JP4524361B2 - 膜ろ過方法および膜ろ過装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜ろ過方法および膜ろ過装置、特に、貯留槽内に貯留された被処理液をろ過してろ過液を得るための膜ろ過方法および膜ろ過装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、膜モジュールを被処理液に浸漬し、空気泡の浮力を利用しながらろ過するクロスフローろ過方式(例えば、特開昭61−129094号公報参照。このろ過方式を浸漬型膜ろ過法と通称し、これに使用する膜モジュールを浸漬型膜モジュールと通称している)が、高汚濁液の省エネルギー精密ろ過方式として多方面で利用されるようになっている。この分野では、中空糸膜モジュールと平膜モジュールが専ら使用されており(例えば、財団法人日本環境整備教育センター「膜処理方を導入した小型生活排水処理装置の実用化に関する研究報告書、平成4〜平成7年度」参照)、管状のろ過膜を用いた管状ろ過膜モジュールに関しては、貯槽から被処理液を外部に取り出し、特別な構造の配管と膜モジュールを用いて浸漬型膜ろ過を行なう、特殊な利用形態に関する出願(特開平9−47639号公報、特開平9−99223号公報)が見られるものの、中空糸膜モジュールや平膜モジュールとの性能比較に関する記載がないだけでなく、実際に使用された報告例も見られない。
【0003】
なお、浸漬型膜ろ過法は、空気泡の浮力を利用して被処理液を自然循環させながらろ過する方法であり、被処理液をポンプなどの機械的循環手段を用いて膜モジュールに対して供給・循環させる限外ろ過法とは明確に区別されるものである。
【0004】
浸漬型膜ろ過法は、すでに様々な分野へ応用が進められているが、我が国における有力な水質浄化手段、特に、屎尿を含む全ての生活排水(総合生活排水)の有力な浄化手段として、上述の文献にも見られるように、長年に渉って、公的機関が積極的に研究開発を支援している。また、下水道研究発表会講演集、水環境学会年会講演集などの学会発表においても、公的および私的研究機関の積極的な発表が続けられている。そして、これらの成果の一つとして、中空糸膜モジュールや平膜モジュールを用いた浸漬型膜ろ過装置を組み込んだ総合生活排水用の合併浄化槽が開発されるに至っている。
【0005】
ところで、現在では、生活排水を処理するための浄化槽を新設する場合、単独浄化槽の使用は禁止されている。これは、単独浄化槽が屎尿のみの簡易処理を目的としているため屎尿以外の生活排水の垂れ流し状態を助長する可能性があり、また、単独浄化槽で処理した生活排水の水質が悪く、我が国の水質汚染の元凶になっていると指摘されているためである。このため、現在は、生活排水用の浄化槽として、総合生活排水を処理可能な合併浄化槽の使用が義務づけられている。
【0006】
一方、単独浄化槽は、既に約700万個が設置されていると言われており、それを有効活用して総合生活排水を処理可能な合併浄化槽に改良する試みがなされている。例えば、単独浄化槽内に中空糸膜モジュールや平膜モジュールを用いた浸漬型膜ろ過装置を配置し、単独浄化槽による生活排水の処理能力を合併浄化槽レベルに高める試みがなされている。
【0007】
しかし、中空糸膜モジュールや平膜モジュールは、被処理液中に全体が浸漬された状態でないと被処理液をろ過処理することができない。このため、単独浄化槽において中空糸膜モジュールや平膜モジュールを用いた浸漬型膜ろ過装置を組み込んだ場合、これらのモジュールが被処理液中に浸漬された状態に維持されるよう、単独浄化槽内における被処理液の貯留量を常に高めておく必要がある。ところが、単独浄化槽は、容量が小さいため、被処理液の貯留量を常に高めておくと、浴槽の水を排水した場合等、一時に大量の被処理液が流入した場合に被処理液が溢れ出す可能性がある。これを防止するため、単独浄化槽に流量調整槽を付加し、一時に大量に流入する被処理液を当該流量調整槽で一時的に貯留することも考えられるが、流量調整槽を設置するためのスペースが必要であり、また、そのための工事費用が高額になるため、実現は困難である。
【0008】
一方、ほとんど未知の状態である管状ろ過膜膜モジュールについては、単独浄化槽への適用について特別な関心が向けられたことはなく、上述の文献等においても発表事例がなかった。本発明者らの推測になるが、その理由として、従来の膜モジュールに対するろ過性能上の差異が不明瞭であるだけでなく、浸漬型膜ろ過法が適用される多くの用途が夾雑物を大量に含むために管状ろ過膜自身がこれらによって閉塞すると予想されたことが考えられる。
【0009】
しかしながら、科学的に管状ろ過膜モジュールの特徴を推測すると、中空糸膜モジュールや平膜モジュールに対する多くの利点が見出される。例えば、
1.すべての空気の流れを、クロスフローの平行流れを大きくするために利用できる。
2.気泡と被処理液の通路が円筒形であるために、物質移動係数が他のモジュール形態に比べて大きく、原理的にフラックス(単位膜面積当たりのろ過流量)が大きい。
3.膜自身が 気泡と被処理液の通路を構成するので、モジュール構造がコンパクトになる。
などである。
【0010】
このように、管状ろ過膜モジュールは、中空糸膜モジュールや平膜モジュールに比べて原理的に優れているものと考えられるが、他のモジュール形態とは異なり、1つの管状ろ過膜内に供給された(押し込まれた)気泡が他の管状ろ過膜に移動することはできないので、管状ろ過膜内に気泡が押し込まれないか、あるいはその流量が小さい管状ろ過膜では、ろ過性能が低下する。したがって、管状ろ過膜モジュールでは、すべての管状ろ過膜に、可能な限り均等に気泡を供給する必要がある。因みに、上記文献(特開平9−47639号公報および特開平9−99223号公報)には、このような管状ろ過膜モジュールに対して気泡を均等に分配することの重要性や、その実現方法が一切述べられていないだけでなく、描かれた図面には、気泡の通路に障害物さえも存在している。
【0011】
一方、管状ろ過膜モジュールにおいて、1つの管状ろ過膜に押し込まれた気泡が別の管状ろ過膜に移動することができないという短所は、見方を変えると、他のモジュールには見られない長所になり得る。例えば、管状ろ過膜内の被処理液は、管状ろ過膜内に気泡が供給され続けている限り、たとえモジュールの一部が被処理液から露出していても、当該空気泡の浮力により必ず押し出されることを意味している。
【0012】
本発明の目的は、浸漬型膜ろ過法において、貯留槽内に貯留された被処理液からろ過膜モジュールの一部が露出している場合であっても、被処理液をろ過処理できるようにすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の膜ろ過方法は、貯留槽内に貯留された被処理液をクロスフローろ過方式によりろ過してろ過液を得るための方法であり、被処理液のろ過機能を有する管状ろ過膜の複数本を含む管状ろ過膜群がろ過液の排出口を有する筒状の収納容器内に収容されかつ保持されたろ過膜モジュールを、管状ろ過膜が上下方向に開口するよう貯留槽内に配置し、ろ過膜モジュールの下方からろ過膜モジュールに向けて管状ろ過膜の内径以上の大きさの空気泡を供給する工程を含み、ろ過膜モジュールの一部が被処理液から露出している。
【0014】
このろ過方法では、ろ過膜モジュールの全長をLとし、被処理液からのろ過膜モジュールの露出部分の長さをΔLとした場合のΔL/L値を0.8以下に設定するのが好ましい。
【0015】
この膜ろ過方法において、ろ過膜モジュールの下方からろ過膜モジュールに供給される空気泡は、被処理液中を上昇し、ろ過膜モジュールの管状ろ過膜内に供給される。この際、被処理液は、空気泡の浮力によりろ過膜モジュールに向けて上昇し、空気泡と共に管状ろ過膜内に供給される。管状ろ過膜内に供給された被処理液は、続けて空気泡の浮力により管状ろ過膜内を上昇し、その際、一部が管状ろ過膜を内側から外側に通過してろ過される。管状ろ過膜を通過した被処理液、すなわちろ過液は、収納容器の排出口から外部に排出される。
【0016】
上述のような膜ろ過方法において、管状ろ過膜内に供給された空気泡は、他の管状ろ過膜内に移行することなくそのまま当該管状ろ過膜内を上昇する。このため、管状ろ過膜内に供給された被処理液であって管状ろ過膜を内側から外側に通過しない残余の被処理液は、そのまま空気泡と共に管状ろ過膜内を上昇し、ろ過膜モジュールの上端部から溢れ出る。したがって、このろ過方法では、貯留槽において、ろ過膜モジュールの一部が被処理液から露出しているような場合であっても、貯留槽内の被処理液をろ過することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る膜ろ過装置が採用された膜ろ過システムを説明する。図において、膜ろ過システム100は、貯留槽150と、膜ろ過装置200とを主に備えている。
