JP4518930B2 - 杭頭部の接合構造及びその施工方法 - Google Patents
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内籠方式では、コンクリート充填鋼管杭のように杭頭で大きな曲げモーメントが生じる場合に、アンカー筋の配筋断面が過密となり、施工性に劣るという問題がある。しかも、アンカー筋が鋼管内部に配置されているため、杭頭部の曲げ応力に対してアンカー筋の断面効率が低く、杭頭固定時に生じる曲げ応力に対処できない場合が多い。
また、ひげ筋方式では、内籠方式と比較して断面効率は高いが、杭頭部の外周面にアンカー筋を現場溶接するため、現場での施工性や溶接品質に問題がある。そして、杭頭部の曲げ応力が大きくなると必要数のアンカー筋を配置しきれず、杭頭固定時の曲げ応力を処理できない場合がある。
さらに、カプラー方式では、現場溶接が不要でアンカー筋の取り付けが容易なことから施工性および品質ともに向上するものの、カプラーが高価なため工費が増大しやすい。また、杭頭部の曲げ応力が大きくなると必要数のアンカー筋を配置しきれず、杭頭固定時の曲げ応力を処理できない場合がある。
さらにまた、二重鋼管方式では、内籠方式やひげ筋方式あるいはカプラー方式と比較して、杭頭の中心からアンカー筋までの距離が大幅に大きくならないため、アンカー筋の軸力負担はさほど軽減されない。また、アンカー筋を杭頭部と外鋼管部との間のコンクリートに定着させることから、定着長を確保するために外鋼管部の長さが長くなり、コストアップの要因となり易いといった問題がある。
このように、従来の杭頭部の接合構造では、杭体に大きな曲げ応力が作用すると杭頭部が破壊されるという問題がある。
本発明では、略多角錐台又は略円錐台が形成される拡径部材を杭頭部に一体化させることで、杭頭部の耐力を向上させることができ、杭体より先行して杭頭部が破壊することを防止できる。そして、外鋼管部と杭頭部とが水平ダイアフラムによって繋がれたことで一体化が強化され、杭頭部の接合構造の耐力を向上することができる。このような接合構造としたことにより、杭頭部に一体化して取り付けられる拡径部材の長さ(オーバーラップ長)を従来工法の半分以下とすることができ、杭径の0.5〜1.0倍に短小化できる。また、従来の二重管方式の外鋼管部と比較して鋼材重量を減少できることで、鋼材や硬化材などの材料費を低減することができ、拡径部材を取り付ける際の施工性を向上できる。
本発明では、分割した水平ダイアフラムとすることにより、工場などで予め杭頭部に取り付けることができ、作業の効率化を図ることができる。
本発明では、水平ダイアフラムを杭頭部に取り付けた後に、拡径部材内の空隙に硬化材を充填するとともに、複数設けることで空気抜きも行うことができるため、拡径部材には硬化材が隙間なく充填されて、品質の高い杭頭部の接合構造を得ることができる。
本発明では、外鋼管部の外周面や水平ダイアフラムの上面で外鋼管部を接続させる付近にアンカー部材が設けられることにより、杭頭部に作用する曲げ応力を外鋼管部の傾斜面を介してアンカー部材に効率よく伝達することができる。また、固着作業がしやすい位置にアンカー部材を配置できるため、現場での施工性が向上し、アンカー部材の取り付け品質の信頼性が高くなる。
さらに、杭径より大きい拡径部材の外周部にアンカー部材を配置して取り付けることで、過密配筋がなく断面効率が高くなり強度が増すため、杭頭部が破壊されることなく品質の高い接合構造を実現できる。
本発明では、略多角錐台の周面形状を有する外鋼管部を複数に分割することによって、分割部材の形成をプレス加工等によって折り曲げて製作することができ、溶接を必要としないため、溶接量の低減により製造コストを大幅に削減することができる。
本発明では、第一の工程において、外鋼管部の製作や、杭頭部に外鋼管部を取り付ける作業を予め工場などで行うことができる。このように、工場等における作業では、とくに構造上重要となる溶接作業を作業性のよい場所で行えるため、安定した品質で杭頭部の接合構造を構築することができる。
そして、現場における溶接作業や組み付け作業を削減できるため、工期短縮を図ることができるうえ、施工の低コスト化を実現できる。
