JP3309774B2 - 耐熱性低シリカゼオライト及びその製造方法、並びに用途 - Google Patents

耐熱性低シリカゼオライト及びその製造方法、並びに用途

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来にない高い耐
熱性を有するSiO2/Al23モル比が1.9〜2.
1の新規低シリカゼオライト及びその工業的な製造方法
並びに用途に関する。
【0002】高い耐熱性を有するSiO2/Al23
ル比が1.9〜2.1の新規低シリカゼオライトは、各
種イオン交換後も高い耐熱性を有し、例えば酸素と窒素
の混合ガスから吸着法によって酸素を分離濃縮するゼオ
ライト吸着分離剤として、あるいは、CO2ガス吸着剤
として極めて優れた性能を有する。
【0003】
【従来の技術】SiO2/Al23モル比が1.9〜
2.1である低シリカゼオライト(以下LSXと表記)
は、酸素を製造するための吸着剤母剤、あるいはCO2
ガス吸着剤として優れた性能を有することが知られてい
る。
【0004】しかし、従来はLSXを工業的に製造する
技術がなかった上に、なおかつ従来提案されているラボ
実験的な手法で調製されたLSXをイオン交換した吸着
剤は耐熱性に劣っていたため、工業的な実用化に至って
いなかった。
【0005】米国特許3140933号、特公平5−2
5527号及びUSP5268023号等においてリチ
ウムでイオン交換した従来のLSXの性能が評価されて
おり、また特開昭61−254247号、特開平6−2
3264号及びUSP5454857号等においてカル
シウムでイオン交換した従来のLSXの性能が示されて
いる。
【0006】しかし従来知られているLSXは、少量の
サンプルを何日もかけて調製する実験室規模の合成手法
によるものであり、工業的な量産ができるものではな
く、かつその様な手法によて得られたLSXは耐熱性が
不十分なものであった。
【0007】従来の先行文献にはSiO2/Al23
ル比が1.9〜2.1のLSXの実験室的な調製方法に
関して以下の方法が開示されている。
【0008】例えば、GB1,580,928号特許
(対応日本特許:特開昭53−8400号)では、ナト
リウム、カリウム、アルミネート及びシリケートを含む
混合物を50℃以下の温度で結晶化するか、あるいは5
0℃以下の温度で熟成し、ついで60℃〜100℃の温
度範囲で結晶化する方法が開示されている。しかし当該
方法では、高純度なLSXを調製する時間が実質的に5
0時間以上かかる非工業的な手法が開示されているに過
ぎず、当該方法によって得られるLSXの耐熱性も不十
分なものであった。また、本特許は、東ドイツ国特許4
3221号に開示されている範囲を詳細に追試したもの
であるが、東ドイツ国特許43221号の方法で得られ
ているLSXも水分吸着量が低く、高純度なものが得ら
れなかった。ちなみに、これらの特許ではLSXの調製
条件として極めて広い条件範囲を示してあるが、その中
にはLSXが得られない範囲まで入っている。この特許
の発明者等は後に学術文献(Zeolite 198
7.Vol.7,p451〜457)でLSXの合成に
関して詳細に報告している。当該文献ではシールされた
プラスチック容器を用いて97%以上の高純度なLSX
を得ているが、この方法では耐熱性を改善したLSXは
得られなかった。また当該文献の実施方法も小スケール
の実験方法の手法と明記され、熟成から結晶化までオー
ブンに静置して反応する方法であるため、工業的な大ス
ケールに対応できるものではなかった。
【0009】USP4,859,217号(対応日本特
許:特公平5−25527号)では、ナトリウム、カリ
ウム、アルミネートを含む混合物とシリケートを含む混
合物を低温4〜12℃で混合、ゲル化し、次いでこのゲ
ルを36℃で熟成後、70℃に昇温し結晶化する方法が
開示されている。しかし、当該特許の出願時期(198
7年6月30日)においてさえゲル化に2〜3日かける
ことが示されており、なおかつ過大な機械的エネルギー
を回避することが重要である旨が明記されていた。
【0010】以上のことから、現在においても当業界に
おいてはLSXの合成には長時間が必要であり、なおか
つ機械的エネルギーの付与、すなわち撹拌ができず、さ
らにそれ自身に耐熱性を付与することはできないという
問題点が未解決のまま放置されていた。
【0011】一方、別の方法として、USP4,60
3,040号(対応日本特許:特開昭61−22291
9号)においては、原料のアルミナ源及びシリカ源とし
てカオリンクレーを用い、撹拌を行ってもLSXが得ら
れることが開示されている。
【0012】しかし当該方法では、反応時間が100時
間以上行っても、ゼオライト全体に対するLSX含有率
が60%程度しかなく、不純物として10%以上ものA
型ゼオライトが副生しており、高純度なLSXを製造す
るのに撹拌という機械的エネルギーの付与ができないこ
とを再確認したに過ぎなかった。さらに、得られる「巨
視的凝結物体」は粒径が50μmを超え、圧力スイング
吸着法(以下PSA法と表示)により、空気中の窒素ガ
スを吸着させ、高純度の酸素ガスを得るのに使用する低
シリカゼオライトのイオン交換体の母ゼオライトとして
使用すると、窒素ガス吸着が不十分となり、PSAガス
分離用低シリカゼオライトの母材として使用するのに適
しない。また、同様の理由で、CO2ガス吸着剤として
も適しない。
【0013】以上、これまで当該技術分野では、低シリ
カX型ゼオライト(LSX)は静置状態でなおかつ長時
間反応して初めて高純度なものが得られることが常識で
