JP4510677B2 - リング状歯車素材用鋼管 - Google Patents

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Description

本発明は、歯元を高周波焼き入れして製造されるリング状歯車(以下、リングギアと記す)の素材となる鋼管を提供し、リングギアの製造コストの大幅な低減を図るものである。
自動車や産業機械に使用される歯車は、従来は棒鋼を素材として鍛造−切削−歯切りにより所定の形状に加工された後、浸炭焼き入れ−焼き戻し処理にて製造されてきた。しかし、浸炭には900℃前後での長時間処理が必要であるため、歯車製造工程のインライン化が困難であった。また、浸炭処理して用いる素材にはJIS G 4105 SCM420を代表とする、炭素量が0.2%と比較的低くCr,Moで焼き入れ性を確保させた合金鋼が必要であった。しかし、産業界からの強いコストダウン要請により、製造プロセスと素材の両面から度重なる改善がなされてきた。
前者である製造プロセスに関しては、近年の高周波焼き入れ技術の著しい進歩により、浸炭焼き入れ処理に代わって歯車に適用することが可能となり、熱処理のインライン化が進められ、改善されてきた。
後者である素材に関しては次のように改善の提案がなされてきている。高周波焼き入れには、必要硬さを確保するために0.5%前後のCを含有する鋼が必要であるが、浸炭焼き入れ用の従来鋼に比べてC量が高いために、焼き入れ性の確保のための合金元素の添加が少なくてすむ反面、切削性が劣るという問題があった。そこで特許文献1〜3には切削性を向上させた高周波焼き入れ用素材が提案されている。特に特許文献2では、切削性向上のためにフェライト+パーライト組織が有効であることの記載がある。しかし、特許文献2の実施例の記載では、元の素材は845℃焼き入れ後550℃で焼き戻し処理されているのでフェライト+パーライト組織ではあり得ず、実質的には焼き戻しマルテンサイト組織で用いられており、フェライト+パーライト組織の有効性が確認されたとは言えない。また、特許文献3では、フェライトの混在は歯車の疲労特性に有害であるとの記載がある。
これらの先行技術では、従来鋼に比べて合金元素が少ないため、素材面に関しては一定のコストダウン効果があったと言える。しかし、最近ではさらなる素材面でのコストダウンのために、JIS G 4051 S45Cに代表される汎用鋼の適用が進められている。そのためには、鍛造、熱処理、冷却条件等の諸条件の制御を駆使して適切な材質を得る必要があるが、棒鋼を素材としてサイズの大きくない歯車を製造する場合には、それは比較的容易である。
一方、歯車の中でもリングギアは中空形状であるため、棒鋼から鋼管に素材を変更することにより鍛造工程の省略が可能となり、さらなる大幅なコストダウンが期待できる。鍛造工程を省略し鋼管素材から直接切削加工するためには、鋼管素材そのものの材質がリングギアの材質として適するものでなくてはならない。鋼管素材の材質も、造管後のオフラインでの調質熱処理や、冷間引き抜き等を駆使して調整することは可能であるが、その場合には工程費用がかさむために、棒鋼素材からの鍛造工程を経て製造する場合に比べてコストメリットが得られない。熱間での鋼管製造工程のライン内で材質を造り込むことができればコストメリットが得られるが、長尺の大物を取り扱う鋼管製造工程は短尺の小物を取り扱う鍛造工程に比べて製造条件を変化させる余裕代が小さいのに加えて、長尺厚肉素管全体の材質を均一にするのは短尺な小物に比べて非常に困難であることから、従来は熱間鋼管製造ラインでのリングギア材質の造り込みは実現していなかった。
一方、外表面の円周方向の残留応力が高いと高周波焼き入れ後にリングギアの寸法精度が低下することが経験的に判っている。円周方向残留応力の測定方法の一つとしては非特許文献1で開示されている。
