JP4521488B2 - 線維筋痛症候群の治療剤並びに筋攣縮による疼痛の治療剤 - Google Patents

線維筋痛症候群の治療剤並びに筋攣縮による疼痛の治療剤 Download PDF

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Description

本発明は、a)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物(以下、RNA等という)、b)L−アルギニン、L−シトルリン及びL−オルニチンからなる群より選択される1種以上の化合物、及びc)L−アスコルビン酸(以下,アスコルビン酸という)を含む線維筋痛症候群の治療剤であって、成分b):成分c)の質量比が1:0.2〜20、特に0.2〜0.25である線維筋痛症候群の治療剤並びに血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤に関する。
慢性疼痛は、一般に、急性疾患の通常の経過以上または治癒すべき傷害に相応する時間以上持続するか、あるいは数カ月もしくは数年の間隔で再発する疼痛として定義される広範な用語である。慢性疼痛の症状には多数あり、例えば筋骨格または脊椎骨の疼痛、神経学的疼痛、頭痛または血管の疼痛等が挙げられる。
慢性疼痛に分類される線維筋痛症候群(以下、FMSと略することがある)は、広範で長期間持続する疼痛を最も煩雑に引き起こし、刺激に関する知覚作用が全身的に強められることを特徴とする。該疼痛は、触診時に18カ所の「圧痛点」のうち11カ所以上に痛みが生じるものとして分類され、種々の基礎的疾患または障害に関連している。その他の線維筋痛症候群に伴う症状としては、抑うつ、疲労、睡眠障害および記憶障害が挙げられる。
線維筋痛症候群の患者は鎮痛剤、抗鬱薬により、また適度の運動、適切な食事療法及びストレス解消法など、補助的な治療を行うことにより、ある程度の軽減を得ることができるものの、大部分の線維筋痛症患者の有効な治療方法はまだ無いのが現状である。
特開2004−089004号公報及び特開2003−335664号公報には、RNAの粉末、L-アルギニン粉末及びL-アスコルビン酸粉末から成る栄養補助食品、脳脊髄系神経栄養剤、補完療法のための栄養補助食品が開示され、また、一定量のアスコルビン酸を添加することにより、アルギニンのえぐい味を無くし、えぐい感を軽くできることも記載されている。
また、国際公開第2005/084660号パンフレットには、RNA、L-アルギニン及びL-アスコルビン酸を含むミトコンドリア病治療剤が記載されている。
しかし、RNA、L-アルギニン及びL-アスコルビン酸を含む組成物を、慢性疼痛に分類される線維筋痛症候群の治療に用いることに付いては何らの報告もなされていない。
特開2004−089004号公報 特開2003−335664号公報 国際公開第2005/084660号パンフレット
本発明は、安全性に優れる慢性疼痛の治療剤、特に、線維筋痛症候群の治療剤並びに血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤の提供を課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、RNA等、L−アルギニン、L−シトルリン及びL−オルニチンからなる群より選択される1種以上の化合物及びアスコルビン酸を含む組成物が、線維筋痛症候群に対して優れた治療効果を示すことを見出した。
また、上記組成物が、筋肉(例えば瞼)の攣縮を伴う線維筋痛症にも優れた治療効果を
示したことから、血管平滑筋攣縮による疼痛にも治療効果を示すことが示唆され、また、実際に上記疼痛(例えば、狭心痛)にも優れた治療効果を示すことを確認し、本発明を完成させた。
尚、RNA等、L−アルギニン、L−シトルリン及びL−オルニチンからなる群より選択される1種以上の化合物及びアスコルビン酸を含む本発明の組成物は、非常に安全性が高いものである。
即ち、本発明は、
(1)
a)ビール酵母RNA、
b)L−アルギニン、及
c)L−アスコルビン酸
を含む線維筋痛症候群の治療剤であって、
成分b):成分c)の質量比が1:0.2〜20である線維筋痛症候群の治療剤、
