の両側近傍の骨格金属が樹脂によって接着もしくは被覆され、切断時の針状のバリや尖った切断屑の発生を防止することができる。樹脂成分を含む液体を含浸させる方法としては、樹脂成分を溶解又は分散させた比較的低粘度の液体を塗布あるいは吹き付けるなどの方法を採ることができる。
【0018】
また、本発明においては、電極シートを切断する以前の段階で、電極シートの切断予定部の両側近傍を樹脂で被覆する工程又は樹脂成分を含む液体(樹脂溶液)を含浸させる工程と、電極シートの切断予定部とその両側近傍の厚みを、電極シートの本体の厚みよりも薄く形成する工程を順不同で実施するのが望ましい。この方法によれば、切断予定部の両側近傍の骨格金属がより強固に圧接され、より肉薄に圧縮変形されると共に、この部分が絶縁性の樹脂で被覆される。その結果、針状のバリの発生、尖った切断屑や脱落した活物質の電極板の表面への付着を防止することができる。
【0019】
また、本発明においては、電極シートとして、パンチングメタルからなる芯材に活物質を塗着したものを用い、電極シートの切断予定部とその両側近傍に活物質が塗着されていない部分(無地部)を予め形成しておき、電極シートを切断する際に、無地部の切断予定部の両側をそれぞれ上下一対の切断金型の切断刃によって挟持固定するのが望ましい。この切断方法によれば、電極板の表面への異物の付着を減少させることができるばかりでなく、無地部を切断することとなるので、電極板の表面にバリが発生することも防止することができる。その結果、このようにして得られた電極板群が電池に組み込まれた後の電極板間の短絡不良をさらに低減することができる。
【0020】
【実施例】
以下、具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
図1は本実施例で用いた電極シート及び切断金型を示す概略断面図、図2はその概略平面図である。
図1、図2において、1は上下一対の切断金型である。また、3は電極シートであり、電極シート3の切断予定部4の両側には、それぞれ上下一対の切断金型1が配置される。上下一対の切断金型1は、それぞれ電極板の外周に沿って設けられた切断刃2を有しており、電極シート3を切断する際に、上下一対の切断刃2によって電極シート3の切断予定部4の両側近傍がそれぞれ挟持固定される。ここで、切断金型1の切断刃2の幅は1.0±0.5mmである。
【0022】
以下、このような構成を備えた切断金型を用いて電極板を製造する方法について説明する。
【0023】
まず、水酸化ニッケル100重量部に、ニッケル金属粉末10重量部とコバルト酸化物粉末5重量部とを加えて混合し、これらに分散媒として水を全ペーストに占める比率が30重量%となるように加え、これを練合してペースト状の活物質を作製した。
【0024】
このようにして作製したペースト状の活物質をタンクに入れ、当該タンクに接続された充填ノズルを、幅110mm、長さ210mm、厚さ1.0mm、多孔度98%、平均孔径100μmの帯状のスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体に対向させて、上記ペースト状の活物質をスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体中に充填した。この場合、充填ノズルから9〜10g/枚の一定量の活物質を吐出することにより、スポンジ状ニッケル金属多孔体中への充填を行なった。その後、全体の厚さが0.50mmとなるように加圧して、電極シート3を得た(図1参照)。
【0025】
次いで、図1、図2に示すように、電極シート3の切断予定部4の両側近傍をそれぞれ上下一対の切断金型1の切断刃2によって挟持固定し(切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型1をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させた。これにより、電極シート3が切断予定部4で幅50mm、長さ100mmの大きさに切断され、ニッケル電極板が得られた。
【0026】
以上のようにして得られた3枚のニッケル電極板と、公知のセパレータと、公知の4枚のミッシュメタル・ニッケル系水素吸蔵合金負極板とを用いて電極板群が作製される。
【0027】
上記のようにして得られた電極板群に電池に組み込んだときにかかる押圧力とほぼ同等の300kg重(2940N)の負荷をかけながら、電極板群の抵抗を測定して、短絡検査を行なった。また、比較例1として、電極シート3の切断予定部4の両側全面をそれぞれ電極板と同じ面積を有する上下一対のフラット状の切断金型6によって挟持固定し(切断予定部4の両側全面に切断金型が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させて切断することによって得られたニッケル電極板を用いた以外は本実施例と同様の構成からなる電極板群についても、同様の短絡検査を行なった。下記(表1)に、本実施例の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合と、比較例1の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の電極板群の短絡頻度の違いを示す。
