JP2023141905A - 炎症性腸疾患の予防又は治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】炎症性腸疾患の予防又は治療剤、炎症性腸疾患の発症が予防されたモデル非ヒト動物、炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供する。【解決手段】miR-150の阻害剤を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤;miR-150をホモ又はヘテロに欠損している、炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物;炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下でCD4+T細胞を培養する工程と、前記CD4+T細胞におけるmiR-150の発現量を測定する工程と、を含み、前記miR-150の発現量が、前記被験物質の非存在下でCD4+T細胞を培養した場合と比較して低下したことが、前記被験物質が炎症性腸疾患の予防又は治療剤であることを示す、スクリーニング方法。【選択図】なし

Description

本発明は、炎症性腸疾患の予防又は治療剤に関する。より詳細には、本発明は、炎症性腸疾患の予防又は治療剤、炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物、及び、炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法に関する。
潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease、IBD)は、免疫異常に基づく多様な病態を示す疾患である。炎症性腸疾患は、炎症抑制薬により一時的に病態を抑えることができても、再発、再然を繰り返す慢性疾患であり、治療の副作用にも注意を要する代表的難病である。
近年、日本においても、炎症性腸疾患患者数が増大している。炎症性腸疾患は、発症機構が解明されておらず、決定的な治療法が見出されていない。このため、厚生労働省の特定疾患に指定されており、新規治療法の開発が急務とされている。
炎症性腸疾患の発症機構を解明し、副作用の少ない有効性の高い分子標的薬の開発が求められている。現在は、分子標的薬として、抗TNF抗体や抗インテグリンα4β7抗体等の抗体医薬を繰り返し注射するという患者の苦痛を伴う対症療法が行われているのが現状である。
発明者らは、以前に、炎症性腸疾患モデルマウスを作製した(特許文献1を参照)。このマウスは、T細胞特異的にRAS-related protein-1a(Rap1a)及びRAS-related protein-1b(Rap1b)を欠損したマウス(以下、Rap1 KOマウスという。)であり、大腸炎及び大腸癌を自然発症する。
ところで、マイクロRNA(miRNA)とは、タンパク質に翻訳されない20~25塩基程度の長さの一本鎖RNAであり、ヒトを含む生物に多数存在することが知られている。ヒトゲノムには1,000以上のmiRNAがコードされていると考えられている。
miRNAは、次のような工程を経て生合成される。まず、miRNA遺伝子から一次転写産物であるprimary-microRNA(pri-miRNA)が転写される。続いて、pri-miRNAがプロセシングされ、特徴的なヘアピン構造を有する約70塩基のprecursor-microRNA(pre-miRNA)が生成される。続いて、pre-miRNAが核内から細胞質に輸送されてプロセシングされ、成熟型miRNAが生成される。
成熟型miRNAは、標的となるmRNAに相補的に結合してmRNAの翻訳を抑制するか、あるいはmRNAを分解することにより、遺伝子発現の転写後制御に関与していると考えられている。miRNAは、発生、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、代謝等の広範な生物学的プロセスに重要な役割を担うことが知られている。
近年、miRNAに対して非常に強力にかつ特異的に結合するtiny LNA(人工核酸よりなる8塩基程度の小さな核酸医薬)等が開発され、miRNAの働きを抑制するmiRNA阻害剤を実用化する研究が進展している(例えば、非特許文献1を参照。)。miRNA阻害剤等の核酸医薬品は、低分子医薬品、抗体医薬品に続く第3の医薬品といわれており、抗体医薬を凌駕する有効性と安全性が期待でき、従来の医薬品では治療が難しかった疾患を根治する可能性を秘めている。
特許第6273653号公報
Yamamoto T., et al., Highly Potent GalNAc-Conjugated Tiny LNA Anti-miRNA-122 Antisense Oligonucleotides, Pharmaceutics, 13 (6), 817, 2021.
