JP4522122B2 - 太陽電池の電極部品 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽光を電気エネルギーに変換する有機色素増感型太陽電池の電極部品に関するものである。
従来における太陽電池の電極部品は、図示しないが、透明基板と、この透明基板の表面に形成される透明導電膜と、この透明導電膜上に形成され、分光増感色素を備えた金属酸化物半導体膜とを備えている(特許文献1参照)。透明導電膜は、例えば透明基板の表面に、粗面化処理された銅箔が接着され、この銅箔がエッチングされることによりパターン形成される。
特開2003‐123858号公報
従来における太陽電池の電極部品は、以上のように粗面化処理された銅箔を接着するので、エッチングによる除去部分が曇り、光線透過率を悪化させるという大きな問題がある。この問題を解消するには、銅箔の粗面化処理を省略すれば良いが、そうすると、透明基板に対する接着強度が低下し、信頼性の低下を招くこととなる。
本発明は上記に鑑みなされたもので、光線透過率の悪化を防ぎ、透明基板に対する透明導電膜の接着強度を維持向上させ、信頼性の低下を防ぐことのできる太陽電池の電極部品を提供することを目的としている。
本発明においては上記課題を解決するため、透明基板と、この透明基板に形成される導電層と、この導電層上に形成される透明導電膜と、この透明導電膜上に形成されて分光増感色素を有する金属酸化物半導体膜とを含み、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池の電極部品であって、
導電層を幾何学模様のパターンに形成して複数の導電細線を組み合わせることにより、透明基板の表面に複数の中空部を区画形成し、この複数の中空部により透明基板に太陽光を透過するようにしたことを特徴としている。
なお、透明基板あるいは透明基板と導電層との間に、曇り防止層を形成することができる。
ここで、特許請求の範囲における導電層は、複数の導電細線を略平行に配列したもの、あるいは複数の導電細線を略平行に配列した複数の配線体群を互いに導通するように組み合わせることにより形成することができる。また、導電性インクを塗布印刷して形成することもできる。また、感光性の導電性インクを透明基板に塗布し、露光、現像により導電層をパターン形成したり、あるいは合成繊維の短繊維を平織りして織布を形成し、この織布に金属めっきを施して導電層を形成しても良い。
本発明によれば、光線透過率の悪化を防ぎ、透明基板に対する透明導電膜の接着強度を維持向上させ、信頼性の低下を防ぐことができるという効果がある。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における太陽電池の電極部品は、図1や図2に示すように、電極板として機能する透明基板1と、この平坦な透明基板1の一面である表面に形成される高導電層2と、この高導電層2上に形成される透明導電膜4と、この透明導電膜4上に形成され、太陽光の照射される分光増感色素6を有する金属酸化物半導体膜5とを備え、高導電層2をパターン形成して複数の中空部3を形成し、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池の一部を構成する。
透明基板1は、平面矩形の透明なガラス板、透明なプラスチックシート、又は透明フィルム等からなり、太陽光を透過するよう機能する。この透明基板1は、具体的には、光線透過率50%以上、ヘイズ5%以下程度の基板が選択される。透明基板1は、意匠性を考慮し、着色された基板も使用可能であるが、汎用性の観点からは無色透明の基板が良い。この場合には、光線透過率が80%程度以上であることが好ましい。
高導電層2は、金属細線、導電性インク、金属めっきされた合成繊維からなり、線幅2〜40μmの格子形、ストライプ形、千鳥格子形、ハニカム形、多角形の集合体形等からなる幾何学模様のパターンに形成されて複数の中空部3により太陽光を透過するよう機能する。高導電層2の線幅が2〜40μmの範囲であるのは、線幅が2μmを下回る場合には、実際の製造作業に少なからず支障を来たし、生産性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。逆に、線幅が40μmを上回る場合、パターンの存在が認識可能なレベルとなり、視認性を悪化させるおそれがあるからである。
高導電層2のパターン形成に際しては、単なるストライプとするのではなく、格子形、千鳥格子形、ハニカム形、多角形の集合体形として縦横に細かく導通する形態とすれば、例え部分的に断線等を生じたときにも、複数の導電細線が断線部を補完し、機能喪失を回避することが可能となる。
