JP2000079338A - 気体分離用吸着剤 - Google Patents

気体分離用吸着剤

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JP2000079338A JP11061454A JP6145499A JP2000079338A JP 2000079338 A JP2000079338 A JP 2000079338A JP 11061454 A JP11061454 A JP 11061454A JP 6145499 A JP6145499 A JP 6145499A JP 2000079338 A JP2000079338 A JP 2000079338A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】PSA法により気体分離を行う場合において、
従来の吸着剤より易吸着成分の拡散速度が優れており、
気体分離用吸着剤の期待される性能を十分に発揮させる
ことができる気体分離用吸着剤を提供する。 【解決手段】PSA法により気体分離を行う場合におい
て、吸着剤のマクロ細孔の平均細孔直径が吸着剤に吸着
した易吸着成分を脱着させる時の易吸着成分の平均自由
行程以上であり、この易吸着成分の平均自由行程以上の
細孔直径を有する細孔容積が全マクロ細孔の70%以上
を占めており、好ましくは全マクロ細孔容積が0.25
cc/g以上であり、細孔表面積が20m2/g以上で
ある気体分離用吸着剤およびその製造方法を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容易に吸着される
成分(易吸着成分)と容易に吸着されない成分(難吸着
成分)とを含有する気体混合物を分離するための気体分
離用吸着剤およびその製造方法に関するものである。特
に本発明の気体分離用吸着剤は、圧力振動吸着法(PS
A法;Pressure Swing Adsorpt
ion法、以下PSA法と略す)によって気体混合物を
分離するために用いる気体分離用吸着剤に関するもので
ある。本発明の気体分離用吸着剤を用いてPSA法によ
り分離回収されるガスは、例えば酸素ガス、窒素ガス、
二酸化炭素ガス、水素ガス、一酸化炭素ガスなどがあ
る。
【0002】中でも酸素ガスは工業ガスの中でも特に重
要なガスの1つであり、製鉄、パルプ漂白などを中心に
広く用いられている。特に最近では空気中の燃焼では避
けられないNOx発生の低減を目的に、ごみ燃焼、ガラ
ス溶融などの分野で酸素富化燃焼が実用化されており、
環境問題の点からも酸素ガスの重要性が増大している。
【0003】酸素ガスの工業的製法としては、PSA
法、深冷分離法、膜分離法が知られているが、酸素ガス
の純度およびコストにおいて有利なPSA法の比率が増
大している。PSA法による酸素ガス製造は、空気中の
窒素ガスを吸着剤に吸着させ、残った濃縮酸素ガスを製
品として取り出す方法である。そのため用いる吸着剤と
しては窒素ガスを選択的に吸着できる吸着剤が用いられ
る。
【0004】
【従来の技術】結晶性ゼオライトを用いて気体混合物を
分離する場合、易吸着成分を結晶性ゼオライトに選択的
に吸着させる。例えばPSA法により空気から酸素ガス
を製造する場合、空気中の窒素を結晶性ゼオライトに選
択的に吸着させて空気分離を行う。結晶性ゼオライトへ
の窒素の選択的吸着は、窒素の四重極子モーメントとゼ
オライト中のカチオンとの静電引力との強い相互作用に
より生ずる。このためPSA法にはカチオンの静電引力
が大きく、窒素吸着量が大きい結晶性ゼオライトが使用
され、A型あるいはX型ゼオライトをリチウムカチオ
ン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バ
リウムカチオン等でイオン交換した吸着剤が使用されて
いる。特にリチウムカチオンでイオン交換されたリチウ
ム交換結晶性ゼオライトXは窒素の選択吸着に優れてお
り、PSA法によって濃縮酸素を得るための結晶性ゼオ
ライトとして使用される。
【0005】例えば、米国特許3140933号公報に
おいて、窒素の平衡吸着量および窒素と酸素の吸着等温
線から計算される分離係数に優れたリチウム交換結晶性
ゼオライトXが提案されており、特公平5−25527
号公報においてその性能が再確認されるに至っている。
【0006】通常、気体混合物の分離を行う場合、充填
層により行われるため充填層内の圧力損失は小さいほう
が好ましい。例えばPSA法により気体分離を行う場
合、充填層内の圧力損失を小さくしてPSA装置を構成
するブロアーあるいは真空ポンプ等への負荷を軽減する
ために、結晶性ゼオライトは粘土鉱物、シリカゾルやア
ルミナゾルなどの無機系バインダー等の結合剤を用いて
球状(ビーズ)あるいは柱状(ペレット)等の形状に成
形して使用される。なお目的によっては有機系の添加剤
を用いる場合もある。この成形体には結晶性ゼオライト
と結合剤によりマクロ細孔のネットワークが形成されて
いる。成形体の中心部に存在する結晶性ゼオライトの吸
着サイトへ易吸着成分が吸着するときには、易吸着成分
はマクロ細孔を拡散しながら成形体中心部の吸着サイト
へ到達する。また吸着サイトから脱着された易吸着成分
は、マクロ細孔を拡散して成形体の外部へ排気される。
吸着剤の期待される性能を発揮させるために、成形体の
中心部分に存在する吸着サイトまで有効に利用でき、易
吸着成分の吸着効率を高くするための吸着剤がいくつか
提案されている。
【0007】例えば、カルシウムカチオンで交換された