特許第3239432号公報 特許第3428282号公報 特許第3436867号公報 Crampton, D.K., Trans. AIME, Inst. Materials Division, 1930
本発明は、上記課題に課題に鑑みて、自動車用オートマティックミッション等に使用される高周波焼き入れリングギア用素材を鋼管で提供することにより、さらなるコストダウンを実現することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために、高周波焼き入れ用リングギア素材に真に必要とされる材質、およびそれを鋼管に付与するための方法を種々検討した結果、ついに以下のような知見を得るに至った。
まず、素材から歯元を機械加工する際の加工性の観点から、金属組織はベイナイト組織、焼き戻しマルテンサイト組織等と比較して、フェライト+パーライト組織が最も望ましい。その理由は、特に、リングギアの中でも内面側に歯を有する内歯歯車の場合においては、歯元の機械加工法として非常に効率的でコストダウン効果が著しいブローチ加工法を適用することができるのであるが、その際に、フェライト+パーライト以外の組織では安定してブローチ加工を行うことが困難であることを見出したからである。しかし、逆に、たとえフェライト+パーライト組織でも軟らかすぎるとやはりブローチ加工性が損なわれることも見出した。
また、リングギアの歯元にはビッカース硬さ(以下Hvと記す)で700以上の硬さが必要であるが、芯部は最低Hv210以上の硬さは必要であるものの、Hv260を越えると靱性が十分でないことを見出した。さらに、フェライト+パーライト組織でもHv210以上Hv260以下であれば、オーステナイト域からの放冷により得られる通常のフェライト+パーライト組織に比べれば大幅に硬いために、これにより耐疲労強度も高まり、リングギア素材として十分な疲労強度が確保できることも見出した。
歯元を高周波焼き入れでHv700以上にするにはC量0.4%以上の炭素鋼であれば十分であるが、靱性の面からC量は0.6%以下に抑える必要がある。その場合、硬さの範囲がHv210〜260であるフェライト+パーライト組織を得るには、鋼管をオーステナイト域からある一定範囲の冷却速度でパーライト変態が終了する温度以下まで加速冷却することにより可能である。長尺鋼管全長にわたってこのような冷却速度で均一に冷却するためには、内面側からは冷却せずに外面側のみから冷却することにより達せられるが、その場合に内面近傍に対しても十分な冷却速度を確保しようとすると外表面近傍の冷却速度は著しく速くなるために外表面が焼き入れ硬化する恐れがある。それを防止するためには鋼管の肉厚を22mm以下とし、さらに望ましくは、外表面に肉厚方向に500μm以内の脱炭層を付与すれば良いことを見出した。
さらに、素材鋼管の円周方向に残留応力が存在すると、ブローチ加工後あるいは高周波焼き入れ後の刃先の寸法制度が低下する。これを防止するためには、外表面の円周方向の残留応力を引張側、圧縮側共に150MPa以下に抑えることにより解決されることを見出した。
本発明は主に上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1) 質量%で、C:0.4〜0.6%、Si:0.1〜0.4%、Mn:0.5〜0.8%、P:0.03%以下、S:0.005〜0.03%、Al:0.01〜0.08%を含有し、残部はFeおよび不可避元素からなる肉厚5mm以上22mm以下、長さが外径の5倍以上の鋼管であり、該鋼管の金属組織がフェライト+パーライトであり、内表面および外表面からそれぞれ1mm内側までを除いた部分の硬さがビッカース硬さで210〜260であり、前記外表面から肉厚方向に500μm以内の脱炭層を有することを特徴とするリング状歯車素材用鋼管。
(2) 質量%で、さらにCr:0.05〜0.2%、Ni:0.05〜0.2%、Mo:0.05〜0.5%、B:0.0002〜0.0006%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載のリング状歯車素材用鋼管。
