JP4511661B2 - 穴開け工具及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁、天井、金属板、その他の加工物に穴を開けるための穴開け工具及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のような穴開け工具としては、略円筒状のボディの端部に複数の切削刃をもつ刃物を有し、この刃物が工具本体に装着された状態で当該工具本体が回転駆動機などの駆動源に連結されることにより、工具全体が一体に回転駆動されるようにしたものが一般に知られている。さらに近年は、単一の工具本体に互いに加工径の異なる複数種の刃物を装着できるようにしたり、刃物の寿命延長等のために刃物軸方向両端に前記切削刃を設けた刃物を使用したりできるように、その刃物を工具本体に対して着脱可能にする工夫が検討されている。
【0003】
その構造例を図8(a)(b)に示す。この工具は、図略の駆動源に連結される工具本体80を有し、その先端部82に中心位置決め用のセンタードリル84が着脱可能に装着されるとともに、前記先端部82の外側に刃物90が着脱可能に装着されるようになっている。
【0004】
この刃物90は、円筒状のボディ91を有し、その先端部に複数の切削刃92が周方向に並んだ状態で固定される一方、刃物90の基部は前記工具本体80の先端部82に外嵌される筒状取付部分94とされている。この筒状取付部分94には、これを径方向に貫通する2つのねじ穴94aが180°間隔で設けられ、各ねじ穴94a内に止めねじ96が螺合されながら挿通できるようになっている。一方、前記工具本体先端部82の外周面には、その2個所が平面状に切欠かれることにより回り止め凹部82aが形成されており、これら回り止め凹部82aにそれぞれ前記止めねじ96の端部が嵌まり込むことにより、工具本体80に刃物90が固定され、両者が一体に回転駆動されるようになっている。
【0005】
この穴開け工具の使用要領は次のとおりである。
【0006】
▲1▼ 予め刃物90の各ねじ穴94a内に止めねじ96を螺合挿入させておく。その際、各止めねじ96はある程度径方向外側に位置させてその端部が筒状取付部分94の内周面よりも内方に突出しないようにしておく。
【0007】
▲2▼ 工具本体先端部82の外側に刃物90の筒状取付部分94を嵌合する。そして、同先端部82の回り止め凹部82aと止めねじ96との位置が合致するように工具本体80と刃物90との相対角度を調節した上で、各止めねじ96を締込み方向に回して内方に変位させ、その端部を各回り止め凹部82aに嵌め込む(工具本体80への刃物90の取付完了。)。
【0008】
▲3▼ 工具本体80を図略の回転駆動機に連結し、穴開け工具全体を回転駆動する。この状態でまずセンタードリル84を施工面に押付けることにより、加工穴の芯出し(中心位置決め)が行われ、次いでその周囲を刃物90の切削刃92が切削することにより、刃物90と略同径の穴が開けられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記穴開け工具では、工具本体先端部82に刃物90の筒状取付部分94を外嵌した後、その止めねじ96の周方向位置と回り止め凹部82aの周方向位置とを合致させる周方向の位置決め作業が必要があるが、かかる外嵌状態では回り止め凹部82aが筒状取付部分94の内側に隠れて外から見えないので、前記位置決め作業は容易でない。また、位置決めをした後も、各止めねじ96をそれぞれ回転操作する必要があり、非常に手間がかかる。
【0010】
さらに、工具本体80に対する刃物90の相対回転の規制はすべて止めねじ96と工具本体80との係合によってなされているので、使用時の振動等で双方の止めねじ96が緩んで回り止め凹部82aから離脱した場合には、前記相対回転の規制がなくなり、工具本体80から刃物90へのトルク伝達が不能になって施工を中断しなければならなくなる。
【0011】
