JP4519498B2 - リン含有α−メチルスチレン共重合体を配位子とする新規なポリマー担持遷移金属錯体及び該錯体からなる触媒 - Google Patents

リン含有α−メチルスチレン共重合体を配位子とする新規なポリマー担持遷移金属錯体及び該錯体からなる触媒 Download PDF

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Description

本発明は、リン含有α−メチルスチレン共重合体を配位子とする新規なポリマー担持遷移金属錯体及び該錯体からなる触媒に関し、さらに詳しくは、構造が簡単であり低コストで容易に製造でき、しかも十回以上、好ましくは数十回の繰返し使用にも耐えうるポリマー担持遷移金属錯体触媒として好適に使用可能であるような、リン含有α−メチルスチレン共重合体を配位子とする新規なポリマー担持遷移金属錯体、その製造方法および該錯体からなる触媒、並びに該触媒を用いた化合物の合成法に関する。
触媒は、目的化合物を効率よく製造する上で、今日多くの反応に使用されている。特に近年、遷移金属錯体触媒を用いた選択性・特異性が高いなどの有用な反応が数多く見いだされている。
しかしながら、錯体触媒反応は、均一系の反応であるため触媒と生成物および未反応原料の分離が困難であること、熱的には必ずしも安定でないこと、酸素、水等に敏感であり触媒寿命が固体触媒より短いことなどの問題がある。特に、生成物と触媒を分離することの困難さの問題を解決するために、水不溶性あるいは有機溶媒不溶性のポリマーに配位子をつけ、これらにさらに金属を配位させて不均一系触媒を形成する試みが数多くなされている。そのなかでも、ホスフィン化合物をポリマーに導入して遷移金属に配位させ、不均一系触媒を得ることが盛んに行われている。
ホスフィン化合物のポリマー配位子に目を向けると複雑な構造のものが多く、単純・簡単な合成法にてポリマー担持触媒が得られるか否か、あるいは効率よく触媒の回収再利用が可能か否かなどの点についてまで充分に検討されている例は少ない。
ポリマー配位子で最も単純な構造のものとしては、ポリスチレン骨格にトリフェニルホスフィン構造が組み込まれたものが挙げられ、このポリマー配位子は、市販されているくらい一般的なものである。そのため、トリフェニルホスフィン構造を有するポリマー担持金属錯体触媒の研究は、数多く報告されている(非特許文献1,2,3)。
他のトリフェニルホスフィン構造を有するものとして、スチレン誘導体のα位に置換基を導入した化合物がある。置換基がメチルである化合物を重合用モノマーとして用いてなる重合体は、熱硬化性樹脂組成物(特許文献1)や光学材料(特許文献2)として使用されている例はあるが、錯体触媒の配位子として利用された例はない。
もし、これらの単純な構造の配位子でポリマー担持金属錯体触媒を調製し、それが従来のものより優れていれば、より実用的なポリマー担持金属錯体触媒となる。
ところで、ホスフィン化合物の中心金属の方に目を向けるとロジウム、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケルなど様々な遷移金属が使用されている(非特許文献4)。
そのひとつであるパラジウム触媒について、いくつかの例を挙げると、非特許文献5ではポリスチレン−ポリエチレングリコール担持ホスフィン−パラジウム錯体をHeck反応に使用して、ヨードベンゼンから安息香酸を得ている。また、この触媒を回収して、繰り返し30回の使用で平均反応収率が97%という結果を報告している。
さらに、非特許文献6では、Suzuki−Miyaura反応にも有用であることを
報告している。
特許文献3では両親媒性ポリマー担持パラジウム触媒をSuzuki−Miyaura反応に使用して、ヨードベンゼンとフェニルボロン酸からビフェニルを得ている。この反応においては、触媒を10回繰り返し使用して平均収率95%という反応結果が報告されている。
非特許文献1,2では、4−クロロメチルポリスチレン樹脂にジフェニルホスフィノ基を導入した後、パラジウムを担持させてポリマー担持パラジウム錯体を調製し、それを使用してSuzuki−Miyaura反応を行っている。そして、触媒を回収して使用しても活性の低下がないことが報告されている。
また、非特許文献3では上記と同様の触媒を使用してSuzuki−Miyaura反応を行い、触媒活性の低下がなく、回収再使用が6回可能であることが報告されている。
前述したように、数多くのポリマー担持金属錯体触媒が報告され、様々な反応に利用されている。
しかしながら、これらは配位子の構造や重合方法が煩雑なものが多い。単純な構造の共重合体が報告されている例も多いが、回収再使用について充分に検討されている例はほとんどない(非特許文献1,2,3)。
また、反応させる基質についても反応性の高いヨード体を用いていたり、反応時間が十時間以上であったり、触媒量が多いなど、実用的な方法とはいえない(非特許文献5,特許文献3)。
また、非特許文献7には、触媒用ポリマー配位子としてスチレンと、ジフェニル(p−ビニルフェニル)ホスフィンと、ジビニルベンゼンとの共重合体「(<P>)−Ph−PPh23RhCl(Ph:ベンゼン環、<P>:ポリマー鎖)」を用いたものをヒドロシリル化反応に使用し、その回収も行った旨記載されているが、回収再利用性の効率の点で改善の余地がある。
このように従来の触媒は、配位子の構造の単純さの点、ポリマー担持金属錯体触媒調製の容易さの点、繰返し再利用の便利さの点、製造コストの点などの何れかの点で更なる改良の余地があり、これら特性がより一層改善され、より実用的なポリマー担持金属錯体触媒の出現が求められている。
テトラヘドロンレターズ(Tetrahedron Letters)、1997年、38巻、1793頁 テトラヘドロンレターズ(Tetrahedron Letters)、1998年、39巻、4287頁 テトラヘドロン(Tetrahedron)、2000年、56巻、8661頁 ケミカルレビューズ(Chemichal Reviews)、2002年、102号(10巻)、3217 ジャーナルオブオーガニックケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、1999年、64巻、6921頁 ジャーナルオブオーガニックケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、1999年、64巻、3384頁 ジャーナルオブポリマーサイエンス(Journal of Polymer Science)、1994年、32巻、683−697頁 特開平4−53811号公報 欧州特許出願公開第0322614号明細書 特開2003−236388号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、構造が簡単であり低コストで容易に製造でき、しかも十回以上、好ましくは数十回の繰返し使用にも耐えうるポリマー担持遷移金属錯体触媒として好適に使用可能であるようなポリマー担持遷移金属錯体及びその触媒、並びに触媒用配位子を提供することを目的としている。
また本発明は、上記のようなポリマー担持遷移金属錯体を安全かつ低コストで効率良く製造し得るような上記ポリマー担持遷移金属錯体の好適な製造方法を提供することを目的としている。
また本発明は、上記錯体からなる触媒の用途である、該錯体を用いた化合物の好適な合成法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記のような本発明を見出すに至った。
すなわち、本発明に係るポリマー担持遷移金属錯体(C)は、下記式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%と、
下記式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%と、必要により
下記式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%(但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなるリン含有スチレン系共重合体(A)と、下記式(B)で表される金属塩または遷移金属錯体とを接触させてなり、該錯体(C)中における、遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が0.1〜20重量%であることを特徴としている。
