JP4520574B2 - 中空二重壁構造体およびそのブロー成形金型 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体であって、その一方の壁と他方の壁とを中空部内で一体的につなぐ単壁構造のリブであるインナーリブを有する中空二重壁構造体およびそのブロー成形金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、建築物の内装壁、パーティション、扉、あるいは自動車用部品であるヘッドレスト、アームレスト、リヤーパーセルシェルフ、カーゴフロアボックスのリッドなどを構成するプラスチック製パネルなどのプラスチック製二重構造体は、熱可塑性プラスチックをブロー成形したものが用いられている。そして、一方の樹脂壁と他方の樹脂壁との間に補強のためのインナーリブを形成することも行われている(特開平6−134842号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平6−134842号公報に記載されているように、補強のためのインナーリブを有するプラスチック製二重壁構造体のブロー成形においては、一対の分割金型間に熱可塑性プラスチックのパリソンを配置して型締めし、他方の金型に設けたスライドコアを進出させることにより二重壁構造体の他方の壁の一部を一方の壁に接するまで突出させて両壁を溶着させてからスライドコアをキャビティ面まで後退させ、次いでパリソン内に導入される圧力流体によるブロー圧により突出させた樹脂壁を互いに溶着一体化して一方の壁と他方の壁との間に単壁構造の樹脂壁であるインナーリブを形成している。
【0004】
このように、インナーリブを有する二重壁構造体にあっては、一方の壁に対してインナーリブとなる他方の壁の一部が溶着されるので、一方の壁の表面にはインナーリブに対応する部位に溶着痕であるヒケを生じることは避けがたく、前記特開平6−134842号公報に開示する技術においても、ヒケが現れにくい構造を提案しており、それにより所期の目的を達成している。
【0005】
ところで、この種の中空二重壁構造体にあっては、図9に示すように、表裏両面とも、すなわち、その一方の壁aの表面だけでなく、他方の壁bの表面も外観性が良好であることを要するものも多いが、前記のようにスライドコアを用いてインナーリブcを形成すると、スライドコアが抜ける側の面、すなわち他方の壁bの表面にも線状溶着痕dが現れることは避けがたいので、その線状溶着痕dにより外観性が損なわれないようにすることが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、インナーリブを形成するためのスライドコアが抜ける側の他方の壁の表面に、インナーリブに対応して現れる線状溶着痕上およびその周辺に微小凹凸面であるシボ面を形成することにより、他方の壁の表面にインナーリブを形成することにより線状溶着痕が生じても、外観性が損なわれることがなく、一方の壁の表面だけでなく他方の壁の表面の外観性にもすぐれた中空二重壁構造体と、その製造に用いるブロー成形金型を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、請求項1ないし5記載の手段を提案する。すなわち、請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体であって、先端面にシボ形成面を有するスライドコアにより一方の壁と他方の壁からなる二重壁構造の他方の壁の一部を一方の壁に接するまで突出させ、かつその突出部分を互いに溶着一体化して中空部内に隠れた単壁構造のリブであるインナーリブを形成し、他方の壁の表面には、上記インナーリブに対応して現れる線状溶着痕上およびその周辺に前記スライドコアの先端面により微小凹凸面であるシボ面を形成し、インナーリブに対応して線状溶着痕が現れる他方の壁の表面には、スライドコアの先端面により線状溶着痕上およびその周辺に形成されるシボ面を含めて略全体にわたってシボ面を形成した中空二重壁構造体において、上記他方の壁のインナーリブに対応するシボ面の周囲にそれより外方に広がる面との間との区分を成すシボ無し部を形成したことを特徴とする中空二重壁構造体である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の中空二重壁構造体において、シボ無し部の幅は、0.6〜1.0mmであることを特徴とする中空二重壁構造体である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の中空二重壁構造体において、インナーリブに対応する部位を凹溝状に形成したことを特徴とする中空二重壁構造体である。