さらに、この工具を製造するにあたっては、筒状取付部分94に複数のねじ穴94aを設けなければならず、その製造にも手間を要する。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑み、工具本体への刃物の着脱操作が簡単でその取付信頼性も高く、かつ製造が容易な穴開け工具と、この穴開け工具を簡単に製造するための方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、駆動源に連結される工具本体と、この工具本体の外側に嵌合可能な筒状取付部分を有し、その嵌合状態で前記工具本体と一体に回転するように当該工具本体に固定される刃物とを備えた穴開け工具において、前記筒状取付部分にこの筒状取付部分を径方向に貫通する貫通穴が設けられ、前記筒状取付部分の内周面において前記貫通穴の軸心延長線上に位置する箇所に第1取付穴が設けられ、この第1取付穴内に前記筒状取付部分の内周面から内方に突出する状態で固定係止部材が固定されるとともに、前記筒状取付部分の内周面において前記取付穴と周方向に異なる箇所に第2取付穴が設けられ、この第2取付穴内に、前記筒状取付部分の径方向に移動可能な可動係止部材と、この可動係止部材を筒状取付部分の径方向内側に付勢して当該可動係止部材を前記筒状取付部分の内周面から内方に突出させる付勢手段とが取付けられる一方、前記工具本体において前記筒状取付部分が嵌合される外周面に、前記固定係止部材が工具本体の先端側から軸方向に沿って工具本体後ろ側へ侵入可能な第1溝とこの第1溝の終端から前記固定係止部材が工具本体の周方向に侵入可能な第2溝とが連続する係止溝と、この係止溝の第2溝へ前記固定係止部材が侵入する位置で前記可動係止部材と係合することにより工具本体と刃物との相対回転を規制する回り止め凹部とを設けたものである。
【0014】
この構成によれば、次の要領で簡単に刃物を工具本体に対して着脱することができる。すなわち、刃物における筒状取付部分の内周面から突出する固定係止部材を工具本体側の係止溝の第1溝に侵入させるようにしながら前記筒状取付部分を工具本体外周面に嵌め合わせ、かつ、前記第1溝の終端から第2溝内に前記固定係止部材が侵入する方向に刃物と工具本体とを相対回転させて、当該工具本体に設けられた回り止め凹部に可動係止部材を係合させればよい。この係合に至るまでは、工具本体外周面に押された可動係止部材が付勢手段の付勢力に抗して第2取付穴内に没入するため、この可動係止部材の存在にかかわらず前記刃物と工具本体との嵌合操作及び相対回転操作が円滑に行われる。そして、前記回り止め凹部と可動係止部材との係合により、工具本体と刃物との相対回転が規制され、この規制により前記固定係止部材が係止溝の第2溝内に止まることとなり、その結果、刃物と工具本体の軸方向の相対移動も規制される。また、この操作と逆の操作、すなわち、前記固定係止部材が第2溝内を逆行する向きに工具本体と刃物とを相対回転させる操作と、当該固定係止部材が第1溝から軸方向に抜け出すようにして刃物を工具本体から抜き取る操作とを行うことにより、工具本体からの刃物の取り外しも簡単に行うことができる。
【0015】
従って、この穴開け工具によれば、刃物と工具本体とを所定方向に相対移動させるだけの操作で刃物の着脱をすることができ、従来の工具のように刃物と工具本体とが嵌合された状態で周方向に位置合わせする作業が要らず、また、止めねじを回転操作する作業も要らない。
【0016】
また、筒状取付部分側の固定係止部材及び可動係止部材と工具本体側の係止溝及び回り止め凹部との係合によって刃物の固定をするようにしているので、従来のように工具の振動による止めねじの緩みに起因して前記固定が解除されるおそれがない。
【0017】
しかも、この穴開け工具は、前記刃物の筒状取付部分にこの筒状取付部分を径方向に貫通する貫通穴を設け、この貫通穴に別の穴開け工具を挿通してこの穴開け工具により前記筒状取付部分の内周面に前記第1取付穴を加工し、この第1取付穴内に筒状取付部分の外側から前記貫通穴を通じて固定係止部材を挿入し、固定するという方法によって、簡単に製造することができる。すなわち、この方法によれば、筒状取付部分の内側スペースがかなり狭いにもかかわらず、当該筒状取付部分にはじめに設けた貫通穴を通じて第1取付穴の形成及び当該第1取付穴への固定係止部材の取付を簡単に行うことができる。
【0018】
前記固定係止部材や可動係止部材の具体的な形状は問わないが、これらの少なくとも一方を球体とすれば、当該係止部材と工具本体との接触抵抗が減り、操作がより円滑になる。また、工具本体が傷つきにくくなる。
【0019】
さらに、前記固定係止部材及び可動係止部材を互いに同一形状の球体とすれば、量産性が向上する。
【0020】
