JP4517462B2 - 非水電解液処理用ゼオライト及び非水電解液の製造方法 - Google Patents

非水電解液処理用ゼオライト及び非水電解液の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な非水電解液処理用ゼオライト及び非水電解液の製造方法に関するものであって、詳しくは、SiO2/Al23モル比が1.9以上2.1以下の結晶性低シリカフォージャサイト型結晶構造から成る非水電解液処理用ゼオライトとこれを脱水処理に使用する非水電解液の製造方法に関するものである。
【0002】
ゼオライトは、シリカ構造のケイ素(Si)の一部がアルミニウム(Al)で置換されたアルミノケイ酸塩であって、骨格自体が負電荷を持つことから構造内にカチオンが分布した構造を持つ。このカチオンがイオン交換可能な場合には、イオン交換体としての機能を発現する。またカチオンの種類や数およびカチオンに水和した水分子の数によって種々のサイズの空孔を持つことから、脱水によってゼオライト構造中の水分子を除去することでモレキュラーシーブや脱水剤として使用できる。これらの特徴から、ゼオライトは現在工業的に合成され幅広い用途に適用されている材料である。
【0003】
非水電解液は非水溶媒に電解質を溶解させたもので、水溶液系電解液中では不安定な物質を安定に存在させることが可能である。その用途としては、例えば水溶液系では不安定な金属イオンの析出反応いわゆるメッキ反応用の電解液として、またリチウム電池に代表される電池の電解液、およびキャパシター用の電解液などが挙げられる。
【0004】
【従来の技術】
水溶液系で不安定な金属イオンをメッキするための電解液や、リチウム電池などの電池用電解液、およびキャパシター用電解液への適用などにおいては、非水電解液中の水分除去は極めて重要である。これらなどの用途では、通常水分量は50ppm以下に管理する必要があり、非水電解液としては脱水処理したものが利用されている。特にリチウム二次電池への適用では、非水電解液中の水分の存在によって電池の負極性能が低下したり電解質塩の分解が促進するなどの理由から、非水電解液中の水分除去は極めて重要な課題である。
【0005】
これまで提案されている非水電解液の脱水処理方法としては、非水溶媒と電解質のそれぞれを個別に乾燥処理した後に混合して電解液を調整する方法、非水溶媒と電解質とを混合したものを共沸脱水する方法(特開昭58−28174号公報)、ゼオライトで脱水処理する方法(特開昭59−224071号公報)および両者を組み合わせた方法(特開平7−235309号公報)などが例示され、技術的には、▲1▼蒸留または乾燥によって脱水を行う方法、▲2▼ゼオライトで脱水を行う方法の2つに大別される。
【0006】
▲1▼の方法には、非水溶媒と電解質をそれぞれ個別に乾燥処理した後に混合して電解液を調整する方法、非水溶媒に電解質を溶解させた非水電解液の状態で共沸脱水する方法が挙げられるが、前者の場合には非水溶媒と電解質の混合過程で水分が混入し易くなり、後者の共沸脱水では十分に水分を除去することが困難で、いずれも50ppm以下の水分量とすることはかなり困難である。
【0007】
▲2▼の方法はゼオライトの水分吸着能によって非水電解液中の水分を除去する方法である。先に述べたように、ゼオライトにはイオン交換可能なカチオンが存在し、脱水処理中に電解液のリチウムイオンとゼオライト中のカチオンとのイオン交換反応が起こる。このため、水分は除去されるものの、ゼオライト中のカチオンが不純物として電解液を汚染してしまう。この問題を解決する手段として、ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンを予め汚染源とならないカチオンでイオン交換しておくことが考えられ、例えばリチウム電池用非水電解液においてはリチウムでイオン交換しておく方法(特開昭59−224071号公報)が提案されている。これ以外にも、電解液と長時間接触させないことでゼオライト中のカチオンとのイオン交換反応を抑制させる方法(特開平7−235309号公報)も提案されているが、これらの提案はいずれもゼオライトの使用方法の改良を図ったもので、ゼオライト自身の性能を改善させるものではなく、ゼオライトの本質的な脱水能力の向上に関しての提案ではない。
【0008】
以上のように、これまで提案されている脱水方法では十分に水分を脱水することが困難であり、特に、ゼオライトを使用した脱水においては使用するゼオライト自身の改良および最適化を行うことが必要であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規な非水電解液処理用ゼオライトとこれを利用した水分含有量の少ない非水電解液の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決することを目的に検討を行った結果、SiO/Alモル比が1.9以上2.1以下の(ナトリウム(Na),カリウム(K))型結晶性低シリカフォージャサイト型結晶構造から成るゼオライトは非水電解液から水分を除去する能力が優れていること、さらにこれを用いて脱水処理を行うことで水分含有量の少ない非水電解液を容易に製造できること、を見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