A型ゼオライトを用いてマクロ孔容積を0.3ml/g
以上とした気体分離用ゼオライト成形体(特開昭58−
124539号)、マクロ孔容積/ミクロ孔容積の比率
が1〜4.5であり、マクロ孔容積を0.3〜0.7m
l/gとしたゼオライト成形体(特開昭62−2838
12号)等がある。また吸着剤の多孔率およびマクロ細
孔の平均径を制御した吸着剤を用いた空気分離方法(特
開平9−308810号)が例示されている。
【0008】これらの吸着剤は易吸着成分、例えば空気
分離の場合は窒素が、結晶性ゼオライトへ吸着する時の
吸着速度を改善し、気体混合物と吸着剤との接触させる
時間を低減させるためのものであり、吸着した易吸着成
分を減圧下で脱着させるときの現象には着目されていな
い。PSA法は吸着と脱着が繰り返されるため、吸着時
の易吸着成分の拡散速度だけでなく、脱着時の易吸着成
分の拡散速度も改善されなければ吸着剤の性能は発揮で
きない。このためいずれの吸着剤も吸着剤の利用率が十
分に高められた気体分離用吸着剤とは言えなかった。
【0009】さらに気体分離用吸着剤の形状としては、
円柱状あるいはビーズ形状が一般的である。円柱状の成
形体は押し出し成形で、ビーズ形状の成形体は遠心力を
利用した転動造粒法で通常成形されるが、その成形体内
部のマクロ細孔はつぶれているのが一般的であり、この
ような成形上の課題は、結合剤としてカオリン型あるい
はベントナイト型粘土のような板状構造の粘土を用いた
場合にその傾向が強くなる。このような吸着剤は成形体
内部のガス拡散の抵抗が大きく、吸着剤の中心部まで有
効に利用できない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】結晶性ゼオライトへ易
吸着成分が吸着するときは発熱過程であるが、結晶性ゼ
オライトから易吸着成分を脱着させるときは吸熱過程で
あり、易吸着成分の脱着には吸着の時よりも大きなエネ
ルギーを必要とする。このため、結晶性ゼオライトから
脱着させた易吸着成分を素早く吸着剤外部に排出させな
ければ、期待される気体分離性能が発揮できない。特に
結晶性ゼオライトへの易吸着成分の吸着量が大きい場合
には、脱着時においてより多量の易吸着成分を吸着剤の
外部に排出させるために、より優れた脱着速度が必要と
なる。また易吸着成分を吸着させる時の吸着速度が大き
いことも重要な因子である。さらに気体分離用の吸着剤
は水分を除いた状態(活性化状態)で使用されるが、結
晶性ゼオライトは水分との親和性が大変強く、周囲の雰
囲気の水分を再吸湿が懸念される。吸湿により水分が吸
着剤に残存する場合、気体の吸着サイトが水に占められ
ることになり気体分離に悪影響を及ぼし、期待される性
能が得られないこととなる。
【0011】例えば、PSA法による空気分離に用いる
結晶性ゼオライトとしてリチウム交換フォージャサイト
型ゼオライトを用いる場合は、その窒素吸着量が多いた
めにカルシウム等で交換された結晶性ゼオライトを用い
る場合よりも多量の窒素を吸・脱着させる必要があり、
吸・脱着時の窒素の拡散速度が十分に改善されなければ
吸着剤の性能を十分に発揮できない。またPSAの運転
において吸・脱着工程の時間が短くなった場合には、短
時間での窒素の吸・脱着が要求され、吸・脱着時の拡散
速度が改善された吸着剤を使用しなければ十分なパフォ
ーマンスが得られない。さらに吸着剤本来の性能を損な
わないために、吸着剤の水分含有量はできるだけ少なく
なければならない。
【0012】本発明の目的は、気体混合物の分離を行う
場合、特にPSA法により気体分離を行う場合におい
て、PSA装置の電力原単位を低下させるために、易吸
着成分を脱着させる時の条件に適した平均細孔直径を有
するマクロ細孔を付与させ、脱着時の易吸着成分の拡散
速度に優れた気体分離用吸着剤を提供することにある。
また易吸着性成分の吸・脱着に有利なマクロ細孔を付与
しつつ、耐圧強度に代表されるような強度物性に優れ、
吸着剤の水分含有量が少ない気体分離用吸着剤を提供す
ることも本発明の目的とするものである。さらに本発明
はこのような気体分離用吸着剤を容易に得ることができ
る製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者は、気体分離用
吸着剤のマクロ細孔構造とマクロ細孔内での易吸着成分
の拡散について鋭意検討した結果、ゼオライト結晶のS
iO2/Al23モル比が1.9以上2.1以下の結晶
性低シリカフォージャサイト型ゼオライトと結合剤から
なる吸着剤において、マクロ細孔の平均細孔直径が易吸
着成分を脱着させる時の易吸着成分の平均自由行程以上
であり、易吸着成分の平均自由行程以上の細孔直径を有
する細孔の全容積が全マクロ細孔の全容積の70%以上
を占めている気体分離用吸着剤が易吸着成分の吸・脱着
性能、特に脱着時の易吸着成分の拡散速度に優れている
ことを見出した。さらにゼオライト結晶のSiO2/A
23モル比が1.9以上2.1以下の結晶性低シリカ
フォージャサイト型ゼオライトと、無水基準で前記低シ
リカフォージャサイトゼオライト100重量部に対して
5〜30重量部の結合剤とに水を加えて嵩密度が0.8
〜1.0kg/リットルになるように混練・捏和した後
に成形し、その後焼成し、イオン交換し、活性化するこ
とにより目的とする気体分離用吸着剤が得られることを
見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】以下に本発明を詳細に説明する。本発明の
気体分離用吸着剤は、SiO2/Al23モル比が1.
