JP4220647B2 - 中空体の製造方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空体であってその一方の壁と他方の壁とを中空部内で一体的につなぐリブを有する中空体の製造方法およびその装置に関する。
【0002】
本発明に係る中空体は、空調用などの各種ダクト、住宅設備品、家具のパネル、家電製品のハウジング、事務機器のハウジング、自動車用品のパネルなどに用いられるものである。
【0003】
【従来の技術】
住宅設備品としては、浴室用パネル、洗面台、壁材、間仕切り、玄関扉、空調ダクトなどであり、家具のパネルとしては、机の天板、仕切用パネル、本棚などである。また、家電製品のハウジングとしては、冷蔵庫のハウジング、テレビのハウジングなどである。事務機器のハウジングとしては、複写機のハウジングおよびその扉などである。自動車用のパネルとしては、コンソールボックスリッド、ボンネット、ドアなどである。
【0004】
そして、住宅設備品、家具のパネル、家電製品のハウジング、事務機器のハウジング、自動車用品のパネルやダクトなどは、高い剛性を要求されることが多いので、その用途に供される中空体は、一方の壁と他方の壁とを中空部内で互いにつなぐリブにより一体化した構造のものが用いられており、特に両面の外観性を重視するものでは、ブロー成形において一方の壁と他方の壁とを他方の壁の一部を一方の壁に接するまで突出させて中空部内で一体的につなぐリブ、いわゆるインナーリブを有する構造のが用いられる(特開平5−254001号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の中空二重壁構造体のインナーリブは、一対の分割金型間に熱可塑性樹脂のパリソンを配置して型締めし、他方の金型に設けたスライドコアをキャビティ面から突出させるか、型締め前にスライドコアをキャビティ面から突出させておくことによって、型締時に他方の壁の一部を一方の壁に接するまで突出させて両壁を溶着させてからスライドコアを他方の金型のキャビティ面まで後退させたうえ、ブロー圧により上記突出させた壁の側面を互いに溶着して一方の壁と他方の壁との間に一体的なインナーリブを形成する経過をたどるので、スライドコアを後退させる過程で突出させた壁をスライドコアの後退方向に引きずる現象を呈する。
【0006】
このため、特に中空体の厚みが大きい場合には、中空部内に形成されるインナーリブが部分的に薄肉となったり孔があくなどの成形不整が生じて、インナーリブによる補強効果が著しく低下する。そして、インナーリブを片方の壁から形成する成形方法では、中空二重壁構造体の厚みが30mmまで、両方の壁から形成する方法でも40mmまでがインナーリブを適正に形成できる限界であることが分かった。
【0007】
そこで、本発明は、このような技術上の限界を超越しようとするするものであって、スライドコアを挟む位置にサポートコアを設けて、サポートコアを突出位置に残してスライドコアを後退させるか、あるいはサポートコアをスライドの後退より遅れて後退させることにより、パリソンのスライドコアにより突出させた壁部分をサポートコアで支える状態として、スライドコアの後退にともなってパリソンの突出した壁部分の引きずり現象を無くし、前記スライドコアにより突出させた壁部分の側面をブロー圧により互いに溶着して一方の壁と他方の壁との間に一体的なリブを形成することにより、全体に適正な肉厚で均整のとれたインナーリブが形成できて、剛性および強度性にすぐれた中空体を製造することができる中空体の製造方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る中空体の製造方法は、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空体を製造する方法であって、一対の分割金型には、一方の壁と他方の壁とを中空部内で互いに一体的につなぐリブを形成するためのスライドコアと、このスライドコアを挟む位置にサポートコアを備えており、上記一対の分割金型間に、スライドコアとサポートコアをキャビティ面から突出させた状態で熱可塑性樹脂のパリソンを配置して型締めして、パリソンをスライドコアおよびサポートコアにより突出させた壁部分を対向するパリソンに溶着させ、次いでスライドコアを後退させてパリソン内に圧力流体を導入してパリソンを一対の分割金型のキャビテイ面に沿わせた形状に成形するとともに、前記スライドコアにより突出させた壁部分の側面をブロー圧により互いに溶着して一方の壁と他方の壁との間に一体的なリブを形成することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る中空体の製造方法は、請求項1記載の手段において、サポートコアをキャビティ面から突出させたままでパリソン内に圧力流体を導入してブロー成形することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る中空体の製造方法は、請求項1記載の手段において、サポートコアをスライドコアに遅れて後退させることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る