JP4522632B2 - 新規デオキシリボヌクレアーゼ、それをコードする遺伝子およびそれらの用途 - Google Patents

新規デオキシリボヌクレアーゼ、それをコードする遺伝子およびそれらの用途 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、酸性条件下で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得る新規デオキシリボヌクレアーゼ、それをコードするDNA、並びに感染症の予防治療および嚢胞性線維症の治療のためのそれらの使用に関する。
背景技術
哺乳類細胞には種々のデオキシリボヌクレアーゼ(以下、DNaseという)が存在することが知られている。DNaseIIは最もよく研究されたDNaseの1つであり、酸性pH下で二価カチオンの非存在下にDNAの加水分解反応をを触媒する[in The Enzymes(Boyer,P.D.,ed)3rd Ed.,Vol.4,pp.271−287(1971),Academic Press,New York;Arch.Biochem.Biophys.,300:440−450(1993)]。酸性DNase活性は種々の動物組織で広く見出されるが[Biochim.Biophys.Acta,1119:185−193(1992);J.Biol.Chem.,273:2610−2616(1998)]、従来、DNaseIIが酸性DNase活性を担う唯一の酵素であると考えられてきた。DNaseIIは臓器特異性が低く、いたるところに分布することから、DNA異化やアポトーシスなどの基本的な生命現象において重要な生理学的役割を果たしている可能性が示唆されている[The Enzymes(1971),上述;Arch.Biochem.Biophys.,300:440−450(1993)]。
異なる生物から単離されたDNaseIIの酵素学的性質は非常に類似しているが、それらの物理化学的性状や分子構造は大きく異なっている。例えば、ブタDNaseIIはその前駆体蛋白質由来の非同一なサブユニットからなる複合体蛋白質であるのに対し、他の動物由来のDNaseIIは主に単一のポリペプチドであることがわかっている[J.Biol.Chem.,260:10708−10713(1985);Biochem.Biophys.Res.Commun.,247:864−869(1998);J.Biol.Chem.,251:116−123(1976);Gene,215:281−289(1998)]。さらに、DNaseIIのみかけの分子量は26.5kDa〜45kDaまで変動する[J.Biol.Chem.(1976),上述;Gene,(1998),上述;J.Biol.Chem.,247:1424−1432(1972);Eur.J.Biochem.,202:479−484(1991)]。
酸性DNaseの多様性はまた、細胞のどの下位構造に局在するかにおいても認められる。DNaseIIは細胞内ではリソソームに局在すると考えられているが[J.Biol.Chem.(1972),上述;Biochim.Biophys.Acta,1007:15−22(1989)]、酸性DNase活性は核画分にも見出される[Arch.Biochem.Biophys.(1993),上述;Biochem.J.,136:83−87(1973)]。
DNaseIIのこのような分子的多様性の理由は依然として不明であるが、上記の知見は、DNaseIIとは区別される別の酸性DNaseの存在を示唆するものである。実際、本発明者らはラット胸腺の核画分から新規な酸性DNase(DNaseαおよびβ)を同定し、部分精製している(特開平8−187079号公報)。このことから、さらなる新規な酸性DNaseを探索し、それらの特性を明らかにすることが、酸性DNaseの多様性を解明する上で重要であると考えられる。
一方、DNaseは、種々の疾患の予防および治療への応用という観点からも盛んに研究が行われている。DNaseの臨床応用において最近特に注目されているものの1つは、嚢胞性線維症(cystic fibrosis;以下、CFという場合もある)の治療への応用である[Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.,35:257−276(1995);Chest,107:65−70(1995)]。CFは外分泌腺の塩素イオンチャンネルの異常によって起こる致死性の遺伝病であり、コーカサス系白人では出生2500人に1人の割合で起こり、保因者は25人に1人の割合で存在する。CFの約90%は難治性の下気道緑膿菌感染による呼吸不全のために20〜30歳代で死亡するが[Curr.Opin.Pulm.Med.,6:425−434(1995)]、気道内に蓄積して呼吸機能を損なう痰の原因は、炎症部位に浸潤し破壊された白血球から放出される高濃度のDNAである。米国Genentech社は、この肺に蓄積した高分子DNAを除去し、呼吸機能を回復させ、感染症を予防する目的で、組換えDNaseIをCF治療薬として欧米で発売している[Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.(1995),上述;Chest(1995),上述]。DNaseIはDNAを分解するだけでなく、CF患者の痰に多く存在するF−アクチンの脱ポリマー化にも作用する。しかしながら、その結果として生じる単量体のG−アクチンはDNaseIを強く阻害するため、DNaseIは直ちに不活性化される。このため、現実的にはDNaseIにはほとんど治療効果がない。遺伝子組換えによりG−アクチン非感受性のDNaseIを作製する試みがなされているが、未だ満足のいくものは得られていない[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:8225−8229(1996);J.Biol.Chem.,273:18374−18381(1998)]。したがって、CF治療に有効なG−アクチン非感受性の新規DNaseの同定が望まれている。
DNaseの臨床応用における第2の関心は、感染症の予防および治療への適用である。DNaseのあるものは、他者のゲノムDNAを分解することによって、細菌やウイルス感染に対する生体防御機構において重要な役割を担っていると考えられる。したがって、ヒト等の哺乳動物においてそのような感染防御に関与するDNaseを同定し、それを医薬として利用することは、感染症の予防および治療の新たな可能性を開くものとして大いに期待されている。
したがって、本発明の目的は、新規な酸性DNaseを提供し、該酵素の特性を明らかにすることにより、酸性DNaseの分子的多様性の研究における重要な情報を提供することである。また、本発明の別の目的は、CFの治療剤として有効に使用し得るG−アクチン非感受性の新規DNaseを提供することである。さらに別の本発明の目的は、感染症の予防および治療に有用な新規DNaseを提供することである。
発明の開示
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ヒト、マウスおよびラット肝臓由来RNAからヒトDNaseIIと相同性を有する新規蛋白質をコードするORFを含むcDNAクローンを単離することに成功した。さらに、該cDNAクローンを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養して組換え蛋白質を精製し、該蛋白質の物理化学的および酵素学的特徴を解析した結果、該蛋白質は、DNaseIIと同様、酸性条件下で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するが、中性pH領域までDNase活性を発揮し得る点や二価金属イオン阻害剤に対する感受性において、DNaseIIとは明確に区別される新規な酸性DNaseであることが確認された。そこで、本発明者らは該新規酸性DNaseをDLAD(Nase II−ike cid Nase)と命名した。本発明者らはまた、DLADの活性がG−アクチンにより阻害されないことを確認して、本酵素が有効なCF治療薬となり得る可能性が高いことを実証した。また、DLADのウイルス感染症防御作用の可能性を確認して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は次に述べるものである。
1.酸性条件下で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼであって、下記性状を有することを特徴とするDNase。
▲1▼活性pH範囲:約4.0〜約7.6
▲2▼DNA切断様式:3’−P/5’−OH末端生成型
▲3▼阻害剤感受性:(i)Zn2+により阻害される
(ii)G−アクチンにより阻害されない
2.さらに下記性状を有することを特徴とする上記1のDNase。
▲1▼至適pH:約5.2
▲2▼分子量:翻訳後修飾産物として約55kDa(SDS−PAGE)
▲3▼局在性:細胞質および細胞外に存在し、細胞質により多い
▲4▼組織特異性:肝臓特異的に発現する
3.以下の(a)または(b)のポリペプチドを有するDNase。
(a)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜332で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)上記(a)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加もしくは修飾されたアミノ酸配列からなり、且つ成熟蛋白質がpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド
4.初期翻訳産物がN末端シグナルペプチド配列、好ましくは配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号−22〜−1で示されるアミノ酸配列を含む上記1〜3のいずれかのDNase。
5.哺乳動物、好ましくはマウス由来である上記1〜4のいずれかのDNase。
6.以下の(a)または(b)のポリペプチドを有するDNase。
(a)配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜334で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)上記(a)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加もしくは修飾されたアミノ酸配列からなり、且つ成熟蛋白質がpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド
7.初期翻訳産物がN末端シグナルペプチド配列、好ましくは配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号−27〜−1で示されるアミノ酸配列を含む上記1、2または6のいずれかのDNase。
8.哺乳動物、好ましくはヒト由来である上記1、2、6または7のDNase。
9.上記1〜8のいずれかのDNaseをコードするDNA。
10.以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
(a)配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号279〜1274で示される塩基配列
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するDNaseをコードする塩基配列
11.以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
(a)配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号213〜1274で示される塩基配列
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つ成熟蛋白質がpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するDNaseの、初期翻訳産物をコードする塩基配列
12.哺乳動物、好ましくはマウス由来である上記10または11のDNA。
13.以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
(a)配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号82〜1083で示される塩基配列
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するDNaseをコードする塩基配列
14.以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
(a)配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号1〜1083で示される塩基配列
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つ成熟蛋白質がpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するDNaseの、初期翻訳産物をコードする塩基配列
15.哺乳動物、好ましくはヒト由来である上記13または14のDNA。
16.上記9〜15のいずれかのDNAを含む組換えベクター。
17.上記9〜15のいずれかのDNAおよび該DNAに機能的に連結されたプロモーターを含む発現ベクター。
18.上記17の発現ベクターで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
19.上記18の形質転換体を培地中で培養し、得られる培養物から上記1〜8のいずれかのDNaseを採取することを特徴とする当該DNaseの製造方法。
20.上記1〜8のいずれかのDNase、上記17の発現ベクターまたは上記18の形質転換体を有効成分とする医薬組成物。
21.感染症の予防および治療用または嚢胞性線維症の治療用である上記20の医薬組成物。
本発明のDLADは、酸性〜中性pH領域までの広いpH範囲で二価カチオン非依存的に活性を発現する酸性DNaseであり、また、G−アクチン非感受性であることから、CF患者の痰に含まれる高濃度のDNAを分解して呼吸機能を向上させるのに有用である。
また、本発明のDLADは細胞内での外来遺伝子の発現を抑制することができるので、ウイルス感染等の感染症の予防および治療においても有用な手段を提供し得る。
発明を実施するための最良の形態
本発明のDLADは、酸性条件下で二価カチオン非依存的にDNAを3’−P/5’−OH末端を生じる様式で加水分解するエンドヌクレアーゼ活性を有する点で、公知の酸性DNaseであるDNaseIIと類似するが、DNaseIIがpH約5.6以下でしか活性がないのに対し、DLADはpH約4.0〜約7.6の広いpH範囲においてDNase活性を示す点できわめて特徴的である。DLADの活性に好ましいpH範囲はpH約4.4〜約6.8であり、至適pHは約5.2である。
また、DLADは、二価金属イオンに対する感受性においてもDNaseIIと特徴的に相違する。すなわち、DNaseII活性に及ぼすCo2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等の影響はほとんど同等であるのに対し、DLADはCo2+やNi2+等に比べてZn2+に対して有意に高感受性である。
本発明のDLADは、DNaseI等とは異なってG−アクチンにより阻害されない。
本発明のDLADは、上記の特徴を有する限り特に制限はなく、その由来も限定されない。したがって、天然に存在する生物起源のものの他、自然もしくは人工の突然変異体、あるいは異種(すなわち、外来の)DLAD遺伝子を導入して得られる形質転換体由来のものもすべて包含される。好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、サル、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット等の哺乳動物由来のDLADが例示される。特に好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ラット由来のものである。
本発明のDLADは、そのアミノ酸組成や糖鎖付加の相違により異なる分子量を有してもよいが、好ましくは、糖鎖付加されていない成熟ポリペプチド鎖として約38〜39kDa(理論値)、あるいは糖鎖付加された成熟蛋白質(翻訳後修飾産物)として約55kDa(SDS−PAGE)の分子量を有するものが挙げられる。また、DLADがシグナルペプチド配列を含む前駆体として翻訳される場合、初期翻訳産物として約41〜42kDaの分子量を有するものが好ましく例示される。
本発明の一実施態様においては、DLADは細胞外および細胞質(cytoplasm)の両方に分布する。より詳細には、DLADは細胞質により多く存在し、DNaseIIとは異なる存在比を示す。本実施態様においては、細胞外にも分泌されることから予測される通り、DLAD初期翻訳産物はそのN末端にシグナルペプチド配列を含む。シグナルペプチド配列は小胞体のシグナルペプチダーゼに認識されて切断され、成熟DLAD蛋白質を生じるものであれば特に限定されない。例えば、配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号−22〜−1で示されるアミノ酸配列もしくは配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号−27〜−1で示されるアミノ酸配列、あるいはこれらの該配列において、シグナル配列としての特性を保持すると通常理解される範囲で、1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換、挿入または付加したアミノ酸配列が挙げられる。DNaseIIなどの他の分泌蛋白質のシグナル配列もまた好ましい。
細胞質DLADが細胞質のどの下位構造に局在するかは特に限定されないが、好ましくはリソソームやペルオキシソーム等の1種以上の酸性環境のオルガネラに局在する。したがって、DLADは1または2以上のオルガネラへのターゲッティングモチーフをそのアミノ酸配列中に含み得る。
本発明のDLADの発現は肝臓に高度に限定されており、臓器特異性の低いDNaseIIとは対照的である。
本発明の好ましい態様においては、DLADは、配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜332で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドもしくは配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜334で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加もしくは修飾されたアミノ酸配列からなり、且つpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドである。
本発明のDLADは、(1)該酵素を産生する組織または細胞を原料として抽出精製する方法、(2)化学的に合成する方法または(3)遺伝子組換え技術によりDLADを発現するように操作された細胞から精製する方法等を適宜用いることによって取得することができる。
天然のDLAD産生組織からのDLADの単離精製は、例えば以下のようにして行うことができる。哺乳動物の組織、例えば、ヒト、マウス、ラット等の肝臓組織片を適当な抽出緩衝液中でホモジナイズし、超音波処理や界面活性剤処理等により細胞抽出液を得、そこから蛋白質の分離精製に常套的に利用される分離技術を適宜組み合わせることにより精製することができる。このような分離技術としては、例えば、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
あるいは、哺乳動物由来の培養細胞、例えば、ヒト、マウス、ラット等の肝細胞から誘導された培養細胞を適当な液体培地中で培養し、得られる培養上清から上記のような慣用的な蛋白質分離技術を用いて精製することもできる。
化学合成によるDLADの製造は、例えば、配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列(アミノ酸番号1〜332)もしくは配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列(アミノ酸番号1〜334)を基にして、配列の全部または一部をペプチド合成機を用いて合成し、得られるポリペプチドを適当な再生条件下で再生(renaturation)させることにより行うことができる。
本発明のDLADは、好ましくは、該蛋白質をコードするDNAをクローニングし、該DNAを担持する発現ベクターを含む形質転換体の培養物から単離精製することにより製造することができる。