9以上2.1以下の結晶性低シリカフォージャサイト型
ゼオライトと結合剤からなる気体分離用吸着剤におい
て、マクロ細孔の平均直径が、吸着剤から易吸着成分を
脱着させる時の易吸着成分の平均自由行程以上であり、
且つ、易吸着成分の平均自由行程以上の直径を有するマ
クロ細孔の全容積が全マクロ細孔の全容積の70%以上
を占めていることを特徴とする気体分離用吸着剤。
【0015】例えば吸着行程と脱着行程を繰り返すPS
A法で気体分離を行う時、吸着工程は加圧状態であり吸
着剤のマクロ細孔内では分子同士が衝突しながら拡散す
る分子拡散が主に起こる。しかし脱着工程は減圧状態
で、易吸着成分の平均自由行程が大きくなり、吸着剤の
マクロ細孔内では分子拡散による分子移動の他に、分子
とマクロ細孔の壁との衝突が頻繁に起こるため吸着工程
の時より吸着剤の中での拡散抵抗は大きくなる。このた
めマクロ細孔の平均細孔直径が易吸着成分を脱着させる
時の易吸着成分の平均自由行程未満である場合、あるい
は易吸着成分の平均自由行程以上の細孔直径を有する細
孔容積が全マクロ細孔容積の70%未満である場合は、
易吸着成分のマクロ細孔内の拡散抵抗が大きく、気体分
離用吸着剤の性能が十分に得られない。
【0016】また気体分離用吸着剤の全マクロ細孔容積
が0.25cc/g以上あり、細孔表面積が20m2
g以上あることが好ましい。通常、気体分離用吸着剤の
マクロ細孔は1000Å以上の細孔直径を有する細孔が
大部分を占めるが、このような比較的大きな直径の細孔
だけでマクロ細孔を形成させると吸着剤の耐圧強度が弱
くなりやすい。比較的大きい細孔の間に直径の比較的小
さい(例えば1000Å以下の)細孔を適度に付与する
ことにより、マクロ細孔の全容積を減らすことなく強度
物性に優れた吸着剤を得ることができる。さらにこのよ
うな比較的直径の小さい細孔は、圧力が高い吸着工程時
には易吸着成分の平均自由行程が小さいために、気体の
通り道となり吸着時の易吸着成分の拡散抵抗を小さくす
る。
【0017】本発明の気体分離用吸着剤のマクロ細孔と
は、水銀圧入法により1〜30,000psiの圧力範
囲で測定され、細孔直径が60Å〜200μmの範囲の
細孔である。このマクロ細孔の平均細孔直径は、水銀圧
入法で得られた細孔直径と細孔容積の関係(細孔直径分
布曲線)から、全細孔容積の50%量となる時の細孔直
径(中位直径)あるいは細孔直径分布曲線の勾配が最大
となるときの直径(最頻直径)として求めることができ
る。
【0018】易吸着成分の平均自由行程とは、引続く衝
突間に易吸着成分の分子が移動する平均距離である。こ
の平均自由行程は、「アルバーティ 物理化学(改訂第
4版)」(科学技術出版社;アルバーティ著)の312
ページから314ページを参考にして、PSA法におい
て吸着剤から易吸着成分を脱着させる時の圧力と温度に
よって計算できる。
【0019】本発明の気体分離用吸着剤の母ゼオライト
は、SiO2/Al23モル比が1.9以上2.1以下
の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライト(以
下、LSXゼオライトと呼ぶ)である。LSXゼオライ
トのSiO2/Al23モル比は理論的には2.0であ
るが、化学組成分析の測定上の誤差等を考慮した場合、
1.9〜2.1の組成のLSXゼオライトが本発明の範
囲に入ることは明らかである。SiO2/Al23モル
比が1.9以上2.1以下のLSXゼオライトを合成す
る方法としては種々の方法が開示されており、例えば特
公平5−25527号公報に記載されている方法で合成
することが可能である。
【0020】気体分離用吸着剤にLSXゼオライトを用
いる場合、LSXゼオライトの結晶純度は高いほうが分
離効率は優れており、LSXゼオライトの結晶純度は9
0%以上が好ましい。LSXゼオライトの結晶純度の測
定は、粉末X線法、気体吸着量測定、水分吸着量測定、
NMR測定などにより行うことができる。
【0021】本発明の気体分離用吸着剤に用いられる繊
維状形態の結合剤としては、セピオライト型粘土、アタ
パルジャイト型粘土を含み、バインダーとして吸着剤中
のLSXゼオライト粒子間に存在するものであり、本発
明のマクロ細孔を形成するために繊維状形態をした針状
晶のものが好ましい。またこれらの粘土は1種類単独の
みならず2種類以上が混合されていてもよい。
【0022】結合剤に板状形態のものを用いた場合、そ
の形状から易吸着成分の拡散を阻害する可能性がある。
また成形した後に行われる焼成時に脱水が速やかに起こ
らず、LSXゼオライトの結晶が破壊される可能性があ
る。
【0023】本発明の気体分離用吸着剤の形状としては
ビーズ状であることが好ましく球状、楕円状など本発明
の気体分離用吸着剤の特徴を有しておればなんら限定さ
れることはない。充填される装置の大きさ、充填層の圧
力損失あるいは成形体内部での拡散抵抗を考慮し、気体
分離用吸着剤の期待される性能を十分に発揮させるため
に、その大きさは0.5〜5mm程度の直径であること
が好ましい。
【0024】本発明の気体分離用吸着剤におけるLSX
ゼオライトと結合剤との構成比率としては、成形体のマ
クロ細孔構造と強度物性を考慮し、通常LSXゼオライ
トの5〜30重量部程度の比率のものが好ましく用いら
れる。
【0025】気体分離用吸着剤の水分含有量はできるだ
け少ないほうが好ましく、水分含有量が0.8重量%以
下、さらには0.5重量%以下の吸着剤が満足できる吸
着性能を有し、好ましく用いられる。
【0026】次に、本発明の気体分離用吸着剤の製造方
法について説明する。
【0027】その製造方法としては、ゼオライト結晶の
SiO2/Al23モル比が1.9以上2.1以下の結
晶性低シリカフォージャサイト型ゼオライトと、無水基
準で前記低シリカフォージャサイトゼオライト100重
量部に対して5〜30重量部の結合剤とに水を加えて嵩
密度が0.8〜1.0kg/リットルになるように混練
・捏和した後に成形し、その後焼成し、イオン交換し、
活性化するものである。
【0028】本発明の気体分離用吸着剤の製造方法は、
合成されたLSXゼオライト粉末と結合剤および水とを
加えて混練・捏和する工程、混練・捏和物を成形する工
程、その成形体を乾燥し焼成する工程、焼成された成形
体をイオン交換する工程、焼成して活性化する工程から
構成されており、以下に順に説明する。
【0029】<混練・捏和工程>本発明の気体分離用吸
着剤に用いられる合成LSXゼオライト粉末は、例えば
特公平5−25527号公報に記載されている方法で合
成された(Na,K)型のLSXゼオライトを出発原料
とする。
【0030】この合成LSXゼオライト粉末と結合剤と
を水分の調整をしながらすべてが均一となるよう混練混
合した後、嵩密度が0.8〜1.0kg/リットルにな
るよう十分捏和される。この時の捏和物の嵩密度が0.