あり、その後、工業化可能な製法、それを用いたLS
X、さらにそれに関する耐熱性の向上に関する報告はな
かった。
【0014】そのためこれまではLSXを母ゼオライト
として用いた吸着剤が高性能であることが実験室上で確
認、かつ提案されていたに過ぎず、工業的には実施でき
なかった。
【0015】工業的なPSA法による酸素ガス製造は主
に製鐵炉、ガラス溶解炉、漂白及び発酵等に用いられて
おり、吸着剤は一度に数トンから数十トン単位で用いら
れるため、当業界における工業的とは一度に数キロ単位
ではなく、数トン単位以上の工業的生産規模の実施をさ
すものである。
【0016】LSX母剤を用いた吸着剤としては、これ
までにリチウムイオン交換したもの及びカルシウム、ス
トロンチウム等アルカリ土類金属カチオンでイオン交換
したもの、及びリチウムカチオンとアルカリ土類金属等
の他のカチオンの複合カチオンで交換したものが報告さ
れている。いずれの報告も、先に示した実験室規模で調
製した耐熱性のないLSXを用いている(例えば、US
P5,152,813号)。
【0017】リチウムイオンでイオン交換したフォージ
ャサイトが窒素吸着に優れることはUSP3,140,
923号により既に公知であり、特にリチウムイオン交
換率が高い方が高性能であること、及びフォージャサイ
トとしてSiO2 /Al2 3 モル比が2.0まで用い
れることが示されている。しかし当該報告にはフォージ
ャサイトの耐熱性に関しては触れられていない。
【0018】高度にリチウムイオン交換したフォージャ
サイトに関してはUSP4,859,217号(対応日
本特許:特公平5ー25527号)、USP5,26
8,023号他において再評価されており、性能が詳細
に報告されている。しかし当該報告においてもLSXの
調製には従来法を用いており、耐熱性に劣るものであっ
た。
【0019】USP4,859,217号の発明者(C
hien C. Chao)は、別の特許、USP5,
174,979号でリチウムでイオン交換したフォージ
ャサイトが熱に弱いという欠点を有することを指摘して
おり、その対応策としてリチウムイオンとアルカリ土類
イオンの混合イオン交換によるフォージャサイトによる
耐熱性向上を報告している。しかしリチウムイオンとア
ルカリ土類イオンの混合イオン交換によるフォージャサ
イトでは、耐熱性は向上するものの、吸着特性が特に低
温領域で著しく低下するため、耐熱性を向上する価値が
なかった。
【0020】LSXを母ゼオライトに用い、交換カチオ
ンとしてアルカリ土類金属カチオンのカルシウム、スト
ロンチウム等を用いる吸着剤が、特開昭61−2542
47号、USP5,173,462号、USP5,45
4,857号等に開示されている。しかしいずれの報告
も、GB1,580,928号特許(対応日本特許:特
開昭53−8400)等で開示されているような従来の
ラボ実験処方によるLSXを用いたことが示されてお
り、リチウムイオン交換の場合と同様に耐熱性において
不十分なものであった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】LSXは優れた性能を
発揮する可能性があるにもかかわらず、それを工業的に
製造することができず、なおかつ従来手法ではLSXの
耐熱性が不十分であったため、工業的にPSA法による
ガス分離等を実施することが困難であった。
【0022】そこで耐熱性の高い新規なLSX及びその
工業的に製造可能な方法が強く望まれていた。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、LSXの
工業的生産技術に関して鋭意検討を重ねた結果、反応原
料の混合条件により該原料ゲルの粘度及びBET比表面
積等を制御し、熟成及び昇温時に撹拌することによって
高純度なLSXが得られることを見出し、なおかつこの
様な方法で得られたLSXは従来にない高い耐熱性を示
す新規物質であることを見出し、長く世の中で求められ
ていたLSX製造の工業化、特に耐熱性まで兼ね備えた
新規LSXの製造の工業化を可能とし、さらに当該LS
Xを母ゼオライトとして用いた各種カチオン交換吸着
剤、特にリチウム交換体、又はアルカリ土類交換体にお
いても高い耐熱特性が維持され、かつ優れた空気分離特
性を有する新規物質であることを見出し、本発明を完成
するに至ったものである。
【0024】まず最初に本発明の母ゼオライトLSXの
製造方法について説明する。
【0025】本発明者らは、SiO2/Al23モル比
が1.9〜2.1のLSXを工業的に有利でスケールア
ップが安易な条件で合成する方法ついて鋭意検討した結
果、アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液を
0℃以上60℃以下の温度で混合、ゲル化し、スラリー
の粘度が10cpから10000cpとなるように撹拌
し、均一に流動化させ、熟成後のスラリーに含まれる無
定形アルミノシリケートの比表面積を10m2/g以上
かつSiO2/Al23モル比が1.9から2.1とな
るように混合することにより、これまで考えられていた
静置熟成を行うこと無しにLSXを製造することが可能
となることを見いだした。
【0026】さらにSiO2/(Na2O+K2O)モル
比が1.0未満のケイ酸アルカリ水溶液とAl23
(Na2O+K2O)モル比が1.0未満のアルミン酸ア
ルカリ水溶液とを混合することにより、上記した条件の
スラリーを容易に合成することが可能となることを見い
だし、特にNa2O/(Na2O+K2O)モル比が0.
