JP4522602B2 - 二色印字が可能な複合感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー光を利用した非接触方式により、二色印字が可能な感熱記録媒体に関するものである。
また、本発明は、そのような記録媒体を用いて行なう記録方法に関するものでもある。
【0002】
【従来の技術】
基材上に、ロイコ染料を用いた感熱発色層を積層しておき、サーマルヘッドで情報を印字するよう構成したカード、シート、もしくはラベル等はよく行なわれている。
一例を挙げれば、交通機関を利用する際の料金を、一定額を前払いして購入した、いわゆるプリペイドカードの裏面には、上記のような感熱発色層が積層されており、自動改札を通過する都度、月日、乗車区間、料金等を印字して、利用者が確認できるようにしている。
【0003】
しかし、上記のような日常、よく目にする用途では、記録材料には一色の記録しか行なわれてなく、二色以上の多色で記録がなされることはなかった。
二色以上の多色の記録は、転写リボンを用いた転写や電子写真方式等によって行なうことが可能ではあるが、同じ個所に、異なる色の印字を二回行なわなければならず、上記の例のような改札口を通過する際の印字等には時間的に間に合わないからである。
【0004】
基材上に、発色温度の異なる低温発色層と高温発色層の二種類の感熱発色層を順次積層し、記録を行なう試みが特開平9−267557号公報に記載されており、いずれの層の発色温度も常温より高くし、かつ両層において異なる発色温度とする制約はあるものの、一応の二色印字が可能になる。
【0005】
しかし、上記の試みにおいては、低温発色層と高温発色層とは直接に積層しており、下層となる低温発色層への印字の際には、上層の高温発色層を介してサーマルヘッドの熱が伝わるため、サーマルヘッドの直下以外の周囲に伝わった熱により、低温発色層が発色し、にじみやかぶりを生じることがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明においては、それぞれ異なる発色が可能な層を重ねて積層しながらも、記録時に、上層からの熱が下層に伝わる際に、周囲に熱が伝わって下層の発色層が発色する際に、周囲に、にじみやかぶりを生じることを解消することを課題とする。
【0007】
【課題を解決する手段】
上記の課題は、重ねる記録層を金属薄膜等の感熱破壊記録層、および感熱発色層の二種類とし、二層の間に近赤外吸収性層を介在させることにより隔離し、記録時には、比較的低いエネルギーのレーザー光で感熱発色層に記録を行ない、かつ、比較的高いエネルギーで感熱破壊記録層に記録を施すことにより、解消することが見出され、本発明に到った。
【0008】
第1の発明は、基材上の少なくとも一部に、下側から着色層、感熱破壊記録層、近赤外吸収性層、および感熱発色層が順に積層され、前記感熱発色層には、前記近赤外吸収性層に比較的低出力または比較的高出力の近赤外レーザー光が照射されることで発色する発色部を有し、前記感熱破壊記録層には、比較的高出力の近赤外レーザー光が照射されることで形成された孔状の記録部を有する複合感熱記録媒体において、前記低出力の近赤外レーザー光の照射では、感熱発色層のみ発色し、任意に設定した色相が観察され、前記高出力の近赤外レーザー光の照射では、前記感熱破壊記録層に記録部及び前記近赤外吸収性層の発色部を有することで着色層の色と感熱発色層の発色した色が重なりあって混色となって見えることを特徴とする複合感熱記録媒体に関するものである。第2の発明は、前記感熱発色層上には保護層が積層されたことを特徴とする請求項1記載の複合感熱記録媒体に関するものである。第3の発明は、前記感熱発色層への記録が全面に高密度で行なわれたか、もしくは全面に均一に発色されたことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1に示すものは、本発明の複合感熱記録媒体の基本的な構造を示す断面図で、複合感熱記録媒体1は、基材2上に、着色層3、感熱破壊記録層4、近赤外吸収性層5、感熱発色層6、および保護層7が順に積層された構成からなるものである。
即ち、着色シート3および感熱破壊記録層4とからなる第1の感熱記録層と、感熱発色層からなる第2の感熱記録層とが近赤外吸収性層を介して積層した構造の記録層を有するものである。
【0010】
ここで、保護層7は、最表面の物理的、もしくは化学的性状を向上させる目的で、形成してあった方がよいが、用途によっては省略し得る。
また、図示はしないが、各層間には、接着性を向上させる目的で、プライマー層もしくはアンカー層を介在させてもよい。