【作用】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明の非水電解液の脱水処理においては、結晶性低シリカフォージャサイト型構造から成るゼオライトを使用することが必須である。本発明のゼオライトを用いて非水電解液の脱水処理を行うことで、短時間で水分量を50ppm以下まで低下させることが可能となる。詳細については不明だが、シリカ比が低いフォージャサイトであることによる結晶構造や吸着サイトの形態およびゼオライトの静電的性質が他のゼオライトと比較して非水電解液中の水分の除去に対して効果的であるためと考えられる。また、本発明のゼオライトでは、短時間に水分量を低下させることが可能であることから、従来、ゼオライトを使用した場合の課題であったゼオライト中のイオン交換可能なカチオン種の非水電解液への溶出が抑制され、脱水後の不純物の濃度を低くすることが可能となる。
【0013】
本発明の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトは、SiO/Alモル比が1.9以上2.1以下のナトリウム(Na),カリウム(K))型結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトである。このゼオライトにおける母ゼオライトのSiO/Alモル比は理論的には2.0になるが、化学組成分析の測定上の誤差を考慮した場合には1.9以上2.1以下の組成の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトが本発明の範囲に入る。
【0014】
SiO2/Al23モル比が1.9以上2.1以下の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトを合成する方法としては種々の方法が開示されており、例えば特公平5−25527号公報に記載されている方法で合成することが可能である。
【0015】
本発明の非水電解液の脱水処理において、ゼオライト中のNaまたはKが非水電解液へ溶出が問題となる場合には、予め問題とならないカチオンでイオン交換することが可能である。特に制限されるものではないが、Li、ストロンチウム(Sr)、K、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等が例示される。特に、リチウム電池用電解液の脱水処理では、(Na,K)の少なくとも一部がリチウム(Li)でイオン交換されたものを使用することが好ましい。詳細については不明だが、リチウム電池では電解液中にLiと同じアルカリ土類金属が存在すると負極の性能が低下することが指摘されている。このため、(Na,K)の少なくとも一部を予めLiでイオンしておくことが好ましく、95%以上をLiでイオン交換されたものがさらに好ましい。
【0016】
イオン交換は、所望のカチオンを含むイオン交換液とゼオライトとを接触させることで行うことができる。イオン交換に使用する化合物としては、イオン交換を行うことが可能なものであれば特に制限されることはないが、水溶液として容易に提供できるものが好ましく、この場合、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩が例示される。水溶液系でイオン交換を行う場合には、イオン交換液の濃度はイオン交換速度を考慮して通常は1〜4規定程度の範囲の濃度が好ましい。また、イオン交換液はイオン交換時にゼオライト結晶が破壊されないようにするためにアルカリ性であることが好ましく、通常は交換カチオンの水酸化物等を添加することによってpHの値で9〜12に調整して実施することが好ましい。
【0017】
イオン交換の方法としては、通常、回分接触やカラム流通法が用いられる。全体を一様にイオン交換するためには、回分接触法の場合には接触する交換イオンの比率を高くすること、カラム流通法ではある程度まで流通速度を遅くすることによって効率よくイオン交換するすることが可能であり、イオン交換種の性質にあわせて前記手法のいずれかまたは組み合わせてイオン交換を行うことが重要である。
【0018】
本発明の非水電解液処理用ゼオライトの形態は成形体であることが望ましい。
粉末の状態で使用すると脱水効率が高く、より短時間で脱水を行うことが可能となるが、脱水処理する非水電解液の種類によっては電解液中にゼオライトが浮遊する可能性があり、例えばデカンテーションやろ過などによる浮遊成分の除去工程が必要となる。これに対して、形態を成形体とすることで脱水効率は粉末の場合に比べて低くなるものの、電解液中でのゼオライトの浮遊がなくなり、より効率の良い脱水処理が可能となる。成形体の形状は例えばビーズ状、球状、楕円状、ペレット状などが例示されるが、非水電解液の脱水処理に使用した際に成形体として安定に形態を保持できるものであれば特に制限されない。