本発明は、炎症性腸疾患の予防又は治療剤、炎症性腸疾患の発症が予防されたモデル非ヒト動物、炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]miR-150の阻害剤を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
[2]前記miR-150が、5'-UCUCCCAACCCUUGUACCAGUG-3'(配列番号1)又は5'-CUGGUACAGGCCUGGGGGACAG-3'(配列番号2)の塩基配列を有する、[1]に記載の炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
[3]miR-150をホモ又はヘテロに欠損している、炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物。
[4]炎症性腸疾患モデル非ヒト動物において、miR-150をホモ又はヘテロに欠損した非ヒト動物である、[3]に記載の炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物。
[5]前記炎症性腸疾患モデル非ヒト動物が、T細胞特異的にRAS-related protein-1a(Rap1a)及びRAS-related protein-1b(Rap1b)を欠損した非ヒト動物である、[4]に記載の炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物。
[6]炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下でCD4T細胞を培養する工程と、前記CD4T細胞におけるmiR-150の発現量を測定する工程と、を含み、前記miR-150の発現量が、前記被験物質の非存在下でCD4T細胞を培養した場合と比較して低下したことが、前記被験物質が炎症性腸疾患の予防又は治療剤であることを示す、スクリーニング方法。
本発明により、炎症性腸疾患の予防又は治療剤、炎症性腸疾患の発症が予防されたモデル非ヒト動物、炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。
図1は、実験例1において、CD4T細胞におけるmiR-150の発現量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。 図2(a)は、実験例2において、健常人及びクローン病患者の末梢血由来T細胞におけるmiR-150の発現量の測定結果を示すグラフである。図2(b)は、実験例2において、健常人及び潰瘍性大腸炎患者の末梢血由来T細胞におけるmiR-150の発現量の測定結果を示すグラフである。 図3は、実験例3の概要を説明する模式図である。 図4は、実験例3において、miR-150-/-Rap1 KOマウス及びコントロールマウスの体重変化を測定した結果を示すグラフである。 図5は、実験例3において、miR-150-/-Rap1 KOマウス及びコントロールマウスにおける、大腸粘膜固有層中のCD4エフェクターT細胞の数を測定した結果を示すグラフである。 図6は、実験例4における大腸組織の切片の顕微鏡画像である。
[miRNAの表記]
本明細書において、ヒト型miRNAにはhsaの略称を使用する。また、マウス型miRNAにはmmuの略称を使用する。また、前駆体型miRNAにはmirを使用し、成熟型miRNAにはmiRを使用する。しかしながら、場合により、これらを厳密に区別せずに記載する場合がある。
[炎症性腸疾患の予防又は治療剤]
一実施形態において、本発明は、miR-150の阻害剤を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤を提供する。ここで、miR-150は、成熟型のmiRNA 150を意味する。
実施例において後述するように、発明者らは、炎症性腸疾患モデル非ヒト動物及び炎症性腸疾患患者のT細胞において、miR-150の発現量が増加することを明らかにした。また、炎症性腸疾患モデル非ヒト動物のmiR-150をノックアウトすると、大腸炎の発症が全く認められなくなることを明らかにした。これらの結果は、miR-150の阻害剤が炎症性腸疾患の予防又は治療剤となることを示す。
本実施形態の予防又は治療剤において、miR-150は哺乳動物のmiRNAであることが好ましく、なかでも、ヒト、サル等の霊長類、マウス等のげっ歯類のmiRNAであることが好ましい。特に、ヒトの炎症性腸疾患の予防又は治療のためには、miR-150はヒトのmiRNA(hsa-miR-150)であることが好ましい。
hsa-miR-150は、前駆体であるhsa-mir-150から生成される。hsa-mir-150の塩基配列は5'-CUCCCCAUGGCCCUGUCUCCCAACCCUUGUACCAGUGCUGGGCUCAGACCCUGGUACAGGCCUGGGGGACAGGGACCUGGGGAC-3'(配列番号3)である。