【0028】
【表1】
【0029】
上記(表1)から分かるように、比較例1の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は1.2%であるのに対し、本実施例の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は0.4%と低減されている。これは、比較例1の製造方法のように切断予定部4の両側全面に切断金型を接触させた状態で電極シート3を切断すると、電極シート3の切断時に発生する切断カスが切断金型によってニッケル電極板の表面に圧着され、それが表面異物となって電極板間の短絡を引き起こすが、本実施例の製造方法のように切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2を接触させた状態で電極シート3を切断することにより、切断カスが切断金型1によってニッケル電極板の表面に圧着される頻度を小さくして、ニッケル電極板の表面への異物の付着を減少させることができるからであると考えられる。
【0030】
(実施例2)
図3は本実施例で用いた電極シート及び切断金型を示す概略断面図である。
図2、図3において、1は上下一対の切断金型である。また、3は電極シートであり、電極シート3の切断予定部4の両側には、それぞれ上下一対の切断金型1が配置される。電極シート3の切断予定部4とその周辺部には、電極シート本体の厚みよりも薄い薄部5が形成されている。上下一対の切断金型1は、それぞれ電極板の外周に沿って設けられた切断刃2を有しており、電極シート3を切断する際に、上下一対の切断刃2によって電極シート3の切断予定部4の両側の薄部5がそれぞれ挟持固定される。
【0031】
以下、このような構成を備えた切断金型を用いて電極板を製造する方法について説明する。
【0032】
本実施例においては、上記実施例1の場合と同じ大きさのスポンジ状ニッケル金属多孔体に、電極シート3の切断予定部4とその周辺部に対応させて幅2.0mm、厚み0.20mmの薄部5を圧延金型によって形成した。
【0033】
次いで、上記実施例1と同様にして、ペースト状の活物質をスポンジ状ニッケル金属多孔体中に充填し、全体の厚さ(上記薄部を除く)が0.50mmとなるように加圧して、電極シート3を得た。
【0034】
次いで、図2、図3に示すように、電極シート3の切断予定部4の両側の薄部5をそれぞれ上下一対の切断金型1の切断刃2によって挟持固定し(切断予定部4の両側の薄部5のみに切断金型1の切断刃2が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型1をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させた。これにより、電極シート3が切断予定部4で幅50mm、長さ100mmの大きさに切断され、ニッケル電極板が得られた。次いで、上記実施例1と同様にして、公知のセパレータと、公知のミッシュメタル・ニッケル系水素吸蔵合金負極板とから電極板群を作製した。
【0035】
上記のようにして得られた電極板群に300kg重(2940N)の負荷をかけながら、電極板群の抵抗を測定して、短絡検査を行なった。また、比較例2として、薄部5が形成されたスポンジ状ニッケル金属多孔体を用い、本実施例と同様の方法によって得られた電極シート3の切断予定部4の両側全面をそれぞれ上下一対のフラット状の切断金型によって挟持固定し(切断予定部4の両側全面に切断金型が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させて切断することによって得られたニッケル電極板についても、本実施例と同様に電極板群を作製し、同様の短絡検査を行なった。さらに、比較例3として、薄部5が形成されていないスポンジ状ニッケル金属多孔体を用い、電極シート3の切断予定部4の両側全面をそれぞれ電極板と同じ面積を有する上下一対のフラット状の切断金型によって挟持固定し(切断予定部4の両側全面に切断金型が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させて切断することによって得られたニッケル電極板についても、本実施例と同様に電極板群を作製し、同様の短絡検査を行なった。下記(表2)に、本実施例の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合と、比較例2の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合と、比較例3の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の電極板群の短絡頻度の違いを示す。
