JP4520623B2 - 低血圧症予防・治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安全性に優れ、かつ優れた低血圧症の予防・治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
低血圧は、起立時のめまい、立ちくらみ等の諸症状の原因の一つとして考えられているが、高血圧症に比べ臨床的に問題視されることは少なかった。しかし、近年、生活習慣の変化やダイエットなどにより生体にストレスが多く負荷されることが多くなり、低血圧による不定愁訴が深刻な問題となっている。海外においても慢性疲労症候群の原因の一つとして神経性低血圧症による血圧調節機能の低下があきらかになっている(Energy Times;Nature's Plus(1996))。このような低血圧症の対策としては、交感神経刺激剤などによる血圧上昇作用によるものが多い。これらは主として重症低血圧症患者に適用される。
それに対して、食事療法、運動療法、飲酒・喫煙の制限などの生活習慣改善を目的とした一般療法は、軽症者から重症者までの低血圧症患者に広く適用されることから、一般療法の重要性が認識されており、なかでも食習慣の改善は重要であるといわれる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現状において低血圧症対策の目的で使用される医薬品は、有用性に関しては満足できるものが多い反面、少なからず存在する副作用のため、患者にかかる負担が大きい。また、血圧上昇作用を有するといわれている食品あるいはその有効成分についても、その有効性は必ずしも満足できるものではなく、一方、その効果が発現されるまでに、長期間を要するものが多い。
【0004】
本発明の目的は、安全性に優れ、日常的に摂取しても負担にならず、且つより高い抗低血圧作用を有する医薬品、医薬部外品、食品として有用な低血圧症予防・治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低血圧症の予防あるいは治療に有用な成分を種々探索したところ、フェルラ酸類に正常な血圧に対しては作用せずに、高血圧症に対しては高い血圧降下作用を有し、また低血圧症に対しては高い血圧上昇作用を有することを認め、血圧の調整作用を有する医薬品、医薬部外品及び食品として極めて有用であることを見い出した。
【0006】
本発明は、フェルラ酸類からなる低血圧症予防・治療剤を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においてフェルラ酸類とは、フェルラ酸、フェルラ酸塩及びフェルラ酸エステルの群を総称したものである。
【0008】
本発明で使用するフェルラ酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0009】
本発明で使用するフェルラ酸エステルは、フェルラ酸と炭素数1〜40のアルコールとのエステルであって、アルコールとしては、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニルアルコール、アリルアルコール、テルペンアルコール、ステロール、トリメチルステロール等が挙げられる。アルコールのうちで、特に不飽和テルペンアルコールが好ましい。フェルラ酸エステルのうちでオリザノールが好ましい。
【0010】
フェルラ酸類は2種以上を併用してもよく、フェルラ酸類としては、オリザノール、フェルラ酸、フェルラ酸ナトリウム等が好ましく、特にオリザノールが好ましい。
【0011】
オリザノールは、米不ケン化物中の231,291,315μmに極大吸収を持つ作用物質を総称し、2種以上の不飽和テルペンアルコール系フェルラ酸エステルの混合物である。オリザノールは玄米胚芽油等の粗精製物、精製物あるいは市販品のいずれでもよい。
【0012】
オリザノールは、動物に対し優れた成長促進作用をもち繁殖にも密接な関係をもつ有効成分で臨床実験の結果、更年期障害、肝臓障害に効果をもち末梢血管の拡張、血圧降下作用を有する。と記載がある(特公昭32−6395号公報、特公昭34−4297号公報等)。しかし、その後の研究から、オリザノールは血圧に変動を与えないという報告が(村瀬靖ら、産婦人科の実際、12,147−149(1963)、松下哲ら、臨床と研究、60,3090−3094(1983)、田口禎一郎ら、臨床と研究、66,1350−1354(1989))あり、現在までオリザノールの血圧降下等に対する報告はない。