hsa-mir-150から、成熟型miRNAである、hsa-miR-150-5p及びhsa-miR-150-3pが生成される。hsa-miR-150-5pの塩基配列は5'-UCUCCCAACCCUUGUACCAGUG-3'(配列番号1)であり、hsa-miR-150-3pの塩基配列は5'-CUGGUACAGGCCUGGGGGACAG-3'(配列番号2)である。
hsa-miR-150-5pは、hsa-mir-150の塩基配列の第16番目から第37番目に対応する。また、hsa-miR-150-3pは、hsa-mir-150の塩基配列の第51番目から第72番目に対応する。
本実施形態の予防又は治療剤において、miR-150の阻害剤は、hsa-miR-150-5pの阻害剤であってもよいし、hsa-miR-150-3pの阻害剤であってもよい。
なお、マウスmiRNAであるmmu-miR-150-5pは、ヒトmiRNAであるhsa-miR-150-5pと同一の塩基配列を有している。また、マウスmiRNAであるmmu-miR-150-3pは、ヒトmiRNAであるhsa-miR-150-3pと同一の塩基配列を有している。したがって、本実施形態の予防又は治療剤は、炎症性腸疾患モデルマウスに対しても炎症性腸疾患の予防又は治療効果を有する。
miR-150の阻害剤は、miR-150の機能を阻害するものであれば特に限定されず、一本鎖又は二本鎖の核酸断片であってよい。miR-150の阻害剤として機能する核酸断片は、少なくとも一部がmiR-150にハイブリダイズするものである。miR-150の阻害剤として機能する核酸断片は、一部又は全部が、2’-O-メチル化RNA、Locked Nucleic Acid(LNA)等の修飾核酸であってもよい。
miR-150の阻害剤として機能する核酸断片の具体例として、Synthetic Tough Decoy(S-TuD)、IDT(登録商標)miRNA inhibitor、Tiny LNA等が挙げられる。
S-TuDは、2’-O-メチル化RNAを主な構成成分とする2本鎖RNAであり、Micro RNA Binding Site(MBS)がRISC複合体化した成熟型miRNAに特異的に結合し、低濃度でもmiRNA活性を強力に阻害する。S-TuDは、株式会社ジーンデザインより入手することができる。
IDT(登録商標)miRNA inhibitorは、2’-O-メチル化RNAとZENという特殊修飾を有するオリゴヌクレオチドであり、Integrated DNA Technologiesより入手することができる。
上述した炎症性腸疾患の予防又は治療剤は、薬学的に許容される担体とともに、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物として製剤化されていてもよい。炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物をヒト又は非ヒト動物の生体に投与することにより、炎症性腸疾患の予防又は治療を行うことができる。
製剤化は、有効成分(miR-150の阻害剤)及び薬学的に許容される担体を組み合わせて一般的な製剤技術により行うことができる。医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、坐剤等の形態で非経口的に投与することができる。
薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤等が挙げられる。
医薬組成物は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤等が挙げられる。
医薬組成物は、上述したmiR-150の阻害剤と、上述した薬学的に許容される担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
医薬組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば、投与単位形態あたり0.1~100mg/kg体重の有効成分(miR-150の阻害剤)を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば、投与単位形態あたり0.01~50mgの有効成分を投与すればよい。
また、医薬組成物の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人1日あたり0.1~100mg/kg体重の有効成分を1日1回又は2~4回程度に分けて投与すればよい。
[炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物]
一実施形態において、本発明は、miR-150をホモ又はヘテロに欠損している、炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物を提供する。本実施形態に係る発明は、非ヒト動物の炎症性腸疾患を予防する方法であって、前記非ヒト動物のmiR-150をホモ又はヘテロに欠損させる工程を含む方法に係る発明であるということもできる。