酵素遺伝子のクローニングは、通常、以下の方法により行われる。まず、所望の酵素を産生する細胞または組織より、上記のような手段により該酵素を完全または部分精製し、そのN末端アミノ酸配列をエドマン法を用いて決定する。また、ペプチドを配列特異的に切断するプロテアーゼや化学物質で該酵素を部分分解して得られるオリゴペプチドのアミノ酸配列を同様にエドマン法により決定する。決定された部分アミノ酸配列に対応する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これをプローブとして用いて、該酵素を産生する細胞または組織より調製されたcDNAまたはゲノミックDNAライブラリーから、コロニー(もしくはプラーク)ハイブリダイゼーション法によって該酵素をコードするDNAをクローニングする。
あるいは、完全または部分精製された酵素の全部または一部を抗原として該酵素に対する抗体を常法にしたがって作製し、該酵素を産生する細胞または組織より調製されたcDNAまたはゲノミックDNAライブラリーから、抗体スクリーニング法によって該酵素をコードするDNAをクローニングすることもできる。
目的の酵素と酵素学的性質の類似する酵素の遺伝子が公知である場合、EMBLやGenBank等の一般に利用可能なデータベース上に登録されたヒト、マウス、ラット等の哺乳動物のEST(xpressed equence ag)クローンの中から、該公知遺伝子の塩基配列と相同性を有するクローンを検索し、抽出されたESTクローンの塩基配列を基にして、上記のようにプローブを作製し、コロニー(もしくはプラーク)ハイブリダイゼーション法によって該酵素をコードするDNAをクローニングすることができる。本発明のDLADの場合、ヒト等の哺乳動物由来DNaseIIの塩基配列とのホモロジー検索により、DLADをコードするcDNAの断片であるESTクローンを見出すことができる。
あるいは、より迅速かつ簡便にcDNAクローンを得る方法として、RACE法を用いることができる。すなわち、上記のようにしてDLAD遺伝子の一部に相当するESTクローンを抽出し、該ESTクローンのセンス鎖およびアンチセンス鎖の部分塩基配列に相同なオリゴヌクレオチドをそれぞれ合成して、各オリゴヌクレオチドと適当なアダプタープライマーとを一対のPCRプライマーとして5’および3’RACE反応を行い、各増幅断片を制限酵素とリガーゼを用いる等の方法で連結することにより、完全長のcDNAクローンを得ることができる。
上記のようにして得られたDNAの塩基配列は、マキサム・ギルバート法やジデオキシターミネーション法等の公知のシークエンス技術を用いて決定することができる。
本発明のDLADをコードするDNAは、好ましくは、配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜332で示されるアミノ酸配列もしくは配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜334で示されるアミノ酸配列、あるいはこれらのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列(但し、該変異アミノ酸配列からなる蛋白質はpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有する)をコードするDNAである。より好ましくは、本発明のDLADをコードするDNAは、配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号279〜1274で示される塩基配列もしくは配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号82〜1083で示される塩基配列、あるいはこれらの塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列(但し、該変異塩基配列はpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質をコードする)からなるものである。
本発明のDLADをコードするDNAは、好ましくは、上記のような塩基配列の5’末端にシグナルペプチド配列をコードする塩基配列をさらに含むものである。より好ましくは、本発明のDLADをコードするDNAは、配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号213〜1274で示される塩基配列もしくは配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号1〜1083で示される塩基配列、あるいはこれらの塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列(但し、該変異塩基配列は、成熟蛋白質がpH約4.0〜約7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有する蛋白質の初期翻訳産物をコードする)からなるものである。
本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、塩基配列において約60%以上の相同性を有するDNAがハイブリダイズし得る条件をいう。ストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション反応や洗浄の際の塩濃度および温度等を適宜変化させることにより調節することができる。
本発明のDLADをコードするDNAは、配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号279〜1274もしくは塩基番号213〜1274で示される塩基配列、あるいは配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号82〜1083もしくは塩基番号1〜1083で示される塩基配列を基にして、化学的に合成されるDNAであってもよい。
本発明はまた、本発明のDLADをコードするDNAを含む組換えベクターを提供する。本発明の組換えベクターは原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で複製保持または自律増殖できるものであれば特に限定されず、プラスミドベクターやウイルスベクター等が包含される。当該組換えベクターは、簡便には当該技術分野において入手可能な公知のクローニングベクターまたは発現ベクターに、上記のDLADをコードするDNAを適当な制限酵素およびリガーゼ、あるいは必要に応じてさらにリンカーもしくはアダプターDNAを用いて連結することにより調製することができる。このようなベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えばpBR322,pBR325,pUC18,pUC19など、酵母由来プラスミドとして、例えばpSH19,pSH15など、枯草菌由来プラスミドとして、例えばpUB110,pTP5,pC194などが挙げられる。また、ウイルスとして、λファージなどのバクテリオファージや、SV40、ウシパピローマウイルス(BPV)等のパポバウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)等のレトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニヤウイルス、バキュロウイルスなどの動物および昆虫のウイルスが例示される。
特に、本発明は、目的の宿主細胞内で機能的なプロモーターの制御下にDLADをコードするDNAが配置されたDLAD発現ベクターを提供する。使用されるベクターとしては、原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で機能して、その下流に配置された遺伝子の転写を制御し得るプロモーター領域(例えば宿主が大腸菌の場合、trpプロモーター、lacプロモーター、lecAプロモーター等、宿主が枯草菌の場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等、宿主が酵母の場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等、宿主が哺乳動物細胞の場合、SV40由来初期プロモーター、MoMuLV由来ロングターミナルリピート、アデノウイルス由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター)と、該遺伝子の転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有し、該プロモーター領域と該ターミネーター領域とが、少なくとも1つの制限酵素認識部位、好ましくは該ベクターをその箇所のみで切断するユニークな制限部位を含む配列を介して連結されたものであれば特に制限はないが、形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有していることが好ましい。さらに、挿入されるDLADをコードするDNAが開始コドンおよび終止コドンを含まない場合には、開始コドン(ATGまたはGTG)および終止コドン(TAG、TGA、TAA)を、それぞれプロモーター領域の下流およびターミネーター領域の上流に含むベクターが好ましく使用される。
宿主細胞として細菌を用いる場合、一般に発現ベクターは上記のプロモーター領域およびターミネーター領域に加えて、宿主細胞内で自律複製し得る複製可能単位を含む必要がある。また、プロモーター領域は、プロモーターの近傍にオペレーターおよびShine−Dalgarno(SD)配列を包含する。
宿主として酵母,動物細胞または昆虫細胞を用いる場合、発現ベクターは、エンハンサー配列、DLAD mRNAの5’側および3’側の非翻訳領域、ポリアデニレーション部位等をさらに含むことが好ましい。
また、形質転換体の培地中にDLADを分泌させる場合、あるいは成熟DLAD蛋白質が適切にグリコシル化されることを所望する場合において、挿入されるDLADをコードするDNAがシグナルペプチドのコード配列を含まない場合は、ベクターとして、開始コドンに続いて適当なシグナルコドンをさらに含む分泌発現用ベクターが好ましく使用される。
本発明のDLADをコードするDNAがゲノミックDNAから単離され、本来のプロモーターおよびターミネーター領域を含む形態で得られる場合には、本発明の発現ベクターは、目的の宿主細胞内で複製保持または自律増殖できる公知のクローニングベクターの適当な部位に該DNAを挿入することにより調製することができる。本発明の好ましい態様においては、DLADは肝臓特異的に発現することから、上記のようにして構築される発現ベクターは、DLADの組織または臓器特異的発現を所望する場合(例えば、肝管の閉塞を起こしたCF患者の治療など)に好ましく使用され得る。
