JP6133471B2 - キサンチンオキシダーゼ阻害剤 - Google Patents

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Description

本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤に関する。
キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase、XO、XAO)は、活性酸素種を発生させるキサンチンオキシドレダクターゼの型の一つで、ヒポキサンチンをキサンチンへ酸化し、さらに尿酸への酸化を触媒する酵素である。ヒトを含む多くの生物において、プリン類の異化に重要な役割を果たす。キサンチンオキシダーゼは、スルフヒドリル基の酸化によりキサンチンデヒドロゲナーゼに可逆的に変換することが可能である。
血中における尿酸濃度の上昇は、高尿酸血症、痛風などの様々な疾病を引き起こす。このような疾病の治療のために、尿酸生成阻害剤またはキサンチンオキシダーゼ阻害剤の投与が行われている。キサンチンオキシダーゼ阻害剤には、アロプリノール、オキシプリノール、フィチン酸、フェブキソスタットなどがある。
人体に対する安全性の観点から、天然物由来のキサンチンオキシダーゼ阻害剤の開発がなされてきている。例えば、オオバナサルスベリ(バナバ)抽出物(特許文献1);ピメンタ(Pimenta officinalis)、マジョラム(Origanum majorana)、グアバ(Psidium guajava)、アニス(Pimpinella anisum)、オリーブ(Olea europaea)、トウシキミ(Illicium verum)、ナタマメ(Canavalia gladiata)、ヒソップ(Hyssopus officinalis)、ブラックカーラント(Ribes nigrum)、ビルベリー(Vaccinium myrtillus)、ヨモギ(Artemisia princeps)またはカンペシアボク(Haematoxylon campechianum L.)の抽出物(特許文献2);黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物または乾燥粉末(特許文献3);セイヨウナツユキソウ、シナモン、セドロン、イワベンケイ、紅景天、ガランガル、ナツメグ、セイヨウオトギリソウまたはブドウの乾燥物または抽出物(特許文献4);ドコウジュ、セキコウジュ、ナギナタコウジュ、レモンバーム、ローズマリー、スペアミント、ペパーミント、ウインターサボリ、キンマまたはフクマンギの植物体または抽出物(特許文献5);ヨモギ、セツレンカ、菊、グアバ、ハハコグサ、ブルーマロー、オレガノ、カキドオシ、ハッカ、ムラサキナツフジまたはピーナッツの抽出物(特許文献6);ならびに天然地衣あるいは地衣培養物の抽出物(特許文献7)が報告されている。
ところで、菱は、ヒシ科ヒシ属の浮葉植物であって、池や湖沼に自生している水生の一年草であり、その実は、古くは滋養強壮、胃腸の機能改善などの薬効から、世界各地において食用に供されていた。さらに近年は、ガン抑制の薬効の存在が数多く報告されるに至り、薬膳素材として用いられることも多くなっている(特許文献8)。また、菱実の利用または作用については、菱実抽出物の化粧料への利用(特許文献9)、ならびに菱実抽出物の抗プラスミン作用(特許文献10)、コラーゲン合成促進作用(特許文献11)、細胞賦活作用(特許文献12)、アトピー性皮膚炎改善作用(特許文献13)、白血球細胞接着抑制作用(特許文献14)、およびヒスタミン遊離抑制作用(特許文献15)が報告されている。
特開2000−290188号公報 特開2010−37335号公報 特開2011−236133号公報 特開2002−121145号公報 特開2003−252776号公報 国際公開第2009/093584号 特開平5−244963号公報 特開2011−111394号公報 特開平5−306214号公報 特開平7−188045号公報 特開平7−316063号公報 特開平8−333270号公報 特開平11−199500号公報 特開平11−236334号公報 特開2001−48766号公報
本発明は、安全性が高く、痛風または高尿酸血症の治療、改善または予防に有用なキサンチンオキシダーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
本発明は、菱実抽出物を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害剤を提供する。
1つの実施態様では、上記菱実抽出物は、菱実の熱水抽出により得られた抽出物である。
さらなる実施態様では、上記熱水抽出で設定される熱水の温度は40℃から100℃である。
本発明また、上記キサンチンオキシダーゼ阻害剤を含有する、血中尿酸値上昇抑制剤を提供する。