【0021】
貯留槽150は、上部に開口を有する容器状に形成されており、内部に被処理液を貯留するためのものである。また、貯留槽150には、被処理液の供給路151が設けられている。
【0022】
膜ろ過装置200は、貯留槽150内に配置されたろ過膜モジュール300、貯留槽150内でろ過膜モジュール300を支持する案内筒400、空気泡供給装置500およびろ過液排出経路600を主に備えている。
【0023】
ろ過膜モジュール300は、図2に示すように、円筒状の収納容器301と、この収納容器301内に充填された管状ろ過膜群302とを主に備えている。収納容器301は、例えば樹脂製の部材であり、その側面には、ろ過処理後の被処理液(ろ過液)を排出するための排出口303が形成されている。また、収納容器301の内周面において、その上部および下部には、管状ろ過膜群302と収納容器301の内周面との間に隙間を設けるためのスペーサー304が中心方向に向けて突出している。
【0024】
スペーサー304は、収納容器301の中心側に向けて拡大する、断面形状が概ね楔状に形成されており、また、図3、図4および図5に示すように、収納容器301の円周方向において概ね等間隔に形成された複数のスリット305を有している。なお、収納容器301の上部および下部にそれぞれ設けられたスペーサー304,304は、収納容器301の内周面からの突出量が同じに設定されている。
【0025】
また、各スペーサー304は、スペーサー304を有する部分における収納容器301の軸線方向に垂直な断面(スペーサー304の上下方向の中央部における断面、すなわち図2のii−ii部分の断面)における収納容器301の内部の断面積(図3に網掛け線で示した部分の面積に相当)に占める、その断面積の割合が3〜10%になるよう設定されているのが好ましい。この割合が3%未満の場合は、収納容器301の内周面、特に排出口303と管状ろ過膜群302との間に隙間が形成されにくくなる結果、収納容器301内において、後述する管状ろ過膜310を通過した被処理液(ろ過液)の流動性が低下し、ろ過流量が低下するおそれがある。一方、この割合が10%を超える場合は、収納容器301内において管状ろ過膜群302の占める割合が小さくなるため、被処理液のろ過効率が低下するおそれがある。
【0026】
管状ろ過膜群302は、細長な円筒状に形成された管状ろ過膜310の多数本を含む群であり、各管状ろ過膜310は、後述する突起320により互いに密着するのを防止されながら(すなわち、互いに間隔を設けながら)、収納容器301の開口方向に沿って互いに平行に密に集合している。このような管状ろ過膜群302の上端部および下端部は、それぞれウレタン樹脂などの樹脂材料を用いて形成された保持部306により、各管状ろ過膜310の両端の開口状態を維持しつつ収納容器301の両端部に対して一体的に保持されると共に固定されている。また、収納容器301の両端部は、当該保持部306により液密に閉鎖されている。
【0027】
上述の管状ろ過膜群302を構成する管状ろ過膜310は、図6に示すような円筒状に形成されており、図7に示すように、内周面側から外周面側に向けて順にろ過膜層311および支持膜層312を備えた2層構造を有している。
【0028】
ろ過膜層311の種類は、被処理液から除去すべきろ別成分の種類に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、例えば微生物などの微粒子を除去する必要がある場合は精密ろ過膜が用いられる。精密ろ過膜は、例えばJIS K 3802では「0.01〜数μm程度の微粒子および微生物をろ過によって分離するために用いる膜」と定義されているが、ここでは、20kPa以下の圧力で実用的なろ過が可能な、孔径が0.04μmよりも大きい微孔を多数有する多孔膜を用いるのが好ましい。因みに、このような精密ろ過膜は、種類が特に限定されるものではなく、公知の各種のもの、例えばセルロース膜やポリオレフィン系樹脂膜などの有機高分子膜を用いることができる。
【0029】
支持膜層312は、上述のろ過膜層311に対して形状保持性を付与し、ろ過膜層311を円筒状に設定するためのものである。このような支持膜層312は、通液性を有する多孔質材料であれば各種のものを用いることができるが、通常は、腰の強さ、優れた強度、優れた耐薬品性、高い耐熱性および経済性を備えたポリプロピレン樹脂製あるいはポリエステル樹脂製の不織布を用いるのが好ましく、特にポリエステル樹脂製の不織布を用いるのが好ましい。
【0030】
また、管状ろ過膜310は、図6に示すように、外周面、即ち、支持膜層312の外周面に、ろ過膜層311の軸線を中心とする螺旋状に連続的に形成された突起320を有している。この突起320は、管状ろ過膜群302において、管状ろ過膜310同士が密着するのを防止し、収納容器301内において各管状ろ過膜310を通過した被処理液(ろ過液)の流動性を高めるためのものである。
例えば、突起320の高さを0.05mmに設定した場合、管状ろ過膜310の有効長が例えば70cmならば、隣接し合う2本の管状ろ過膜310の間には、少なくとも0.005×70=0.35cm2の面積が確保されることになる。したがって、このような間隙が管状ろ過膜群302内に多数存在すれば、収納容器301内においてろ過液の流れに対する抵抗は著しく軽減することになり、ろ過液の流動性が著しく高まることになる。
【0031】
上述のような管状ろ過膜310は、通常、内径(図7のX)が2〜15mmに設定されているのが好ましく、3〜10mmに設定されているのがより好ましい。内径が2mm未満の場合は、被処理液、特に、高汚濁の被処理液をろ過する際において、被処理液中に含まれる各種のろ別成分や夾雑物により管状ろ過膜310が閉塞し易くなり、ろ過処理を長期間安定に継続するのが困難になるおそれがある。また、管状ろ過膜310の中を通過する被処理液の圧力損失が空気泡供給装置500からの空気泡の浮力に対して相対的に大きくなるため、管状ろ過膜310中を通過する被処理液の流速が小さくなる可能性があり、結果的に被処理液が管状ろ過膜310によりろ過されにくくなる場合がある。逆に、内径が15mmを超える場合は、容積の限られた収納容器301内に充填可能な管状ろ過膜群302に含まれる管状ろ過膜310の本数が減少することになるため、ろ過膜モジュール300の単位容積当りのろ過面積(有効膜面積)が小さくなる。その結果、ろ過流量が低下することになるので、ろ過膜モジュール300のコンパクト化を図りながら被処理液の効率的なろ過処理を実施するのが困難になるおそれがある。また、空気泡供給装置500から供給される空気泡の大きさが管状ろ過膜310の内径に比べて小さくなりやすいため、後述するようなろ過膜モジュール300の一部が被処理液から露出している場合において、空気泡が管状ろ過膜310内の被処理液を上昇させるのが困難になり、結果的にそのような場合においてろ過処理の継続が困難になる可能性がある。
【0032】
また、管状ろ過膜310は、肉厚(A)と外径(B)との比(A/B)が0.025〜0.1に設定されているのが好ましく、0.03〜0.1に設定されているのがより好ましい。なお、ここで言う管状ろ過膜310の肉厚および外径は、上述の突起320の厚さ(高さ)を含んでいる。この比が0.025未満の場合は、管状ろ過膜310に対して外側から圧力を加えた場合、管状ろ過膜310が潰れやすくなる。この結果、被処理液のろ過工程において管状ろ過膜310の内周面に堆積するろ別成分などからなるケーク層を排除するために、管状ろ過膜310に対して外側から圧力を加えて逆洗操作を実施した場合、管状ろ過膜310が潰れてしまい、管状ろ過膜310を逆洗するのが実質的に困難になる。なお、20kPa以上の耐圧性を達成するためには、この比を0.03以上に設定するのが好ましい。一方、この比が0.1を超える場合は、ろ過膜モジュール300の単位容積当りのろ過面積(有効膜面積)が小さくなる。その結果、ろ過流量が低下することになるため、ろ過膜モジュール300のコンパクト化を図りながら被処理液の効率的なろ過処理を実施するのが困難になるおそれがある。
【0033】
なお、管状ろ過膜310の厚さは、通常、0.1〜0.4mmが好ましい。