高導電層2を金属細線製とする場合、ステンレス線、ニッケル線、タングステン線、りん青銅線、真鍮線等を使用することができる。この金属細線の直径は、材質により異なるが、5〜40μmの範囲から選択される。これは、5μmを下回る場合には、製造が困難であり、取り扱いも難しく、製品歩留まりに悪影響を及ぼすおそれがあるからである。また、金属細線の直径がそのままパターン幅となるため、上記理由により40μmを上回ることは好ましくない。
高導電層2を金属細線によりパターン形成する方法としては、(1)接着層からなる固定層を備えた透明基板1上に金属細線をノズルから繰り出し、金属細線を随時固定しながら所定のパターンを形成する方法、(2)円筒形のドラムの外周に、固定層を形成した透明基板1をその固定層が外側になるようにセットし、ドラムを回転させながら金属細線をドラムの回転軸方向に一定速度で移動させつつ繰り出し、透明基板1上の固定層に巻き付けて金属細線を伴った透明基板1を切り開き、所定のピッチで平行に配列した金属細線を得る方法、(3)平行に配列した金属細線を伴った二枚の透明基板1を互いに垂直方向に貼り合わせ、格子形の配線体を得る方法等があげられる。
高導電層2を導電性インク製とする場合、金属、カーボン、金属酸化物等の適当な導電性付与フィラー、樹脂バインダー、所定の有機溶剤を含む導電性インクを使用することができる。この場合、より細いパターンで高い導電性を得るためには、金属系の導電性付与フィラーの使用が好ましく、特に銀を含む導電性インクが最適である。これは、体積固有抵抗値が低いこと、粒子同士の接触抵抗が低いこと、空気中での熱処理等による酸化劣化が起きにくいこと、粒子径を細かくすることで粒子同士が融着し、より高い導電性の発現が可能であるという理由に基づく。
導電性インクにより高導電層2をパターン形成する方法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の各種印刷法があげられる。これらの中でも、線幅40μm以下の細いパターン形成が必要であることから、凹版オフセット印刷やスクリーン印刷法が好ましい。
高導電層2に感光性の導電性インクを使用する場合は、上記導電性インクのバインダーとして感光性樹脂を使用することができる。これを用いてパターン形成するには、感光性の導電性インクを透明基板1に塗布し、露光、現像することにより達成することができる。この方法によれば、上記印刷法と比較し、厚いパターンを簡単に形成することができる。また、フォトプロセスを応用するため、パターンエッジの直線性や精度を向上させることができる。
高導電層2として、合成繊維の短繊維を平織りして織布を形成し、この織布に金属めっきを施したものを用いることもできる。具体的には、ポリエステル等の直径20〜35μmの短繊維を100メッシュ/インチ程度に平織りした織布に銅めっきし、導電性を付与したものを透明基板1に固定して高導電層2とすれば良い。
透明導電膜4は、例えば酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドーブ酸化インジウム、及び又はアルミニウムドーブ酸化亜鉛等を使用して気相成膜法等により形成される。
金属酸化物半導体膜5は、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、及び又はチタン酸ストロンチウム等を使用して気相成膜法、真空蒸着法、スパッタリング法等により形成され、有機色素である分光増感色素6が単分子膜として吸着する。この金属酸化物半導体膜5は、微細な結晶構造を有する多孔質膜であることが好ましい。
分光増感色素6は、金属酸化物半導体膜5に吸着され、太陽光の照射により可視領域の光線を吸収して励起する。この分光増感色素6としては、例えば金属錯体や有機色素があげられ、特に分光増感の効果や耐久性に優れる金属錯体が最適である。金属錯体には、銅フタロシアニン、金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン等が該当する。また、有機色素には、例えばメタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素等が該当する。
上記構成を有する太陽電池の電極部品を用いて太陽電池を構成する場合には、電極部品の周囲を封止壁7により囲み、この封止壁7内にレドックス電解質からなる電解質8を充填し、封止壁7の開口を透明の対電極9で被覆して透明基板1に電解質8を介し対向させ、その後、電極機能を有する透明基板1と対電極9とに図示しないリード線をそれぞれ取り付ければ、太陽電池を製造することができる。
封止壁7としては、各種樹脂が使用される。また、対電極9としては、透明導電性膜のコートされたガラス基板、あるいは白金(図示せず)を担持した透明導電性基板等が使用される。
