JP4526228B2 - RNAiによる新規治療法および治療剤 - Google Patents

RNAiによる新規治療法および治療剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二本鎖RNAを用いた疾患の新規治療、ならびにそのための組成物、方法およびキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子療法が近年注目を浴びている。遺伝子療法には、発現を目的とする遺伝子をアデノ随伴ウイルスなどのベクターなどにより被検体に導入する方法、アンチセンス遺伝子を利用して目的とする遺伝子の発現を抑制する方法などを利用するものがある。
【0003】
アンチセンス遺伝子を利用した遺伝子抑制方法は、約20年前に開発され、種々の分野において利用されている(特許文献1を参照のこと)。アンチセンス療法は、疾病の病因が遺伝子の発現調節によるものであって、遺伝子産物(特に、タンパク質)が感染症および癌などの病因となっている場合に、それらの原因物質の産生を抑制するために、病因の遺伝子情報を伝達するメッセンジャーRNA(mRNA)の働きを抑えるものである。
【0004】
mRNAをセンスRNAとし、それに対して相補的なDNAまたはRNAをそれぞれアンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAと呼ぶ。アンチセンス療法では、アンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAがmRNAと二本鎖を形成することによりmRNAの働きが抑制され、疾病の治療が達成される。この概念に基づいて、AIDS等のウイルス感染症、癌などの疾病治療を目的としたアンチセンス療法についての提案が種々なされている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0005】
アンチセンス療法において用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、試験管内および細胞レベルでの研究では有効であるようであるが、ヌクレアーゼによるアンチセンスオリゴヌクレオチドの分解反応に対する安定性および細胞膜の透過性に問題があり、その結果アンチセンス療法の有効性が予期されたほど高くないというのが現状である。それらの問題を解決するために、DNAやRNAの天然型リン酸ジエステルをホスホン酸エステルもしくはチオリン酸エステル、またはアミノ酸結合に変換したりするなどの工夫が従来なされている。
【0006】
しかし、アンチセンス療法は、実際の治療に使用することができるほどに有効性が上がる例は報告されておらず、アンチセンスを用いた遺伝子抑制療法について限界があるとの認識がある(非特許文献1および2)。
【0007】
極最近になってRNAi(RNA interference)と呼ばれる技術が遺伝子研究において用いられている。RNAiは特異的に遺伝子産物の合成を抑える技術として注目され、ノックダウン技術において利用されている。しかし、医療への応用は報告されているものの、実際に効果があったとの報告はあまりない。
【0008】
目的の遺伝子の発現を有効に抑制することができれば、種々の治療に応用することができる。したがって、当該分野においてそのような新規治療の登場が待ち望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特許第2651442号公報
【特許文献2】
特開平3−99093号公報
【特許文献3】
特開平4−154794号公報
【特許文献4】
特開平6−41185号公報
【特許文献5】
特開平6−179694号公報
【非特許文献1】
Ohnishi T.et al.,BBRC 245,319−324(1998)
【非特許文献2】
Taki T.et al.,BBRC 223,434−438(1996)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
遺伝子を抑制することにより疾患を治療するための新規治療システムを提供すること。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、一部、本発明者らが、二本鎖RNAが疾患を担う病原遺伝子を抑制し、RNAiという現象により実際に疾患を治癒させることができることを予想外に発見したことによって、解決された。
【0012】
従って、本発明は、以下を提供する。
(1) A)病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子、を含む、医薬組成物。
(2) 上記因子は、上記病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体である、項目1に記載の医薬組成物。
(3) 上記RNAまたは改変体は、3’突出末端を含む、項目2に記載の医薬組成物。
(4) 上記3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNAである、項目3に記載の医薬組成物。
(5) 上記3’突出末端は、2〜4ヌクレオチド長のDNAである、項目3に記載の医薬組成物。
(6) 上記病原遺伝子は、癌遺伝子、癌抑制遺伝子、高血圧に関与する遺伝子、糖尿病関連遺伝子、高脂血症関連遺伝子、肥満関連遺伝子、動脈硬化疾患関連遺伝子、痴呆に関連する遺伝子および老化に関連する遺伝子からなる群より選択される、項目1に記載の医薬組成物。
(7) 上記病原遺伝子は、癌遺伝子である、項目1に記載の医薬組成物。
(8) 上記病原遺伝子は、癌抑制遺伝子である、項目1に記載の医薬組成物。
(9) 上記病原遺伝子は、DNA修復系の遺伝子である、項目1に記載の医薬組成物。
(10) 上記病原遺伝子は、Rad51である、項目1に記載の医薬組成物。
(11) 上記配列は、上記病原遺伝子の上記核酸配列に対して少なくとも約80%の相同性を有する、項目2に記載の医薬組成物。
(12) 上記配列は、上記病原遺伝子の上記核酸配列に対して少なくとも約90%の相同性を有する、項目2に記載の医薬組成物。
(13) 上記配列は、上記病原遺伝子の上記核酸配列に対して約100%の相同性を有する、項目2に記載の医薬組成物。
(14) 上記配列は、上記病原遺伝子の翻訳開始領域と相同な配列を実質的に含まない、項目2に記載の医薬組成物。
(15) 上記配列は、上記病原遺伝子の翻訳開始領域から少なくとも10塩基はなれた、項目2に記載の医薬組成物。
(16) 上記因子は、上記病原遺伝子の発現を抑制し得る、項目1に記載の医薬組成物。
(17) 上記RNAは、少なくとも約17ヌクレオチド長である、項目2に記載の医薬組成物。
(18) 上記RNAは、約10ヌクレオチド長〜約10000ヌクレオチド長である、項目2に記載の医薬組成物。
(19) 上記二本鎖の部分は、少なくとも約10ヌクレオチド長である、項目2に記載の医薬組成物。
(20) 上記二本鎖の部分は、約10ヌクレオチド長〜約10000ヌクレオチド長である、項目2に記載の医薬組成物。
(21) 上記因子は、siRNAまたはshRNAである、項目1に記載の医薬組成物。
(22) 上記因子は、siRNAまたはshRNAを細胞内で発現させる塩基配列を含むベクターである、項目1に記載の医薬組成物。
(23) 上記塩基配列は、プロモーターの制御下に配置される、項目22に記載の医薬組成物。
(24) 上記RNAまたは改変体は、配列番号1または3に示す配列のうち、少なくとも連続する約10のヌクレオチド長の配列を含む、項目2に記載の医薬組成物。
(25) 上記因子は、人工的に合成されたものであるか、またはインビトロで合成されたものである、項目1に記載の医薬組成物。
(26) 上記医薬組成物は、癌の予防、処置または予後のためである、項目1に記載の医薬組成物。
(27) 上記癌は、固形癌または造血器腫瘍である、項目26に記載の医薬組成物。
(28) 上記医薬組成物は、他の抗癌剤とともに使用される補助剤である、項目26に記載の医薬組成物。
(29) 上記医薬組成物は、放射線療法とともに投与される、項目26に記載の医薬組成物。
(30) 上記医薬組成物は、他の抗癌剤の効果を増強する、項目26に記載の医薬組成物。
(31) 上記医薬組成物は、放射線療法の効果を増強する、項目26に記載の医薬組成物。
(32) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目1に記載の医薬組成物。
(33) A)病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子;および
B)二本鎖RNA以外の抗癌剤、
を含む、癌を処置または予防するためのキット。
(34) 上記因子は、上記病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体である、項目33に記載のキット。
(35) 上記RNAまたは改変体は、3’突出末端を含む、項目34に記載のキット。
(36) 上記3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNAである、項目35に記載のキット。
(37) 上記3’突出末端は、2〜4ヌクレオチド長のDNAである、項目35に記載のキット。
(38) 上記病原遺伝子は、癌遺伝子、癌抑制遺伝子、高血圧に関与する遺伝子、糖尿病関連遺伝子、高脂血症関連遺伝子、肥満関連遺伝子、動脈硬化疾患関連遺伝子、痴呆に関連する遺伝子および老化に関連する遺伝子からなる群より選択される、項目33に記載のキット。
(39) 上記病原遺伝子は、癌遺伝子である、項目33に記載のキット。
(40) 上記病原遺伝子は、癌抑制遺伝子である、項目33に記載のキット。
(41) 上記病原遺伝子は、DNA修復系の遺伝子である、項目33に記載のキット。
(42) 上記病原遺伝子は、Rad51である、項目33に記載のキット。
(43) 病原遺伝子に起因する疾患または障害を予防または処置するための方法であって、
A)上記病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子を、そのような疾患または障害を予防または処置すべき被検体に投与する工程、
を包含する、方法。
(44) 上記疾患または障害は、癌である、項目43に記載の方法。
(45) 他の抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目44に記載の方法。
(46) 放射線療法を投与する工程をさらに包含する、項目44に記載の方法。
(47) 上記因子は、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体である、項目43に記載の方法。
(48) 病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子の、上記病原遺伝子に起因する疾患または障害を予防または処置するための使用。
(49) 病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子の、上記病原遺伝子に起因する疾患または障害を予防または処置するための医薬を製造するための、使用。
(50) 病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子をコードする核酸配列を含む、発現ベクター。
(51) 項目50に記載の発現ベクターを含む、細胞。
(52) 上記RNAを一過性発現する、項目51に記載の細胞。
(53) 上記RNAを安定に発現する、項目52に記載の細胞。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0014】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0015】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチドなどが例示される。オリゴヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。好ましくは二本鎖が使用されるが、本発明では二本鎖に限定されるわけではない。従って、本明細書においてオリゴヌクレオチドの「誘導体」とは、上述のようなヌクレオチドの誘導体を含むオリゴヌクレオチドをいう。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic AcidRes.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0016】
用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNAの概念を包含する。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0017】
本明細書において「RNA」とは、リボ核酸(ribonucleic acid)の略称であり、当該分野において最も広義に使用されるのと同じ意味で用いられ、(塩基)−(D−リボース)−(リン酸)からなるヌクレオチドが鎖状に重合したポリヌクレオチドまたはその等価物をいう。
【0018】
本明細書において「二本鎖」のRNAまたはDNAとは、二本のRNAまたはDNAが相補性により鎖を構成したものをいう。
【0019】
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。RNAiは、遺伝子研究に用いられているが、医療への応用は着想のみの報告がほとんどであって、実際的な応用はほとんど報告されていない。実際、医療において治療剤として使用され得ることがいくつか報告されているものの、有意な効果があるとの記載は、特にがんについては全く報告されていない。
【0020】
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。
【0021】
本明細書において「アンチセンス」とは、mRNAなどに対して相補的な塩基配列をもつRNAをいう。RNA分子に対して相補的塩基配列をもつRNAは,分子間結合を介してRNAの機能発現に阻害的に作用すると考えられることから、従来遺伝子の発現阻害に用いられている。