) 外表面の円周方向の残留応力が絶対値で150MPa以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のリング状歯車素材用鋼管
本発明の鋼管は、フェライト+パーライト組織でビッカース硬さがHv210〜260であるので、ブローチ加工に適し、疲労強度も確保されている。また、本発明の鋼の成分系は加工後に高周波焼き入れによってHv700以上の硬さを確保できる。さらに、本発明の鋼管は、従来の棒鋼から鍛造によって造った中空素材よりも安価である。したがって、本発明の適用により、従来に比べて著しくコストダウン効果の高い高周波焼き入れ用リング状歯車素材を提供することが可能となる。
以下に、本発明において鋼管の化学成分を限定した理由について説明する。なお、以下に示す「%」は、特段の説明がない限りは、「質量%」を意味するものとする。
C:Cは高周波焼き入れにより、従来の浸炭鋼と同等のHv700以上の硬さを確保するために、下限を0.4%と定めた。しかし、0.6%を越えて添加すると靱性および切削性が低下するので、上限を0.6%に定めた。
Si:Siは脱酸作用を有する他に、フェライトを固溶強化する効果も有する。しかし、入れすぎると靱性を損なう恐れがあるために添加量の範囲を0.1〜0.4%に制限した。
Mn:Mnはオーステナイト域を拡大させて初析フェライトを減らしパーライト分率を高めるとともに、パーライト変態開始温度を低下させてパーライトのラメラ間隔を狭くするために、フェライト+パーライト組織の硬さの向上に寄与する。その効果を得るためには0.5%以上の添加が必要である。しかし入れすぎると焼き入れ性が上昇しすぎてベイナイト組織が生成しやすくなるために上限を0.8%と定めた。ベイナイト組織はブローチ加工性を低下させるとともに、やや靭性に劣り、本発明の組織としては好ましくない。
P:Pは靱性を低下させるためにできるだけ少ない方が望ましいが、過度に低減させようとするとコスト上昇を招くので、0.03%までを許容できる上限に定めた。
S:Sは切削性の向上に有効な元素であり、その効果を得るために0.005%以上添加することとした。しかし、過度に添加すると脆化するために上限を0.03%に定めた。
Al:Alは脱酸作用を有する他に、高温で鋼中の不可避Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト粒の成長を抑制する効果がある。その効果は0.01%以上で発揮し、0.08%を越えると効果が飽和するために、添加量の範囲を0.01〜0.08%に定めた。
Cr:CrはMnと同様にフェライト+パーライト組織の硬さ向上に寄与する元素でありその効果を得るためには0.05%以上の添加が必要であるが、過度の添加はコスト上昇を招くとともにベイナイト組織が生成しやすくなるために、その上限を0.2%と定めた。
本発明においてはコスト上昇を招く合金元素の添加を極力抑えたが、MnやCrと同等の効果が得られる元素として、0.05〜0.2%のNi、0.05〜0.5%のMo、0.0002〜0.0006%のBも必要に応じて添加することが可能である。また、本発明では通常の不純物レベルのNは許容されるが、靱性の低下を防止するために、その量は0.0200%を越えないことが望ましい。
本発明で、金属組織をフェライト+パーライトに限定した理由は、内歯リングギアの歯元加工を極めて効率的に行うことのできるブローチ加工において、工具寿命を低下させることなく良好な内歯形状が得られる最も適した金属組織であるからである。なお、パーライト組織の判定は、試験材を鏡面研磨後ナイタール等のエッチング液にてエッチングし、走査型電子顕微鏡を用いて最大5000倍まで拡大して検鏡し、フェライトとセメンタイトの層状組織が観察された場合をパーライト組織とする。