本発明はまた、上記のDLAD発現ベクターで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体を提供する。
本発明で用いられる宿主細胞としては、前記の発現ベクターに適合し、形質転換され得るものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される天然の細胞あるいは人工的に樹立された変異細胞または組換え細胞など種々の細胞[例えば、細菌(大腸菌、枯草菌、乳酸菌等)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属、クリベロマイセス属等)、動物細胞または昆虫細胞など]が例示される。後述の医薬としてのDLADの使用を考慮すると、宿主細胞は哺乳動物細胞、特にヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の細胞、就中ヒト由来細胞であることが好ましい。具体的には、COP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH3 T3等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、およびHeLa、2倍体線維芽細胞由来の細胞、ミエローマ細胞、Namalwa等のヒト由来細胞などが例示される。
発現ベクターの宿主細胞への導入は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細菌の場合は、Cohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]、コンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]等によって、酵母の場合は、Hinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,75,1927(1978)]、リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]等によって、動物細胞の場合は、Grahamの方法[Virology,52,456(1973)]等によって、また昆虫細胞の場合は、Summersらの方法[Mol.Cell.Biol.,3,2156−2165(1983)]等によって、それぞれ形質転換することができる。
本発明のDLADは、上記のようにして調製されるDLAD発現ベクターを含む形質転換体を培地中で培養し、得られる培養物からDLADを回収することによって製造することができる。
使用される培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源,無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース,デキストラン,可溶性デンプン,ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類,硝酸塩類,アミノ酸,コーンスチープ・リカー,ペプトン,カゼイン,肉エキス,大豆粕,バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素〔例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム,リン酸二水素ナトリウム,塩化マグネシウム),ビタミン類,抗生物質(例えばテトラサイクリン,ネオマイシン,アンピシリン,カナマイシン等)など〕を含んでいてもよい。
培養は当分野において知られている方法により行われる。下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地および培養条件を例示するが、本発明における培養条件はこれらに何ら限定されるものではない。
宿主が細菌,放線菌,酵母,糸状菌等である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜8である培地である。宿主が大腸菌の場合、好ましい培地としてLB培地,M9培地[Miller.J.,Exp.Mol.Genet,p.431,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1972)]等が例示される。培養は、必要により通気・攪拌をしながら、通常14〜43℃で約3〜24時間行うことができる。宿主が枯草菌の場合、必要により通気・攪拌をしながら、通常30〜40℃で約16〜96時間行うことができる。宿主が酵母の場合、培地として、例えばBurkholder最少培地[Bostian.K.L.et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4505(1980)]が挙げられ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
宿主が動物細胞の場合、培地として、例えば約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)[Virology,8,396(1959)]、RPMI1640培地[J.Am.Med.Assoc.,199,519(1967)]、199培地[Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,73,1(1950)]等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
宿主が昆虫細胞の場合、培地として、例えばウシ胎仔血清を含むGrace’s培地[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,8404(1985)]等が挙げられ、そのpHは約5〜8であるのが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15〜100時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
DLADの精製は、DLAD活性の存在する画分に応じて、通常使用される種々の分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。本発明の好ましい態様においては、DLADは細胞質と細胞外(すなわち、培地)の両方に存在する。
培養物の培地中に存在するDLADは、培養物を遠心または濾過して培養上清(濾液)を得、該培養上清から、例えば、塩析、溶媒沈澱、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性PAGE、SDS−PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動などの公知の分離方法を適当に選択して行うことにより得ることができる。
一方、細胞質に存在するDLADは、培養物を遠心または濾過して細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、例えば超音波処理、リゾチーム処理、凍結融解、浸透圧ショック、および/またはトライトン−X100等の界面活性剤処理などにより、細胞およびオルガネラ膜を破砕(溶解)した後、遠心分離や濾過などによりデブリスを除去して可溶性画分を得、該可溶性画分を、上記と同様の方法で処理することにより単離精製することができる。
組換えDLADを迅速且つ簡便に取得する手段として、DLADのコード配列のある部分(好ましくはC末端)に、金属イオンキレートに吸着し得るアミノ酸配列(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リシン等の塩基性アミノ酸からなる配列、好ましくはヒスチジンからなる配列)をコードするDNA配列を、遺伝子操作により付加して宿主細胞で発現させ、該細胞の培養物のDLAD活性画分から、該金属イオンキレートを固定化した担体とのアフィニティーによりDLADを分離回収する方法が好ましく例示される。金属イオンキレートに吸着し得るアミノ酸配列をコードするDNA配列は、例えば、DLADをコードするDNAをクローニングする過程で、DLADのC末端アミノ酸配列をコードする塩基配列に該DNA配列を連結したハイブリッドプライマーを用いてPCR増幅を行ったり、あるいは該DNA配列を終止コドンの前に含む発現ベクターにDLADをコードするDNAをインフレームで挿入することにより、DLADコード配列に導入することができる。また、精製に使用される金属イオンキレート吸着体は、遷移金属、例えばコバルト、銅、ニッケル、鉄の二価イオン、あるいは鉄、アルミニウムの三価イオン等、好ましくはコバルトまたはニッケルの二価イオン含有溶液を、リガンド、例えばイミノジ酢酸(IDA)基、ニトリロトリ酢酸(NTA)基、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン(TED)基等を付着したマトリックスと接触させて該リガンドに結合させることにより調製される。キレート吸着体のマトリックス部は通常の不溶性担体であれば特に限定されない。
本発明は、本発明のDLAD、DLAD発現ベクターまたはDLADを発現する形質転換体を有効成分とする医薬組成物、具体的には、高濃度DNAの蓄積に起因する慢性閉塞性疾患(特に、嚢胞性線維症)の治療剤、またはウイルス等による感染症の予防および治療剤を提供する。
従来、CFの治療に使用されているDNaseIは、活性発現に二価カチオンを要求するが、肺嚢胞では二価カチオンの濃度がDNaseIの活性発現に必要なほど高くないと推測されている。また、DNaseIの至適pHは約7.1であるが、肺嚢胞の炎症部位ではpHが中性から酸性側に傾いていると考えらている。そして、DNaseIはCF患者の痰中に多量に存在するG−アクチンにより阻害されるという致命的な性質のために、CF治療薬としてほとんど効果がないのが実情である。これに対し、本発明のDLADは酸性条件下で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得る。さらに、本発明のDLADは、G−アクチンにより阻害されない、活性発現にコファクターを必要としない、中性pH領域でも活性を発現し得る等、CF患者の肺嚢胞の炎症部位で高いDNase活性を発現するのに優れた性質を有している。