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の中空二重壁構造体をブロー成形するためのブロー成形金型であって、中空二重壁構造体の一方の半体を成形するキャビティを有する一方の金型と、その他方の半体を成形するキャビティを有する他方の金型の一対の分割金型からなり、他方の金型はそのキャビティを略全面にわたってシボ形成面とし、他方の金型には中空二重壁構造体の他方の半体となる樹脂壁の一部を一方の半体となる樹脂壁に接するまで突出させて両樹脂壁を溶着させる他方の金型のキャビティに対して進退自在で、かつ先端面にシボ形成面を有するとともに、その先端面の両側端縁部位、他方の金型のスライドコアの先端両側端縁との境界部位またはその両者にわたる部位を所要幅のシボ無し部形成面としたスライドコアを備えており、上記スライドコアを後退させた状態でインナーリブに対応して現れる線状溶着痕上およびその周辺にスライドコアの先端面により微小凹凸面であるシボ面を形成するとともに上記インナーリブに対応するシボ面の周囲にそれより外方に広がる面との間との区分を成すシボ無し部を形成するようにしたことを特徴とするブロー成形金型である。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のブロー成形金型において、シボ無し部形成面の幅は、0.3〜0.5mmであることを特徴とするブロー成形金型である。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る中空二重壁構造体であるパネル状のもので側面壁および背面壁を構成した洗面台の全体斜視図、図2は同上シンク体を外して示す分解斜視図、図3は図1および図2に示す洗面台の側面壁を成すパネル状の中空二重壁構造体の一部を示す断面図、図4は図3に示す中空二重壁構造体のブロー成形態様を示す断面図、図5(a),(b)は図4に示すブロー成形において用いる一対の分割金型のうちスライドコアを備えた他方の金型の一部を示す斜視図であって、(a)はスライドコアを進出させた状態、(b)は後退させた状態を示す。図6は図5に示す他方の金型であって他の実施の形態を示す一部の斜視図、図7は図6に示す金型を用いてブロー成形した中空二重壁構造体を示す一部の斜視図である。図8は本発明の他の実施の形態を示す中空二重壁構造体の一部を示す斜視図である。
【0013】
図1および図2において、1は洗面台、2はそのキャビネット本体であって、キャビネット本体2の上面には、洗面用のシンク3を備えたシンク体4が組み付けられている。5は給水蛇口、6は排水口である。キャビネット本体2の前面には、左右に開閉自在の扉7が備えられている。8は手掛部である。キャビネット本体2は、洗面シンク3の形状に応じて前面側中央に膨出する弯曲状に形成されており、左右の扉7は、キャビネット本体2の上記形状に合うように開閉側が曲面状に形成されている。
【0014】
キャビネット本体2の両側面壁9,9および背面壁10は、図2に示すように、本発明に係るパネル状の中空二重壁構造体11によって構成されている。すなわち、このパネル状の中空二重壁構造体11は、中空二重壁構造の一方の壁12と他方の壁13とが中空部14をおいて対向しており、一方の壁12と他方の壁13との間には、中空部14内で一体的につなぐ単壁構造のインナーリブ15が形成されている。
【0015】
図3に示すパネル状の中空二重壁構造体11は、図4に示すように、熱可塑性プラスチックをブロー成形したものである。図4に示すように、ブロー成形金型16は一対の分割金型の一方の金型17および他方の金型18からなり、一方の金型17には中空二重壁構造体11の一方の壁12を成形するキャビティ19を、他方の金型18には中空二重壁構造体11の他方の壁13を成形するキャビティ20を有している。他方の金型18には、中空二重壁構造体11の他方の壁13から一方の壁12に向けてインナーリブ15を突出形成するためのスライドコア21がキャビティ20に対して進退自在に設けられている。