本発明によれば、安全性が高く、尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の予防または改善に有用なキサンチンオキシダーゼ阻害剤および血中尿酸値上昇抑制剤が提供される。
高尿酸血症誘発モデルラットに菱実熱水抽出物を胃内投与したときの血清中の尿酸濃度を示す。
本明細書中において、「菱」とは、ヒシ科(Trapaceae)ヒシ属(Trapa)に属する水生の一年草をいう。「菱」としては、オニビシ(Trapa natans)、ヒシ(Trapa japonica)、ヒメビシ(Trapa incisa)、トウビシ(Trapa bicornis)などの種が挙げられるが、特に限定されることなく、抽出の材料としては、任意の種が用いられ得る。オニビシは、大形種であって収穫される実が他の種類の菱と比較して大きいため、抽出の材料として特に好適である。
菱実は、略三角形の外観形体を有する。実の大きさは種類に依存するが、オニビシの場合、最長辺が5cm程度、厚さが1cm程度である。抽出に用いる菱実は、収穫直後のものであっても、菱実にとって通常の保管条件下および期間の間、保管されたものであってもよい。菱実は硬質の外殻を備える。菱実の含有成分としては、デンプン、ポリフェノール類などが挙げられる。
菱実は、抽出に際し、外殻を取り除くことなく適度の大きさに粉砕して使用してもよい。あるいは、菱実は外殻のみを分離して、分離した外殻のみを適度な大きさに粉砕して使用してもよい。なお、菱実の外殻のみを用いる場合は、粉砕前または粉砕後に当業者に周知の手段を用いて乾燥を行い、含有する水分が取り除かれていてもよい。粉砕法は、例えば、粉砕機や摩砕機を使用して微粉末化または微粒化するなどの手段を含む。必要に応じて、破砕処理前に洗浄する。抽出前に、特に破砕処理後の物質が凝集する場合、超音波処理を行い得る。
本発明における抽出物としては、菱実の粉砕物を圧搾抽出することにより得られる搾汁、抽出溶媒による粗抽出物、ならびに粗抽出物を各種クロマトグラフィー(分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなど)、限外濾過などで濃縮または精製して得られた抽出物画分などが用いられ得る。これらを単独で用いてもよく、また2種以上混合して用いてもよい。
抽出溶媒としては、水、親水性有機溶剤、含水有機溶剤、親油性有機溶剤が挙げられる。親水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノールなどが挙げられる。含水有機溶剤としては、含水メタノール、含水エタノール、含水アセトンなどが挙げられる。親油性有機溶剤としては、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−アミルアルコール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、塩化メチレン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。好ましくは、菱実の粉砕物から、水、アルコール、またはこれらの混合液を用いて得られた抽出物が用いられ得る。より好ましくは、菱実の粉砕物から、水を用いて得られた抽出物が用いられ得る。水としては、水道水、純水、イオン交換水、蒸留水などが挙げられるが、特に限定されない。
抽出に用いる溶媒の容量(含水性有機溶剤の場合は水中の有機溶剤の濃度も)、抽出の処理温度および時間などについては特に制限はない。抽出溶媒に水を用いる場合、方法としては、熱水抽出法および冷水抽出法が挙げられる。熱水抽出法としては、上記材料を熱水に浸漬する方法または蒸気で蒸す方法が挙げられる。熱水の温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは70〜100℃であり、熱水の処理時間は、好ましくは10〜120分、より好ましくは20〜40分である。熱水処理の場合には、高圧処理を併用してもよい。蒸気で蒸す場合には、沸騰した湯を用いて蒸し、蒸す時間は、好ましくは10〜120分、より好ましくは30〜60分である。冷水抽出法としては、冷水あるいは他の成分を加えた水溶液に上記材料を浸漬する方法が挙げられる。冷水の温度は、好ましくは0〜40℃、より好ましくは10〜40℃であり、処理時間は、好ましくは10〜240分、より好ましくは60〜120分である。
抽出後、遠心分離、濾過などの適当な分離手段により沈殿物または不溶性画分を除き、上清または可溶性画分を回収し得る。さらに、上記抽出後の沈殿物または不溶性画分について再度同様の抽出処理を行って、上清または可溶性画分を回収することもできる。
菱実抽出物は、さらに、乾燥、粉砕などの処理に供してもよい。乾燥法としては、公知の任意の方法が用いられ得るが、例えば、風乾法、加熱乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法などが挙げられる。菱実抽出物に、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン)を添加したものをスプレードライなどにより乾燥し得る。粉砕法は、上記の通りである。