また、DLADは鶏痘ウイルス(FWPV)のDNaseII関連蛋白質であるFP−CEL1[J.Virol.,72:6742−6751(1998)]と高い相同性を有するが、FWPVのDLADホモログは該ウイルスが感染した細胞内に他のウイルスが侵入した際に、そのウイルスのDNAを切断することにより、競合するウイルスを排除する作用を有すると考えられることから[J.Virol.(1998),上述]、DLADもまた、ウイルスなどの感染に対する生体防御機能を増強することができ、感染症の予防および治療に有効である。予防および治療され得る感染症は特に限定されないが、例えば、A型、B型およびC型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス等が挙げられる。
本発明の医薬組成物の投与対象は、高濃度DNAの蓄積に起因する慢性閉塞性疾患の治療、またはウイルス等による感染症の予防および治療を必要とする動物であれば特に制限されないが、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ等の哺乳動物、就中ヒトである。
DLAD蛋白質を有効成分とする本発明の医薬組成物は、DLADを医薬上許容される担体と適宜混合し、液状製剤、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、エアロゾル剤等の剤形で、経口的または非経口的に投与することができる。
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラバン、プロピルパラバン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
好ましくは、DLAD蛋白質を有効成分とする医薬組成物は、経口、注射またはエアロゾル製剤である。
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有効量のDLADを溶解させた液剤、有効量のDLADを固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量のDLADを懸濁させた懸濁液剤、有効量のDLADを溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
エアロゾル製剤としては、DLADをジクロロジフロロメタン、プロパン、窒素等で圧縮したもの、あるいはネブライザーやアトマイザーのような非圧縮性製剤が挙げられ、吸入、噴霧によって気道内等に投与される。
非経口的な投与に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、肥厚剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。DLAD製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、DLADおよび医薬上許容される担体を凍結乾燥(フリーズドライ)し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
本発明のDLAD蛋白質含有医薬組成物の投与量は、予防または治療すべき疾患の種類、病気の進行度、投与対象動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なるが、通常、成人1日あたり1〜10,000I.U./kg体重、好ましくは10〜1,000I.U./kg体重であり、この量を1回または数回に分けて投与することができる。
本発明はまた、本発明のDLAD発現ベクターを有効成分とする医薬組成物を提供する。DNaseを用いたCF治療は、対症療法であって根本的な治療法ではないので、肺嚢胞の炎症部位に継続的にDLADが供給される必要がある。したがって、DLAD発現ベクターを投与し、炎症部位またはその周辺の細胞に導入する遺伝子治療はCFの持続的な治療手段として有効である。また、家畜などのウイルス感染症を未然に防止するために、DLAD発現ベクターを胚細胞に導入して感染防御機能が増強されたトランスジェニック動物を作製することもできる。
使用されるベクターは投与対象に応じて適宜選択されるが、ヒト等の哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。アデノウイルスは、遺伝子導入効率が極めて高く、非分裂細胞にも導入可能であり、また、気道上皮細胞指向性であることから、CF治療のためのDLAD遺伝子導入ベクターとして特に好ましい。但し、導入遺伝子の宿主染色体への組込みは極めて稀であるので、遺伝子発現は一過性で通常約4週間程度である。治療効果の持続性を考慮すれば、比較的遺伝子導入効率が高く、非分裂細胞にも導入可能で、且つ逆位末端繰り返し配列(ITR)を介して染色体に組み込まれ得るアデノ随伴ウイルスの使用もまた好ましい。
DLAD発現ベクターを有効成分とする医薬組成物に含まれる医薬上許容される担体としては、上記DLAD蛋白質含有医薬組成物と同様のものが好ましく例示される。
ベクター導入は、投与対象から標的細胞を体外に取り出し、培養してから導入を行って体内に戻すex vivo法と、投与対象の体内に直接ベクターを投与して導入を行うin vivo法のいずれかで行われる。in vivo法の場合、静脈内注射などによりベクターを投与すると、ウイルスベクターの抗原性が問題となるが、標的細胞の存在する臓器/組織に局所的にベクターを注入すれば(in situ法)、抗体の存在による悪影響を軽減することができる。
ベクターとして非ウイルスベクターを使用する場合、DLAD発現ベクターの導入は、リポソームやポリリジン−DNA−蛋白質複合体などの高分子キャリアーを用いて行うことができる。
本発明はまた、本発明のDLAD発現ベクターを含む宿主細胞を有効成分とする医薬組成物を提供する。使用される宿主細胞としては、上記DLAD発現ベクターを用いた遺伝子治療のex vivo法において、投与対象から標的細胞として取り出される自己細胞、または同系もしくは同種異系の個体から取り出した細胞、あるいはそれらの細胞の継代培養により誘導された樹立細胞株などが例示される。また、別の態様においては、投与対象となる動物の鼻腔、咽頭、口腔、腸管、皮膚、膣等に常在する細菌等を宿主細胞として、常法によりこれをDLAD発現ベクターで形質転換し、得られる形質転換体を宿主細胞が通常存在する投与対象内の部位に送達することもできる。
本発明のDLAD発現ベクターおよび該ベクターを発現する宿主細胞を有効成分とする医薬組成物の投与量は、DLAD蛋白質自体を投与する場合の適切な投与量に相当する量のDLADを、それらを投与された動物の体内で発現させる程度であることが望ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1 マウスDLAD cDNAのクローニングおよび配列解析
tblastnプログラムを用いて、NCBI GenBankデータベースのESTサブディビジョンを、ヒトDNaseII(GenBank AF060222)の推定アミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列をコードするESTについてスクリーニングした。その結果、マウスESTクローン(GenBank AI048641)が同定された。該ESTクローンの塩基配列を基にして、下記の2つのオリゴヌクレオチドプライマー(GSP2/mDおよびGSP1/mD)を合成した。さらに、リンカープライマーとして下記のオリゴヌクレオチド(AP1)を合成した。
GSP2/mD:
Figure 0004522632
(配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号300〜326で示される塩基配列と同一配列)
GSP1/mD:
Figure 0004522632
(配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号509〜535で示される塩基配列に相補的な配列)
AP1:
Figure 0004522632
オリゴdTを含む下記プライマー:
Figure 0004522632
(但し、VはG、AまたはCであり、NはG、A、CまたはTである。)
を用いて、C57black/6マウス肝臓由来ポリA(+)RNAを鋳型に逆転写反応を行い、一本鎖cDNA(アンチセンス鎖)を作製した。さらに常法に従ってセンス鎖の合成を行い2本鎖DNAとした後、その両端にAP1配列を含むリンカーDNAのライゲーションを行った。このcDNAを鋳型に、GSP2/mDをセンスプライマー、AP1をアンチセンスプライマーとして3’末端のRACE反応を行った。さらにAP1をセンスプライマー、GSP1/mDをアンチセンスプライマーとして5’末端のRACE反応を行った。RACE反応はMarathon cDNA Amplification kit(Clontech社製)を用いて行った。各増幅産物をpBluescript KS+(Stratagene社製)にサブクローニングし、7−Deaza Thermo Sequenase kit(Amasham社製)およびDSQ1000L DNAシークエンサー(島津製作所製)を用いてサイクルシークエンス法により各インサートの塩基配列を決定した。
その結果、DNaseIIと相同性を有するESTクローンを配列の一部として含むmRNAは、配列表配列番号2に示される塩基配列からなることが明らかとなった。3’RACE反応により、ポリアデニレーション部位が異なる2つのcDNA断片が得られた。第1のポリアデニレーション部位(塩基番号1409)の14塩基上流(塩基番号1390〜1395)および第2のポリアデニレーション部位(塩基番号1634)の18塩基上流(塩基番号1611〜1616)にはポリA付加シグナルのコンセンサス配列(AATAAA)が存在し、この観察を裏付けている。
解析の結果、このcDNA配列は354アミノ酸からなる新規ポリペプチドをコードする1065bpのORF(塩基番号213〜1277)を含んでいた。該ORFはアミノ酸レベルでDNaseIIと37.1%の同一性を有していた。また、該ORFにコードされるポリペプチドの、推定アミノ酸配列から計算される分子量は40767であった。組換え生産された蛋白質の酵素学的性質(後述)に基づいて、本発明者らはこの新規蛋白質をDNaseII様酸性DNase(DLAD)と命名した。
DLADは8つの可能性のあるN−グリコシル化部位[Asn−Xaa−Thr/Ser(Xaaは任意のアミノ酸)のAsn残基;配列表配列番号1で示されるアミノ酸配列中、アミノ酸番号48、55、76、92、107、186、249および297]を含む塩基性に富んだ蛋白質である(等電点:9.67)。von Heijne法[Nucleic Acids Res.,14:4683−4690(1986)]により予測されるN末シグナルペプチドは最初の22アミノ酸(アミノ酸番号−22〜−1)であった。