【0034】
さらに、突起320の高さは、通常、0.02〜0.2mmに設定されているのが好ましい。突起320の高さが0.02mm未満の場合は、管状ろ過膜群302において管状ろ過膜310同士が密着し易くなり、結果的にろ過液の流動性を高めるのが困難になるおそれがある。一方、0.2mmを超える場合は、管状ろ過膜群302に含まれる管状ろ過膜310の本数、すなわち、ろ過膜モジュール300の収納容器301内に充填可能な管状ろ過膜310の本数が減少することになるため、ろ過膜モジュール300の単位容積当りのろ過面積が小さくなる。その結果、ろ過流量が低下することになるため、ろ過膜モジュール300のコンパクト化を図りながら被処理液の効率的なろ過処理を実施するのが困難になるおそれがある。なお、ここで言う突起320の高さとは、支持膜層312の表面からの突出量をいう。
【0035】
突起320の高さは、被処理液の種類に応じて適宜選択することもできる。例えば、被処理液が活性汚泥液のようにろ過流量が比較的小さいものである場合、ろ過面積を確保する観点から、突起320は低めに設定するのが好ましい。一方、被処理液が河川の水のようにろ過流量が比較的大きいものである場合、ろ過液の流動性を高める観点から、突起320は高めに設定するのが好ましい。因みに、突起320の高さが上述の範囲内であれば、ろ過膜モジュール300が100m2程度の膜面積を有する大型の場合であっても、殆どの被処理液について、突起320により管状ろ過膜310間に形成される隙間はろ過液の流れに対する大きな抵抗になり難い。
【0036】
次に、図8を参照しつつ、上述の管状ろ過膜310の製造方法の一例を説明する。
先ず、支持膜層312上にろ過膜層311が一体的に積層された、長尺短冊状(テープ状)の複合膜313を用意する。そして、この複合膜313を、図8に示すように、別途用意した円柱状の心棒315に対し、支持膜層312側が表側になるように幅方向の両端部314を重ね合わせながら螺旋状に巻きつける。この状態で重ね合わされた両端部314同士を接着剤、あるいは超音波溶着法により接着すると、目的とする管状ろ過膜310を得ることができる。なお、このような管状ろ過膜310の製造方法は、例えば特公昭56−35483号において既に公知である。
【0037】
このような管状ろ過膜310の製造工程において、重ね合わされた複合膜313の両端部314は、上述の螺旋状の突起320を形成することになる。ここで、複合膜313の重なり具合や接着方法を適宜調節すると、突起320の高さを上述の範囲に設定することができる。
【0038】
次に、図9および図10を参照して、上述のろ過膜モジュール300の製造方法を説明する。このろ過膜モジュール300は、平膜や中空糸膜の取り扱いに細心の注意が要求され、しかも多くの製造工程を要する平膜モジュールや中空糸膜モジュールに比べ、簡単な工程により容易に製造することができる。
【0039】
先ず、多数本の管状ろ過膜310を束ね、管状ろ過膜群302を形成する。一方、収納容器301を用意し、図9に示すように、この収納容器301内に管状ろ過膜群302を挿入して収納容器301と管状ろ過膜群302との組合せ体330を形成する。この組合せ体330では、管状ろ過膜群302の両端部が収納容器301の両端部から突出するように設定する。また、管状ろ過膜群302を構成する管状ろ過膜310の両端部は、例えばヒートシールにより閉鎖しておく。
【0040】
次に、図10に示すように、上述の組合せ体330の一端を、未硬化ウレタン樹脂などの未硬化の樹脂331を入れたモールド332内に浸漬する。ここで、未硬化の樹脂331は、管状ろ過膜群302を構成する管状ろ過膜310間に充填されると共に、スペーサー304に設けられたスリット305を通じて収納容器301の内周面にも均一に到達し、収納容器301の開口部分を完全に閉鎖することになる。この状態で樹脂331を完全に硬化させた後、モールド332を取り払い、組合せ体330の他端についても同様の操作を実施する。これにより、管状ろ過膜群302は、収納容器301に対して保持、固定されることになる。
【0041】
次に、収納容器301の両端部から突出している硬化樹脂と管状ろ過膜310とを切り落とすと、残余の樹脂部分が保持部306を形成し、また、各管状ろ過膜310の両端部が開口し、目的とするろ過膜モジュール300が得られる。このろ過膜モジュール300において、収納容器301の両端部は、既述の通り、各管状ろ過膜310の両端部を除き、硬化した樹脂、すなわち保持部306により液密に閉鎖されることになる。この保持部306は、収納容器301のスペーサー304が上述のような楔形状の凸状に形成されているため、収納容器301の内周面に対して強力に固定されやすく、管状ろ過膜群302を収納容器301に対して安定に保持、固定することになる。すなわち、スペーサー304は、単に管状ろ過膜群302と収納容器301の内周面との間に隙間を設けるだけではなく、保持部306と収納容器301とを安定に固定するために機能し得る。
【0042】
なお、収納容器301の両端部において、その内周面には、例えば溝状の凹部が環状に設けられていてもよい。この場合、樹脂331が当該凹部に流入し、保持部306と収納容器301とがより強力に固定される。
【0043】
保持部306を形成するための材料としては、上述のようなウレタン樹脂の他に、エポキシ樹脂などの他の熱硬化性樹脂やホットメルト接着剤を用いることもできる。但し、大型のろ過膜モジュール300を製造する場合、樹脂材料は、使用量を多く設定する必要があるため、過剰な発熱を抑制する理由および硬化収縮を抑制する理由から、反応速度が比較的遅く、弾性率が比較的小さなものを用いるのが好ましい。なお、ホットメルト接着剤は、上述の製造工程において切り落としたものから回収して再利用することもできる。この点においても、ホットメルト接着剤が比較的高粘度であるがために、その利用が困難な中空糸膜モジュールに比べ、ろ過膜モジュール300は有利である。
【0044】
なお、ろ過膜モジュール300に関する図2等では、理解の便のため、管状ろ過膜310の太さ、管状ろ過膜310間の隙間および管状ろ過膜310と収納容器301の内周面との隙間等を強調している。また、図面を理解し易くするため、図2では、管状ろ過膜310の本数を少なめに表現し、また、図3においては管状ろ過膜310の一部のみ表示している。
【0045】
案内筒400は、図1に示すように、管状ろ過膜310が上下方向に開口するよう起立した状態でろ過膜モジュール300を貯留槽150内で支持している。案内筒400は、樹脂製の円筒状の部材であり、その軸方向に垂直な断面における内周形状が、収納容器301の軸方向に垂直な断面における外周部分の内周形状と実質的に同じ大きさの同形状に設定されている。すなわち、案内筒400は、収納容器301と内径および外径が同じに設定されている。
【0046】
案内筒400の下縁には、図11に示すように、脚402が取付けられたフランジ401が設けられている。そして、案内筒400は、脚402により貯留槽150の底部に配置されており、その状態で上部にろ過膜モジュール300が配置されている。ここで、案内筒400とろ過膜モジュール300とは、筒状のソケット403(図1)を用いて接続されている。なお、ソケット403は、案内筒400とろ過膜モジュール300とを接続すると共に、空気泡供給装置500からの空気泡の漏れ出しを防止するためのものである。ろ過膜モジュール300は、このような案内筒400を用いて支持されている結果、貯留槽150の底部から離れて位置している。
【0047】
空気泡供給装置500は、ろ過膜モジュール300に対して空気泡を供給するためのものであり、図1に示すように、貯留槽150内において、ろ過膜モジュール300の下方であって案内筒400内に配置されている。
図11および図12を参照して、空気泡供給装置500を詳細に説明する。空気泡供給装置500は、第1パイプ501、第2パイプ502および4本の分岐パイプ503、504、505、506を主に有している。第1パイプ501は、案内筒400を貫通しかつ案内筒400の内部においてその中心部を通過するよう水平に配置されている。そして、その一端は、案内筒400の外部において、キャップ507により気密に閉鎖されている。また、第2パイプ502は、第1パイプ501と直交するよう水平に組み合わされており、両端部がそれぞれ案内筒400の壁面を貫通してキャップ507により気密に閉鎖されている。なお、第1パイプ501と第2パイプ502との交点は、案内筒400の中心と一致している。さらに、4本の分岐パイプ503、504、505、506は、第1パイプ501と平行にかつ水平に、第2パイプ502に対して組み合わされており、第1パイプ501の両側に2本づつ配分されている。分岐パイプ504、503は、第1パイプ501から等間隔毎に配置されている。分岐パイプ505、506についても同様である。したがって、第1パイプ501および4本の分岐パイプ503、504、505、506は、等間隔に配列されていることになる。また、各分岐パイプ503、504、505、506は、それぞれ両端部が案内筒400の内周面近傍に向けて延びており、図示しないキャップにより気密に閉鎖されている。