菱実抽出物は、液状または溶媒除去した固形のいずれの形態でも用いられ得る。
菱実抽出物をそのまま、あるいは、菱実抽出物に、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、蒸留水、乳糖、デンプンなどの適当な液体または固体の賦形剤または増量剤を加えて、キサンチンオキシダーゼ阻害剤として用いられ得る。本明細書中において、「キサンチンオキシダーゼ阻害剤」とは、キサンチンオキシダーゼの作用を阻害する物質または組成物をいう。あるいは、血中尿酸値上昇抑制剤として用いられ得る。「血中尿酸値」は、血清中尿酸濃度(mg/dL)として表され得る。本明細書中において、「血中尿酸値上昇抑制剤」とは、血中の尿酸値の上昇を抑制または過剰産生された尿酸量を低下する作用を有する物質または組成物をいう。あるいは、活性酸素産生抑制剤として用いられ得る。本明細書中において、「活性酸素産生抑制剤」とは、血中、組織中、臓器中の活性酸素の上昇を抑制する作用を有する物質または組成物をいう。また、尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の予防剤または症状改善剤などとしても用いられ得る。本明細書中において、本明細書中において、疾患の「予防」とは、症状を生じさせる可能性を低下する作用をいい、「予防剤」とはそのような作用を有する物質または組成物をいう。疾患の「症状改善」とは、生じている症状を改善する作用をいい、「症状改善」はそのような作用を有する物質または組成物をいう。菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤、血中尿酸値上昇抑制剤、活性酸素産生抑制剤、尿酸過剰産生に起因する疾患の予防剤または症状改善剤(以下、まとめて「キサンチンオキシダーゼ阻害剤など」ともいう)中の菱実抽出物の量は、特に制限されないが、菱実抽出物が固形分濃度として、好ましくは0.01〜100質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらにより好ましくは0.5〜30質量%含まれる。
菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などは、飲食品および医薬品の素材として用いられ得る。菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などは、飲食品組成物(例えば、経口用サプリメントのような健康食品)および医薬品組成物に含有することができる。これらの飲食品組成物および医薬品組成物は、特に、例えば、尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の予防または改善のために用いられ得る。
飲食品組成物は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、マルチトール、ソルビトール、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、アミノ酸類、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料、保存料などをさらに適宜含有し得る。このような飲食品組成物は、用途に応じて、粉末、顆粒、カプセル、錠、シロップ、懸濁液などの形態に成形され得、飴、トローチ、ガムなどにも加工され得る。飲食品組成物(例えば、経口用サプリメント)の製造は、当業者が通常用いる方法によって行われ得る。飲食品組成物へのキサンチンオキシダーゼ阻害剤などの配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。
本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤およびこれを含有する飲食品組成物は、そのまま摂取することができ、水などの溶媒に溶かすまたは懸濁させるなどしても摂取することができ、食事の前後、または食間に経口摂取することができる。キサンチンオキシダーゼ阻害剤などまたは飲食品組成物を飲食品に添加して、飲食することもできる。あるいは、本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤およびこれを含有する飲食品組成物においては、熱水で菱実抽出物を得ることにより、いわゆる菱実の茶飲料としてそのまま飲用することもできる。