(2)前記成分b):前記成分c)の質量比が1:0.2〜6である前記(1)記載の線維筋痛症候群の治療剤、
(3)前記質量比が1:0.2〜0.25である前記(2)記載の線維筋痛症候群の治療剤、

a)ビール酵母RNA、
b)L−アルギニン、及
c)L−アスコルビン酸
を含む血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤であって、
成分b):成分c)の質量比が1:0.2〜20である血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤、
)前記成分b):前記成分c)の質量比が1:0.2〜6である前記()記載の血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤、
)前記質量比が1:0.2〜0.25である前記()記載の血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤、
に関する。
本発明により、安全性に優れる慢性疼痛の治療剤、特に、線維筋痛症候群の治療剤並びに血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤を提供することができる。
上記の通り、線維筋痛症候群は、診断方法は確立しているものの、それらの疾患を引き起こす機序は、必ずしも明確になっておらず、従って、何故本発明で使用するRNA等、L−アルギニン、L−シトルリン及びL−オルニチンからなる群より選択される1種以上の化合物及びアスコルビン酸を含む組成物が線維筋痛症候群に対して優れた治療効果を示すかについては、明確ではないが、例えば、以下示す各成分単独の作用及び/又は複数成分の相互作用が複合的にその一因となっていることが考えられる。
(a)RNA等は、神経栄養素として有用であるが、該RNA等の利用がアルギニン併用により促進されること。
(b)大量のL−アルギニン、L−シトルリン及び/又はL−オルニチンの摂取により、鎮静効果を示すGABAの神経細胞内の濃度が増加すること。
(c)大量のL−アルギニン、L−シトルリン及び/又はL−オルニチンの摂取により、鎮痛効果を示すジペプチドであるキヨトルフィン(Tyr−Arg)が生成され、痛みに対して抑制的に作用すること。
(d)大量のL−アルギニン、L−シトルリン及び/又はL−オルニチンの摂取により、筋肉の攣縮が改善されること。
(e)アスコルビン酸の併用により、大量のL−アルギニン、L−シトルリン及び/又はL−オルニチンの摂取によるNO x の異常発生が消去され、アルギニン起因のNO x の細胞障害が消去されること。
また、血管平滑筋攣縮による疼痛は、線維筋痛症候群における筋肉(骨格筋)での疼痛が、血管の筋肉(平滑筋)での疼痛に置き換わったものと考えることができ、そのため、線維筋痛症候群と同様に、例えば、上記の種々の作用の結果として、優れた治療効果が示されたものと考えられる。
加えて、本発明の治療剤は、血管平滑筋攣縮による疼痛だけでなく、横紋筋の攣縮による疼痛に対しても治療効果を示す。
更に、本発明の治療剤は、血栓の形成を抑制する効果も有する。
本発明の線維筋痛症候群の治療剤、又は、血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤は何れも、
a)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物、
b)L−アルギニン、L−シトルリン及びL−オルニチンからなる群より選択される1種以上の化合物、及び
c)L−アスコルビン酸
を含む。
上記成分a)である、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物は、RNA、リボヌクレオチドまたはリボヌオレオシド;R
NAおよびリボヌクレオチド;RNAおよびリボヌクレオシド;リボヌクレオチドおよび
リボヌクレオシド;およびRNA、リボヌクレオチドおよびリボヌクレオシドを意味する。