上記構成によれば、透明基板1と透明導電膜4との間に高導電層2が介在するので、粗面化処理された銅箔を接着する必要がない。したがって、エッチングによる除去部分が曇り、光線透過率を悪化させるおそれをきわめて有効に排除することができる。また、透明基板1に対する透明導電膜4の接着強度が低下し、信頼性の低下を招くこともない。
次に、図3は本発明の他の実施の形態を示すもので、この場合には、透明基板1の表面と高導電層2との間に、無彩色の曇り防止層10を介在するようにしている。
曇り防止層10は、少なくとも紫外線により硬化可能な樹脂組成物を含有した黒色インクからなり、増感剤、重合禁止剤、レべリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられ、透明基板1の表面に黒色層として形成される。この曇り防止層10は、透明基板1の全表面に高導電層2のパターンと同様のパターンにエッチング等の方法により形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、透明基板1と高導電層2との間に、光線を吸収する黒色の曇り防止層10を介在し、透明基板1に高導電層2を間接的に設けるので、透明基板1が全体として曇るのを抑制することができるのは明らかである。
なお、上記実施形態では透明基板1の表面と高導電層2との間に曇り防止層10を介在したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、透明基板1の裏面に曇り防止層10を形成しても良い。
以下、本発明に係る太陽電池の電極部品の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1
先ず、無アルカリガラスからなる透明基板の表面に、高導電層を感光性銀インクを使用した露光現像により格子のパターンに形成し、この高導電層上に、透明導電膜である膜厚3000オングストロームのITO被膜をスパッタリングし、この三層構造の構造体を5mm×5mm(以下、5mm□と表す)、300mm×300mm(以下、300mm□と表す)の大きさにそれぞれカットした。
銀インクとしては、ネガ型感光性アクリル系樹脂をベースとし、銀粉末の分散したタイプを使用した。露光現像に際しては、パターンとして残したい部分にUV光を照射して感光性の導電性インクの少なくとも表層部を硬化させ、現像することによりパターンを形成した。
スパッタリングに際しては、マグネトロンスパッタリング装置、100mm×400mmのITO(インジウム−スズ酸化物)セラミックターゲットを使用し、アルゴンガス50cc/分、酸素ガス3cc/分を供給し、マグネトロンスパッタリング装置内部の圧力を0.7Paに設定するとともに、供給電力2000Wの条件で5分間スパッタリングした。
次いで、構造体のITO被膜に、金属酸化物半導体膜である酸化チタンペースト〔昭和電工製 商品名SP−200〕をスプレー法により塗布し、120℃、20分の条件で製膜して酸化チタンペーストの厚さを12μmとした。こうして酸化チタンペーストを製膜したら、ルテニウム錯体〔RuL2(NCS)2〕(Lは4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン)で表される分光増感色素を3×10-4モル/lの濃度でエタノールに溶解し、この錯体溶液に、酸化チタンペーストを備えた透明基板を入れ、室温で18時間浸漬して太陽電池の電極、より詳しくは、酸化チタン半導体電極を製造した。分光増感色素の吸着量は、酸化チタン膜の比表面積1cm2当たり1×10-7molであった。
そして、酸化チタン半導体電極を一方の電極とし、他方の電極として本実施例の構造体に白金を担持した透明導電性基板を別に用意し、二つの電極にリード線をそれぞれ接続するとともに、二つの電極の間に電解質を充填し、その後、二つの電極の回りを樹脂で封入して太陽電池を製造した。
電解質としては、溶媒であるアセトニトリルに、ヨウ化リチウムを0.1mol/l、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを0.3mol/l、ヨウ素を0.05mol/l、t−ブチルピリジンを0.5mol/lの濃度となるよう溶解したものを用いた。製造した太陽電池に、ソーラーシミュレーターで100W/m2 の強度の光を照射して変換効率を測定した。
実施例2
基本的には実施例1と同様であるが、透明基板としてポリカーボネート(PC)を使用してその表面には固定層として透明シリコーンゴム(SR)を塗布し、高導電層にタングステン線(W線)を使用した。高導電層のパターン形成に際しては、円筒形のドラムの外周に固定層を備えた透明基板を固定層が外側になるようにセットし、ドラムを回転させながらタングステン線をドラムの回転軸方向に一定速度で移動させつつ繰り出し、透明基板上の固定層に巻き付けるとともに、タングステン線を伴った透明基板を切り開き、所定のピッチで平行に配列した金属細線を得る方法(線巻き)を採用した。