本発明の菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などまたは飲食品組成物、あるいは当該キサンチンオキシダーゼ阻害剤などを含有する飲食品は、キサンチンオキシダーゼ阻害効果および血中尿酸値上昇抑制効果を有し、さらに尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の症状の改善、予防などの効果を奏し得る。ここで、本明細書中に用いられる用語「血中尿酸値上昇抑制」とは、時間経過に伴って血中の尿酸値の上昇自体を抑制することに限定されず、このような抑制に加え、時間経過に伴って血中尿酸値の変化がないこと(すなわち、例えば尿酸値がほぼ一定をしめすこと)、および時間経過に伴って血中尿酸値が低下する場合も包含して言う。したがって、菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などを含有する飲食品は、キサンチンオキシダーゼ阻害効果、血中尿酸値上昇抑制効果、尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の症状の改善および/または予防効果を目的とし、必要に応じてその旨を表示した機能性飲食品、病者用飲食品、特定保健用食品に応用でき、その製造に使用することができる。
具体的な飲食品形態としては、例えば、米飯製品、麦製品、発酵製品、野菜製品、乳製品、菓子類、発酵飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料などが挙げられるが、これらに限定されない。キサンチンオキシダーゼ阻害剤などまたは飲食品組成物の飲食品への添加または加工は、当業者が通常用いる方法によって行われ得、配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができ、必要により、上記のような各種添加剤を配合し得る。人間以外の動物、例えば家畜またはペット用の飼料への添加も可能である。
飲食品組成物または飲食品において、本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤など、または菱実抽出物の含有量は、本発明におけるキサンチンオキシダーゼ阻害などの効果を奏する限り特に制限はなく、目的とする用途または効果に依存し得る。本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤などまたは菱実抽出物は、飲食品組成物または飲食品全量に対して、菱実抽出物の固形分濃度基準で、好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは1〜50質量%で含有される。
本発明の菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などを含有する医薬品組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害効果、血中尿酸値上昇抑制効果、および活性酸素産生抑制効果を有し、さらに尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の症状の改善および予防効果を奏し得る。菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などを含有する医薬品組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害効果、血中尿酸値上昇抑制効果、活性酸素産生抑制効果、尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の症状の改善および/または予防効果を目的とするか、あるいはこれらの効果を利用するものであり得る。
医薬品組成物は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分をさらに適宜含み得る。これらの医薬品組成物は、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤、軟膏剤などの剤型で経口的、経管的、あるいは経皮的に投与することができる。医薬品組成物の製造は当業者が通常用いる方法によって行われ得、配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤など、または菱実抽出物の医薬品組成物中の含有量は、本発明におけるキサンチンオキシダーゼ阻害などの効果を奏する限り、特に制限はない。本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤などまたは菱実抽出物は、医薬品組成物全量に対して、菱実抽出物の固形分濃度基準で、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%で含有される。
医薬品組成物の投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、所望の阻害活性などに応じて適宜選定することができる。医薬品組成物は、そのまま投与することができ、水などの溶媒に溶解または懸濁あるいは希釈させるなどしても投与することができる。例えば、経口投与の場合、一般に1日当たり0.01〜1g/kg体重が好ましく、1日数回に分けて投与してもよい。
菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤などを有効成分として含有する飲食品組成物もしくは飲食品または医薬品組成物を調製する際、他のキサンチンオキシダーゼ阻害効果もしくは血中尿酸値上昇抑制効果を奏する抽出物を併せて用いてもよい。この場合、菱実抽出物と他の抽出物との配合割合に特に制限はないが、菱実抽出物の固形分として質量割合で通常約1:9〜9:1である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(調製例1:オニビシ由来菱実熱水抽出物)
オニビシの実(福岡県柳川市産)を十分に清浄水で洗浄した後、ミキサーで粉砕した。次いで、この粉砕した実に該実の質量の5倍の質量の純水を加え、5分間超音波処理した。超音波処理後、これを95℃以上に加熱して沸騰させ、その後加熱を1時間続けた。次いで、これを冷却した。これを3000rpmにて20分間遠心分離し、生じた上清を採取し、凍結乾燥した(「菱実エキス全体」)。
上記上清をスピンタイプ限外濾過用具(Vivaspin;GEヘルスケア社製)に供し、分子量30000を超える画分の溶液を採取し、凍結乾燥した(「菱実エキスMW>30000」)。さらに、濾液から分子量10000を超える画分の溶液を採取し、凍結乾燥した(「菱実エキス10000<MW≦30000」)。さらに、濾液を分子量3000を超える画分と分子量が3000以下の画分とに分離し、さらにそれぞれの溶液を凍結乾燥した(それぞれ、「菱実エキス3000<MW≦10000」および「菱実エキスMW≦3000」)。
(調製例2:ヒメビシ由来菱実熱水抽出物)
ヒメビシの実(福岡県柳川市産)を出発材料に用いた以外は、実施例1と同様にして、全体および種々の分子量画分の抽出物を得た。
(実施例1:菱実熱水抽出物のキサンチンオキシダーゼ阻害効果)
調製例1の全体および種々の分子量画分の抽出物(「菱実エキス全体」、「菱実エキスMW≦3000」、「菱実エキス3000<MW≦10000」、「菱実エキス10000<MW≦30000」および「菱実エキスMW>30000」)を用いて、100mg/mLの各溶液を調製した(以下、便宜上「100mg/mL菱実エキス」という)。
100mg/mL菱実エキスを1、10、または25μLのいずれか、10mmol/L キサンチン12μLおよび0.1mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH 8.1)(反応液の最終合計容量が1000μLとなる容量:973、964、または949μL)をまず試験管に入れ、次いで0.1 Unit/mLバターミルク由来キサンチンオキシダーゼ14μLを入れ、反応を開始させた(用いた試薬は全て和光純薬株式会社より購入)。よって、反応液中の各成分の最終濃度は、菱実エキス0.1、1.0、または2.5mg/mL、キサンチン0.12mmol/L、キサンチンオキシダーゼ0.0014 Unit/mLである。ポジティブコントロールとして、1mmol/Lアロプリノール(和光純薬株式会社より購入)を用いた。この反応を37℃にて15分間行った。試験管を氷上にとり、反応を停止させ、292nmにて紫外吸光度を測定した。
この結果を以下の表1に示す。結果は、ポジティブコントロールである1mmol/Lアロプリノールのキサンチンオキシダーゼ阻害を100とした場合の割合で表した。
Figure 0006133471
「菱実エキス全体」において、キサンチンオキシダーゼ阻害効果が観察された。分子量画分の結果からは、特に「菱実エキス10000<MW≦30000」で高いキサンチンオキシダーゼ阻害効果が観察された。
調製例2の全体および種々の分子量画分の抽出物を用いて同様にキサンチンオキシダーゼ阻害効果を検討した場合も、同様の結果が得られた。
(実施例2:菱実熱水抽出物の血中尿酸値上昇抑制効果)
雄性SD系ラット(6週齢:日本クレア株式会社より購入)を1週間、馴化飼育した。実験開始の12時間前より、ラットを絶食させ、自由飲水とした。ラットの高尿酸血症の誘発には、オキソン酸を用いる方法を用いた。すなわち、ラットを、コントロール群(オキソン酸無処理群)、オキソン酸処理群(オキソン酸処理被験物質無投与群)、被験物質投与群(アロプリノール投与群、調製例1の「菱実エキス全体」、「菱実エキスMW≦3000」、「菱実エキス3000<MW≦10000」、「菱実エキス10000<MW≦30000」および「菱実エキスMW>30000」の各投与群)に分けた。オキソン酸処理群および被験物質投与群のラットには、オキソン酸カリウム(和光純薬株式会社より購入)を250mg/kg-体重となるように皮下投与した。コントロール群のラットには、同様の量の生理食塩水(PBS)を皮下投与した。オキソン酸投与1時間後、被験物質投与群のラットには、被験物質(アロプリノールは10mg/kg-体重、菱実被験物質は100mg/kg-体重)を胃内投与した。被験物質の胃内投与の2時間後、各群のマウスについてエーテル吸入麻酔下で腹部大動脈より採血した。採血した血液を、遠心により血清に分離し、各個体の血清中尿酸濃度を尿酸測定キット(尿酸C−テストワコー:和光純薬工業株式会社)で測定した。この結果を図1に示す。