【0048】
上述のようにして組み合わされた第1パイプ501と第2パイプ502とは、交点において連絡しており、また、4本の分岐パイプ503、504、505、506のそれぞれは、第2パイプ502との交点において、当該第2パイプ502と連絡している。これにより、第1パイプ501、第2パイプ502および4本の分岐パイプ503、504、505、506は、一連の空気流路を形成している。
【0049】
また、第1パイプ501、第2パイプ502および4本の分岐パイプ503、504、505、506は、空気を泡状にして噴出するための複数の空気泡噴出孔510を有している(図12では、一例として19個の空気泡噴出孔510を示している)。これらの空気泡噴出孔510は、それぞれ貯留槽150の底面に向けて開口しており、また、図12に示すように、案内筒400の軸方向に垂直な断面の内側(案内筒400の内側の水平面)において、ろ過膜モジュール300の各管状ろ過膜310に対して均等に空気泡を供給することができるよう、最密充填配置パターンで配置されている。すなわち、各空気泡噴出孔510は、図12に一点鎖線で示すような多数の正三角形の各頂点に位置するよう、案内筒400の内側の水平面において、均等な間隔を設けながら分散して配置されている。
【0050】
なお、上述の空気泡供給装置500を形成する各パイプ501〜506の材質は、空気泡噴出孔510から発生する空気泡の上昇流によって生じる被処理液の循環流を妨げないものであれば特に限定されるものではないが、通常は、経済性、加工性および案内筒400に対する装着の容易性などの点において、プラスチック製の円筒状パイプを用いるのが好ましい。
【0051】
上述の空気泡供給装置500の第1パイプ501には、図1に示すように、二次圧・流量調整弁520を備えた空気供給路521を通じてエアコンプレッサーなどの空気供給装置525が接続されている。これにより、第1パイプ501並びにそれに連絡している第2パイプ502および4本の分岐パイプ503、504、505、506には、空気供給装置525からの空気が供給される。
【0052】
空気泡供給装置500は、空気泡噴出孔510から発生する空気泡の大きさが、通常、ろ過膜モジュール300において用いられる管状ろ過膜310の内径以上になるよう設定されているのが好ましい。空気泡の大きさが管状ろ過膜310の内径未満の場合は、後述するようなろ過膜モジュール300の一部が被処理液から露出している場合において、空気泡が管状ろ過膜310内の被処理液を上昇させるのが困難になり、結果的にそのような場合においてはろ過処理の継続が困難になる可能性がある。
【0053】
ろ過液排出経路600は、ろ過膜モジュール300においてろ過処理された被処理液、すなわちろ過液を外部に排出するためのものであり、ろ過膜モジュール300の排出口303から延びている。そして、ろ過液排出経路600の先端には、吸引ボンプ601が接続されている。この吸引ポンプ601は、自給力がないポンプであり、ろ過膜モジュール300の上端よりも下方に配置されている。因みに、吸引ポンプ601として自給式のものを用いる場合、当該吸水ポンプ601は、ろ過膜モジュール300の上端よりも高い位置に配置することができる。
【0054】
上述のろ過膜システム100において、貯留槽150には、ろ過膜モジュール300と案内筒400との連結部分よりも若干上方において、液面センサー610が配置されている。この液面センサー610は、吸引ポンプ601に接続されており、貯留槽150内の被処理液の液面を検知したときに、吸引ポンプ601を停止するよう設定されている。
【0055】
次に、図1を参照して、上述の膜ろ過装置200を用いた被処理液のろ過処理方法(膜ろ過方法)を説明する。
先ず、貯留槽150内に、供給路151を通じて、微小ゲル、コロイド成分、微生物などのろ別成分を含む被処理液、例えば、生活排水の活性汚泥処理液を供給して貯留する。この際、貯留槽150内における被処理液の液面は、液面センサー610の位置l1と貯留槽150の上端近傍であってろ過膜モジュール300よりも上方の位置l2との間になるよう任意に設定する。これにより、ろ過膜モジュール300は、全体が被処理液中に浸漬された状態と、一部が被処理液から露出した状態との間に設定されることになる。
【0056】
次に、吸引ポンプ601を作動させ、また、空気供給装置525から空気供給路521を通じて空気泡供給装置500に空気を供給する。空気泡供給装置500に供給された空気は、空気泡噴出孔510から空気泡となって噴出する。この空気泡は、案内筒400により案内されながら被処理液中を上昇し、ろ過膜モジュール300に含まれる各管状ろ過膜310に対して略均等に供給される。
【0057】
このようにしてろ過膜モジュール300に対して供給される空気泡の浮力により、貯留槽150内に貯留された被処理液は、図2に矢印で示すように、各管状ろ過膜310内を下側から上側に向けて押し上げられる。この際、吸引ポンプ601の作動によりろ過液排出経路600が負圧になるため、被処理液の一部は、管状ろ過膜310を内側から外側に通過してろ過され、また、被処理液中に含まれるろ別成分は、管状ろ過膜310の内周面を構成するろ過膜層311により捕捉されて被処理液から取り除かれる。ろ別成分が取り除かれた被処理液、すなわちろ過液は、収納容器301内において管状ろ過膜310間の隙間を通過し、排出口303からろ過液排出経路600内に排出される。ろ過液排出経路600内に排出されたろ過液は、吸引ポンプ601を通じて連続的に外部に排出される。
【0058】
以上の結果、貯留槽150内に貯留された被処理液は、図1に矢印で示すように、ろ過膜モジュール300を下側から上側方向に通過して自然に循環し、ろ過膜モジュール300により定速ろ過されることになる。
【0059】
なお、上述のようなろ過工程において、各管状ろ過膜310は、上述のように外周面に突起320を有しているため、ろ過膜モジュール300内において、隣接する管状ろ過膜310と密着しにくく、管状ろ過膜310間にろ過液を流通させるための効果的な隙間を形成する。したがって、この管状ろ過膜310を備えたろ過膜モジュール300は、収納容器301内におけるろ過液の流動性を高めることができ、ろ過液を滞りなく排出口303から排出しやすい。
【0060】
ところで、上述の膜ろ過装置200を用いた被処理液の膜ろ過方法において、空気泡供給装置500からろ過膜モジュール300に供給される空気泡は、案内筒400内を上昇した後に次々と管状ろ過膜310内に押し込まれる。このため、被処理液は、液面がろ過膜モジュール300の下端よりも上にある限り(例えば、液面センサー610よりも上方にある限り)、管状ろ過膜310内に供給される空気泡の浮力によって管状ろ過膜310内を上昇し、ろ過膜モジュール300の上端からオーバーフローする。したがって、この膜ろ過方法では、ろ過膜モジュール300の一部が被処理液から露出していても、空気泡によるクロスフローが維持され得る。換言すると、この膜ろ過方法は、貯留槽150内における被処理液の液面が上述のように設定されている場合、ろ過膜モジュール300の一部が被処理液から露出していても、被処理液のろ過処理を実施することができる。
【0061】
このため、この膜ろ過方法では、被処理液の液面を上述の範囲で変動させながら、被処理液をろ過することができる。この結果、この膜ろ過方法では、貯留槽150内に、ろ過膜モジュール300の全体が被処理液中に浸漬された状態になる程度に被処理液を継続的に貯留しておく必要がないので、通常の膜ろ過時において被処理液の貯留量を少なめに設定しておく(すなわち、ろ過膜モジュール300の一部が被処理液から露出する程度に設定しておく)ことができる。したがって、この膜ろ過方法は、一時的に大量の被処理液が流入した場合に被処理液が溢れる可能性のある小型の貯留槽150(例えば小型の浄化槽)においても、そのような被処理液の流入に備えて被処理液の液面を低めに設定しながら安定に被処理液の膜ろ過処理を実施することができる。
