JP6904802B2 - 軽度認知障害改善用の組成物 - Google Patents

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本発明は、軽度認知障害の改善用組成物に関する。
65歳以上の高齢者の認知症患者者数と有病率の推計についてみると、2012年は認知症患者数が462万人と65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には5人に1人になると見込まれている。
健常と認知症の中間に、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:以下「MCI」)という段階(グレーゾーン)がある。MCIとは、認知機能(記憶、決定、理由づけ、実行など)のうち1つの機能に問題が生じているが、日常生活には支障がない状態である。厳密には次のように定義付けられている。
・MCI5つの定義(MCI コンセンサス会議,1999年,Chicagoで提案された「健忘型軽度認知障害の操作的診断基準」)
1.記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
2.日常生活動作は正常
3.全般的認知機能は正常
4.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
5.認知症ではない
特に、5の「認知症ではない」ことが重要なポイントである。
認知症の根本的な治療法が確立されていない現状を踏まえ、認知症へのコンバート率が高いMCIの段階を早期に見極め、早期介入を行うことが重要であると考えられている。
MCIの原因として、アルツハイマー病や脳血管障害など様々な原因が検討されているが、いまだに特定されていない。MCIから認知症へのコンバート率が非MCIのヒトに比べて高く、一方、MCIは固定した進行性の症状とは限らず、適切な治療・予防をすることで回復したり、発症が遅延したりする。したがって、早期にMCIに気づき、対策を行い、症状の進行を阻止することが重要である。近年改めて早期治療の重要性が認識されている。
現時点ではMCIに対する抗認知症薬の利用は認められていないことから、MCIに対しては食生活、運動習慣などの改善、家庭内での役割や社会との接点をなくさないなどの周囲の配慮、そして認知障害に対して有用なサプリメントの利用など様々な手段を用いた対応が必要である。
MCIを有する中高年者に、日常的に摂取できるMCI改善剤やサプリメントが提案されている。
特許文献1には、ノビレチン及びローヤルゼリーを有効成分として含む、認知障害改善剤が記載されている。
特許文献2には、フェルラ酸又はその薬学的に許容される塩と、ガーデンアンゼリカの抽出物とを、100:5〜100:40の質量比で組み合わせてなる認知症治療薬または健康食品サプリメントが記載されている。
特許文献3には、sn−グリセロール−3−ホスホコリンを有効成分として含有する、学習能力を向上させる機能性食品が記載されている。
その他にも多数の健康食品について認知症や記憶改善作用が存在するといわれているが、厳密な二重盲検比較試験によりMCI改善効果を確認できた例はない。
特許第5676881号公報 特開2012−006877号公報 特開平06−056671号公報
本発明者らは、MCIの改善作用を有する食品組成物及び健康食品の研究を行っている。この研究過程で、特定の組成のサプリメントを長期間摂取することで、MCIと診断された中高年者の認知障害及び心理行動などの関連症状が改善することを発見した。本発明はこの研究成果に基づくものである。
すなわち、本発明の課題は、新規な軽度認知障害改善作用を有する組成物を提供することである。
本発明は以下の構成である。
(1)フェルラ酸、イチョウ葉エキス、α−グリセロホスホコリンを有効成分として含有する軽度認知障害改善用組成物。
(2)軽度認知障害改善が神経心理テスト及び情動的側面に関するアンケート結果の改善である(1)に記載の組成物。
(3)一回あたりの有効量として、
フェルラ酸250〜350mg、
イチョウ葉エキス100〜140mg、
α−グリセロホスホコリン120〜180mg、を含有する(1)または(2)に記載の組成物。
本発明により、新たな軽度認知障害(MCI)改善用組成物が提供される。また本発明の組成物は、副作用の発生が少なく長期間投与に適している。
本発明の組成物とプラセボを投与したときのMini−Mental State Examination(MMSE)スコア(A)及びAlzheimer’s Disease Assessment Scale−cognitive subscale(ADAS−Jcog)スコア(B)について、摂取前値からの変化量(Δ)の推移を示すグラフである。 前期高齢者(65歳以上75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)で集団を層別したときのMMSEスコアについて、摂取前値からの変化量(Δ)の推移を示すグラフである。