本発明で使用するRNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物(以下RNA等という。)は、天然起源のものまたは合成物のいずれでもよい。天然起源のRNA等としては、菌体からのもの、好ましくは、例えばビール酵母、パン酵母、トルラ(Torula)酵母、乳酵母等の酵母から抽出、分別されたRNA等、更に好ましくはビール酵母から抽出されたRNA等が挙げられる。
天然起源のRNA等の取得法については、例えばビール酵母からの取得法として下記の方法がある。即ち、ビールの製造工程から回収されたスラリー状(固形分:約10%)酵母または乾燥酵母から水溶性低分子画分を除去した残査が原料として用いられる。この残査に、食塩水を添加して、RNAを加熱下抽出し、この抽出液に濃塩酸水を加えて沈澱させ、中和後水で再抽出した後、エタノールのようなRNA難溶性の有機溶媒を加えてRNAを沈澱せしめて、遠心分離法によつて上澄液を除き、RNAを主とした沈澱画分を取得する。その後、適当な常法により乾燥することにより取得する。このようにして得られた乾燥後のビール酵母RNAの概略の組成は下記の通りである。
Figure 0004521488
また、マウスに対する経口毒性は、酵母から抽出したリボ核酸の場合、5250mg/kgでも
無作用なので毒性は非常に低い、即ち、非常に安全性が高いものといえる。
RNA等の1日当たりの摂取量は通常、0.03〜3.0g、好ましくは0.3〜3g
である。
本発明は成分b)として、L−アルギニン、L−シトルリン及びL−オルニチンからなる群より選択される1種以上の化合物を使用する。
好ましい成分b)としては、L−アルギニン単独、L−シトルリン単独又はL−アルギニンとL−シトルリンの混合物が挙げられる。
本発明に使用されるL−アルギニンとしては、天然由来又は合成品の何れも使用することができるが、その純度は、好ましくは、97%以上である。
L−アルギニンは、最も毒性の少ないアミノ酸の一つであるので、L−アルギニンの1
日当たりの摂取量は必要に応じて任意に決められる。体重70kgの成人のL−アルギニン1日当たり摂取量は、通常0.5〜9gであり、好ましくは0.5〜6gであるが、これら摂取量の範囲外を用いることも可能である。
本発明に使用されるL−シトルリンとしては、天然由来又は合成品の何れも使用することができるが、その純度は、好ましくは、97%以上である。
L−シトルリンの1日当たりの摂取量は必要に応じて任意に決められる。体重70kgの
成人のL−シトルリン1日当たり摂取量は、通常0.5〜9gであり、好ましくは0.5〜6gであるが、これら摂取量の範囲外を用いることも可能である。
本発明に使用されるL−オルニチンとしては、天然由来又は合成品の何れも使用することができるが、その純度は、好ましくは、97%以上である。
L−オルニチンの1日当たりの摂取量は必要に応じて任意に決められる。体重70kgの
成人のL−オルニチン1日当たり摂取量は、通常0.5〜9gであり、好ましくは0.5〜6gであるが、これら摂取量の範囲外を用いることも可能である。
尚、使用される成分b)1日当たり摂取量の総量は、通常0.5〜9gであり、好ましくは0.5〜6gであるが、これら摂取量の範囲外を用いることも可能である。
成分b)の摂取量を増やすことは治療効果の点で有効ではあるものの、成分b)の摂取量が多すぎると体内で有害なNOxを生じる場合がある。このようにして過剰のNOxが生じた場合、それは尿中に排出されるので、尿中のNOx量を観察することにより、成分b
)の投与量が過剰となることを容易に防ぐことができる。この尿中のNOx量の観察は、
NO2とNO3とを定量するか、またはテステープで簡単に行うことができる。即ち、成分b)の投与は、最初に3g/日から開始し、所望の効果が得られない場合には、尿中のNOx量を観察しつつ投与量を増加させ、該NOx量が増大した場合には投与量を減少させることにより行うことができる。なお、この投与量は経口投与の場合である。
尚、成分b):成分a)の質量比は通常、1:0.006〜6、好ましくは1:0.2〜6である。
本発明に使用される成分c)としてのアスコルビン酸は、天然由来又は合成品の何れも使用することができるが、その純度は、好ましくは、97%以上である。
アスコルビン酸の毒性も極めて低い。