5以上0.75未満、特に0.5以上0.65未満にお
いて耐熱性に優れた低シリカゼオライトを製造すること
が可能となることを見いだし、本発明に到った。
【0027】なお、本発明におけるLSXのSiO2
Al23モル比は理論的には2.0であるが化学組成分
析の測定上の誤差等を考慮した場合、1.9〜2.1の
組成のLSXが本発明の範囲に入ることは明らかであ
る。
【0028】本発明におけるアルミネートを含む溶液と
は市販のアルミン酸ナトリウムを水に溶解したものや、
水酸化アルミニウムを水酸化ナトリウムで溶解したも
の、さらにこれらに水、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウムを混合したものを例示することができる。ここで、
アルミネートを含む溶液中のアルミニウム(Al)成分
の濃度はとくに限定されないがAl23として30重量
%以下、好ましくは25重量%以下である。この範囲に
あれば、アルミネートを含む溶液は粘度が低く、シリケ
ートを含む溶液との混合が容易である。
【0029】本発明の方法において用いられるシリケー
トを含む溶液としては、市販の3号ケイ酸ソーダやケイ
砂等を水酸化ナトリウムに溶解したもの、さらにこれら
に水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを混合したも
のを例示することができる。
【0030】シリケートを含む溶液中のケイ素(Si)
成分の濃度は特に限定されないが、SiO2として40
重量%以下、好ましくは30重量%以下である。この範
囲にあれば、シリケートを含む溶液は粘度が低く、混合
が容易である。
【0031】この様なアルミネートを含む溶液とシリケ
ートを含む溶液を混合し、ゲル化させる。このときの混
合温度は0℃〜60℃以下の範囲であり、特に20℃〜
60℃以下の範囲ることが好ましい。本発明における混
合温度とはアルミネートを含む溶液とシリケートを含む
溶液との混合が終了した時点の温度のことを示し、アル
ミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液のいずれか
がこの温度を逸脱していても、混合終了時に混合液の温
度が0℃〜60℃の範囲にあればよく、原料溶液の温度
を規定するものではない。
【0032】混合液の温度を0℃〜60℃の範囲にする
理由としては、混合温度が60℃を越えた場合、A型や
P型ゼオライトの副生が避けられず単相のLSXを合成
することは困難となるためである。一方、0℃以上20
℃未満の混合温度でもLSXを合成することは可能であ
るが、冷凍機等の高価な冷却設備が必要であるだけでな
く、熟成、結晶化を行うために多量の熱を与える必要が
あるため、より実用的には20℃以上である。
【0033】混合方法、混合序列等については、公知の
方法を用いることができ、特に限定されるものではな
く、例えば、反応容器にアルミネートを含む溶液を張り
込みこれにシリケートを含む溶液を添加してもよく、ま
た逆にシリケートを含む溶液を反応容器に張り込みこれ
にアルミネートを含む溶液を添加したり、さらに、反応
容器に水等を張り込み、アルミネートを含む溶液とシリ
ケートを含む溶液を同時に添加してもよく、本発明の目
的を達するものであればどのような混合方法、混合序列
等を用いても良い。
【0034】混合が終了した時点におけるモル組成比は SiO2/Al23 1.3〜2.2 (Na2O+K2O)/SiO2 2.0〜4.5 Na2O/(Na2O+K2O) 0.5〜0.75 H2O/(Na2O+K2O) 10〜35 であり、特に、 Na2O/(Na2O+K2O) 0.5〜0.65 の範囲であることが好ましい。それぞれのモル比が範囲
を逸脱すると、A型ゼオライト、ソーダライト、P型ゼ
オライト等の不純物が大量に生成し、純粋なSiO2
Al23が1.9〜2.1の低シリカゼオライトが得ら
れない。
【0035】本発明のNa2O/(Na2O+K2O)モ
ル比で、特に好適な組成範囲においては、従来は高純度
なLSXが生成しない範囲と考えられいた。例えば、Z
eolite 1987 Vol.7 453頁、図4
によれば、LSX生成率が80%未満であり、従来の静
置反応技術では高純度なLSXは得られない。(比較例
2参照) この様にして原料を混合すると、通常、原料の混合時、
あるいは混合終了後に無定形アルミノシリケートゲルが
生成する。
【0036】ここで、従来の知見では、原料溶液を低温
で混合し、各成分が均一に混合された透明溶液を一度調
製し、これを昇温してゲル化が始まった時点で攪拌を停
止し、機械的なエネルギーを与えない静置状態で熟成を
行うこと(ゲル化前あるいはゲル化と同時に攪拌を停止
し、ゲル全体の均一性を保ったまま静置熟成、静置昇
温、静置結晶化を行い、SiO2/Al23モル比が
1.9〜2.1のLSXを合成すること)が必須である
と考えられていた。
【0037】しかしながら、本発明者らがゲルの均一性
に着目し鋭意検討を行った結果、上記した従来考えられ
てきた最終混合後の静置および過大な機械的エネルギー
の回避が重要であるということとは全く逆で異なる方
法、すなわち、例えば強力な攪拌等を行いゲルの粘度を
一定の範囲となるようにゲル全体を均一にスラリー化す
ることにより、高純度でなおかつ耐熱性の高い新規なL
SXを製造することができることを見いだした。
【0038】本発明においては生成するスラリーの粘度
が10cp〜10000cpとなるように原料の混合条
件および攪拌条件を設定することが必須である。
【0039】スラリーの粘度が10000cpよりも大
きくなると、反応容器内部で、スラリーの攪拌されてい
る部分と停滞している部分が生じ、ゲル全体の均一性が
変化すると考えられ、単相のLSXを得ることは困難と
なり好ましくない。また、スラリーの粘度を10cpよ
りも低くした場合、結晶化工程においてゲルが沈降、分
離するため、単相のLSXを得ることは困難となり好ま
しくない。従って、スラリーの粘度を上記の範囲に保つ