また、内表面および外表面からそれぞれ1mmだけ内側の位置までを除いた部分の硬さをHv210〜260に限定した理由は、リングギアの芯部の強度としては最低Hv210、さらに望ましくはHv220程度の硬さに相当する強度が最低限必要であり、また硬さがHv260を越えるとベイナイト組織が出現し、ブローチ加工性が大きく低下するのに加えて、十分な靱性が得られないからである。さらに望ましくは、Hv250以下にした方が良い。また、硬さがHv200以下であると、たとえフェライト+パーライト組織であってもブローチ加工性が低下することも、硬さの下限をHv210に設定した理由の1つである。また、Hv210以上の硬さを確保することにより、同程度の化学成分を有する硬さHv180前後の一般のフェライト+パーライト鋼よりも疲労強度が高く、この点からもリングギア用に適していると言える。なお、硬さの範囲がHv210〜260であるフェライト+パーライト組織を得るには、鋼管をオーステナイトの温度域からある一定範囲の冷却速度でパーライト変態が終了する温度以下まで加速冷却することにより可能である。
一方、内表面および外表面からそれぞれ1mmだけ内側の位置までの部分は、鋼管素材からリングギアを製造する際のブランク加工の工程で切削によって取り除かれるために、特に硬さを規定しなかった。ただし、ブランク加工工程での切削加工はブローチ加工と異なり、硬さの低い方が加工しやすく、この部分はむしろHv210未満の方が望ましい。
さらに、本発明では鋼管は、肉厚を5〜22mm、長さを外径の5倍以上と限定した。その理由を以下に説明する。硬さの範囲がHv210〜260であるフェライト+パーライト組織が得られる冷却速度の範囲内で、長尺な鋼管を全長にわたって加速冷却するためには、内面側からは冷却せずに外面側のみから冷却することが必要である。それは、内面側から冷却すると冷却速度を制御することが困難になるからである。しかし、肉厚が22mmを超える鋼管を外表面側のみから冷却した場合、外表面と内表面との冷却速度の差が大きくなりすぎて、内表面および外表面からそれぞれ1mm内側までの位置までを除いた全肉厚に対してHv210〜260であるフェライト+パーライト組織を得ることができなくなる。また、5mm未満の肉厚では、たとえ長尺でもリングギア用の材質の造り込みがそれほど困難でないこととに加えて、内外表面の削り代を差し引くと肉厚が薄くなりすぎて、リングギアとしてはあまり一般的でないからである。鋼管の長さを外径の5倍以上と限定した理由は、長さが外径の5倍未満の短尺管は、棒鋼を素材として鍛造するという従来技術によって製造が可能であるが、長さが外径の5倍以上の長尺管は、棒鋼からの鍛造では座屈しやすく製造が困難であるためである。長尺鋼管素材を用いることによる鍛造材に対するコストメリットをより確実なものとするためには、鋼管の長さを外径の10倍以上とすることが望ましい。
本発明では外表面から肉厚方向に500μm以内の脱炭層を有することも本発明の1つの形態として規定した。前述のように、本発明の鋼管は外表面側からの加速冷却により製造するのが最も良いと考えられるが、その場合、外表面近傍は著しく冷却速度が速くなるために焼き入れ硬化しやすい。硬化組織が外表面から1mm以内であれば、この部分は切削加工で取り除かれるためにリングギアの材質上は何ら問題がないのであるが、硬すぎて切削加工が困難となる場合がある。外表面に脱炭層が形成されていれば、外表面から1mm以内の冷却速度が著しく速い場合でも焼き入れ硬化することなく、外表面の切削が困難になるという問題を防止することができる。しかし、脱炭層の厚さが500μmを越えると、外表面から1mmの位置での硬さがHv210に達しない恐れがあるために脱炭層の厚さの上限を500μmに規定した。望ましい脱炭層の厚さは100〜200μmである。脱炭層厚さの調整は、例えば熱間での穿孔−圧延−延伸工程によって造管する場合にはブルームの加熱温度と時間によって行うことが可能である。本発明では、内面側に対しては特に脱炭層の厚さの規定はしなかった。その理由は、外表面側からの冷却の場合、内表面側ほど冷却速度が遅くなるので目標の硬さが得られにくいために、内表面側には脱炭層は不要であるからである。従って、内表面側の脱炭層の厚さはなるべく薄く抑える方が良い。なお、本発明での脱炭層とは、粒状フェライトの面積率が80%以上の領域と定義する。