前記第1取付穴の具体的な形状も問わないが、これを有底とし、その底部に突き当たるまで前記固定係止部材を取付穴内に挿入することにより、前記筒状取付部分内周面からの固定係止部材の突出量を簡単に決めることができる。
【0021】
ここで、前記第1取付穴内への固定係止部材の取付手段は問わず、接着剤を用いてもよいが、前記第1取付穴内に固定係止部材を圧入するようにすれば、簡単に固定係止部材の取付をすることができる。
【0022】
前記第1取付穴及び固定係止部材の個数も特に問わないが、これらが周方向に異なる複数箇所に設けられていれば、刃物の取付信頼性がさらに向上する。
【0023】
前記係止溝において、第1溝から第2溝が延びる向きは前記工具本体が回転駆動される向きと逆の向きに設定するのが好ましい。このような構成にすれば、加工中に刃物に加わる切削抵抗が当該刃物の固定係止部材を第2溝の奥側(第1溝から離れる側)に変位させる向きに作用する、いわゆる締まり勝手となり、加工中における刃物の取付信頼性がさらに向上する。
【0024】
一方、前記第2取付穴については、その内側端部に当該第2取付穴から前記可動係止部材が筒状取付部分の内側に脱落するのを阻止する抜け止め部が形成されていることが好ましい。
【0025】
この第2取付穴の加工及びこれに対する可動係止部材の取付を行う方法としては、前記第2取付穴として前記筒状取付部分にこれを径方向に貫通する貫通穴を前記抜け止め部が残存するように加工し、この第2取付穴に可動係止部材とその付勢手段であるばね部材とを装填してから第2取付穴の外側開口を蓋で塞ぎ、この蓋と前記可動係止部材とにより前記ばね部材を挟み込んで圧縮変形させ、そのばね部材の弾発力により前記可動係止部材を筒状取付部分の径方向内側に付勢する方法が好適である。この方法により、第2取付穴の加工並びに当該第2加工穴への可動係止部材及び付勢手段(ばね部材)の取付を簡単に行うことができる。
【0026】
本発明は、工具本体に刃物が着脱可能に装着される種々の穴開け工具に適用が可能である。具体的には、前記工具本体はその先端部にセンタードリルが設けられるものであり、前記刃物は、前記センタードリルの周囲をこれと同軸状態で覆う略円筒状をなし、その先端部に切削刃をもつような工具に特に好適である。
【0027】
例えば、前記刃物がその両端に前記切削刃を有し、中間部に前記筒状取付部分を有するものでは、工具本体と刃物との着脱作業を簡単にすることにより、刃物両端の切削の使い分けを簡単に行うことが可能になる。しかも、前記筒状取付部分の肉厚を他の部分の肉厚よりも大きくしてこの筒状取付部分に前記固定係止部材及び可動係止部材を取付けることにより、工具本体側は係止溝及び回り止め凹部を形成するだけで済むので、この工具本体の外径を小さく抑えることができ、その結果、前記刃物の内側に工具本体を軸方向両端のいずれの端からも支障なく挿入することが可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
ここに示す穴開け工具は、図1〜図3に示す工具本体11と、図1,図4,及び図5に示す刃物20とを備えている。
【0030】
工具本体11の後部には、図略の回転駆動機に連結される駆動連結部11aが形成され、前部にはセンタードリル(ドリルビット)12が取付けられている。
【0031】
図2に示すように、工具本体11には、その中心軸に沿って延び、かつ前方に開口するドリル取付穴11bと、工具本体外周面から前記ドリル取付穴11bの奥部につながる径方向のねじ穴11cとが形成され、ねじ穴11c内には、締付工具挿入凹部14aをもつ止めねじ14が螺合状態で挿入されている。
【0032】
一方、センタードリル12の前部にはドリル刃12aが、後部には丸軸状のシャンク部12bが各々形成され、その後端部外周面にその周方向一部を切り欠いた切欠12cが形成されている。そして、このシャンク部12bが前記工具本体11のドリル取付穴11b内に挿入された状態で、前記ねじ穴11c内の止めねじ14が締付工具13により回転操作されて径方向内側へ進行し、前記切欠12cに係合することにより、工具本体11にセンタードリル12が固定されるようになっている。
【0033】
なお、前記センタードリル12のドリル刃12aの周囲には切り屑除去用の螺旋状ばね18が装着されている。
【0034】