【0036】
【表2】
【0037】
上記(表2)から分かるように、比較例3の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は1.2%であり、比較例2の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は0.8%であるのに対し、本実施例の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は0.1%と低減されている。これは、比較例3の製造方法のように切断予定部4の両側全面に切断金型を接触させた状態で電極シート3を切断すると、電極シート3の切断時に発生する切断カスが切断金型によってニッケル電極板の表面に圧着され、それが表面異物となって電極板群の短絡を引き起こし、また、比較例2の製造方法のように、薄部5が形成されたスポンジ状ニッケル金属多孔体を用いた場合でも、切断予定部4の両側全面に切断金型を接触させた状態で電極シート3を切断すると、ニッケル電極板の表面に発生するバリは減少するが、電極シート3の切断時に発生する切断カスが切断金型によってニッケル電極板の表面に圧着される現象は同じように起こる。これに対し、本実施例の製造方法のように薄部5が形成されたスポンジ状ニッケル金属多孔体を用い、かつ、切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2を接触させた状態で電極シート3を切断することにより、切断カスが切断金型1によってニッケル電極板の表面に圧着される頻度を小さくして、ニッケル電極板の表面への異物の付着を減少させることができると共に、ニッケル電極板の表面にバリが発生することも防止することができるからであると考えられる。
【0038】
尚、本実施例においては、切断予定部4とその周辺部に対応させて、予めスポンジ状ニッケル金属多孔体に薄部5を設け、次いで、ペースト状の活物質を充填したが、スポンジ状ニッケル金属多孔体にペースト状の活物質を充填した後、切断予定部4とその周辺部を圧縮成形して薄部5を設けた電極シート3であっても、ほぼ同様の効果が得られる。
【0039】
(実施例3)
本実施例においては、上記実施例1と同様のスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体を基板として用い、これに上記実施例1と同様にして活物質を充填した。次いで、この基板の表裏両面の切断予定部に、幅5mm、厚さ0.2mmのポリエチレン−ポリビニールアルコール共重合体からなる樹脂フィルムを、熱溶着温度90℃で熱溶着させた。次いで、この基板全体の厚さが0.5mmとなるように加圧して、電極シート3を得た。
【0040】
次いで、電極シート3の切断予定部4の両側近傍をそれぞれ上下一対の切断金型1の切断刃2によって挟持固定し(切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型1をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させた。これにより、電極シート3が切断予定部4で幅50mm、長さ100mmの大きさに切断され、ニッケル電極板が得られた。
【0041】
(実施例4)
本実施例においては、上記実施例1と同様のスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体を基板として用い、これに上記実施例1と同様にして活物質を充填した。次いで、この基板の表裏両面の切断予定部の幅5mmの部分に樹脂溶液を塗布し、基板内に含浸させた後、90℃の温度で加熱乾燥した。塗布した樹脂の溶液は、ポリエチレン−ポリビニールアルコール共重合体10重量%をn−プロパノール58重量%、水32重量%の混合液中に溶解させて調整したものであり、粘度は約100mPa・sであった。次いで、この基板全体の厚さが0.5mmとなるように加圧して、電極シート3を得た。
【0042】
次いで、上記実施例3と同様に、電極シート3の切断予定部4の両側近傍をそれぞれ上下一対の切断金型1の切断刃2によって挟持固定して切断した。これにより、幅50mm、長さ100mmの大きさのニッケル電極板が得られた。
【0043】
(実施例5)