GenBankデータベースのホモロジー検索により、DLADは線虫C.エレガンスのゲノムの推定ORFにコードされる3つの蛋白質、C07B5.5、F09G8.2およびK04H4.6と、アミノ酸レベルでそれぞれ32.1%、25.1%および19.4%の同一性があることがわかった。さらにDLADは、FWPVゲノムの第3ORFにコードされるFP−CEL1と、アミノ酸レベルで37.5%の同一性を有していた。これは、DNaseIIとFP−CEL1との同一性(28.4%)よりも高い値である。
実施例2 DLAD mRNAの組織分布
種々のマウス組織内でのDLAD mRNAの発現を調べるためにノーザンブロット分析を行った。成体マウスの脳、胸腺、肺、心臓、肝臓、胃、小腸、脾臓、腎臓および精巣の各組織より、TRIzol試薬(Gibco BRL社製)を用いて全RNAを抽出した。各RNAアリコート(15μg)を1%アガロースホルムアミドゲル電気泳動にかけた後、Biodyne−Aメンブレン(Paul社製)にブロッティングした。このメンブレンを、5×SSPE、5×Denhardt’s溶液、50%ホルムアミド、0.1% SDSおよび100μg/ml熱変性サケ精子DNAからなるハイブリダイゼーション溶液中、ヒスチジンタグを有するDLAD−Myc融合蛋白質をコードするDNAを担持するベクターpcDLAD−Myc−His(後述)のXho I消化断片を用いたランダムプライミングにより得られた32P標識プローブと、42℃で一晩ハイブリダイズさせた。反応終了後、ハイブリダイゼーション溶液を除去し、メンブレンを0.1×SSC、0.1% SDS中、50℃で洗浄し、増感スクリーンを用いて−80℃で5日間X線フィルムに感光させた。その結果、肝臓においてのみ1.9kbのDLAD mRNAのバンドが検出された。DLADの肝臓特異的な発現はDNaseIIの低い臓器特異性とは対照的であり、DLADの生理機能がDNaseIIのそれとは明確に区別されるものであることを示唆している。
実施例3 DLAD蛋白質の局在性
実施例1におけるDLADの一次構造解析から、DLAD初期翻訳産物はN末にシグナルペプチドの条件を満たす疎水性ドメインを有することがわかった。すなわち、DLADは分泌蛋白質であることが示唆された。そこで、これを検証するためにDLAD発現ベクターをヒト培養細胞に導入し、細胞内外のDLADの存在比を比較した。また、細胞内に存在するDLADが細胞のどの下位構造に局在しているかについて分析した。
(1)DLAD発現ベクターの構築
下記のプライマー対を用いて、C57black/6マウス肝臓由来ポリA(+)RNAを鋳型にRT−PCRを行い、終止コドンを除くDLADのORFを含むcDNA断片を生成し、pBluescript KS+にサブクローニングした。
センスプライマー:
Figure 0004522632
(配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号213〜236で示される塩基配列の5’末端にXho I認識部位(CTCGAG)を含むリンカー配列を付加したもの)
アンチセンスプライマー:
Figure 0004522632
(配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号1252〜1274で示される塩基配列に相補的な配列の5’末端にXho I認識部位(CTCGAG)を含むリンカー配列を付加したもの)
サイクルシークエンスにより配列を確認した後、Xho Iで消化してインサートDNAを切り出し、pcDNA3−Myc−His C(Invitrogen社製)およびpEGFP−N3(Clontech社製)のXho I部位にそれぞれリクローニングして、C末端にMycおよびヒスチジンタグを含むDLADをコードする発現ベクターpcDLAD−Myc−His、およびDLAD−GFP(Green Fluorescence Protein)融合蛋白質をコードする発現ベクターpDLAD−GFPを得た。比較のために、C末端にMycおよびヒスチジンタグを含むDNaseIIをコードする発現ベクターpcDNaseII−Myc−Hisを同様の手順で作製した。
さらに、DLADのシグナルペプチドの分泌効率を調べるために、DLADのシグナルペプチドをDNaseIIのそれに置換したキメラ蛋白質をコードする発現ベクターpcDNaseII/DLADを以下の手順で作製した。すなわち、下記の2つのプライマー対を用いて、DNaseIIのシグナルペプチドをコードするDNA断片およびシグナルペプチドを含まないDLADをコードするDNA断片を、それぞれPCRにより増幅した後、Hae IIで消化し、両断片をライゲーションしてpBluescript KS+にサブクローニングし、配列を確認した後、pcDNA3−Myc−His CにリクローニングしてpcDNaseII/DLADを得た。
DNaseIIシグナルペプチドコード配列の増幅
センスプライマー:
Figure 0004522632
アンチセンスプライマー:
Figure 0004522632
シグナルペプチド(−)DLADコード配列の増幅
センスプライマー:
Figure 0004522632
アンチセンスプライマー:
Figure 0004522632
(2)トランスフェクションおよびウエスタンブロット分析
10%胎仔ウシ血清添加RPMI1640培地中で増殖させたHeLa S3細胞(2×10個)を、FuGene6トランスフェクション試薬(Boehringer社製)を用いて、pcDLAD−Myc−His、pcDNaseII/DLADまたはpcDNaseII−Myc−His(1μg)で個々にトランスフェクトした。48時間培養後、培養上清(細胞外画分)と細胞とを別個に回収した。氷冷した0.1%ノニデットP−40を含む緩衝液A[100mM トリス塩酸(pH7.8)、3mM MgCl、1mM 2−メルカプトエタノール、0.3mM PMSF]2ml中で、テフロン−ガラスホモジナイザーを用いて(10ストローク)細胞をホモジナイズした。ホモジネートを10,000×gで10分間遠心し、上清を細胞内(細胞質)画分として回収した。細胞内および細胞外画分のそれぞれから、Ni−NTAスピンカラム(Qiagen社製)を製造元のプロトコールに従って使用し、ヒスチジンタグを有する組換え蛋白質を精製した。Ultrafree MC(Millipore社製)で濃縮した後、溶出液アリコートを10% SDS−PAGEにかけ、Immobilon Pメンブレン(Millipore社製)にトランスファーした。該メンブレンを2.5%ウシ血清アルブミン含有TBST[20mM トリス塩酸(pH8.0)、400mM NaCl、0.05%(w/v) Triton X−100]中で1時間ブロッキングした後、マウス抗Myc抗体(Novagen社製)と反応させた。TBSTで洗浄後、メンブレン上に保持された抗体を、アルカリホスファターゼで標識した抗マウスIgG(Promega社製)を用いて検出した。染色像をCCDカメラ(Atto社製)を用いてスキャニングし、バンドの光学密度をデンシトメトリー(NIH image1.60)にて定量した。その結果を図1に示す。
Mycおよびヒスチジンタグを有するDLADは58kDaの単一バンドとして検出された。すなわち、C末端に付加されたMycおよびヒスチジンタグの分子量(約3kDa)を考慮すると、DLAD本体の分子量はSDS−PAGE上、約55kDaと見積もられる。この値はDLADのアミノ酸配列から予測される分子量38,452Da(アミノ酸番号1〜332)よりも大きいが、これは糖鎖の付加によるものと考えられる。
DNaseIIは約80%が細胞外に分泌されたのに対し、DLADは約70%が細胞内にとどまり、約30%が細胞外に見出された(図1)。DLADはHeLa S3細胞の培地中でDNaseIIと同程度に安定であるので、細胞外DLADの存在比の低さは培地でのDLADの急速な分解によるものではない。また、DLADのシグナルペプチドをDNaseIIのそれに置き換えても分泌効率が向上しなかったことから、分泌効率の低さはDLADの分泌シグナルが弱いせいでもない。したがって、成熟DLAD蛋白質中に細胞内保持シグナルとなるターゲッティングモチーフが存在することが示唆される。
(3)DLAD−GFP融合蛋白質の蛍光顕微鏡解析
カバーガラス上で増殖させたHeLa S3細胞(2×10個)を、上記(2)と同様にしてpDLAD−GFP(1μg)でトランスフェクトした。細胞を48時間培養し、室温で10分間1%グルタルアルデヒド[PBS(−)中]で固定した。PBS(−)でカバーガラスを洗浄した後、1mM Hoechst 33258[PBS(−)中]で細胞核を染色し、GFPおよびDNAの像を蛍光顕微鏡(オリンパス光学製)で観察した。対照として、GFPのみを発現するように操作されたHeLa S3細胞についても同様の観察を行った。その結果、GFPは細胞質と核の両方の領域にわたって拡散した像を与えたのに対し、DLAD−GFP融合蛋白質は細胞質中に顆粒状のパターンとして検出された。このことから、細胞内のDLADは細胞質に局在し、いずれかのオルガネラにターゲッティングされることが示唆される。PSORTIIプログラムを用いたモチーフ検索により、DLADはミトコンドリアおよび核への移行シグナルを含まないことが明らかとなった。したがって、細胞質DLADの可能性のある標的オルガネラはリソソームやペルオキシソームのような酸性オルガネラであると推測される。
実施例4 DLADの酵素学的性質の解析
(1)組換えDLADの精製
実施例3の(2)と同様にして、HeLaS3細胞(5×10個)を25μgのpcmDLAD−Myc−HisまたはpcmDNaseII−Myc−Hisで個々にトランスフェクトした。該プラスミドはそれぞれ、DLADおよびDNaseIIの成熟蛋白質のC末端にMycおよびヒスチジンタグが付加された蛋白質をコードする。細胞を48時間培養した後、実施例3の(2)と同様にして、Ni−NTAスピンカラムを用いたIMACにより組換えDLADおよび組換えDNaseIIを精製した。溶出バッファー[250mM イミダゾールおよび300mM NaClを含む50mM リン酸ナトリウム(pH8.0)]300μl中に溶出した精製DLAD(またはDNaseII)を、1mM 2−メルカプトエタノール含有20mM Mes−NaOHに対して透析したものを以下の酵素活性測定に使用した。なお、空のベクターでトランスフェクトしたHeLa S3細胞を同様に処理して得られた試料を対照として用いた。