図3にも示すように、工具本体11の前端部は、その後側部分よりも小径の小径部11eとされ、その境界に段部11dが形成されている。その小径部11eの外周面上には、互いに周方向に並ぶ位置に、2つの係止溝15と1つの回り止め凹部17とが形成されている。
【0035】
各係止溝15は、小径部11eの前端から軸方向(図例では完全な軸方向から若干周方向に傾斜した方向)に沿って後方に延びる第1溝15aと、この第1溝15aの終端から周方向(図例では完全な周方向から若干後方よりに傾斜した方向)に延びる第2溝15bとが連続して形成されたものであり、これらの係止溝15は互いに周方向に60°離間する位置に設けられている。そして、これら2つの係止溝15の第2溝15bの終端と前記回り止め凹部17とが互いに周方向に60°間隔で並ぶように、当該回り止め凹部17の形成位置が設定されている。
【0036】
図4に示すように、刃物20は、前後対称の略円筒状をなしている。その前後両端には周方向に並ぶ複数の切削刃21が設けられ、その奥側に切り屑排出用の貫通穴22が適所に設けられている。刃物20の前後方向中間部は、他の部分よりも肉厚が大きい(外径が大きくて内径が小さい)筒状取付部分24とされ、その内側に前記工具本体11の前端部が嵌入可能(すなわち工具本体11の前端部外側に筒状取付部分24が嵌合可能)となっている。さらに、この筒状取付部分24の内周部後端と前記工具本体11の段部11dとの当接によって、工具本体11に対する刃物20の軸方向の位置決めが行われるようになっている。
【0037】
なお、図1などにおいて16は、工具本体11の外周面に鍔状に設けられたゴム等からなる刃物カバーであって、使用しない側(後端側)の切削刃21が作業者側に露出するのを防ぐものである。
【0038】
図5に示すように、前記筒状取付部分24の軸方向中央位置には、これを径方向に貫通する2つの貫通穴24aが周方向に60°の間隔で設けられるとともに、当該筒状取付部分24の内周面において、前記貫通穴24aの軸心延長線上の位置(すなわち貫通穴24aと対向する位置)には、半球状の底部をもつ第1取付穴24bが設けられ、この第1取付穴24b内に固定係止球体(固定係止部材)28が圧入され、この圧入によって固定されている。この固定係止球体26の頭部は前記筒状突出部分24の内周面から若干内方に突出しており、この突出頭部が前記工具本体11における係止溝15の第1溝15aさらには第2溝15bに侵入できるようになっている。
【0039】
さらに、前記2つの貫通穴24a同士の間の位置、換言すれば、前記2つの第1取付穴24bとともに周方向に60°間隔で並ぶ位置には、筒状取付部分24をその径方向に貫通する第2取付穴24cが設けられている。
【0040】
この第2取付穴24c内には、筒状取付部分24の外周面側から、前記固定係止球体26と同形の可動係止球体26′及び圧縮コイルばね(ばね部材)27がこの順に装填され、さらにその外側の第2取付穴開口が蓋28によって塞がれている。第2取付穴24cの内側開口周縁は第2取付穴24cの中心に向かって若干内側に円弧状に湾曲しており、前記可動係止球体26′が筒状取付部分24からその径方向内側に脱落するのを阻止する抜け止め部24dを形成している。そして、この抜け止め部24dで抜け止めされた可動係止球体26′と前記蓋28とにより前記圧縮コイルばね27が挟まれて圧縮変形しており、その弾発力によって前記可動係止球体26′が筒状取付部分24の径方向内側に付勢され、当該可動係止球体26′が前記抜け止め部24dに圧接する位置、すなわち、可動係止球体26′の頭部が筒状取付部分24の内周面から内方に突出する位置に保持されている。
【0041】
本発明において、固定係止部材や可動係止部材は必ずしも球体でなくてもよく、例えば図6に示すように、固定係止部材として円柱状の固定係止ピン29を第1取付穴24bに取付けるようにしてもよい。ただし、前記固定係止部材や可動係止部材を球体にすることにより、工具本体との接触抵抗が小さくなって操作がより円滑になる。また、固定係止球体26と可動係止球体26′とを同形状にすることにより、量産性が向上する。
【0042】
次に、この穴開け工具の使用要領例を説明する。
【0043】