Figure 0004519498
(式(1a)、(2a)及び(3a)中、Yは、水素原子、炭素数1〜4で直鎖状または分岐状の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子の何れかを示す。)
M−Xqr ・・・・・・・・・・(B)
(但し、式(B)中、Mは、9族または10族の遷移金属原子または1〜3価の9族または10族の遷移金属陽イオンを示し、
Xは、ハロゲンイオン、アセトキシイオン、硝酸イオン、シアンイオンのうちの何れかのイオンを示し、
Lは、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、1,5−シクロオクタジエンのうちから選択される配位子を示し、q,rはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
本発明に係るポリマー担持遷移金属錯体(C)は、
下記式(1)で表される、スチレン系モノマー由来の成分単位:30〜90モル%と、
下記式(2)で表される、ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン由来の成分単位:1〜70モル%と、必要により
下記式(3)で表される、ジビニルベンゼン由来の成分単位:0〜30モル%(但し、全成分単位((1)+(2)+(3))=100モル%)とを含有するリン含有スチレン系共重合体(A)に、そのリン原子部位で、金属塩または遷移金属錯体(B)が配位結合しており、
上記錯体中における、遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が0.1〜20重量%である。
Figure 0004519498
(式(C)中、成分単位(1)、(2)、(3)の結合順序は任意であり、Yは、水素原
子、炭素数1〜4で直鎖状または分岐状の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子の何れかを示し、繰返し単位数k、mは、それぞれ独立に1以上の整数を示し、繰返し単位数lは、0または1以上の整数を示す。
Mは、9族または10族の遷移金属原子または1〜3価の9族または10族の遷移金属陽イオンを示し、
Xは、ハロゲンイオン、アセトキシイオン、硝酸イオン、シアンイオンのうちの何れかのイオンを示し、
Lは、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、1,5−シクロオクタジエンのうちから選択される配位子を示し、
q,rはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、
dは、1以上の整数を示す。)
本発明においては、上記リン含有スチレン系共重合体合成用のモノマー混合物中、あるいはリン含有スチレン系共重合体(配位子)中における、ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)またはその成分単位(2)の含有量が10〜30モル%(但し、リン含有スチレン系共重合体合成用の全モノマーまたはリン含有スチレン系共重合体中の全成分単位の合計=100モル%)であることが好ましい。
本発明においては、上記モノマー混合物中、あるいはリン含有スチレン系共重合体(配位子)中における、上記ジビニルベンゼン(3a)またはその成分単位(3)の含有量が2〜8モル%(但し、全モノマーまたは全成分単位の合計=100モル%)であることが好ましい。
また本発明においては、錯体(C)中における、上記遷移金属原子または遷移金属陽イオン(M)の遷移金属換算量が、ポリマー担持遷移金属錯体中、3〜10重量%であることが好ましい。
本発明においては、上記遷移金属原子または遷移金属陽イオン(M)がパラジウム、ロジウムまたはそれらのイオンであることが好ましい。
本発明に係るポリマー担持遷移金属錯体(C)の製造方法は、
上記の式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%と、上記の式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%と、必要により
上記の式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%(但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなるリン含有スチレン系共重合体(A)と、
上記の式(B)[M−Xqr :定義は同上。]で表される金属塩または遷移金属錯体
とを接触(作用)させることを特徴としている。
本発明に係る有機合成用触媒は、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる、Grignardカップリング反応用、Suzuki−Miyaura反応用、Heck反応用、水素化反応、オキソ法、ヒドロシリル化反応用のうちの何れかに記載の触媒であることを特徴としている。
本発明に係るポリマー担持触媒用配位子、特に好ましくはポリマー担持遷移金属錯体触媒用配位子は、
上記式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%と、
上記式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%と、必要により
上記式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%(但し、全モノマー((
1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなる上記リン含有スチレン系共重合体(A)よりなる。
本発明に係るビフェニル類の製造方法は、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる有機合成用触媒の存在下に、ハロゲン化ベンゼンと、アリールマグネシウムハロゲン化物とをGrignardカップリング反応させることを特徴としている。
また本発明に係るビフェニル類の製造方法は、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる有機合成用触媒の存在下に、ハロゲン化ベンゼンと、フェニル基含有ボロン酸とをSuzuki−Miyaura反応させることを特徴としている。
また本発明に係るアルキル−アルコキシシランの製造方法は、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる有機合成用触媒の存在下に、1−アルケンと、ヒドロシラン化合物とを反応させることを特徴としている。
本発明によれば、p−イソプロペニルクロロベンゼンより誘導される前記ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)をスチレン系モノマー(スチレン誘導体)(1a)及びジビニルベンゼン化合物(3a)と共重合させて得られるリン含有スチレン系共重合体(A)を、配位子として使用することにより、構造が簡単であり、容易に低コストで製造でき、回収再利用性の点などで優れた、より実用的なポリマー担持金属錯体触媒および該触媒の調製に好適な触媒用配位子が提供される。
また本発明によれば、上記のようなポリマー担持遷移金属錯体(C)を安全かつ低コストで効率良く製造し得るような上記ポリマー担持遷移金属錯体の好適な製造方法が提供される。
また本発明によれば、上記錯体からなる触媒の用途である、該錯体(C)を触媒として繰返し再利用しつつ、該触媒を用いた4−メチルビフェニルその他のビフェニル類、アルキル−モノ、ジ、トリアルコキシシラン化合物などの化合物を、安価で効率良く安全に製造し得るようなこれら化合物の合成法が提供される。
以下、本発明に係る、リン含有α−メチルスチレン共重合体を配位子とする新規なポリマー担持遷移金属錯体、その製造方法および該錯体からなる触媒、並びに該触媒を用いた化合物の合成法などについて具体的に説明する。
[ポリマー担持遷移金属錯体]