【0062】
因みに、ろ過膜モジュール300の一部が被処理液から露出している場合、ろ過膜モジュールの全長をL、ろ過膜モジュール300の上端から被処理液の液面lまでの距離(すなわち、ろ過膜モジュール300の露出部分の長さ)をΔLとした場合(図1参照)、液面lからΔLの露出部分にある管状ろ過膜310中の被処理液の重力は浮力に抗するので、ΔLが大きくなるとともに管状ろ過膜310内における空気泡と被処理液との上昇速度は小さくなる。例えばΔL/L値が80%になると、当該値が0%のときの約40%まで上昇速度は低下する。しかし、その場合におけるろ過膜モジュール300のろ過流量は、後述するように、上昇速度のおよそ1/3に比例するので、ろ過膜モジュール300が被処理液中に完全に浸漬されている状態でろ過処理を実施している場合の少なくとも70%、通常は約75%に維持され得る。したがって、この膜ろ過方法は、被処理液の液面を上述の範囲で変動させながら、しかもろ過流量を著しく低下させることなく、被処理液を効率的にろ過することができる。
【0063】
ここで、ろ過膜モジュール300のろ過流量を解析的に説明する。
従来の技術の説明において引用した財団法人日本環境整備教育センター発行の「膜処理法を導入した小型生活排水処理装置の実用化に関する研究報告書:平成4年度〜平成7年度」において見られるように、フラックスは中空糸膜モジュールよりも平膜モジュールの方が大きい。このため、従来のモジュールとして平膜モジュールを解析の比較対象とした。
【0064】
参考のため、図13を参照して、比較対象となる平膜モジュールの概略を説明する。図において、平膜モジュール800は、収納容器801と、この収納容器801内に配置された多数の膜プレート802とを主に備えている。収納容器801は、例えば、上部および下部がそれぞれ開口した角筒状の部材である。一方、膜プレート802は、図14に示すように、矩形状の枠体803と、この枠体803において隙間804を設けて対向し合う1対のろ過膜805,805とを主に備えている。このろ過膜805は、例えば精密ろ過膜である。枠体803の上部には、隙間804に連絡する、ろ過液の排出口806が形成されている。各膜プレート802の排出口806は、通常、図13に示すように、排出管807に接続される。なお、この種の平膜モジュール800の概略は、例えば、日本国建設省建築研究所 膜分離技術等を用いた高度処理浄化槽研究委員会編、「用水と廃水」Vol.40、No.3、45(1998)等において説明されている。
【0065】
このような平膜モジュール800は、上述のろ過膜モジュール300と同様に貯留槽150内に配置され、被処理液の浸漬型膜ろ過に供される。ここで、空気泡と共に膜プレート802間を流れる被処理液は、ろ過膜805の外側から内側に流れてろ過される。そして、その際のろ過液は、隙間804を通過し、排出口806を経由して排出管807内に排出される。
【0066】
表1に、上述のようなろ過膜モジュール300(以下、このろ過膜モジュールを「管状ろ過膜モジュール」と表現する場合がある)と上述のような平膜モジュール800の主な特性をまとめて示す。ここでは、不必要な煩雑さを持ち込まないようにするため、両モジュールについて膜の長さLを共通とした。同じ理由により、モジュールの設置面積については、ろ過膜モジュール300では収納容器301の厚さを、また、平膜モジュール800では枠体803をそれぞれ除いた、膜部分が占める面積を示している。
【0067】
【表1】
【0068】
ここで、ろ過膜モジュール300で用いられる収納容器301の内径をDとすると、ろ過膜モジュール300における収納容器301の断面積あたりの膜面積Mは、次の式(1)で表される。なお、表1および式(1)において、εは管状ろ過膜310の充填率を示し、この充填率は下記の式で求められる。式中のSは、収納容器301の軸線方向に垂直な断面における収納容器301の内部の断面積(図3に網掛け線で示した部分の面積に相当)を示している。
【0069】
【数1】
【0070】
ろ過膜モジュール300において、管状ろ過膜310の充填率εはおよそ0.7〜0.8になるので、式(1)から得られるろ過膜モジュール300の膜面積は、同じ長さの中空糸膜モジュールあるいは平膜モジュールの1.5〜2倍の大きさに相当する。すなわち、ろ過膜モジュール300は、平膜モジュールに比べ、設置面積あたりの膜面積が極めて大きい。
【0071】
ところで、浸漬型膜ろ過が適用される大多数の実液(被処理液)の粘度は数mPa・s以上であり、平膜モジュール800、ろ過膜モジュール300共に、モジュール内における被処理液の流れを層流と見なすことができる。
【0072】
平行流れが層流のクロスフローろ過においては、平膜モジュール800に対するろ過膜モジュール300のろ過流量が次式(2)で表される(例えば、中垣、清水、「膜処理技術大系」第1編−第3章、株式会社フジ・テクノシステム(1991) 参照)。
【0073】
【数2】
【0074】
式中、J、Mおよびuは、それぞれろ過流量、膜面積および平行流れの線速であり、下付き記号TおよびPは、それぞれろ過膜モジュール300および平膜モジュール800の値であることを示す。平行流れは気泡と液体の混合物からなるが、同じ速度で移動していると仮定している。dは平膜モジュール800の膜プレート802間の間隔を、また、diはろ過膜モジュール300の管状ろ過膜310の内径をそれぞれ示している。
ここで、指数a、cは、層流の場合ともに1/3である。したがって、これらの値を代入すると、次の式(3)のようになる。
【0075】
【数3】
【0076】
ここで、ろ過膜モジュール300においては全ての管状ろ過膜310に、また、平膜モジュール800においては全ての膜プレート802間に気泡が均等に分配されていると仮定すると、各モジュールにおける平行流れの線速について、それぞれ次式(4)および(5)が導かれる。
【0077】
【数4】
【0078】
ここで、qaは、一つの流路あたりに換算した空気流量であり、ろ過膜モジュール300では1本の管状ろ過膜310当たりの空気の流量を、また、平膜モジュール800では幅wの1つの膜プレート802間隔当たりの空気の流量をそれぞれ意味する。したがって、uaは換算線速である。ρfおよびμfは、それぞれ被処理液の密度および粘度である。σは無次元の圧力損失係数であり、ろ過膜モジュール300では32、平膜モジュール800では12である。gは重力加速度である。
換算線速は、単位膜面積当りの空気流量、またはモジュール当りの全空気流量に、それぞれのモジュールの形状を表す数値を用いて次の表2のように変換することができる。
【0079】
【表2】
【0080】
表1および表2から、ろ過膜モジュール300と平膜モジュール800との線速比が次の式(6)で表される。
【0081】
【数5】
【0082】
式(3)および(6)を用い、ろ過膜モジュール300および平膜モジュール800の能力を様々な視点から比較することができるが、現実性を失わずに単純化するため、ここでは、両モジュールに共通の条件として、被処理液の密度ρfを1,000kg/m3、膜の長さLを1mに設定する。また、平膜モジュール800については膜プレート802の厚さtを5mmに設定し、ろ過膜モジュール300については管状ろ過膜310の外径(d0)と内径(di)との比(d0/di)を1.2、充填率εを0.8(最密充填状態では約0.9である)にそれぞれ設定する。空気流量については、平膜モジュール800で標準的に用いられている単位膜面積当たり15L/分/m2を比較基準とする。
【0083】
次の表3は、被処理液の粘度μfを10mPa・sに設定した場合において、膜プレート802間隔dと管状ろ過膜310の内径diとを同じにし、また、両モジュールについて総膜面積と全空気流量とを同じにした場合の計算結果を示している。
【0084】
【表3】
【0085】
また、次の表4は、同じ条件で被処理液の粘度μfのみを100mPa・sに変更した場合の計算結果を示している。
【0086】
【表4】
【0087】
表3および表4が示すように、広い粘度範囲の被処理液に関し、ろ過膜モジュール300は、平膜モジュール800の約1/2の設置面積であるにも拘わらず、ろ過流量が平膜モジュール800よりも大きい。