さらに、本発明では外表面の円周方向の残留応力が絶対値で150MPa以下であることも本発明の1つの形態として規定した。その理由は、外表面の円周方向の残留応力が高いとブローチ加工あるいは高周波焼き入れ後に歪みが発生しやすくなり、リングギアの寸法精度が低下するからである。寸法精度が悪いと使用時のノイズや振動の発生の原因となる。残留応力は圧縮側でも良いが、圧縮側でも最大で150MPaが好ましい。なお、本発明における外表面の円周方向の残留応力は、非特許文献1に記載のクランプトンによる方法に準拠して測定するものとする。すなわち、外径D1、肉厚t、長さが外径の2倍以上の鋼管を1mm以上の鋸歯により円周方向で任意の1箇所の全肉厚分を長手方向に切断する。切断後のC型に口の開いた形状での外径をD2とすると、残留応力σは次式で計算される。但しEはヤング率、νはポアソン比である。
σ = Et/(1−ν2)×(1/D1−1/D2
本発明ではE=210000、ν=0.3の値を用いることにする。本発明で想定した残留応力はこのような測定法で測定された平均的なものであり、例えば、表面脱炭層で生じるような微視的にまたは集中して働く残留応力を想定しているものではない。本発明の残留応力は、全厚・全長にわたって冷却速度をできるだけ均一にすることにより達せられるが、冷却後に応力除去焼鈍を行っても一向に差し支えない。
なお、本発明での鋼管とは、主として熱間で穿孔−圧延−延伸して製造される継ぎ目なし鋼管を対象にしているが、冷間または熱間で穿孔し、熱間押出プレスにより製造された継ぎ目なし鋼管や、ホットコイルを冷管または熱間でロールにより管状に成型し、両端面を溶接することにより製造された溶接鋼管も含まれるものとする。
また、本発明の鋼管は、主に外表面側からの水冷による加速冷却により製造されることが想定されているが、特にこの製造方法に限定されることなく、どのような冷却方法で製造しても差し支えない。
表1に示す化学成分の鋼を溶製し、転炉−連続鋳造プロセスにより直径170mmのブルームを鋳造した。これらの鋼のブルームを1230℃に加熱し、マンネスマン−プラグミル方式により穿孔−圧延−定型の後、900℃に再加熱し縮径圧延した直後の850℃から、リング冷却により管外面側から水冷した。冷却条件は、管の内表面の冷却速度を最小値、管の外表面から1mmだけ内側の位置の冷却速度を最大値として、750℃から550℃までを、i)15〜5℃/秒、ii)30〜8℃/秒、iii)5〜1℃/秒の3水準の冷却速度で、いずれも内表面が400℃に達するまで冷却した。加えて、縮径圧延後に水冷せずに管を室温まで放置した後、iv)900℃×30分水冷+620℃×30分空冷の焼き入れ焼き戻し処理も実施した。縮径圧延後の管のサイズは、外径:120mm、肉厚:12mm、長さ:6000mmとした。管外面の平均的な脱炭層の厚さは200μmであった。さらに、脱炭層厚さの影響を調べるために、ブルームの加熱温度を1300℃にすることにより、管外面の脱炭層厚さを600μmにした鋼管も試作した。
Figure 0004510677
試作管の外表面および内表面からそれぞれ1mmだけ内側の位置に対して、金属組織を観察し、10kgにてビッカース硬さを測定した。金属組織は走査型電子顕微鏡にて最大5000倍まで拡大して観察し、フェライト+パーライト、ベイナイト(一部にフェライトを含む場合もある)、および、焼き戻しマルテンサイトの3通りに判別した。
また、靱性の評価のために、ハーフサイズの2mmUノッチ試験片を用いて+20℃にてシャルピー試験を行い、衝撃値を測定した。