さらに、図1において、基材2上の各層3〜7は、基材2と同じ大きさであるように描いてあるが、基材2上に余白を残して積層してあってもよい。
【0011】
基材2は、プラスチックフィルム、紙、不織布、もしくは金属箔、またはそれらの複合体で構成することができる。これらのうち、引張り強度、フレキシビリティー、平滑性等の点で、ポリエステル樹脂フィルムやポリ塩化ビニル樹脂フィルム等のプラスチックフィルムが適している。
厚みのあるカード、例えば、一般的なクレジットカードもしくは銀行の預貯金用カードの基材の場合、透明なオーバーシート、2枚の不透明なコアシート、および透明なオーバーシートの4枚のシートの積層体で基材2を構成してもよい。
基材2は、移行に述べる第1および第2の感熱記録層に加え、磁気記録層、もしくはICモジュール等の電磁気的な情報の記憶手段を、転写層3〜保護層7の各層とは別に備えているものであってよい。
【0012】
着色層3は、上層の感熱破壊記録層4の記録を視覚的に明瞭化するために積層された層で、一般的には、顔料もしくは染料等の着色剤で着色された樹脂層から構成される。
【0013】
具体的に樹脂層を構成する樹脂としては、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、もしくは酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のスチレン樹脂もしくはスチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、もしくはポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂単独もしくはメタクリル樹脂単独、またはこれら共重合樹脂、ロジン、ロジン変成マレイン酸、ロジン変性フェノール、もしくは重合ロジン等のロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、クマロン、ビニルトルエン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール等の樹脂の中から一種、もしくは二種以上を選択して使用する。
【0014】
上記の樹脂の中から選択された樹脂に、顔料もしくは染料からなる着色剤を配合し、さらに必要に応じて、可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、乾燥補助剤、硬化剤、増粘剤、分散剤も配合して、溶剤もしくは希釈剤と共に混練して得られるインキ組成物もしくは塗料組成物を用いて、基材2上にグラビア方式、ロール方式、ナイフエッジ方式、もしくはオフセット方式等の印刷方法もしくはコーティング方法により、着色層を形成する。
【0015】
なお、この種の記録媒体に適用されることの多い磁気記録層を、着色層とみなして利用することもできる。
磁気記録層は、従来公知の磁性材料、即ち、γ−Fe2O3、Co被着のγ−Fe2O3、CrO2、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、Co−Cr、Co−Ni、Mn−Al、Baフェライト、Srフェライト等を、適宜な樹脂もしくはインキビヒクル中に分散させたものを、グラビア方式、ロール方式、、もしくはナイフエッジ方式等により、基材2上に形成する。
コーティング方法によって磁気記録層を形成する際には、磁気記録層の膜厚は、1〜100μm、より好ましくは5〜20μmである。
【0016】
磁気記録層の形成の際に用いる樹脂もしくはインキビヒクルとしては、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体樹脂等を用いる事ができ、必要に応じて、ニトリルゴム等のゴム系樹脂、もしくはウレタンエラストマー等が添加される。
また、磁性材料を分散させる上で、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボン等を配合することができる。
【0017】
感熱破壊記録層4は、レーザー光の照射により溶融もしくは蒸発する等により照射部分が除去される性質を有するものである。
具体的には、感熱破壊記録層4は、比較的低融点の金属もしくは金属化合物の薄膜からなるものであり、真空蒸着法、スパッタリング法、もしくはメッキ法等の公知の薄膜形成法により形成する。
【0018】
感熱破壊記録層4を構成する金属もしくは金属化合物としては、Te、Sn、In、Bi、Pb、Zn、もしくはAl等の金属、これら金属の合金、もしくはこれら金属の化合物、例えば、TeC等が挙げられる。