【0022】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得るものを包含する。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0023】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造、5’および3’部分にある非翻訳領域ならびにスプライシングによって除去されるイントロンを規定する構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、特定の状況において、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。
【0024】
本明細書において「病因」とは、疾患または障害の原因をいう。
【0025】
本明細書において「病原遺伝子」とは、その宿主に存在するときに疾患または障害を起させる能力を有する因子(遺伝子)をいう。そのよ うな病原遺伝子の病原性は、病原体(遺伝子)の侵襲性、増殖性、毒素産生能、宿主防衛機構の抑制能などを総合した質的なものといえる。本明細書では病原遺伝子は病因遺伝子とも称される。そのような病原遺伝子の例としては、例えば、ras、erbB2、myc、APC;BRCA1、RB、p53などの癌遺伝 子または癌抑制遺伝子;レニンなどの高血圧に関与する遺伝子;インスリンなどの糖尿病関連遺伝子;LDLレセプターなどの高脂血症関連遺伝子;レプチンなどの肥満関連遺伝子;アンギオテンシンなどの動脈硬化疾患関連遺伝子;痴呆の原因として知られているアポリポタンパク質およびプレセニリン;老化に関連する遺伝子などが挙げられるがそれに限定されない。
【0026】
本明細書において「癌遺伝子」とは、ゲノム上に存在するかまたは外来起源のタンパク質をコードする遺伝子をいい、特に、変異した場合に正常対立遺伝子が存在していても細胞の癌化に関与し得る遺伝子およびその変異した遺伝子を指す。そのような癌遺伝子は、当業者が周知の技術を用いて同定することができる。そのような癌遺伝子特定方法としては、例えば、癌遺伝子と考えられるDNAをマウスNIH3T3マウス線維芽細胞などに導入し、染色体に組み込ませる。その結果、(1)正常な抑制を無視して増殖し、(2)他の細胞があるところに侵入する性質をもつことによる測定が挙げられるがそれらに限定されない。そのような癌遺伝子としては、例えば、sis、erbB,kit,src,abl.,ras,myc,myb,fos,jun,etsなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0027】
本明細書において、「癌抑制遺伝子」とは、本来、細胞分裂を阻害するが、変異を起こすことにより、細胞分裂を抑制する機能が失われる遺伝子をいう。したがって、両方の対立遺伝子が不活性化されて、はじめて細胞は分裂をくり返す癌となる。そのような癌抑制遺伝子は、当業者が周知の技術を用いて同定することができる。そのような癌抑制遺伝子特定方法としては、例えば、インビトロで、正常細胞と癌細胞を融合させることにより、癌細胞が正常細胞へと形質転換することで特定できる方法が挙げられるが、それらに限定されない。そのような癌抑制遺伝子特定方法としては、具体的には、例えば、同一の癌患者の血液と腫瘍組織を1対の検体として、ヘテロ接合性の消失(LOH;loss of heterozygosity)をヒトゲノム上に散在するマーカーを用いて検索することにより、がん抑制遺伝子の存在領域を推定することができる。さらにその領域にしぼってポジショナルクローニングによって癌組織で両方が変異、あるいは欠失した遺伝子が癌抑制遺伝子として特定できる。このような工程を包含する方法が挙げられる。そのような癌抑制遺伝子としては、例えば、p53,Rb,BRCA1,BRCA2,MSH,APC,PTENが挙げられるがそれらに限定されない。
【0028】
本明細書において「DNA修復系の遺伝子」とは、DNA修復におけるいくつかの機構の種々の過程を触媒する特異的な酵素またはタンパク質をコードする遺伝子をいう。そのようなDNA修復系の遺伝子は、当業者が周知の技術を用いて同定することができる。そのようなDNA修復系の遺伝子の特定方法としては、例えば、DNAに損傷を与える紫外線、X線などに対する感受性の高い細胞に種々のDNAを導入することにより、紫外線、X線などに対する抵抗性を回復させる遺伝子を特定する方法があげられる。また、大腸菌など原核生物や酵母などの下等真核生物で特定されたDNA修復遺伝子のホモログを高等生物からクローニングする方法もあるが、それらに限定されない。そのようなDNA修復系の遺伝子特定方法としては、具体的には、例えば、DNA切断の初期修復過程に機能するNBS1遺伝子は、ナイミーヘン症候群と呼ばれる放射線に対して感受性の高い患者の細胞へ、染色体移入や酵母人工染色体導入により機能的な相補性試験を利用して、マッピングし、さらに、ポジショナルクローニングにより修復遺伝子NBS1を単離する工程を包含する方法が挙げられる。そのようなDNA修復系の遺伝子としては、例えば、NBS1,ヒストンH2AX,RAD50,RAD51,RAD52,RAD54,ATM,MRE11,Ku70,Ku80,DNA−PKcs,RecQ,XPA,RPA,MSH,MLH,XPG,XRCC1,APEX,Polβ、MGMT,OGG1,RuvABC,ATR,WRN,BLM,XP−V,DNAPolβ、Sgs1,Tel,DinB,Rad6,Rad5,MutH,PMS,Polβ,MTH1,Chk1,Cds1などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0029】
本明細書において「Rad51」または「RAD51」とは、相同組換えおよびDNA二本鎖切断修復に関与する遺伝子をいい、代表的には、配列番号1(マウス)、配列番号3(ヒト)に記載される核酸配列の全部または一部を有する核酸分子、または配列番号2、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに配列番号2、4に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびにそれらのオルソログ、改変体、ホモログなどが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなRAD51は、当業者が周知の技術を用いて同定することができる。そのようなRad51遺伝子の特定方法としては、例えば、組換え修復の遺伝子が欠損したためにX線やMMS(メチルメタンスルホン酸)などのDNA切断処理に対して感受性が高まった細胞などに、DNAを導入し、抵抗性を回復することで、組換え修復遺伝子の機能をもつことが特定する方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6577−6580、1993)が挙げられるが、それらに限定されない。そのようなDNA修復系の遺伝子特定方法としては、具体的には、例えば、原核生物である大腸菌の相同組換え修復遺伝子RecAや酵母などの下等真核生物で特定されたDNA相同組換え修復遺伝子Rad51のホモログを高等生物からその塩基配列の相同性を利用し、RT−PCRおよびハイブリダイゼーション法でクローニングする工程を包含する方法が挙げられるが、それらに限定されない。そのような修復系の遺伝子としては、例えば、RecA,Rad51,RadA,Dmc1,Rad51B,Rad51C,Rad51D,XRCC2,XRCC3,Rad55,Rad57,Rad52,NBS1,Mre11,Rad50などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0030】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2種類以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの塩基の配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間で塩基配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0031】
本明細書では塩基配列およびアミノ酸配列の同一性、類似性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0032】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。
【0033】
「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、抑制を目的とする遺伝子のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。核酸配列の相同性は、たとえばAltschulら(J.Mol.Biol.215,403−410(1990))が開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより、scoreで類似度が示される。
【0034】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0035】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0036】
本明細書中において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。
【0037】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。ヌクレオチドとしては、DNA、RNAなどが含まれるがそれらに限定されない。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0039】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子がリガンドである場合、その生物学的活性は、そのリガンドが対応するレセプターに結合する活性を包含する。本発明の1実施形態において、癌細胞の放射線感受性に関する生物学的活性は、対数増殖期の培養細胞に種々のX線などの放射線を照射した場合、その後の細胞の生存率がどのように低下するかを測定することによって決定することができる。測定方法としては、MTTアッセイなどのように、コハク酸脱水素酵素活性を細胞の生存能力の指標にしたり、プレートに細胞を播種して、細胞集落形成数を数える方法があるが、それらに限らない。別の実施形態では、生物学的活性は、遺伝子の発現の抑制をいう。本明細書において生物学的活性をアッセイする方法としては、培養細胞に特定の遺伝子の配列に対応する化学合成した二重鎖RNA(siRNA)をリポフェクトアミン2000とともにトランスフェクトする。24時間培養した後、細胞を回収し、抽出したタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法とウェスタンブロットにより、目的のタンパク質の量的減少を定量化することにより、遺伝子発現の抑制活性として、測定するアッセイが挙げられるがそれらに限定されない。
【0040】
本明細書において「実質的に相同」または「約100%相同」とは、目的とする配列と同一であるか、または同一ではないが同一の機能を有する程度に類似することをいう。本発明の好ましい実施形態において、同一性が100%のものが使用される。本発明において使用される配列と標的として切断するmRNAの配列との関係については、100%一致することが好ましい。しかし、siRNAのようなRNAiを引き起こす因子において、中央から外れた位置についての塩基の変異については、完全にRNAiによる切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存する。他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNAiによるmRNAの切断活性が極度に低下する。このような性質を利用して、変異をもつmRNAについては、その変異を中央に配したsiRNAを合成し、細胞内に導入することで特異的に変異を含むmRNAだけを分解することができる。
【0041】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、遺伝子発現抑制活性など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0042】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0043】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0044】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、動物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
【0045】
本明細書において「遺伝子の発現を抑制し得る」とは、ある遺伝子の発現産物(mRNA,タンパク質など)が通常の状態の発現量よりも減少させることができる性質をいう。
【0046】
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)とは、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状態が起こらないように処置することをいう。
【0047】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
【0048】
本明細書において「癌」または「がん」は、互換可能に用いられ、異型性が強く、増殖が正常細胞より速く、周囲組織に破壊性に浸潤し得あるいは転移をおこし得る悪性腫瘍またはそのような悪性腫瘍が存在する状態をいう。本発明においては、癌は固形癌および造血器腫瘍を含むがそれらに限定されない。
【0049】
本明細書において「固形癌」は、固形の形状がある癌をいい、白血病などの造血器腫瘍とは対峙する概念である。そのような固形癌としては、例えば、乳癌、肝癌、胃癌、肺癌、頭頸部癌、子宮頸部癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、悪性リンパ腫、食道癌、脳腫瘍、骨腫瘍が挙げられるがそれらに限定されない。
【0050】
本明細書において「癌治療」は、抗癌剤(例えば、化学療法剤、放射線治療など)を投与することによって行われるか、または外科的に除去などをする外科的治療を包含する。
【0051】