本発明は、フェルラ酸、イチョウ葉エキス、α−グリセロホスホコリンを含有する軽度認知障害(MCI)改善用組成物に係る発明である。
本発明の組成物の構成成分について説明する。
フェルラ酸は通常天然抽出物として提供されている。フェルラ酸を含有する天然抽出物、特に植物抽出物としては、例えば、コーヒー、タマネギ、ダイコン、レモン、センキュウ、トウキ、マツ、オウレン、アギ、カンショ、トウモロコシ、大麦、小麦、コメ等が好ましく、特にコメが好ましい。コメとは、イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)の種実等の生又は乾燥物を意味する。
植物からフェルラ酸を抽出する方法としては、例えば、コメの糠より得られた米糠油を、室温、弱アルカリ性下で含水エタノール及びヘキサンで分配した後、含水エタノール画分に得られたフェルラ酸エステルを、加圧加熱時硫酸で加水分解し、精製して得る方法が挙げられる。また、細菌(Pseudomonas)を、フトモモ科チョウジノキ(Syzygium aromaticum MERRILL et PERRY)のつぼみ及び葉より水蒸気蒸留で得られた丁子油、又は丁子油から精製して得られたオイゲノールを含む培養液で培養し、その培養液を、分離、精製して得ることもできる。
またフェルラ酸は化学合成、例えば、バニリンとマロン酸との縮合反応によって製造することもできる(Journal of American Chemical Society,74,5346,1952)。
またフェルラ酸は、健康食品や酸化防止剤として、米糠から抽出された高純度な粉末が市販されており、これを使用することもできる。フェルラ酸は、オリザ油化株式会社、築野食品工業株式会社、株式会社岡安商店からフェルラ酸純度98%以上を含有する粉末が市販されている。
フェルラ酸の1回当たりの配合量は10〜1000mg、好ましくは50〜500mg、特に好ましくは250〜350mgである。
イチョウ(銀杏、公孫樹、鴨脚樹、学名:Ginkgo biloba)は、裸子植物の1種であり、中国原産の落葉高木であり、夏季に採取した葉を用いる。抽出効率を高めるために好ましくは乾燥させて粉砕し、その後抽出する。
抽出には、溶媒抽出や圧搾抽出等種々の抽出方法を用いることができるが、好ましくは、溶媒抽出を用いる。抽出に使用される溶媒としては、水、エチルアルコール、エーテル、アセトン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒の中から1種または2種以上選択して使用するが、安全性の見地から、水、エチルアルコールが好ましく、さらに好ましくは、水とエチルアルコールの混合物、例えば1〜99%のエチルアルコール水溶液、特に20〜80%のエチルアルコール水溶液を使用することが好ましい。
抽出方法は、植物体の粉砕物100gに対して0.1〜10リットル、好ましくは1リットルの溶媒を加え、1時間〜1週間、室温にて放置、あるいは抽出効率を高めるため攪拌する。あるいは溶媒を加温してもよい。
抽出は不溶物と抽出液を濾過あるいは沈降法等により分離して行う。好ましくは、不溶物は同様の抽出操作を繰り返し、適当な濃縮処理により、例えばエバポレーターのような減圧濃縮装置や加熱による溶媒除去などにより濾別後、濾液を濃縮し濃縮液を得ることができる。さらに濃縮液を凍結乾燥させて濃縮乾固物を得ることもできる。さらには、カラムクロマトグラフィー等各種のクロマトグラフィー等、植物成分の分離、抽出に利用される公知の方法を用いて有効成分を分画し、その純度を高めてもよい。
イチョウ葉エキスは、日本国内及び欧米においてフラボノイド配糖体24%以上、テルペンラクトン6%以上、ギンコール酸5ppm以下を規定した原料が市販されている。市販のイチョウ葉エキスとしては、丸善製薬株式会社製、タマ生化学株式会社製、株式会社常盤植物化学研究所製、松浦薬業株式会社製などを例示できる。
イチョウ葉エキスの1回当たりの配合量は10〜500mg、好ましくは60〜240mg、特に好ましくは100〜140mgである。
α−グリセロホスホコリン(以下「α−GPC」)は、コリンの前駆体で、ダイズなどに由来するホスファチジルコリンの分解生成物である。α−GPCは、グリセロールホスホリルコリンジエステラーゼ(glycerolphosphorylcholine diesterase)によってグリセロリン酸塩とコリンに代謝される。α−GPCは結晶化した高純度の精製品や、ホスファチジルコリンとの混合物など各種グレードの製品が市販されている。本発明においては、日油株式会社(商品名:ダブウェルコートGPC30:27〜33質量%含有油脂コーティング品)、H.Holstein社(商品名:PHOSAL GPC85)が使用できる。