本実施形態のモデル非ヒト動物は、炎症性腸疾患モデル非ヒト動物において、miR-150をホモ又はヘテロに欠損した非ヒト動物であることが好ましい。ここで、炎症性腸疾患モデル非ヒト動物としては、T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損した非ヒト動物が挙げられる。
実施例において後述するように、発明者らは、炎症性腸疾患モデルマウスのmiR-150をノックアウトすると、大腸炎の発症が全く認められなくなることを明らかにした。この結果は、miR-150をホモ又はヘテロに欠損した非ヒト動物は、炎症性腸疾患が予防されていることを示す。
非ヒト動物としては、非ヒト哺乳動物が挙げられる。非ヒト哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット等のげっ歯類、サル等の霊長類が挙げられる。マウスRap1a遺伝子のcDNAのNCBIアクセッション番号はNM_145541であり、マウスRap1b遺伝子のcDNAのNCBIアクセッション番号はNM_024457である。非ヒト動物がマウス以外の動物である場合には、各動物種におけるRap1a及びRap1bが欠損していればよい。
本実施形態のモデル非ヒト動物において、Rap1a及びRap1bを欠損しているとは、機能的なRap1aタンパク質及びRap1bタンパク質の発現が抑制されているか、又は欠損していることを意味する。例えば、ゲノム上のRap1aアレルの一部又は全部、及びRap1bアレルの一部又は全部が欠失(ノックアウト)していてもよいし、例えばsiRNA、shRNA等の導入によりRap1a及びRap1bの発現が抑制(ノックダウン)されていてもよい。
T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損させる方法としては、例えば、Creリコンビナーゼ-LoxPシステムを用いる方法が挙げられる。例えば、Rap1aアレル及びRap1bアレルのそれぞれを、Creリコンビナーゼの標的配列であるLoxP配列で挟んだ非ヒト動物(flox非ヒト動物)(以下、「Rap1af/fRap1bf/f非ヒト動物」という場合がある。)と、T細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーターの下流にCreリコンビナーゼタンパク質をコードする遺伝子を連結した発現ユニットを導入した非ヒト動物とを交配させる方法が挙げられる。
T細胞特異的に発現する遺伝子としては、例えば、lymphocyte-specificproteintyrosinekinase(Lck)、CD4等が挙げられる。以下、Lck遺伝子のプロモーターの下流にCreリコンビナーゼタンパク質をコードする遺伝子を連結した発現ユニットを有する非ヒト動物を「Lck-Cre非ヒト動物」という場合がある。また、CD4遺伝子のプロモーターの下流にCreリコンビナーゼタンパク質をコードする遺伝子を連結した発現ユニットを有する非ヒト動物を「CD4-Cre非ヒト動物」という場合がある。
Rap1af/fRap1bf/f非ヒト動物と、Lck-Cre非ヒト動物又はCD4-Cre非ヒト動物とを交配させると、子孫の中に、T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損した非ヒト動物が出現する。T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損した非ヒト動物は、炎症性腸疾患モデル非ヒト動物として利用することができ、大腸炎及び大腸癌を自然発症する。
例えば、T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損した非ヒト動物と、miR-150をホモ又はヘテロに欠損した非ヒト動物とを交配させることにより、子孫の中に、炎症性腸疾患モデル非ヒト動物において、miR-150をホモ又はヘテロに欠損した非ヒト動物を得ることができる。
[炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法]
一実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下でCD4T細胞を培養する工程と、前記CD4T細胞におけるmiR-150の発現量を測定する工程と、を含み、前記miR-150の発現量が、前記被験物質の非存在下でCD4T細胞を培養した場合と比較して低下したことが、前記被験物質が炎症性腸疾患の予防又は治療剤であることを示す、スクリーニング方法を提供する。
実施例において後述するように、発明者らは、炎症性腸疾患の患者のT細胞、及び、炎症性腸疾患モデルマウスのCD4T細胞では、miR-150の発現量が上昇していることを明らかにした。また、発明者らは、炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、miR-150を欠損させると、大腸炎が予防されることを明らかにした。したがって、CD4T細胞におけるmiR-150の発現量を低下させる薬物は、炎症性腸疾患の予防又は治療剤となり得る。
本実施形態のスクリーニング方法により、炎症性腸疾患の予防又は治療剤をスクリーニングすることができる。被験物質としては、特に限定されず、例えば、天然化合物ライブラリ、合成化合物ライブラリ、既存薬ライブラリ、代謝物ライブラリ等が挙げられる。