ためには、例えば強力な攪拌を行い、原料の混合中ある
いは混合後に生成するゲルを解砕、流動化させることが
好ましい。その場合の撹拌の方法については特に限定さ
れるものではなく、公知の方法を用いて実施すれば良
い。
【0040】引き続いて生成したスラリーの熟成を行
う。熟成の温度、時間は特に限定されないが、その温度
として20℃〜60℃の範囲であることが好ましい。こ
の範囲にあれば、熟成に長時間を必要とすることもな
く、また、高温の条件で生成することがある不純物の生
成を抑えることができるためである。具体的な熟成温度
と時間としては、36℃〜50℃で4時間〜24時間の
熟成等を例示することができる。
【0041】粘度が10cp〜10000cpとなるよ
うに調製し、全体の均一性が優れたスラリーは熟成を攪
拌下で行ってよい。また、スラリーが目的とする熟成温
度達した後は既に全体が均一なため、攪拌しても撹拌を
停止した静置状態いずれでもよい。
【0042】本発明者は更に検討を加えた結果、上記し
たスラリー粘度だけでなく、生成した無定形アルミノシ
リケートゲルの粒子が微細で、熟成後も10m2/g以
上の比表面積を保ち、かつSiO2/Al23モル比が
1.9〜2.1となるように原料を混合することが低シ
リカフオージヤサイト型ゼオライトを合成するための必
須条件であることを見いだした。原料を混合したときに
生成する無定形アルミノシリケート粒子が微細で活性で
あるとLSXの生成に有利であり、熟成後も比表面積が
10m2/g以上を保つことができれば、高純度のLS
Xが生成することができる。ここで、熟成後のゲルの比
表面積が10m2/g未満であるとA型ゼオライト等の
大量の副生が避けられず、高純度のLSXを合成するこ
とは困難である。一方、熟成後の比表面積の上限は約6
0m2/g程度である。
【0043】熟成後の無定形アルミノシリケート粒子の
組成はLSXに近い組成となるように原料の混合条件を
設定することで、LSXの生成率が向上できる。すなわ
ち無定形アルミノシリケート粒子のSiO2/Al23
モル比は1.9〜2.1とする必要があり、組成がこの
範囲を外れた場合、A型やP型ゼオライトの副生が避け
られないため好ましくない。
【0044】上記した物性の無定形アルミノシリケート
粒子を得るための原料の混合条件としては、SiO2
(Na2O+K2O)モル比が1.0未満のケイ酸アルカ
リ水溶液とAl23/(Na2O+K2O)モル比が1.
0未満のアルミン酸アルカリ水溶液とを混合することに
より、混合条件の変動を受けにくく、熟成後のBET法
による比表面積が10m2/g以上でかつSiO2/Al
23モル比が1.9から2.1となるゲルを製造するこ
とを見いだした。この方法により、混合条件が若干変動
した場合にも無定形アルミノシリケート粒子のBET法
による比表面積や組成の変動がなく、安定的にLSXを
製造することが可能である。 ケイ酸アルカリ水溶液中
のSiO2/(Na2O+K2O)モル比を1.0未満と
し、かつ、アルミン酸アルカリ水溶液中のAl23
(Na2O+K2O)モル比を1.0未満とすることで、
混合温度や混合時間によらず、非常に微細な粒子からな
り、熟成後もBET法による比表面積が10m2/g以
上であり、組成がSiO2/Al23モル比で1.9か
ら2.1である無定形アルミノシリケートが得られる。
【0045】本発明ではSiO2/(Na2O+K2O)
及びAl23/(Na2O+K2O)のモル比が1.0以
上の場合、混合の方法、混合温度、混合開始から終了ま
での時間、混合時の攪拌回転数等の変化により、生成す
る無定形アルミノシリケートの表面積や組成等の変動が
大きくなり、微細でSiO2/Al23モル比が1.9
から2.1である無定形アルミノシリケートを安定して
得ることは困難となる。
【0046】次に、所定の時間熟成したゲルを昇温して
結晶化を行う。
【0047】工業的な大きなスケールでは、ゲル内部へ
の伝熱に時間がかかるため、ゲルを攪拌したまま昇温す
ることができる。この場合、不純物生成を抑えるために
目的とする結晶化温度までできるだけ短時間で昇温する
ことが好ましく、具体的には3時間以内、より好ましく
は1時間以内で昇温させる。
【0048】ゲルの昇温方法としては、このような結晶
化温度まで短時間で昇温させる方法であれば特に制限は
なく、例えば、ゲル化、熟成のための容器と結晶化のた
めの容器を分け、ゲル化、熟成のための容器中のゲルを
ポンプ等を用いて熱交換器を経由させ、結晶化容器へ移
液しながら昇温する方法等が例示できる。
【0049】結晶化は不純物の生成を抑制するために、
撹拌することなく静置状態で行うことが好ましい。結晶
化の温度としては、結晶化の時間を短縮し、又、高温側
での不純物の生成を抑えるために60〜90℃程度とす
ることが好ましい。
【0050】結晶化の時間としては、結晶化温度により
異なるが、本発明のでは通常4時間〜12時間程度で十
分であり、これ以上時間をかけても良い。結晶化時間が
不足すると完全に結晶化せず、非晶質の無定形アルミノ
シリケートが残存してしまうことがある。
【0051】以上のようにして、合成したSiO2/A
23モル比が1.9〜2.1のLSXを濾過、洗浄
し、乾燥する。濾過、洗浄し、乾燥の方法としては公知
の方法を用いることができる。
【0052】本発明によれば、SiO2/Al23モル
比が1.9〜2.1のLSXを、混合物を冷却すること
なしに、攪拌下で熟成を行い製造することができる。従
って、工業的な製造が可能で、なおかつ、耐熱性に優れ
た新規なLSXを製造することが可能となる。
【0053】次に本発明のLSXを用いたイオン交換体
及びその熱特性並びに用途に関して説明する。
【0054】驚くべきことに、本発明の新規なLSXは
各種イオン交換した後も耐熱性が維持され、従来のLS
Xに対して常に高い耐熱性を有する。
【0055】例えば、本発明のLSXを母ゼオライトと
して用いたリチウム、及び/又はアルカリ土類金属でイ
オン交換したLSXは混合ガス中から相対的に極性の強
いガス成分を吸着分離する用途において極めて高い性能