本明細書において用いられる化学療法剤は、当該分野において周知であり、抗癌剤マニュアル第2版 塚越茂他編 中外医学社;Pharmacology;Lippincott Williams & Wilkins,Inc.に記載されている。そのような化学療法剤は、例えば、以下が挙げられるがそれに限定されない:1)アルキル化剤(DNA,タンパク質などの細胞構成成分をアルキル化して細胞毒性を示す。例えば、シクロホスファミド,ブスルファン、チオテパ、ダカルバジンが挙げられるがそれらに限定されない);2)代謝拮抗剤(おもに核酸の合成を阻害する薬剤(例えば、葉酸代謝拮抗剤としてメトトレキサートなど、プリン代謝拮抗剤として6−メルカプトプリンなど、ピリミジン代謝拮抗剤としてフルオロウラシル(5−FU)など);3)DNAトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、エトポシド(それぞれトポイソメラーゼI、IIを阻害する));4)チューブリン作用薬(微小管形成を阻害し、細胞分裂を抑制する。ビンブラスチン、ビンクリスチンなど);5)白金化合物(DNAおよびタンパク質との結合による細胞毒性を示す。シスプラチン、カルボプラチンなど);6)抗がん抗生物質(DNAと結合し、DNA合成、RNA合成を阻害する。アドリアマイシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシンなど);7)ホルモン剤(乳がん、子宮がん、前立腺がんなどホルモン依存性のがんに適応。タモキシフェン、リュープロレリン(LH−RH)など);8)生物製剤(アスパラギン要求性血液悪性腫瘍に対して有効なアスパラギナーゼ、直接的な抗腫瘍作用と免疫増強による間接作用を示すインターフェロンなどがある);9)免疫賦活剤(免疫応答能を増強し、間接的に抗腫瘍活性を示す。シイタケ由来の多糖体であるレンチナン、微生物由来のペプチドであるベスタチンなど)。
【0052】
本明細書において「抗癌剤」とは、がん(腫瘍)細胞の増殖を選択的に抑制し、がんの薬剤および放射線治療の両方を包含する。そのような抗癌剤は当該分野において周知であり、例えば、抗癌剤マニュアル第2版 塚越茂他編 中外医学社;Pharmacology;Lippincott Williams & Wilkins,Inc.に記載されている。
【0053】
本明細書において「放射線療法」または「放射線治療」とは、互換可能に使用され、電離放射線または放射性物質を利用した疾患の治療をいう。代表的な放射線療法としては、X線、γ線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子捕捉療法が挙げられるがそれに限定されない。好ましい放射線療法としては、重粒子線が挙げられる。重粒子線を用いた療法は装置が大きく一般的でないことがある。そのような放射線療法は当該分野において周知であり、例えば、放射線検査と治療の基礎;放射線治療と集学的治療:邵啓全(滋賀医大 放射線):総合消化器ケア 6巻 6号 Page 79-89,6-7 (2002.02) に記載されている。
【0054】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。
【0055】
本発明により、RNAiが実際の疾患治療に有効であることが示されたことから、インビトロで抑制効果が証明されている病原遺伝子もまた、インビボでも有効であることが企図される。
【0056】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols inMolecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd Ed.および同第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0057】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、動物個体などの宿主細胞において自律複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。本明細書において、ベクターはプラスミドであり得る。あるいは、アデノウイルスなどのウイルス由来ベクターも使用され得る。
【0058】
「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。ヒトの場合、本発明に用いる発現ベクターはさらにテトラサイクリンで発現のON/OFFができる発現誘導抑制できるシステム、短鎖RNA転写に強力でRNAポリメラーゼIIIで転写されるU6プロモーター、インビトロでのRNA発現に適しているT7プロモーター、さらに不要な部分を排除できるCre−loxP配列などを含み得る。
【0059】
「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、動物個体などの宿主細胞において自律複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0060】
動物細胞に対する「組換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107(特開平3−22979、Cytotechnology,3,133(1990))、pREP4(Invitrogen)、pAGE103(J.Biochem.,101,1307(1987))、pAMo、pAMoA(J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993))などが例示される。
【0061】
「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターとしては、SV40ポリAが挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
【0063】
本明細書において、遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異性」とは、生物(例えば、動物)の部位(例えば、動物の場合、心臓、心筋細胞など)におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。「時期特異性」とは、生物(たとえば、動物)の特定の段階(例えば、疾患発症時、細胞の分化、発生および老化に至る段階、発熱および放射線被爆時または薬品投与に伴う状態の変化、ウイルス・細菌などの感染時などに応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。そのような特異性は、適切なプロモーターを選択することによって、所望の生物に導入することができる。
【0064】
本明細書において、本発明のプロモーターの発現が「構成的」であるとは、生物のすべての組織において、その生物の生長の幼若期または成熟期のいずれにあってもほぼ一定の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノーザンブロット分析したとき、例えば、任意の時点で(例えば、2点以上の同一または対応する部位のいずれにおいても実質的に発現がみられるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモーターは、通常の生育環境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。本発明のプロモーターの発現が「刺激応答性」であるとは、少なくとも1つの刺激(例えば、心臓発作時、心筋梗塞時など)が生物体に与えられたとき、その発現量が変化する性質をいう。特に、発現量が増加する性質を「刺激誘導性」といい、発現量が減少する性質を「刺激減少性」という。「刺激減少性」の発現は、正常時において、発現が見られることを前提としているので、「構成的」な発現と重複する概念である。これらの性質は、生物の任意の部分からRNAを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析することまたは発現されたタンパク質をウェスタンブロットにより定量することにより決定することができる。刺激誘導性のプロモーターを本発明のポリペプチドをコードする核酸とともに組み込んだベクターで形質転換された動物または動物の部分(特定の細胞、組織など)は、そのプロモーターの誘導活性をもつ刺激因子を用いることにより、ある条件下での目的の分子の発現を行うことができる。
【0065】
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。動物において使用する場合、エンハンサーとしては、動物のエンハンサー、SV40ウイルスのエンハンサーなどが好ましい。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0066】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0067】
本発明は、任意の生物において利用され得る。そのような生物における利用のための技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、NewYork、NY;Sambrook Jら (1987)MolecularCloning: A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。
【0068】
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、動物細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
【0069】
本明細書において「動物」は、当該分野において最も広義で用いられ、脊椎動物および無脊椎動物を含む。動物としては、哺乳綱、鳥綱、爬虫綱、両生綱、魚綱、昆虫綱、蠕虫綱などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、動物は、好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり得、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)であり得る。最も好ましくはヒトであり得る。
【0070】
本発明のポリペプチド、システム、組成物および方法は、哺乳動物だけでなく他の動物(昆虫、線虫なども含む)を含む動物全体において機能することが企図される。なぜなら、疾患(または病害)を担う遺伝子は、哺乳動物以外の生物においても存在することが知られているからである。
【0071】
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。
【0072】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、Rad51を例にとると、真核生物のRad51(ヒトおよび酵母)のオルソログとしては、大腸菌のRecAおよび古細菌RadAがある。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。例えば、Rad51遺伝子については、パラログとして、Rad51B、Rad51C、Rad51D、XRCC2、XRCC3の少なくとも5種類の遺伝子が知られている。オルソログは、分子系統樹の推定から有用であることがわかっている。したがって、本発明において使用される病原遺伝子のオルソログおよびパラログにおいてもまた、本発明において有用であり得る。
【0073】
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において当然に含まれる。
【0074】
本発明のポリヌクレオチドのような因子は、任意の生物由来であり得る。好ましくは、その生物は、脊椎動物(例えば、哺乳動物、爬虫類、両生類、魚類、鳥類など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、齧歯類(マウス、ラットなど)、霊長類(ヒトなど)など)であり得る。
【0075】
本発明の因子は、生物への移入に適した形態であれば、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。投与経路としては経口投与、非経口投与、患部への直接投与などが挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、生物への移入に適した形態であれば、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、幹部への局所投与、皮膚投与など)、患部への直接投与などが挙げられる。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。本発明のポリペプチドおよび医薬は、全身投与されるとき、発熱物質を含ない、経口的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能なタンパク質溶液の調製は、pH、等張性、安定性などに相当な注意を払うことを条件として、当業者の技術範囲内である。
【0077】
本発明において医薬の処方のために使用される溶媒は、水性または非水性のいずれかの性質を有し得る。さらに、そのビヒクルは、処方物の、pH、容量オスモル濃度、粘性、明澄性、色、滅菌性、安定性、等張性、崩壊速度、または臭いを改変または維持するための他の処方物材料を含み得る。同様に、本発明の組成物は、有効成分の放出速度を改変または維持するため、または有効成分の吸収もしくは透過を促進するための他の処方物材料を含み得る。
【0078】
本発明は、医薬組成物として処方される場合、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990)と、所望の程度の純度を有する選択された組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で、保存のために調製され得る。
【0079】
そのような適切な薬学的に受容可能な因子としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。代表的には、本発明の医薬は、本発明の活性成分を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに組成物の形態で投与され得る。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。そのような受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))。
【0080】