CD4T細胞は、ヒト由来の細胞であってもよいし、マウス等の非ヒト動物由来の細胞であってもよい。CD4T細胞が、ヒト由来の細胞である場合、当該細胞は、健常人由来の細胞であってもよいし、炎症性腸疾患患者由来の細胞であってもよい。あるいは、Rap1a及びRap1bを欠損した細胞であってもよい。
CD4T細胞が、マウス由来の細胞である場合、当該細胞は、野生型の細胞であってもよいし、炎症性腸疾患モデルマウス由来の細胞であってもよい。炎症性腸疾患モデルマウスとしては、T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損したマウスを好適に利用することができる。
CD4T細胞の精製は、例えば、フローサイトメーターを用いたソーティングにより行ってもよいし、磁気ビーズを用いた市販のキットを用いて行ってもよい。
miR-150の発現量の測定は、定量的リアルタイムPCR、ノーザンブロッティング等により行うことができる。miR-150の発現量としては、成熟型のmiR-150の発現量を測定することが好ましい。
被験物質の存在下で培養したCD4T細胞におけるmiR-150の発現量が、被験物質の非存在下でCD4T細胞を培養した場合と比較して低下した場合、当該被験物質は炎症性腸疾患の予防又は治療剤の候補である。
[その他の実施形態]
一実施形態において、本発明は、miR-150の阻害剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、炎症性腸疾患の予防又は治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患の予防又は治療における使用のための、miR-150の阻害剤を提供する。
一実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患の予防又は治療剤を製造するための、miR-150の阻害剤の使用を提供する。
これらの各実施形態において、miR-150の阻害剤については上述したものと同様である。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(炎症性腸疾患に関連するmiRNAの同定)
発明者らは、以前に、炎症性腸疾患モデルマウスを作製した(特許文献1を参照。)。このマウスは、T細胞特異的にRap1a及びRap1bを欠損したマウス(以下、Rap1 KOマウスという。)であり、大腸炎及び大腸癌を自然発症する。
野生型マウス及びRap1 KOマウスの脾臓からナイーブCD4T細胞を回収し、抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコートしたプレート上で48時間培養して活性化させた。続いて、各細胞からRNAを抽出し、次世代シーケンサーでmiRNAを網羅的にシーケンスした。その結果、野生型のCD4T細胞と比較して、Rap1欠損CD4T細胞において、発現量が有意に上昇したmiRNAとして、miR-150に着目した。
続いて、定量的リアルタイムPCRにより、miR-150の発現量の上昇の再現性を確認した。miR-150としては、mmu-miR-150-5pの発現量を測定した。
図1は、野生型マウス及びRap1 KOマウスの脾臓から回収したナイーブCD4T細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で刺激して活性化させた場合における、miR-150の発現量の経時変化を、定量的リアルタイムPCRにより測定した結果を示すグラフである。
その結果、野生型のCD4T細胞と比較して、Rap1欠損CD4T細胞において、miR-150の発現量が有意に上昇していることが明らかとなった。また、野生型のCD4T細胞では、抗CD3抗体及び抗CD28抗体による刺激によって、miR-150の発現量が低下した。これに対し、Rap1欠損CD4T細胞では、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で刺激しても、miR-150の発現量が低下しなかったことが明らかとなった。
[実験例2]
(ヒトT細胞におけるmiR-150の発現量の測定)
クローン病患者(6名、32~67歳)、潰瘍性大腸炎患者(6名、40~77歳)、健常人(10名、28~57歳)の末梢血からT細胞を精製し、miR-150の発現量を定量的リアルタイムPCRにより測定した。miR-150としては、hsa-miR-150-5pの発現量を測定した。
図2(a)及び(b)は、miR-150の発現量の測定結果を示すグラフである。図2(a)は健常人及びクローン病患者の結果を比較したものである。また、図2(b)は健常人及び潰瘍性大腸炎患者の結果を比較したものである。
その結果、炎症性腸疾患の患者のT細胞では、miR-150の発現量が上昇する傾向が認められた。この結果は、炎症性腸疾患にmiR-150が関連することを更に支持するものである。
[実験例3]
(miR-150のノックアウト)