α−GPCの1回当たりの配合量は10〜1200mg、好ましくは50〜300mg、特に好ましくは120〜180mgである。
本発明の組成物は1日1回投与することで効果を発揮する。また本発明の組成物は、MMSEのスコアが22〜26を示し、MCIと診断される中高年者に対して効果を発揮するものである。
本発明の組成物は、そのままあるいは水に溶解して飲用することができるが、好ましくは各種賦形剤を添加して製剤化する。製剤としては顆粒剤、錠剤、カプセル剤を例示することができる。
なお製剤化に当たっては、本発明の組成物の目的を阻害しない範囲で各種賦形剤や添加剤を使用することができる。具体的には、へミセルロース、リグニン、グアーガム、コンニャクマンナン、イサゴール、アルギン酸、寒天、カラギーナン、キチン、カルボキシルメチルセルロース、ポリデキストロースなどの野菜以外からとれる食物繊維や増粘剤、カルシウム、鉄、ナトリウム、亜鉛、銅、カリウム、リン、マグネシウム、ヨウ素、マンガン、セレンなどのミネラル;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、葉酸、パントテン酸などの脂溶性又は水溶性のビタミン群、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカントガム、ローカストビーンガムなどの乳化剤や分散剤、増量剤、賦形剤、保存料・酸化防止剤、風味調整剤や香料、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、コハク酸、乳酸ナトリウムなどの呈味料、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸などの酸味料、マルチトール、アスパルテームなどの低カロリー甘味料、着色剤などである。
以下に本発明の実施例及び試験例を示し、本発明をさらに説明する。
1.組成物を含むサプリメント錠の製造
本発明のサプリメント錠剤を製造した。
下記の表1に、本発明の組成物をサプリメント錠剤として投与する場合の配合組成を示す。なお表1は、サプリメント6錠当たりの含有量である。
各成分は、表1の組成比で常法に従って、混合、造粒、二次混合、打錠しサプリメント錠とした。
Figure 0006904802
2.サプリメント錠を用いたヒト臨床試験
表1の組成を有するサプリメント錠(以下「被験食品もしくはActive」)と有効成分を含有しないプラセボ錠(以下「対照食品もしくはPlacebo」)を用いたヒト臨床試験を実施した。なお試験は、ヘルシンキ宣言に則って実施した。また、試験対象者に対して試験実施前に、同意説明文書を用いて説明を行い、本人の自由意思に基づいた同意を文書により得た。
(1)対象者
被験者は年齢65歳以上の男女であって、以下の1)〜6)の選定基準を満たし、除外基準に抵触しない者とした。
選定基準
1)記憶障害の訴えが本人又は家族から認められている
2)日常生活動作は正常
3)全般的認知機能は正常
4)年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
5)認知症ではない(CDR≦0.5)
6)MMSEスコアが22〜26点、ADAS−Jcog合計スコア5〜15点のどちらか一方もしくは両方を満たす者
除外基準
1)認知障害及び認知症の予防・改善を目的とした医薬品(コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬、脳循環代謝改善薬)を使用中または使用予定の者
2)認知障害及び認知症の予防・改善を目的とした漢方薬を常用している者
3)認知障害及び認知症の予防・改善を目的とした健康食品を常用している者
4)認知障害に影響を及ぼす精神疾患を患っている者
5)精神症状により抗精神病薬の治療を受けている者
6)認知障害に影響を及ぼす代謝性疾患を患っている者
7)肝疾患、腎疾患を患っている者または腎機能が低下している者
8)2型糖尿病でHbA1c>8.4%、インスリン療法中またはインスリン分泌促進薬を服用している者
9)慢性閉塞性肺疾患で在宅酸素療法中または%FEV1<30%の者
10)本態性高血圧または高脂血症(脂質異常症)でコントロール不良の者
11)10年以内に頭部外傷を負い、手術や入院した者
12)過去に脳出血、クモ膜下出血、心肥大・心不全、虚血性心疾患、腎硬化症、大動脈解離、脳梗塞を患ったことがある者
13)悪性腫瘍の治療を受けている者
14)本試験以外の臨床試験やモニター(食品、医薬品、化粧品、塗布薬)に参加中の者または参加予定の者