もう一つの例として、被処理液の粘度μfを10mPa・sに設定した場合において、膜プレート802間隔dと管状ろ過膜310の内径diとを同じにし、また、両モジュールについて、モジュール設置面積と全空気流量とを同じにした場合の計算結果を表5に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
表5は、同じモジュール設置面積、同じ全空気流量の場合、ろ過膜モジュール300が平膜モジュール800の2倍以上のろ過流量を持つことを示している。さらに、表3〜表5は、ろ過流量を膜面積で割ったフラックスも大きく、ろ過膜モジュール300が平膜モジュール800に比べて原理的にも優れていることを示している。
以上の解析例から明らかなように、ろ過膜モジュール300は、すべての管状ろ過膜310に対して均等に空気泡が分配されるならば、平膜モジュール800や中空糸膜モジュールに比べ、格段にコンパクトであるにも拘らず、これらのモジュールよりもろ過流量が大きい。
【0090】
なお、ろ過膜モジュール300においては、上述の通り、管状ろ過膜310中に供給された空気泡は、当該管状ろ過膜310内を上昇する以外、他に移動することができないので、ろ過膜モジュール300の一部(上部)が被処理液から露出しているとしても、管状ろ過膜310内の被処理液全体を浮力により押し上げることができる。すなわち、ろ過膜モジュール300は、一部が被処理液から露出しても、全体が被処理液中に浸漬されている場合と同様に、被処理液のろ過処理を実施することができる。これに対し、平膜モジュールや中空糸膜モジュールは、被処理液が膜間の広い流路の中を自由に動くことができるため、モジュールの一部が被処理液から露出すると、空気泡によって押し上げられる被処理液の流量は激減する。したがって、平膜モジュールや中空糸膜モジュールは、被処理液から一部が露出すると被処理液の循環流量が激減するため、被処理液のろ過処理が不可能になる。
【0091】
上述の膜ろ過装置200およびそれを用いた膜ろ過方法は、活性汚泥液のような高汚濁液のろ過処理用として用いられる場合において特に効果的であるが、そのような高汚濁液だけではなく、河川水のような低汚濁液をろ過処理する場合においても効果的に利用することができる。すなわち、この膜ろ過装置200およびそれを用いた膜ろ過方法は、被処理液を選ばず、各種の被処理液のろ過処理用に広く用いることができる。
【0092】
[他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態では、ろ過液排出経路600の先端に吸引ポンプ601を接続し、ろ過膜モジュール300において被処理液を定速ろ過したが、本発明の膜ろ過方法は定圧ろ過方式で実施することもできる。この場合は、図1に一点鎖線で示すように、ろ過液排出経路600において、吸引ポンプ601のろ過膜モジュール300側から上方に向けて均圧パイプ602を設ける。この均圧パイプ602は、貯留槽150における被処理液の水位の上限より上(好ましくは、貯留槽150よりも上)において開放するよう設定するのが好ましい。このようにすると、ろ過膜モジュール300におけるろ過圧は、貯留槽150内における被処理液の水位にかかわらず、ろ過膜モジュール300の上端とろ過液排出経路600の先端部との高低差による一定の水頭圧(図1のΔP)に保たれる。
【0093】
(2)上述の実施の形態では、ろ過液の排出口303が収納容器301の側面に設けられているろ過膜モジュール300を用いた場合について説明したが、膜ろ過装置200において利用可能なろ過膜モジュールはこれに限定されるものではない。
【0094】
図15および図16(図15のXVI−XVI断面図)を参照して、膜ろ過装置200において利用可能な他の形態のろ過膜モジュール900を説明する。このろ過膜モジュール900は、円筒状の収納容器901と、この収納容器901内に充填された管状ろ過膜群902とを主に備えている。収納容器901は、例えば樹脂製の部材であり、円筒状の集水管903と、当該集水管903の軸を中心としてその外側に間隔(空間)を設けて同心円状に配置された円筒状の外筒904とを主に備えている。集水管903は、図の下端部が閉鎖されており、また、図の上端部が開口して排出口905を形成している。また、集水管903は、複数の通液孔906を壁面に備えている。
【0095】
管状ろ過膜群902は、上述のろ過膜モジュール300で用いたものと同じ管状ろ過膜310の多数本を含む群であり、各管状ろ過膜310は、収納容器901の集水管903と外筒904との間に形成された空間内に、集水管903と平行に充填されている。このような管状ろ過膜群902の上端部および下端部は、それぞれウレタン樹脂などの樹脂材料を用いて形成された保持部907により、各管状ろ過膜310の両端の開口状態を維持しつつ収納容器901に対して一体的に保持されると共に固定されている。この結果、収納容器901の両端部は、当該保持部907により液密に閉鎖されることになる。
【0096】
なお、図15では、理解の便のため、管状ろ過膜310の太さ、管状ろ過膜310間の隙間等を強調している。また、図面を理解し易くするため、図15では管状ろ過膜310の本数を少な目に表現し、また、図16においては管状ろ過膜310の一部のみ表示している。
【0097】
このようなろ過膜モジュール900は、例えば次のような工程を経て製造することができる。
先ず、図17に示すような固定装置920を用い、収納容器901を形成する。ここで用いる固定装置920は、外筒904内に集水管903を同心状態で固定するためのものであり、外筒904を保持するための外筒保持部921と、集水管903を保持するための集水管保持部922とを備えている。
【0098】
外筒保持部921は、外筒904の一端を収納するための受け部923と、受け部923に対して外筒904を固定するための押え板924とを有している。受け部923は、外筒904の端部を収納可能な円形の凹部925を有しており、その凹部925の中心部には、孔部926が形成されている。また、凹部925は、深さ方向の中程において、開口側の内径が大きくなるよう設定されており、そのような内径の変更部分において段部927を形成している。さらに、凹部925の開口部周縁には溝928が形成されており、当該溝928には環状のゴム弾性体929が配置されている。一方、押え板924は、中心部に外筒904を挿入可能な挿入孔930を備えた部材であり、平面形状が受け部923と概ね同じに設定されている。
【0099】
一方、集水管保持部922は、シャフト931、位置決め部材932、押え具933およびナット934を備えている。シャフト931は、集水管903内に挿入可能でありかつ受け部923の孔部926を貫通可能な棒状の部材であり、一端に螺旋部935を有し、また、他端に頭部936を有している。位置決め部材932は、集水管903内に挿入可能な挿入部937と、当該挿入部937を集水管903内に挿入した状態で集水管903から突出する突出部938とを一体的に有する概ね円柱状の部材であり、その中心部にはシャフト931を貫通させるための貫通孔939が形成されている。突出部938の突出量は、受け部923の凹部925における低部から段部927までの距離と同じに設定されている。押え具933は、集水管903の内部に挿入可能な円板状の部材であり、中心にシャフト931を挿入するための挿入孔940を有している。ナット934は、シャフト931の螺旋部935に対して装着可能なものである。
【0100】
上述の固定装置920を用いて収納容器901を製造する場合は、先ず、外筒904を外筒保持部921により保持する。ここでは、外筒904の一端を受け部923の凹部925内に挿入し、段部927に当接させる。そして、押え板924の挿入孔930内に外筒904が挿入された状態で、押え板924をゴム弾性体929に対して押し付けた状態で固定する。これにより、外筒904は、一端が凹部925内に挿入された状態で保持されることになる。
【0101】
次に、集水管保持部922を用い、集水管903を外筒904の内部に配置する。ここでは、先ず、位置決め部材932の挿入部937の先端に管状のゴム弾性体941を装着し、その状態で当該挿入部937を集水管903内に挿入する。また、集水管903内に、位置決め部材932を挿入した側とは異なる側から押え具933を挿入する。そして、シャフト931を、その頭部936が押え具933に当接するよう、押え具933の挿入孔940および位置決め部材932の貫通孔939に挿入する。この状態で、シャフト931の螺旋部935が受け部923の孔部926から突出するよう集水管903を外筒904の内部に挿入し、螺旋部935にナット934を装着する。これにより、固定装置920は、集水管903が外筒904内で同心円状に配置された状態で両者を保持し、収納容器901を形成することになる。