8kg/リットルよりも小さい場合は圧密が十分でなく
混合粒子間に気泡が存在して造粒性が低下することがあ
る。また捏和物の嵩密度が1.0kg/リットルよりも
大きく過度に圧密された場合、吸着剤のマクロ細孔をつ
ぶすことがある。
【0031】添加される結合剤の量としては目的とする
マクロ細孔を形成し、高い吸着容量を維持し、さらに吸
着剤の物理的強度を高くするために、(Na,K)型の
LSXゼオライト100重量部に対して5〜30重量部
の範囲が好ましい。結合剤の量が5重量部より少ない場
合、LSXゼオライトの割合が多くなり易吸着成分の吸
着には有利であるが、吸着剤の粒子強度が弱くなり充填
層内で破砕・粉化が生じる恐れがある。また結合剤の配
合量を30重量部より多くすれば粒子強度は強くなる
が、LSXゼオライトの割合が減少し、気体分離を行っ
た時に易吸着成分の吸着容量が減少する。
【0032】LSXゼオライト粉末と結合剤とを混練・
捏和する際に添加される水分の量としては、原料である
LSXゼオライト粉末、結合剤の性状、これらの量比に
よって左右されるが、最終的に加えられる量としてはL
SXゼオライト粉末100重量部に対して60〜65重
量部の範囲が好ましい。
【0033】また水以外の添加物として、カルボキシメ
チルセルロースやポリビニルアルコールなどの添加物が
加えられることもある。
【0034】<成形工程>このようにして、混練・捏和
して嵩密度を0.8〜1.0kg/リットルされた混合
物は成形される。成形は羽根撹拌式の造粒により行うこ
とが好ましく、これは通常の転動造粒に比して羽根撹拌
することで強い剪断力が与えられ、添加された結合剤が
均一に分散されLSXゼオライト粒子に付着し、ゼオラ
イト粒子間に存在することでマクロ細孔を形成すること
ができる。成形体の形状については本発明の気体分離用
吸着剤の特徴を具備していればなんら限定されるもので
はなく、球状、楕円状等に成形されたものでよく、例え
ば0.5〜5mmの大きさのビーズ形状の成形体とする
ことができる。さらに吸着剤としての用途において物理
的強度、特に摩耗強度を要求される場合、真球度の高い
ビーズ形状であることが望ましく、成形した球状品を公
知の方法、例えばマルメライザー成形器を用いて整粒
し、成形体表面を滑らかにしてもよい。
【0035】ペレット状の成形体は一般に押し出し成形
法により成形され、ビーズ形状の成形に比較しマクロ細
孔を制御しにくい面はあるが、従来から成形助剤として
知られているカルボキシメチルセルロースやポリビニル
アルコールなどを用いることにより、目的のマクロ細孔
の構造を得ることは可能であり、気体分離用吸着剤とし
て使用できる。
【0036】成形、整粒されるビーズの径は用途によっ
て大きさを変えることもでき、篩などによる分級で大き
さを揃えればよい。
【0037】<焼成工程>このように成形された成形体
は乾燥、焼成され、添加された結合剤は焼結される。乾
燥、焼成の方法としては通常の方法により実施すること
ができ、例えば熱風乾燥機、マッフル炉、ロータリーキ
ルン、管状炉等を用いることができる。焼成の温度は吸
着剤がその形状を保つことができるために結合剤が焼結
し、ゼオライト結晶が破壊されない温度であればよく、
通常400〜700℃の範囲で実施される。
【0038】さらに焼成された成形体を冷却し、水分が
20〜30%程度になるように加湿することもできる。
加湿操作は必須の条件ではないが、次の工程であるイオ
ン交換の際にイオン交換液との接触で水分吸着による急
激な発熱により成形体のひび割れ等の破損を防止するの
に有効であり、また吸着されていた窒素等のガスを成形
体内部から追い出し、イオン交換液との拡散を効率化す
るために有効な手段である。
【0039】<イオン交換工程>以上の工程により成
形、焼成した成形体をリチウム、カリウム、カルシウ
ム、ストロンチウム、バリウム等のカチオンを含むイオ
ン交換液と接触させイオン交換する。カチオンの種類は
吸着させる気体に合わせて選ぶことができ、例えば空気
中の窒素を吸着させて空気分離を行う場合はリチウムカ
チオンを用いることが好適である。イオン交換に用いる
化合物としては水溶液として容易に提供できるものであ
れば特に制限はなく、例えば塩化物、硝酸塩、硫酸塩、
炭酸塩等が好ましく用いられる。
【0040】イオン交換の方法としては、通常、回分接
触法やカラム流通法が用いられる。全体を一様にイオン
交換するためには回分接触法が適しており、接触する交
換イオンの比率を上げて効率良くイオン交換したり、イ
オン交換液量を少なくするためにはカラム流通法で流通
速度を調整して行なうのが好ましい。特にリチウムカチ
オンをイオン交換する場合のように、イオン交換が困難
な場合にはカラム流通法が好ましく用いられる。
【0041】イオン交換を実施する温度はイオン交換速
度を高め、イオン交換の効率を向上させるためにできる
だけ高い温度で実施されることが好ましく、通常は50
〜100℃の範囲で実施される。
【0042】また用いられるイオン交換液の濃度はイオ
ン交換速度を考慮し、通常は1〜4規定程度の範囲の濃
度で実施される。イオン交換液はイオン交換時にLSX
ゼオライト結晶が破壊されないようにするためにアルカ
リ性であることが好ましく、通常は水酸化物等を添加す
ることによりpH(水素イオン濃度)が9〜12に調整
される。
【0043】このようにしてイオン交換した後、成形体
をイオン交換液から取りだし、水あるいは温水で洗浄
し、通常、温度30〜100℃程度で乾燥される。
【0044】<活性化工程>以上のようにイオン交換が
行われた成形体から、水分を除去して活性化すること
で、目的とする空気分離用吸着剤が得られる。活性化の
目的は成形体中の水分を除去させることにあり、真空下
あるいは焼成による水分の除去が行われ、通常、焼成に
よる水分の除去が好ましく行われる。活性化の条件とし
ては成形体から水分が除去される条件であればどのよう
な条件でも用いることができる。焼成により活性化を行