15)その他、試験責任医師が被験者として不適当と判断した者
(2)試験食品
試験食品は被験食品と対照食品の2種類とした。対照食品は被験食品に使用した賦形剤(セルロース、クラスターデキストリン、デンプン、ステアリン酸カルシウム)のみを使用し、重量、外観ともに被験食品と区別のつかない製剤とした。
(3)試験デザイン
無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験とした。試験食品の摂取期間は6ヶ月とした。また被験者の背景調査として、生年月日、性別、MCIに対する通院歴、MCIに対する現在の治療方法、その他の疾病歴(現病歴)、服薬中の医薬品、常用しているサプリメント、運動習慣、登録時もしくは直近のデータがある場合は脳MRIを元にした脳萎縮の程度(normal,mild,moderate,severe)を調査した。
摂取前、摂取3ヶ月後及び摂取6ヶ月後にMMSE及びADAS−Jcogの2つの神経心理テストを実施した。
さらに、摂取6ヶ月後にMCIの情動的側面に関するアンケート(以下、「自覚症状アンケート」)を実施した。
安全性については、各被験者について
1.安全(試験期間中に有害事象が認められなかった、あるいは有害事象が見られたが試験食品との因果関係はなし)
2.安全でない(摂取期間中に副作用が見られた)
3.安全性不明(試験期間中に有害事象が見られたが因果関係が不明であった)
のいずれかの評価を試験責任医師が行った。
なお、試験期間中は、生活習慣(食事内容、運動習慣、職業・職種など)を大きく変更しないこと、体調不良や疾患などで医療機関を受診した場合は次回問診時に医師に報告すること、新たなサプリメントの使用を禁止すること、脳機能改善を目的とした医薬品(漢方を含む)を使用しないこと及び検査前日は暴飲暴食を控え十分な睡眠をとり禁酒することを指示した。
(4)統計解析
有効性の解析集団は、割付後1度でも試験食品を摂取し、3ヶ月後または6ヶ月後のデータが1つ以上ある者とした。また、安全性の解析集団は割付対象者全員とした。検定はノンパラメトリックな項目の群間比較はWilcoxonの順位和検定またはカイ2乗検定、パラメトリックな項目の群間比較はstudent t−test、群内比較はpaired t−testを用いた。統計解析ソフトはJMP 11.0(SAS社)を使用した。
3.試験結果
(1)被験者の推移
割付対象者は68名であった。介入開始後に被験食品群(以下「Active群」)において5名が脱落・中止(同意撤回(2名)、嘔気(1名)、除外基準に抵触(1名)、追跡不能(1名))、Placebo群において3名が脱落・中止(嘔気・爪の化膿(1名)、便秘・肺炎・逆流性食道炎(1名)、骨折による入院(1名))し、3ヶ月検査受験者はActive群が30名、Placebo群が30名であった。さらに、6ヶ月の検査前にActive群の2名が脱落・中止(自己都合、ストレスによるうつ傾向で認知機能低下のため中止)、Placebo群の1名が脱落・中止(ストレスによる認知機能低下及びBPSD発現のため中止)となり、6ヶ月検査受検者はActive群が28名、Placebo群が29名であった。
68名の被験者背景を下記の表2に示した。
Figure 0006904802
Active群は35名(男性16名、女性19名)で平均年齢76.1歳、Placebo群は33名(男性9名、女性24名)で平均年齢77.3歳であった。被験者の内、MCIの診断を受けて1年以内の者が45名、2年〜4年以内が22名、それ以上が1名であった。試験食品摂取前のMMSEスコアはActive群、Placebo群の順に26.9±2.2、27.8±2.1、ADAS−Jcog合計スコアは7.1±2.1、7.0±1.9でいずれも群間差はなかった。
(2)投与前後での神経心理テストスコアの変化
MMSEスコア及びADAS−Jcog合計スコアについて、摂取前値からの変化量(Δ)の推移を図1に示す。
Active群のΔMMSEスコアは、3ヶ月の時点では−0.03±0.47で摂取前値との差はみられないが、6ヶ月の時点で0.57±0.38とスコアの上昇が見られた。
一方、Placebo群は3ヶ月、6ヶ月の順に−0.43±0.46、−0.62±0.49と徐々に低下していた。
両群を比較すると、6ヶ月の時点でActive群のスコアの変化量はPlacebo群に対し高い傾向(p=0.06)であった。
(3)層別解析
さらに、前期高齢者(65歳以上75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)で集団を層別した部分集団解析を行った。
結果を図2に示す。