以下の実験において、DNase活性測定は、特に記載されない限り下記のようにして行った。反応混合物[50mM MeS−NaOH(pH5.2)、1mM 2−メルカプトエタノール、酵素1単位、500ng スーパーコイル状またはEco RI消化した線状pBluescript KS+]20μlを氷上で調製し、45℃で20分間インキュベートした。フェノール/クロロホルムにて反応を停止させ、反応物アリコート5μlを1%アガロースゲル電気泳動に付した。エチジウムブロマイド染色後、泳動像をUV照射下CCDカメラ(Atto社製)でスキャニングし、完全長の基質DNAに相当するバンドの光学密度をデンシトメトリー(NIHimage 1.60)にて定量した。DNase活性は完全長の基質DNAに相当するバンド強度の減少を指標に測定した。本発明では、1単位のDLADおよびDNaseII活性を、上記反応条件において200ngの完全長の基質DNAに相当するバンド強度を減少させるのに必要な酵素量と定義する。
(2)二価カチオン要求性
基質としてスーパーコイル状のプラスミドを用い、二価カチオンキレート剤の存在下および非存在下でのDLAD活性を、酸性(50mM Mes−NaOH,pH5.2)および中性(50mM Mops−NaOH,pH7.2)条件下でそれぞれ測定した。キレート剤としては1mMのEDTAおよびEGTAを個々に使用した。その結果、DLADは、いずれのpH条件下においてもスーパーコイル状のプラスミドDNAの分解を触媒するエンドヌクレアーゼ活性を示した。しかしながら、酸性条件下でのDLAD活性は中性条件下での活性よりもはるかに高かった。また、pH範囲に関係なく、二価カチオンキレート剤であるEDTAやEGTAの添加はDLAD活性に影響を及ぼさなかった。したがって、DLADは二価カチオン非依存性の酸性DNaseであることが実証された。なお、空のベクターをトランスフェクトしたHeLa S3細胞由来試料を用いて同様のアッセイを行っても、エンドヌクレアーゼ活性は検出されなかったことから、検出されたDLAD活性はHeLa S3細胞の内在DNaseの夾雑によるものではない。
(3)活性pH範囲および至適pH
基質としてスーパーコイル状のプラスミドを用い、緩衝液の種類およびpHを酢酸塩−NaOH(pH4.0および4.4)、Mes−NaOH(pH4.8、5.2、5.6、6.0および6.4)、並びにMops−NaOH(pH6.4、6.8、7.2および7.6)と種々変化させる以外は上記の標準的条件で、DLADおよびDNaseIIの各酵素活性を測定した。その結果、DLADでは、調べたすべてのpH範囲でDNase活性が認められた。最も高い活性はMes−NaOH(pH5.2)で観察された。しかしながら、DNaseIIの活性はpH5.6以下でのみ検出された。
(4)阻害剤に対する感受性
種々の濃度のDNase阻害剤[MgCl(図2A,○)、MgSO(図2A,●)、オウリントリカルボン酸(図2B)、G−アクチン(図2C)、CoCl(図2D,■)、NiCl(図2D,△)およびZnCl(図2D,●)]の存在下に、上記の標準的条件でDLAD活性を測定し、各種阻害剤に対する感受性について分析した。その結果、MgClは高濃度ではDLAD活性を阻害した(IC50=13mM)。DNaseII阻害剤であるMgSOは、MgClよりも効率よくDLADを阻害した(IC50=7mM)。このことは、SO 2−イオンがDLADの阻害に効果的であることを示している。ヌクレアーゼの一般的な阻害剤であるオウリントリカルボン酸はDLADを強く阻害したのに対し(IC50=6μM)、DNaseI阻害剤であるG−アクチンはDLADを阻害しなかった。3種の二価金属イオンに対する感受性を比較した結果、DLADはZn2+に対して最も感受性が高いことがわかった(IC50=0.2mM)。一方、DNaseIIに対するこれら3種の二価金属イオンの阻害効果にはほとんど差がないことが知られている[J.Biochem.,87:1097−1103(1980)]。
(5)DNA加水分解様式
基質としてスーパーコイル状のpBluescript KS+を用い、上記の標準的な条件でDLADおよびDNaseIIの酵素反応を実施した。反応終了後、フェノール/クロロホルム処理して夾雑物を除去し、プラスミドDNA分解物を単離した。3’末端をターミナルデオキシヌクレイチジルトランスフェラーゼ(東洋紡製)20単位、0.83mCi/ml[γ−32P]dCTP、100mM カコジル酸ナトリウム(pH7.2)、0.2mM DTTおよび1mM CoClからなる反応液50μl中で標識した。一方、5’末端は、ポリヌクレオチドキナーゼ(東洋紡製)20単位、0.83mCi/ml[γ−32P]ATP、50mM トリス塩酸(pH8.0)、10mM MgClおよび10mM 2−メルカプトエタノールからなる反応液50μl中で標識した。各末端標識処理は、50mM トリス塩酸(pH8.0)および1mM MgClの存在下にウシ小腸アルカリホスファターゼ(宝酒造製)20単位を反応させてDNA末端のリン酸基を除去する前処理を行ったものと、行わななかったものの両方についてそれぞれ実施した。取り込まれなかったヌクレオチドはエタノール沈澱により除去した。該標識処理したDNAを1%アガロースゲル電気泳動にかけ、ナイロンメンブレンにトランスファーした後、BAS1500画像解析装置(富士フィルム製)を用いて解析した。その結果、DLADおよびDNaseIIのいずれで処理したDNA断片も、5’末端はアルカリホスファターゼによる前処理に関係なく標識されたが、3’末端はリン酸基を除去した後でしか標識されなかった。したがって、DLADはDNaseIIと同じく、3’−P/5’−OH末端を生じるようなDNA加水分解を触媒することが明らかとなった。
実施例5 DLADの外来DNA発現抑制効果
(1)ラットDLAD cDNAの単離
実施例1と同様のストラテジーを用いて、ヒトDNaseIIの推定アミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列をコードするラットESTクローン(GenBank AF178974)を同定した。このクローンの塩基配列を基にオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、先天性色素欠損(albino)のWistarラット肝臓由来ポリA(+)RNAを鋳型としたRACE法により、全長ラットDLAD cDNAをクローニングした。常法により配列決定を行った結果、このcDNAは356アミノ酸をコードするORFを含み、N末端に22アミノ酸からなるシグナルペプチドを含むことが推定された。マウスDLADとは、DNAレベルで83.3%、アミノ酸レベルで70.8%の同一性が認められた。実施例3の(1)と同様のストラテジーにより、C末端にMycおよびヒスチジンタグを含むラットDLADをコードする発現ベクターprDLAD−Myc−Hisを構築し、これをHeLa S3細胞にトランスフェクトして組換えラットDLADを得た。得られた組換え蛋白質を用いて特性解析を行った結果、この蛋白質は、活性pH範囲、二価カチオン要求性、DNA切断様式、阻害剤に対する感受性等において、マウスDLADと同様の性質を有することが確認された。
(2)DLAD発現HeLa細胞における外来レポーター遺伝子の発現抑制
カバーガラス上で増殖させたHeLa S3細胞(2×10)を、実施例3の(2)と同様の方法を用いて、prDLAD−Myc−His(1μg)およびpcDNA3.1−Myc−His/lacZ(β−ガラクトシダーゼ発現ベクター;Invitrogen社製)もしくはpEGFP−N3(Clontech社製;上述)(0.5μg)で同時トランスフェクションした。GFP活性は実施例3の(3)に記載の方法に従った。また、β−ガラクトシダーゼ活性は、β−ガラクトシダーゼアッセイシステム(Promega社製)を用いて、添付のプロトコールに従って測定した。比較のために、DLADに代えて、C末端にMycおよびヒスチジンタグを含むラットDNaseIIをコードする発現ベクターprDNaseII−myc−Hisを用い、同様の実験を行った。また、コントロールとして、空のベクターpcDNA3.1−Myc−His(Invitrogen社製)を用いた。その結果を第3図に示す。
図から明らかなように、DNaseIIが外来のレポーター遺伝子の発現に全く影響を及ぼさないのに対し、DLADはコントロールに対して約20〜25%これらの外来遺伝子の発現を抑制した。このことから、DLADは細胞内に侵入した異種DNA、例えばウイルスDNAに作用して、これを分解除去する効果があることが示唆された。
実施例6 ヒトDLAD cDNAの単離
実施例1と同様のストラテジーを用いて、マウスDLADのアミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列をコードするヒトESTクローン(GenBank No.AA988125)を同定した。このクローンの塩基配列を基に以下のオリゴヌクレオチドプライマー:
GSP2/h2L:
Figure 0004522632
(配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号832〜858で示される塩基配列と同一配列)
GSP1/h2L:
Figure 0004522632
(配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号973〜999で示される塩基配列に相補的な配列)
を合成し、さらに上記リンカープライマーAP1を用いて、ヒト肝臓由来ポリA(+)RNAを鋳型としたRACE法により、全長ヒトDLAD cDNAをクローニングした。常法により配列決定を行った結果、このcDNAは361アミノ酸(配列表配列番号3)をコードするORF(配列表配列番号4)を含み、N末端に27アミノ酸からなるシグナルペプチドを含むことが推定された。マウスDLADとは、DNAレベルで75.1%、アミノ酸レベルで65.4%の同一性が認められた。実施例3の(1)と同様のストラテジーにより、C末端にMycおよびヒスチジンタグを含むヒトDLADをコードする発現ベクターphDLAD−Myc−Hisを構築し、これをHeLa S3細胞にトランスフェクトして組換えヒトDLADを得た。得られた組換え蛋白質を用いて特性解析を行った結果、この蛋白質は、活性pH範囲、二価カチオン要求性、DNA切断様式、阻害剤に対する感受性等において、マウスDLADと同様の性質を有することが確認された。
配列リストのフリーテキスト