う場合、LSXゼオライトの耐熱性を考慮すればできる
だけ低温で素速く水分を除去させることが好ましく、通
常600℃以下の温度条件、例えば500℃で1時間程
度焼成することによって達成できる。
【0045】以上の工程により得られた気体分離用吸着
剤は、混合気体中の易吸着成分を吸着させて分離濃縮を
行なう吸着分離の用途、例えば空気中の窒素を選択的に
吸着させ濃縮酸素ガスを回収する方用途に用いることが
できる。PSA法により空気中の酸素を濃縮回収する場
合には、空気を吸着剤の充填層と接触させて窒素を選択
的に吸着させ濃縮酸素を充填層出口から回収する吸着工
程と、空気と充填層の接触を中断し充填層内を減圧にし
て吸着した窒素を脱着させ排気する再生工程と、吸着工
程で得られた濃縮酸素により充填層内を加圧する復圧工
程からなる一連の工程により運転される。空気分離用の
PSA装置を構成する吸着塔の数は複数であり、通常2
塔あるいは3塔である。原料空気はブロワーあるいはコ
ンプレッサーから供給されるが、空気中の水分は窒素の
吸着を阻害するため充填層に導入する前に水分を除去す
る必要がある。原料空気の脱湿は通常、露点−50℃以
下まで行われる。原料空気の温度は吸着剤の性能と密接
な関係があり、吸着剤の性能が十分引き出せるように加
温あるいは冷却されることもあるが、通常は15〜35
℃程度の温度である。
【0046】吸着工程の吸着圧力は高いほうが窒素の吸
着量は増加する。原料空気を供給するブロワーあるいは
コンプレッサーにかかる負荷を考慮すると、吸着圧力と
しては760Torr以上1520Torr以下の範囲
であればよい。
【0047】再生工程の再生圧力は低いほうが、より多
くの窒素を脱着させることができ好ましい。真空ポンプ
にかかる負荷を考慮すると、再生圧力としては100T
orr以上400Torr以下の範囲であればよい。
【0048】復圧工程は吸着工程で得られた濃縮酸素ガ
スを使用するため、復帰圧力が高い場合は製品ガスとし
て取り出す濃縮酸素ガスの量が減少する。また復帰圧力
が低い状態で吸着工程に移ると、原料空気は加圧されて
いるため窒素が吸着剤に吸着しないで充填層の出口へ破
過する恐れがある。また原料空気中の窒素が充填層出口
へ破過するのを防ぐために、吸着工程が始まってから最
初の1〜5秒程度は濃縮酸素を原料空気と向流となるよ
うに充填層に戻して圧力を復帰させることもできる。復
帰圧力としては400Torr以上800Torr以下
の範囲であればよい。
【0049】本発明の気体分離用吸着剤は、マクロ細孔
の平均細孔直径が易吸着成分を脱着させる時の易吸着成
分の平均自由行程以上であり、この易吸着成分の平均自
由行程以上の細孔直径を有する細孔容積が全マクロ細孔
容積の70%以上であることから、特に減圧下における
マクロ細孔内での脱着時の易吸着成分の拡散速度が大き
く気体分離用吸着剤の利用率が高い。さらに物理的な強
度物性に優れる点は、比較的細孔直径の大きい細孔だけ
でマクロ細孔が形成されているのではなく、適度に比較
的細孔直径の小さい細孔が付与されていることに起因し
ていると考えられる。
【0050】特に本発明の気体分離用吸着剤は、PSA
法による空気分離においてより効果的である。このため
PSA法による空気分離を行った場合において、濃縮酸
素ガスの取り出し量および回収率が高く、PSA装置を
運転する時の動力原単位を低減させることが可能であ
る。
【0051】
【実施例】以下、本発明について実施例を用いてさらに
詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。なお各評価は以下に示した方法によって実施し
た。
【0052】(1)マクロ細孔の平均細孔直径、細孔容
積および細孔表面積 水銀圧入式ポロシメーター(マイクロメリティクス社
製、型式:ポアサイザー9310)を用い、活性化した
吸着剤を1〜30,000psiの圧力範囲(60Å〜
200μmの範囲の細孔直径)により測定した。測定に
より得られた細孔直径と細孔容積の関係(細孔直径分布
曲線)から、吸着剤の平均細孔直径は全細孔容積の50
%量となる時の細孔直径(中位直径)あるいは細孔直径
分布曲線の勾配が最大となるときの直径(最頻直径)と
して求めることができるが、ここでは中位直径を採用し
た。
【0053】(2)窒素吸着量 実施例1〜6および比較例1〜6の測定には、電子天秤
(カーン2000型)を用いて重量法により測定した。
前処理は10-3Torr以下の真空下で350℃、2h
条件で活性化を行った。吸着温度は0℃および25℃に
保ち、窒素ガスを導入後、十分平衡に達した後の重量を
測定し吸着量を算出した(単位:Ncc/g)。以下に
示される実施例および比較例における窒素吸着量は70
0Torrでの測定値を示す。
【0054】また実施例7〜9および比較例7の測定に
は、ベルソープ28SA(日本ベル株式会社)を用いて
容量法により測定した。前処理は10-3Torr以下の
真空下で室温(約25℃)、2h条件で脱気処理を行っ
た。吸着温度は25℃に保ち、約800Torrまで吸
着量を測定した(単位Ncc/g)。なお実施例および
比較例における窒素吸着量は700Torrでの測定値
を示す。
【0055】(3)PSA法による空気分離試験 図1に示す空気分離性能試験装置を用いて、以下の手順
に従い空気分離試験を行った。
【0056】吸着塔(13)および(14)に空気分離
用吸着剤を約2L充填する。吸着塔(12)が吸着工程
時には、コンプレッサー(1)で圧縮された空気を脱水
塔(2)で脱湿した後、減圧弁(3)で0.5〜0.6
kg/cm2Gまで減圧し、電磁弁(5)および(7)
を開にして吸着塔内を流通させる(空気温度は25
℃)。得られた濃縮酸素ガスは製品タンク(17)へ貯
め、濃縮酸素ガスの取り出し量はマスフローメーター
(18)により調整した。吸着工程終了時点での圧力は
1.4atmで一定にした。吸着塔(13)が再生工程
時には電磁弁(5)および(7)は閉じ、電磁弁(6)