【0102】
次に、上述のようにして形成された収納容器901内に管状ろ過膜群902を充填する。ここでは、多数本の管状ろ過膜310を平行に束ねた管状ろ過膜群902を、外筒904と集水管903との間に形成された空間内に挿入する。この際、各管状ろ過膜310の長さは収納容器901よりも大きく設定しておき、管状ろ過膜群902の両端部が収納容器901から突出するよう設定する。また、各管状ろ過膜310の両端は、ヒートシールにより閉鎖しておく。
【0103】
次に、樹脂材料を用い、管状ろ過膜群902を収納容器901に対して固定する。ここでは、先ず、図18に示すようなモールド950を用意する。このモールド950は、キャビティ951を備えたものであり、キャビティ951は管状ろ過膜群902を挿入可能な中心部952と、中心部952の周りに連続して形成された、収納容器901の外筒904を挿入可能な外筒挿入部953とを備えている。このモールド950の中心部952には、未硬化状態の樹脂材料954(例えば未硬化ウレタン樹脂)を注入しておく。
【0104】
一方、固定装置920により形成された収納容器901において、集水管903の開口側を、キャップ955を用いて閉鎖する(図17)。そして、図18に示すように、収納容器901から突出している管状ろ過膜群902をキャビティ951の中心部952内に注入された樹脂材料954中に徐々に浸漬し、外筒904の端部を外筒挿入部953内で保持する。この状態を樹脂材料954が硬化するまで維持し、樹脂材料954が完全に硬化してからモールド950を取り外す。これにより、管状ろ過膜群902の一端側は、収納容器901の一端側に対して固定されることになる。その後、収納容器901から突出している、硬化した樹脂材料954および管状ろ過膜群902を切除し、また、キャップ955を取り外す。
【0105】
次に、収納容器901を固定装置920から一旦分離し、収納容器901を逆向きにしてから再度固定装置920により固定する。その状態で、モールド950に対する上述のような操作を繰り返すと、管状ろ過膜群902の他端側も収納容器901の他端側に対して固定され、目的とするろ過膜モジュール900が得られる。この際、集水管903の開口部をキャップ955で閉鎖しなければ、集水管903の内部にも樹脂材料954が流入し、それが集水管903の一端を閉鎖することになる。製造されたろ過膜モジュール900において、収納容器901の両端部は、各管状ろ過膜310の両端部を除き、硬化した樹脂材料954による保持部907が形成され、既述の通り、この保持部907により液密に閉鎖されることになる。
【0106】
なお、上述の製造工程において用いられる樹脂材料954は、上述の実施の形態において用いたろ過膜モジュール300の場合と同様、ウレタン樹脂の他に、エポキシ樹脂などの他の熱硬化性樹脂やホットメルト接着材であってもよい。また、上述の製造工程においては、収納容器901と樹脂材料954との接着性を高めることを目的として、外筒904の内周面および集水管903の外周面に対し、予め接着助剤の利用による、またはコロナ放電処理による表面処理を施しておいてもよい。また、収納容器901に対する樹脂材料954のアンカー効果を高めるため、外筒904の両端部の内周面および集水管903の両端部の外周面に凸部および凹部のうちの少なくとも1つを形成してもよい。ここで、凸部は、外筒904や集水管903と同じ材料からなるリングを所定の部位に接着すると形成することができる。一方、凹部は、所定の部位に溝加工等を施すと形成することができる。なお、溝状の凹部は環状に形成されているのが好ましい。また、凹部は、奥行き方向に拡大する形状に設定されているのが好ましい。
【0107】
このようなろ過膜モジュール900を用いて上述の膜ろ過装置200を構成する場合、ろ過液排出経路600は、排出口905に対して接続する。
【0108】
このろ過膜モジュール900を用いた被処理液のろ過処理時において、被処理液は、空気泡供給装置500から噴出する空気泡に伴い、図15に矢印で示すように、ろ過膜モジュール900の各管状ろ過膜310内を下側から上側に向けて押し上げられる。この際、被処理液の一部は、管状ろ過膜310を内側から外側に通過してろ過され、また、被処理液中に含まれるろ別成分は、管状ろ過膜310のろ過膜層311により捕捉され、被処理液から取り除かれる。ろ別成分が取り除かれた被処理液(ろ過液)は、管状ろ過膜310間の隙間を通過し、通液孔906から集水管903内に流入する。集水管903内に流入したろ過液は、排出口905から収納容器901の外部、すなわちろ過液排出経路600内に連続的に排出される。このような一連のろ過処理により、貯留槽2内の被処理液は、図1に矢印で示すのと同様に、ろ過膜モジュール900を下側から上側方向に通過して自然に循環することになる。
【0109】
(3)上述の膜ろ過装置200では、ろ過膜モジュール300を円筒状に、すなわち、ろ過膜モジュール300の収納容器301を円筒状に形成したが、収納容器301は、角筒状や多角形(例えば五角形以上の多角形)の筒状等、他の形状の筒状に形成されていてもよい。
【0110】
(4)上述の実施の形態では、管状ろ過膜310において突起320を連続した螺旋状に設けたが、突起320の形態はこれに限定されるものではない。すなわち、突起320は、支持膜層312の外周面において部分的に設けられていればよく、例えば、断続的な螺旋状や点状などの各種の形態で設けられていてもよい。
【0111】
(5)上述の実施の形態では、管状ろ過膜310をろ過膜層311と支持膜層312との2層構造に形成したが、管状ろ過膜310の潰れ圧を、その肉厚と外径との比を適宜設定することにより上述の所要の値に設定する場合は、図19に示すように、支持膜層312の外周面にさらに通液性を有する補強層316を配置してもよい。
【0112】
ここで用いられる補強層316は、通液性を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は支持膜層312を構成するものと同様の不織布、特にポリエステル樹脂系の不織布が好ましく用いられる。なお、このような補強層316を備えた管状ろ過膜310は、通常、管状ろ過膜310を製造するために用いられる上述の複合膜313の支持膜層312側にさらに補強層316が積層された複合膜を用いると製造することができる。このような複合膜を製造する場合において、補強層316は、通常、支持膜層312の表面にホットメルト接着剤や熱硬化性接着剤を点在させて接着するのが好ましい。このようにすると、複合膜は、補強層316によりろ過抵抗が高まるのを抑制することができ、上述の実施の形態の場合と同様のろ過抵抗、すなわち、ろ過液の通過性を達成することができる。
【0113】
なお、管状ろ過膜310がこのような補強層316を備えている場合、当該管状ろ過膜310の肉厚および外径は、この補強層316を含めて計算する。また、管状ろ過膜310の表面に上述のような突起320を形成する場合、当該突起320は補強層316の表面に形成する必要がある。
【0114】
(6)上述の実施の形態では、ろ過膜モジュール300と案内筒400とを接続するためにソケット403を用いたが、両者の接続方法はこれに限定されるものではない。例えば、案内筒400の脚402の上端をろ過膜モジュール300の上端近傍まで延長し、脚402の上端からろ過膜モジュール300に向けて延びる着脱可能なスプリング部材により、ろ過膜モジュール300を案内筒400方向に押圧するようにした場合もろ過膜モジュール300と案内筒400とを接続することができる。
【0115】
(7)上述の実施の形態では、空気泡供給装置500の空気泡噴出孔510から発生する空気泡の大きさを、管状ろ過膜310の内径以上になるよう設定したが、本発明の膜ろ過方法はこれに限定されるわけではない。すなわち、本発明の膜ろ過方法は、上記空気泡の大きさが管状ろ過膜310の内径より小さい場合であっても実施することができる。
【0116】
【実施例】
実験用膜ろ過システムの作成
ポリエステル製不織布上に孔径が約0.4μmの微孔を全面に有するろ過膜が一体的に配置された、厚さ0.2mmの複合膜を幅2cmのテープ状に裁断した。そして、テープ状の複合膜を、ろ過膜表面を内側にして心棒に螺旋状に巻きつけながら超音波溶着し、内径が3mm、7mmおよび10mmにそれぞれ設定された三種類の管状ろ過膜を作成した。これらの管状ろ過膜を内径が28mm、全長が70cmのプラスチックパイプに充填し、表6に示す仕様に設定された、上述の実施の形態に係るA、BおよびCの3種類のろ過膜モジュール300を作成した。
