JP4510098B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

Description

本発明は、スクロール圧縮機に係り、特に、空気調和機、冷蔵庫等に搭載するスクロール圧縮機に好適なものである。

従来のスクロール圧縮機としては、特開平６−１７３８７７号公報（特許文献１）に記載されたものがある。

この特許文献１のスクロール圧縮機は、密閉容器内に電動機部と、作動流体を圧縮する圧縮機構部と、前記電動機部の回転力を前記圧縮機構部に伝達して当該圧縮機構部を駆動するクランク軸と、前記クランク軸を前記電動機部の両側で回転可能に支持する複数の軸受と、前記電動機部、前記圧縮機構部、前記クランク軸、及び前記複数の軸受を収納する密閉容器とを備えている。

そして、前記圧縮機構部は、それぞれの端板上に設けられた渦巻状のラップを噛み合わせることにより圧縮室を形成する固定スクロールおよび旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転防止手段と、前記自転防止手段を支持するフレームとを備えている。前記複数の軸受は、前記フレームに内蔵されて前記クランク軸を支持する主軸受と、前記電動機部より反圧縮機構部側で前記クランク軸を支持する副軸受とを備えている。前記副軸受は、支持部に溶接されると共に内周に球面形状部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの球面形状部に収納され自動調芯機能を有して前記クランク軸を支持する球面軸受と備えている。

さらには、前記球面軸受は、機械構造用炭素鋼材または鋳物材の表面に窒化処理を施して硬化し、さらに二硫化モリブデンおよびリン酸マンガン皮膜処理を施して構成されている。

特開平６−１７３８７７号公報

特許文献１では、機械構造用炭素鋼材または鋳物材の表面に窒化処理を施して硬化し、さらに二硫化モリブデンおよびリン酸マンガン皮膜処理を施して構成された球面軸受を用いているので、表面硬度が強化され、球面軸受の信頼性が向上される。しかし、特許文献１には、軸受ハウジングの信頼性については開示されていない。

その軸受ハウジングには機械構造用炭素鋼材が用いられるが、軸受ハウジングの炭素含有量が多い場合には、支持部に溶接する際に軸受ハウジングにクラックが生じやすく、加工精度が劣る。そこで、溶接時のクラック防止や加工精度の向上を優先させるため、軸受ハウジングに低炭素鋼材を用いることが考えられるが、その場合には、軸受ハウジングと球面軸受との硬度差及び耐摩耗性に著しい差が生じ、高負荷運転等で軸受ハウジングが一方的に異常摩耗してしまうおそれがあり、騒音異常や入力増大等の圧縮機の品質低下等の原因になる可能性があることが分かった。

本発明の目的は、快削性及び良好な溶接性を有する低炭素鋼を用い且つガス軟窒化処理によって耐摩耗性の高い軸受ハウジングとし、安価で信頼性の高いスクロール圧縮機を提供することにある。

前述の目的を達成するために、本発明は、電動機部と、作動流体を圧縮する圧縮機構部と、前記電動機部の回転力を前記圧縮機構部に伝達して当該圧縮機構部を駆動するクランク軸と、前記クランク軸を前記電動機部の両側で回転可能に支持する複数の軸受と、前記電動機部、前記圧縮機構部、前記クランク軸、及び前記複数の軸受を収納した密閉容器とを備え、前記圧縮機構部は、それぞれの端板上に設けられた渦巻状のラップを噛み合わせることにより圧縮室を形成する固定スクロールおよび旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転防止手段と、前記自転防止手段を支持するフレームとを備え、前記複数の軸受は、前記フレームに内蔵されて前記クランク軸を支持する主軸受と、前記電動機部より反圧縮機構部側で前記クランク軸を支持する副軸受とを備え、前記副軸受は、支持部に溶接されると共に内周に内球面部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジング内に収納され前記内球面部と摺動して自動調芯機能を持つ外球面形状部を有する球面軸受と備え、前記球面軸受は、機械構造用炭素鋼材または鋳物材の表面に窒化処理を施して硬化し、さらに二硫化モリブデンおよびリン酸マンガン皮膜処理を施して表面硬度を４００Ｈｖ〜６００Ｈｖとしたスクロール圧縮機において、前記軸受ハウジングは、低炭素鋼材を用い、この低炭素鋼材単独の場合の表面硬度と前記球面軸受の表面硬度との硬度差よりも硬度差が小さくなるように、その低炭素鋼材の表面の少なくとも前記球面軸受の外球面部との摺動面になる内球面部にガス軟窒化処理を施して当該ハウジングの表面層の硬度を４００Ｈｖ以上としたことにある。

係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
（１）前記軸受ハウジングは炭素含有量が０．２５％未満の低炭素鋼材を用いたこと。

係る本発明のスクロール圧縮機によれば、快削性及び良好な溶接性を有する低炭素鋼を用い且つガス軟窒化処理によって耐摩耗性の高い軸受ハウジングとし、安価で信頼性の向上を図ることができる。