を発揮できる。
【0056】本発明におけるLSXのリチウム交換率は
75%以上100%まで、あるいは75%以上88%未
満まで利用できる。リチウム交換率が高いほど性能は高
いが、リチウムが高価であるため製造コストも高くな
る。
【0057】一方、アルカリ土類金属カチオン交換率は
40%以上75%が好ましい。
【0058】本発明のリチウム交換LSX、アルカリ土
類金属カチオン交換LSXは、耐熱性に優れた新規物質
であり、USP3,140,933号、USP4,85
9,217号、USP5,268,023号、USP
3,140,932号、USP5,173,462号、
USP5,454,857号、特開昭61ー25424
7号に報告されている低シリカゼオライト物質又はLS
Xとは異なる新規物質である。
【0059】本発明のLSXは熱的特性は従来のLSX
と全く異なるが、イオン交換方法には特別の処方は必要
とせず、リチウムイオン又はアルカリ土類金属イオンの
イオン交換操作には従来の方法が適用できる。
【0060】ゼオライトの熱特性評価には、従来から示
差熱分析(DTA)が用いられることが一般的であり、
USP5,174,979号、特開平7ー256094
号他で評価されている。
【0061】本発明における熱分解温度は、DTAで感
知される最も低温の発熱反応のピークトップ温度(第一
熱分解中心温度)をもって熱分解温度と定義した。
【0062】この様な一般的な評価法によれば、本発明
の新規LSX及びそれを用いたイオン交換体は、同一交
換イオン条件において常に従来法のLSXよりも高い耐
熱性が得られる。
【0063】本発明のLSXの熱分解温度は上述した熱
分解温度測定により、870℃以上900℃以下であ
り、従来法によるLSXより5℃以上、多くは10℃以
上高くなる。
【0064】また各イオン交換されたLSXにおいて
も、従来法によるLSXを用いた場合より10℃近い分
解温度上昇を有する。
【0065】また本発明のLSXは純度が95%以上、
特に純度100%(単相)であることが好ましい。LS
Xの純度は主にエックス線結晶構造解析によって評価
し、LSXの回折ピークに対する不純物のピークの比で
求める。また単相で得られたLSXに対する水分吸着量
の低減によっても不純物量をクロスチェックすることが
可能である。
【0066】本発明の新規LSXを母ゼオライトとして
用いた吸着剤は、混合ガスから相対的に極性を有するガ
スを吸着し、ガスを精製分離する方法に用いられ、例え
ば、空気中から窒素を吸着して高純度な酸素を得る方
法、または、燃焼後のガスから有害な一酸化炭素ガスを
分離除去する方法などがあげられるが、特に空気中から
窒素を吸着して高純度な酸素を得る圧力スイング吸着分
離法(PSA法)において、またCO2ガスの分離回
収、除去剤として優れた性能を発揮するものである。
【0067】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳述するが、本
発明はこれらの実施例になんら限定されるものではな
い。
【0068】尚、実施例、比較例における各測定方法
は、以下の通りである。
【0069】(1)化学組成の測定方法 試料を硝酸−フッ酸を用い溶解した後、ICP発光分光
分析装置(パーキンエルマー社製、型式:optima
3000)を用いて測定した。
【0070】(2)結晶構造の測定方法 X線回折装置(マックサイエンス社製 型式:MXP−
3)を用い測定した。 (3)水分平衡吸着量の測定方法 100℃で乾燥した粉末を相対湿度80%のデシケータ
ー中で16時間以上放置し、900℃1時間強熱し重量
減少を測定した。
【0071】(4)粘度の測定方法 JIS−K−7117(1987年版)に準拠して、ト
キメック製B型粘度計を用いて測定した。
【0072】(5)BET法による比表面積の測定方法 マイクロメリティクス社製フローソーブII2300を用
いて測定を行った。 (6)示差熱天秤(DTA−TG)による熱特性測定方
法 ゼオライトの耐熱性評価法として一般的な示差熱分析を
理学電気製の示差熱天秤(サーモフレックス 型式81
00)を用い、大気中1000℃まで測定した。
【0073】昇温速度は10℃/分、空気流通量は50
ミリリットル/分とした。
【0074】(7)空気分離特性の評価 本発明で調製したイオン交換LSXの窒素及び酸素の静
的な飽和吸着量(アイソサーム)を重量法で測定した。
測定結果から最近の工業的な圧力スイング吸着法におけ
る設定吸着圧力として一般的な0.4kg/cm2にお
ける空気分離特性を分離係数として求めた。分離係数は
以下の数式1に従って算出した。
【0075】
【数1】
【0076】現在一般的に用いられているPSA法の吸
着圧力条件としては、特開平8ー71350号、8ー2
39204号等の平均値から設定した。
【0077】実施例1 内容積3リットルのステンレス製反応容器にアルミン酸
ナトリウム水溶液(Na2O=20.0重量%,Al2
3=22.5重量%,Al23/Na2Oモル比=0.6
8)453g、水1060g、水酸化ナトリウム(純度
99%)181g、試薬1級水酸化カリウム(純度85
%)343gを入れ250rpmで攪拌しながらウォー
ターバスを用い36℃に保った。この溶液に36℃に保
ったケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O=3.8重量
%,SiO2=12.6重量%,SiO2/Na2Oモル
比=3.4)833gを5分50秒かけて投入した。投
入開始約3分後に白濁しゲル化が始まった。投入中ゲル
全体の粘度は上昇したものの反応容器内部でのゲルの部
分的な停滞は生じなかった。投入終了時のスラリーの温
度は38℃、粘度は320cpであった。このまま攪拌
を継続し36℃で16時間熟成を行った。熟成後のスラ
リーの一部をサンプリング、濾過、洗浄し分析した。こ
のときのゲルの比表面積は20m2/gでありSiO2
Al23モル比は1.98であった。熟成後、ゲルスラ
リーをローラーポンプを用い80℃のオイルバスに浸漬