使用するアスコルビン酸の量は、成分b)との質量比(成分b):成分c))において、1:0.2〜20、特に1:0.2〜6、例えば1:0.2〜0.25、1:0.2〜1/3、1:0.2〜1/2、1:0.2〜1、1:0.2〜4または1:0.2〜6の範囲である。
大部分の人にとって、アスコルビン酸の最適摂取量は、一般に薦められている摂取上限値をはるかに上回っている。個々の摂取者は、快適な健康維持のためにアスコルビン酸の経口摂取量を任意に選択しても良い。かくして、上述の質量比(成分b):成分c))1:0.2〜0.25に加えるアスコルビン酸の質量を任意に選択して摂取できる。成分c)/成分b)の質量比の上限値は、〔(成分c)1日当たり経口摂取量の上限値)/(成分b)1日当たり摂取量の下限値)〕の比率により決めることができる。通常は、〔(成分c)1日当たり摂取量の上限値=10g(体重約70kgの成人の場合))/(成分b)の1日当たり経口摂取量の下限値=0.5g(体重約70kgの成人の場合))〕=20であり得るので、成分c)/成分b)の質量比の上限値は20であり得る。また、成分c)(アスコルビン酸)1日当たり常用量は、2〜3gと言われている(成分c)(2〜3g)/成分b)(0.5g)の質量比=4〜6に相当する。)。従って、成分b):成分c)は、1:0.2〜20、好ましくは1:0.2〜6である。
尚、L−アルギニンは、単独では、えぐい味とえぐい感を有するものであるが、上記質量比の範囲内で混合して使用される限りにおいて、L−アルギニンのえぐい味とえぐい感は問題とならない。
また、L−シトルリンとL−オルニチンは、L−アルギニンのようなえぐい味とえぐい感を有さない。
アスコルビン酸は、RNA等の大量摂取により上昇する血液中の尿酸値を低下する傾向がみとめられる。これにより、RNA等の投与によって尿酸値が上昇する傾向のある体質の患者の場合、血中尿酸値の上昇により招くであろう痛風の症状を回避することが可能である。従って、アスコルビン酸は、痛風の発症を回避させることにも効果がある。
成分a)ないしc)の混合時と混合後の各成分の形態は、成分b)としてL−アルギニンを含む場合、固体例えば粉末であることが必須である。L−アルギニンを含む成分b)を用いて成分a)ないしc)を含む混合液(水溶液)とする場合、L−アルギニンとアスコルビン酸両成分の間でメイラード反応を起こして褐変するので好ましくない。
L−アルギニンを含む成分b)の粉末を用いて得られた成分a)ないしc)の混合粉末は、1年室温に放置しておいても殆ど乃至は全く褐変しない。
一方、L−アルギニンを含まない成分b)(即ち、L−シトルリン又はL−オルニチン
単独或いはL−シトルリン及びL−オルニチンの2化合物の混合物)を用いる場合は、メイラード反応のような不利な反応を引き起こさないため、成分a)ないしc)を含む混合液(水溶液)として使用することができる。
上記のような混合液(水溶液)は、液剤(例えば、ドリンク剤)として、また、点滴液として好ましく使用され得る。
本発明の線維筋痛症候群の治療剤、又は、血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤は、成分a)ないしc)の混合物に、医薬的に許容されるカルシウム塩およびマグネシウム塩を添加するとこれらRNA等(成分a))の薬理的活性が増強される傾向がある。これらの医薬的に許容されるカルシウム塩およびマグネシウム塩の例としては、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウムのような酸部分が薬理的に殆ど不活性であり、かつ金属イオン部分だけの活性を期待できるものである。これら塩のRNA等の総質量に対する質量比は、カルシウムおよびマグネシウム部分の質量に依存するものであり、例えば乳酸カルシウムは1〜5質量倍、硫酸マグネシウムは1〜5質量倍である。
成分b)としてL−アルギニンを含む場合、上記添加物の他に、固形ポリオール例えば、キシリトールまたはソルビトールの粉末を添加すると、アルギニンとアスコルビン酸の反応による褐変進行を更に抑制すると期待される。
本発明の治療剤は、上記成分a)ないしc)に加えて、更に、DNAを添加することもできる。前記DNAとしては、例えば、鮭由来の白子抽出物等が挙げられる。