【0016】
中空二重壁構造体11をブロー成形するには、図4に示すように、ブロー成形金型16を開いてその間にパリソン22を配置して型締めをし、次いでスライドコア21を進出させて他方の壁13の一部を一方の壁12に接するまで突出させた後、スライドコア21を後退させてその突出部分をブロー圧により互いに溶着一体化して中空部14内に隠れた単壁構造のインナーリブ15を形成する。図4はスライドコア21を突出させた後、後退させた状態を示している。
【0017】
図4に示す態様によりブロー成形された中空二重壁構造体11には、そのスライドコア21が抜ける側の面、すなわち他方の壁13の表面には線状の溶着痕23が現れるが、その線状溶着痕23により外観性が損なわれないように、線状溶着痕23に沿ってその周辺に微小凹凸面であるシボ面が形成される(図7参照)。
【0018】
図5に示すように、本発明に係るブロー成形金型16においては、スライドコア21の先端面がシボ形成面24を成しているとともに、図6に示すように、その先端面の両側端縁からそれぞれ0.3〜0.5mm幅のシボ無し部形成面25を成しており、他方の金型18のキャビティ20もシボ形成面24を成している。図6に示す実施の形態においては、スライドコア21の先端面の両側端縁部位にシボ無し部形成面25を、さらに他方の金型18の上記スライドコア21の先端両側端縁との境界部位にもシボ無し部形成面26をそれぞれ設けている。
【0019】
したがって、図5および図6に示すブロー成形金型16を用いてブロー成形された中空二重壁構造体11には、図7に示すように、他方の壁13の表面のインナーリブ15に対応する部位にシボ面27が形成され、かつ上記シボ面27の両側にはシボ無し部28が形成されるとともに、他方の壁13の表面にもシボ面29が形成される。
【0020】
図8に示す中空二重壁構造体11は、図7に示すものの他例であって、他方の壁13の表面のインナーリブ15に対応する部位を浅い凹溝30に形成してその底面をシボ面27とし、凹溝30の立ち上げ面とそれに連なって広がる面との境界線の部分をシボ無し部28としたものである。
【0021】
本発明に係る中空二重壁構造体11を構成する熱可塑性プラスチックは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、さらにはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテルなどのエンジニアリングプラスチックスなどのブロー成形可能な樹脂である。
【0022】
本発明に係る中空二重壁構造体11は、他方の壁13の表面にインナーリブ15に対応して現れる線状溶着痕23に沿ってその周辺にシボ面27が形成されているので、他方の壁13の表面に線状溶着痕23が生じていても、少なくともその周辺に形成されたシボによって外観性が損なわれることがなく、表裏両面とも外見性にすぐれたものとなる。
【0023】
図7または図8に示す実施の形態のものにあっては、インナーリブ15に対応する部位のシボ面27とそれより外方に広がる面との間がシボ無し部28で区分された形状を成しているので、形態が多様化して外観の装飾性がすぐれている。また、スライドコア21と他方の金型18のキャビティ20との境界部分にシボ無し部形成面25,26に対応してシボ無し部28が形成されることにより、スライドコア21の後退にともなって樹脂の移動が生じても、スライドコア21と他方の金型18のキャビティ20との境界部分が平坦に成形されるので、その境界部分もシボ面とする場合のような微小凹凸の形態に乱れが生ぜず、外観性にすぐれたものを容易に得ることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、インナーリブを形成するためのスライドコアが抜ける側の他方の壁の表面に、インナーリブに対応して現れる線状溶着痕上およびその周辺に微小凹凸面であるシボ面を形成することにより、他方の壁の表面にインナーリブを形成することにより線状溶着痕が生じても、外観性が損なわれることがなく、一方の壁の表面だけでなく他方の壁の表面の外観性にもすぐれた中空二重壁構造体と、その製造に用いるブロー成形金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る中空二重壁構造体であるパネル状のもので側面壁および背面壁を構成した洗面台の全体斜視図である。