【0013】
本発明の低血圧症予防・治療剤は、フェルラ酸類を担体中に溶解又は乳化して使用すると血圧上昇作用が顕著に発現されて好ましい。
【0014】
フェルラ酸類を溶解する担体として用いる溶解剤としては、植物油、ジグリセリド等が挙げられ、2種以上の溶解剤を併用してもよい。植物油としては、サフラワー油、ぶどう種子油、大豆油、ひまわり油、コーン油、しそ油、小麦胚芽油、ごま油、なたね油、米油、カポック油、落花生油、オリーブ油、パーム油、パームオレイン油、パームステアリン油、パーム核油、やし油等の食用油が挙げられる。
ジグリセリドとしては、これらの植物性食用油脂とグリセリンとのエステル交換反応、又は、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応等で製造されるグリセリンのジ脂肪酸エステルが挙げられる。この反応には、アルカリ触媒等を用いた反応、リパーゼ等の油脂加水分解酵素を用いた生化学反応等があるが、着色等の劣化防止の観点から生化学反応法が好ましい。
【0015】
フェルラ酸類を乳化する乳化剤としては、ポリオール脂肪酸エステル、ステアリル乳酸塩、クエン酸ステアリル、コール酸(塩)等が挙げられ、ポリオール脂肪酸エステルが特に好ましい。ポリオール脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(有機酸:酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質等が挙げられる。
【0016】
フェルラ酸類は、好ましくは、水、食用油、ジグリセリド等の担体中に溶解又は乳化して投与されるが、その際フェルラ酸類を3重量%(以下単に%と記載する)以上、好ましくは3〜20%、特に3〜10%を溶解又は乳化して投与するのがよい。
【0017】
本発明の低血圧症予防・治療剤中には、交感神経興奮剤、抗鬱剤、覚醒剤等の血圧上昇剤、ビタミンA、B1、B2、B6、C、D、E等の各種ビタミン等を併用してもよい。
【0018】
本発明の低血圧症予防・治療剤を医薬として用いる場合、上記有効成分に薬学的に許容される担体を添加して、経口用又は非経口用の組成物とすることができる。経口用組成物としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤(硬カプセル剤及び軟カプセル剤を含む)、トローチ剤、チュアブル剤、液剤(ドリンク剤)などが挙げられる。また、非経口用組成物としては、注射剤などの静脈内投与製剤、坐剤、皮膚外用剤などが挙げられる。
【0019】
本発明の低血圧症予防・治療剤を食品として用いる場合、有効成分の他に慣用の食品添加物を加えたジュース、マーガリン、マヨネーズ、牛乳、カレー、ドレッシング等の液状又は乳状又はペースト状食品、ゼリー、グミ等の半固形状食品、ガム、豆腐、サプリメント等の固形状食品、あるいは粉末状食品、あるいは食用油等いかなる形態でもよい。
【0020】
本発明に用いるフェルラ酸類の成人(体重60kg)1日あたりの有効投与量は、1日に0.001〜10g、特に0.01〜5gを摂取するようなものであることが好ましい。
【0021】
【実施例】
実施例1 脱血による低血圧ラットでの血圧低下抑制評価
実験材料及び方法
(a)使用動物
10週齢の雄性Wistar系ラットを、予備的に5日間連続で市販のラット用非観式血圧測定装置(ソフトロン社製)を用いて血圧測定することにより、ラットを血圧測定操作に十分慣れさせたのち、評価試験を開始した。ラットはすべて温度25±1℃、湿度55±10%、照明時間12時間(午前7時〜午後7時)の条件下(ラット区域内飼育室)で飼育した。
(b)投与方法及び投与量
対照区では、生理食塩水を経口投与した。試験区1では、オリザノール(オリザ油化製)を3%濃度でナタネ油由来ジグリセリド(ナタネ油由来脂肪酸とグリセリンを用いて酵素法で製造したモノグリセリド1.2%、ジグリセリド85%、トリグリセリド13.8%の混合物)に溶かし溶液を作製し、50mg/kgで経口投与した。試験区2では、フェルラ酸を0.2%濃度で生理食塩液に溶解し、50mg/kgで経口投与した。
(c)試験方法
11週齢の雄性Wistar系ラットを1群5匹で使用し、被験液投与前の尾動脈収縮期血圧を測定した。被験液投与10分後、定法に従い、総頚静脈より体重100gあたり1.7mLの血液を採取し、50分後に尾動脈収縮期血圧を測定した。