本発明の好ましい態様として、成分a)ないしc)に加えて、更に、鮭由来の白子抽出物を含む線維筋痛症候群の治療剤が挙げられる。
また、別の好ましい態様として、成分a)ないしc)に加えて、更に、鮭由来の白子抽出物を含む血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤が挙げられる。
成分b)がL−アルギニンを含み、そのため、水を用いずに製剤化する場合の、成分a)ないしc)と上記添加物の形態は,混合するのに適している固形物例えば粉末ないし微粉末または結晶ないし微結晶または微粉末または微結晶に容易に粉砕できる塊である。また、アスコルビン酸(成分c))の形状としては、接着剤例えばコーンスターチを少量例えば3%添加して流動層造粒法により製造した細粒状粉末(例:BASF武田ビタミン株式会社製の「ビタミン顆粒−97」)も挙げうる。
使用される際の成分a)ないしc)と上記添加物の混合は通常は各成分の粉末ないし微粉末または結晶ないし微結晶を,均一な混合物が得られるように十分に攪拌または粉砕することにより行われる。混合は通常粉砕を伴う。
混合は,アスコルビン酸の湿気中での酸化を可能な限り回避するために、40%以下の低湿度下で行われる。
混合容器の内面の材質が混合成分と不活性でありかつ硬質の材質例えばセラミック例えば陶質であることが好ましい。混合容器の例としてセラミック製例えば陶製の,内面が滑面または粗面の,耐久性の高い乳鉢,臼または筒(円筒または多角筒)が挙げられる。アスコルビン酸は,鉄と反応し易いので,鉄製のカッター刃で切り砕くミル方式の混合機を使用しない方がよい。
混合は通常は常温,好ましくは10〜0.2℃で,各成分が均一に混合されるように十分に混合または粉砕される。混合時間は,各成分が互いに均一に混合されるのに足りる時
間であればよい。各成分の混合終了後の粉末混合物の粒度は、通常は50メッシュ、好ましくは100メッシュ、更に好ましくは200メッシュのふるいを通過するものである。
また、L−アスコルビン酸をコーティングで被覆し、その後にL−アルギニンと混合することもできる。この場合では、L−アスコルビン酸がコーティングにより被覆されているため、L−アルギニンと直接接触せず、メイラード反応が起こらない。該コーティングにより被覆されたL−アスコルビン酸としては、油脂で完全にコーティングしたものを用いることができる。
混合後に得られる混合物は、所望により追加の成分を加えて、そのままの形態(粉末)でまたは錠剤,粒剤、顆粒またはカプセル錠に加工して,線維筋痛症候群の治療剤、又は、血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤として使用される。例えば、上記混合物と適宜の薬理的に許容される結合剤(アラビアゴム、ソルビツト、トラガント、ポリビニルピロリドンなど)、賦形物(乳糖、砂糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビツト、グリシンなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカなど)、崩壊剤(じゃがいも澱粉など)、香料、または甘味剤(砂糖、アスパルテーム、サツカリンなど)の一種または二種から適宜選んで混合し、粉末、顆粒、錠剤またはカプセル剤などの形態をとることができる。
一方、L−アルギニンを含まない成分b)(即ち、L−シトルリン又はL−オルニチン単独或いはL−シトルリン及びL−オルニチンの2化合物の混合物)を用いる場合は、上記に加えて、更に、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの剤形を採用することもできる。
本発明の線維筋痛症候群の治療剤、又は、血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤は、該疾患の治療のために使用される他の薬剤、例えば、オピオイドアンタゴニスト、ナトリウム保持剤/ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬/ヒスタミン遮断薬、抗鬱薬、アレルギー薬、急性不安薬等と併用して使用することができる。