本実施例においては、上記実施例1と同様のスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体を基板として用い、これに上記実施例2と同様にして薄部5を形成した後、ペースト状の活物質を充填した。次いで、上記実施例3で用いた樹脂フィルムを薄部5の両面に熱溶着させた。そして、この基板全体の厚さが0.5mmとなるように加圧して、電極シート3を得た。次いで、上記実施例3と同様に切断し、幅50mm、長さ100mmの大きさのニッケル電極板を得た。
【0044】
(実施例6)
本実施例においては、上記実施例1と同様のスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体を基板として用い、これに上記実施例1と同様にして活物質を充填した。次いで、この基板の表裏両面の切断予定部に上記実施例4とに樹脂溶液を塗布し、乾燥した。次いで、先に樹脂溶液を塗布した部分を表裏両面から加圧して、厚さ0.2mmの薄部を形成した。次いで、この基板全体の厚さが0.5mmとなるように加圧して、電極シート3を得た。次いで、上記実施例3と同様に切断し、幅50mm、長さ100mmの大きさのニッケル電極板を得た。
【0045】
上記実施例3〜6で得られた各ニッケル電極板と、公知のセパレータと、公知のミッシュメタル・ニッケル系水素吸蔵合金負極板とを用いて上記実施例1と同様にして電極板群を作製した。
【0046】
上記のようにして得られた電極板群に電池に組み込んだときにかかる押圧力とほぼ同等の300kg重(2940N)の負荷をかけながら、電極板群の抵抗を測定して、短絡検査を行なった。また、比較例4、5、6、7として、それぞれ上記実施例3、4、5、6で得られた電極シート3の切断予定部4の両側全面をそれぞれ電極板と同じ面積を有する上下一対のフラット状の切断金型によって挟持固定して切断することによって得られたニッケル電極板を用いて上記実施例1と同様にして作製した電極板群についても、同様の短絡検査を行なった。下記(表3)に、上記実施例3〜6の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合と、比較例4〜7の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の電極板群の短絡頻度の違いを示す。
【0047】
【表3】
【0048】
上記(表3)から分かるように、実施例3及び実施例4の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は、それぞれ0.1%、0.3%と低い。また、薄部の形成と樹脂被覆又は樹脂溶液の含浸を組み合わせた実施例5及び実施例6の製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は、それぞれ0.05%、0.09%とさらに低くなっている。
【0049】
これに対し、比較例4〜7の製造方法のように、それぞれ実施例3〜6と同じ電極シート3を用いた場合であっても、切断予定部4の両側全面に切断金型を接触させた状態で電極シート3を切断する製造方法によって得られたニッケル電極板を用いた場合の短絡頻度は高くなっている。このように短絡頻度に違いが生じるのは、実施例3〜6のように切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2を接触させた状態で電極シート3を切断すると、切断カスが切断金型1によってニッケル電極板の表面に圧着されにくく、バリの発生も防止されるからであると考えられる。
【0050】
(実施例7)
本実施例においては、まず、水素吸蔵合金100重量部に、酸化イットリウム10重量部とスチレン・ブタジエン・ラバー10重量部とを加えて混合し、これらに分散媒として水を全ペーストに占める比率が15重量%となるように加え、これを練合してペースト状の活物質を作製した。
【0051】
このようにして作製したペースト状の活物質をタンクに入れ、当該タンクに接続された充填ノズルを、幅110mm、長さ210mm、厚さ0.1mm、多孔度30%、平均孔径1mmのパンチングメタル状のニッケル芯材に対向させ、ニッケル芯材自体をその長さ方向に走行させながら上記ペースト状の活物質をニッケル芯材上に塗着した。この場合、充填ノズルから13〜15g/枚の一定量の活物質を吐出して、ニッケル芯材上への塗着を行なった。また、この場合、電極シート3の切断予定部4とその周辺部に対応する幅5.0mmの部分は、活物質を塗着せずに無地部とした。その後、全体の厚さが0.40mmとなるように加圧して、電極シート3を得た。
【0052】
次いで、図1、図2に示すように、電極シート3の切断予定部4の両側近傍をそれぞれ上下一対の切断金型1の切断刃2によって挟持固定し(切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型1をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させた。これにより、電極シート3が切断予定部4で幅50mm、長さ100mmの大きさに切断され、水素吸蔵合金電極板が得られた。