すなわち、本発明に係るポリマー担持遷移金属錯体(C)は、以下に詳述する特定のリン含有スチレン系共重合体(A)と、下記式(B)[すなわち、M−Xqr]で表される金属塩または遷移金属錯体とを接触(作用)させてなり、錯体(C)中における遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が0.1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%である。
この錯体(C)中における、遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が上記範囲より少ないと得られる触媒を用いた上記種々の反応の反応速度の低下、該ポリマー担持遷移金属錯体を触媒として用いた場合に目的化合物の収率の低下となる傾向があり、また上記範囲を超えると経済性の面で不利となる傾向がある。
このポリマー担持遷移金属錯体(C)は、ビーズ状の固体であり、常圧下に、下記に示すような種々の溶媒(D)の沸点まで昇温しても、これらの溶媒に対して膨潤性を示すとしても、実質上、不溶性を示す。
この不溶性の溶媒(D)としては、水の他、
ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;
エチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;
クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;
メタノール、エタノール、ブタノール等の脂肪族アルコール類;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
アセトン等のケトン類;
が挙げられる。
以下、このポリマー担持遷移金属錯体(C)中のポリマー配位子(A)となるリン含有スチレン系共重合体(A)、および該錯体(C)中の「金属塩または遷移金属錯体」(B)部分となる、金属塩または遷移金属錯体(B)について説明する。
<リン含有スチレン系共重合体(A)あるいはポリマー配位子(A)>
このポリマー担持遷移金属錯体(C)中のポリマー配位子(A)は、リン含有スチレン系共重合体(A)配位子である。
このポリマー配位子(A)は、下記式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%、好ましくは60〜80モル%と、
下記式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%、好ましくは10〜30モル%と、必要により
下記式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%、添加する場合には、好ましくは1〜20モル%、特に2〜8モル%(但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなる。
Figure 0004519498
(式(1a)、(2a)及び(3a)中、Yは、水素原子、炭素数1〜4で直鎖状または
分岐状の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子の何れかを示す。)
このリン含有スチレン系共重合体(A)(ポリマー配位子(A)ともいう。)も、前記ポリマー担持遷移金属錯体(C)と同様に、ビーズ状の固体であり、また、前記ポリマー担持遷移金属錯体(C)が常圧下に各溶媒の沸点まで昇温しても不溶性を示した溶媒(D)に対して、常圧下に、上記したような種々の溶媒(D)の沸点まで昇温しても、これらの溶媒に対して膨潤性を示すとしても、実質上、不溶性を示す。
このポリマー配位子(A)は、該ポリマー配位子(A)の合成時に用いられる上記各モノマー(1a)、(2a)、(3a)量がそれぞれ上記範囲にあると、このような配位子(A)を有するポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)を用いて、Grignardカップリング反応、Suzuki−Miyaura反応などを行う際に、反応開始に伴い、溶媒中で該触媒(C)は速やかに膨潤し、触媒中に、特にポリマー鎖部位であるリン含有スチレン系共重合体(A)部位に間隙が生じて、触媒を構成しているポリマー鎖の自由度が増すことにより、触媒(特に、その金属塩または遷移金属錯体(B)の部位)と基質(例:
Grignardカップリング反応用の原料など)との接触の機会が増加し接触性が向上
し、これらGrignardカップリング反応、Suzuki−Miyaura反応などが迅速に進行する傾向がある。
なお、このスチレン系モノマー(1a)量が上記範囲より少ないと経済性の面で不利と
なる傾向があり、また上記範囲より多いとリン原子の含有率が減少することになり配位子としての効果が低下する傾向がある。
また、このモノマー(2a)量すなわちジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)量が上記範囲より少ないと配位子としての効果が低下する傾向があり、また上記範囲より多いと経済性の面で不利となる傾向がある。
また、このモノマー(3a)を用いる場合には、このモノマー(3a)量すなわちジビニルベンゼン(3a)量が上記範囲より少ないとポリマー担持遷移金属錯体の強度低下となる傾向があり、また上記範囲より多いと反応時のポリマー担持遷移金属錯体触媒の溶媒中での膨潤性が低下し、触媒と基質との接触の機会が低減することにより反応性が低下する傾向がある。
このようなリン含有スチレン系共重合体(A)では、各モノマー(1a)、(2a)、(3a)から誘導される各成分単位(後述する成分単位(1)、(2)、(3))はランダムに配列していてもよく、ブロックを形成して配列していてもよい。
ここで使用されるスチレン誘導体のベンゼン環上の置換基「Y」は、水素原子(H)、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状の低級アルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などの炭素数1〜4の低級アルコキシ基;
アミノ基;
フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、沃素原子(I)などのハロゲン原子;を示す。
本発明では、上記「Y」は、各モノマー(1a)毎に同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、特に、これら種々のYのうちで、Yが全て水素原子(H)であると合成の容易さ、(原料)及び最終生成物の低コスト化、入手が容易などの点で好ま
しい。
このようなモノマー(1a)として、具体的には、例えば、スチレン、o,m,p−メチルスチレン、o,m,p−エチルスチレン、o,m,p−ジメチルアミノスチレン、o,m,p−クロロスチレン、o,m,p−メトキシスチレン等が挙げられ、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンが好ましい。
ジビニルベンゼン(3a)の2個のビニル基は、ベンゼン環のo,m,p位に結合し得るが、通常m,p位に結合したものが入手し易く、特にこれらm位,p位に結合したジビニルベンゼンの混合物が安価に入手し易く、しかもこのようなジビニルベンゼン(3a)などを上記他のモノマー(1a)、(2a)と共重合させるなどすれば、最終的に所望の性能のポリマー担持遷移金属錯体などが得られる。
このようなリン含有スチレン系共重合体(A)の構造は、赤外線吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)などを利用することにより、決定することができる。
また、ポリマー配位子となるリン含有スチレン系共重合体(A)中のリン(P)の含量は、後述する「ホルハルト法」により決定することができる。
<金属塩または遷移金属錯体(B)>
M−Xqr ・・・・・・・・・・(B)
式(B)中、Mは、9族または10族の遷移金属原子、または1〜3価の9族または10族の遷移金属陽イオンを示す。