また、本発明の杭頭部の施工方法によれば、第一の工程において、杭頭部に外鋼管部を取り付けて製作する作業を例えば予め工場などで行うことができる。このため、安定した品質の接合構造を構築でき、さらに、現場における溶接作業や組み付け作業を削減できるため、工期短縮を図ることができるうえ、施工の低コスト化を実現できる。
本実施の形態による杭頭部の接合構造では、鋼管杭、SC杭(鋼管で被覆した既成コンクリート杭)、コンクリート充填鋼管杭など少なくとも外周部が鋼管からなる杭体1を対象としている。
図1に示すように、杭頭部の接合構造は、上記杭体1と、上端面が例えば正12角形の略多角錐台の周面形状を形成し杭体1の杭頭部2を囲う拡径部材3と、拡径部材3に一端を固着して上方の基礎梁4に埋め込まれる複数のアンカー部材5とから構成されている。
そして、杭頭部2に一体化して取り付けられる拡径部材3の長さ(オーバーラップ長L)は、杭体1の外径Dの0.5〜1.0倍程度を確保している(図2参照)。
そして、水平ダイアフラム8は、その内周部と杭頭部2の上端部とが第2接合部W2によって溶接などの固定手段で固着されている。また、その外周部と外鋼管部6の上端部とが第3接合部W3によって溶接などの固定手段で固着されている。このとき、水平ダイアフラム8は、杭頭部2の上端面とほぼ同一水平面を形成する高さに位置している。
また、図1及び図3に示すように、水平ダイアフラム8には、二箇所の貫通孔8bが設けられており、これらの貫通孔8bを利用して硬化材10を拡径部材3内に充填する構成となっている。なお、貫通孔8bは、充填孔とともに空気孔の機能を有し、水平ダイアフラム8に2箇所以上設けられていることがよい。
先ず、第一の工程では、図4(a)、(b)に示すように、外鋼管部6が周方向に複数、例えば4等分されて分割部材Bを形成し、この分割部材Bは予め工場等で製作される。本実施の形態では外鋼管部6が正12角形をなす略多角錐台であることから、分割部材Bは、例えば1枚の平板をプレス加工によって、杭頭部2を4つの分割部材Bで取り囲むことができるような3面の傾斜面6aを形成して折り曲げておく。
なお、この水平ダイアフラム8は、必ずしも複数に分割されるものでなく、閉鎖形で環状に形成したものであってもよい。
ここまでの第一の工程による作業は、現場に搬入する前に工場などで予め実施されるものであり、現場の施工状況に依存することがないので、品質が安定し、その後の現場の作業工程を短縮することができる。
ここで、杭体1の施工方法は、従来、一般的に行われている場所打ちコンクリート拡頭杭を築造する場合と同様の手順で実施するものであり、詳細な施工方法については説明を省略する。
杭体1の施工後、水平ダイアフラム8の表面の外周部に適宜数のアンカー部材5を固定手段によって固着する(図1乃至3参照)。なお、アンカー部材5の固着については、溶接などの固定手段によって固着するのが一般的であるが、ねじ締め手段など他の接合手段によって固着してもよい。例えば、雌ねじが形成されたカプラーを予め工場等で所定の取り付け位置に溶接しておき、基端部に雄ねじ部が形成されたアンカー部材8をカプラーにねじ込み挿入する接合構造としてもよい。
その後、アンカー部材5を埋め込むようにして基礎梁4を構築する。
硬化材10を空隙9に充填する作業については、基礎梁4を施工する段階と同時に実施してもよい。
なお、上述の施工方法に代えて、第一の工程の後に、第三の工程の硬化材10の充填作業を実施し、その後に第二の工程のアンカー部材5の取り付けを行ってもよい。あるいは、第二及び第三の工程を同時に施工してもよい。
そして、図1乃至3に示すように、杭径Dより大きい拡径部材3上端の外周部にアンカー部材5を取り付けできるので、過密配筋を解消することができ、断面効率が高くなり強度が増すため、杭頭部2の接合構造が破壊されることなく品質の高い剛接合を実現できる。
また、アンカー部材5が配置されている拡径部材3の外径を変えることによって、配筋密度を自在に調整することもできる。
さらにまた、アンカー部材5の取り付け位置は、アンカー部材5を固着するうえで作業性が良好な水平ダイアフラム8の表面となり、現場の施工性が向上し、アンカー部材5の取り付け部の信頼性が高まる。
このような杭頭部の接合構造としたことによりに、従来のひげ筋方式や内籠方式と比較して、杭頭部2の曲げ耐力や引抜き耐力を容易に増大することができ、杭頭部2の接合構造の高耐力化を図れ、杭頭部の破壊を防止できる。そして、杭体1の変形能力の高い接合構造を実現できるため、靭性のある細径の杭体1を採用でき、低コストで高い耐力と変形性能を発揮できる合理的な杭設計が可能となる。