以下、本発明における一実施形態について図１から図３を参照しながら説明する。図１は本発明の一実施形態のスクロール圧縮機の縦断面図、図２は図１のスクロール圧縮機の副軸受部の拡大図、図３は図２の軸受ハウジングの部分拡大横断面図である。

スクロール圧縮機５０は、電動機部５と、作動流体を圧縮する圧縮機構部６と、電動機部５の回転力を圧縮機構部６に伝達して当該圧縮機構部６を駆動するクランク軸１１と、クランク軸１１を電動機部５の両側で回転可能に支持する複数の軸受１２〜１４と、潤滑油２と、これらを収納する密閉容器１とを備える。

電動機部５は、中心部にクランク軸１１を貫通して設けた回転子３と、外周が密閉容器１に溶接して固定された固定子４とからなる。

圧縮機構部６は、それぞれの端板上に設けられた渦巻状のラップを噛み合わせることにより圧縮室を形成する固定スクロール７および旋回スクロール８と、この旋回スクロール８の自転を防止し公転を許容する自転防止手段を構成するオルダムリング９と、旋回スクロール８及びオルダムリング９を支持するフレーム１０とを備える。

クランク軸１１は、その一側端部に偏心部１１ａを有し、その偏心部１１ａを旋回スクロ−ル８のボス部に嵌入させ、電動機部５の回転力を旋回スクロ−ル４に伝達し旋回スクロール４を公転させるものである。クランク軸１１の中心部には、密閉容器１の底部に貯留された潤滑油２を軸受１２〜１４及び圧縮機構部６の摺動部へ供給するための給油孔１１ｂが形成されている。

複数の軸受１２〜１４は、旋回スクロール８のボス部に内蔵されてクランク軸１１の偏心部１１ａを支持する旋回軸受１２と、フレーム１０に内蔵されてクランク軸１１を支持する主軸受１３と、電動機部５より反圧縮機構部側でクランク軸１１を支持する副軸受１４とからなっている。旋回軸受１２と主軸受１３は筒状の滑り軸受で構成されている。

副軸受１４は、内周に内球面部１５ａを有する軸受ハウジング１５と、軸受ハウジング１５内に収納され、内周にクランク軸１１を支持する摺動面１６ａを有し、外周に内球面部１５ａと摺動して自動調芯機能を持つ外球面部１６ｂを有する球面軸受１６と、からなる滑り軸受で構成されている。係る構成によれば、クランク軸１１が副軸受１４内で自動調芯機能により自由に姿勢を変えることが可能であるため、組立時のクランク軸１１の傾きを吸収して組立性の向上を図ることができる。同様に運転中のクランク軸１１のたわみを吸収し、異常な片当りを防止して信頼性を向上させる効果がある。

なお、軸受ハウジング１５はハウジング支持部材１７の内周部下面に溶接されて固定されている。ハウジング支持部材１７の外周部は密閉容器１に溶接して固定されている。従って、軸受ハウジング１５はハウジング支持部材１７を介して密閉容器１に支持されることとなる。

スクロール圧縮機５０は電動機部５の回転動力により圧縮機構部６を従動させることにより圧縮仕事を行う。これによって、電動機部５の回転を伝達するクランク軸１１と、このクランク軸１１を支持する主軸受１３及び副軸受１４の球面軸受１６乃至軸受ハウジング１５は、圧縮仕事による負荷及び可動部品の運動による負荷を保持する必要がある。そのため、それぞれの摺動部には強度と耐摩耗性が求められる。

球面軸受１６は、上述したように、内周にクランク軸１１のジャーナル部との摺動面である摺動面部１６ａを有し、外周に軸受ハウジング１５の内球面部１５ａとの摺動面である外球面部１６ｂを有する。従って、球面軸受１６は、非固定で支持され、内周及び外周の双方に摺動面を有することとなる。固定された軸受では内周面のみでクランク軸１１の負荷及び周速を全て受けるのに対し、非固定の球面軸受１６ではクランク軸１１の負荷及び周速を内周面１６ａと外周面１６ｂとでそれぞれを受けることができる。即ち、球面軸受１６がクランク軸１１の回転に伴い同一回転方向で且つクランク軸１１より低い回転速度で回転する際には、クランク軸１１の周速を球面軸受１０の内周面１６ａ及び外周面１６ｂの２面で受けることができ、クランク軸１１の発熱を抑えることができる。

しかしながら、球面軸受１６の２つの摺動面１６ａ、１６ｂにおいて、潤滑性や表面粗さ等に違いが生じ、例えば、球面軸受１６がクランク軸１１とほぼ同一の回転速度またはこれに近い回転速度となった場合、負荷及び周速は軸受１の外球面と軸受ハウジング１５の内球面に集中することとなる。このため、球面軸受１６の摺動面１６ｂと軸受ハウジング１５の摺動面１５ａとの面でも前記負荷に対応できるよう配慮する必要がある。