注射剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、適切な溶剤(生理食塩水、PBSのような緩衝液、滅菌水など)に溶解した後、フィルターなどで濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプルなど)に充填することにより注射剤を調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。非侵襲的なカテーテルを用いる投与方法も使用され得る。例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、本発明の医薬は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。その溶液のpHはまた、種々のpHにおいて、本発明の活性成分の相対的溶解度に基づいて選択されるべきである。
【0081】
本発明の製剤の処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、投与すべきポリペプチド量および細胞量を決定することができる。
【0082】
1つの実施形態において、本発明の因子は、徐放性形態で提供され得る。徐放性形態の剤型は、本発明において使用され得る限り、当該分野で公知の任意の形態であり得る。そのような形態としては、例えば、ロッド状(ペレット状、シリンダー状、針状など)、錠剤形態、ディスク状、球状、シート状のような製剤であり得る。徐放性形態を調製する方法は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方および他の国の薬局方などに記載されている。徐放剤(持続性投与剤)を製造する方法としては、例えば、複合体から薬物の解離を利用する方法、水性懸濁注射液とする方法、油性注射液または油性懸濁注射液とする方法、乳濁製注射液(o/w型、w/o型の乳濁製注射液など)とする方法などが挙げられる。
【0083】
本発明の組成物またはキットはまた、さらに生体親和性材料を含み得る。この生体親和性材料は、例えば、シリコーン、コラーゲン、ゼラチン、グリコール酸・乳酸の共重合体、エチレンビニル酢酸共重合体、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。成型が容易であることからシリコーンが好ましい。生分解性高分子の例としては、コラーゲン、ゼラチン、α−ヒロドキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)およびヒドロキシトリカルボン酸(例えば、クエン酸など)からなる群より選択される1種以上から無触媒脱水重縮合により合成された重合体、共重合体またはこれらの混合物、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸など)、無水マレイン酸系共重合体(例えば、スチレン−マレイン酸共重合体など)のポリ酸無水物などが挙げられる。重合の形式は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよく、α−ヒドロキシカルボン酸類、ヒドロキシジカルボン酸類、ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−体、L−体、DL−体のいずれでも用いることが可能である。好ましくは、グリコール酸・乳酸の共重合体が使用され得る。
【0084】
核酸形態で活性成分を含む本発明の組成物を投与する場合、その活性成分(例えば、RAD51の二本鎖RNA)は、非ウイルスベクター形態またはウイルスベクター形態による投与、直接投与の形態などで投与され得る。このような投与形態は、当該分野において周知であり、例えば、別冊実験医学「遺伝子治療の基礎技術」羊土社、1996;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに詳説されている。
【0085】
非ウイルスベクター形態の場合、リポソームを用いて核酸分子を導入する方法(リポソーム法、HVJ−リポソーム法、カチオニックリポソーム法、リポフェクション法、リポフェクトアミン法など)、マイクロインジェクション法、遺伝子銃(Gene Gun)でキャリア(金属粒子)とともに核酸分子を細胞に移入する方法などが利用され得る。発現ベクターとしては、例えば、pCAGGS、pBJ−CMV、pcDNA3.1、pZeoSV(Invitrogen、Stratageneなどから入手可能である)などが挙げられる。
【0086】
リポフェクションを用いる場合、例えば、リポフェクトアミン2000、オリゴフェクトアミン(silencer siRNA TransfectionKit,GeneSilencer siRNA Transfection Reagent)などを用いることができる。
【0087】
HVJ−リポソーム法は、脂質二重膜で作製されたリポソーム中に核酸分子を封入し、このリポソームと不活化したセンダイウイルス(Hemagglutinating virus of Japan、HVJ)とを融合させることを包含する。このHVJ−リポソーム法は、従来のリポソーム法よりも、細胞膜との融合活性が非常に高いことを特徴とする。HVJ−リポソーム調製法は、別冊実験医学「遺伝子治療の基礎技術」羊土社、1996;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997に詳述されている。HVJとしては、任意の株(例えば、ATCC VR−907、ATCC VR−105、Z株など)が利用可能である。実際の治療では、このリポソームを用いた系が有利であり得る。
【0088】
本発明の組成物は、ウイルスベクター中に提供される場合、組換えアデノウイルス、レトロウイルスなどのウイルスベクターが利用される。無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、SV40、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのDNAウイルスまたはRNAウイルスに、RNAiを引き起こす因子を発現するDNAを導入し、細胞または組織にこの組換えウイルスを感染させることにより、細胞または組織内に遺伝子を導入することができる。特に、アデノウイルスベクターでは、感染効率が高く、染色体への組み込まれる機構を持たないため、一過的に遺伝子発現を抑制する場合に適している。他方、レトロウイルスベクターでは、分裂細胞の染色体に組み込まれることから、長期的に遺伝子発現を抑制することにより治療する場合に適している。
【0089】
直接投与もまた、場合により用いられ得る。そのような場合、RNAiを引き起こす因子は、生物の器官の組織などに直接注入することができる。
【0090】
従って、本発明の組成物およびキットにおいて含まれるRNAiを引き起こす因子の量は、例えば、成人(体重約60kg)の場合、約1ng〜約1000mg、好ましくは約5ng〜約100mgであり得る。RNAiを引き起こす因子の量の範囲の下限は、例えば、約1ng、約2ng、約3ng、約4ng、約5ng、約6ng、約7ng、約8ng、約9ng、約10ng、約15ng、約20ngなど、約1ng〜約1mgの間の任意の数値であり得、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約15μg、約20μgなど、約1μg〜約1mgの間の任意の数値であり得る。RNAiを引き起こす因子の量の範囲の上限は、例えば、約1000mg、約900mg、約800mg、約700mg、約600mg、約500mg、約400mg、約300mg、約200mg、約100mg、約75mg、約50mg、約25mg、約10mg、約5mgなど、約1000mg〜約1mgの任意の数値であり得る。2種類以上のRNAiを引き起こす因子が含まれる場合も、上記の量が個々に適用される。ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターとして投与される場合は、通常、0.0001〜100mg、好ましくは0.001〜10mg、より好ましくは0.01〜1mgである。投与頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。RNAiは、一般に投与後1〜3日間効果が見られる。したがって、毎日〜3日に1回の頻度で投与することが好ましい。ベクターまたはペレットを用いる場合、1週間に1回の投与が好ましくあり得る。
【0091】
本明細書においてポリペプチド発現またはその抑制の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはRT−PCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。好ましくはタンパク質を測定する。RNAiは通常約20bpの短鎖であることから、ノーザンドットブロットで混同することはないが、RT−PCRの場合、RNAi中にプライマーを設定すれば測定できない。しかし、最終的にはタンパク質の量的減少を目的とすることが多いことから、特にそのような場合、タンパク質を測定することが有利である。
【0092】
「発現量」とは、目的の細胞、組織などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の病原遺伝子(抑制を目的とする遺伝子)の発現産物に対する抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンプロット法、ドットプロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
【0093】
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法を医師、患者など投与を行う人に対して記載したものである。この指示書は、本発明の医薬などを例えば、放射線治療直後または直前(例えば、24時間以内など)に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0094】
本発明が対象とする「疾患」は、病原遺伝子が関連する任意の疾患であり得る。そのような疾患としては、癌、ウイルスまたは細菌による感染症、アレルギー、高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病、脳梗塞、痴呆症、肥満、動脈硬化性疾患、不妊症、精神神経疾患、白内障、早老症、紫外線放射線過敏症などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0095】
本発明が対象とする「障害」は、病原遺伝子が関連する任意の障害であり得る。
【0096】
本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位置をいう。
【0097】
本明細書において「インビトロ」とは、種々の研究目的のために生体の一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。インビボと対照をなす用語である。
【0098】
本明細書において「エキソビボ」とは、遺伝子導入を行うための標的細胞を被験体より抽出し、インビトロで治療遺伝子を導入した後に、再び同一被験体に戻す場合、一連の動作をエキソビボという。
【0099】
本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被験体は好ましくは、ヒトであり得る。
【0100】
本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによって得られたRNAiを引き起こす因子を含む薬物が提供されることも企図される。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、二本鎖RNAが挙げられるがそれに限定されない。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、本発明の好ましい実施形態で記載されるsiRNAの種々の核酸アナログ、改変体を包含する。このような核酸アナログ、改変体は、RNAiを引き起こすことができる限り、どのようなものであってもよい。そのようなRNAiを引き起こすことができるかどうかを判定するアッセイは、本明細書において記載されるとおりである。
【0102】
別の実施形態では、本発明では、さらに他の薬剤(例えば、抗癌剤)もまた投与することも企図される。そのような薬剤は、当該分野において公知の任意の医薬であり得、例えば、そのような薬剤は、薬学において公知の任意の薬剤(例えば、抗癌剤、抗生物質など)であり得る。当然、そのような薬剤は、2種類以上の他の薬剤であり得る。好ましくは、RNAiを引き起こす因子の作用を阻害しないような薬剤が一緒に投与される。そのような薬剤としては、例えば、日本薬局方最新版、米国薬局方最新版、他の国の薬局方の最新版において掲載されているものなどが挙げられ、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:
中枢神経系用薬(例えば、全身麻酔剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、興奮剤、覚せい剤、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、総合感冒剤、その他の中枢神経系用薬など);
末梢神経用剤(例えば、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自律神経剤、鎮けい剤など);
感覚器官用薬(例えば、眼科用剤、耳鼻科用剤、鎮暈剤など);
循環器官用薬(例えば、、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、高脂血症用剤、その他の循環器官用薬など);
呼吸器官用薬(例えば、呼吸促進剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮咳去痰剤、気管支拡張剤、含嗽剤など);
消化器官用薬(例えば、止瀉剤、整腸剤、消化性潰瘍用剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤、浣腸剤、利胆剤、その他の消化器官用薬など);
ホルモン剤(例えば、脳下垂体ホルモン剤、唾液腺ホルモン剤、甲状腺、副甲状腺ホルモン剤、蛋白同化ステロイド剤、副腎ホルモン剤、男性ホルモン剤、卵胞、.黄体ホルモン剤、混合ホルモン剤、その他のホルモン剤など);
泌尿生殖器官および肛門用薬(例えば、泌尿器官用剤、生殖器官用剤、子宮収縮剤、痔疾用剤、他の泌尿生殖器管、肛門用薬など);