【0019】
本発明の非水電解液処理用ゼオライトを成形体として使用する場合には、成形体の全マクロ細孔の全容積が0.25cc/g以上、細孔表面積が20m2/g以上、平均細孔径が2000Å以上であることが必須である。なお、ここで言うマクロ細孔径とは、水銀圧入法により1〜30,000psiの圧力範囲で測定され細孔直径が60Å〜200μmの範囲の細孔を示す。また、細孔表面積は測定で得られた細孔直径と細孔容積の関係から、平均細径は全細孔容積の50%量となる時の細孔直径(中位直径)あるいは細孔直径分布曲線の勾配が最大となるときの直径(最頻直径)をそれぞれ示す。
【0020】
前述したとおり、ゼオライト粉末を単純に成形体にした場合では電解液との接触界面が少なくなり、脱水効率が低くなることが考えられ、このため結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトが備える高い脱水性能を発揮することが困難になると考えられる。この課題を解決するために鋭意検討した結果、成形体の全マクロ細孔の全容積が0.25cc/g以上、細孔表面積が20m2/g以上、平均細孔径が2000Å以上であれば粉体の場合と同等の脱水性能を示すことを見出した。全容積、細孔表面積および平均細孔径の値は非水電解液の脱水処理に使用した場合に成形体の破損が認められない限り、より大きくすることで効率良く非水電解液から水分を除去することが可能となる。なお、上記物性値を示す一般的な合成ゼオライトの作成方法としては、例えば、特開昭54−124539号公報、特開昭62−283812号公報および特開平9−308810号公報が例示される。
【0021】
本発明の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトにおいては、ゼオライト含有率が95%以上であることが好ましい。一般に、ゼオライトを成形する場合には、結合剤として粘土鉱物が使用される。使用される粘土鉱物は層状化合物で、層間に水分子とそれに付随してNaやK等のカチオンが存在する。結合剤の含有量が多くなるほど電解液の脱水処理に使用した際の不純物カチオンの溶出が多くなることが考えられ、従って成形体の形を維持できる範囲で可能な限り結合剤量を低減することが必要となる。詳細については不明だが、結合剤量を変化させてゼオライト成形体を作成し、ゼオライト含有率と不純物カチオンの非水電解液への溶出量との関係を調べたところ、特にNa等の不純物の溶出が問題となるリチウム電池用電解液の脱水処理において、ゼオライト含有率を95%以上とすることで、NaやKの溶出量を数ppm程度に抑制できることが分かった。ゼオライト含有率を95%以上とする方法としては、結合剤に粘土鉱物にカオリナイト等の本発明のゼオライトと同じSiO2/Al23モル比を持つ材料を用いて、水熱処理によってゼオライト化することで達成可能である。この方法によって、成形体の強度を維持した状態でゼオライト含有率を95%以上とすることが可能となる。なお、ゼオライト含有率、言い換えるとゼオライトの結晶純度は、粉末X線回折測定、気体吸着量測定、水分吸着量測定、NMR測定などによって行うことが可能である。
【0022】
本発明の非水電解液の脱水処理において、予めゼオライトを脱水処理することによって水分を除去することが必要である。水分除去の方法としてはゼオライトから水分が除去される条件であれば特に制限されるものではないが、ゼオライト自体の耐熱性を考慮すれば、できる限り低温で素早く水分を除去させることが好ましく、乾燥した雰囲気において通常600℃以下の温度で1時間程度熱処理することで達成される。
【0023】
本発明のゼオライトを用いた脱水処理において、その脱水処理方法としては非水電解液とゼオライトが接触する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明のゼオライトを充填したカラムに電解液を流通させる方法、または調整した非水電解液に本発明のゼオライトを加えて静置または攪拌する方法などが例示される。また、電解液の種類に関しては、特に制限されることなく、本発明のリチウム二次電池の電解質は、特に制限されないが、例えば、炭酸プロレン、炭酸ジエチル等のカーボネート類や、スルホラン、ジメチルスルホキシド等のスルホラン類、γブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド等のエーテル類の少なくとも1種類以上の有機溶媒に、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸等のリチウム塩、4級アンモニウム塩等の少なくとも1種類以上を溶解したものが例示される。
【0024】