本発明の血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤は、脳血管、肺血管、腸に分布する血管等のあらゆる血管が対象となるため、これらの血管に障害を生じた臓器の疼痛、即ち、脳、肺、腸管、腎臓、心臓における疼痛の治療剤となり得る。
また、II型糖尿病における細小血管障害による疼痛も本発明の血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤の対象となり得る。
(RNAの製造例)
製造例1.RNAの製造
(1)ビール製造工程から回収したスラリー状の酵母を80〜200メツシユのフルイを通して固形分を除去したのち、0.5〜1%の炭酸ソーダ水溶液で洗滌後、水洗して脱苦味酵母を得
た。
(2)酵母濃度10%、食塩10%となるように加塩、加水し、加熱昇温させ2〜5時間煮沸し
た。この煮沸条件はオートクレーブ1時間処理に代替することができた。
(3)煮沸下でリボ核酸を抽出したのち、冷却し、遠心分離機等で固液分離を行い抽出液を
得た。固形分に残留するRNAは、10%食塩水を加えて洗滌し、この洗滌液を回収して先の抽出液に合わせた。
(4)この抽出液に濃塩酸を加えてpH2とし酸性下で沈澱する画分を得た。これを分離、回収したのち、苛性ソーダを加えて再度沈澱を形成した。この際、沈澱は速やかに形成されるので上澄液を除き、沈澱を遠心分離機等で回収した。得られた抽出物を98%エタノールで脱水洗滌後、適当な方法で乾燥した。
製造例2.RNAの製造
乾燥ビール酵母90kgに水450Lを加え、一定時間攪拌を行い、夾雑物を可溶化し酵母の
洗滌を行った。次いで、遠心処理して、洗滌酵母を回収し、水800L、食塩90kgを加え加
熱した。2時間煮沸後、遠心分離機で抽出液を得た。残査に残留するリボ核酸は、10%食塩水を加注し、洗滌液を回収した。この抽出液を合わせてRNAの製造例1の(4)以降と
同じ処理を行い、ビール酵母粗RNAを得た。
製造例3.RNAの製造
スラリー状のビール酵母を常法により脱苦味洗滌し、ドラムドライヤーにて120〜140℃で乾燥した。この乾燥ビール酵母に対し、95℃以上の湯を10倍量加え、5分間保持した後固液分離し、固形物を得た。この固形物に食塩と水を加え、ビール酵母固形物濃度10%、食塩濃度10%に調整し、細胞壁を破砕するために吐出圧が600kg/cm2以上になるようにホ
モジナイザーに給した。破砕された酵母を含む処理液を加熱し、2〜5時間煮沸し、RNAの製造例1の(3)以降と同じ処理を、行いビール酵母粗RNAを得た。
下表に、これら製造例で得られた粗RNAの組成の分析結果を示した。
Figure 0004521488
(ビール酵母粗RNAの急性毒性試験)
RNAの製造例1の方法に準じて取得したビール酵母粗RNA(RNAの含有量70%)のマウス(ICR系、雄と雌、各40匹)に対する経口(強制的投与による。)急性毒性試験
をした。投与前18時間絶食し、〔7500mg(RNAに換算すると5250mgである。)を50mlの水の懸濁液にしたもの〕/kgの投与量で投与した後、14日間観察したがなんらの異常を認
めなかつた。
製造例4.白子抽出物の製造
鮭由来の白子211gを粉砕し、次いでろ過し白子の皮等の固形分をろ別した。次いで、ろ液に0.14mol/l食塩水1.5lを加え、磨砕、撹拌して乳濁液とした。この乳濁液から、遠心分離により上澄液を除き、これに0.14mol/l食塩水1.5lを加え、洗浄、ろ過した。この乳濁化、遠心分離、洗浄、ろ過を2〜3回繰り返した後、さらに、エタノールで洗浄して、エタノール可溶の有機物と水分を除き、減圧下乾燥し、粉末状物として白子抽出物を得た。かくして得られた白子抽出物は淡灰白粉末であって、その化学的,物理的性質は以下のデータを示した。核酸:プロテインの比(W:W)=1.0:1.0〜
2.0:1.0、核酸含有量:25〜50%、タンパク含有量:25〜50%、灰分含有量:5〜15%、ニンヒドリン反応:陽性
実施例1
RNAの製造例1の方法に準じて取得したビール酵母粗RNA(RNAの含有量70%)粉末1g、アルギニン粉末1gとアスコルビン酸粉末0.2gを,陶磁製の乳鉢にいれ,均一に混合されるように十分に挽き混合し,粉末が42号篩(350μ)を通るようにして、組成物2.2gを得た。
製剤例1.