【0019】
感熱破壊記録層4の膜厚は、レーザー光の照射により、適宜な時間内に薄膜が破壊される程度の厚みとし、素材にもよるが、100Å〜1μm、より好ましくは500Å〜1000Å程度である。
【0020】
感熱破壊記録層4と下層の着色層3との間、または/および感熱破壊記録層4と次記近赤外吸収性層5との間には、各層間の密着力の向上の目的で、もしくは金属薄膜層形成時の下地層を形成する目的で、アンカー層を介在させることが好ましい。
アンカー層を介在させると、金属薄膜層の溶融破壊が円滑に行なわれ、印字感度が向上する効果があり、感度よく鮮明な印字が可能になる利点も生じる。なお、アンカー層は透明性を維持した上で、任意の色に着色してもよい。
【0021】
アンカー層の形成は、例えば。ポリエステル系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等の樹脂の一種もしくは二種以上を使用して、溶剤もしくは希釈剤と共に溶解もしくは分散して得られる組成物を用い、公知のグラビアコーティング法もしくはグラビア印刷法により行ない、厚みとしては1μm程度が好ましい。
【0022】
近赤外吸収性層5は、樹脂バインダ中に、近赤外レーザー光を熱に変換するための近赤外吸収剤が分散したものである。
近赤外吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ビスチオウレア系化合物、スクアリリウム系、アズレニウム系、トリフェニルアミン系、トリスアゾ系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、キノン系、ナフトキノン系、アントラキノン系、アゾ系、インモニウム系、ジインモニウム系、金属錯体系、金属硫化物とチオウレア系化合物、もしくはリン化合物と銅化合物等が挙げられ、これらのうちから一種または二種以上を使用する。
近赤外吸収剤としては、感熱発色層4の発色を妨げず、地色を抑える意味で、できるだけ、無色または淡色のものを選択し、使用するとよい。
【0023】
上記の近赤外吸収剤を分散させる樹脂バインダとしては、例えば、エチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルキレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド系水溶性樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、もしくはポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0024】
感熱発色層6は、加熱により各々が融解して反応し、発色する、電子供与性染料前駆体、および電子受容性化合物を主成分とし、これらが樹脂バインダ中に分散したものである。
以下に挙げるような種々の成分を適宜に混合して塗料組成物惜しくはインキ組成物とし、グラビア、ロールコート、スプレーコート、もしくはディップコート等の印刷法またはコーティング法により層6を形成する。
【0025】
電子供与性染料前駆体としては、ロイコ染料としてこの種の感熱記録材料に使用されているものが利用でき、具体的には、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、もしくはインドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。
【0026】
電子受容性化合物としては、上記の電子供与性染料前駆体と組合わせて顕色剤として用いられ、加熱加圧により基材上に貼る等の際の熱に耐えられる程度の耐熱性を有し、感熱記録の際に、感度よく反応するものが選ばれる。
【0027】
具体的には、ビスフェノールA等のフェノール性物質、オクチルスルホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、もしくはエイコシルホスホン酸、α−ヒドロキシオクタノイック酸、α−ヒドロキシデカノイック酸、α−ヒドロキシテトラデカノイック酸、もしくはα−ヒドロキシオクタデカノイック酸、α−チオジフェニル酸、またはキノン類等が好ましく用いられる。
【0028】
上記の電子供与性染料前駆体、および電子受容性化合物を分散させる樹脂バインダとしては、ポリビニルアルコール、でんぷん、変性でんぷん、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルキレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド系水溶性樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、もしくはポリウレタン樹脂の主に水溶性樹脂が挙げられる。