外皮用薬(例えば、外皮用殺菌消毒剤、創傷保護剤、化膿性疾患用剤、鎮痛.鎮痒.収斂.消炎剤、寄生性皮膚疾患用剤、皮膚軟化剤、毛髪用剤、その他の外皮用剤など);
歯科口腔用剤;
その他の個々の器官系用薬;
ビタミン剤(例えば、ビタミンA剤、ビタミンD剤、ビタミンB剤、ビタミンC剤、ビタミンE剤、ビタミンK剤、混合ビタミン剤、その他のビタミン剤など);
滋養強壮薬(例えば、カルシウム剤、無機質製剤、糖類剤、蛋白アミノ酸製剤、臓器製剤、乳幼児用剤、その他の滋養強壮剤など);
血液および体液用薬(例えば、血液代用剤、止血剤、血液凝固阻止剤、その他の血液.体液用剤など);
人工透析用薬(例えば、人工腎臓透析用剤、腹膜透析用剤など);
その他の代謝性医薬品(例えば、臓疾患用剤、解毒剤、習慣性中毒用剤、痛風治療剤、酵素製剤、糖尿病用剤、他に分類されない代謝性薬など);
細胞賦活用剤(例えば、クロロフィル製剤、色素製剤、その他の細胞賦活用剤など);
腫瘍用薬(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質製剤、抗腫瘍性植物成分製剤、その他の腫瘍用剤など);
放射性医薬品;
アレルギー用薬(例えば、抗ヒスタミン剤、刺激療法剤、非特異性免疫原製剤、その他のアレルギー用薬、生薬および漢方処方に基づく医薬品、生薬、漢方製剤、その他の生薬漢方処方に基づく製剤など);
抗生物質製剤(例えば、グラム陽性菌に作用する、グラム陰性菌に作用する、グラム陽、.陰性菌に作用、グラム陽性菌マイコプラズマ作用、グラム陽性陰性.リケッチアに作用、抗酸菌に作用するもの、カビに作用するもの、その他の抗生物質製剤など);
化学療法剤(例えば、サルファ剤、抗結核剤、合成抗菌剤、抗ウィルス剤、その他の化学療法剤など);
生物学的製剤(例えば、ワクチン類、毒素.トキソイド類、抗毒素.抗レプトスピラ血清、血液製剤類、生物学的試験用製剤類、その他の生物学的製剤、抗原虫剤、駆虫剤など);
調剤用薬(例えば、賦形剤、軟膏基剤、溶解剤、矯味.矯臭.着色剤、その他の調剤用剤など);
診断用薬(例えば、X腺造影剤、機能検査用試薬、その他の診断用薬);
公衆衛生用薬(例えば、防腐剤);
体外診断用医薬品(例えば、細菌学的検査用薬など);
分類されない治療を主目的としない薬剤;ならびに
麻薬(例えば、あへんアルカロイド系麻薬、コカアルカロイド系製剤、合成麻薬など)。
【0103】
そのような薬剤は、好ましくは、癌または腫瘍に対して直接的または間接的に効果を有するものであり得る。あるいは、そのようなさらなる薬剤は、抗癌剤の副作用または有害作用を軽減するものであり得る。
【0104】
他の実施形態において、RNAiを引き起こす因子は2種類以上の物質を含み得る。2種類以上の物質を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の物質を使用してもよい。
【0105】
本発明の方法において使用される因子、組成物、および医薬などの量または形態は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、ポリペプチド、医薬もしくは細胞の形態または種類、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
【0106】
本発明のRNAiを引き起こす因子を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1日−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。より好ましくは、毎日〜3日に1回の頻度で投与しながら、経過をみることが有利であり得る。
【0107】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に記載される実施形態は、本発明を詳細かつ具体的に説明する目的のみに提示されるのであって、本発明を限定すると解釈されないことが理解されるべきである。
【0108】
1つの局面において、本発明は、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子を含む医薬組成物に関する。そのような因子としては、例えば、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも約10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。相同性を有する配列部分は、通常は、少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは、少なくとも約19ヌクレオチド長であり得、少なくとも約20ヌクレオチド長であり得、少なくとも約21ヌクレオチド長であり得、より好ましくは、少なくとも約30ヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド長、あるいはそれ以上であり、必要に応じて約10000ヌクレオチド長未満(例えば、数千ヌクレオチド長(例えば、5000,6000など)未満)であり得る。
【0109】
このようなRNAが細胞に導入されることにより、相同な配列を有するRNAが分解され、いわゆるRNAiという現象が起きる。このような現象は、線虫(Caenorhabditis elegans)、昆虫(Drosophillaなど)、原虫(Trypanosoma)、ヒドラ、植物(Arabidopsis)、脊椎動物(Xenopus、哺乳動物(例えば、マウス(胚性幹細胞、卵細胞、初期胚など))において有効であり、本発明は、哺乳動物をはじめとする動物のみならず、生物一般において、病原遺伝子に起因する疾患・病害を処置するために用いることができる。
【0110】
理論に束縛されないが、RNAiが働く機構として考えられるものの一つとして、dsRNAのようなRNAiを引き起こす分子が細胞に導入されると、比較的長い(例えば、40塩基対以上)RNAの場合、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、その分子を3’末端から約20塩基対ずつ切り出し、短鎖dsRNA(siRNAとも呼ばれる)を生じる(図6を参照)。ここで、「siRNA」とは、short interfering RNAの略称であり、人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成されたものか、あるいは生物体内で合成されたものか、あるいは約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAをいい、通常、5’−リン酸、3’−OHの構造を有しており、3’末端は約2塩基突出している(図7を参照)。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、RISC(RNA−induced−silencing−complex)が形成される。この複合体は、siRNAと同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断する。siRNAの配列と標的として切断するmRNAの配列の関係については、100%一致することが好ましい。しかし、siRNAの中央から外れた位置についての塩基の変異については、完全にRNAiによる切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存する。他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNAiによるmRNAの切断活性が極度に低下する。このような性質を利用して、変異をもつmRNAについては、その変異を中央に配したsiRNAを合成し、細胞内に導入することで特異的に変異を含むmRNAだけを分解することができる。従って、本発明では、siRNAそのものをRNAiを引き起こす因子として用いることができるし、siRNAを生成するような因子(例えば、代表的に約40塩基以上のdsRNA)をそのような因子として用いることができる。
【0111】
また、理論に束縛されることを希望しないが、siRNAは、上記経路とは別に、siRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成され、このdsRNAが再びダイサーの基質となり、新たなsiRNAを生じて作用を増幅することも企図される。従って、本発明では、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子もまた、有用である。実際に、昆虫などでは、例えば35分子のdsRNA分子が、1,000コピー以上ある細胞内のmRNAをほぼ完全に分解することから、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子が有用であることが理解される。
【0112】
本発明においてsiRNAと呼ばれる、約20塩基前後(例えば、代表的には約21〜23塩基長)またはそれ未満の長さの二本鎖RNAを用いることができる。このようなsiRNAは、細胞に発現させることにより遺伝子発現を抑制し、そのsiRNAの標的となる病原遺伝子の発現を抑えることから、疾患の治療、予防、予後などに使用することができる。
【0113】
本発明において用いられるsiRNAは、RNAiを引き起こすことができる限り、どのような形態を採っていてもよい(図7)。
【0114】
別の実施形態において、本発明のRNAiを引き起こす因子は、3’末端に突出部を有する短いヘアピン構造(shRNA;short hairpin RNA)であり得る。本明細書において「shRNA」とは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以上の分子をいう。そのようなshRNAは、人工的に化学合成される。あるいは、そのようなshRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖のDNA配列を逆向きに連結したヘアピン構造のDNAをT7 RNAポリメラーゼによりインビトロでRNAを合成することによって生成することができる。理論に束縛されることは希望しないが、そのようなshRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基(代表的には例えば、21塩基、22塩基、23塩基)の長さに分解され、siRNAと同様にRNAiを引き起こし、本発明の処置効果があることが理解されるべきである。このような効果は、昆虫、植物、動物(哺乳動物を含む)など広汎な生物において発揮されることが理解されるべきである。このように、shRNAは、siRNAと同様にRNAiを引き起こすことから、本発明の有効成分として用いることができる。shRNAはまた、好ましくは、3’突出末端を有し得る。二本鎖部分の長さは特に限定されないが、好ましくは約10ヌクレオチド長以上、より好ましくは約20ヌクレオチド長以上であり得る。ここで、3’突出末端は、好ましくはDNAであり得、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド長以上のDNAであり得、さらに好ましくは2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
【0115】
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、人工的に合成した(例えば、化学的または生化学的)ものでも、天然に存在するものでも用いることができ、この両者の間で本発明の効果に本質的な違いは生じない。化学的に合成したものでは、液体クロマトグラフィーなどにより精製をすることが好ましい。
【0116】
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、インビトロで合成することもできる。この合成系において、T7 RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用いて、鋳型DNAからアンチセンスおよびセンスのRNAを合成する(図8)。これらをインビトロでアニーリングした後、細胞に導入すると、上述のような機構を通じてRNAiが引き起こされ、本発明の効果が達成される。ここでは、例えば、リン酸カルシウム法でそのようなRNAを細胞内に導入することができる。
【0117】
本発明のRNAiを引き起こす因子としてはまた、mRNAとハイブリダイズし得る一本鎖、あるいはそれらのすべての類似の核酸アナログのような因子も挙げられる。そのような因子もまた、本発明の処置方法および組成物において有用である。
【0118】
好ましい実施形態において、本発明が対象とする病原遺伝子は、癌遺伝子である。そのような癌遺伝子は、例えば、c−Abl、c−myc、ras、fos、myb、APC、erbA、erbB、p21、E2Fなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0119】
好ましい実施形態において、本発明が対象とする病原遺伝子は、癌抑制遺伝子である。そのような癌抑制遺伝子は、例えば、p53,Rb,BRCA1,BRCA2,MSH,APC,PTENなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0120】
より好ましい実施形態において、本発明が対象とする病原遺伝子は、DNA修復系の遺伝子である。そのような病原遺伝子は、例えば、Rad51およびそのパラログ、Ku70、Rad50、DNA−PK、MutS、MutH、XP−A,XP−G,NBS、MRE11、XRCC4、Rad52、DNAポリメラーゼη、ATM、ATR,RecQ、WRNヘリカーゼ、Bloomヘリカーゼなどが挙げられるがそれらに限定されない。DNA修復系の遺伝子の発現を抑制することにより、癌の増殖を効果的に抑制することができ、治療効果が上がる。DNA修復系の対象病原遺伝子として特に好ましいのは、Rad51である。
【0121】