【0053】
次いで、上記実施例1と同様にして得られたニッケル電極板と公知のセパレータを用いて、上記実施例1と同様に電極板群を作製した。
【0054】
上記のようにして得られた電極板群に300kg重(2940N)の負荷をかけながら、電極板群の抵抗を測定して、短絡検査を行なった。また、比較例8として、電極シート3の切断予定部4の両側全面をそれぞれ電極板と同じ面積を有する上下一対のフラット状の切断金型によって挟持固定し(切断予定部4の両側全面に切断金型が接触した状態)、切断予定部4の両側にそれぞれ位置する上下一対の切断金型をそれぞれ電極シート3に垂直な逆方向(上方向と下方向)に昇降させて切断することによって得られた水素吸蔵合金電極板を用いた以外は本実施例と同様の構成からなる電極板群についても、同様の短絡検査を行なった。下記(表4)に、本実施例の製造方法によって得られた水素吸蔵合金電極板を用いた場合と、比較例8の製造方法によって得られた水素吸蔵合金電極板を用いた場合の電極板群の短絡頻度の違いを示す。
【0055】
【表4】
【0056】
上記(表4)から分かるように、比較例8の製造方法によって得られた水素吸蔵合金電極板を用いた場合の短絡頻度は1.2%であるのに対し、本実施例の製造方法によって得られた水素吸蔵合金電極板を用いた場合の短絡頻度は0.1%と低減されている。これは、電極シート3にパンチングメタル芯材を用いた場合においても、比較例8の製造方法のように切断予定部4の両側全面に切断金型を接触させた状態で電極シート3を切断すると、電極板の表面への異物の付着を引き起こすが、本実施例の製造方法のように電極シート3の切断予定部4とその周辺部に対応する部分を、活物質を塗着せずに無地部とし、電極シート3を切断する際に、無地部の切断予定部4の両側近傍のみに切断金型1の切断刃2を接触させた状態で電極シート3を切断することにより、電極板の表面への異物の付着を減少させることができ、さらに、水素吸蔵合金電極板の表面にバリが発生することも防止することができるからであると考えられる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電極シートの切断カスが電極板の表面に圧着されて表面異物を生成することや、電極板の表面にバリが発生することを防止することができるので、電池用電極板群の短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態で用いた電極シート及び切断金型を示す概略断面図
【図2】本発明の一実施の形態で用いた電極シート及び切断金型を示す概略平面図
【図3】本発明の一実施の形態で用いた他の電極シート及び切断金型を示す概略断面図
【図4】従来技術で用いられる電極シート及び切断金型を示す概略断面図
【図5】従来技術で用いられる電極シート及び切断金型を示す概略平面図
【符号の説明】
1 切断金型
2 切断刃
3 電極シート
4 切断予定部
5 薄部
6 切断金型
Claims (5)
- 活物質を保持した三次元金属多孔体基板からなる電極シートを切断金型によって所定の寸法に切断する電池用電極板の製造方法であって、前記電極シートの切断予定部とその両側近傍の厚みを、前記電極シートの本体の厚みよりも予め薄く形成しておき、前記電極シートを切断する際に、前記薄く形成した部分の前記切断予定部の両側近傍のみをそれぞれ一対の前記切断金型によって挟持固定し、前記切断予定部の両側にそれぞれ位置する前記一対の切断金型をそれぞれ前記電極シートに垂直な逆方向に相対的に移動させることにより、前記電極シートを切断することを特徴とする電池用電極板の製造方法。
- 前記薄く形成した部分の厚みが前記電極シートの本体の厚みの1/2〜1/5である請求項1に記載の電池用電極板の製造方法。
- 前記電極シートの前記切断予定部とその両側近傍を圧縮成形することにより、前記切断予定部とその両側近傍の厚みを薄くする請求項1又は2に記載の電池用電極板の製造方法。
- 前記電極シートが、前記三次元金属多孔体基板に前記活物質を充填したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池用電極板の製造方法。
- 前記電極シートが、前記三次元金属多孔体基板に前記活物質を充填したものであり、前記電極シートを切断する以前の段階で、前記電極シートの切断予定部の両側近傍を樹脂で被覆する工程又は樹脂成分を含む液体を含浸させる工程を、前記電極シートの前記切断予定部とその両側近傍の厚みを、前記電極シートの本体の厚みよりも薄く形成する工程と順不同で有する請求項1に記載の電池用電極板の製造方法。
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