配列番号5:マウスDLAD cDNAの3’末端を増幅するためのセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号6:マウスDLAD cDNAの5’末端を増幅するためのアンチセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号7:DLAD cDNAの5’および3’末端を増幅するためのリンカープライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号8:マウスDLAD RNAの逆転写反応のためのプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド、但し、Vはg,aまたはcであり、nはg,a,cまたはtである。
配列番号9:全長マウスDLAD cDNAを増幅するためのセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号10:全長マウスDLAD cDNAを増幅するためのアンチセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号11:DNaseIIシグナルペプチドのコード配列を増幅するためのセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号12:DNaseIIシグナルペプチドのコード配列を増幅するためのアンチセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号13:シグナルペプチドを欠くDLADのコード配列を増幅するためのセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号14:ヒトDLAD cDNAの3’末端を増幅するためのセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号15:ヒトDLAD cDNAの5’末端を増幅するためのアンチセンスプライマーとして作用すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
本出願は日本で出願された平成11年特許願第230870号を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。
また、本明細書において引用された特許および特許出願を含む文献は、引用したことによってその内容のすべてが開示されたと同程度に本明細書中に組み込まれるものである。
【配列表】
Figure 0004522632
Figure 0004522632
Figure 0004522632
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Figure 0004522632
Figure 0004522632
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Figure 0004522632
Figure 0004522632

【図面の簡単な説明】
第1図は、DLAD、DNaseIIシグナル−DLADキメラ蛋白質およびDNaseIIを発現すべく操作されたHeLa S3細胞における細胞内および細胞外(培地)の各蛋白質の存在比(全体に対する%)を示す図である。黒線が細胞内、白線が細胞外を示す。
第2図は、DLADの各種DNase阻害剤に対する感受性を示す図である。A(○):MgCl,(●):MgSO;B:オウリントリカルボン酸;C:G−アクチン;D(■):CoCl,(△):NiCl,(●):ZnCl
第3図は、DLADもしくはDNaseII発現ベクターと、GFP(塗りつぶしたカラム)もしくはβ−ガラクトシダーゼ(白抜きのカラム)発現ベクターとを同時トランスフェクションしたHeLa S3細胞におけるGFPもしくはβ−ガラクトシダーゼ活性を示す。活性はコントロールベクターとレポーター遺伝子発現ベクターとを同時トランスフェクションしたHeLa S3細胞における活性に対する割合(%)で示している。データは3つの独立した実験の平均値(カラム)±標準誤差(エラーバー)である。

Claims (24)

  1. 酸性条件下で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼであって、下記性状を有することを特徴とする哺乳動物由来のデオキシリボヌクレアーゼ。
    (1)活性pH範囲:4.0〜7.6
    (2)DNA切断様式:3’−P/5’−OH末端生成型
    (3)阻害剤感受性:(i) Zn2+により阻害される
    (ii) G−アクチンにより阻害されない
    (4) 至適pH:5.2
    (5) 分子量:翻訳後修飾産物として55kDa(SDS−PAGE)
    (6) 局在性:細胞質および細胞外に存在し、細胞質により多い
    (7) 組織特異性:肝臓特異的に発現する
  2. 初期翻訳産物がN末端シグナルペプチド配列を含む請求項1のデオキシリボヌクレアーゼ。
  3. 以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるデオキシリボヌクレアーゼ。
    (a)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜332で示されるアミノ酸配
    b)上記(a)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加もしくは修飾されたアミノ酸配列からなり、且つ成熟蛋白質がpH4.0〜7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとなるアミノ酸配列
  4. 初期翻訳産物がN末端シグナルペプチド配列を含む請求項3のデオキシリボヌクレアーゼ。
  5. N末端シグナルペプチドが配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号−22〜−1で示されるアミノ酸配列からなる請求項4のデオキシリボヌクレアーゼ。
  6. 哺乳動物由来である請求項3〜5のいずれかのデオキシリボヌクレアーゼ。
  7. マウス由来である請求項1、2または6のデオキシリボヌクレアーゼ。
  8. 以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるデオキシリボヌクレアーゼ。
    (a)配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜334で示されるアミノ酸配
    b)上記(a)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加もしくは修飾されたアミノ酸配列からなり、且つ成熟蛋白質がpH4.0〜7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとなるアミノ酸配列
  9. 初期翻訳産物がN末端シグナルペプチド配列を含む請求項8のデオキシリボヌクレアーゼ。
  10. N末端シグナルペプチドが配列表配列番号3に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号−27〜−1で示されるアミノ酸配列からなる請求項9のデオキシリボヌクレアーゼ。
  11. 哺乳動物由来である請求項8〜10のいずれかのデオキシリボヌクレアーゼ。
  12. ヒト由来である請求項1、2または11のデオキシリボヌクレアーゼ。
  13. 請求項1〜12のいずれかのデオキシリボヌクレアーゼをコードするDNA。
  14. 以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
    (a)配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号279〜1274で示される塩基配列
    (b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つpH4.0〜7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するデオキシリボヌクレアーゼをコードする塩基配列
  15. 以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
    (a)配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号213〜1274で示される塩基配列
    (b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つ成熟蛋白質がpH4.0〜7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するデオキシリボヌクレアーゼの、初期翻訳産物をコードする塩基配列
  16. 以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
    (a)配列表配列番号4に示される塩基配列中塩基番号82〜1083で示される塩基配列
    (b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列であって、且つpH4.0〜7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するデオキシリボヌクレアーゼをコードする塩基配列
  17. 以下の(a)または(b)の塩基配列からなるDNA。
    (a)配列表配列番号2に示される塩基配列中塩基番号1〜1083で示される塩基配列
    (b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列
    であって、且つ成熟蛋白質がpH4.0〜7.6の範囲で二価カチオン非依存的にDNAを切断し得るエンドヌクレアーゼ活性を有するデオキシリボヌクレアーゼの、初期翻訳産物をコードする塩基配列
  18. 哺乳動物由来である請求項13〜17のいずれかのDNA。
  19. マウス由来である請求項14または15のDNA。
  20. ヒト由来である請求項16または17のDNA。
  21. 請求項13〜20のいずれかのDNAを含む組換えベクター。
  22. 請求項13〜20のいずれかのDNAおよび該DNAに機能的に連結されたプロモーターを含む発現ベクター。
  23. 請求項22の発現ベクターで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
  24. 請求項23の形質転換体を培地中で培養し、得られる培養物から請求項1〜12のいずれかのデオキシリボヌクレアーゼを採取することを特徴とするデオキシリボヌクレアーゼの製造方法。
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