【0029】
上記のほか、感熱発色層6には、種々の添加剤を添加することができ、添加剤としては、増感剤、退色防止剤、顔料、もしくは分散剤が挙げられる。
増感剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−2−ナフト酸フェニル、p−ベンジルビフェニル、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、シュウ酸ジベンジル、トリルビフェニルエーテル、もしくは脂肪族アミド類が挙げられる。
【0030】
退色防止剤としては、水酸基をブロックした顕色剤の類似物、亜鉛塩等の有機金属塩、ヒンダードフェノール等が挙げられる。
顔料としては、隠蔽性が無い、吸油量が高い、pHが高い、染料に対し活性が無いものが求められる。白色顔料であれば、可視光、近赤外光を周囲に散乱させる効果があり、近赤外吸収剤への近赤外光吸収を促進し、発熱効果を上昇させる。具体的な顔料としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸塩、ゼオライト、シリカ、カオリン、クレー、もしくは尿素ホルマリン樹脂等が挙げられる。
【0031】
保護層7は、必要に応じて積層するもので、保護層7が最表面に積層されていることにより、複合感熱記録媒体1の最表面が、携帯時や使用時に摩擦されて摩耗したり、熱を受けて、変形するのを防ぐもので、耐薬品性、耐水性、および耐摩耗性等の耐久性を有し、かつ、下層を透視可能とするための透視性を有するものであることが好ましい。
【0032】
保護層7は、前記した感熱発色層6を形成するためのものとして挙げたバインダ樹脂と同様のものを用いて構成するほか、表面の耐摩耗性、耐薬品性、もしくは耐汚染性等を高度にする目的で、熱硬化性樹脂、または電離放射栓硬化性樹脂(紫外線硬化性磁気記録層もしくは電子線硬化性樹脂)を用いて構成してもよく、厚みとしては0.1〜10μm程度である。
なお、保護層7と下層の感熱発色層6との密着性を高めると共に、保護層形成の際の保護層形成用組成物中の溶剤の感熱発色層6への移行を防止する目的で、保護層7と感熱発色層6との間にアンカー層を介在させてもよい。
【0033】
本発明の複合感熱記録媒体1に対する記録は、図2に示すような方法により行なう。
まず、図2(a)に示すように、複合感熱感熱記録媒体1の感熱発色層6のある側(図1で言えば、保護層のある側)より、比較的低出力の近赤外レーザー光12を、レンズ11を使用し、近赤外吸収性層5に焦点を合わせて照射する。この照射により、近赤外吸収性層5の照射された部分において熱が発生し、発生した熱が上下の各層に伝わる。これにより、上層の感熱発色層6の該当部分において、層内にある電子供与性染料前駆体、および電子受容性化合物が融解して反応し、発色して発色部6aを生じることにより感熱発色層6に記録が行なわれる。
近赤外吸収性層5で発生した熱は、下層の感熱破壊記録層4にも伝わるが、感破壊記録層4を構成する金属、合金、もしくは金属化合物の薄膜は、もたらされた熱が少ないため、記録には至らない。
【0034】
上記の感熱発色層6の記録とは別に、図2(b)に示すように、比較的高出力の近赤外レーザー光12を、やはり、レンズ11を使用し、近赤外吸収性層5に焦点を合わせて照射する。この照射により、近赤外吸収性層5には、上記の感熱発色層6に記録を行なったときよりも多い熱が発生し、発生した熱が上下の各層に伝わり、下層の感熱破壊記録層4の該当部分が溶融もしくは蒸発により除去されて孔状の記録部4aを生じ、記録部4aの部分において、下層の着色層3が透視可能な状態となることにより、記録が行なわれる。
【0035】
上記の比較的高出力の近赤外レーザー光を用いて行なわれる記録時に発生した熱は、上層にも伝わるので、感熱発色層6の該当部分も発色する。従って、感熱破壊記録層4の記録部4aの孔の上から見たときには、着色層3の色と感熱発色層6の発色した色が重なりあって混色となって見える。一方、感熱発色層6のみが発色するときは、任意に設定した色相が観察される。
両方の色相差を大きくして、認識しやすいものとするには、感熱発色層6の発色部6aの色相と、着色層3の色相とを互いに補色の関係になるようにし、記録部4aに孔の上から見ると、黒色に見えるようにするか、もしくは、着色層3を黒色に形成しておくことが好ましい。
【0036】