ここで、球面軸受１６は、機械構造用炭素鋼材または鋳物材の表面に窒化処理を施して硬化し、さらに二硫化モリブデンおよびリン酸マンガン皮膜処理を施して構成されており、表面硬度が強化されている。しかし、軸受ハウジング１５は快削性および溶接性を考慮して低炭素鋼材を用いることが望ましい。このため、球面軸受１６の表面硬度が４００〜６００Ｈｖであるのに対し、軸受ハウジング１５として単に低炭素鋼材Ｓ２０Ｃをそのまま用いた場合には軸受ハウジング１５の表面硬度が１２０〜１６０Ｈｖ程度となり、これらの摺動面では表面硬度が大きく異なる。この状態で、上述した如く球面軸受１６の摺動面１６ｂと軸受ハウジング１５の摺動面１５ａとに負荷が集中すると、表面硬度の差により軸受ハウジング１５が摩耗し、信頼性を損なうおそれがある。

そこで、本実施形態では、軸受ハウジング１５の硬度増加による信頼性の向上を図るため、軸受ハウジング１５の少なくとも内球面部１５ａにガス軟窒化処理が施されている。図３に軸受ハウジング１５にガス軟窒化処理を施した際の表面近傍の断面図を示す。図３に模式的に示すように、軸受ハウジング１５の素材部１５ｂの表面近傍に、窒素の拡散層１５ｃが生成され、その表面に化合物層１５ｄが生成される。この拡散層１５ｃにより、軸受ハウジング１５の硬度が増加し、信頼性向上を図ることができると共に、球面軸受１６をクランク軸１１の回転よりも確実に低速に回転させることができる。

さらには、ガス軟窒化処理に要する処理温度は、およそ５００〜６００℃であり、他の表面硬化法である浸炭焼入れや高周波焼入れに要する処理温度である８００〜９００℃に対し低く、低炭素鋼のＡ３変態点（およそ８５０〜９００℃）に対しても十分に低い。従って、本実施形態の軸受ハウジング１５の大きな寸法変化も発生せず、軸受ハウジング１５の内球面部１５ａの形状を維持することができ、球面軸受１６との寸法クリアランスを処理前の機械加工によって決定することができる。これにより、局所的な寸法変化による局部摺動による信頼性の低下を抑え、後工程を必要としないため、安価で信頼性の高い副軸受１４とすることができる。

本実施形態によれば、快削性及び良好な溶接性を有する低炭素鋼を用い且つガス軟窒化処理によって耐摩耗性の高い軸受ハウジングとし、安価で信頼性の高いスクロール圧縮機を提供することができる。

本発明の一実施形態のスクロール圧縮機の縦断面図である。 図１のスクロール圧縮機の副軸受部の拡大図である。 図２の軸受ハウジングの部分拡大横断面図である。

符号の説明

１…密閉容器、２…潤滑油、３…回転子、４…固定子、５…電動機部、６…圧縮機構部、７…固定スクロール、８…旋回スクロール、９…オルダムリング（自転防止手段）、１０…フレーム、１１…クランク軸、１２…旋回軸受、１３…主軸受、１４…副軸受、１５…軸受ハウジング、１５ａ…内球面部、１６…球面軸受、１６ａ…内周面部、１６ｂ…外球面部、１７…ハウジング支持部材（支持部）、５０…スクロール圧縮機。

Claims (2)

1. 電動機部と、
   作動流体を圧縮する圧縮機構部と、
   前記電動機部の回転力を前記圧縮機構部に伝達して当該圧縮機構部を駆動するクランク軸と、
   前記クランク軸を前記電動機部の両側で回転可能に支持する複数の軸受と、
   前記電動機部、前記圧縮機構部、前記クランク軸、及び前記複数の軸受を収納した密閉容器とを備え、
   前記圧縮機構部は、それぞれの端板上に設けられた渦巻状のラップを噛み合わせることにより圧縮室を形成する固定スクロールおよび旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転防止手段と、前記自転防止手段を支持するフレームとを備え、
   前記複数の軸受は、前記フレームに内蔵されて前記クランク軸を支持する主軸受と、前記電動機部より反圧縮機構部側で前記クランク軸を支持する副軸受とを備え、
   前記副軸受は、支持部に溶接されると共に内周に内球面部を有する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジング内に収納され前記内球面部と摺動して自動調芯機能を持つ外球面形状部を有する球面軸受と備え、
   前記球面軸受は、機械構造用炭素鋼材または鋳物材の表面に窒化処理を施して硬化し、さらに二硫化モリブデンおよびリン酸マンガン皮膜処理を施して表面硬度を４００Ｈｖ〜６００Ｈｖとしたスクロール圧縮機において、
   前記軸受ハウジングは、低炭素鋼材を用い、この低炭素鋼材単独の場合の表面硬度と前記球面軸受の表面硬度との硬度差よりも硬度差が小さくなるように、その低炭素鋼材の表面の少なくとも前記球面軸受の外球面部との摺動面になる内球面部にガス軟窒化処理を施して当該ハウジングの表面層の硬度を４００Ｈｖ以上とした
   ことを特徴とするスクロール圧縮機。
2. 請求項１において、前記軸受ハウジングは炭素含有量が０．２５％未満の低炭素鋼材を用いたことを特徴とするスクロール圧縮機。

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