実施例1の方法によって得られたビール酵母粗RNA、アルギニンとアスコルビン酸の粉末混合物1.5gを一包とする。
製剤例2.
製造例1の方法によって取得したビール酵母粗RNA、アルギニンとアスコルビン酸の粉末混合物1.0gにアスコルビン酸ナトリウム3.0gを混合して一包とする。
製剤例3.
製造例1の方法によって取得したビール酵母粗RNA、アルギニンとアスコルビン酸の粉末混合物1.0gに、アスコルビン酸ナトリウム3.0g、乳酸カルシウム1.0gおよび硫酸マグネシウム1.0gを混合して一包とする。
製剤例4.
製造例1の方法によって取得したビール酵母粗RNA1.0gに乳酸カルシウム1.0gおよび硫酸マグネシウム1.0gを混合して一包とする。
製剤例5.
製造例1の方法によって得られたビール酵母粗RNA、アルギニンとアスコルビン酸の粉末混合物1.5gにサケ由来の白子抽出物(上述の白子抽出物の製造例に準じて製造した。)2g、アスコルビン酸粉末4gを添加し、混合して一包とする。
臨床例1.
43歳女性(主婦)が数年前から全身の筋肉痛があり、この痛みは徐々に増強して1980年に入ってからは動けなくなった。その間いろんな医療機関を訪ねて、神経ブロック(硬膜外神経ブロック)が行われたが効なく、自宅で安静を余儀なくされていた。
家族の方が、当院の噂を聞いたというので外来に来院、恐らく「線維筋痛症」であろうというので、実施例1で製造した組成物を1回量20gで7日間分を処方した。この疾患であれば、動けるようになるであろうと考えて処方した。
特に頚動脈や脊柱に沿って存在していた痛みがかるくなり、歩行可能となったので、本人が来院してきた。来院時の疼痛は面側大腿部に圧痛を遺すのみで歩行は可能である。
20日間は実施例1で製造した組成物を20g/日続けたが、痛みは更に軽くなったという。3週間後は隔日毎に経口的に服用し3ヶ月で完治したと思われた。所が、その後通常通りの生活を送っていたが、3ヵ月後、再発の兆がみえたので、再度加療を行い、実施例1で製造した組成物の服用を続けている。
臨床例2.
70歳女性(主婦)生来元気であったが、一年前から脊部痛があり、通常の生活には特に障害はなかったが、3ヶ月後、右眼瞼の痙攣が発生し、痛みはないが、視力が右側でみるので不自由となった。某有名眼科医院を訪れ、ボツリヌス菌毒素の注射をうけたが、極めて効果的で、その後、3ヶ月ごとに外来を訪れ、ボツリヌス菌毒素注射を続けた。所が、今迄右眼の痙攣に注意が集中してた為か脊部痛は気にかけていなかったが、急に脊部痛を強く感じるようになったという。
当院外来を訪れ、ボツリヌス注射にもかかわらず、胸脊部脊柱に沿って圧痛がある。聖マリアンヌ大学の西岡教授の提唱する大腿部に圧痛点を証明できたので、線維筋痛症と推定し実施例1で製造した組成物を3000mg、ビタミンC6000mgを内服せしめた所、3週間後脊部痛は軽減した。面側大腿部痛は僅かに圧痛点を残すのみである。
この実施例1で製造した組成物の投与を隔日毎に投与した。
この例でみられるように、局所のボツリヌス毒素の微量注射は眼瞼には効果的であるが、全身の筋肉痛には無効である。
3ヶ月毎に眼瞼注射は、実施例1で製造した組成物内服を続け始めて以降、3ヶ月毎の眼瞼注射は中止しているが、ボツリヌスは不要となり、経過良好である。
臨床例2の結果より、本発明に係る組成物は筋肉の攣縮を改善することが示された。また、本発明に係る組成物が心筋の異常を改善したことから急性の心房細動や心室細動をも予防することも予見された。
臨床例3.