図2に示すとおり、前期高齢者(65歳以上75歳未満)の部分集団では、Active群は3ヶ月、6ヶ月の順に0.64 ±0.78、1.20±0.44と徐々にスコアの改善が見られ、一方Placebo群は−0.40±0.82、−0.33±0.47と摂取前値よりも低下していた。両群を比較すると、6ヶ月の時点でActive群はPlacebo群と比較して有意に高かった(p=0.03)。
また、後期高齢者(75歳以上)の部分集団においては、Placebo群では3ヶ月、6ヶ月の順に−0.45±0.57、−0.75±0.61と徐々にスコアの低下がみられるのに対し、Active群では−0.42±0.59、0.22±0.64と摂取前値のスコアが維持された。一方、ΔADAS−Jcog合計スコアは、両群ともに3ヶ月、6ヶ月と徐々にスコアの低下改善が見られ、各評価時期における群間差はみられなかった。
(4)MCIの情動的側面に関する10項目のアンケート
MCIの情動的側面に関する10項目のアンケートの結果を表3に示す。
Figure 0006904802
「自信がもどってきた」の項目において、Wilcoxonの順位和検定の結果、群間で有意な差があり(p=0.041)、「やや感じる」と回答した人数はActive群で28人中13人(46.4%)、Placebo群29人中8人(27.6%)とActive群の方がその比率は高かった。
また、「何となく感じる不安や心配が減った」、「外にでる機会が増えた」、「買い物や約束などをうっかり忘れる事が減った」の項目においても同様の傾向が見られ(検定結果はそれぞれp=0.060、0.062、0.057)、群間で有意差は無いものの「何となく感じる不安や心配が減った」において「すごく減った」または「減った」と回答した比率はActive群、Placebo群の順に46.5%、27.6%、「外にでる機会が増えた」において「すごく増えた」または「増えた」と回答した比率は39.3%、17.2%、「買い物や約束などをうっかり忘れる事が減った」において「減った」と回答した比率は42.9%、20.7%といずれもActive群の方が高い比率を示した。
(5)安全性
安全性の判定結果を表4に示す。
Figure 0006904802
両群間で安全性に差はみられなかった。
4.考察・評価
有効性評価においては、6ヶ月検査でMMSEスコアの変化量がActive群で高い傾向が示され、さらに65歳〜74歳の前期高齢者の部分集団解析ではActive群の方がMMSEスコアの変化量が有意に高いことが確認できた。
MMSEスコアにおいて年齢層による効果の差がみられたことから、被験食品の作用は年齢的に早い段階からの利用が有効である。
また、MCIによる心理的変化や行動変化に関する自覚症状アンケートでは、「自信の消失」、「不安や心配」、「外出機会の低下」、「物忘れ」といった症状の改善比率がActive群で高くみられることが確認された。認知症において、記憶障害などの中核症状だけではなく、易刺激性、焦燥・興奮、脱抑制、異常行動、妄想、幻覚、うつ、不安、多幸感、アパシー、夜間行動異常、食行動異常などの心理・行動症状(BPSD)は本人だけではなく介護者の負担の増加と社会生活を困難にする為、大きな問題となっている。したがって、認知症の治療においては心理・行動症状の改善も重要な課題とされている。同様にMCIにおいても、認知機能の低下だけではなく、それによって生じる気持ちの低下や生活上の変化がみられ、改善が求められる課題である。
本組成物はMCIの認知的側面、情動的側面の両方で効果がみられ、これは、本発明の組成物がMCIを有する中高年者にとって有用であることを裏付けるものである。
MCIと加齢に伴う健常な脳機能の変化を明確に区別する手段はなく、MCIの確定診断法は現状では確立されていない。しかし、MCIから認知症へのコンバート率が非MCIのヒトに比べて高く、一方、MCIは固定した進行性の症状とは限らず、MCIと診断されたのち知的に正常(非MCI)と診断されるケースも多く、MCIの早期発見と早期介入が重要だと言われている。したがって、MCIの概念を広く周知させ、記憶力や集中力の低下が気になり始めたら、物忘れ外来、神経内科及び精神科などを受診し早めに専門医の診断と治療を受けることが重要である。しかし、現時点ではMCIに対する抗認知症薬の利用は認められていないことから、MCIに対しては、食生活・運動習慣などの改善、家庭内での役割や社会との接点をなくさないなどの周囲の配慮、そして、認知障害に対して有用なサプリメントの利用など様々な手段を用いた対応が必要である。この目的に、本発明の組成物は最適である。

Claims (1)

  1. 一回あたりの有効量として、フェルラ酸250〜350mg、イチョウ葉エキス100〜140mg、α−グリセロホスホコリン120〜180mgを含有する前期高齢者である軽度認知障害者のMMSEスコア改善用組成物。


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