中空体の製造装置は、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空体を製造する装置であって、一方の壁と他方の壁とを中空部内で互いに一体的につなぐリブを形成するスライドコアとこのスライドコアを挟む位置にサポートコアを備えた一対の分割金型により構成され、スライドコアは金型のキャビティ面に対して突出、後退させる構成であり、サポートコアはキャビティ面から突出したまま、またはスライドコアの後退より遅れて後退させる構成であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係る中空体の製造装置は、請求項4記載の構成において、スライドコアは、その表面にパリソンに対して滑りやすいフッ素被膜処理を施したものであることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態に係る中空体の一例として空調用のダクトを示す斜視図である。図2ないし図9は本発明の一実施の形態に係る中空体のブロー成形態様を示し、図2は開いた一対の分割金型間にパリソンを配置した様態をダクトの側面側からみた断面図、図3は図2の状態から型締めをした状態を示す断面図、図4は図3に対応する水平断面図、図5はスライドコアを後退させてブロー成形した状態を示す断面図、図6は図5に対応する水平断面図、図7はブロー成形後型開きをした状態を示す断面図、図8は他の実施の形態を示す図3に対応する断面図、図9は図8の状態からスライドコアの後退に遅れてサポートコアを後退させた状態を示す断面図である。図10は本発明のさらに他の実施の形態を示すダクトの部分図である。
【0014】
図1において、1はダクトであって、このダクト1は熱可塑性樹脂をブロー成形して構成されるものである。ダクト1を構成する一方の壁2と他方の壁3とは、一方の壁2および他方の壁3の両方から互いに突き合うように形成したインナーリブ4により中空部5内で一体化されている。6,6はダクトの接続部である。ダクト1の上記インナーリブ4を形成している部位において一方の壁2と他方の壁3には浅い凹陥部7が形成されており、インナーリブ4の幅方向の両側部には細長い空洞部8,8が形成されている。
【0015】
本発明に係る中空体であるダクト1を構成する熱可塑性樹脂は、ブロー成形可能なものであればよいが、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂などが好適である。
【0016】
本発明に係るダクト1は、図2ないし図7に示すブロー成形装置により、熱可塑性樹脂をブロー成形して製造される。これらの図において、一対の分割金型は、一方の金型11と他方の金型12からなり、一方の金型11は中空二重壁構造体1の一方の壁2を、他方の金型12は他方の壁3を成形するキャビティを有している。そして、一方の金型11および他方の金型12は、インナーリブ4を形成するためのスライドコア13,13を備えており、各スライドコア13を挟む位置には一対のサポートコア14,14を設けている。この一対のサポートコア14,14は、一方の金型11および他方の金型12のキャビティからスライドコア13の突出分と同じ長さだけ常に突出しているものである。
【0017】
各スライドコア13は、その表面にパリソンに対して滑りやすいフッ素樹脂からなる被覆層を形成してもよい。このフッ素系樹脂の被膜層は、スライドコア13の表面を粗面にしてその表面にフッ素系樹脂の被膜層を形成すれば、被膜層を強固に形成することができる。
【0018】
上記被膜層は、フッ素系樹脂からなる薄層のほか、フッ素系樹脂と無電解ニッケルなどのメッキ液とを処理液中で共析させ、その処理液を摺動金型の表面に被着し焼成して被膜層とすることができる。また、スライドコア13の表面に無電解ニッケル膜を形成してその無電解ニッケル膜にフッ素系樹脂を含浸させることにより被膜層とすることができる。
【0019】
上記一対の分割金型によりダクト1をブロー成形するには、開いた一方の金型11と他方の金型12との間にパリソンaを配置し(図2)、スライドコア13を進出させた状態で一対の分割金型を型締めする(図3)。そして、このように型締めをすると、パリソンaの一方の壁2となる部分と、他方の壁3となる部分の一部はスライドコア13,13により中空部5内で互いに突き合わうまで突出し、その突出した壁15,15の突き合わせ頂端面が互いに溶着する。
【0020】
次いで、スライドコア13を後退させるとともにパリソンa内に圧力流体を導入してパリソンaを一対の金型のキャビテイ面に沿わせた形状に成形するが、スライドコア13を挟む位置にはサポートコア14,14が突出したままであるので、スライドコア13の後退にともなってパリソンaのスライドコア13により突出させた壁15,15が引きずられる現象を生じない。
【0021】
このため、ブロー成形工程において、インナーリブ4となる突出した壁15,15は、ダクト1の厚みが大であっても、全体に適正な肉厚で均整のとれた形態で成形されるので、剛性および強度性にすぐれたダクト1を製造することができる。
【0022】
なお、ブロー成形されたダクト1は、一対の分割金型を冷却してから型開きして取り出す(図7)。