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子として、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも約10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体、より好ましくは、病原遺伝子の一部に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、あるいは特に好ましい実施形態では、病原遺伝子の一部に対して約100%の相同性を有する配列を含むRNAまたはその改変体が挙げられる。もっとも好ましくは、そのような因子は、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して100%の相同性を有する配列を含む、少なくとも約10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が使用され得る。相同性を有する配列の部分の長さは、好ましくは、例えば、少なくとも約15ヌクレオチド長、より好ましくは、少なくとも約19ヌクレオチド長、少なくとも約20ヌクレオチド長、少なくとも約21クレオチド長、少なくとも約22ヌクレオチド長、少なくとも約23ヌクレオチド長、少なくとも約24ヌクレオチド長、少なくとも約25ヌクレオチド長、少なくとも約30ヌクレオチド長、少なくとも約35ヌクレオチド長、少なくとも約40ヌクレオチド長、少なくとも約50ヌクレオチド長であり得る。従って、相同性がある部分の長さは、例えば、数百ヌクレオチド長以上あるいは数千ヌクレオチド以上であってもよい。別の好ましい実施形態では、RNAiを引き起こす因子として効果があるために、哺乳動物ではおよそ20ヌクレオチド長対程度であることが有利であり得る。あるいは、他の動物(例えば、線虫、Drosophilaのような昆虫など)は、より長いものでも有利であり得る。
【0122】
好ましい実施形態では、RNAiを引き起こす因子は、3’突出末端を含むことが有利であり得る。そのような3’突出末端を含むことによって、本発明のRNAiを引き起こす因子はより安定になる。そのような3’突出末端としては、例えば、2ヌクレオチド長以上のDNAが挙げられ、例えば、2〜6ヌクレオチド長、より好ましくは2〜4ヌクレオチド長のDNAが使用され得る。そのようなDNAとしては、例えば、tt(dTdT)が使用されるがこれに限定されない。従って、RNAiの標的となるmRNAは、aaで始まる部分を標的とすることが好ましくあり得る。そのように選択することによって、配列の向きの間違いを防ぐことができ、かつ、そのような一定の配列を含むことにより、容易に生産ができるようになるからである。また、そのような標的となるmRNAはaaで始まることのほか、ttで終結する部分を選択してもよい。ただし、この配列はそれほど重要なわけではなく、むしろ、長さに留意することが好ましい。
【0123】
好ましくは、相同性のある領域は、病原遺伝子の翻訳開始領域と相同な配列を実質的に含まない。種々の転写、翻訳のタンパク質因子が結合することが予期されるため、有効にsiRNAがmRNAに結合することができず、効果が低減することが予測されるからである。しかし、ある特定の目的で使用する場合は、病原遺伝子の翻訳開始領域と相同な配列を用いることも企図される。
【0124】
好ましくは、相同性を有する配列としては、病原遺伝子の翻訳開始領域から20塩基離れているもの、より好ましくは病原遺伝子の翻訳開始領域から70塩基離れているものが使用される。従って、そのような配列は、例えば、3’末端付近の配列を使用してもよい。
【0125】
このようなRNAiを引き起こす因子は、病原遺伝子の発現を抑制することによって、本発明の効果の一つである疾患または障害の処置または予防を行うことができる。あるいは、このようなRNAiを引き起こす因子は、病原遺伝子の発現を抑制することによって、好ましくない細胞(例えば、癌細胞)の増殖を抑制することができる。
【0126】
好ましい実施形態において、本発明で使用されるRNAまたはその改変体は、少なくとも約10ヌクレオチド長であり得る。より好ましくは、本発明で使用されるRNAまたはその改変体は、少なくとも約20ヌクレオチド長、少なくとも約30ヌクレオチド長、少なくとも約40ヌクレオチド長である、少なくとも約50ヌクレオチド長、少なくとも約60ヌクレオチド長、少なくとも約70ヌクレオチド長、少なくとも約80ヌクレオチド長、少なくとも約90ヌクレオチド長、少なくとも約100ヌクレオチド長以上で約10,000ヌクレオチドでさえあり得る。ある好ましい実施形態では、本発明で使用されるRNAまたはその改変体は、19ヌクレオチド長が最も好ましくあり得る。
【0127】
好ましい実施形態において、本発明のRNAiを引き起こす因子は、siRNAまたはshRNAである。ある実施形態において、siRNAが好ましい。siRNAが好ましいのは、(1)実施に際してsiRNAを細胞内に導入するに当たり、RNAそのものは通常、正常細胞の染色体内に組み込まれないので子孫に伝わる変異を起こすような治療ではないことから安全性が高いこと;(2)短鎖二本鎖RNAは化学合成が比較的容易であり二本鎖にするとより安定であるからである。別の実施形態において、shRNAが好ましい。shRNAが好ましいのは、長期間遺伝子発現を抑制することによる治療効果が期待される場合、細胞内でshRNAを転写するようなベクターを作製して細胞内に導入することが有利であり得るからである。
【0128】
本発明の因子は、対象がマウスの場合、配列番号5〜8、対象がヒトの場合21〜24などに示す配列(配列番号5:A1、配列番号6:A3;配列番号7:A5;配列番号8:A6;配列番号21:H1;配列番号22:H2;配列番号23:H3;配列番号24:H4)のうち、少なくとも連続する約10のヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも連続する約15のヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも連続する約20のヌクレオチド長またはその全部の配列を含む。好ましい実施形態では、この配列は、siRNAまたはshRNAであり得る。
【0129】
ある実施形態において、本発明のRNAiを引き起こす因子は、人工的に合成されたものであるか、またはインビトロで合成されたものである。そのような因子を合成する方法は、当該分野において周知であり、例えば、岩井成憲、大塚栄子:蛋白質核酸酵素、39:1788-P799(1994)に記載されている。
【0130】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、癌の予防、処置または予後のために用いられる。そのような癌は、好ましい実施形態において、固形癌または造血器腫瘍である。
【0131】
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、他の抗癌剤とともに使用される補助剤であり得る。従って、そのような場合、本発明の医薬組成物は、ある抗癌剤と一緒に、または前後に別々に投与され得る。このように別の抗癌剤を投与することによって、そのような抗癌剤に対して耐性のできた癌細胞にも効果的に治療または予防効果が発揮されるからである。そのような効果は従来知られておらず、予測不可能であった顕著な効果といえる。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、放射線療法とともに投与される。本発明の医薬組成物は、放射線療法に対して耐性のできた癌細胞にも効果的に治療または予防効果が発揮されることが判明した。そのような効果は従来知られておらず、予測不可能であった顕著な効果といえる。従って、1つの局面において、本発明の医薬組成物は、他の抗癌剤の効果を増強する効果を有する。別の局面において、本発明の医薬組成物は、放射線療法の効果を増強する効果を有する。
【0132】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。そのような薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において周知である。
【0133】
1つの局面において、本発明は、A)病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子;およびB)二本鎖RNA以外の抗癌剤、を含む、癌を処置または予防するためのキットを提供する。このようなキットは、抗癌剤が放射線治療を提供する場合は、放射線治療器のような装置と、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子を含む組成物という形態であり得、化学療法剤などが使用される場合は、組成物中に2成分が共存して含まれ得る。当業者は、そのような形態は、適宜選択することができる。本発明のキット中で使用される、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子は本発明の組成物中で使用される因子の形態を採り得る。例えば病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子は、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体であってもよい。
【0134】
1つの局面において、本発明は、病原遺伝子に起因する疾患または障害を予防または処置するための方法を提供する。このような方法は、A)標的とする病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子を、そのような疾患または障害を予防または処置すべき被検体に投与する工程、を包含する。そのような因子を投与する方法は、当該分野において周知であり、当業者であれば、適宜適切な方法を選択して利用することができる。
【0135】
本発明の治療または予防の方法が対象とする疾患または障害は、好ましくは癌である。そのような癌は、上述したようにどのような癌であってもよい。Rad51は、すべての細胞・癌細胞でDNA修復していることから、すべての癌に有効であると考えられるからである。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明の治療または予防の方法は、他の抗癌剤を投与する工程をさらに包含する。より好ましくは、本発明の治療または予防の方法は、放射線療法を投与する工程をさらに包含する。そのような放射線療法としては、X線、γ線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線などが挙げられるがそれに限定されない。
【0137】
本発明の治療または予防の方法において使用される、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子は本発明の組成物中で使用される因子の形態を採り得る。例えば病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子は、病原遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体であってもよい。
【0138】
1つの局面において、本発明は、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子の、該病原遺伝子に起因する疾患または障害を予防または処置するための使用に関する。病原遺伝子に起因する疾患または障害にRNAiが適用可能との知見はいまだなく、本発明によってはじめて達成されたものであり、この効果は顕著なものである。従来アンチセンスでは成功率が低かったか、あるいは効果が安定していなかった疾患でもこのRNAiを使えば、信頼性の高い治療または予防を行うことができることから、本発明は顕著な有用性を提供するといえる。特に、アンチセンスを用いた場合、遺伝子配列のどの部分に相補的な配列を使うかにより効果にばらつきがありすぎて、予測がつかなかった。本発明のRNAiを引き起こす因子を用いた治療法では、ランダムに選んでも、約70%の確率で効果が得られる配列があった。さらに、mRNA分解のメカニズムも解明されていることから、その制御も容易であるという利点がある。
【0139】
別の局面において、本発明は、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子の、該病原遺伝子に起因する疾患または障害を予防または処置するための医薬を製造するための、使用に関する。医薬を製造するための方法は、当該分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990、日本薬局方などに記載されており、当業者は適宜これらの文献を参酌しながら、医薬を製造することができる。
【0140】
別の局面において、本発明は、病原遺伝子に対してRNAiを引き起こす因子をコードする核酸配列を含む、発現ベクターに関する。そのような発現ベクターは、どのようなものを用いてもよいが、好ましくは、治療に使用され得るものが使用される。
【0141】
他の局面において、本発明は上記発現ベクターを含む、細胞に関する。そのような細胞は、どのような細胞でもよいが、好ましくは、治療に使用され得る細胞が使用される。例えば、そのような細胞としては、自己由来の細胞についてエキソビボでRNAiを引き起こす因子を発現するようにした細胞などが挙げられるがそれに限定されない。本発明の細胞は、RNAiを引き起こす因子を一過性発現しても安定に発現してもよい。
【0142】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0143】
【実施例】
(実施例1:RAD51に対するRNAiを用いたマウス癌モデルの治療)
(材料および方法)
(細胞および細胞培養)
マウス奇形癌細胞株(F9)を、本研究のために使用した。この細胞を、ゼラチン(0.1%)でコーティングしたプラスチック皿上で培養し、そして10%FBS含有DMEM(Gibco BRL,MD)中、37℃、100%湿度、95%大気および5%COの標準的な条件下で維持した。
【0144】
(合成siRNA)
Rad51 siRNAおよびコントロール siRNA(アニーリングした二本鎖RNA)を、Dharmacon.Research,Inc.から購入した。Rad51 siRNAのセンス鎖配列は、5’−GACACAGAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号26)であった。コントロールsiRNAは、Dharmacon.Research,Inc.によって調製された22ヌクレオチドの二本鎖RNAであった。このコントロール siRNAは、5’−GCGCGCUUUGUAGGAUUCGdTdT−3’(センス配列は配列番号10)哺乳動物細胞ゲノム配列と有意な相同性を有さない。
【0145】
(si RNAを用いた細胞のトランスフェクション)