9族の遷移金属としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などが挙げられ、10族の遷移金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等が挙げられ、中でもロジウム、コバルト等の9族のもの、パラジウム、ニッケル等の10族のものが好ましい。
Xは、ハロゲンイオン、アセトキシイオン、硝酸イオン、シアンイオンのうちの何れかのイオンを示し、中でもF-、Cl-、Br-、I-等のハロゲンイオン、アセトキシイオンなどが原料入手の容易性の点で好ましい。
Lは、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、1,5−シクロオクタジエンのうちから選択される配位子を示し、配位交換可能なものであれば、これらに限定されるものではない。q,rはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。
このような金属塩または遷移金属錯体(B)として、具体的には、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロペンタジエン)パラジウムに代表されるパラジウム錯体、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、クロロトリストリフェニルホスフィンロジウムなどが挙げられ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、塩化パラジウム、塩化ロジウムが好ましい。これら金属塩または遷移金属錯体(B)は、1種または2種以上組合わせて用いてもよい。
<接触>
本発明のポリマー担持遷移金属錯体(C)は、上記リン含有スチレン系共重合体(A)と、上記金属塩または遷移金属錯体(B)とが接触され、配位結合しており、このような本発明に係るポリマー担持遷移金属錯体は、下記式(C)で示される構造を有していると推定される。
また、ポリマー担持遷移金属錯体中のリン含有スチレン系共重合体(A)配位子では、含まれる各成分単位(1)、(2)、(3)はランダムに配列していてもよく、ブロックを形成して配列していてもよい。
本発明のポリマー担持遷移金属錯体(C)では、用いられたリン含有スチレン系共重合体(A)に、上記金属塩または遷移金属錯体(B)が配位結合した構造を有しており、該錯体(C)中の遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が0.1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%である。
なお、該リン含有スチレン系共重合体(A)(あるいはポリマー配位子(A))には、各成分単位(1)、(2)、(3)は、それぞれ用いられた上記各モノマー(1a)、(2a)、(3a)量に対応する量で存在している。
すなわち、該リン含有スチレン系共重合体(A)には、上記モノマー(1a)由来の成分単位(1)は、30〜90モル%、好ましくは60〜80モル%の量で含有され、
下記式(2)で表される、ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)由来の成分単位は1〜70モル%、好ましくは10〜30モル%の量で含有されている。
また、必要により、下記式(3)で表される、ジビニルベンゼン(3a)由来の成分単位は0〜30モル%、添加する場合には、好ましくは1〜20モル%、特に2〜8モル%の量(但し、全成分単位((1)+(2)+(3))=100モル%)で含有されている。
Figure 0004519498
式(C)中、成分単位(1)、(2)、(3)の結合順序は任意である。
なお成分単位(3)中には、フェニレン基(ベンゼン環)を挟んで2個の連結・結合部位
Figure 0004519498
が存在し、そのため成分単位(3)は共重合体中にあって架橋反応に寄与するが、これらの何れの結合部位においても、成分単位(3)は、上記他の成分単位(1)、(2)、(3)の何れかと結合している。なお、成分単位(3)中のベンゼン環を挟んで存在する2個の連結・結合部位
Figure 0004519498
は、用いられたモノマー(3a)の種類に対応して、o,m,p位に、好ましくはm位またはp位に存在している。
また、各成分単位の繰返し単位数k、m、lのうちで、k、mは、それぞれ独立に1以
上の整数を示し、繰返し単位数lは、0または1以上の整数を示す。なお、k、m、lの
比は、用いられた上記各モノマー(1a)、(2a)、(3a)量の比に対応している。
その他の記号Y、M、X、L、q、rは、上記式(B)と同様である。
dは、1以上の整数を示す。
なお、このポリマー担持遷移金属錯体(C)の一例として、リンとパラジウムのモル比(P/Pd)が2/1(モル比)の化合物を下記式(C−1)に示す。ここで、パラジウム(Pd)に配位しているリン(P)は同一ポリマー鎖内にあるものでも、異なるポリマー鎖間にあるものでもよい。
Figure 0004519498
このようなポリマー担持遷移金属錯体(C)の構造は、NMR、ICP分析、IR(KBr錠剤法)などを利用することにより、決定することができる。
[ポリマー担持遷移金属錯体(C)の製造]
本発明においては、上記のポリマー担持遷移金属錯体(C)は、上記のリン含有スチレン系共重合体(A)と、上記の金属塩または遷移金属錯体(B)とを接触させることにより製造することができる。
<リン含有スチレン系共重合体(A)>
先ず、リン含有スチレン系共重合体(A)を得るには、上記共重合用モノマーであるスチレン系モノマー(1a)と上記ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)と、必要により用いられる上記ジビニルベンゼン(3a)とを、それぞれ上述したような量で用いて、通常、重合開始剤、溶媒などの存在下に、共重合させる。
なお、この共重合の際には、スチレン系モノマー(1a)を30〜90モル%、好ましくは60〜80モル%の量で、上記モノマー(2a)を1〜70モル%、好ましくは10〜30モル%の量で、また上記モノマー(3a)は用いなくともよい(0モル%)が、該ジビニルベンゼンモノマー(3a)を用いる場合には、0を超え〜30モル%、好ましくは1〜20モル%、特に2〜8モル%の量で用いることが望ましい。但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%とする。
このスチレン系モノマー(1a)量が上記範囲より少ないと経済性の面で不利となる傾
向があり、また上記範囲より多いと配位子としての効果が低下する傾向がある。
このモノマー(2a)量すなわちジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)量が上記範囲より少ないと配位子としての効果が低下する傾向があり、また上記範囲より多いと経済性の面で不利となる傾向がある。
このモノマー(3a)を用いる場合には、このモノマー(3a)量すなわちジビニルベンゼン(3a)量が上記範囲より少ないとポリマー強度が低下する傾向があり、また上記範囲より多いと、得られるポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)を用いた種々の反応、例えば、Grignardカップリング反応、Suzuki−Miyaura反応、Heck反応、水素化反応、オキソ法、ヒドロシリル化反応などの反応に際し、該触媒(特にポリマー部位)の膨潤性が低下し、該触媒と基質(上記各反応用の原料)との接触性が低下することにより反応性が低下する傾向がある。
このリン含有スチレン系共重合体(A)の合成の際には、通常、下記のような重合開始剤、溶媒等が用いられる。
上記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキシルカルボニトリル等のニトリル類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシベンゾエート、過酸化ベンゾイル等の過酸化物などが挙げられ、好ましくはAIBN、アゾビスシクロヘキシルカルボニトリル等のニトリル類が用いられる。これら重合開始剤は、従来より公知のオレフィン系(共)重合体製造用の重合開始剤であり、モノマーの合計量100重量部当たり、例えば、0.5〜5重量部程度の量で用いられる。