▲1▼まず、工具本体11側の各係止溝15における第1溝15aの前端と、刃物20側の2つの固定係止球体26とが互いに合致する角度位置で、筒状取付部分24を工具本体11の前端部外側に嵌合する。その際、前記各固定係止球体26は各係止溝15の第1溝15aを工具軸方向に侵入し、その終端まで突き当たる。また、可動係止球体26′は小径部11eの外周面に内側から押され、圧縮コイルばね27の弾発力に抗して第2取付穴24c内に没入するため、前記嵌合操作に支障はない。
【0044】
▲2▼次に、前記嵌合状態のまま工具本体11と刃物20とを相対回転させる(図示の構造では刃物20に対して工具本体11を当該工具本体11の先端側からみて反時計回り方向に相対回転させる)ことにより、刃物20側の固定係止球体26を第2溝15bに周方向へ侵入させる。この侵入により固定係止球体26が第2溝15bのほぼ終端に達した時点で、刃物20側の可動係止球体26′が圧縮コイルばね27の弾発力によって回り止め凹部17に嵌まり込み、その結果、工具本体11と刃物20との相対回転が規制される。この回り止めにより、各固定係止球体26は各係止溝15の第2溝15b内に止まることとなり、これにより工具本体11と刃物20との軸方向の相対移動も規制される。すなわち、刃物20は工具本体11に固定された状態となり、その装着が完了する。
【0045】
▲3▼工具本体11の駆動連結部11aを図略の回転駆動機に連結し、工具全体を高速回転駆動する。この状態でまずセンタードリル12のドリル刃12aを施工面に押付けて推進させることにより、加工穴の中心位置が定められ、次いで刃物20の切削刃21が前記施工面に押付けられることにより、本加工が行われる。ここで、例えば図3(a)に示すように、前記第2溝15bが前記第1溝15aの終端から周方向に延びる向きが工具本体11の回転駆動の向きと逆の向きになるように設計しておけば、刃物20が加工材から受ける回転抵抗が刃物20側の固定係止球体26を第2溝15bの終端側に押付ける方向に作用する、いわゆる締まり勝手になるため、刃物20の装着状態がより確実に維持される。
【0046】
また、前記装着に従来のような止めねじを使用していないので、施工中に刃物20に振動が加わっても、その振動によって止めねじが緩むといった不都合は生じ得ない。よって、支障のない円滑な施工を続けることができる。
【0047】
▲4▼上記とは逆に、刃物20を交換したり刃物20の向きを逆にしたりする(すなわち反対側の切削刃21を使う)目的で刃物20を取り外すには、前記と逆の操作をすればよい。すなわち、各固定係止球体26が第2溝15b内を逆行する(すなわち第1溝15a側に近づく)向きに工具本体11と刃物20とを相対回転させ、さらに、各固定係止球体26を第1溝15aから脱出させるように工具本体11から刃物20を抜き取ることにより、刃物20の取り外しを簡単に行うことができる。
【0048】
以上のように、この実施の形態にかかる穴開け工具によれば、前記図8に示した従来工具よりも数段簡単な操作で、工具本体11に対する刃物20の着脱を行うことができ、また、取付状態での信頼性も大幅に向上する。しかも、この穴開け工具における刃物20の取付構造は、例えば次の方法によって簡単に製造することができる。
【0049】
1)筒状取付部分24の適所に貫通穴24aを設ける。
【0050】
2)貫通穴24aに例えば図5(a)に示すようなブッシュ32を外側から挿通し、その先端を前記貫通穴24aと対向する内周面に突き当てる。
【0051】
3)同図(a)に示すドリル34を前記ブッシュ32の内側に挿入し、このドリル34の先端部によって前記内周面に有底の第1取付穴24bを形成する。
【0052】
4)ドリル34をブッシュ32から抜き、次いで、このブッシュ32を通して取付穴24b内に固定係止球体26を嵌め込む。圧入する場合には、前記ブッシュ32内に押棒を突っ込むなどして固定係止球体26に上から圧力を加える(同図(b)の矢印参照)。
【0053】
このような製造方法により、筒状取付部分24内の狭いスペースでも、その内周面に取付穴24b及び固定係止球体26を難なく設けることが可能になる。
【0054】
また、前記図1〜図5に示す構造において、固定係止球体26が第1取付穴24bの底部に突き当たる位置まで圧入するようにすれば、当該第1取付穴24bの深さ設定によって、筒状取付部分24の内周面からの固定係止球体26の突出量を正確に決めることができる。
【0055】
一方、第2取付穴24cの加工及びこの第2取付穴24cへの可動係止球体26′の取付も、次の方法により簡単に行うことができる。