【図2】 図1に示す洗面台からシンク体を外して態様の分解斜視図である。
【図3】 図1および図2に示す洗面台の側面壁を成すパネル状の中空二重壁構造体を示す一部の断面図である。
【図4】 図3に示す中空二重壁構造体のブロー成形態様を示す断面図である。
【図5】 図4に示すブロー成形において用いる一対の分割金型のうちスライドコアを備えた他方の金型の一部を示す斜視図であって、(a)はスライドコアを進出させた状態、(b)は後退させた状態を示す。
【図6】 図5に示す他方の金型であって他の実施の形態を示す一部の斜視図である。
【図7】 図6に示す他方の金型を用いてブロー成形した中空二重壁構造体を示す一部の斜視図である。
【図8】 本発明の他の実施の形態を示す中空二重壁構造体の一部を示す斜視図である。
【図9】 従来の中空二重壁構造体についてその問題点を説明するための一部破断した斜視図である。
【符号の説明】
1 洗面台
2 キャビネット本体
3 シンク
4 シンク体
5 給水蛇口
6 排水口
7 扉
8 手掛部
9,9 両側面壁
10 背面壁
11 中空二重壁構造体
12 一方の壁
13 他方の壁
14 中空部
15 インナーリブ
16 ブロー成形金型
17 一方の金型
18 他方の金型
19 キャビティ
20 キャビティ
21 スライドコア
22 パリソン
23 線状溶着痕
24 シボ形成面
25 シボ無し部形成面
26 シボ無し部形成面
27 シボ面
28 シボ無し部
29 シボ面
30 凹溝
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体であって、先端面にシボ形成面を有するスライドコアにより一方の壁と他方の壁からなる二重壁構造の他方の壁の一部を一方の壁に接するまで突出させ、かつその突出部分を互いに溶着一体化して中空部内に隠れた単壁構造のリブであるインナーリブを形成し、他方の壁の表面には、上記インナーリブに対応して現れる線状溶着痕上およびその周辺に前記スライドコアの先端面により微小凹凸面であるシボ面を形成し、インナーリブに対応して線状溶着痕が現れる他方の壁の表面には、スライドコアの先端面により線状溶着痕上およびその周辺に形成されるシボ面を含めて略全体にわたってシボ面を形成した中空二重壁構造体において、
上記他方の壁のインナーリブに対応するシボ面の周囲にそれより外方に広がる面との間との区分を成すシボ無し部を形成したことを特徴とする中空二重壁構造体。 - 請求項1記載の中空二重壁構造体において、シボ無し部の幅は、0.6〜1.0mmであることを特徴とする中空二重壁構造体。
- 請求項1または2記載の中空二重壁構造体において、インナーリブに対応する部位を凹溝状に形成したことを特徴とする中空二重壁構造体。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の中空二重壁構造体をブロー成形するためのブロー成形金型であって、
中空二重壁構造体の一方の半体を成形するキャビティを有する一方の金型と、その他方の半体を成形するキャビティを有する他方の金型の一対の分割金型からなり、
他方の金型はそのキャビティを略全面にわたってシボ形成面とし、
他方の金型には中空二重壁構造体の他方の半体となる樹脂壁の一部を一方の半体となる樹脂壁に接するまで突出させて両樹脂壁を溶着させる他方の金型のキャビティに対して進退自在で、かつ先端面にシボ形成面を有するとともに、その先端面の両側端縁部位、他方の金型のスライドコアの先端両側端縁との境界部位またはその両者にわたる部位を所要幅のシボ無し部形成面としたスライドコアを備えており、
上記スライドコアを後退させた状態でインナーリブに対応して現れる線状溶着痕上およびその周辺にスライドコアの先端面により微小凹凸面であるシボ面を形成するとともに上記インナーリブに対応するシボ面の周囲にそれより外方に広がる面との間との区分を成すシボ無し部を形成するようにしたことを特徴とするブロー成形金型。 - 請求項4記載のブロー成形金型において、シボ無し部形成面の幅は、0.3〜0.5mmであることを特徴とするブロー成形金型。
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