したSUS製のスパイラル熱交換管(8mmφ)の中を
通して、3リットルのステンレス製結晶化容器へ移液・
昇温を行った。結晶化容器入り口のゲル温度は70℃で
あり、移液・昇温に要した時間は20分であった。ゲル
の移液・昇温が終わった後、結晶化容器に蓋をし、70
℃の熱風式乾燥器に入れ8時間結晶化を行った。得られ
た結晶を純水で十分に洗浄した後、100℃で1晩乾燥
した。得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結果フォ
ージャサイト型ゼオライト単相であり、また組成分析の
結果、このものの化学組成は0.67Na2O・0.3
3K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分平衡吸
着量は33.4%であった。実験条件及び結果を表1に
示した。
【0078】実施例2 熟成温度を50℃とした他は実施例1と同様の実験を行
った。熟成温度が高いため、熟成時間は8時間、熟成時
の粘度は240cps、ゲルBET値は24m2/gで
あった。後、100℃で1晩乾燥した。
【0079】得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結
果フォージャサイト型ゼオライト単相であり、また組成
分析の結果、このものの化学組成は0.67Na2O・
0.33K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分
平衡吸着量は33.2%であった。実験条件及び結果を
表1に示した。
【0080】実施例3 内容積3リットルのステンレス製反応容器に実施例1と
同じケイ酸ナトリウム水溶液833g、水1060g、
水酸化ナトリウム(純度99%)37.4g、試薬1級
水酸化カリウム(純度85%)540gを入れ250r
pmで攪拌しながらウォーターバスを用い10℃に保っ
た。この溶液に10℃に保った実施例1と同じアルミン
酸ナトリウム水溶液453gを5分30秒かけて投入し
た。投入開始直後より液は白濁しゲル化が始まった。投
入中ゲル全体の粘度は上昇したものの反応容器内部での
ゲルの部分的な停滞は生じなかった。投入終了後のスラ
リーの温度は16℃、粘度は180cpであった。この
まま攪拌を継続し36℃で16時間熟成を行った。熟成
後のスラリーの一部をサンプリング、濾過、洗浄し分析
した。このときのゲルの比表面積は22m2/gであり
SiO2/Al23モル比は2.04であった。熟成
後、実施例1と同様の方法で移液・昇温、結晶化、洗
浄、乾燥した。
【0081】得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結
果フォージャサイト型ゼオライト単相であり、また組成
分析の結果、このものの化学組成は0.61Na2O・
0.39K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分
平衡吸着量は33.4%であった。実験条件及び結果を
表1に示した。
【0082】実施例4 実施例1と同様の組成原料を用い、30m3の反応槽を
用い、スケールアップ試験を行った。(1万倍スケール
アップ)反応槽に原料を撹拌しながら投入し、投入終了
時のスラリーの温度は45℃、粘度は300cpであっ
た。このまま攪拌を継続し45℃で12時間熟成を行っ
た。熟成後のスラリーの一部をサンプリング、濾過、洗
浄し分析した。このときのゲルの比表面積は25m2
gでありSiO2/Al23モル比は2.02であっ
た。熟成後、ゲルスラリーを配管により別の30m3
反応槽(結晶化槽)に移液した。移液する際、配管中に
高温蒸気を導入し、昇温を同時に行った。結晶化槽のゲ
ル温度は70℃であり、移液・昇温に要した時間は30
分であった。ゲルの移液・昇温が終わった後、無撹拌状
態で8時間静置結晶化を行った。
【0083】得られた結晶を純水で洗浄した後、100
℃で乾燥した。得られた結晶粉末の構造は、X線回折の
結果フォージャサイト型ゼオライトが99%であり、ま
た組成分析の結果、このものの化学組成は0.68Na
2O・0.32K2O・Al23・2.0SiO2であ
り、水分平衡吸着量は33.1%であり、1バッチで
2.4トンのLSXが約1日で得られた。実験条件及び
結果を表1に示した。 本発明の方法により、工業的に
も極めて高純度なLSXが一度に大量に製造できること
が確認された。
【0084】実施例5 内容積3リットルのステンレス製反応容器にアルミン酸
ナトリウム水溶液(Na2O=20.0重量%,Al2
3=22.5重量%,Al23/Na2Oモル比=0.6
8)453g、水923g、水酸化ナトリウム(純度9
9%)235g、試薬1級水酸化カリウム(純度85
%)215gを入れ90rpmで攪拌しながら氷を浮か
べたウォーターバスで冷却した(約〜2℃)。
【0085】この溶液に氷で冷却したケイ酸ナトリウム
水溶液(Na2O=3.8重量%,SiO2=12.6重
量%,SiO2/Na2Oモル比=3.4)833gと水
137gを5分かけて投入した。投入後の溶液は半透明
であった。投入終了後20分撹拌を継続した後、ウオー
ターバスの温度を36℃に昇温した。液温度が25℃に
なったとき、溶液が白濁しゲル化が始まった。溶液が白
濁すると同時に撹拌を250rpmにあげた。この時、
ゲル全体の粘度は上昇したもの反応容器内部でのゲルの
部分的な停滞は生じなかった。こ時のゲルの粘度は12
0cpであった。このまま攪拌を継続し36℃で、48
時間熟成を行った。熟成後、ゲルスラリーをローラーポ
ンプを用い80℃のオイルバスに浸漬したSUS製のス
パイラル熱交換管(8mmφ)の中を通して、3リット
ルのステンレス製結晶化容器へ移液、昇温を行った。結
晶化容器入口のゲル温度は70℃であり、移液、昇温に
要した時間は20分あった。
【0086】ゲルの移液、昇温が終った後、結晶化容器
に蓋をし、70℃の熱風循環乾燥器に入れ16時間結晶
化を行った。得られた結晶を純水で十分に洗浄した後、