を開にして真空ポンプ(20)で吸着塔内を減圧にし
た。再生工程終了時点での到達圧力は250Torrで
一定にした。吸着塔(13)が復圧工程時には電磁弁
(6)を閉じ、電磁弁(8)を開にして製品タンク(1
7)内の濃縮酸素ガスで吸着塔内を復圧する。復圧工程
終了時の圧力は500Torrで一定にした。圧力は圧
力計(15)で測定した(吸着塔(14)については圧
力計(16)を使用)。復圧された吸着塔(13)は続
いて吸着工程が行われ、順次これらの工程が繰り返され
る。それぞれの工程の時間は、吸着工程が1分、再生工
程および復圧工程が30秒とした。なお電磁弁の作動は
シーケンサーにより制御した。
【0057】吸着塔(14)についても同様の工程で行
われるが、濃縮酸素ガスを連続的に取り出すために、吸
着塔(13)が吸着工程である間は吸着塔(14)は再
生工程および復圧工程が行われ、吸着塔(13)が再生
工程および復圧工程の間は吸着塔(14)は吸着工程が
行われる。
【0058】濃縮酸素ガスの濃度は、その値が定常とな
った後、酸素濃度計(19)で測定し、積算流量計(2
1)の値から正確な濃縮酸素ガスの流量を測定した(以
下、酸素量と呼ぶ)。また再生工程時に真空ポンプ(2
0)により排気される排気ガスの流量については積算流
量計(22)の値から測定した(以下、排ガス量と呼
ぶ)。なおそれぞれのガス量の測定は25℃で行った。
【0059】吸着剤の空気分離性能は、93%濃度の酸
素量と93%濃度の濃縮酸素ガスを原料空気から回収で
きた割合(以下、回収率と呼ぶ)で表した。なお空気分
離試験は吸着塔の温度を0℃および25℃で行った。
【0060】酸素量は積算流量計で測定した値を標準状
態へ換算し、吸着剤1kg(無水状態)、1時間あたり
の流量で表し、その単位はNL/(kg・hr)であ
る。回収率は以下の式により算出した。
【0061】回収率(%)={(酸素量)×0.93}/
{(供給空気量)×0.209}×100 供給空気量=(酸素量)+(排ガス量) (4)窒素を脱着させるときの窒素の平均自由行程 窒素の平均自由行程(λ)は、前記の空気分離試験の条
件である吸着塔の温度(T)と再生工程終了時の到達圧
力(P)から以下の式により計算した。なおPSA法で
空気分離を行う場合、吸着工程では発熱のため吸着剤の
温度が上昇し、脱着工程では吸熱のため吸着剤の温度が
低下し温度が変動する。このため窒素の平均自由行程を
計算するときの温度として、実際の吸着剤温度、吸着塔
(周囲の環境)温度あるいは導入ガスの温度などを用い
て計算できるが、ここでは吸着塔の温度を用いた。
【0062】λ=κT/{(√2)πPσ2} σ:窒素分子の分子径 3.681×10-10(m) κ:ボルツマン定数 1.3807×10-23(J/K) 窒素の平均自由行程は圧力250Torrにおいて、2
5℃で2052(Å)、0℃で1880(Å)となる。
【0063】(5)嵩密度 JIS K−3362の見かけ密度測定器を用いた方法
に準じ、混練後の混合物をVmlのポリエチレン製のカ
ップ(W1)に受け、山盛りになったところで直線状の
ヘラですり落とした後、混合物の入ったカップの重量
(W2)を0.1g単位まで読み取り、次の式により嵩
密度を算出した。
【0064】嵩密度(kg/リットル)=(W2−W
1)/V (6)水分含有量 JIS K−0068の電量滴定法による試験方法に準
じ、カールフィッシャー水分計(三菱化学製、水分測定
器:CA−06型、水分気化器:VA−21型)を用い
て測定した。水分気化器の電気炉は400℃に設定し、
活性化された試料約400〜500mgを素早く精秤
し、水分気化器内の試料ボートに投入し、乾燥窒素30
0ml/分の流通下で水分を気化させた。水分含有量は
試料量(S;単位はg)と電量滴定から求められた水分
量(G;単位はμg)により、次の式により算出した。
【0065】水分含有量(重量%)=G/(S×1
6)×100 実施例1 LSXゼオライトの合成は、従来から知られている方法
により行った。内容積20リットルのステンレス製反応
容器に、アルミン酸ナトリウム水溶液(Na2O=2
0.0重量%、Al23=22.5重量%)3888
g、水7923g、水酸化ナトリウム(純度99%)お
よび試薬特級水酸化カリウム(純度85%)1845g
を入れ、60rpmで攪拌しながら冷却した(a液:〜
5℃)。内容積10リットルのポリエチレン容器に珪酸
ナトリウム水溶液(Na2O=3.8重量%、SiO2
12.6重量%)7150gおよび水1176gを入れ
冷却した(b液:〜10℃)。a液を攪拌しながらb液
を約5分かけて投入した。投入後の溶液は透明であっ
た。投入終了後約20分間攪拌を継続した後、ウォータ
ーバスの温度を36℃に昇温した。溶液が白濁すると同
時に攪拌を停止し攪拌羽根を取り出し、36℃で48時
間熟成を行った。
【0066】その後、ウォーターバスの温度を70℃に
昇温し、20時間結晶化を行った。得られた結晶を濾過
し、純水で十分に洗浄した後、80℃で1晩乾燥した。
得られた結晶粉末の構造はX線回折の結果フォージャサ
イト単相であり、その純度は98%以上であった。また
ICP発光分析による組成分析の結果、0.72Na2
O・0.28K2O・Al23・2.0SiO2であり、
LSXゼオライトであることが確認された。
【0067】このLSXゼオライト粉末100重量部に
対してアタパルジャイト型粘土20重量部をミックスマ
ラー混合機(新東工業社製、型式MSG−05S)で混
合混練し、水を適宜加えながら最終的にLSXゼオライ
ト粉末100重量部に対して65重量部の水を加えて調
整した後、十分に捏和した。得られた捏和物の嵩密度は
0.85kg/リットルであった。
【0068】この捏和物を羽根攪拌式造粒機ヘンシェル
ミキサー(三井鉱山社製、型式:FM/I−750)で
直径1.2〜2.0mmのビーズ状に攪拌造粒成形し、
マルメライザー成形機(不二パウダル社製、型式:Q−
1000)を用いて整粒した後、100℃で1晩乾燥し