また、必要により使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;
クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール等の
アルコール系溶媒;
アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;
テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルエーテル、n−ブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が挙げられ、該溶媒を用いる場合には、モノマーの合計量100重量部当たり、例えば、100〜500重量部程度の量で用いられる。また必要に応じて、安定剤としてポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸塩などをモノマーの合計量100重量部当たり0.01〜30重量部程度の量で添加してもよい。
本発明では、上記モノマー(1a)、(2a)及び(3a)を共重合させる際には、加
熱、加圧等してもよいが、その条件は、モノマーの種類、モノマー組成比などにより異なる。
例えば、上記モノマー(1a)としてスチレンを用い、このスチレンと、p−イソプロ
ペニルクロロベンゼンから容易に誘導されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)と、ジビニルベンゼン(3a)とを上記のようなモノマー量比で共重合させる場合には、常圧下に、反応温度:40〜100℃、好ましくは70〜80℃で、反応時間:3〜24時間程度反応させればよい。
このようにして得られた成分単位組成がスチレン単位/ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)単位/ジビニルベンゼン(3a)単位であるリン含有スチレン系共重合体(A1)は、常温、常圧下で、通常、固体である。
<リン含有スチレン系共重合体(A)と、金属塩または遷移金属錯体(B)との接触、及び得られた触媒(C)>
次いで、本発明では、上記のリン含有スチレン系共重合体(A)と、「金属塩または遷移金属錯体」(B)とを接触(作用)させて、有機合成用触媒として有用なポリマー担持遷移金属錯体(C)を製造している。
すなわち、ポリマー(A)を、9族または10族の遷移金属原子または1〜3価の9族または10族の遷移金属陽イオンなどを有する遷移金属化合物(B)に配位させ、ポリマー担持金属錯体触媒(C)を得る。ここで使用される遷移金属としてはパラジウム、ニッケル、ロジウム、白金等が挙げられる。
触媒(C)の調製方法は、1例を挙げれば次のとおりである。
触媒(C)は、リン含有ポリマー(A)と、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムやジクロロ(1,5−シクロペンタジエン)パラジウムに代表されるパラジウム錯体との間の配位子交換によって調製される。また、塩化パラジウムとリン含有ポリマー(A)から直接調製することもできる。
触媒として作用する際の金属の価数は、反応中に酸化還元が繰り返されて随時変化するため、それに伴い配位するリンの数にも変化が生ずると考えられる。従って、ポリマー(A)に含まれるリンと金属(例:Pd)のモル比(P/Pd)は一義的に定めることが難しく、触媒活性が有効となる範囲で選択すればよい。
すなわち、本発明の場合は、ポリマー(A)に含まれるリンと金属(例:Pd)のモル比(P/Pd)は、1/2〜20/1の範囲で選択されるが、好ましくは1/1〜4/1である。
代表的な例を示すと、塩化パラジウムまたはジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを用いて、ポリマー(A)に含まれるリンとパラジウムのモル比(P/Pd)
が約2/1となるように調製した触媒が特に好適な触媒活性を示す。
なお、ポリマー(A)に含まれるリンと、金属(M)のモル比(P/M)は、錯体の種類によっても異なり、その金属種により適宜選択される。
上記共重合体(A)と、金属塩または遷移金属錯体(B)との接触(反応)は、例えば、THF溶媒中、60〜65℃で、5〜24時間還流条件下に実施される。
本発明に係るポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)は、有機合成用触媒として有用であり、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる。このポリマー担持遷移金属錯体(C)は、特に、Grignardカップリング反応用、Suzuki−Miyaura反応用、Heck反応用、水素化反応、オキソ法、ヒドロシリル化反応用の触媒として、5回以上、好ましくは10〜30回程度も繰返して使用し、反応完了後はこの高価な貴金属触媒などを反応系から容易に高回収率で分離回収して多数回再利用でき経済性の面で、特に優れる。
また目的物の合成の観点からは、目的合成物の純度が高くでき、分離・精製の面で有利な合成反応を提供することができる。
その上、配位子(A)の構造も単純であり、重合方法も公知の方法を使用し、容易に合成することができ、触媒(C)を安価に容易に調製できるという利点がある。
[該触媒を用いた化合物の合成法]
<Grignardカップリング反応によるビフェニル類の合成>
本発明に係る4−メチルビフェニル(ハ)の製造方法では、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる有機合成用触媒(ポリマー担持遷移金属錯体触媒(C))の存在下に、ブロモベンゼン等のハロゲン化ベンゼン(イ)と、p−トリルマグネシウムクロライド等のアリールマグネシウムハロゲン化物(ロ)とを理論的には等モル比で、通常、ハロゲン化ベンゼン(イ)1モルに対してアリールマグネシウムハロゲン化物
(ロ)を0.8〜1.2倍モル、好ましくは(ロ)が過剰量すなわちモル比:(ロ)/(イ)>1となる量でGrignardカップリング反応させている。このGrignardカップリング反応の際には、溶媒を用いてもよく、必要により加熱等してもよい。
反応式は、4−メチルビフェニル(ハ)の合成例では以下の通り。
Figure 0004519498
Grignardカップリング反応によるビフェニル類の合成時に通常使用可能な溶媒としては、Grignard試薬と共存できる溶媒であればよく、具体的には、例えば、ジエチルエーテル、ジノルマルブチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;
ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンなどの炭化水素系溶媒;あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒は1種または2種以上組合わせて用いることができる。本発明では、これらの溶媒のうちでは、好ましくは、テトラヒドロフラン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が望ましい。
本発明のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる触媒の使用量は、反応原料のブロモベンゼン(イ)等のハロゲン化ベンゼン、あるいはp−トリルマグネシウムクロライド(ロ)等のアリールマグネシウムハロゲン化物100モル%に対して、0.001〜20モル%、好ましくは0.01〜2モル%の量である。
反応温度は、室温から溶媒の還流温度までの間で選択されるが、好ましくは40〜80℃である。
上記反応に際して使用された、本発明のポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)は、水や有機溶媒に不溶なため、反応後デカンテーションや濾過などの簡単な操作で生成物と分離し、回収することができる。
回収されたポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)は、活性の低下もほとんどなく、多数回(例:10〜15回)繰り返して使用することができ、低コストでの上記Grignardカップリング反応に好適である。