また、杭頭部2に一体化して取り付けられる拡径部材3(外鋼管部6)の長さ(オーバーラップ長L)を従来工法の半分以下とすることができ、上記にある効果を得ることができる(図2参照)。例えばオーバーラップ長Lは、杭径Dの0.5〜1.0倍程度に短小化できるものであり、本実施の形態によると杭径Dの0.6倍である。
このように、現場における溶接作業や組み付け作業を削減できるため、工期短縮を図ることができるうえ、施工時の安全性を向上でき、施工の低コスト化を実現できる。
以上のことから、杭頭部2に拡径部材3を設置して接合構造を構成した杭体1は、十分な耐力を確保しながら経済性とともに施工性を大幅に向上することが可能となる。
例えば、実施の形態による杭頭部の接合構造では、水平ダイアフラム8を設けた拡径部材3としているが、水平ダイアフラム8を設けないで、アンカー部材5を外鋼管部6の外周面に直接取り付ける構造としてもよい。
また、本実施の形態による杭頭部の施工方法では、第一の工程で杭頭部2に拡径部材3を取り付ける作業を工場等で実施しているが、必ずしもこれにこだわるものではなく、現場の作業性などを考慮し、必要に応じた場所で第一の工程を実施すればよい。
さらに、本実施の形態では、外鋼管部6と水平ダイアフラム8とによって形成される拡径部材3を正12角形の略多角錐台としているが、これに限らず、その他の略多角錐台や、略円錐台でもよい。
さらにまた、本実施の形態では、外鋼管部6や水平ダイアフラム8が等分割されて分割部材Bを形成しているが、等分割でなくてもよく、また分割しない外鋼管部6や水平ダイアフラム8を杭頭部2に嵌め込む方法を採用してもよい。
2 杭頭部
3 拡径部材
4 基礎梁(基礎)
5 アンカー部材
6 外鋼管部
7 間隙
8 水平ダイアフラム
8b 貫通孔
9 空隙
10 硬化材
B 分割部材
D 杭径
L オーバーラップ長
Claims (6)
- 杭体を構造物の基礎に接合するための杭頭部の接合構造であって、
前記杭頭部を囲うように取り付けられていて杭頭部より拡径された上端から下端に向けて縮径する略多角錐台又は略円錐台の周面形状を有する外鋼管部と、
前記杭頭部と前記外鋼管部とに囲まれた空隙に充填される硬化材とからなる拡径部材と、
前記外鋼管部の上端と前記杭頭部との間隙を閉塞するようにして前記外鋼管部に溶接された水平ダイアフラムと、
前記拡径部材に所定間隔で固着されていて前記構造物の基礎に埋め込まれる複数のアンカー部材と、
を備え、
前記外鋼管部の長さが杭径の0.5〜1.0倍であることを特徴とする杭頭部の接合構造。 - 前記水平ダイアフラムは、周方向に複数に分割されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の杭頭部の接合構造。
- 前記水平ダイアフラムには、前記硬化材を充填するための貫通孔が備えられることを特徴とする請求項2に記載の杭頭部の接合構造。
- 前記アンカー部材の一端が前記拡径部材の外周部に固着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の杭頭部の接合構造。
- 前記外鋼管部は、周方向に複数に分割されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の杭頭部の接合構造。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の杭頭部の接合構造を有する杭頭部の施工方法であって、
略多角錐台又は略円錐台の周面形状からなる前記外鋼管部を前記杭頭部を囲うように取り付ける第一の工程と、
前記拡径部材の所定の位置に前記アンカー部材の一端を固着させ、前記アンカー部材が鉛直方向に延在するように配置させる第二の工程と、
前記杭頭部と前記外鋼管部とに囲まれた空隙に、前記硬化材を充填する第三の工程とから構成され、
第一の工程の次に、第二又は第三の工程のいずれかを施工し、あるいは第二及び第三の工程を同時に施工することを特徴とする杭頭部の施工方法。
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