ここで、近赤外レーザー光としては高出力のものと低出力のものを使い分ける必要があり、レーザー光源としては、同一のものを使用しても、個別のものを使用してもよい。「高出力」とは、感熱破壊記録層4に充分に記録が行なえる出力であり、「低出力」とは、感熱発色層6の記録が充分行なえ、しかも、感熱破壊記録層4には何ら影響のない出力を指す。
感熱破壊記録層4および感熱発色層6を形成する素材によっても、「高出力」および「低出力」の数値は異なるが、一般的に言って、感熱発色層6の記録に必要な最小限の出力レベルは、10mW〜300mW程度であり、感熱破壊記録層4の記録に必要な最小限の出力レベルは100mW〜1000mW程度であるので、区分けが可能である。
実際に円滑な記録を行なう際の「低出力」は「高出力」の30%〜70%に設定することにより、感熱発色層6および感熱破壊記録層4への記録を行なうことができる。
【0037】
本発明の複合感熱記録媒体1の感熱発色層6に記録する際には、下層の感熱破壊記録層4には影響を与えないで記録を行なうことが可能であるので、感熱破壊記録層4に記録を行なった後、感熱破壊記録層4の記録部分に合わせて、感熱発色層6に記録を行なったり、ある部分を均一に発色させて装飾する等の応用が可能である。例えば、感熱破壊記録層4に記録された文字の縁取りを、感熱発色層6への記録により行なったり、感熱破壊記録層4に記録された特定の字句や行の上を、感熱発色層6の記録により着色したり、もしくはアンダーラインや罫線を形成する等である。
【0038】
感熱破壊記録層4への記録と関連付けて感熱発色層6に記録することの応用の一つとして、感熱発色層6の全面への高密度な記録、例えば、全面に地紋を高密度に形成したり、感熱発色層6の全面を均一一様に(=ベタ状に)発色させることにより、感熱破壊記録層4への記録を隠蔽することもできる。
例えば、図3(a)に示すように、まず、比較的高出力の近赤外レーザー光12を用いて、感熱破壊記録層4に記録を行ない、記録部4aを形成しておき、次に、比較的低出力の近赤外レーザー光12を用いて、感熱発色層6に、均一一様に(=ベタ状に)発色したベタ状の発色部6aを形成すれば、ベタ状の発色部6aにより、感熱破壊記録層4の記録部4aを隠蔽することができる。
【0039】
このとき、感熱発色層6中の発色成分として、発色後に近赤外線を吸収しないものを選択しておき、かつ、着色層が、少なくとも記録後の状態で近赤外線吸収性であるような材料を選定しておくことにより、上記のような隠蔽により、感熱破壊記録層4の記録部4aを、目視では判別できない状態としながらも、近赤外線の照射により、感熱破壊記録層4への記録部4aに記録された内容を読み取ることができる。
【0040】
本発明の複合感熱記録媒体は、二色の感熱記録が可能であるので、適宜な個所の記録部の色相を変えて二色での記録を行なう、例えば、特定の字句を異なる色相で記録する、文字に異なる色相で縁取りを行なう、特定個所の着色を行なう、もしくは文字とは異なる色相でアンダーラインや罫線の形成を等する等の応用が可能である。
また、上記したように、下層の記録の隠蔽を行ない、かつ近赤外線での読取りを可能にする場合には、感熱破壊記録層4に微細なバーコード、パスワード、もしくはIDナンバー等を形成して、記録内容を目視不能に隠蔽しておき、しかも機械読み取りを可能にしておく等の応用が可能である。
【0041】
【実施例】
(実施例1)
図1に示す層構成の複合感熱記録媒体1を、以下のようにして作製した。
厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東レ(株)製、E−20)を準備し、基材2とし、各層の形成を、感熱破壊記録層4を除き、いずれもグラビア印刷法によって行なった。各層の厚みは、乾燥後の厚みである。
【0042】
着色層3は、カーボンブラックを顔料として含有するポリエステル系樹脂をバインダーとする黒色インキを用いて、2μmの厚みに形成し、着色層3上に、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂をバインダーとするインキを用いて、0.5μmの厚みに形成した。
上記のアンカー層上に、真空蒸着法により、厚み800ÅのSnの薄膜を形成し、感熱破壊記録層4とした。
【0043】
近赤外吸収性層5は、近赤外光吸収物質(ICI社製、品番;S110510)をポリビニルアルコール樹脂10%水溶液、およびイソシアネート系硬化剤と混合した組成物を用いてグラビア印刷法によって形成し、乾燥後の厚み2μmとした。