例えば、ブロモベンゼン(イ)とp−トリルマグネシウムクロライド(ロ)とのGrignardカップリング反応を10回繰り返したところ、反応時間が5時間以内で、原料(イ)は反応の進行に伴い消失し、高収率で4−メチルビフェニル(ハ)が得られた。(なお、原料(ロ)は通常、やや過剰量で使用されるため減少するが消失には至らない。)
さらに回収再使用を繰り返してもポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)の活性の低下は、ほとんど見られなかった。これに用いた触媒(C)は回収率95〜100%で繰り返し回収して使用でき、この間の目的化合物の収率は、80%以上の高収率が維持できる。
なお、上記ポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)製造用のリン含有スチレン系共重合体(A)中に含まれる成分単位(2)として、ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン単位に代えて、ジフェニル(p−ビニルフェニル)ホスフィン(2’)単位を含有する従来の触媒(C’)を上記Grignardカップリング反応用の触媒として使用した場合には、僅か5〜6回程度の繰返し使用で活性は低下した。
この本発明の触媒(C)、あるいは従来の触媒(C’)を、Suzuki−Miyaura反応やHeck反応に利用した場合にも、これと同様の傾向が見られた。また、Rh触媒を調製して、ヒドロシリル化反応に使用しても同様であった。
以上のように本発明によるポリマー担持金属錯体触媒は、触媒活性は対応する均一系触媒とほぼ同等であり、スチレン誘導体のα位にメチル基を導入することにより、回収再使用性の点で従来の触媒より優れた効果が得られた。
<Suzuki−Miyaura反応>
また本発明に係るビフェニル類の製造方法では、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる有機合成用触媒の存在下に、ハロゲン化ベンゼンと、フェニル基含有ボロン酸とをSuzuki−Miyaura反応させている。
例えば、ハロゲン化ベンゼンとしてブロモベンゼン1モルに対して、p−トリルボロン酸(式:CH3−Ph−B(OH)2;Phはベンゼン環)を理論的には等モル量で、通常0.8〜1.2モルの量で使用して、塩基として炭酸水素ナトリウム1.2〜2.0モルで、また上記ポリマー担持遷移金属錯体触媒(C)(Pd含量3〜10%)を0.01〜2モルの量で、溶媒のTHFを原料合計の3〜10倍量で、水を3〜10倍量で用いて40℃〜溶媒(例:THF)の還流温度である60〜65℃で、反応温度、目的化合物や原料、塩基量などの種類、条件にも拠るが0.5〜8時間程度反応させれば、目的化合物である4−メチルビフェニル等のビフェニル類が得られる。これに用いた触媒(C)は回収
率95〜100%で繰返し回収して使用でき、この間の目的化合物の収率は、90〜98%程度と高収率が維持できる。
<ヒドロシリル化によるアルキルシラン類の合成>
また本発明に係るアルキル−アルコキシシランの製造方法では、上記の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体(C)からなる有機合成用触媒の存在下に、1−アルケンと、アルコキシシランとを反応させている。
例えば、1−ヘキセンなどの1−アルケンと、アルコキシシラン、アルキルシラン等のヒドロシラン化合物とを、ヒドロシラン化合物中のSi−H基のモル数が1−アルケンと等モルとなる量で用い、また、1−アルケン1モルに対して、上記ポリマー担持遷移金属錯体(C)(Rh含量1〜10%)を金属Rhの含量が0.001〜1モル%の量で、溶媒例えば、THFを原料合計の3〜10倍量で、溶媒の還流温度例えば、THFの還流温度である65℃で0.5〜3時間程度反応させれば、目的化合物であるヘキシル−トリエトキシシランなどのアルキル−アルコキシシランが得られる。この反応に用いた触媒(C)は回収率95〜100%で繰返し回収して使用でき、この間の目的化合物の収率は、90〜98%程度と高収率が維持できる。
[実施例]
次に本発明に係るポリマー担持金属錯体触媒について、実施例、比較例を記載するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<ポリマー配位子の合成>
200ml容量のビーカーにスチレン13.5g(0.13モル)、55%ジビニルベンゼン2.4g(0.01モル)、ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン18.1g(0.06モル)を混合し、アゾビスイソブチロニトリル2.0g(0.01モル)を加え均一溶液とした。
ゼラチン7gを水140mlに溶解し、先ほどの溶液と混合して、500ml四つ口フラスコに入れ、80℃に加熱した。さらに同温度で8時間撹拌し、室温まで冷却後、ガラスフィルターを用いて濾過をした。
水、アセトンおよびTHFでそれぞれ2回ずつ洗浄し、60℃で15時間乾燥させ、ポリマー配位子30.3gを得た。得られたポリマー配位子について赤外線吸収スペクトル(IR、島津製作所(株)製、型番:FTIR−8300)の測定を行った。
IR(KBr)(cm-1):
3030、2920、1590、1490、1450、1430、1390、1060、1030、1010、900、820、740、690。
得られたポリマー配位子中のリン含量の分析は以下の方法(ホルハルト法)によって算出した。
すなわち、得られたポリマー配位子(ニ)に大過剰(理論リン含量の10倍モル相当)のベンジルクロライド(ホ)を作用させた。
Figure 0004519498
得られた化合物(ヘ)の結晶2gを精秤し、10mlサンプル瓶に入れN,N’−ジメチルホルムアミド3mlを加え、3時間膨潤させた。さらに40%硝酸ナトリウム水溶液5mlを加え、5時間放置した。
膨潤させたポリマー(ヘ)を三角フラスコに移し、硝酸で酸性とした後、0.1N硝酸銀水溶液5ml、10%鉄ミョウバン指示薬2mlを加え、0.1Nチオシアン酸アンモニウムで滴定した。終点は、溶液の色が赤みを帯びたところを終点とした。
上記手順に従い分析した結果、ポリマー(ニ)中のリン濃度は、1.33mmol/g(22モル%)であった。この結果より、前記した式(A)中のジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2)の構造単位(成分単位)の含有量は22モル%となった。
この結果より、生成したポリマー(A)には、成分単位(2)が22モル%の量で含まれる。また、反応に用いたモノマー(1a)とジビニルベンゼン(3a)は、13/1((1a)/(3a))のモル比で添加されており、これらの重合収率は定量的であると考えられることから、この比率でポリマー(A)中に存在する可能性が高い。従って、ポリマー(A)中の成分単位の組成((1)/(2)/(3))は、72/22/6(モル%)であると推定される。
[実施例2−1]
<ポリマー担持パラジウム触媒の調製(1)>
50mlのナスフラスコに実施例1で得られたポリマー配位子(濃度1.5mmol/g)3.0g(4.5mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)1.6g(2.3mmol)、THF30mlを入れ、還流温度で12時間反応させた。
室温まで冷却後、濾過をして、60℃で15時間乾燥させ、ポリマー担持パラジウム触媒3.3gを得た。得られたポリマーをICP分析(セイコーインスツルメンツ(株)製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置、型番:SPS1700HVR)した結果、Pd含量は6.2重量%であった。また、得られたポリマー錯体について赤外線吸収スペクトル(IR、同上。)の測定を行った。
IR(cm-1):
3020、3010、2930、1490、1460、1440、1400、1090、
1070、750、700、520。
[実施例2−2]
<ポリマー担持パラジウム触媒の調製(2)>