た。ついで管状炉(アドバンテック社製)を用いて空気
流通下において、600℃で2時間焼成してアタパルジ
ャイト型粘土を焼結させた後、大気中で冷却して、水分
が25%程度になるように加湿した。
【0069】この成形体を70mmφ×700mm(長
さ)のカラムに充填し、塩化リチウムを1モル/リット
ルの濃度になるように調製した水溶液を80℃で流通し
てリチウムイオン交換した。次いでカラムに充填したま
まで純水で十分洗浄した後、カラムから取り出し40℃
で16時間乾燥した。
【0070】その後、横型の管状炉(アドバンテック社
製)で空気流通下において500℃、1時間活性化処理
し、冷却することなく包装した。得られた気体分離用吸
着剤のマクロ細孔の平均細孔直径、細孔容積及び細孔表
面積を測定した。また窒素吸着量および空気分離性能を
前記の方法で、吸着温度25℃において測定した。なお
気体分離用吸着剤の水分含有量は0.1重量%以下であ
った。その結果を表1に示す。
【0071】実施例2 捏和物の嵩密度が0.90kg/リットルであったこと
以外は、実施例1と同じ操作を行った。得られた気体分
離用吸着剤の測定結果を表1に示す。
【0072】実施例3 結合剤としてセピオライト型粘土を使用したこと以外
は、実施例1と同じ操作を行った。得られた気体分離用
吸着剤の測定結果を表1に示す。
【0073】比較例1 混練混合した後の嵩密度が1.8kg/リットルであ
り、マルメライザー成形機(不二パウダル社製、型式:
Q−1000)のみで成形おこなったこと以外は実施例
1と同じ操作を行った。得られた気体分離用吸着剤の測
定結果を表1に示す。
【0074】比較例2 混練混合した後の嵩密度が1.2kg/リットルであ
り、マルメライザー成形機(不二パウダル社製、型式:
Q−1000)のみで成形おこなったこと以外は実施例
1と同じ操作を行った。得られた気体分離用吸着剤の測
定結果を表1に示す。
【0075】比較例3 混練混合した後の嵩密度が1.2kg/リットルである
こと以外は実施例1と同じ操作を行った。得られた気体
分離用吸着剤の測定結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】実施例4〜6 実施例1、2および3で用いた気体分離用吸着剤と同じ
ものを用いて、窒素吸着量および気体分離性能を吸着温
度0℃において測定した。得られた気体分離用吸着剤の
測定結果を表2に示す。
【0078】比較例4〜6 比較例1〜3で用いた気体分離用吸着剤と同じものを用
いて、窒素吸着量および空気分離性能を吸着温度0℃に
おいて測定した。得られた気体分離用吸着剤の測定結果
を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】実施例7 気体分離用吸着剤を活性化するところまでは実施例1と
同様に行った。包装する前に吸着剤を管状炉から取り出
し400℃まで冷却し、ガラス瓶にとり密閉して包装
し、室温まで放置冷却した。このようにして調製された
気体分離用吸着剤の水分含有量と窒素吸着量を評価し、
測定結果を表3に示す。
【0081】実施例8 包装する前の冷却を350℃とした以外は実施例7と同
様に行なった。測定結果を表3に示す。
【0082】実施例9 包装する前の冷却を300℃とした以外は実施例7と同
様に行なった。測定結果を表3に示す。
【0083】比較例7 包装する前の冷却を200℃とした以外は実施例7と同
様に行なった。測定結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】以上の実施例1から6に示した気体分離用
吸着剤は、マクロ細孔の平均細孔直径がPSA法での空
気分離において窒素を脱着させる250Torrでの窒
素の平均自由行程より大きく、平均自由行程以上の細孔
直径を有している細孔容積が全体の70%以上を占めて
おり、250Torrの条件下での細孔内拡散係数も大
きく、空気分離性能に優れている。
【0086】比較例1または4の気体分離用吸着剤は、
マクロ細孔の平均細孔直径がPSA法での空気分離にお
いて窒素を脱着させる250Torrでの窒素の平均自
由行程より小さく、かつ平均自由行程以上の細孔直径を
有している細孔容積が全体の70%より少なく、細孔内
拡散係数も小さい。このため窒素の平衡吸着量は実施例
の吸着剤と同等であるが、空気分離性能は実施例より低
い性能である。比較例2、3あるいは5、6の吸着剤で
は平均細孔直径は250Torrの平均自由行程よりも
大きいが、平均自由行程以上の細孔容積の割合が70%
より少なく、空気分離性能は実施例の吸着剤に比べて低
い性能である。
【0087】実施例7〜9及び比較例7を比較すると、
水分含有量が0.8重量%以下である実施例の気体分離
用吸着剤の方が窒素吸着量が多く、気体分離用吸着剤と
して好ましいことがわかる。
【0088】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の気体分離
用吸着剤は、マクロ細孔の平均細孔直径が易吸着成分を
脱着させる時の易吸着成分の平均自由行程以上であり、
この易吸着成分の平均自由行程以上の細孔直径を有する
細孔容積が全マクロ細孔容積の70%以上であることか
ら、減圧下におけるマクロ細孔内での脱着時の易吸着成
分の拡散速度が大きく吸着剤の利用率が高い。また比較
的直径の小さい細孔を適度に付与することにより優れた
強度物性を有している。特に本発明の気体分離用吸着剤
はリチウムカチオンで交換され、PSA法により空気分
離を行う場合に、より効果的である。このためPSA法
による空気分離を行った場合において、濃縮酸素ガスの
取り出し量および回収率が高く、PSA装置を運転する
時の動力原単位を低減させることが可能である。さらに
本発明の製造方法によれば、気体分離用吸着剤を容易に
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】空気分離性能試験装置の系統図