(d)統計学的処理方法
得られた試験成績は、初期血圧からの変動率(%)の平均値及び標準誤差で表してStudent's t-testを行い、有意水準は5%以下とした。
【0022】
表1に結果を示すが、オリザノール及びフェルラ酸試験区は、血圧低下の著しい抑制を認めた。
【0023】
【表1】
Figure 0004520623
【0024】
参考例
実施例1と同じ方法でオリザノールの血圧調整作用を評価した。
参考例1 正常血圧ラットにおける血圧調整作用
実験材料及び方法
(a)使用動物
15週齢の雄性WKYラットを実施例1と同様に予備飼育を行った。
(b)投与方法及び投与量
試験区1では、オリザノール5%を溶解し含有するナタネ油1重量部に、レシチン0.1%含有水溶液5重量部を加えて乳化液を作製した。試験区2では、オリザノール3%を溶解し含有するナタネ油由来ジグリセリドを作製した。試験区3では、オリザノール5%を溶解し含有するナタネ油由来ジグリセリドを作製した。対照区1では、ナタネ油1重量部に、レシチン0.1%含有水溶液5重量部を加えて乳化液を作製した。対照区2は、ナタネ油由来ジグリセリドである。
投与方法は経口投与とし、金属製胃ゾンデを用いて強制的に投与した。投与量は、15mL/kgとした。
(c)試験方法
一夜絶食した15週齢WKYを1群6匹使用した。乳剤の経口投与前と1時間後における尾動脈の収縮期血圧を測定した。
【0025】
実施例1と同様に統計処理した結果を表2に示す。いずれの区においても、正常ラットでは血圧の変動は見られなかった。
【0026】
【表2】
Figure 0004520623
【0027】
参考例2 ラットにおける血圧降下作用
実験材料及び方法
(a)使用動物
15週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)を、実施例1と同様に予備飼育を行った。
(b)投与方法及び投与量
試験区1では、オリザノール5%を溶解し含有するナタネ油1重量部に、レシチン0.1%含有水溶液5重量部を加えて乳化液を作製した。対照区1では、ナタネ油1重量部に、レシチン0.1%含有水溶液5重量部を加えて乳化液を作製した。
投与方法は経口投与とし、金属製胃ゾンデを用いて強制的に投与した。投与量は、15mL/kgとした。
(c)試験方法
一夜絶食した15週齢SHRを1群6匹使用した。乳剤の経口投与前と1時間後における尾動脈の収縮期血圧を測定した。
【0028】
実施例1と同様に、統計処理した結果を、表3に示す。対照区1に比較して試験区1は有意な血圧の降下を認めた。
【0029】
【表3】
Figure 0004520623
【0030】
参考例3 ラットにおける血圧上昇抑制作用
実験材料及び方法
(a)使用動物
5週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)を、実施例1と同様に予備飼育を行った。
(b)投与方法及び投与量
試験区1では、オリザノール5%を溶解し含有するナタネ油1重量部と、レシチン0.1%含有水溶液5重量部を加えて乳化液を作製した。対照区1では、ナタネ油1重量部に、レシチン0.1%含有水溶液5重量部を加えて乳化液を作製した。
投与方法は経口投与とし、金属製胃ゾンデを用いて強制的に投与した。投与量は10mL/kg/dayとし、週5日で4週間投与した。
(c)試験方法
6週齢SHRを1群6匹使用し、試験開始前と4週間後における尾動脈の収縮期血圧を測定した。
【0031】
実施例1と同様に統計処理した結果を表4に示す。対照区1に比較して試験区1は有意な血圧の上昇抑制が認められた。
【0032】
【表4】
Figure 0004520623
【0033】
実施例2
軟カプセル剤皮(オーバル型150mg)の中に、ナタネ油由来ジグリセリド(実施例1の試験区1で用いたものと同一物)1000mgにオリザノール50mgを溶解したものを充填し、低血圧症予防・治療剤の軟カプセル剤を製造した。
【0034】
【発明の効果】
低血圧症の血圧の低下を抑制させるとともに、低血圧症が改善され、血圧の調整ができ予防・治療用の医薬品、医薬部外品及び食品、特に健康食品として有用である。

Claims (1)

  1. フェルラ酸、フェルラ酸塩及びフェルラ酸エステルから選ばれるフェルラ酸類からなる低血圧症予防・治療剤。
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