50mlビーカーに塩化パラジウム1.74g(9.8mmol)、濃塩酸4mlを加え、塩化パラジウムを溶解し、濾過をした。濾液をエタノール100ml、THF100mlで希釈し、300ml四口フラスコに入れ、実施例1で得たポリマー6.73g(9.0mmol)を加えて、還流温度で8時間反応させた。
冷却後、濾過をして、THFで2回洗浄した。60℃で15時間乾燥させ、ポリマー担持パラジウム触媒7.74gを得た。得られたポリマーを上記と同様にICP分析した結果、Pd含量は9.3重量%であった。
[実施例3]
Grignardカップリング反応による4−メチルビフェニルの合成(モデル反応)
200ml容量の4つ口フラスコにブロモベンゼン4.0g(25mmol)、1.7mol/kgのp−トリルマグネシウムクロライドTHF溶液20g(34mmol)、実施例2−1で得たポリマー担持パラジウム触媒(Pd含量6.2%)0.43g(1mol%)、トルエン30mlを加え、還流温度で反応させた。反応は、ガスクロマトグラフィーにより追跡し、原料のブロモベンゼンが消失するまで行った。
収率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、型番:GC−14B)にて生成物の純度(面積百分率法)を測定し、その値より算出したところ94%であった。
反応終了後、ガラスフィルターを使用して濾過をして、濾別した触媒を20%硫酸、THFでそれぞれ2回ずつ洗浄し、60℃で15時間乾燥して触媒を回収した(一回目の回収率99%)。
回収した触媒は繰り返し使用したが、10回繰り返し使用しても、原料のブロモベンゼンは5時間以内で消失した。
なお反応時間は、原料のブロモベンゼンが消失するまでの時間であり、収率は、ガスクロマトグラフィーにより生成物の純度(面積百分率法による)を求め、これより算出した値であり、回収率は、回収された触媒量を使用前の触媒使用量で割った値(%)である。
Figure 0004519498
[実施例4]
<Suzuki−Miyaura反応による4−メチルビフェニルの合成>
100mlの4つ口フラスコにブロモベンゼン1.6g(10mmol)、p−トリルボロン酸1.6g(12mmol)、炭酸水素ナトリウム1.7g(20mmol)、実施例2で得たポリマー担持パラジウム触媒(Pd含量6.2%)0.2g(1mol%)、水5ml、THF5mlを加え、還流温度で反応させた。反応は、ガスクロマトグラフィーにより追跡し、原料のブロモベンゼンが消失するまで行った。
収率は、ガスクロマトグラフィーにより生成物の純度(面積百分率法)を求め、これより算出したところ98%となった。
反応終了後、ガラスフィルターを使用して濾過をして、濾別した触媒を温水、THFでそれぞれ2回ずつ洗浄し、60℃で15時間乾燥して触媒を回収した(1回目の回収率9
9%)。
回収した触媒を繰り返し使用したが、10回繰り返し使用しても、原料のブロモベンゼンは5時間以内で消失した。
このように4−メチルビフェニルの合成に繰り返して触媒を使用した間の反応時間(h)、収率(%)、触媒の回収率(%)をまとめて表2に示す。
なお反応時間は、原料のブロモベンゼンが消失するまでの時間であり、収率は、ガスクロマトグラフィーによりより生成物の純度(面積百分率法)を求め、これより算出した値であり、回収率は、回収された触媒量を使用前の触媒使用量で割った値(%)である。
Figure 0004519498
[実施例5]
<ポリマー担持ロジウム触媒の調製>
実施例2のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)のかわりにクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)1.6mmolを使用し、ポリマー担持ロジウム触媒を得た。得られたポリマー錯体をICP分析した結果、Rh含量は3.5重量%であった。得られたポリマー錯体について赤外線吸収スペクトル(IR)の測定を行った。
IR(cm-1):
3040、3020、1500、1450、1430、1190、750、720、700、550。
[実施例6]
<ヒドロシリル化反応によるトリエトキシヘキシルシランの合成>
30ml容量の4つ口フラスコに1−ヘキセン3.1g(37mmol)、トリエトキシシラン5.1g(31mmol)、実施例5で得たポリマー担持ロジウム触媒0.018g(20mmol%)、THF20mlを加え、還流温度で反応させた。反応は、ガスクロマトグラフィーによりトリエトキシヘキシルシランの生成量(内標分析法)を追跡し、反応率が95%以上になるまで行った。
反応率は、ガスクロマトグラフィーによりトリエトキシヘキシルシランの生成量(内標分析法)を求め、これより算出したところ100%となった。
反応終了後、ガラスフィルターを使用して濾過をして、濾別した触媒をTHFで2回洗浄し、60℃で15時間乾燥して触媒を回収した(回収率100%)。
濾液を濃縮してトリエトキシヘキシルシラン7.5g(Yield.97%、純度99%)
を得た。
回収した触媒を繰り返し使用したが、10回繰り返し使用しても、反応率は5時間以内で95%以上になった。
このようにトリエトキシヘキシルシランの合成に繰り返して触媒を使用した間の反応時間(h)、反応率(%)、触媒の回収率(%)をまとめて表3に示す。
なお、反応時間は、反応率が95%以上になるまでの時間であり、反応率は、ガスクロマトグラフィーによりトリエトキシヘキシルシランの生成量(内標分析法)を求め、これより算出した値であり、回収率は、回収された触媒量を使用前の触媒使用量で割った値(%)である。
Figure 0004519498
[比較例1]
実施例1のジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィンの代わりにジフェニル(p−ビニルフェニル)ホスフィンを使用して、実施例1と同様に操作を行い、ポリマー配位子を得た。得られたポリマー配位子について赤外線吸収スペクトル(IR)の測定を行った。
IR(cm-1):
3020、2900、2850、1490、1450、1440、1400、1190、1130、1090、1040、820、740。
さらに、実施例2と同様に操作を行い、ポリマー担持パラジウム錯体を得た。得られたポリマー錯体について赤外線吸収スペクトル(IR)の測定を行った。
IR(cm-1):
3030、3010、2960、1480、1440、1100、830、750、680。
得られたポリマー担持パラジウム錯体を使用して、実施例3のモデル反応を行った。
触媒を回収し、繰り返し使用したところ、4回の使用で原料のブロモベンゼンが消失するまで8時間以上要した。この間の反応時間、収率、回収率を表4に示す。なお、反応時間(h)は、原料のブロモベンゼンが消失するまでの時間であり、収率(%)は、ガスクロマトグラフィーより生成物の純度(面積百分率法)を測定し、この値より算出した値であり、回収率(%)は、回収された触媒量を使用前の触媒量で割った値である。
Figure 0004519498
[比較例2]
比較例1で得たポリマー担持パラジウム錯体を使用して、実施例4のSuzuki−Miyaura反応を行った。触媒を回収し、繰り返し使用したところ、5回の使用で原料が消失するまで8時間以上要した。
この間の反応時間、収率、回収量を表5に示す。
なお、反応時間(h)、収率(%)、回収率(%)の定義は上記比較例1に同じ。
Figure 0004519498
[比較例3]
実施例1のジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィンの代わりにジフェニル(p−ビニルフェニル)ホスフィンを使用して、実施例1と同様な操作を行い、ポリマー配位子を得た。さらに、実施例2と同様な操作を行い、ポリマー担持ロジウム錯体を得
た。また、得られた錯体について赤外線吸収スペクトル(IR)の測定を行った。
IR(cm-1):
3020、2960、2940、1610、1490、1470、1450、1210、1120、750、700、560。
得られたポリマー担持ロジウム錯体を使用して、実施例6のモデル反応を行った。
触媒を回収し、繰り返し使用したところ、5回の使用で8時間反応させても反応率は30%程度であった。
この間の反応時間、収率、回収量を表6に示す。
なお、反応時間(h)は、反応率が95%以上になるまでの時間であり、収率(%)は、ガスクロマトグラフィーより生成物の生成量(内標分析法)を測定し、この値より算出した値であり、回収率(%)は、回収された触媒量を使用前の触媒量で割った値である。