【符号の説明】
1:コンプレッサー 2:脱水塔 3:減圧弁 4:露点計 5〜12:電磁弁 13、14:吸着塔 15,16:圧力計 17:製品タンク 18:マスフローメーター 19:酸素濃度計 20:真空ポンプ 21、22:積算流量計

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】SiO2/Al23モル比が1.9以上
    2.1以下の結晶性低シリカフォージャサイト型ゼオラ
    イトと結合剤からなる気体分離用吸着剤において、マク
    ロ細孔の平均直径が、吸着剤から易吸着成分を脱着させ
    る時の易吸着成分の平均自由行程以上であり、且つ、易
    吸着成分の平均自由行程以上の直径を有するマクロ細孔
    の全容積が全マクロ細孔の全容積の総和の70%以上を
    占めていることを特徴とする気体分離用吸着剤。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の気体分離用吸着剤におい
    て、全マクロ細孔の全容積が0.25cc/g以上であ
    り、細孔表面積が20m2/g以上であることを特徴と
    する気体分離用吸着剤。
  3. 【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の気体分離用
    吸着剤において、結晶性低シリカフォージャサイト型ゼ
    オライトの純度が90%以上であることを特徴とする気
    体分離用吸着剤。
  4. 【請求項4】結合剤がセピオライト型粘土及び/又はア
    タパルジャイト型粘土であることを特徴とする請求項1
    〜3のいずれかの請求項に記載の気体分離用吸着剤。
  5. 【請求項5】当該気体分離用吸着剤がビーズ形状である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項に記
    載の気体分離用吸着剤。
  6. 【請求項6】低シリカフォージャサイト型ゼオライトが
    リチウムカチオンでイオン交換されていることを特徴と
    する請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の気体分離
    用吸着剤。
  7. 【請求項7】当該気体分離用吸着剤の水分量が0.8重
    量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれ
    かの請求項に記載の気体分離用吸着剤。
  8. 【請求項8】ゼオライト結晶のSiO2/Al23モル
    比が1.9以上2.1以下の結晶性低シリカフォージャ
    サイト型ゼオライトと、無水基準で前記低シリカフォー
    ジャサイトゼオライト100重量部に対して5〜30重
    量部の結合剤とに水を加えて嵩密度が0.8〜1.0k
    g/リットルになるように混練・捏和した後に成形し、
    その後焼成し、イオン交換し、活性化することを特徴と
    する請求項1〜7のいずれかの請求項に記載の気体分離
    用吸着剤の製造方法。
  9. 【請求項9】結合剤がセピオライト型粘土及び/又はア
    タパルジャイト型粘土であることを特徴とする請求項8
    に記載の気体分離用吸着剤の製造方法。
  10. 【請求項10】羽根撹拌式の造粒によりビーズ形状に成
    形することを特徴とする請求項8又は9に記載の気体分
    離用吸着剤の製造方法。
  11. 【請求項11】焼成された成形体をリチウムカチオンを
    含む溶液によりイオン交換することを特徴とする請求項
    8〜10のいずれかの請求項に記載の気体分離用吸着剤
    の製造方法。
  12. 【請求項12】混合気体を請求項1〜7のいずれかの請
    求項に記載の気体分離用吸着剤の充填層と接触させて、
    気体中の構成ガスの内、少なくとも一つの構成ガスを選
    択的に吸着させることを特徴とする気体分離方法。
  13. 【請求項13】請求項12に記載の気体分離方法におい
    て、気体が空気であり、窒素ガスを選択的に吸着させ、
    酸素ガスを回収することを特徴とする窒素ガス−酸素ガ
    ス分離方法。
  14. 【請求項14】請求項13に記載の窒素ガス−酸素ガス
    分離方法において、圧力振動吸着法により空気中の窒素
    を選択的に吸着させることを特徴とする窒素ガス−酸素
    ガス分離方法。
  15. 【請求項15】請求項14に記載の窒素ガス−酸素ガス
    分離方法において、空気を前記充填層と接触させて窒素
    を選択的に吸着させ濃縮酸素を前記充填層出口から回収
    する吸着工程と、空気と充填層の接触を中断し充填層内
    を減圧にして吸着した窒素を脱着させ排気する再生工程
    と、前記吸着工程で得られた濃縮酸素により充填層内を
    加圧する復圧工程により運転されることを特徴とする窒
    素ガス−酸素ガス分離方法。
  16. 【請求項16】請求項15に記載の窒素ガス−酸素ガス
    分離方法において、吸着工程の吸着圧力が760Tor
    r以上1520Torr以下の範囲であることを特徴と
    する窒素ガス−酸素ガス分離方法。
  17. 【請求項17】請求項15又は16に記載の窒素ガス−
    酸素ガス分離方法において、再生工程の再生圧力が10
    0Torr以上400Torr以下の範囲であることを
    特徴とする窒素ガス−酸素ガス分離方法。
  18. 【請求項18】請求項15〜17のいずれかの請求項に
    記載の窒素ガス−酸素ガス分離方法において、復圧工程
    の復帰圧力が400Torr以上800Torr以下の
    範囲であることを特徴とする窒素ガス−酸素ガス分離方
    法。
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