さらに、試作した管を50mm長さに輪切りにして残留応力を測定した他、輪切りにした管の内外表面を1mmづつ切削した後、内表面をブローチ加工により歯切りして、内歯を10kHz×10秒の条件で高周波焼き入れすることによりリングギアを製作した。ブローチ加工時の抵抗力、加工後の歯元の形状、リングギア内寸の精度等から総合的に判断して、ブローチ加工性を良好、不良と判定した。さらに、高周波焼き入れ後の歯の表面硬さを測定した。高周波焼き入れ後の加工精度は、リングギアの内径を、中心に対して向かい合う歯の頂点間の距離として15°毎に測定し、6点の測定値の最大値と最小値との差を「楕円度」と定義して求めた。管の製造条件および評価結果を表2に示す。
Figure 0004510677
本発明例であるNo.1〜7はブローチ加工性が良好で、歯元の高周波焼き入れ性に優れ、楕円度100μm以下の1級品の基準を満足し、リングギアとして必要な強度、靱性を兼ね備えていた。
No.8も本発明例ではあるが、鋼Dに対して、No.4と同様な方法で製造したのにも関わらず冷却の均一性がやや劣ったために残留応力が150MPa以上になってしまった鋼管であり、ブローチ加工性、高周波焼き入れ性、および硬さや組織は良好だったものの、楕円度が100μmを超えて2級品となった例である。
それに対して、No.9および12はC量およびMn量が低すぎて高周波焼き入れ後の歯元表面の硬さと内部の強度が十分でなかった例である。
No.10および11はそれぞれC量およびMn量が高すぎて、靱性が十分でなかった例である。
No.13はS量が低すぎて、加工性が良くなかった例である。
No.14〜16は、本発明内の化学成分を有する鋼ではあるが、冷却速度が速すぎたためにベイナイト組織が出現し、靱性が不十分であった例である。特にNo.16は内表面から1mmだけ内側の位置もベイナイト組織であったために、ブローチ加工性が悪かった例である。
No.17およびNo.18は、本発明内の化学成分を有する鋼ではあるが、冷却速度が遅すぎて内面側の硬さがHv210に達しなかったために、強度不足であるとともにブローチ加工性が悪かった例である。
No.19およびNo.20は、本発明内の化学成分を有する鋼ではあるが、焼き入れ焼き戻し処理により焼き戻しマルテンサイト組織としたために、硬さの範囲は良好であったものの、ブローチ加工性が悪かった例である。
No.21は脱炭層が厚すぎて、内外表面を1mmづつ切削しても内外表面の硬さがHv210に達しなかったためにブローチ加工性が悪く、高周波焼き入れ後の歯元表面の硬さも十分に得られなかった例である。
本発明の適用により、高周波焼き入れ性と加工性に優れたリングギア用の素材を、従来に比べて格段に低コストで提供することが可能となる。したがって、本発明においては、産業の発展に寄与するところ極めて大なるものがある。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.4〜0.6%、Si:0.1〜0.4%、Mn:0.5〜0.8%、P:0.03%以下、S:0.005〜0.03%、Al:0.01〜0.08%を含有し、残部はFeおよび不可避元素からなる肉厚5mm以上22mm以下、長さが外径の5倍以上の鋼管であり、該鋼管の金属組織がフェライト+パーライトであり、内表面および外表面からそれぞれ1mm内側までの位置までを除いた部分の硬さがビッカース硬さで210〜260であり、前記外表面から肉厚方向に500μm以内の脱炭層を有することを特徴とするリング状歯車素材用鋼管。
  2. 質量%で、さらにCr:0.05〜0.2%、Ni:0.05〜0.2%、Mo:0.05〜0.5%、B:0.0002〜0.0006%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載のリング状歯車素材用鋼管。
  3. 外表面の円周方向の残留応力が絶対値で150MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリング状歯車素材用鋼管。
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