100℃で1晩乾燥した。得られた結晶粉末の構造は、
X線回折の結果フォージャサイト型ゼオライト単相であ
り、また組成分析の結果、このものの化学組成は0.7
6Na2O・0.24K2O・Al23・2.0SiO2
であった。得られた粉末の水分平衡吸着量は33.1%
で、また、結晶中のカリウムを全てナトリウムに交換し
た後の水分平衡吸着量は35.4%であった。実験条件
及び結果を表1に示した。
【0087】本実施例で示した様に本発明では熟成時
間、結晶化時間を長くしても、不純物相が生成すること
無く、安定的にLSXが得られる。
【0088】実施例6 内容積3リットルのステンレス製反応容器にアルミン酸
ナトリウム水溶液(Na2O=20.0重量%,Al2
3=22.5重量%,Al23/Na2Oモル比=0.6
8)453g、水1060g、水酸化ナトリウム(純度
99%)235g、試薬1級水酸化カリウム(純度85
%)215gを入れ250rpmで攪拌しながらウォー
ターバスを用い36℃に保った。この溶液に36℃に保
ったケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O=3.8重量
%,SiO2=12.6重量%,SiO2/Na2Oモル
比=3.4)833gを5分50秒かけて投入した。投
入開始約3分後に白濁しゲル化が始まった。投入中ゲル
全体の粘度は上昇したものの反応容器内部でのゲルの部
分的な停滞は生じなかった。投入終了時のスラリーの温
度は38℃、粘度は320cpであった。このまま攪拌
を継続し38℃で24時間熟成を行った。熟成後のスラ
リーの一部をサンプリング、濾過、洗浄し分析した。こ
のときのゲルの比表面積は20m2/gでありSiO2
Al23モル比は1.98であった。熟成後、ゲルスラ
リーをローラーポンプを用い80℃のオイルバスに浸漬
したSUS製のスパイラル熱交換管(8mmφ)の中を
通して、3リットルのステンレス製結晶化容器へ移液・
昇温を行った。結晶化容器入り口のゲル温度は70℃で
あり、移液・昇温に要した時間は20分であった。ゲル
の移液・昇温が終わった後、結晶化容器に蓋をし、70
℃の熱風式乾燥器に入れ8時間結晶化を行った。得られ
た結晶を純水で十分に洗浄した後、100℃で1晩乾燥
した。得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結果フォ
ージャサイト型ゼオライト単相であり、また組成分析の
結果、このものの化学組成は0.76Na2O・0.2
4K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分平衡吸
着量は33.4%であった。実験条件及び結果を表1に
示した。
【0089】比較例1 USP4,859,217号(特公平5−25527
号)の方法に従い、内容積0.5リットルのステンレス
製反応容器に3℃冷却したケイ酸ナトリウム水溶液(N
2O=3.8重量%,SiO2=12.6重量%)8
3.3g、水106g、水酸化ナトリウム(純度99
%)23.5g、試薬1級水酸化カリウム (純度85
%)21.5gを入れ250rpmで攪拌しながら氷浴
中で5℃に保った。このときの水溶液中のSiO2
(Na2O+K2O)モル比は0.33であった。この溶
液に5℃に保ったアルミン酸ナトリウム水溶液(Na2
O=20.0重量%,Al23=22.5重量%、Al
23/Na2Oモル比=0.68)45.3gを2分5
0秒かけて投入した。混合後の液は半透明なソルーショ
ンで、温度を5℃に保ち静置しておくと次第に半固体状
になり、5分後には完全に固まった。
【0090】当該半固体状塊を密閉し、恒温乾燥機中3
6℃で48時間熟成し、続いて70℃で16時間結晶化
を行った。
【0091】熟成後のスラリーの一部をサンプリング、
濾過、洗浄し分析した。このときのゲルの比表面積は6
0m2/gでありSiO2/Al23モル比は2.02で
あった。熟成後、実施例1と同様の方法で移液・昇温、
結晶化、洗浄、乾燥した。
【0092】得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結
果フォージャサイト型ゼオライトが99%であり、また
組成分析の結果、このものの化学組成は0.72Na2
O・0.28K2O・Al23・2.0SiO2であり、
水分平衡吸着量は33.1%であった。
【0093】実験条件及び結果を表1に示した。
【0094】比較例2 比較例1の条件を用い、500リットルのジャケット付
反応器でのスケールアップを試みた。ゲル調製温度を5
℃から熟成温度の36℃までジャケット昇温を試みた
が、器壁近傍は36℃となったが、12時間後も内部は
25℃以下で温度分布を有し、48時間後も中心温度は
30℃以下であった。
【0095】48時間後、ジャケット温度を80℃に昇
温した。8時間後、反応槽表面は70℃であったが、中
心部は40℃以下であった。
【0096】この様に温度分布を有する反応で得られた
反応物をX線回折で評価した結果、中心部は低反応率の
不定形ゲルであり、器壁近傍でも低シリカ型フォージャ
サイト型ゼオライトはほとんど見られず、不純物のA型
ゼオライト他の混合物であった。
【0097】この様に高純度なLSXの合成には反応系
内の均一性が不可欠であり、工業的なスケールアップに
は撹拌による機械的なエネルギーの付与は不可欠である
ことがわかった。
【0098】比較例3 公知文献(Zeolite 1987 vol.7
p.451)の方法に従い、実施例3の組成で静置熟成
を50℃で24時間、結晶化を静置で100℃で3時間
行った。
【0099】熟成後のスラリーの一部をサンプリング、
濾過、洗浄し分析した。このときのゲルの比表面積は7
0m2/gでありSiO2/Al23モル比は2.02で
あった。熟成後、実施例1と同様の方法で移液・昇温、
結晶化、洗浄、乾燥した。
【0100】得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結