【0056】
5)先端が略半球状のドリルなどによって筒状取付部分24の外側から穿孔を行い、内側端に抜け止め部24dが残存するように貫通穴すなわち第2取付穴24cを加工する。
【0057】
6)この第2取付穴24c内に筒状取付部分24の外側から可動係止球体26′及び圧縮コイルばね27を装填し、さらにその外側の第2取付穴開口を蓋28で塞ぐ。この蓋28と可動係止球体26′との間に圧縮コイルばね27が挟み込まれることにより、当該圧縮コイルばね27が圧縮変形して前記可動係止球体26′を筒状取付部分24の径方向内側に付勢する力が発生する。
【0058】
この方法によれば、第2取付穴24cの加工も、可動係止球体26′及び圧縮コイルばね27の取付も、ともに筒状取付部分24の外側から行うことができる。
【0059】
その他、本発明は例として次のような実施の形態をとることも可能である。
【0060】
(1)本発明では、刃物20の具体的な形状や構造を問わない。例えば、図1等には前後両端に切削刃21をもつ両刃の刃物20を示したが、前記図8(a)に示した片刃式の刃物20を工具本体に装着する場合にも本発明の適用が可能である。
【0061】
(2)取付穴24b内への固定係止部材の固定手段は圧入に限らない。例えば接着剤を用いてもよいし、前記取付穴24bをねじ穴とし、これに螺合可能な雄ねじを固定係止部材に形成するようにしてもよい。このようなねじ構造で仮にそのねじが緩んでも、これに伴う固定係止部材の変位方向は内方に突出する方向であるため、この固定係止部材と係止溝との係合が外れる心配はない。
【0062】
(3)本発明では、固定係止部材及び係止溝の配置や個数を問わない。これらは単数でもよいし、また、複数の場合でも必ずしも等間隔で配設する必要はない。
【0063】
【発明の効果】
以上のように本発明は、刃物の筒状取付部分に貫通穴を設け、この貫通穴の軸心延長線上に第1取付穴を設けてこれに固定係止部材を固定し、この固定係止部材が工具本体側の係止溝における第1溝さらには第2溝に軸方向及び周方向に侵入できるようにし、さらに、その侵入終了時点で工具本体側の回り止め凹部と刃物側の可動係止部材との係合によって両者の相対回転が規制されるように構成したものであるので、工具本体に対する刃物の着脱作業を簡単にし、かつ、その装着状態での信頼性を高めることができ、また、前記刃物の取付構造を簡単に製造することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる穴開け工具の一部断面正面図である。
【図2】前記穴開け工具における工具本体の一部断面正面図である。
【図3】(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は前記穴開け工具における工具本体の前端部を示す正面図である。
【図4】図5のC−C線断面図である。
【図5】前記穴開け工具における刃物の筒状取付部分の横断面図である。
【図6】前記刃物における固定係止部材をピン状にした例を示す横断面図である。
【図7】(a)(b)は前記穴開け工具の刃物の製造工程を示す断面正面図である。
【図8】(a)は従来の穴開け工具の一例を示す断面正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【符号の説明】
11 工具本体
12 センタードリル
15 係止溝
15a 第1溝
15b 第2溝
17 回り止め凹部
20 刃物
21 切削刃
24 筒状取付部分
24a 貫通穴
24b 第1取付穴
24c 第2取付穴
26 固定係止球体
26′可動係止球体
27 圧縮コイルばね(ばね部材)
28 蓋
29 固定係止ピン
34 ドリル(別の穴開け工具)

Claims (13)