Figure 0004519498
[産業上の利用可能性]
本発明のポリマー配位子は、構造や重合方法も単純なため、容易に合成することができる。また、これらの配位子を用いて調製されたポリマー担持金属錯体触媒、例えばSuzuki−Miyaura反応、Grignardカップリング反応、Heck反応などに使用されるポリマー担持パラジウム触媒や、水素化反応、オキソ法、ヒドロシリル化反応などに使用されるポリマー担持ロジウム触媒をはじめとするポリマー担持遷移金属錯体触媒は、反応系から容易に除去、回収することができるため、分離・精製の面で有用性が高い。
また、高価な貴金属触媒も回収再使用できるので経済性の面からも有用な方法である。
特に本発明のポリマー配位子は通常のスチレンポリマーに比べて使用による劣化が少なく、これを用いて調製されたポリマー担持金属錯体触媒の再使用回数を大幅に伸ばすことができる為、種々の有機合成反応において極めて有用である。

Claims (9)

  1. 下記式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%と、
    下記式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%と、必要により
    下記式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%(但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなるリン含有スチレン系共重合体(A)と、下記式(B)で表される金属塩または遷移金属錯体とを接触させてなり、遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が0.1〜20重量%であるポリマー担持遷移金属錯体。
    Figure 0004519498
    (式(1a)、(2a)及び(3a)中、Yは、水素原子、炭素数1〜4で直鎖状または分岐状の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子の何れかを示す。)
    M−Xqr ・・・・・・・・・・(B)
    (但し、式(B)中、Mは、9族または10族の遷移金属原子または1〜3価の9族または10族の遷移金属陽イオンを示し、
    Xは、ハロゲンイオン、アセトキシイオン、硝酸イオン、シアンイオンのうちの何れかのイオンを示し、
    Lは、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、1,5−シクロオクタジエンのうちから選択される配位子を示し、q,rはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
  2. 下記式(1)で表される、スチレン系モノマー由来の成分単位:30〜90モル%と、
    下記式(2)で表される、ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン由来の成分単位:1〜70モル%と、必要により
    下記式(3)で表される、ジビニルベンゼン由来の成分単位:0〜30モル%(但し、全成分単位((1)+(2)+(3))=100モル%)とを含有するリン含有スチレン系共重合体(A)に、そのリン原子部位で、上記請求項1中の式(B)で表される、金属
    塩または遷移金属錯体(B)が配位結合しており、
    遷移金属原子または遷移金属イオンMの遷移金属換算量が0.1〜20重量%であるポ
    リマー担持遷移金属錯体(C)。
    Figure 0004519498
    (式(C)中、成分単位(1)、(2)、(3)の結合順序は任意であり、Yは、水素原子、炭素数1〜4で直鎖状または分岐状の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子の何れかを示し、繰返し単位数k、mは、それぞれ独立に1以上の整数を示し、繰返し単位数lは、0または1以上の整数を示す。
    Mは、9族または10族の遷移金属原子または1〜3価の9族または10族の遷移金属陽イオンを示し、
    Xは、ハロゲンイオン、アセトキシイオン、硝酸イオン、シアンイオンのうちの何れかのイオンを示し、
    Lは、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、1,5−シクロオクタジエンのうちから選択される配位子を示し、
    q,rはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、
    dは、1以上の整数を示す。)
  3. 上記ジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン(2a)またはその成分単位(2)の含有量が10〜30モル%(但し、リン含有スチレン系共重合体合成用の全モノマーまたはリン含有スチレン系共重合体中の全成分単位の合計=100モル%)である請求項1〜2の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体。
  4. 上記ジビニルベンゼン(3a)またはその成分単位(3)の含有量が2〜8モル%(但し、リン含有スチレン系共重合体合成用全モノマーまたはリン含有スチレン系共重合体中の全成分単位の合計=100モル%)である請求項1〜3の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体。
  5. 上記遷移金属原子または遷移金属陽イオン(M)の遷移金属換算量が、ポリマー担持遷移金属錯体(C)中、3〜10重量%である請求項1〜4の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体。
  6. 上記遷移金属原子または遷移金属陽イオン(M)がパラジウム、ロジウムまたはそれらのイオンである請求項1〜5の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体。
  7. 上記請求項1の式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%と、
    上記請求項1の式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%と、必要により
    上記請求項1の式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%(但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなるリン含有スチレン系共重合体(A)と、
    上記請求項1の式(B)で表される金属塩または遷移金属錯体とを接触させることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体の製造方法。
  8. 上記請求項1〜6の何れかに記載のポリマー担持遷移金属錯体からなる、Grignardカップリング反応用、Suzuki−Miyaura反応用、Heck反応用、水素化反応、オキソ法、ヒドロシリル化反応用のうちの何れかに記載の有機合成用触媒。
  9. 下記式(1a)で表されるスチレン系モノマー:30〜90モル%と、
    下記式(2a)で表されるジフェニル(p−イソプロペニルフェニル)ホスフィン:1〜70モル%と、必要により
    下記式(3a)で表されるジビニルベンゼン:0〜30モル%(但し、全モノマー((1a)+(2a)+(3a))=100モル%)とを共重合させてなるリン含有スチレン系共重合体(A)よりなるポリマー担持触媒用配位子。
    Figure 0004519498
    (式(1a)、(2a)及び(3a)中、Yは、水素原子、炭素数1〜4で直鎖状または分岐状の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子の何れかを示す。)
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