【0023】
図8および図9に示す他の実施の形態においては、各スライドコア13に対するサポートコア14,14がキャビティ面から突出、後退する構成であって、スライドコア13より遅れて後退させるようになっているが、スライドコア13の後退中は、パリソンaのスライドコア13により突出させた壁15,15がサポートコア14,14により支えられ続けるので、前記一実施の形態の場合と同様に、インナーリブ4は全体に適正な肉厚で均整のとれた形態に成形される。そして、この実施の形態のように、サポートコア14,14の後退によってブロー成形工程でパリソンaがサポートコア14,14により生じた空洞を埋めつくすので、前記一実施の形態のようにダクト1に空洞部8,8が生じない。
【0024】
図10に示すダクト1は、その一方の壁12が傾斜状をなしている。このように一方の壁2が傾斜している形態においては、傾斜している一方の壁2とインナーリブ4は互いに直交する角度をなさないが、他方の壁3に対してインナーリブ4が直交する角度で立ち上がる状態に形成するのが強度上好適である。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、スライドコアを挟む位置にサポートコアを設けて、サポートコアを突出位置に残してスライドコアを後退させるか、あるいはサポートコアをスライドの後退より遅れて後退させることにより、パリソンのスライドコアにより突出させた壁部分をサポートコアで支える状態として、スライドコアの後退にともなってパリソンの突出した壁部分の引きずり現象を無くし、前記スライドコアにより突出させた壁部分の側面をブロー圧により互いに溶着して一方の壁と他方の壁との間に一体的なリブを形成することにより、全体に適正な肉厚で均整のとれたインナーリブが形成できて、剛性および強度性にすぐれた中空体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る中空体の一例として空調用のダクトを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る中空体のブロー成形態様を示し、開いた一対の分割金型間にパリソンを配置した様態をダクトの側面側からみた断面図である。
【図3】図2の状態から型締めをした状態を示す断面図である。
【図4】図3に対応する水平断面図である。
【図5】スライドコアを後退させてブロー成形した状態を示す断面図である。
【図6】図5に対応する水平断面図である。
【図7】ブロー成形後型開きをした状態を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態を示す図3に対応する断面図である。
【図9】図8の状態からスライドコアの後退に遅れてサポートコアを後退させた状態を示す断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態を示すダクトの部分図である。
【符号の説明】
1 ダクト
2 一方の壁
3 他方の壁
4 インナーリブ
5 中空部
6 接続部
7 凹陥部
8 空洞部
11 一方の金型
12 他方の金型
13 スライドコア
14 サポートコア
15 突出した壁
a パリソン

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂をブロー成形して中空体を製造する方法であって、一対の分割金型には、一方の壁と他方の壁とを中空部内で互いに一体的につなぐリブを形成するためのスライドコアと、このスライドコアを挟む位置にサポートコアを備えており、上記一対の分割金型間に、スライドコアとサポートコアをキャビティ面から突出させた状態で熱可塑性樹脂のパリソンを配置して型締めして、パリソンをスライドコアおよびサポートコアにより突出させた壁部分を対向するパリソンに溶着させ、次いでスライドコアを後退させてパリソン内に圧力流体を導入してパリソンを一対の分割金型のキャビテイ面に沿わせた形状に成形するとともに、前記スライドコアにより突出させた壁部分の側面をブロー圧により互いに溶着して一方の壁と他方の壁との間に一体的なリブを形成することを特徴とする中空体の製造方法。
  2. サポートコアをキャビティ面から突出させたままでパリソン内に圧力流体を導入してブロー成形することを特徴とする請求項1記載の中空体の製造方法。
  3. サポートコアをスライドコアに遅れて後退させることを特徴とする請求項1記載の中空体の製造方法。
  4. 熱可塑性樹脂をブロー成形して中空体を製造する装置であって、一方の壁と他方の壁とを中空部内で互いに一体的につなぐリブを形成するスライドコアとこのスライドコアを挟む位置にサポートコアを備えた一対の分割金型により構成され、スライドコアは金型のキャビティ面に対して突出、後退させる構成であり、サポートコアはキャビティ面から突出したまま、またはスライドコアの後退より遅れて後退させる構成であることを特徴とする中空体の製造装置。
  5. スライドコアは、その表面にパリソンに対して滑りやすいフッ素被膜処理を施したものであることを特徴とする請求項4記載の中空体の製造装置。
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