感熱発色層6は、赤色発色用染料である3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン)と顕色剤である3,3−ジクロロフェニチオ尿素を用い、ポリビニルアルコール樹脂の10%水溶液に分散して形成し、厚み5μmとした。組成物の調製はサンドミルを使用して行ない、染料および顕色剤の平均粒径が、0.3μmとなるようにし、可視光および近赤外光の透過率を妨げないようにした。
感熱発色層6上には、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂を用いて、厚み3μmの保護層7を形成した。
【0044】
上記のようにして得られた複合感熱記録媒体1に、波長780nm、出力500mWの半導体レーザー光を用い、近赤外吸収性層5に焦点を絞って書込みを行ない、感熱破壊記録層4への印字を行なったところ、黒色の印字を行なうことができた。
また、同じ半導体レーザー光を出力300mWで使用したところ、感熱発色層6に赤色の印字を行なうことができた。
【0045】
(実施例2)
感熱発色層6形成の際に、ロイコ染料として、黒色発色用染料である3−(N−エチル−N−アシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)を、また、顕色剤として、ビスフェノールA)を用いた以外、実施例1と同様にして複合感熱記録媒体1を得た。
【0046】
得られた複合感熱記録媒体1に、実施例1におけるのと同じ条件で、ただし、感熱破壊記録層4への記録によりバーコードを形成し、感熱発色層6への記録はベタ状に行なった結果、感熱破壊記録層4への記録により、黒色のバーコードが得られ、この黒色のバーコードは感熱発色層6への黒色ベタ状の記録により隠蔽することができた。
上記の記録を行なった後の複合感熱記録媒体1を、近赤外線バーコードリーダーを用いて読取りを行なったところ、隠蔽されたバーコードを支障無く読み取ることができた。
【0047】
請求項1の発明によれば、感熱破壊記録層と感熱発色層とが、近赤外吸収性層を介して積層されており、近赤外レーザー光を近赤外吸収性層に焦点を当てて照射することにより、近赤外吸収性層で発生した熱が、隣接する感熱破壊記録層と感熱発色層とに伝わることにより各々の層での記録が行なわれ、にじみやかぶりを生じにくい複合感熱記録媒体を提供することができる。請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、最表面に保護層が積層されているので、表面の物理的、化学的性状が優れた複合感熱記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合感熱記録媒体の断面図である。
【図2】複合感熱記録媒体への記録方法を説明する図である。
【図3】複合感熱記録媒体への別の記録方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 複合感熱記録媒体
2 基材
3 着色層
4 感熱破壊記録層(4a;記録部)
5 近赤外吸収性層
6 感熱発色層
7 保護層
11 レンズ
12 レーザー光
Claims (3)
- 基材上の少なくとも一部に、下側から着色層、感熱破壊記録層、近赤外吸収性層、および感熱発色層が順に積層され、前記感熱発色層には、前記近赤外吸収性層に比較的低出力または比較的高出力の近赤外レーザー光が照射されることで発色する発色部を有し、前記感熱破壊記録層には、比較的高出力の近赤外レーザー光が照射されることで形成された孔状の記録部を有する複合感熱記録媒体において、前記低出力の近赤外レーザー光の照射では、感熱発色層のみ発色し、任意に設定した色相が観察され、前記高出力の近赤外レーザー光の照射では、前記感熱破壊記録層に記録部及び前記近赤外吸収性層の発色部を有することで着色層の色と感熱発色層の発色した色が重なりあって混色となって見えることを特徴とする複合感熱記録媒体。
- 前記感熱発色層上には保護層が積層されたことを特徴とする請求項1記載の複合感熱記録媒体。
- 前記感熱発色層への記録が全面に高密度で行なわれたか、もしくは全面に均一に発色されたことを特徴とする請求項1記載の複合感熱記録媒体。
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JP2001073397A JP4522602B2 (ja) | 2001-03-15 | 2001-03-15 | 二色印字が可能な複合感熱記録媒体 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
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