果得られた粉末はわずかなLSX相と大部分の不純物を
含む混合相であり、水分平衡吸着量は19.0%であっ
た。実験条件及び結果を表1に示した。
【0101】
【表1】
【0102】本方法では、上記の文献(Zeolite
1987 vol.7 p.451)に記載されてい
る通りにLSXは得られなかった。
【0103】実施例7〜8及び比較例4〜5 実施例4及び比較例1のLSX粉末、及びそれらの粉末
ををリチウム交換率99%及びカルシウム交換率60%
とした各粉末を調製し、各粉末を相対湿度80%の雰囲
気で水和した。当該粉末を大気中で室温から1000℃
までの範囲で示差熱分析を行った。昇温速度は10℃/
分、空気流通速度は50ミリリットル/分とした。
【0104】結果を表1に、典型的な熱分解チャートを
図1〜2に示した。
【0105】本発明のLSX粉末は、従来法のLSXに
比べ熱分解温度が高く、その効果はリチウム又はアルカ
リ土類金属でイオン交換した後も維持された。
【0106】実施例9 実施例1で得られたLSX母剤を用い、交換カチオンと
してリチウムを99%交換したものと、USP5,17
4,979号に開示された方法に基づき、従来のLSX
を用いた耐熱性のある組成(リチウム87%カルシウム
13%)の空気分離特性(分離係数)を評価した。結果
を図3に示した。
【0107】従来提案されている条件では、性能が低
く、特に低温での性能低下が著しかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、実施例3及、実施例4及び比較例1
で得られた低シリカゼオライトの熱分解チャートを示す
図である。
【図2】実施例7〜8及び比較例3〜4で得られた低シ
リカゼオライトの熱分解チャートを示す図である。
【図3】実施例8で得られた低シリカゼオライト及びU
SP5,174,979号に開示された方法に基づいて
得られた従来のLSXの空気分離特性(分離係数)の比
較を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原田 敦 山口県新南陽市政所4丁目5番5−203 号 審査官 関 美祝 (56)参考文献 特開 平10−87323(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 39/00 CA(STN) JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】SiO2/Al23モル比が1.9〜2.
    1であり、金属カチオンとしてナトリウム及び/又はカ
    リウムを有する低シリカゼオライトにおいて、該ゼオラ
    イト中の低シリカフォージャサイト型ゼオライトの含有
    率が88%以上で、なおかつ空気雰囲気中における熱分
    解温度が870℃以上900℃以下であることを特徴と
    する耐熱性低シリカゼオライト。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の耐熱性低シリカゼオライ
    トにおいて、低シリカフォージャサイト型ゼオライトの
    含有率が95%以上であることを特徴とする耐熱性低シ
    リカゼオライト。
  3. 【請求項3】アルミネートを含む溶液とシリケートを含
    む溶液を0℃以上60℃以下の温度で攪拌しながら混合
    及びゲル化してから、熟成し、粘度が10cpから10
    000cpでありかつ比表面積が10m2/g以上さら
    にSiO2/Al23モル比が1.9から2.1である
    無定形アルミノシリケートを含むスラリーを調製し、結
    晶化を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記
    載の耐熱性低シリカゼオライトを製造する方法。
  4. 【請求項4】請求項3に記載の耐熱性低シリカゼオライ
    ト製造方法において、シリケートを含む溶液がSiO2
    /(Na2O+K2O)モル比が1.0未満であるケイ酸
    アルカリ水溶液であり、アルミネートを含む溶液がAl
    23/(Na2O+K2O)モル比が1.0未満であるア
    ルミン酸アルカリ水溶液を混合することを特徴とする耐
    熱性低シリカゼオライトの製造方法。
  5. 【請求項5】請求項3に記載の耐熱性低シリカゼオライ
    ト製造方法において、アルミネートを含む溶液とシリケ
    ートを含む溶液を混合した後でのNa2O/(Na2O+
    2O)モル比が0.50以上0.75未満であること
    を特徴とする耐熱性低シリカゼオライトの製造方法。
  6. 【請求項6】請求項5に記載の耐熱性低シリカゼオライ
    トの製造方法において、Na2O/(Na2O+K2O)
    モル比が0.50以上0.65未満であることを特徴と
    する耐熱性低シリカゼオライトの製造方法。
  7. 【請求項7】請求項1の耐熱性低シリカゼオライトをリ
    チウムイオンで交換し、リチウム交換率が75%以上1
    00%以下としたガス分離用リチウムイオン交換低シリ
    カゼオライト。
  8. 【請求項8】請求項7に記載のリチウムイオン交換低シ
    リカゼオライトにおいて、リチウム交換率が75%以上
    88%未満であることを特徴とするガス分離用リチウム
    イオン交換低シリカゼオライト。
  9. 【請求項9】請求項1の耐熱性低シリカゼオライトをア
    ルカリ土類金属イオンで交換し、アルカリ土類金属イオ
    ン交換率が40%以上75%以下としたガス分離用アル
    カリ土類金属イオン交換低シリカゼオライト。
  10. 【請求項10】請求項7〜9に記載の低シリカゼオライ
    トに、圧力スイング吸着分離法(PSA法)で空気中の
    窒素ガスを吸着させ、高純度の酸素ガスを得ることを特
    徴とする低シリカゼオライトの使用方法。
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