図1は、高尿酸血症誘発モデルラットに菱実熱水抽出物を胃内投与したときの血清中の尿酸濃度を示す。縦軸は血清中尿酸濃度(mg/dL)を示し、横軸は、左から順に、コントロール群、オキソン酸処理群、アロプリノール投与群、菱実エキス全体投与群、菱実エキスMW≦3000投与群、菱実エキス3000<MW≦10000投与群、菱実エキス10000<MW≦30000投与群、および菱実エキスMW>30000投与群を表す(*:p<0.05、**:p<0.01)。
図1から明らかなように、高尿酸血症誘発剤であるオキソン酸カリウムを投与することにより血清中尿酸濃度は増大するが、菱実被験物質を投与することで血清中尿酸濃度の増大は抑制された。分子量画分の結果からは、特に菱実エキス10000<MW≦30000投与群で、血清中尿酸濃度の増大に対する高い抑制効果が観察された。
調製例2の実全体および種々の分子量画分の抽出物を用いて、同様に高尿酸血症誘発モデルラットを用いる血中尿酸値上昇抑制効果を検討した場合も、同様の結果が得られた。
(実施例3:菱実茶の製造)
オニビシ(福岡県産)の殻をむき、殻部分を十分に洗浄した。その後、この殻部分を0.5cm〜1.0cm角に切断した。表面温度を250℃に暖めたホットプレートに上記オニビシ殻100gを入れてふたをし、5分間加熱して炒り蒸しした。次いで、炒り蒸ししたオニビシ殻を、ペーパータオルの上に広げて冷ましながら、板の上で10分間揉んで、オニビシ殻内部に存在する水分を表面に揉み出した。表面温度を150℃に調整したホットプレートに揉み出したオニビシ殻を入れて、菜箸で絶えずかき混ぜながら、途中3回取り出して揉みながら30分間乾燥させた。その後、一旦、オニビシ殻を取り出し、ホットプレートの上にペーパータオルを敷いて、オニビシ殻を広げ、またさらに20分間ホットプレートで乾燥させた。このようにして処理したオニビシ殻茶1.5gを200mLの熱湯(100℃)に入れ、30分間蒸らし出し、飲用の菱実茶を得た。
(実施例4:菱実茶によるヒト治験)
健常な(投薬等治療中の者を除く)成人男女(年齢21.4±3.8歳)を被験者候補として選出し、当該被験者候補から、事前検診(身長・体重・血圧・血液検査および問診)により健常であることが確認された32名を選抜して被験者とした。
当該被験者について、治験開始の12時間前より、水以外の摂取を禁止した。治験開始1時間前からは水の摂取も禁止した。選抜した32名の被験者をランダムに2群に割り付け(各群16名)、各群共に、事前採血を行った。その後、対照群では水200mLとともに、菱の実茶群では実施例3で得られた菱実茶(オニビシ殻茶)200mLとともに、それぞれハンバーガー(日本マクドナルド社製メガマック(754kcal))1個を15分間かけて摂取させた。その後、両方の群の各被験者から摂取後1時間および3時間に採血し、尿酸値を測定した。なお、採血した血液中の尿酸値の測定は、株式会社SRLに委託して行った。本治験は、学校法人慶應義塾大学治験審査委員会の承認を得て行った。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0006133471
表2に示すように、水とハンバーガーを摂取した対照群の被験者での結果と比較して、実施例3で得られた菱実茶とともにハンバーガーを摂取した菱実群の被験者では、摂取前から、摂取後1時間かつ3時間経過するにつれ、尿酸値が低下しており、実施例3で得られた菱実茶が優れた血中尿酸値上昇抑制効果を有していることがわかる。
本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤または血中尿酸値上昇抑制剤は、菱実抽出物を含有する。菱実抽出物は、天然物由来であり、また、従来から食用として服用されてきたものを材料とする。本発明の菱実抽出物を含むキサンチンオキシダーゼ阻害剤または血中尿酸値上昇抑制剤は、安全性が高く、尿酸過剰産生に起因する疾患(例えば、痛風、高尿酸血症など)の治療、改善または予防効果を奏する医薬品および飲食品に有用である。

Claims (4)

  1. 菱実抽出物を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(飲食品に限る)。
  2. 菱実を熱水抽出して菱実抽出物を得る工程を含む、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(飲食品に限る)の製造方法。
  3. 前記熱水抽出で設定される熱水の温度が40℃から100℃である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤を含有する、血中尿酸値上昇抑制剤。
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