また、300mm□の太陽電池を対象に、R20mmの曲率で180°屈曲を100回行い、熱変換効率を測定し、減少率を10%単位で表1にまとめた。減少率5%未満は「<5」、5%以上15%未満は「10」、15%以上25%未満は「20」、…55%以上65%未満は「60」のように表記した。その他の部分については、実施例1と同様である。
実施例3
基本的には実施例2と同様であるが、透明基板としてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用し、高導電層に実施例1とは別の銀インクを使用した。銀インクとしては、ポリビニルブチラールをベースとし、銀粉末の分散したタイプを使用した。また、高導電層のパターン形成に際しては、スクリーン印刷法を採用した。その他の部分については、実施例2と同様である。
実施例4
基本的には実施例2と同様であるが、透明基板としてポリカーボネート(PC)を使用し、高導電層に実施例1と同様の銀インクを使用した。また、高導電層のパターン形成に際しては、実施例1と同様に露光現像を採用した。その他の部分については、実施例2と同様である。
実施例5
基本的には実施例2と同様であるが、透明基板としてポリカーボネート(PC)を使用してその表面には固定層として透明シリコーンゴム(SR)を塗布し、高導電層に、ポリエステルの単繊維を平織りした後に黒色の銅めっきを施したもの(銅めっきポリエステル)を用いた。また、高導電層のパターン形成に際しては、織布を採用した。
比較例1
基本的には実施例1と同様であるが、無アルカリガラスからなる透明基板の表面に、高導電層ではなく、透明導電膜である膜厚3000オングストロームのITO被膜をスパッタリングし、この二層構造の構造体を5mm□、300mm□の大きさにカットした。
300mm□の太陽電池を対象とした耐屈曲耐久試験は、実施例1と同様に実施しなかった。その他の部分については、実施例1と同様である。
比較例2
基本的には実施例2と同様であるが、透明基板としてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用し、高導電層に、粗面化処理の施されていない圧延銅箔を使用した。また、高導電層のパターン形成に際しては、ネガタイプのドライフィルムレジストを用いたエッチング(エッチング法)を採用した。その他の部分については、実施例2と同様である。
Figure 0004522122
結 果
実施例1〜4においては、変換効率が非常に高く、良好な性能を示した上、セル面積を大きくしても性能劣化は殆んど無く、実施例に係る電極部品が大面積セルに有効であること証明された。
実施例5においては、高導電層の線幅が広く、光線の吸収量が若干少なくなったため、他の実施例と比較して変換効率が若干見劣りするものの、太陽電池の部品としては十分な性能を有することが証明された。また、他の実施例と同様、面積の増大による変換効率の低下が無く、大面積セルに有効であることが証明された。
また、耐屈曲性試験においては、実施例2〜5の電極部品の変換効率の減少率は全て5%未満と良好な結果だった。
これに対し、比較例1の場合、小面積での変換効率は実用領域にあるものの、大面積にすると、変換効率が著しく悪化し、使用に耐えるものではなかった。
また、比較例2の場合、面積の増大には有効であったが、エッチング部の透明性を確保するために粗面化処理をしていない圧延銅箔を使用したため、透明基板との接着性が不足し、屈曲耐久試験で60%も効率が減少した。
本発明に係る太陽電池の電極部品の実施形態における太陽電池を示す断面説明図である。 本発明に係る太陽電池の電極部品の実施形態における高導電層を示す一部拡大説明図である。 本発明に係る太陽電池の電極部品の他の実施形態における太陽電池を示す断面説明図である。
符号の説明
1 透明基板
2 高導電層(導電層)
3 中空部
4 透明導電膜
5 金属酸化物半導体膜
6 分光増感色素
10 曇り防止層

Claims (2)

  1. 透明基板と、この透明基板に形成される導電層と、この導電層上に形成される透明導電膜と、この透明導電膜上に形成されて分光増感色素を有する金属酸化物半導体膜とを含み、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池の電極部品であって、
    導電層を幾何学模様のパターンに形成して複数の導電細線を組み合わせることにより、透明基板の表面に複数の中空部を区画形成し、この複数の中空部により透明基板に太陽光を透過するようにしたことを特徴とする太陽電池の電極部品。
  2. 透明基板あるいは透明基板と導電層との間に、曇り防止層を形成した請求項1記載の太陽電池の電極部品。
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