45歳女性(主婦)20年前から肩こりがあり、頚性頭痛(後頭部痛)を伴う。いろんな治療を行ったが、一時的で効果はない。両腕には疼痛はなく頚腕症候群ではない。胸腹部に圧痛点はないが、下肢大腿部外側に強い圧痛を証明できた。線維筋痛症の一症状と診て実施例1で製造した組成物及びビタミンCの投与(アルギニン3000mg、ビタミンC2000mg及びRNAを含む)を開始したところ、僅か3日で外来の頭頚痛が軽減した。大腿部圧痛は残存したがかなり好転した。約3週間でこの部の圧痛は消失した。その後、この実施例1で製造した組成物及びビタミンCを中止しても疼痛はしばらくは隠れていたが、2−3週後に少し肩こりが出始めたので再度服用すると、(アルギニン3gその他)1回で消失した。従って、2〜3日毎に服用しているが、アルギニン量は3000mg(3g)を維持している。
臨床例4.
66歳男性、大会社社長、身長170cm、体重70kg。十数年前から糖尿病(以下DM)を指摘されているが、自覚症に乏しい為、食事には気をつけているやにみえるが、あまり熱心ではない。最近になって、不整脈、狭心痛らしき発作があって、来院。外来で診ると、不整脈は心房細動の為に心電図では軽度の冠不全を伴う。多忙と称して入院精査を拒否。MRIで脳、心、頚部の血管検査で冠動脈前下行枝に中程度の狭窄所見があるがアテローム変性所見なし。恐らく血管攣縮による狭心痛であろうと判断された。
実施例1で製造した組成物を3000mg、ビタミンC6000mgを内服せしめた所、不整脈、狭心痛らしき発作は全くみられなくなった。
臨床例4のような血管平滑筋攣縮による臓器の疼痛は、線維筋痛症が内臓器官に起きたものとみなすことができる。そのため、本発明に係る組成物は、線維筋痛症に卓効があるように内臓器官にも優れた効果を示したものと考えられる。
血管障害による臓器の疼痛は悉く血管に分布する平滑筋の攣縮によるものだと考えられるため、本発明に係る組成物が極めて有効であると考えられる。
臨床例4における狭心痛に対する結果から、他の器官、例えば、脳、肺、腸管、腎臓、心臓における種々の疼痛にも、また、DMによる血管系の障害に由来する疼痛にも本発明
に係る組成物が効果を示すであろうことが示唆される。
動脈などの平滑筋は本発明に係る組成物によって拡張すると考えられ、そのため全身の小動脈にも拡張作用を示し、脳血管、肺血管、腸に分布する血管は勿論、腎循環を良好にして、これにまつわる疾患例えば、脳梗塞、肺高血圧症、冠動脈に関係する狭心症、心筋梗塞、腸管動脈血行障害による腸管壊死等を予防・治療できることが期待される。
加えて、本発明に係る組成物は全く副作用を有さないという点でも優れている。

Claims (6)

  1. a)ビール酵母RNA、
    b)L−アルギニン、及
    c)L−アスコルビン酸
    を含む線維筋痛症候群の治療剤であって、
    成分b):成分c)の質量比が1:0.2〜20である線維筋痛症候群の治療剤。
  2. 前記成分b):前記成分c)の質量比が1:0.2〜6である請求項1記載の線維筋痛症候群の治療剤。
  3. 前記質量比が1:0.2〜0.25である請求項2記載の線維筋痛症候群の治療剤。
  4. a)ビール酵母RNA、
    b)L−アルギニン、及
    c)L−アスコルビン酸
    を含む血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤であって、
    成分b):成分c)の質量比が1:0.2〜20である血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤。
  5. 前記成分b):前記成分c)の質量比が1:0.2〜6である請求項記載の血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤。
  6. 前記質量比が1:0.2〜0.25である請求項記載の血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤。
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