  1. 駆動源に連結される工具本体と、この工具本体の外側に嵌合可能な筒状取付部分を有し、その嵌合状態で前記工具本体と一体に回転するように当該工具本体に固定される刃物とを備えた穴開け工具において、前記筒状取付部分にこの筒状取付部分を径方向に貫通する貫通穴が設けられ、前記筒状取付部分の内周面において前記貫通穴の軸心延長線上に位置する箇所に第1取付穴が設けられ、この第1取付穴内に前記筒状取付部分の内周面から内方に突出する状態で固定係止部材が固定されるとともに、前記筒状取付部分の内周面において前記取付穴と周方向に異なる箇所に第2取付穴が設けられ、この第2取付穴内に、前記筒状取付部分の径方向に移動可能な可動係止部材と、この可動係止部材を筒状取付部分の径方向内側に付勢して当該可動係止部材を前記筒状取付部分の内周面から内方に突出させる付勢手段とが取付けられる一方、前記工具本体において前記筒状取付部分が嵌合される外周面に、前記固定係止部材が工具本体の先端側から軸方向に沿って工具本体後ろ側へ侵入可能な第1溝とこの第1溝の終端から前記固定係止部材が工具本体の周方向に侵入可能な第2溝とが連続する係止溝と、この係止溝の第2溝へ前記固定係止部材が侵入する位置で前記可動係止部材と係合することにより工具本体と刃物との相対回転を規制する回り止め凹部とを設けたことを特徴とする穴開け工具。
  2. 請求項1記載の穴開け工具において、前記固定係止部材、可動係止部材の少なくとも一方が球体であることを特徴とする穴開け工具。
  3. 請求項2記載の穴開け工具において、前記固定係止部材及び可動係止部材が互いに同一形状の球体であることを特徴とする穴開け工具。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の穴開け工具において、前記第1取付穴は有底穴であり、その底部に前記固定係止部材が突き当たる位置まで当該固定係止部材が前記第1取付穴内に挿入され、固定されていることを特徴とする穴開け工具。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の穴開け工具において、前記第1取付穴に前記固定係止部材が圧入されていることを特徴とする穴開け工具。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の穴開け工具において、前記第1取付穴及び固定係止部材が周方向に異なる複数箇所に設けられていることを特徴とする穴開け工具。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の穴開け工具において、前記第1溝から第2溝が延びる向きを前記工具本体が回転駆動される向きと逆の向きに設定したことを特徴とする穴開け工具。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の穴開け工具において、前記第2取付穴の内側端部に当該第2取付穴から前記可動係止部材が筒状取付部分の内側に脱落するのを阻止する抜け止め部が形成されていることを特徴とする穴開け工具。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の穴開け工具において、前記工具本体はその先端部にセンタードリルが設けられるものであり、前記刃物は、前記センタードリルの周囲をこれと同軸状態で覆う略円筒状をなし、その先端部に切削刃をもつものであることを特徴とする穴開け工具。
  10. 請求項9記載の穴開け工具において、前記刃物はその両端に前記切削刃を有し、中間部に他の部分よりも肉厚の大きい筒状取付部分を有することを特徴とする穴開け工具。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の穴開け工具の製造方法であって、前記刃物の筒状取付部分にこの筒状取付部分を径方向に貫通する貫通穴を設け、この貫通穴に別の穴開け工具を挿通してこの穴開け工具により前記筒状取付部分の内周面に前記第1取付穴を加工し、この第1取付穴内に筒状取付部分の外側から前記貫通穴を通じて固定係止部材を挿入し、固定することを特徴とする穴開け工具の製造方法。
  12. 請求項11記載の穴開け工具の製造方法において、前記第1取付穴内に前記固定係止部材を圧入することを特徴とする穴開け工具の製造方法。
  13. 請求項8記載の穴開け工具の製造方法において、前記第2取付穴として前記筒状取付部分にこれを径方向に貫通する貫通穴を前記抜け止め部が残存するように加工し、この第2取付穴に可動係止部材とその付勢手段であるばね部材とを装填してから第2取付穴の外側開口を蓋で塞ぎ、この蓋と前記可動係止部材とにより前記ばね部材を挟み込んで圧縮変形させて、そのばね部材の弾発力により前記可動係止部材を筒状取付部分の径方向内側に付勢することを特徴とする穴開け工具の製造方法。
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