50〜80%のコンフルエントなF9奇形癌細胞を、抗生物質を含まない10%FBS含有DMEM培地を用いて洗浄し、製造業者らの指示書に従って、siRNAとLipophectamine 2000試薬(InvitrogenCorp.,Carlsbad,CA,USA)との混合物を含有するDMEMを用いてインキュベートした。siRNAの終濃度は、インビトロ実験について25nMであった。
【0146】
(ウエスタンブロッティング)
siRNAを用いたインキュベーションの終わりに、細胞を、PBSを用いて洗浄し、そしてセルスクレイパーによって収集した。細胞を、8% SDS、5% 2−メルカプトエタノール、および10% グリセロールを含有するSDSサンプル緩衝液を用いて溶解し、次いで煮沸し、そして10秒間超音波処理した。タンパク質サンプルを、12% SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そして電気泳動的にHybond ECL Nitrocellulose membrane(Amersham pharmacia biotech,UK)に転写した。この膜を、マウスRAD51タンパク質に対するウサギ抗体を用いて(1:1000)、4℃で一晩インキュベートした。この膜を、0.1% Tween 20を含む0.1M Tris−HCl緩衝化生理食塩水(T−TBS)中で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ連結抗ウサギ免疫グロブリンと、30分間室温で反応させた。検出のために、本発明者らは、ECL Western blotting system(Amersham pharmacia biotech,UK)を使用した。検出試薬を排出した後、この膜の周りを覆い、そしてHyperfilm−ECL(Amersham pharmacia biotech,UK)上に置いた。露光時間は、1分間であり、その後、このフィルムを現像した。
【0147】
(インビトロ処理および細胞傷害性アッセイ)
マウスF9奇形癌細胞を、25nM Rad51 siRNAまたはコントロールsiRNAを用いてトランスフェクトした。処理の48時間後、この細胞を、トリプシン処理し、そして収集した。この細胞に、勾配をかけた線量(1.00Gy/分;Hitachi X−ray irradiation system,MBR−1520A,Japan)でX線照射した。照射後、細胞を収集し、そして96ウェルプレートに播種した。この細胞を、37℃で65時間のインキュベーション後に、MTTアッセイを行った。培養細胞にMTT試薬を加え、4時間後さらにHCl−SDSを添加して37℃で一晩のインキュベーションした。各ウェルの吸光度を、570nmの試験波長および690nmの参照波長を用いてマイクロプレートリーダー(Wallac 1420 ARVOsx,Perkin Elmer)で測定した。フォルマザン色素形成の50% 阻害(ID50)を生じる照射線量を、照射線量(Gy)に対してコントロールOD570のパーセンテージをプロットすることによって概算した。
【0148】
(インビボ治療研究)
指数関数的に増殖しているマウスF9奇形癌細胞を、収集し、そして5×10細胞/mlの濃度でPBSに再懸濁した。細胞懸濁液(100μl)を、ペントバルビタールナトリウムを用いた軽い麻酔下、27ゲージの注射針を使用することによって129Sv マウス(6週齢)の背中に皮下注射した。24時間後、siRNA(250または500nM)とLipofectamine 2000との混合物を含有するOptiMEM I(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA,USA)の100μlを、腫瘍細胞を注射した位置と同じ位置に投与した。siRNA投与の24時間後、マウスの全身に、6Gyの線量を用いてX線照射した。この照射は、150kV、20mA、1.00Gy/分の線量速度で構成された。全ての実験には、1群につき4匹のマウスを含んだ。腫瘍容積を、式V=(a×b)/2(ここで、aは、最も長い表面直径であり、そしてbは、最も短い表面直径である)に従って算出した。
【0149】
(結果および考察)
(Rad51 mRNA発現およびRad51 タンパク質発現に対するRad51 RNAiの影響)
本発明者らは、マウスRad51遺伝子からRNAiを合成した。siRNAのうちの1つは、マウスRad51 cDNAの574〜593ヌクレオチド部分の配列:GACACAGAUCUGUCAUACGU(配列番号9)を含んだ(Moritaら、1993)。この配列は、マウスRad51 cDNAに特有であり、そしてBLAST調査によると他のタンパク質の遺伝子に対する相同性は、非常に低かった。本発明者らは、マウスゲノム配列と相同性を有さないコントロール配列を対照として使用した。指数関数的に増殖しているマウス奇形癌F9細胞を収集し、Lipofectamine 2000と混合したsiRNAを用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、この細胞を収集し、そしてタンパク質を、ウエスタンブロット分析によって分析した。図1に示すように、Rad51のsiRNAの処理によって、マウスF9奇形癌細胞におけるRAD51タンパク質の量は、より多く減少した。走査デンシトメトリ分析によって、このRAD51タンパク質は、siRNA処理無しの場合の16%であったことが示された(図2)。コントロール配列を保有するsiRNAは、RAD51タンパク質発現にほとんど影響を有さなかった(図2;64.4%)。本発明者らは、ヒストンH2AXタンパク質の発現をコントロールとして調べた。本発明者らは、Rad51 siRNAまたはコントロールsiRNAのトランスフェクションによるヒストンH5AXタンパク質のレベルの差異を検出しなかった(図1)。本発明者らは、Rad51 siRNAのトランスフェクションの4時間後に、RAD51タンパク質の抑制を検出した。それからRAD51タンパク質は、減少し続け、そして本発明者らは、最小レベルのRAD51 タンパク質を、Rad51 siRNAトランスフェクションの1〜2日後に得た。3日目に、RAD51タンパク質レベルは回復した(データには示さず)。従って、本発明者らは、Rad51 siRNAが、他の合成には影響を与えることなくRAD51タンパク質合成を特異的に阻害すること、そして、この効果が、Rad51 siRNAトランスフェクション24時間後に最大に達することを結論づけた。
【0150】
(インビトロにおけるマウスF9奇形癌細胞の放射線感受性に対するRad51 siRNAの影響)
本発明者らは、Rad51 siRNAを用いてトランスフェクトした細胞の放射線感受性を調べた。マウスF9奇形癌細胞を、Rad51 siRNA有りまたはRad51 siRNA無しでトランスフェクトした。本発明者らはまた、コントロールsiRNAをコントロールとして使用した。本発明者らは、F9奇形癌細胞を培養し、そしてsiRNAを用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞を収集し、そして種々の線量でX線照射に曝露した。次いで、細胞を、10%FCSを補充した培地を含む96ウェルプレート中で培養した。次いで、この細胞を、MTTアッセイに供した。図3に示されるように、本発明者らは、Rad51 siRNA処理無しでの細胞と比較して、Rad51 siRNAをトランスフェクトした細胞のX線照射に対する増感効果を検出した。トランスフェクトしていない細胞についてのCD50は、3.36Gyであったが、Rad51 siRNAをトランスフェクトした細胞についてのCD50は、1.68Gyであった。コントロールsiRNAをトランスフェクトした細胞についてのCD50は、2.80Gyであった。試験管内腫瘍細胞集落形成法によってもまた、同じ結果が示された(データには示さず)。従って、本発明者らは、Rad51 siRNAを用いてトランスフェクトした細胞が、X線照射に対してより感受性になったことを結論づけた。
【0151】
(腫瘍保有マウスにおけるインビボ放射線感受性に対するRad51 siRNAの影響)
本発明者らは、マウスF9奇形癌細胞(5×10細胞/100μl)を、マウスの背中に皮下注射した。注射の24時間後、本発明者らは、Lipofectamine2000と混合したRad51 siRNAまたはコントロールsiRNAの100μl(250または500μM)を、F9細胞注射と同じ位置にトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションの1日後、マウスの全身に6GyでX線照射した。本発明者らは、細胞の注射の7日後から1日おきに腫瘍増殖を観察した(図4および図5)。腫瘍の大きさを、ノギスによって測定した。Rad51 siRNAをトランスフェクトしていないがX線照射に曝露したマウスにおいて、腫瘍容積は、細胞の注射の7日後から増加し、そして腫瘍の活発な増殖が観察された。しかし、Rad51 siRNAを用いて処理し、そしてX線照射に曝露したF9腫瘍は、腫瘍の増殖速度を減速した。さらに、2倍濃縮したRad51 siRNAを使用した場合も同様の抑制が観察された。このことは、Rad51 siRNAが、腫瘍をX線照射に対して増感させたことを示唆する。
【0152】
従って、本発明者らは、Rad51 siRNAが、RAD51タンパク質発現を抑制すること、F9腫瘍細胞をX線照射に対して増感させること、およびX線照射処理と一緒になって腫瘍増殖を抑制することを実証した。結論として、本方法を、癌放射線治療に適用して、X線照射の線量を最小化することができる。さらに、Rad51遺伝子は、抗癌剤耐性に関与することが示されている。従って、RNAiによるRad51の抑制をまた使用して、薬物の用量を最小化することによって抗癌剤の副作用を最小化および排除し得る。
【0153】
(実施例 2:マウス203G神経膠腫細胞株を用いたRad51 siRNAの効果)
本実施例は、マウス神経膠腫細胞株(203G)およびC57BL/6J マウスを用いたこと以外は、実施例1と実質的に類似の様式で実行した。
【0154】
(材料および方法)
(細胞および細胞培養)
マウス203G神経膠腫細胞株を、10%FBS含有DMEM(Gibco BRL,MD)中、37℃、100%湿度、95%大気および5%COの標準的な条件下で維持した。
【0155】
(合成siRNA)
Rad51 siRNAおよびコントロール siRNA(アニーリングした二本鎖RNA)を、Dharmacon.Research,Inc.から購入した。Rad51 siRNAのセンス鎖配列は、5’−GACACAGAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号26)であった。コントロールsiRNAは、実施例1と同様のDharmacon.Research Inc.によって調製された22ヌクレオチドの二本鎖RNA(センス配列は配列番号10)であった。このコントロールsiRNAは、哺乳動物のゲノム配列と有意な相同性を有さない。
【0156】
(インビボ処理研究)
指数関数的に増殖しているマウス203G神経膠腫細胞株を、収集し、そして5×10細胞/mlの濃度でPBSに再懸濁した。細胞懸濁液(100μl)を、ペントバルビタールナトリウムを用いた軽い麻酔下、27ゲージの注射針を使用することによってC57BL/6J マウス(6週齢)の髄腔内注射した。24時間後、siRNA(250または500nM)とLipofectamine 2000との混合物を含有するOptiMEM I(Invitrogen Corp.,Carldbad,CA,USA)の50μlを、腫瘍細胞を注射した位置と同じ位置に投与した。siRNA投与の24時間後、マウスの全身に、6Gyの線量を用いてX線照射した。 (結果および考察)
(腫瘍保有マウスにおけるインビボ放射線感受性に対するRad51 siRNAの影響)
本発明者らは、マウス203G神経膠腫細胞株(5×10細胞/100μl)を、マウスの髄腔内に経皮注射した。注射の24時間後、本発明者らは、Lipofectamineと混合したRad51 siRNAまたはコントロールsiRNAの100μl(250または500μM)を、髄腔内にトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションの1日後、マウスの全身に6GyでX線照射し、マウスの生存率を比較した。Rad51 siRNAでトランスフェクトしていないがX線照射に曝露したマウスにおいて、腫瘍の活発な増殖が観察され、腫瘍移植後平均約10日で死亡した。しかし、Rad51 siRNAを用いて処理し、そしてX線照射に曝露したマウスは、腫瘍移植後平均約20日以上生存した。さらに、2倍濃縮したRad51 siRNAを使用した場合、実施例1と同様に、生存日数の延長が見られた。このことは、Rad51 siRNAが、腫瘍をX線照射に対して増感させることを示唆する。
【0157】
実施例1および実施例2の結果によって、Rad51 siRNAが、腫瘍細胞をX線照射に対して増感させる作用を有することが示された。従って、Rad51 siRNAは、X線照射処理と共に用いてインビボで効果的に腫瘍増殖の抑制に作用する。これによって、本方法を癌放射線治療に適用して、X線照射の線量を最小化することができる。
【0158】
X線照射の代わりに、抗癌剤としてシスプラチン、メルファラン、エトポシド、MMC、カンプトテシンを用いた実験においても、同様の効果、すなわち、Rad51 siRNAが、腫瘍細胞を抗癌剤に対して増感させる作用を有することが示された。従って、RNAiによるRad51の抑制をまた使用して、薬物の用量を最小化することによって抗癌剤の副作用を最小化および排除し得る。
【0159】
(実施例 3:変異Rad51 siRNAの影響)
変異Rad51 siRNAの影響を調べるために、種々の変異体を用いた以外は、本質的に実施例1と同じ実験を行った。
【0160】
(材料および方法)
本実施例には、Rad51の574−593にあたる配列番号12に示される参照配列において変異(下線)を導入した4個の変異Rad51 siRNA(Rad51 siRNA−1〜Rad51 siRNA−5(配列番号13〜16))を使用した。これらの配列を、以下に示す:
GACACAGAUCUGUCAUACGU(配列番号12)
GACAAGAUCUGUCAUACGUdTdT(配列番号13)
GACACAGAUCUGUCAUAGUdTdT(配列番号14)
GACACAGAUCUGUCAUACUdTdT(配列番号15)
GACACAAUCUGUCAUACGUdTdT(配列番号16)。
【0161】
(インビボ処理研究)