【0117】
【表6】
【0118】
これらのろ過膜モジュール300を用い、上述の実施の形態に係る膜ろ過装置200を製造した。ここでは、案内筒400として、全長25cm、内径28mmのプラスチックパイプを用いた。また、案内筒400内において、ろ過膜モジュール300の下端から20cmの位置に、空気泡供給装置500を配置した。空気泡供給装置500を構成するパイプには、口径4mmの空気泡噴出孔510を設けた、内径4mm、外径6mmのパイプを用いた。また、案内筒400に長さが5cmの脚402を取り付け、膜ろ過装置200の全長(全高)を100cmに設定した。
【0119】
上述の膜ろ過装置200を用い、図20に示すような実験用膜ろ過システムを作成した。この膜ろ過システムでは、透明な円筒容器からなる貯留槽150内に膜ろ過装置200を配置し、空気泡供給装置500には空気供給装置525(曝気ポンプ)を接続した。また、ろ過膜モジュール300からのろ過液排出経路600の先端部は、ろ過膜モジュール300の上端より下方に配置し、ΔP(60cm)の水頭圧が作用するように設定した。なお、ろ過液排出経路600の先端部の下には、ろ過液受け602を配置し、それにろ過液が貯留されるようにした。また、ここに貯留されるろ過液は、チューブポンプ603を用いて貯留槽150に戻すよう設定した。
【0120】
上述の膜ろ過システムで処理する被処理液には、26±1℃に温度調整した、カルボキシメチルセルロース(CMC)1,000ppmと平均分子量が約30万のポリエチレンオキサイド(PEO)0.8重量%とを含む水溶液(以下、モデル水溶液という)を用いた。モデル水溶液の粘度は8mPa・sであった。なお、モデル水溶液については、予め、CMCとPEOとの透過性を確認しておいた。ここでは、CMCのみを含む比較水溶液のろ過液の粘度と、モデル水溶液のろ過液の粘度とを測定して比較した。そして、比較水溶液のろ過液の粘度が約1.5mPa・s以下(粘度計の読み取り精度の限界)であったのに対し、モデル水溶液のろ過液の粘度がPEOのみの濃度に相当する粘度であったことから、モデル水溶液をろ過した場合、大部分のCMCは微小ゲルの状態で懸濁しているために膜を透過せず、PEOは分子状態で溶解しているために膜を素通りするものと判断した。
【0121】
上述の膜ろ過システムを用いてモデル水溶液をろ過処理した場合、ろ過流量が一定値に達するまでに要する時間は概ね3時間であった。以下の実施例において、ろ過流量にはこの定常値を用いている。
【0122】
実施例1
上述の膜ろ過システムにおいてろ過膜モジュールBを用い、空気泡供給装置500からの曝気流量を1.5L/分(15L/m2/分相当)に設定してモデル水溶液のろ過を実施した。そして、モデル水溶液の液面lからのろ過膜モジュールBの露出量ΔLとろ過流量との関係を調べた。結果を図21に示す。図21において、ろ過流量は、ろ過膜モジュールBの露出量ΔLが0の場合に対する相対値で表した。
【0123】
図21によると、ろ過膜モジュールBの80%がモデル水溶液から露出しても、ろ過膜モジュールBの全体がモデル水溶液中に完全に浸漬されている場合の約80%のろ過流量が維持されていることがわかる。
【0124】
実施例2
実施例1において、ろ過膜モジュールBをろ過膜モジュールCに変更し、また、空気泡供給装置500からの曝気流量を0.9L/分(15L/m2/分相当)に変更した。そして、実施例1の場合と同様にして、モデル水溶液の液面lからのろ過膜モジュールCの露出量ΔLとろ過流量との関係を調べた。結果を図22に示す。
【0125】
図22によると、ろ過膜モジュールCの80%がモデル水溶液から露出しても、ろ過膜モジュールCの全体がモデル水溶液中に完全に浸漬されている場合の約70%のろ過流量が維持されていることがわかる。しかし、露出時のろ過流量は、ろ過膜モジュールBを用いた場合に比べると大きく低下している。この結果によると、ろ過膜モジュール300が露出している場合でもろ過流量が著しく低下しにくいようにするためには、管状ろ過膜として、内径が15mm以下のものを用いるのが好ましいと考えられる。
【0126】
実施例3
ろ過膜モジュールAを用いて実施例1、2と同様の実験を行った。その結果、ろ過膜モジュールAをモデル水溶液から露出しながらろ過処理したときのろ過流量の低下は、ろ過膜モジュールBを用いた場合に比べて軽微なことが判明した。一方、モデル水溶液にPEOを追加してモデル水溶液の粘度を高めると、ろ過膜モジュールB、Cの場合とは異なり、モデル水溶液の粘度の増加とともに案内筒400の下端から溢れ出る空気泡が多くなった。本発明の膜ろ過装置で処理する被処理液として、粘度がおよそ10mPa・sを超えるものも普通に考えられるので、ろ過膜モジュール300において使用できる管状ろ過膜310の内径はおよそ2mm以上が好ましいものと考えられる。
【0127】
【発明の効果】
本発明の膜ろ過方法は、内面に被処理液のろ過機能を有する管状ろ過膜の複数本を含む管状ろ過膜群がろ過液の排出口を有する筒状の収納容器内に収容されかつその両端部で保持されたろ過膜モジュールを、管状ろ過膜が上下方向に開口するよう貯留槽内に配置し、ろ過膜モジュールの下方からろ過膜モジュールに向けて空気泡を供給しているので、貯留槽内に貯留された被処理液からろ過膜モジュールの一部が露出している場合であっても、被処理液をろ過処理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る膜ろ過装置が採用された膜ろ過システムの概略図。
【図2】前記膜ろ過装置に採用されたろ過膜モジュールの縦断面図。
【図3】前記ろ過膜モジュールの図2のIII−III断面に相当する図。
【図4】図3のIV矢視図。
【図5】図4のV−V断面図。
【図6】前記ろ過膜モジュールに用いられる管状ろ過膜の斜視図。
【図7】図6のVII−VII断面端面図。
【図8】前記管状ろ過膜の製造工程を示す図。
【図9】前記ろ過膜モジュールを製造するための一工程を示す図。
【図10】前記ろ過膜モジュールを製造するための他の工程を示す図。
【図11】前記膜ろ過装置に採用された案内筒の縦断面図。
【図12】前記案内筒の、図11のXII−XII断面に相当する図。
【図13】前記ろ過膜モジュールのろ過流量特性を解析する際に比較の対象とした平膜モジュールの一部断面正面図。
【図14】前記平膜モジュールに用いられる膜プレートの一部切欠斜視図。
【図15】前記膜ろ過装置において利用可能な他の形態のろ過膜モジュールの縦断面図。
【図16】前記他の形態のろ過膜モジュールの、図15のXVI―XVI断面に相当する図。
【図17】前記他の形態のろ過膜モジュールを製造するための一工程を示す図。
【図18】前記他の形態のろ過膜モジュールを製造するための他の工程を示す図。
【図19】前記ろ過膜モジュールに用いられる管状ろ過膜の変形例の図7に相当する図。
【図20】実施例で作成した実験用膜ろ過システムの概略図。
【図21】実施例1で用いたろ過膜モジュールについて、モデル水溶液からの露出量とろ過流量との関係を調べた結果を示すグラフ。
【図22】実施例2で用いたろ過膜モジュールについて、モデル水溶液からの露出量とろ過流量との関係を調べた結果を示すグラフ。
【符号の説明】
150 貯留槽
200 膜ろ過装置
300,900 ろ過膜モジュール
301,901 収納容器
302,902 管状ろ過膜群
303,905 排出口
310 管状ろ過膜
Claims (2)
- 貯留槽内に貯留された被処理液をクロスフローろ過方式によりろ過してろ過液を得るための膜ろ過方法であって、
前記被処理液のろ過機能を有する管状ろ過膜の複数本を含む管状ろ過膜群が前記ろ過液の排出口を有する筒状の収納容器内に収容されかつ保持されたろ過膜モジュールを、前記管状ろ過膜が上下方向に開口するよう前記貯留槽内に配置し、前記ろ過膜モジュールの下方から前記ろ過膜モジュールに向けて前記管状ろ過膜の内径以上の大きさの空気泡を供給する工程を含み、
前記ろ過膜モジュールの一部が前記被処理液から露出している、
膜ろ過方法。 - 前記ろ過膜モジュールの全長をLとし、前記被処理液からの前記ろ過膜モジュールの露出部分の長さをΔLとした場合のΔL/L値を0.8以下に設定する、請求項1に記載の膜ろ過方法。
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