以上述べてきたとおり、本発明者らは、検討によってSiO2/Al23モル比が1.9以上2.1以下の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトが非水電解液の脱水に対して高い活性を示すこと、およびこれを非水電解液の脱水処理に使用すことで、メッキ反応用の電解液として、またリチウム電池に代表される電池の電解液、およびキャパシター用の電解液などに適用可能な、水分含有量の少ない非水電解液を容易に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
以下に、本発明に関して実施例および比較例を用いてさらに本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。脱水処理後の電解液中の水分量および不純物量は以下の方法で測定した。
【0026】
(1)水分量の測定
脱水処理後の電解液を用いて、カールフィッシャー水分計(三菱化学製 水分測定器:CA−06型)を使用した電量滴定によって水分量を測定した。
【0027】
(2)不純物の測定
脱水処理後の電解液2mlに塩酸(35% HCl)10mlと過酸化水素水(35% H22)1mlを加えてメスフラスコを用いて蒸留水で1000mlに希釈した。希釈液を用いて、ICP測定により不純物元素量を定量した。
【0028】
【実施例】
実施例1
市販の炭酸プロピレン(キシダ化学 試薬特級)に六フッ化リン酸リチウム(試薬特級 キシダ化学)を1モル濃度になるように溶解した非水電解液を調整した。調整した電解液の水分量およびNa、K量をそれぞれカールフィッシャー水分測定およびICP測定で測定した結果、以下のとおりであった。
【0029】
水分量 238ppm
Na 2ppm
K 1ppm
調整した非水電解液の500mlに500℃にて1時間脱水処理を行った結晶性低シリカホージャサイト型ゼオライト(化学組成:0.72Na2O・0.28K2O・Al23・2.0SiO2,ゼオライト純度90%)の100gを加えて3日間静置した。静置後の電解液の水分量およびNa、K量をそれぞれカールフィッシャー水分測定およびICP測定で測定した結果、以下のとおりであった。
【0030】
水分量 15ppm
Na 4ppm
K 3ppm
実施例2
ゼオライトに直径が1.2〜2.0mmのビーズ状の結晶性低シリカホージャサイト型ゼオライト(化学組成:0.72Na2O・0.28K2O・Al23・2.0SiO2,ゼオライト純度98%)を用いた以外は、実施例1と同様な処理を行った。静置後の電解液の水分量およびNa、K量をそれぞれカールフィッシャー水分測定およびICP測定で測定した結果、以下のとおりであった。
【0031】
水分量 11ppm
Na 2ppm
K 2ppm
比較例1
ゼオライトに市販のA型ゼオライトのモレキュラーシーブ3A(和光純薬製)を用いた以外は実施例1と同様な処理を行った。
【0032】
静置後の電解液の水分量およびNa、K量をそれぞれカールフィッシャー水分測定およびICP測定で測定した結果、以下のとおりであった。
【0033】
水分量 185ppm
Na 5ppm
K 7ppm
【0034】
【発明の効果】
以上述べてきたとおり、本発明者らは、検討によってSiO/Alモル比が1.9以上2.1以下の(ナトリウム(Na),カリウム(K))型結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトが非水電解液の脱水に対して高い活性を示すこと、およびこれを非水電解液の脱水処理に使用すことで、メッキ反応用の電解液として、またリチウム電池に代表される電池の電解液、およびキャパシター用の電解液などに適用可能な、水分含有量の少ない非水電解液を容易に製造できることを見出した。
【0035】
非水電解液から容易に脱水を行うことができるゼオライト、およびこれを用いた水分含有量の少ない非水電解液の製造方法を見出したことは産業上有益な知見である。

Claims (5)

  1. SiO/Alモル比が1.9以上2.1以下の(ナトリウム(Na),カリウム(K))型結晶性低シリカフォージャサイト型結晶構造から成る非水電解液処理用ゼオライト。
  2. 請求項1に記載のゼオライトのイオン交換可能なカチオンの少なくとも一部がリチウムで交換されている非水電解液処理用ゼオライト。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の非水電解液処理用ゼオライトの形態が成形体であって、該成形体の全マクロ細孔の全容積が0.25cc/g以上、細孔表面積が20m/g以上、平均細孔径が2000Å以上であることを特徴とする非水電解液処理用ゼオライト。
  4. 請求項1乃至請求項3に記載の非水電解液処理用ゼオライト中のゼオライト含有率が95%以上である非水電解液処理用ゼオライト。
  5. 請求項1乃至請求項4記載の非水電解液処理用ゼオライトを使用して非水電解液中の水分を除去することを特徴とする非水電解液の製造方法。
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