miR-150-/-マウス(ジャクソン・ラボラトリー)とRap1 KOマウスを交配し、miR-150-/-Rap1 KOマウスを作製した。図3は、本実験例の概要を説明する模式図である。続いて、miR-150-/-Rap1 KOマウスにおける大腸炎の症状を検討した。
図4は、miR-150-/-Rap1 KOマウス及びコントロールマウスの体重変化を測定した結果を示すグラフである。図4中、「DKO」はmiR-150-/-Rap1 KOマウスの結果であることを示し、「Rap1 KO」はRap1 KOマウス(miR-150+/+Rap1 KOマウス)の結果であることを示し、「150KO」はmiR-150-/-マウスの結果であることを示し、「f/f」はRap1af/fRap1bf/fマウスの結果であることを示す。
その結果、miR-150-/-Rap1 KOマウスでは、Rap1 KOマウスで認められる体重減少が抑制されたことが明らかとなった。この結果は、miR-150をホモ又はヘテロに欠損することで、炎症性腸疾患が予防されることを示唆する。
図5は、miR-150-/-Rap1 KOマウス及びコントロールマウスにおける、大腸粘膜固有層中のCD4エフェクターT細胞の数を測定した結果を示すグラフである。図5中、「DKO」はmiR-150-/-Rap1 KOマウスの結果であることを示し、「KO」はRap1 KOマウス(miR-150+/+Rap1 KOマウス)の結果であることを示し、「150」はmiR-150-/-マウスの結果であることを示し、「WT」は野生型マウスの結果であることを示す。
その結果、Rap1 KOマウスでは、大腸粘膜固有層中のCD4エフェクターT細胞の数の増加が認められたことが明らかとなった。これに対し、miR-150-/-Rap1 KOマウスでは、大腸粘膜固有層中のCD4エフェクターT細胞の数の増加が認められないことが明らかとなった。この結果は、miR-150をホモ又はヘテロに欠損することで、炎症性腸疾患が予防されることを更に支持するものである。
[実験例4]
(大腸組織の病理学的解析)
miR-150-/-Rap1 KOマウス及びコントロールマウスの大腸組織の切片をヘマトキシリン・エオシン染色し、病理組織学的解析を行った。コントロールマウスとしては、野生型マウス、Rap1 KOマウス、miR-150-/-マウスを使用した。
図6は、各マウスの大腸組織の切片の顕微鏡画像である。スケールバーは1mmを示す。図6中、「WT」は、野生型マウスの結果であることを示し、「CD4 Rap1 KO」は、Rap1 KOマウスの結果であることを示し、「miRNA150 KO」は、miR-150-/-マウスの結果であることを示し、「DKO」は、miR-150-/-Rap1 KOマウスの結果であることを示す。
その結果、Rap1 KOマウスでは大腸炎が認められた。これに対し、miR-150-/-Rap1 KOマウスでは大腸炎が全く認められないことが明らかとなった。この結果は、miR-150のノックアウトにより、炎症性腸疾患を予防又は治療できることを示す。
本発明により、炎症性腸疾患の予防又は治療剤、炎症性腸疾患の発症が予防されたモデル非ヒト動物、炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. miR-150の阻害剤を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
  2. 前記miR-150が、5'-UCUCCCAACCCUUGUACCAGUG-3'(配列番号1)又は5'-CUGGUACAGGCCUGGGGGACAG-3'(配列番号2)の塩基配列を有する、請求項1に記載の炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
  3. miR-150をホモ又はヘテロに欠損している、炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物。
  4. 炎症性腸疾患モデル非ヒト動物において、miR-150をホモ又はヘテロに欠損した非ヒト動物である、請求項3に記載の炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物。
  5. 前記炎症性腸疾患モデル非ヒト動物が、T細胞特異的にRAS-related protein-1a(Rap1a)及びRAS-related protein-1b(Rap1b)を欠損した非ヒト動物である、請求項4に記載の炎症性腸疾患が予防されたモデル非ヒト動物。
  6. 炎症性腸疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法であって、
    被験物質の存在下でCD4T細胞を培養する工程と、
    前記CD4T細胞におけるmiR-150の発現量を測定する工程と、を含み、
    前記miR-150の発現量が、前記被験物質の非存在下でCD4T細胞を培養した場合と比較して低下したことが、前記被験物質が炎症性腸疾患の予防又は治療剤であることを示す、スクリーニング方法。
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