実施例1に記載の方法と同様に、マウスF9奇形癌細胞をマウスに注射し、癌細胞を注射し、24時間後、これらの変異Rad51 siRNAとLipofectamine 2000との混合物を含有するOptiMEM I(Invitrogen)の100μlを、腫瘍細胞を注射した位置と同じ位置に投与した。siRNA投与の24時間後、マウスの全身に、6Gyの線量を用いてX線照射した。ポジティブコントロールとして、変異していないRad51 siRNA(センス配列は配列番号11に示す)を用いた。
【0162】
(結果および考察)
いずれの変異Rad51 siRNA(配列番号13〜16)を用いた場合においても、ポジティブコントロールRad51 siRNAと同様の結果が得られた。ただし、その効果は、ポジティブコントロールに比べ、若干劣る傾向が見られた。
【0163】
(実施例4:ヒストンH2AX siRNAによるマウスF9奇形癌細胞株の放射線感受性の上昇)
本実施例は、Rad51 siRNAの代わりに放射線によるDNA二本鎖切断のセンサーとしてリン酸化されるヒストンH2AXのsiRNAを用いた以外は、本質的に実施例1と同じである。
【0164】
(材料および方法)
本実施例には、マウス奇形癌細胞株(F9)およびH2AX siRNAを用いた。H2AX siRNAは、5’−GAAGAGCAGCGCCACCGUGdTdT(配列番号17)であった。コントロール siRNAは、Dharmacon.Research.Inc.から購入した(配列番号10)。
【0165】
(結果および考察)
実施例1に従って、マウスF9奇形癌細胞の移植後にH2AX siRNAをマウスにトランスフェクトし、その後、X線を照射した。H2AX siRNA処理無しでX線を照射したマウスと比較して、H2AX siRNAをトランスフェクトし、かつX線を照射したマウスにおいて、X線に対する増感を観察した。
【0166】
(実施例5:RNAiによる抗癌剤による癌治療の効果改善)
本実施例は、X線照射の代わりに抗癌剤であるシスプラチンを用いた以外は、本質的に実施例1と同じである。
【0167】
(材料および方法)
本実施例には、マウス奇形癌細胞株(F9)およびRad51 siRNAを用いた。siRNAは、そのセンス配列は、5’−GACACAGAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号26)、アンチセンス配列は配列番号30に示すとおりであった。コントロールsiRNAはセンス配列が配列番号10であり、アンチセンス配列は配列番号11に示す。このコントロールsiRNAは、Dharmacon Research. Inc.から購入した。
【0168】
(結果および考察)
実施例1に従って、マウスF9奇形癌細胞の移植後にRad51 siRNA をトランスフェクトし、かつシスプラチンを投与したマウスにおいて、シスプラチンに対する増感効果を観察した。
【0169】
(実施例6:他のDNA修復遺伝子のRNAiによる癌治療)
Rad51 遺伝子は相同組換えによりDNAを修復する。本実施例は、このような相同組換えでなく、非相同的なDNA末端結合によるDNA切断の修復に関与している Ku80遺伝子を標的に行った。Ku80 siRNAを用いた以外は、本質的に実施例1と同様で、癌の放射線感受性を解析した。
【0170】
(材料および方法)
本実施例には、マウス奇形癌細胞株(F9)およびKu80 siRNAを用いた。Ku80 siRNAは、5’−CGACAGGUAUUUUCGGAGAGdTdT−3’(配列番号18)であった。コントロールsiRNA(配列番号10)は、Dharmacon Research.Inc.から購入した。
【0171】
(結果および考察)
実施例1に従って、マウスF9奇形癌細胞の移植後に、Ku80 siRNAをマウスにトランスフェクトし、かつX線を照射したマウスにおいて、X線に対する増感効果を観察した。
【0172】
(実施例7:H−Ras RNAiによる癌治療の効果)
H−ras遺伝子は癌遺伝子として発見されたものである。この遺伝子は、12番目のアミノ酸が正常では、(Gly;GGC)であるが、癌を発生する場合は、変異して(Val;GUC)になっていることが多く、これが癌化の原因であると考えられている。H−rasが原因で起こる癌について、ValをコードするmRNAを分解するために、siRNAを用いた。本実施例は、Rad51siRNAの代わりにH−Ras RNAiを用いた以外は、本質的に実施例1と同じである。
【0173】
(材料および方法)
本実施例には、子宮癌細胞株およびH−Ras RNAiを用いた。H−Ras siRNAは、5’−GUGGGCGCCGUCGGUGUGGGdTdT−3’(配列番号19)であった。コントロール siRNA(配列番号10)は、Dharmacon Research.Inc.から購入した。
【0174】
(結果および考察)
実施例1に従って、ヒト子宮癌細胞をヌードマウスに移植後に、H−Ras siRNAiをマウスにトランスフェクトし、腫瘍の増殖を観察した。その結果、H−Ras siRNAをトランスフェクトしたマウスにおいては、コントロールマウスに比較して、腫瘍の増殖の抑制が見られた。
【0175】
(実施例8:アルツハイマーにおけるRNAiによる治療)
アルツハイマーにおいて、プレセニリン遺伝子の変異は、 ApoE(アポリポタンパク質E)のプロセシングに影響し、Aβ40,42の産生を促進し、凝集して、老人斑に沈着し、神経原繊維変化および炎症を起こして、ニューロン死を起こすと考えられる。特に、プレセニリンの141番目のアミノ酸がAsn(AAC)からIle(AUC)に変化することにより、若年性のアルツハイマー症の原因となることが知られている。本実施例は、アルツハイマーの原因と考えられるプレセニリン遺伝子のsiRNAを用いた以外、トランスフェクションなどの方法は本質的に実施例1と同じである。
【0176】
(材料および方法)
本実施例には、プレセニリンsiRNAを用いた。siRNAは、5’−CGUGCUGAUCACCCUCAUCAdTdT−3’(配列番号20)であった。コントロール siRNA(配列番号10)は、Dharmacon Research.Inc.から購入した。
【0177】
(結果および考察)
実施例1に従って、マウス脳内に、変異(AUC)を含むsiRNAをトランスフェクトし、神経細胞におけるAβ40,42の産生と沈着を観察した。その結果、変異を含むプレセニリンsiRNA処理により、コントロールに比べて、Aβ40,42の産生と沈着が抑制されることがわかった。
【0178】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0179】
【発明の効果】
本発明により、RNAiを用いた疾患または障害の治療または予防を行うことができるようになった。したがって、本発明は、RNAiを引き起こす因子を含む医薬(特に、癌治療用)が提供される。
【0180】
(配列表の説明)
配列番号1:マウスRad51核酸配列
配列番号2:マウスRad51アミノ酸配列
配列番号3:ヒトRad51核酸配列
配列番号4:ヒトRad51アミノ酸配列
配列番号5:マウスRad51核酸配列のA1部分
配列番号6:マウスRad51核酸配列のA3部分
配列番号7:マウスRad51核酸配列のA5部分
配列番号8:マウスRad51核酸配列のA6部分
配列番号9:マウスRad51 cDNAの574〜593ヌクレオチド部分の配列
配列番号10:実施例1で使用したコントロールのセンス配列
配列番号11:実施例1で使用したコントロールのアンチセンス配列
配列番号12:実施例3で使用された変異体の参照配列
配列番号13〜16:実施例3で使用した変異体
配列番号17:H2AX siRNA
配列番号18:実施例6のKu80 siRNA配列
配列番号19:H−ras siRNA
配列番号20:プレセニリンsiRNA
配列番号21:ヒトRad51核酸配列のH1部分
配列番号22:ヒトRad51核酸配列のH2部分
配列番号23:ヒトRad51核酸配列のH3部分
配列番号24:ヒトRad51核酸配列のH4部分
配列番号25:A1 siRNAのセンス配列
配列番号26:A3 siRNAのセンス配列(実施例1で使用)
配列番号27:A5 siRNAのセンス配列
配列番号28:A6 siRNAのセンス配列
配列番号29:A1 siRNAのアンチセンス配列
配列番号30:A3 siRNAのアンチセンス配列(実施例1で使用)
配列番号31:A5 siRNAのアンチセンス配列
配列番号32:A6 siRNAのアンチセンス配列。
【0181】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、マウスF9奇形癌細胞におけるRad51およびヒストンH2AXのウエスタンブロットである。20μgの細胞タンパク質を、SDS−PAGEによって分離し、そしてウエスタンブロットによって分析した。抗RAD51抗体および抗ヒストンH2AX抗体を、一次抗体として使用した。レーン1:siRNAによるトランスフェクション無しでの細胞、レーン2:コントロールsiRNAを用いてトランスフェクトした細胞、レーン3:Rad51 siRNAを用いてトランスフェクトした細胞。
【図2】図2は、RNAiによって抑制されたRAD51タンパク質のデンシトメトリー分析である。図1をスキャンし、Kodak EDAS 290によって分析した。レーン1:siRNAによるトランスフェクション無しでの細胞、レーン2:コントロールsiRNAを用いてトランスフェクトした細胞、レーン3:Rad51 siRNAを用いてトランスフェクトした細胞。
【図3】図3は、Rad51 siRNAを用いてトランスフェクトしたマウスF9奇形癌細胞の放射線感受性を示したものである。F9細胞を、Rad51 siRNA、コントロールsiRNA有りまたはsiRNA無しでトランスフェクトし、24時間後に、種々の線量でX線照射に曝露した。細胞傷害性アッセイを、MTTを用いて行った。値は、8サンプルからの平均値および標準誤差を表し、そしてこれらは、X線照射無しでの細胞をMTTアッセイとしたときの吸光度に対して標準化している。(白丸)siRNAによるトランスフェクション無し;(黒四角)Rad51 siRNAを用いたトランスフェクション;(白三角)コントロールsiRNAを用いたトランスフェクション。
【図4】図4は、Rad51 siRNA処理がインビボにおいてF9腫瘍増殖を阻害することを示す。F9奇形癌細胞を、129Svマウスの背中に皮下注射した(4匹のマウス/群)。24時間後、Lipofectamineと混合したsiRNAを、トランスフェクトした。24時間後、マウスの全身に、6Gyの線量でX線照射した。腫瘍容積を、siRNA処理無しのマウス(白丸)、コントロールsiRNAで処理したマウス(白三角)、Rad51 siRNA(250nM)で処理したマウス(白四角)、またはRad51 siRNA(500nM)で処理したマウス(黒四角)について算出した。値は、4匹のマウスからの平均値および標準誤差である。
【図5】図5は、腫瘍保有マウスの写真である。F9奇形癌細胞を用いて注射したマウスは、背中に腫瘍を形成した。細胞の注射の16日後、形成された腫瘍を写真に撮った。(A)siRNA処理無しだが6GyのX線照射には曝露させた、F9腫瘍を有するマウス。(B)コントロールsiRNAおよびX線照射で処理したマウス。(C)Rad51 siRNA(250nM)およびX線照射で処理したマウス。(D)Rad51 siRNA(500nM)およびX線照射で処理したマウス。
【図6】RNAiによるRNAの分解を示す図である。
【図7】siRNAおよびshRNAの構造を示す図である。
【図8】siRNAの導入および発現を例示する図である。

Claims (3)

  1. 5’−GACACAGAUCUGUCAUACGU−3’(配列番号9);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUACGU−3’(配列番号12);
    5’−GACAGAGAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号13);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUAUGUdTdT−3’(配列番号14);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUACUUdTdT−3’(配列番号15);および
    5’−GACACACAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号16)
    からなる群より選択される配列を含むsiRNA。
  2. 5’−GACACAGAUCUGUCAUACGU−3’(配列番号9);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUACGU−3’(配列番号12);
    5’−GACAGAGAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号13);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUAUGUdTdT−3’(配列番号14);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUACUUdTdT−3’(配列番号15);および
    5’−GACACACAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号16)
    からなる群より選択される配列を含むsiRNAを含む医薬組成物
  3. 5’−GACACAGAUCUGUCAUACGU−3’(配列番号9);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUACGU−3’(配列番号12);
    5’−GACAGAGAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号13);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUAUGUdTdT−3’(配列番号14);
    5’−GACACAGAUCUGUCAUACUUdTdT−3’(配列番号15);および
    5’−GACACACAUCUGUCAUACGUdTdT−3’(配列番号16)
    からなる群より選択される配列を含むsiRNAを含み、該siRNAは、放射線療法と併用して投与されることを特徴とする癌を治療するための医薬組成物
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